説明

水処理装置および水処理方法

【課題】水溶液中の難分解性化合物を効率よく除去することが可能な水処理技術を提供する。
【解決手段】被処理水中にナノバブル30を発生させるナノバブル発生機16と、ナノバブル30を含んでいる被処理水を貯める分解部19、および、上記ナノバブルを含んでいる上記被処理水を貯める分解部、および、分解部19から発生する気体が導入される空間であり、微細活性炭33が入れられているガス吸着部18により構成される分解吸着槽20と、分解部19に貯められている被処理水を曝気する散気管36とを備えている水処理装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置および水処理方法に関するものであり、特に、ナノバブルを利用した水処理装置および水処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ダイオキシン、有機フッ素化合物(例えば、パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)またはパーフルオロオクタン酸(PFOA)等)などは化学的に安定な物質であって、耐熱性および耐薬品性(例えば、耐酸性)に優れている。それゆえ、これら難分解性化合物は、界面活性剤、または半導体製造における反射防止膜等の産業用材料として広く用いられている。
【0003】
しかしながら、これら難分解性化合物が広く用いられれば用いられるほど、難分解性化合物が自然界に放出される可能性が増加する。
【0004】
上述したように、難分解性化合物は化学的に安定な物質であるが故に、一度自然界に放出されれば、深刻な環境汚染の原因となり得る。例えば、北極熊、アザラシおよび鯨の体内から上述したような難分解性化合物が検出されており、難分解性化合物による環境汚染が国際的に深刻化しつつある。
【0005】
それゆえ、環境汚染を防止するために、産業用材料としてこれらの難分解性化合物を用いる工場からの排水を適切に処理するための水処理技術の開発が進められている。また、用水処理において、河川水等に残存するこれらの難分解性化合物を除去する水処理技術も同時に求められている。
【0006】
例えば、従来から、PFOS、PFOA等の難分解性化合物を含有する排水の水処理技術としては、燃料を用いて水溶液のままで難分解性化合物を燃焼する燃焼方式、または水溶液に対して高圧をかけることによって水溶液中の化合物を分解する超臨界方式が用いられている。
【0007】
しかしながら、例えば、半導体工場などから排出される有機フッ素化合物含有排水中の有機フッ素化合物の濃度は、ppbオーダーであって濃度が低く、かつ排水量が1日あたり数十トン〜数百トンと非常に多い。この場合、上記従来の方法では、排水を処理しきれないのが現状である。
【0008】
また、用水処理においても、河川水や湖水の有機フッ素化合物濃度は、排水の場合よりもさらに低く、水量も多いため、処理は非常に困難である。
【0009】
ところで、近年、小さな直径を有する気泡(バブル)には様々な作用効果があることが明らかになりつつあり、現在、このような気泡を作製する技術およびその効果に対する研究が進みつつある。そして、気泡を用いて、様々な有機物を分解しようとする試みもなされている。
【0010】
上記気泡は、その直径に応じて、マイクロバブル、マイクロナノバブルおよびナノバブルに分類することができる。具体的には、マイクロバブルは、その発生時において10μm〜数十μmの直径を有する気泡であり、マイクロナノバブルは、その発生時において数百nm〜10μmの直径を有する気泡であり、ナノバブルは、その発生時において数百nm以下の直径を有する気泡である。なお、マイクロバブルは、発生後の収縮運動によって、その一部がマイクロナノバブルに変化することがある。また、ナノバブルは、長期に渡って液体中に存在することができるという性質を有している。
【0011】
例えば、従来から、様々なナノバブルの利用方法、およびナノバブルを利用した各種装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。より具体的には、特許文献1には、ナノバブルが、浮力の減少、表面積の増加、表面活性の増大、局所高圧場の生成、または静電分極の実現によって、界面活性作用および殺菌作用を示すことが記載されている。さらに、特許文献1には、ナノバブルが有する界面活性作用および殺菌作用を用いて、各種物体を洗浄する技術および汚濁水を浄化する技術が記載されている。さらに、特許文献1には、ナノバブルを用いて生体の疲労を回復する方法が記載されている。なお、特許文献1では、水を電気分解するとともに、当該水に超音波振動を加えることによって、ナノバブルを作製している。
【0012】
また、従来から、液体を原料としてナノバブルを作製する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。上記作製方法は、液体中において、1)上記液体の一部を分解ガス化する工程、2)上記液体に超音波を印加する工程、または3)上記液体の一部を分解ガス化する工程および上記液体に超音波を印加する工程、からなるものである。なお、液体の一部を分解ガス化する工程として、電気分解法または光分解法を用いることができることが記載されている。
【0013】
また、従来から、オゾンガスからなるマイクロバブル(オゾンマイクロバブル)を利用する廃液処理装置が用いられている(例えば、特許文献3参照)。上記廃液処理装置では、オゾン発生装置によって作製されたオゾンガスと廃液とを、加圧ポンプを用いて混合することによって、オゾンガスからなるマイクロバブルを作製している。そして、当該マイクロバブルが廃液中の有機物と反応することによって、廃液中の有機物が酸化分解される。
【特許文献1】特開2004−121962号公報(平成16年4月22日公開)
【特許文献2】特開2003−334548号公報(平成15年11月25日公開)
【特許文献3】特開2004−321959号公報(平成16年11月18日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上記従来のバブルを利用した水処理技術では、水溶液中の難分解性化合物を効率よく除去できないという問題点を有している。
【0015】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、水溶液中の難分解性化合物を効率よく除去することが可能な水処理技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の1)〜3)を見出し、本発明を完成させた。
1)難分解性化合物(例えば、有機フッ素化合物など)をナノバブルの酸化力を利用して分解する際、活性炭を加えると、活性炭の吸着作用により分解が効率的に進行すること、
2)難分解性化合物をナノバブルの酸化力および活性炭の吸着作用を利用して分解すると、炭素数が少なくなった分解物(例えば、C3、C4、C5、C6、C7など)がガス化して、当該ガスが気相中に放出されること、
3)ガス化した難分解性化合物の分解物は、活性炭の一部が破砕されて生じた微細な破砕活性炭により効率的に吸着され、分解されること。
【0017】
すなわち、本発明に係る水処理装置は、被処理水中にナノバブルを発生させるナノバブル発生手段と、上記ナノバブルを含んでいる上記被処理水を貯める分解部、および、上記分解部から発生する気体が導入される空間であり、微細活性炭が入れられているガス吸着部により構成される分解吸着槽と、上記分解部に貯められている上記被処理水を曝気する曝気手段とを備えていることを特徴としている。
【0018】
上記の構成によれば、ナノバブルの酸化力と、曝気手段による曝気とによって被処理水中の被分解物質を効率的に分解することができる。また、分解部が曝気されることにより、ガス化した分解物を効率よく水面に送ることができ、また、気相の空気を入れ替えることができるので、ガス化した分解物を効率よくガス吸着部に送ることができる。また、微細活性炭は通常の活性炭と比べて表面積が多く、より吸着効率が高いので、ガス吸着部においてガス化した分解物は微細活性炭により効率よく吸着処理される。従って、上記の構成により、水溶液中の難分解性化合物を効率よく除去することができる。
【0019】
また、本発明に係る水処理装置では、上記被処理水は有機フッ素化合物を含んでいてもよい。
【0020】
上記の構成によれば、ナノバブルの酸化力と活性炭の吸着作用とによって、有機フッ素化合物の炭素とフッ素との間の強固な結合を分解することができる。
【0021】
また、本発明に係る水処理装置では、上記分解部には活性炭が入れられており、上記微細活性炭は、上記活性炭が上記曝気手段により曝気され破砕されることによって生じた微細活性炭であることが好ましい。
【0022】
上記の構成によれば、分解部に活性炭が添加されることにより、分解部において被分解物質を吸着処理することができる。また、曝気されて破砕された微細活性炭を分解部からガス吸着部に移送することにより、微細活性炭を再利用できる。また、活性炭はある程度大きく重さがあるので、微細活性炭よりも容易に投入することができ、扱いやすい。
【0023】
また、本発明に係る水処理装置では、上記分解部の被処理水をろ過する急速ろ過機と、上記急速ろ過機において分離された上記微細活性炭を上記ガス吸着部に移送する微細活性炭移送手段とをさらに備えていることが好ましい。
【0024】
上記の構成によれば、急速ろ過機により微細活性炭および浮遊物を被処理水から除くことができ、さらに、微細活性炭を再利用することができる。
【0025】
また、本発明に係る水処理装置は、上記急速ろ過機を逆洗するための逆洗手段をさらに備えており、上記微細活性炭移送手段は、上記逆洗手段が流出させる逆洗水によって、上記急速ろ過機において分離された上記微細活性炭をガス吸着部に移送することが好ましい。
