説明

水分散型粘着シート

【課題】 優れた粗面接着性及び保持性を有する水分散型粘着シートを得る。
【解決手段】 水分散型粘着シートは、アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸エステルを主単量体成分とする室温粘着性の水分散型アクリル系粘着剤により粘着剤層が形成された水分散型粘着シートであって、固形分中の溶剤不溶分が20重量%以下の水分散型アクリル系粘着剤を基材上に塗布して粘着剤層を形成し、水蒸発工程終了時における粘着剤層中の溶剤不溶分が20重量%以下となるように水蒸発を行い、その後該粘着剤層を架橋させることにより得られる。上記水分散型アクリル系粘着剤は乳化重合により調製できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分散型の粘着シート、さらに詳細には、室温粘着性の水分散型アクリル系粘着剤により粘着剤層が形成された水分散型粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
水分散型のアクリル系粘着剤を用いた粘着シートは、溶剤を用いないため、環境衛生上望ましく、耐溶剤性の点でも優れるなどの利点を有している。しかし、その一方で、溶剤型の粘着剤を用いた粘着シートと比較した場合、粗面接着性と保持性の2つの性能を両立できないという欠点を有していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の目的は、水分散型のアクリル系粘着剤を用いた粘着シートであって、優れた粗面接着性と保持性とを併せ持つ水分散型粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意検討した結果、粘着剤層を形成するために用いる水分散型のアクリル系粘着剤の固形分に占める溶剤不溶分、及び該粘着剤を基材に塗布し乾燥させたときの塗膜(粘着剤層)中の溶剤不溶分を一定の値以下に制御すると、溶剤型粘着剤と比較して同等以上の優れた粗面接着性及び保持性が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、(メタ)アクリル酸エステルを主単量体成分とする室温粘着性の水分散型アクリル系粘着剤により粘着剤層が形成された水分散型粘着シートであって、固形分中の溶剤不溶分が20重量%以下の水分散型アクリル系粘着剤を基材上に塗布して粘着剤層を形成し、水蒸発工程終了時における粘着剤層の溶剤不溶分が20重量%以下となるように水蒸発を行い、その後該粘着剤層を架橋させて得られる水分散型粘着シートを提供する。前記水分散型粘着シートでは、水分散型アクリル系粘着剤に、ポリイソシアネート、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、金属酸化物、金属過酸化物、金属塩、金属水酸化物、カルボキシル基含有ポリマー、酸無水物、ポリアミンから選択される架橋剤が添加されていることが好ましい。また、前記水分散型粘着シートでは、粒度280番の研磨紙に対する粗面接着力が80gf/20mm幅以上であって、保持力(垂下したフェノール樹脂板に10mm×20mmの接着面積で貼り付け、自由端に600gの均一加重を負荷した際の80℃での落下時間)が120分を超えることが好ましい。さらに、前記水分散型粘着シートでは、架橋後の粘着剤層中の溶剤不溶分が、25〜70重量であることが好ましく、特に架橋後の粘着剤層中の溶剤不溶分が、30〜50重量%であることが好ましい。
【0006】
なお、本明細書において、「溶剤不溶分」とは、所定量(約500mg)の試料を精秤し(そのうち固形分の重量をW1mgとする)、これを酢酸エチル中に室温で3日間浸漬した後、不溶の固体を濾過し、100℃で2時間乾燥させて重量(W2mg)を測定し、下記式に従って算出したものである。
溶剤不溶分(重量%)=(W2/W1)×100。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、水分散型のアクリル系共重合体を用いるので、環境衛生上望ましいだけでなく、水分散型であるにもかかわらず、粗面接着性と保持性の2つの特性を両立できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明において、粘着シートの粘着剤層を構成するアクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル酸エステルを主単量体成分とするアクリル系共重合体からなる。前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、一般式(1)
CH2=C(R1)COOR2 (1)
(式中、R1は水素原子又はメチル基、R2は炭素数2〜14のアルキル基を示す)
で表される化合物が挙げられる。
【0009】
前記R2として、例えば、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、イソアミル基、ヘキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基などが例示できる。これらの(メタ)アクリル酸エステルは単独でまたは2種以上混合して使用できる。
【0010】
前記アクリル系共重合体は、後架橋するための架橋点を導入したり、被着体への接着力を向上させたり、粘着剤の凝集力を高めたりするため、コモノマーとして適量の官能基含有単量体やその他の共重合性単量体を用いることができる。
【0011】
前記官能基含有単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、無水マレイン酸などのカルボキシル基含有単量体又はその酸無水物;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチルなどの水酸基含有単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有単量体;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有単量体;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのグリシジル基含有単量体;(メタ)アクリロイルプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルプロピルジメトキシシラン、(メタ)アクリロイルプロピルトリエトキシシランなどの多官能性アルコキシシラン;(メタ)アクリロニトリル、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニル−2−ピロリドンなどが挙げられる。これらの官能基含有単量体は1種または2種以上使用することができる。