【0026】
上記の構成によれば、急速ろ過機の急速ろ過機ポンプとともに、上記逆洗手段の逆洗ポンプを稼働させて、逆洗水をガス吸着部に流出させる。これにより、急速ろ過機に堆積される微細活性炭をガス吸着部に導入して微細活性炭を再利用することができるとともに、急速ろ過機を洗浄することができる。
【0027】
また、本発明に係る水処理装置では、上記微細活性炭移送手段は、上記逆洗水中に含まれる破過した上記微細活性炭を除去するための自動弁をさらに備えていることが好ましい。
【0028】
上記の構成によれば、吸着能力の無くなった破過した上記微細活性炭を除去することにより、効率よく分解物の吸着処理を行うことができる。
【0029】
また、本発明に係る水処理装置では、上記急速ろ過機は、上記微細活性炭を堆積させるための空間を有していることが好ましい。
【0030】
上記の構成によれば、ろ過機内に微細活性炭を堆積させ、首尾よく微細活性炭を再利用することができる。
【0031】
また、本発明に係る水処理装置では、上記分解部は、水平方向の断面積が上部ほど大きくなるように傾斜した側面と、上記側面に設けられた排出口と、上記微細活性炭よりも大きい活性炭が当該排出口から流出しないように設けられた越流板とを備えていることが好ましい。
【0032】
上記の構成によれば、分解部が傾斜した側面を備えているため、活性炭を効率よく流動させることができる。また、傾斜した側面に排出口および越流板が設置されているので、通常の活性炭は流出せず、微細活性炭のみを流出させることができ、首尾よく微細活性炭を再利用することができる。
【0033】
また、本発明に係る水処理装置では、上記ガス吸着部は、上記微細活性炭を付着させるための充填材を備えていることが好ましい。
【0034】
上記の構成によれば、充填材を備えることにより、多量の微細活性炭をガス吸着部に備えることができるので、分解物ガスを効率よく吸着処理することができる。
【0035】
また、本発明に係る水処理装置では、上記充填材がプラスチックからなることが好ましい。
【0036】
上記の構成によれば、充填材がプラスチックからなる成形品であるので、容易に入手または製造することができる。
【0037】
また、本発明に係る水処理装置では、上記充填材がリング型ポリ塩化ビニリデンからなっていてもよい。
【0038】
上記の構成によれば、リング型ポリ塩化ビニリデンは表面積が多いため、多量の微細活性炭を付着させることができ、分解物ガスを効率よく付着させることができる。
【0039】
また、本発明に係る水処理装置では、上記充填材が網状シートであってもよい。
【0040】
上記の構成によれば、網状シートは表面積が多いため、多量の微細活性炭を付着させることができ、分解物ガスを効率よく付着させることができる。
【0041】
また、本発明に係る水処理装置では、上記被処理水を貯めるナノバブル発生水槽と、上記被処理水を上記ナノバブル発生水槽から上記分解吸着槽に移送する被処理水移送手段とをさらに備えており、上記ナノバブル発生手段は、上記ナノバブル発生水槽に貯められている上記被処理水中に上記ナノバブルを発生させることが好ましい。
【0042】
上記の構成によれば、分解吸着槽とは別のナノバブル発生水槽においてナノバブルを被処理水に導入することにより、分解部に活性炭が含まれる構成においても、活性炭がナノバブル発生手段に入り込んでしまうのを防ぐため、ナノバブル発生手段がナノバブルを理想的な状態で生成することができる。
【0043】
また、本発明に係る水処理装置では、上記ナノバブル発生手段は、液体と気体とを混合およびせん断してマイクロバブル含有水を作製する第1気体せん断部と、上記マイクロバブル含有水をさらにせん断してナノバブル含有水を作製する第2気体せん断部と、上記ナノバブル含有水をさらにせん断して多量のナノバブルを含むナノバブル含有水を作製する第3気体せん断部とを備えていることが好ましい。
【0044】
上記の構成によれば、効率よく多量のナノバブルを生成することができる。
【0045】
また、本発明に係る水処理装置では、上記第1気体せん断部の内部の横断面は、楕円形または真円形であり、上記第1気体せん断部の内部表面には、2本以上の溝が設けられていることが好ましい。
【0046】
上記の構成によれば、マイクロバブル発生部における流体の旋回乱流を制御することができる。
【0047】
また、本発明に係る水処理装置では、上記溝の深さは、0.3mm〜0.6mmであり、上記溝の幅は、0.8mm以下であることが好ましい。
【0048】
上記の構成によれば、マイクロバブル発生部における流体の旋回乱流をより効果的に制御することができる。
【0049】
また、本発明に係る水処理装置では、上記第1気体せん断部では、第1配管を介して液体が供給されるとともに、第2配管を介して上記マイクロバブル含有水が吐出され、上記第1配管の内腔の横断面の面積は、上記第2配管の内腔の横断面の面積よりも大きいことが好ましい。
【0050】
上記の構成によれば、空気のせん断を合理的かつ安定的に行うことができ、マイクロバブルを多量に製造することができる。
【0051】
また、本発明に係る水処理装置では、上記ナノバブル発生手段は、上記第1気体せん断部に液体を供給し、液体および気体を混合および循環させる気液混合循環ポンプと、上記第1気体せん断部に気体を供給する第3配管と、上記第1気体せん断部に供給される気体の量を調節する気体量調節手段とをさらに備えていることが好ましい。
【0052】
上記の構成によれば、多量のナノバブルを生成することができる。
【0053】
また、本発明に係る水処理装置では、上記気体量調節手段は、上記第1気体せん断部に対して1.2リットル/分以下にて上記気体を供給することが好ましい。
【0054】
上記の構成によれば、多量のナノバブルを生成することができる。
【0055】
また、本発明に係る水処理装置では、上記第1気体せん断部への上記気体の取り込みは、上記気液混合循環ポンプの出力が最大値に達した時点以降に行われることが好ましい。
【0056】
上記の構成によれば、はじめは液体のみを供給し、ポンプ出力が最大値に達した時点以降に気体を導入することにより、キャビテーションを起こさないためポンプを損傷させない。
【0057】
また、本発明に係る水処理装置では、上記第1気体せん断部への上記気体の取り込みは、上記気液混合循環ポンプの動作開始時から60秒後以降に行われることが好ましい。
【0058】
上記の構成によれば、気液混合循環ポンプの動作開始時から60秒後以降にポンプ出力が最大値に達するため、上記構成であればキャビテーションを起こさないためポンプを損傷させない。
【0059】
また、本発明に係る水処理装置では、上記第3配管は、上記第1気体せん断部の内側面に対して18度の角度をなすように、上記第1気体せん断部に接続されていることが好ましい。
【0060】
上記の構成によれば、マイクロバブルを多量に発生させることができる。
【0061】
また、本発明に係る水処理装置では、上記第1気体せん断部の隔壁の厚さは、6mm〜12mmであることが好ましい。
【0062】
上記の構成によれば、マイクロバブルを安定的に発生させることができる。
【0063】
また、本発明に係る水処理装置では、上記急速ろ過機においてろ過された上記被処理水を吸着処理する活性炭吸着塔活性炭吸着塔をさらに備えていることが好ましい。
【0064】
上記の構成によれば、微量な化合物をさらに吸着処理することができる。
【0065】
また、本発明に係る水処理装置では、上記急速ろ過機においてろ過された上記被処理水を吸着処理するイオン交換樹脂塔をさらに備えていることが好ましい。
【0066】
上記の構成によれば、微量な化合物をさらに吸着処理することができる。
【0067】
また、本発明に係る水処理装置では、上記微細活性炭は、粒径の平均が0.2mm以下であることが好ましい。
【0068】
上記の構成によれば、微細活性炭が、分解物ガスをより首尾よく吸着することができる。
【0069】
また、本発明に係る水処理方法は、有機フッ素化合物を含む被処理水を処理する水処理方法であって、上記被処理水には、ナノバブルおよび活性炭が添加され、ナノバブルが有する酸化力と、活性炭が有する吸着作用とにより、上記有機フッ素化合物を分解および吸着処理することを特徴としている。
【0070】
上記の構成によれば、ナノバブルが有するラジカルによる酸化力と活性炭の吸着作用とにより、有機フッ素化合物の炭素とフッ素との強固な結合を分解することができる。
【0071】
また、本発明に係る水処理方法では、上記有機フッ素化合物が、パーフルオロオクタンスルホン酸、パーフルオロオクタン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸フルオリド、およびパーフルオロオクタンスルホン酸フルオリド誘導体からなる群より選ばれる一種以上の有機フッ素化合物であってもよい。
【0072】
上記の構成によれば、上述したような難分解性物質であっても首尾よく分解することができる。
【発明の効果】
【0073】
本発明の水処理装置によれば、水溶液中の難分解性化合物を効率よく除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0074】
〔第1実施形態〕
本発明に係る水処理装置の一実施形態について、図1を参照して以下に説明する。図1は、本発明に係る水処理装置の一実施形態を示す図である。
【0075】
本実施形態に係る水処理装置は、図1に示すように、原水槽2、ナノバブル発生水槽15、分解吸着槽20、第1のピット水槽40、急速ろ過機44、および第2のピット水槽56により構成されている。
【0076】
原水槽2は、被処理水を貯めておくための水槽であり、被処理水を汲み上げるための原水ポンプ3が設置されている。原水槽2には、配管1により被処理水が導入されている。
【0077】
被処理水とは、例えば有機フッ素化合物等の、被分解物質を含む水溶液であり、各工場から排水される有機フッ素化合物含有水、あるいは微量の有機フッ素化合物を含んでいる一般河川水または一般湖水等が挙げられる。有機フッ素化合物としては、例えば、パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)、パーフルオロオクタン酸(PFOA)、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸フルオリド、およびパーフルオロオクタンスルホン酸フルオリド誘導体等が挙げられる。
【0078】
ナノバブル発生水槽15は、被処理水中にナノバブルを発生させるための水槽であり、被処理水中にナノバブル流13を発生させるためのナノバブル発生機(ナノバブル発生手段)16が備えられている。ナノバブル30およびナノバブル発生機16の構成については後述する。ナノバブル発生水槽15には、被処理水が原水槽2から原水ポンプ3により配管14を介して導入される。ナノバブル30を含んだ被処理水は、オーバーフローによりナノバブル発生水槽15から流出し、オーバーフロー水配管(被処理水移送手段)17を通って分解吸着槽20の分解部19へと流れる。
【0079】
ナノバブル発生水槽15にナノバブル発生機16を備えることにより、後述する分解部19に添加される活性炭31等がナノバブル発生機16に入り込まないので、ナノバブル30を理想的な状態において被処理水中に生成させることができる。ナノバブル発生水槽15においては、被処理水が滞留する時間は数分から数十分程度と短いので、被処理水中に含まれる被分解物質の分解には殆ど寄与しない。
【0080】
分解吸着槽20は、被処理水を貯めるための水槽であり、さらに被処理水を分解および吸着処理するための水槽である。分解吸着槽20は、図1に示すように、分解部19と、分解部19の上部に設けられるガス吸着部18とを備えている。分解部19には被処理水が満たされており、ガス吸着部18は、分解部19において発生した気体が導入される空間であり、例えば、被処理水の上部に形成される。
【0081】
分解部19について以下に詳細に説明する。
【0082】
分解部19には、図1に示すように、整流板28、越流板32、排出口64、散気管(曝気手段)36、および傾斜した側壁34が備えられている。また、分解部19には、オーバーフロー水配管17を通して、ナノバブル発生水槽15からナノバブルを含んだ被処理水が導入される。分解部19内の被処理水には、ナノバブル30、活性炭31および微細活性炭33が含まれている。
【0083】
整流板28は、分解部19内において被処理水が効率よく撹拌されるよう、流れを整えるために設けられる。
【0084】
越流板32は、傾斜した側壁34に設けられており、微細活性炭33よりも大きい活性炭31が排出口64から流出するのを妨げている。越流板32を越流する水流により、微細活性炭33は被処理水とともに排出口64から流出する。
【0085】
排出口64は、被処理水および微細活性炭33が通る大きさの穴であり、配管39と接続されている。形成される穴の形状は特に限定されない。排出口64は、分解部19の側面に設けられていることが好ましく、傾斜面に設けられていることがより好ましい。また、排出口64は、微細活性炭33よりも大きい活性炭31等が流出しないように設けられていることが好ましい。分解部19における被処理水は、微細活性炭33とともにオーバーフローにより排出口64から流出し、配管39を通って第1のピット水槽40へと流入する。
【0086】
散気管36は、分解部19の下部に設置されており、ブロワー38と接続されており、ブロワー38から吐出される空気を分解部19内に曝気する。散気管36からの曝気により、分解部19内は強力に撹拌される。散気管36が設置される場所は、特に限定されないが、分解部19の底部であることがより好ましい。散気管36が底部に設置されることにより、活性炭31が効率よく撹拌される。
【0087】
側壁34は、分解部19の側壁の1つであり、分解部19の水平方向の断面積が上部ほど大きくなるように傾斜している。なお、分解部19の底面35と側壁34とがなす角度は特に限定されないが、例えば、45度以上60度以下であることが好ましい。分解部19の側壁の少なくとも1つが傾斜していることにより、分解部19内は曝気により効率よく撹拌される。また、底部が狭くなっているので、沈降する活性炭31は底部の狭い範囲に集められ、下部に設置された散気管36からの曝気により効率よく流動される。
【0088】
ブロワー38は、分解吸着槽20の外部に設置されており、空気配管37を通して散気管36へと空気を吐出する。ブロワー38を稼動するための電動機は、インバータ運転を行うために、回転数を制御できる型式の電動機を選ぶことが好ましい。電動機の回転数を制御することにより、本発明に係る水処理装置における微細活性炭33の総量を調節することができる。
【0089】
分解部19内を曝気するための空気量は、特に限定されないが、活性炭31が撹拌される強さの曝気を生じる量であることが好ましく、例えば水槽容量あたり50(m/時間/m)以上であることが好ましい。強い曝気を生じさせる空気量であれば、活性炭31を流動させるとともに、分解部19内の分解物ガス、例えば有機フッ素化合物の分解物であるPFCガス:パーフルオロカーボンガス等、を水面に移動させ、さらにガス吸着部18に分解物ガス63として送ることができる。
【0090】
ナノバブル30は、上述したようにナノバブル発生水槽15において被処理水中に生成されたナノバブルであり、被処理水とともに分解部19へと流入する。
【0091】
ナノバブル30によってラジカルが発生し、当該ラジカルによって被処理水中の難分解性化合物が酸化分解されることになる。例えば、PFOSおよびPFOAなどは安定な物質であることが知られているが、本実施の形態の水処理装置であれば、これらの物質をも酸化分解することができる。そして、本願発明者らは、酸化分解反応によって生じる分解物が、分解吸着槽20内の被処理水の水面からガス化して大気中に放出されることを見出した。つまり、図1に示すように、分解物は、分解物ガス63として水面から放出される。
【0092】
分解物ガス63は、被処理水に含まれる被分解物質の分解物がガス化したものである。例えば被分解物質がPFOSおよびPFOA等の有機フッ素化合物である場合には、当該分解物ガス63としては、例えば、CF(CFH(n=3、4、5、6)、CF(CFCOOCH(m=5、6)などを挙げることができる。
【0093】
活性炭31は、被分解物質を吸着する機能を有しており、吸着作用のために導入される。活性炭31は、後述する活性炭投入口62から、一定量が分解吸着槽20内に投入され、分解部19内の被処理水中に落下し、被処理水に含まれる被分解物質の吸着処理に寄与する。活性炭31は、比重が1よりも大きいために分解部19の底部に集まろうとし、その結果下部にある散気管36からの曝気によって効率よく分解部19内を流動するため、被処理水と効率よく接触できる。活性炭31としては、例えば粒状の活性炭等が挙げられる。例えば、粒状活性炭(液相用)である「クラレコール(登録商標)」(クラレケミカル株式会社製)を用いることが好ましい。本発明に係る活性炭31は、粒径の平均が約1.0mmであることが好ましい。また、本発明に係る水処理装置に添加されている活性炭の量は、分解部19の容量あたり0.2〜0.4(cm/cm)であることが好ましい。
【0094】
活性炭31を添加することにより、ナノバブル30の有する酸化力と活性炭31の有する触媒作用とによって、被分解物質を効率よく分解することができる。
【0095】
微細活性炭33は、活性炭31と同様に吸着作用を有しており、活性炭31よりも微細な活性炭であり、言い換えれば活性炭31よりも比表面積(単位質量あたりの表面積)が大きい活性炭である。活性炭31よりも比表面積が多いことにより、吸着効率がより高いため、微細活性炭33を導入することにより効率よく被分解物質を分解することができる。本実施形態においては、微細活性炭33として、分解部19において活性炭31が強力な曝気により破砕されて生じた微細活性炭33を用いており、さらに当該微細活性炭33を分解部19からガス吸着部18へと移送している。本実施形態においては、微細活性炭33は、後述する急速ろ過機44において、ろ過工程と逆洗工程とが交互に行われることにより移送されるが、移送方法は特に限定されない。
【0096】
微細活性炭33の吸着効率は、表面積が多いほど高くなるため、本発明に係る微細活性炭33は、微細であればあるほど好ましく、粒径の平均が0.2mm以下であることがより好ましい。
【0097】
なお、本発明に係る微細活性炭33としては、別途破砕した活性炭、市販の微細な活性炭等を用いることもできる。その場合は、微細活性炭33を、後述する活性炭投入口62から分解部19内に投入した後に、分解部19からガス吸着部18へと移送してもよいし、ガス吸着部18の上部から投入してもよい。しかし、活性炭31が微細活性炭33よりも大きく重さがあるため扱いやすいという理由から、本発明においては、分解部19において活性炭31が曝気により破砕されて生じた微細活性炭33を用いることが好ましい。すなわち、表面積を多くする為に、微細活性炭33のさらなる微細化を推進すると、微細活性炭33が粉体となり、投入時に巻き上がる等、ハンドリングに問題が発生する。そのため、本実施形態のように、やや大きめサイズの活性炭31を分解部19に投入し、強力曝気で破砕して微細活性炭33とした上でガス吸着部18に移送するという方法がより合理的である。
【0098】
次にガス吸着部18について詳細に説明する。
【0099】
ガス吸着部18は、上述した分解物ガス63を吸着処理するための空間であり、図1に示すように分解部19の上部に設けられており、穴あき台21、プラスチック充填材(充填材)22、散水配管24、留め具23、散水ノズル27、排気煙突25、および活性炭投入口62が備えられている。また、プラスチック充填材22には、微細活性炭33が付着している。
【0100】
穴あき台21は、分解吸着槽20を水平に区切るよう形成され、固定されており、プラスチック充填材22を支えられる構造になっている。また、穴あき台21には、気体、液体、微細活性炭等が通過できる穴が形成されている。
【0101】
プラスチック充填材22は、微細活性炭33を付着させるための充填材であり、穴あき台の上に設けられる。プラスチック充填材22としては、例えば月島環境エンジニアリング株式会社のポリエチレン製S−II型等が挙げられる。また、本実施形態においては、充填材としてプラスチック充填材を用いているが、本発明においては、充填材の材質は、プラスチックでなくてもよく、微細活性炭33を付着しやすい材質であることが好ましい。充填材を設けることにより、多量の微細活性炭33をガス吸着部18に備えることができるので、分解物ガス63を効率よく吸着処理することが可能になる。
【0102】
散水配管24は、後述する急速ろ過機44と接続された配管46と接続されており、急速ろ過機44を逆洗した逆洗水を通す管である。
【0103】
留め具23は、散水配管24の末端を閉じるように形成されている留め具である。
【0104】
散水ノズル27は、散水配管24に一定間隔をおいて設置されており、散水配管24を流れる上記逆洗水をガス吸着部18内に散水する。
【0105】
排気煙突25は、ガス吸着部18の上部に設けられており、ガス吸着部18内の空気を排出するための煙突である。
【0106】
活性炭投入口62は、分解吸着槽20内に活性炭31を投入するための投入口であり、穴あき台21より下に設けられている。活性炭投入口62から投入された活性炭31は、分解部19内の被処理水へと落下する。
【0107】
ガス吸着部18には、分解部19から分解物ガス63が流入し、分解物ガス63に含まれる分解物は、プラスチック充填材22に付着した微細活性炭33により吸着処理されながら、新たな分解物ガス63の流入と拡散効果とによりガス吸着部18内を上昇する。その後、排気煙突25から排気ガス26を排気する。
【0108】
排気ガス26は、分解物ガス63がガス吸着部18において吸着処理されたガスであり、上部に設置された排気煙突25から排気される。
【0109】
第1のピット水槽40は、分解吸着槽20の分解部19から流出した被処理水および微細活性炭33を貯めておくための水槽である。第1のピット水槽40には、被処理水を汲み上げるための急速ろ過機ポンプ41が設置されている。第1のピット水槽40内の被処理水は、急速ろ過機ポンプ41により配管43を通って急速ろ過機44へと送られる。急速ろ過機ポンプ41は、後述するシーケンサー49と電気的に接続されている。
【0110】
配管43には、配管43内における水圧を測定するための圧力計42が接続されている。圧力計42は、後述するシーケンサー49と信号線50を介して電気的に接続されている。
【0111】
急速ろ過機44は、被処理水中の微細活性炭33、浮遊物質等を固液分離するための装置であり、ろ過層65を有している。また、急速ろ過機44には、微細活性炭33が堆積するための空間を有していることが好ましい。急速ろ過機44には、配管43および46が上部に接続され、配管51および52が下部に接続されている。配管43は第1のピット水槽40内と通じており、配管51および52は第2のピット水槽56内と通じている。
【0112】
急速ろ過機44では、被処理水をろ過するろ過工程と、ろ過層65を逆洗する逆洗工程とが交互に行われており、それらは後述するシーケンサー49により調節されている。ろ過工程および逆洗工程については後述する。
【0113】
配管46は二又に分かれており、一方には排出自動弁47が、もう一方には散水自動弁48が設けられている。排出自動弁47の先は外部へとつながっている。また、散水自動弁48の先は、散水配管24へと接続されている。排出自動弁47および散水自動弁48は、後述するシーケンサー49と信号線50を介して電気的に接続されており、シーケンサー49からの信号により開閉を調節される。
【0114】
第2のピット水槽56は、急速ろ過機44により固液分離された被処理水を貯めておく水槽である。第2のピット水槽56には、被処理水を汲み上げるためのポンプ54が設置されており、被処理水がポンプ54により配管55を通って次の工程へ送水される。次の工程としては、自然界へ放流する、活性炭吸着塔へ移送する、イオン交換樹脂塔へと移送する等の工程が挙げられる。
【0115】
また、第2のピット水槽56には、被処理水を汲み上げるための急速ろ過機逆洗ポンプ(逆洗手段)53が設置されている。急速ろ過機逆洗ポンプ53は、第2のピット水槽56から被処理水を急速ろ過機44へと移送させるポンプである。急速ろ過機逆洗ポンプ53は、後述するシーケンサー49と信号線50を介して電気的に接続されている。
【0116】
シーケンサー49は、信号線50を介して圧力計42と接続されており、配管43内の水圧値を定期的に受信する。また、急速ろ過機ポンプ41、急速ろ過機逆洗ポンプ53、排出自動弁47および散水自動弁48と信号線50を介して電気的に接続され、これらを調節することによって、上述したろ過工程と、逆洗工程と、後述する微細活性炭排出工程とを切り替えている。
【0117】
以下にシーケンサー49による調節方法について詳細に説明する。
【0118】
まず、ろ過工程について説明する。ろ過工程においては、シーケンサー49は、急速ろ過機ポンプ41を作動させ、第1のピット水槽40から急速ろ過機44へと被処理水を移送させている。一方、急速ろ過機逆洗ポンプ53は停止させており、排出自動弁47および散水自動弁48を閉じている。
【0119】
その結果、第1のピット水槽40から配管43を通って被処理水が急速ろ過機44に流入し、被処理水がろ過層を上側から下側へ、言い換えればろ過方向の上流側から下流側へと流れる。その結果、被処理水に含まれる微細活性炭33がろ過層65の上部に堆積し、微細活性炭層45が形成される。ろ過層を通過した被処理水は、配管51を通って第2のピット水槽56へと移送される。
【0120】
また、シーケンサー49は、圧力計42から信号線50を介して配管43内の水圧値を定期的に受信している。配管43内の水圧値が一定の値以上を示すと、シーケンサー49は、ろ過工程を停止し、逆洗工程に切り替える。
【0121】
配管43内の水圧値は、急速ろ過機44内の微細活性炭層45が厚くなるほど高くなる。従って、上記一定の値は、微細活性炭層45に適度な量の微細活性炭33が堆積している時に相当する水圧値に設定することが好ましい。
【0122】
次に、逆洗工程について説明する。逆洗工程においては、シーケンサー49は、急速ろ過機ポンプ41を停止させ、散水自動弁48を開き、急速ろ過機逆洗ポンプ53を作動させる。なお、排出自動弁47は、閉じられたままである。
【0123】
その結果、第2のピット水槽56から、被処理水が配管52を介して急速ろ過機44に流入し、被処理水がろ過層を下側から上側へ、言い換えればろ過方向の下流側から上流側へと、ろ過工程とは逆向きに流れる。その結果、被処理水は、急速ろ過機44を逆洗し、微細活性炭層45に堆積している微細活性炭33を含んだ逆洗水となり、配管(微細活性炭移送手段)46へと流出する。
【0124】
配管46へと流出した逆洗水は、開いている散水自動弁48を通って、ガス吸着部18内の散水配管(微細活性炭移送手段)24へと導かれ、散水ノズル27からガス吸着部18内に散水される。その結果、逆洗水に含まれる微細活性炭33がガス吸着部18に導入される。
【0125】
急速ろ過機44が十分に逆洗された後、シーケンサー49により逆洗工程が停止され、ろ過工程が開始される。その結果、急速ろ過機44の微細活性炭層45に新たに微細活性炭33が堆積され始める。
【0126】
なお、ろ過工程と逆洗工程との切り替えは、シーケンサー49に組み込まれたタイマーによって作動されてもよい。
【0127】
本実施形態においては、ろ過工程と逆洗工程とを交互に行うことにより、微細活性炭33を分解部19からガス吸着部18へと移送することができる。また、逆洗工程を行うことにより、急速ろ過機44を洗浄できるので、ろ過工程を効率よく行うことができる。
【0128】
ガス吸着部18に移送された微細活性炭33は、プラスチック充填材22に付着し、分解物ガス63の吸着処理に寄与する。微細活性炭33は、一定時間プラスチック充填材22に付着した後、新たに導入された微細活性炭33に取って代わられ、下部の分解部19へと落下する。
【0129】
本実施形態においては、微細活性炭33は、分解部19から第1のピット水槽40へと頻繁に流出するため、多くの微細活性炭33が急速ろ過機44へと流れ、堆積する。従って、従来の水処理装置における急速ろ過機と比較すると、本実施形態の急速ろ過機44においては、堆積物の堆積速度が速いため、配管43内の水圧値の上昇は速くなる。その結果、ろ過工程と逆洗工程とが切り替えられる頻度は高くなる。このような構成により、本実施形態における水処理装置は、効率よく微細活性炭33を分解部19からガス吸着部18へと移送するため、微細活性炭33を効率よく再利用することができる。
【0130】
本実施形態においては、微細活性炭33は、分解部19において有機フッ素化合物等の被分解物質を吸着し、ナノバブルによる分解に寄与した後、被処理水とともに流出し、急速ろ過機44において固液分離されて堆積する。その後急速ろ過機44の逆洗により逆洗水とともに配管46へと流出し、散水自動弁48を通過して散水配管24へと導かれ、ガス吸着部18内に散水される。散水された後、プラスチック充填材22に付着し、有機フッ素化合物等の被分解物質から生じた分解物ガス63の吸着処理に寄与する。散水ノズル27からの新たな逆洗水の散水によって、新たに導入された微細活性炭33に取って代わられ、微細活性炭33はプラスチック充填材22から離れて分解部19へと落下し、上記の動作を繰り返す。
【0131】
上記のサイクルを何度か繰り返した後、微細活性炭33は破過する。破過した微細活性炭33の割合が多くなると、ガス吸着部18における分解物の吸着処理能力が大幅に低下し、処理されない分解物が排気ガス26中に多く含まれるようになる。
【0132】
排気ガス26中に残留する分解物の量が増加した際には、シーケンサー49により、微細活性炭排出工程が行われる。
【0133】
次に、微細活性炭排出工程について説明する。
【0134】
微細活性炭排出工程においては、シーケンサー49は、急速ろ過機ポンプ41を停止させ、散水自動弁48を閉じ、排出自動弁47を開き、急速ろ過機逆洗ポンプ53を作動させる。その結果、微細活性炭33を含んだ上記逆洗水は配管46を通った後排出自動弁47を通り、外部に排出される。
【0135】
微細活性炭排出工程は、ガス吸着部18における分解物ガスの吸着処理能力が大幅に低下した時点で行うことが好ましい。また、その頻度は、被処理水の水質によって調整されることが好ましい。
【0136】
微細活性炭33が外部に排出されると、水処理装置内の微細活性炭33の総量が減少するので、適宜、新たな活性炭31を活性炭投入口62から投入することが好ましい。新たに投入された活性炭31は、分解部19において曝気により破砕され、微細活性炭33となる。
【0137】
(ナノバブル発生機16)
ナノバブル発生機16について、図1を参照して詳細に説明する。
【0138】
ナノバブル発生機16は、図1に示すように、第1気体せん断部6、第2気体せん断部8、第3気体せん断部12、電動ニードルバルブ(気体量調節手段)11、第1配管4、第2配管7、第3配管10、および第4配管9により構成される。
【0139】
第1気体せん断部6について、以下に詳細に説明する。
【0140】
第1気体せん断部6では、気体と液体とから、マイクロバブル含有水が作成される。
【0141】
なお、本明細書において「マイクロバブル」とは、その発生時において10μmから数十μmの直径を有する気泡であり、発生後に収縮運動によりマイクロナノバブルに変化する。また、「マイクロナノバブル」とは、数百nmから10μmの直径を有する気泡であり、「ナノバブル」とは、数百nm以下の直径を有する気泡である。
【0142】
図1に示すように、第1気体せん断部6には第1配管4、第2配管7および第3配管10が接続されている。また、第1気体せん断部6には、気液混合循環ポンプ5が備えられている。
【0143】
気液混合循環ポンプ5は、第1気体せん断部6に第1配管4を介して液体を供給するポンプである。
【0144】
気液混合循環ポンプ5としては特に限定されないが、揚程40m以上(4kg/cmの圧力)の高揚程のポンプであることが好ましい。また、気液混合循環ポンプ5としてはトルクが安定している2ポールのポンプを用いることが好ましい。上記構成によれば、第1気体せん断部6内のマイクロバブル含有水に対して所望の圧力を加えることが可能であり、その結果、マイクロバブル含有水に含まれるマイクロバブルをより微細にせん断することができる。
【0145】
また、気液混合循環ポンプ5では、ポンプの圧力が制御されていることが好ましい。例えば、気液混合循環ポンプ5の回転数が、インバーター等の回転制御部(図示せず)によって制御されていることが好ましい。なお、上記回転制御部は、さらにシーケンサー(図示せず)によって制御され得る。上記構成によれば、上記第1気体せん断部6の中のマイクロバブル含有水に対して所望の圧力を加えることが可能となり、その結果、マイクロバブル含有水に含まれるマイクロバブルを所望のサイズに揃えることができる。
【0146】
第1気体せん断部6に供給される液体としては特に限定されないが、例えば、ナノバブル発生水槽15内の被処理水を用いることが好ましい。上記構成であれば、本実施形態の水処理装置を小さく設計することができる。
【0147】
また、第1気体せん断部6には第3配管10を介して気体が供給される。
【0148】
第3配管10を第1気体せん断部6へ接続させる場合、上記第1気体せん断部6上における第3配管10の接続位置、および上記第1気体せん断部6に対する第3配管10の接続角度等は特に限定されない。例えば、第3配管10は上記第1気体せん断部6の側面に接続されるとともに、上記第1気体せん断部6の内側面(換言すれば、第1気体せん断部6の内面に対する接線)に対して略18度の角度をなすように接続されることが好ましい。
【0149】
第1気体せん断部内においてマイクロバブルを効率的に作製するためには、効率的に気体をせん断する必要がある。このとき、液体を超高速回転させて負圧部を形成し、当該負圧部に気体を導入する。なお、「負圧部」とは、気体と液体との混合物の中で周りと比較して圧力が小さな領域を意図する。そして、気体と液体との回転速度の差により、効率的に気体をせん断させている。この場合、上記接続角度が18度であるときが、最も気体のせん断効率が高く、それゆえ、最も多くのマイクロバブルを作製することができる。
【0150】
第1気体せん断部6内への気体の供給、および気体の供給量の調節は、第3配管10の先端に接続された電動ニードルバルブ11の開閉動作によって調節され得る。
【0151】
第1気体せん断部6に供給される気体としては、特に限定されないが、例えば、空気、オゾンまたは酸素であることが好ましく、オゾンまたは酸素であることがより好ましい。オゾンまたは酸素を用いることにより、空気を用いるよりも多量のラジカルを発生させることができるので、より効果的に難分解性化合物を酸化分解することができる。なお、オゾンまたは酸素を用いる場合には、電動ニードルバルブ11の末端に、各気体を貯蔵し得るタンクを設けることが好ましい。なお、上記タンクの具体的な構成としては特に限定されず、適宜公知のタンクを用いることが可能である。
【0152】
電動ニードルバルブ11の開閉動作のタイミングは特に限定されない。例えば、まず気液混合循環ポンプ5の運転を開始することによって第1気体せん断部6内に液体を導入するとともに当該液体を攪拌させる。その後、気液混合循環ポンプ5の出力が最大値に達した時点以降に電動ニードルバルブ11を開いて、これによって第1気体せん断部6内に気体を供給することが好ましい。また、気液混合循環ポンプ5の運転を開始してから60秒後以降に電動ニードルバルブ11を開いて、これによって上記第1気体せん断部6内に気体を供給することが、より好ましい。
【0153】
気液混合循環ポンプ5の運転開始時に電動ニードルバルブ11を開くことも可能であるが、この場合、気液混合循環ポンプ5がキャビテーション現象を起こし、その結果、気液混合循環ポンプ5が損傷する恐れがある。しかし、上述したように、まず液体を導入した後に気体を導入する構成であれば、気液混合循環ポンプ5がキャビテーション現象を起こすことを防止することができるので、その結果、気液混合循環ポンプ5が破損することを防ぐことができる。
【0154】
電動ニードルバルブ11を開くことによって第1気体せん断部6内に供給される気体の量は特に限定されない。例えば、第1気体せん断部6に対して、1.2リットル/分以下にて気体を供給することが好ましい。上記構成であれば、最終的に多量のナノバブル含有水を作製することができる。
【0155】
その後、第1気体せん断部6の中で上記液体と上記気体とが混合およびせん断されて、その結果、マイクロバブル含有水が作製され、第2配管7を介して第2気体せん断部にマイクロバブル含有水が吐出される。
【0156】
第1気体せん断部6の材料は特に限定されないが、ステンレス、プラスチック、または樹脂であることが好ましい。上記材料の中では、ステンレスが最も好ましい。上記構成によれば、マイクロバブル含有水中に不純物が混入することを防止することができるとともに、第1気体せん断部6が振動することを防止することができる。
【0157】
また、上記第1気体せん断部6の厚さ(隔壁の厚さ)は特に限定されないが、6mm〜12mmであることが好ましい。一般的に、第1気体せん断部6の厚さが薄ければ、第1気体せん断部6中のマイクロバブル含有水の運動によって、第1気体せん断部6が振動する。つまり、マイクロバブル含有水の運動エネルギーが振動として外部に伝播して失われるので、マイクロバブル含有水の高速流動運動が低下し、その結果、せん断エネルギーが低下する。しかしながら、上記構成によれば、第1気体せん断部6の振動を防ぐことかできるので、効率よくマイクロバブルを作製することができる。
【0158】
第1気体せん断部6の内腔の横断面の形状は特に限定されないが、楕円形であることが好ましく、真円形であることが最も好ましい。また、上記第1気体せん断部6の内腔表面は、鏡面仕上げによって形成されていることが好ましい。上記構成によれば、第1気体せん断部6の内部表面の摩擦が小さいので、気体と液体との混合物を高速旋回させることができるとともに、気体を効率良くせん断することができる。その結果、多くの微細なマイクロバブルを発生させることができるとともに、最終的に多くのナノバブルを発生させることができる。
【0159】
また、第1気体せん断部6の内部表面(内腔表面)には、溝が設けられていることが好ましい。また、上記溝の数は特に限定されないが、2本以上設けられていることが好ましい。また、上記溝は、第1気体せん断部6の内部表面上に形成された凹形状を有するものであればよく、その形状は特に限定されない。例えば、上記溝は、深さ略0.3mm〜0.6mm、幅略0.8mm以下であることが好ましい。上記構成によれば、第1気体せん断部6内の液体と気体との混合物の旋回乱流の発生を制御することができるので、多くの微細なマイクロバブルを発生させることができるとともに、最終的に多くのナノバブルを発生させることができる。
【0160】
また、上記第1気体せん断部6へは、第1配管4を介して液体が供給され、第2配管7を介してマイクロバブル含有水が吐出されている。このとき、液体を供給する第1配管4の内腔の横断面の面積は、マイクロバブル含有水を吐出する第2配管7の内腔の横断面の面積よりも大きいことが好ましい。上記構成によれば、マイクロバブル含有水の吐出圧力を高めることができるので、安定的にマイクロバブルを発生させることができる。
【0161】
第1気体せん断部6におけるマイクロバブル含有水の製造のメカニズムについて、さらに詳細に説明する。
【0162】
第1気体せん断部6においては、気液混合循環ポンプ5を用いて気体と液体との混合物の圧力が流体力学的に制御されるとともに、負圧部に対して気体が吸入される。そして、上記混合物を高速流体運動させて負圧部を形成しながら気体をせん断することによって、微細なマイクロバブルを発生させる。換言すれば、液体と気体とを効果的に自給混合するとともに、圧送する。これによって、より微細なマイクロバブルを含有するマイクロバブル含有水を形成することができる。
【0163】
気液混合循環ポンプ5を有する第1気体せん断部6がマイクロバブルを発生させるメカニズムについて、より詳細に説明する。
【0164】
まず、上記第1気体せん断部6において、マイクロバブル含有水の構成成分である液体と気体とからなる混相旋回流を発生させる。具体的には、インペラと呼ばれる羽を超高速で回転させて、液体と気体とからなる混相旋回流を発生させる。このとき、第1気体せん断部6の中心部には、高速旋回する気体空洞部が形成される。
【0165】
次いで、上記気体空洞部を圧力によって竜巻状に細くして、より高速で旋回する回転せん断流を発生させる。このとき、上記気体空洞部に対しては、当該気体空洞部の負圧を利用して、気体を自動的に供給させる。そして、さらにマイクロバブルを切断・粉砕しながら混相旋回流を回転させる。なお、上記切断・粉砕は、第1気体せん断部6の出口内外における気液二相流体の回転速度の差によって生じる。なお、上記回転速度の差は、500〜600回転/秒であることが好ましい。
【0166】
すなわち、第1気体せん断部6において、気液混合循環ポンプ5によってマイクロバブル含有水を高速流体運動させることによって負圧部を形成するとともに、流体力学的にマイクロバブル含有水の圧力を制御することによって上記負圧部に対して気体を供給している。その結果、第1気体せん断部6では、マイクロバブルを発生させることができる。換言すれば、気液混合循環ポンプ5を用いて液体と気体とを効果的に自給混合しながら圧送することによりマイクロバブル含有水を製造することができる。
【0167】
次に、第2気体せん断部8および第3気体せん断部12について詳細に説明する。
【0168】
第2気体せん断部8は、第1気体せん断部6にて作製されたマイクロバブル含有水をさらにせん断して、ナノバブル含有水を作製している。
【0169】
また、第3気体せん断部12は、第2気体せん断部8にて作製されたナノバブル含有水をさらにせん断して多量のナノバブルを含むナノバブル含有水を作製している。
【0170】
第2気体せん断部8および第3気体せん断部12は、ステンレス、プラスチック、または樹脂によって形成されていることが好ましい。
【0171】
また、第2気体せん断部8および第3気体せん断部12の内腔の横断面の形状は、楕円形であることが好ましく、真円形であることが最も好ましい。上記構成によれば、第2気体せん断部8および第3気体せん断部12の内部表面の抵抗(摩擦)が小さいので、マイクロバブル含有水を高速旋回させることができるとともに、マイクロバブル含有水を効率良くせん断することができ、その結果、多くのナノバブルを発生させることができる。
【0172】
また、第2気体せん断部8および第3気体せん断部12には、小孔が開いていることが好ましい。上記小孔の開口の直径は特に限定されないが、4mm〜9mmであることが好ましい。上記構成によれば、第2気体せん断部8および第3気体せん断部12の内部におけるバブル含有水の旋回運動を制御することができる。つまり、上記構成によれば、第2気体せん断部8および第3気体せん断部12の内部の旋回乱流の発生を制御することができる。その結果、第2気体せん断部8および第3気体せん断部12によって、安定にナノバブルを発生させることができる。なお、上記小孔の具体的なサイズは、ポンプの吸引最大値、モーター出力値、およびポンプ吐出圧力値によって決定することも可能である。
【0173】
最終的に、第3気体せん断部12により、被処理水中にナノバブル流13が吐出される。
【0174】
本実施形態に係るナノバブル発生機16においては、気液混合循環ポンプ5によって、マイクロバブル含有水が第1気体せん断部6から第2気体せん断部8へ、さらには第3気体せん断部12へ圧送される。マイクロバブル含有水が第1気体せん断部6から第2気体せん断部8へ、さらには第3気体せん断部12へと配管を介して圧送される場合には、マイクロバブル含有水が圧送される方向に向かって、徐々にまたは段階的に配管の直径が小さくなることが好ましい。上記構成によれば、マイクロバブル含有水をより高速で流体運動しながら竜巻状に細くすることができる。換言すれば、より高速で旋回する回転せん断流を発生させることができる。その結果、マイクロバブルからナノバブルを効率よく発生させることができるとともに、ナノバブル含有水中に超高温の極限反応場を形成することができる。
【0175】
上記極限反応場が形成されると、ナノバブル含有水が局部的に高温高圧状態となり、当該局所にて不安定なフリーラジカルができるとともに、同時に熱が発生される。フリーラジカルは不対電子を有する原子または分子であって、他の原子または分子から電子を奪い取って安定化しようとする。それゆえ、フリーラジカルを含むナノバブル含有水は、強い酸化力を示すことになる。したがって上記構成によれば、フリーラジカルの作用によって、有機物などを酸化分解することができる。
【0176】
上述した気液混合循環ポンプ5、第1気体せん断部6、第2気体せん断部8および第3気体せん断部12などの具体的な構成としては特に限定しないが、例えば市販のものを用いることが可能である。例えば、株式会社 協和機設社製のバビダスHYK型を用いることが可能であるが、これに限定されない。
〔第2実施形態〕
本発明の他の実施形態(第2実施形態)について図2に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0177】
本実施形態の水処理装置では、第1実施形態の水処理装置におけるガス吸着部18に備えられているプラスチック充填材22を、リング型ポリ塩化ビニリデン57に置き換えている。この点のみが、第1実施形態の水処理装置と異なっている。第1実施形態の水処理装置と同じ部分については、同じ符号を付けて詳細説明を省略する。第1実施形態の水処理装置と異なる部分のみ以下に説明する。
【0178】
本実施形態の水処理装置では、ガス吸着部18において、微細活性炭33がリング型ポリ塩化ビニリデン57に付着している。リング型ポリ塩化ビニリデン57は、繊維状であり表面積が多いため、多量の微細活性炭33を付着させることができる。その結果、分解物ガス63を効率よく吸着処理することができる。
【0179】
また、リング型ポリ塩化ビニリデン57は、微生物の固定化担体として利用される充填材であるため、本実施形態において、リング型ポリ塩化ビニリデン57に微生物を繁殖させ、分解物ガス63をさらに分解することもできる。
〔第3実施形態〕
本発明の他の実施形態(第3実施形態)について図3に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0180】
本実施形態の水処理装置では、第1実施形態の水処理装置におけるガス吸着部18に備えられているプラスチック充填材22を、網状ブロック(網状シート)61に置き換えている。この点のみが、第1実施形態の水処理装置と異なっている。第1実施形態の水処理装置と同じ部分については、同じ符号を付けて詳細説明を省略する。第1実施形態の水処理装置と異なる部分のみ以下に説明する。
【0181】
本実施形態の水処理装置では、ガス吸着部18において、微細活性炭33が網状ブロック61に付着している。網状ブロック61は、表面積が多いため、多量の微細活性炭33を付着させることができる。その結果、分解物ガス63を効率よく吸着処理することができる。また、網状ブロック61は、網状の構造であるため、微細活性炭33が付着しても分解物ガス63の通り道を塞ぐことがなく、閉塞現象が起こらない。従って、分解物ガス63をガス吸着部18において効率よく上昇させ、排気煙突25から排気して除去することができる。
〔第4実施形態〕
本発明の他の実施形態(第4実施形態)について図4に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0182】
本実施形態の水処理装置は、第1実施形態の水処理装置における第2のピット水槽56と配管で接続された活性炭吸着塔58を備えている。この点のみが、第1実施形態の水処理装置と異なっている。第1実施形態の水処理装置と同じ部分については、同じ符号を付けて詳細説明を省略する。第1実施形態の水処理装置と異なる部分のみ以下に説明する。
【0183】
本実施形態の水処理装置では、第2のピット水槽56内の被処理水は、ポンプ54により汲み上げられ、活性炭吸着塔58に移送される。
【0184】
活性炭吸着塔58では、被処理水中の微量に残存している有機フッ素化合物を吸着処理している。これにより、被処理中の有機フッ素化合物を高度に処理することができる。なお、活性炭吸着塔58から放出された被処理水は、水槽59へと移送されたのち、処理(済)水として外へ放出される。
【0185】
活性炭吸着塔58に充填される活性炭としては、特に限定されないが、例えば水処理用活性炭であるクラレコールGW(クラレケミカル株式会社製)等が挙げられる。
〔第5実施形態〕
本発明の他の実施形態(第5実施形態)について図5に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0186】
本実施形態の水処理装置は、第1実施形態の水処理装置における第2のピット水槽56と配管で接続されたイオン交換樹脂塔60を備えている。この点のみが、第1実施形態の水処理装置と異なっている。第1実施形態の水処理装置と同じ部分については、同じ符号を付けて詳細説明を省略する。第1実施形態の水処理装置と異なる部分のみ以下に説明する。
【0187】
本実施形態の水処理装置では、第2のピット水槽56内の被処理水は、ポンプ54により汲み上げられ、イオン交換樹脂塔60に移送される。イオン交換樹脂塔60においては、被処理水中においてイオンとなっている有機フッ素化合物を選択的にイオン交換して、処理することができる。これにより、被処理中の有機フッ素化合物を高度に処理することができる。イオン交換樹脂塔60は、イオン化している有機フッ素化合物を容易に処理することができる。例えば、パーフルオロオクタンスルホン酸は液相中において溶解してイオンとなっており、本実施形態の水処理装置によって容易に処理することができる。イオン交換樹脂塔60から放出された被処理水は、水槽59へと移送されたのち、処理(済)水として外へ放出される。
【0188】
イオン交換樹脂塔60に充填されるイオン交換樹脂としては、特に限定されないが、例えばダイヤイオン(三菱化学株式会社製)等が挙げられる。
〔第6実施形態〕
本発明の他の実施形態(第6実施形態)について図6に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0189】
本実施形態の水処理装置では、第1実施形態の水処理装置におけるガス吸着部18に備えられているプラスチック充填材22がない構成となっている。この点のみが、第1実施形態の水処理装置と異なっている。第1実施形態の水処理装置と同じ部分については、同じ符号を付けて詳細説明を省略する。第1実施形態の水処理装置と異なる部分のみ以下に説明する。
【0190】
本実施形態の水処理装置では、ガス吸着部18に充填材が備えられていないため、ガス吸着部18内において、逆洗水とともに散水される微細活性炭33は、散水されている状態にて分解物ガス63の吸着処理を行っている。
【0191】
本実施形態の水処理装置では、ガス吸着部18に充填材が備えられていないため、イニシャルコストを低くすることができる。被処理水に含まれる有機フッ素化合物等の被分解物質の濃度が低い場合には、本実施形態の水処理装置が用いられることが好ましい。
【実施例】
【0192】
本発明の第1実施形態に基づき、水処理装置となる連続式実験装置を作製した。
【0193】
本実施例における水処理装置について、図1を参照して以下に説明する。
【0194】
原水槽2の容量は0.5m、ナノバブル発生水槽15の容量は0.1m、分解吸着槽20の上部におけるガス吸着部18の容量は約1.0m、分解吸着槽20の下部における分解部19の容量は約0.7m、第1のピット水槽40の容量は0.1m、急速ろ過機44の容量は0.2m、第2のピット水槽56の容量は0.1mとした。
【0195】
ナノバブル発生水槽15には、ナノバブル発生機16として、気液混合循環ポンプ5が3.7kWの出力を有する電動機により構成されている、株式会社 協和機設社製のバビダスHYK型を用いた。
【0196】
分解部19には、活性炭31として水処理用活性炭(液相用)である「クラレコールGW(登録商標)」(クラレケミカル株式会社製)を、分解部19の容量あたり0.3(cm/cm)添加した。分解部19における散気管36からの曝気空気量は、水槽容量あたり50m/時間/mとした。従って、本実施例における水処理装置を作動させると、分解部19において活性炭31が曝気され破砕されて微細活性炭33となり、当該微細活性炭33はガス吸着部18に供給された。
【0197】
ガス吸着部18には、プラスチック充填材22としてポリエチレン製S−II型(月島環境エンジニアリング株式会社製)を充填した。ガス吸着部18の容量におけるプラスチック充填材22の充填率は40%とした。
【0198】
原水槽2には、30ppbの濃度のPFOSを含む有機フッ素化合物含有水を導入した。
【0199】
本実施例における水処理装置を作動させた後、12日目の原水槽2および第2のピット水槽56それぞれに貯められている被処理水について、PFOSの濃度、総フッ素濃度、および硫酸イオン濃度を測定した。また、排気ガス26について、PFOSの濃度を測定し、分解物の定性試験を行った。
【0200】
なお、被処理水中に存在するPFOSの濃度は、LC/MS/MS(液体クロマトグラフ−タンデム型質量分析計)によって測定した。また、排気ガス26について行ったPFOSの濃度測定、および分解物の定性試験は、GC−MS(ガスクロマトグラフィー質量分析)によって行った。
【0201】
本実施例の結果を表1および表2に示す。表1は、原水槽2および第2のピット水槽56それぞれに貯められている被処理水におけるPFOSの濃度、総フッ素濃度、および硫酸イオン濃度を示しており、表2は、排気ガス26における、PFOSの濃度、および分解物の定性試験の結果を示している。
【0202】
【表1】

【0203】
【表2】

【0204】
表1および表2から、以下のa)〜e)が明らかになった。
【0205】
a)第2のピット水槽56におけるPFOSの濃度は、原水槽2に比べて明らかに低かったことから、被処理水中のPFOSが分解されたことが明らかになった。PFOSの除去率は91%であった。
【0206】
b)第2のピット水槽56における総フッ素量は、原水槽2に比べて明らかに低かったことから、PFOSの分解物はガス化して、分解部19からガス吸着部18へと移送していることが明らかになった。
【0207】
c)第2のピット水槽56において硫酸イオンが検出されたことから、被処理水中のPFOSが分解され、その分解物の一部として硫酸イオンが遊離されたことが明らかになった。
【0208】
d)排気ガス26においてPFOSが高濃度にては検出されていないので、PFOSは、単に霧状(ミスト)になって気相中に飛散したのではないことが明らかになった。
【0209】
e)排気ガス26において、パーフルオロカーボン(CF(CFH、n=3、4、5、6)等の分解物が検出されなかったので、ガス化したPFOSの分解物は、ガス吸着部18において微細活性炭33に吸着されたことが明らかになった。
【0210】
なお、本実施例の比較例として、分解部19に活性炭31を添加していない水処理装置を作製した。本比較例の水処理装置においては、分解部19に活性炭31が添加されていないので、微細活性炭33が生成されず、従ってガス吸着部18に微細活性炭33が供給されない。本比較例の水処理装置において、分解部19に活性炭31が添加されていない点、および活性炭31から微細活性炭33が生成され、ガス吸着部18に供給されない点以外は本実施例と同じ構成であるので、詳細な説明を省略する。
【0211】
本比較例の結果を表3および表4に示す。表3は、水処理装置の作動後12日目の原水槽2および第2のピット水槽56それぞれに貯められている被処理水におけるPFOSの濃度、総フッ素濃度、および硫酸イオン濃度を示しており、表4は、排気ガス26における、PFOSの濃度、および分解物の定性試験の結果を示している。
【0212】
【表3】

【0213】
【表4】

【0214】
表3および表4から、以下のa)〜e)が明らかになった。
【0215】
a)第2のピット水槽56におけるPFOSの濃度は、原水槽2に比べて低かったことから、活性炭31がなくても、すなわちナノバブルのみでも、被処理水中のPFOSが分解されたことが明らかになった。PFOSの除去率は76%であった。
【0216】
b)第2のピット水槽56における総フッ素量は、原水槽2に比べて明らかに低かったことから、活性炭31がなくても、すなわちナノバブルのみでも、PFOSの分解物はガス化して、分解部19からガス吸着部18へと移送していることが明らかになった。
【0217】
c)第2のピット水槽56において硫酸イオンが検出されたことから、被処理水中のPFOSが分解され、その分解物の一部として硫酸イオンが遊離されたことが明らかになった。
【0218】
d)排気ガス26においてPFOSが高濃度にては検出されていないので、PFOSは、単に霧状(ミスト)になって気相中に飛散したのではないことが明らかになった。
【0219】
e)排気ガス26において、C5、C6、C7、C8のパーフルオロカーボン等の分解物が検出されたことから、ガス化したPFOSの分解物は、ガス吸着部18において吸着されなかったことが明らかになった。
【0220】
実施例と比較例との比較から、本実施形態に係る水処理装置において、分解部19に活性炭31を添加することにより、被処理水中のPFOSの除去率が増加することが明らかになった。また、活性炭31を曝気によって破砕して微細活性炭33を生成し、さらにその微細活性炭33をガス吸着部18に供給することにより、ガス化したPFOSの分解物が効率よく吸着されることが明らかになった。
【0221】
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0222】
本発明は、工業用水、農業用水、生活用水等の用水処理装置および工業排水、農業排水、生活排水等の排水処理装置を製造する分野に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0223】
【図1】本発明における水処理装置の実施の一形態(第1実施形態)を示す模式図である。
【図2】本発明における水処理装置の実施の一形態(第2実施形態)を示す模式図である。
【図3】本発明における水処理装置の実施の一形態(第3実施形態)を示す模式図である。
【図4】本発明における水処理装置の実施の一形態(第4実施形態)を示す模式図である。
【図5】本発明における水処理装置の実施の一形態(第5実施形態)を示す模式図である。
【図6】本発明における水処理装置の実施の一形態(第6実施形態)を示す模式図である。
【符号の説明】
【0224】
2 原水槽
4 第1配管
5 気液混合循環ポンプ
6 第1気体せん断部
7 第2配管
8 第2気体せん断部
9 第4配管
10 第3配管
11 電動ニードルバルブ(気体量調節手段)
12 第3気体せん断部
15 ナノバブル発生水槽
16 ナノバブル発生機(ナノバブル発生手段)
17 オーバーフロー水配管(被処理水移送手段)
18 ガス吸着部
19 分解部
20 分解吸着槽
22 プラスチック充填材
24 散水配管(微細活性炭移送手段)
30 ナノバブル
31 活性炭
32 越流板
33 微細活性炭
34 側壁(側面)
36 散気管(曝気手段)
40 第1のピット水槽
44 急速ろ過機
46 配管(微細活性炭移送手段)
53 急速ろ過機逆洗ポンプ(逆洗手段)
56 第2のピット水槽
57 リング型ポリ塩化ビニリデン
58 活性炭吸着塔
60 イオン交換樹脂塔
61 網状ブロック(網状シート)
64 排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水中にナノバブルを発生させるナノバブル発生手段と、
上記ナノバブルを含んでいる上記被処理水を貯める分解部、および、上記分解部から発生する気体が導入される空間であり、微細活性炭が入れられているガス吸着部により構成される分解吸着槽と、
上記分解部に貯められている上記被処理水を曝気する曝気手段と
を備えていることを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
上記被処理水は有機フッ素化合物を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
上記分解部には活性炭が入れられており、
上記微細活性炭は、上記活性炭が上記曝気手段により曝気され破砕されることによって生じた微細活性炭であることを特徴とする請求項1または2に記載の水処理装置。
【請求項4】
上記分解部の被処理水をろ過する急速ろ過機と、
上記急速ろ過機において分離された上記微細活性炭を上記ガス吸着部に移送する微細活性炭移送手段と
をさらに備えていることを特徴とする請求項3に記載の水処理装置。
【請求項5】
上記急速ろ過機を逆洗するための逆洗手段をさらに備えており、
上記微細活性炭移送手段は、上記逆洗手段が流出させる逆洗水によって、上記急速ろ過機において分離された上記微細活性炭をガス吸着部に移送することを特徴とする請求項4に記載の水処理装置。
【請求項6】
上記微細活性炭移送手段は、上記逆洗水中に含まれる破過した上記微細活性炭を除去するための自動弁をさらに備えていることを特徴とする請求項5に記載の水処理装置。
【請求項7】
上記急速ろ過機は、上記微細活性炭を堆積させるための空間を有していることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項8】
上記分解部は、
水平方向の断面積が上部ほど大きくなるように傾斜した側面と、
上記側面に設けられた排出口と、
上記微細活性炭よりも大きい活性炭が当該排出口から流出しないように設けられた越流板と
を備えていることを特徴とする請求項3〜7のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項9】
上記ガス吸着部は、上記微細活性炭を付着させるための充填材を備えていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項10】
上記充填材がプラスチックからなることを特徴とする請求項9に記載の水処理装置。
【請求項11】
上記充填材がリング型ポリ塩化ビニリデンからなることを特徴とする請求項10に記載の水処理装置。
【請求項12】
上記充填材が網状シートであることを特徴とする請求項9または10に記載の水処理装置。
【請求項13】
上記被処理水を貯めるナノバブル発生水槽と、
上記被処理水を上記ナノバブル発生水槽から上記分解吸着槽に移送する被処理水移送手段と
をさらに備えており、
上記ナノバブル発生手段は、上記ナノバブル発生水槽に貯められている上記被処理水中に上記ナノバブルを発生させることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項14】
上記ナノバブル発生手段は、
液体と気体とを混合およびせん断してマイクロバブル含有水を作製する第1気体せん断部と、
上記マイクロバブル含有水をさらにせん断してナノバブル含有水を作製する第2気体せん断部と、
上記ナノバブル含有水をさらにせん断して多量のナノバブルを含むナノバブル含有水を作製する第3気体せん断部と
を備えていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項15】
上記第1気体せん断部の内部の横断面は、楕円形または真円形であり、
上記第1気体せん断部の内部表面には、2本以上の溝が設けられていることを特徴とする請求項14に記載の水処理装置。
【請求項16】
上記溝の深さは、0.3mm〜0.6mmであり、
上記溝の幅は、0.8mm以下であることを特徴とする請求項14に記載の水処理装置。
【請求項17】
上記第1気体せん断部では、第1配管を介して液体が供給されるとともに、第2配管を介して上記マイクロバブル含有水が吐出され、
上記第1配管の内腔の横断面の面積は、上記第2配管の内腔の横断面の面積よりも大きいことを特徴とする請求項14〜16のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項18】
上記ナノバブル発生手段は、
上記第1気体せん断部に液体を供給し、液体および気体を混合および循環させる気液混合循環ポンプと、
上記第1気体せん断部に気体を供給する第3配管と、
上記第1気体せん断部に供給される気体の量を調節する気体量調節手段と
をさらに備えていることを特徴とする請求項14〜17のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項19】
上記気体量調節手段は、上記第1気体せん断部に対して1.2リットル/分以下にて上記気体を供給することを特徴とする請求項18に記載の水処理装置。
【請求項20】
上記第1気体せん断部への上記気体の取り込みは、上記気液混合循環ポンプの出力が最大値に達した時点以降に行われることを特徴とする請求項18または19に記載の水処理装置。
【請求項21】
上記第1気体せん断部への上記気体の取り込みは、上記気液混合循環ポンプの動作開始時から60秒後以降に行われることを特徴とする請求項18または19に記載の水処理装置。
【請求項22】
上記第3配管は、上記第1気体せん断部の内側面に対して18度の角度をなすように、上記第1気体せん断部に接続されていることを特徴とする請求項18〜21のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項23】
上記第1気体せん断部の隔壁の厚さは、6mm〜12mmであることを特徴とする請求項14〜22のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項24】
上記急速ろ過機においてろ過された上記被処理水を吸着処理する活性炭吸着塔活性炭吸着塔をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜23のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項25】
上記急速ろ過機においてろ過された上記被処理水を吸着処理するイオン交換樹脂塔をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜24のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項26】
上記微細活性炭は、粒径の平均が0.2mm以下であることを特徴とする請求項1〜25のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項27】
有機フッ素化合物を含む被処理水を処理する水処理方法であって、
上記被処理水には、ナノバブルおよび活性炭が添加され、
ナノバブルが有する酸化力と、活性炭が有する吸着作用とにより、上記有機フッ素化合物を分解および吸着処理することを特徴とする水処理方法。
【請求項28】
上記有機フッ素化合物が、パーフルオロオクタンスルホン酸、パーフルオロオクタン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸フルオリド、およびパーフルオロオクタンスルホン酸フルオリド誘導体からなる群より選ばれる一種以上の有機フッ素化合物であることを特徴とする請求項27に記載の水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−46648(P2010−46648A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215911(P2008−215911)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】