【0012】
前記その他の共重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル:酢酸ビニルなどのビニルエステル類;スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;シクロペンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどの環式アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類などが挙げられる。これらの共重合性単量体も1種または2種以上使用できる。
【0013】
本発明では粘着剤として水分散型のアクリル系粘着剤を用いる。水分散型アクリル系粘着剤は、前記(メタ)アクリル酸エステル、官能基含有単量体、その他の共重合性単量体を含む単量体混合物を慣用の乳化重合に付すことにより得ることができる。重合方法としては、一般的な一括重合、連続滴下重合、分割滴下重合などを採用でき、重合温度は、例えば20〜100℃程度である。
【0014】
重合に用いる重合開始剤としては、例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2′−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2′−アゾビス(N,N′−ジメチレンイソブチルアミジン)などのアゾ系開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどの過酸化物系開始剤;過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムなどのレドックス系開始剤などが挙げられる。重合開始剤の使用量は、モノマーの総量100重量部に対して、例えば0.005〜1重量部程度である。
【0015】
また、重合には連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としては、慣用の連鎖移動剤、例えば、ドデカンチオール等のメルカプタン類等が例示できる。連鎖移動剤の使用量は、モノマーの総量100重量部に対して、例えば0.001〜0.5重量部程度である。
【0016】
また、乳化剤として、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウムなどのアニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどのノニオン系乳化剤などを使用できる。これらの乳化剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。乳化剤の使用量は、モノマーの総量100重量部に対して、例えば0.2〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部程度である。
【0017】
水分散型アクリル系粘着剤は、上記方法のほか、前記アクリル系共重合体を乳化重合以外の方法で得た後、乳化剤により水に分散させて調製してもよい。
【0018】
また、本発明では、粘着剤を基材上に塗布して形成した塗膜を架橋させるため、多くの場合、前記水分散型アクリル系粘着剤に架橋剤を添加する。該架橋剤としては、前記コモノマーとして用いる官能基含有単量体の種類などに応じ、慣用の架橋剤、例えば、ポリイソシアネート、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、金属(過)酸化物、金属塩、金属水酸化物、カルボキシル基含有ポリマー、酸無水物、ポリアミンなどの中から適宜選択して使用できる。また、水蒸発工程後、UV(紫外線)架橋法やEB(電子線)架橋法等により粘着剤層を架橋させる場合には、例えば、トリメチロールプロパンアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートなどの多官能性アクリレート等を架橋剤として使用することもできる。また、UV架橋法を採用する場合、前記水分散型アクリル系粘着剤に、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類、ベンジルアルキルケタール類、ベンゾインエーテル類などの光反応開始剤を添加してもよい。
【0019】
水分散型アクリル系粘着剤には、その他、必要に応じて、pHを調整するための塩基(アンモニア水など)や酸、粘着剤に通常使用される添加剤、例えば、粘着付与樹脂、界面活性剤、老化防止剤、充填剤、顔料、着色剤などが添加されていてもよい。
【0020】
本発明の重要な特徴は、固形分中の溶剤不溶分が20重量%以下の水分散型アクリル系粘着剤を基材上に塗布して粘着剤層を形成し、水蒸発工程終了時における粘着剤層中の溶剤不溶分が20重量%以下となるように水蒸発を行い、その後該粘着剤層を架橋させる点にある。
【0021】
水分散型アクリル系粘着剤における固形分中の溶剤不溶分は、重合条件、例えば、反応温度、反応時間、モノマー組成、重合開始剤の種類及び使用量、連鎖移動剤の種類及び使用量などを適宜選択することにより調整できる。前記溶剤不溶分は、好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは12重量%以下である。
【0022】
基材としては、例えば、ポリプロピレンフィルム、エチレン−プロピレン共重合体フィルム、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルなどのプラスチックフィルム;クラフト紙などの紙;金属箔などを使用できる。前記プラスチックフィルムは、無延伸フィルム及び延伸(一軸延伸又は二軸延伸)フィルムの何れであってもよい。また、基材のうち粘着剤を塗布する面には、通常使用される下塗剤やコロナ放電方式などによる表面処理が施されていてもよい。基材の厚みは、目的に応じて適宜選択できるが、一般には10〜500μm程度である。
【0023】
水分散型アクリル系粘着剤の塗布は、慣用のコーター、例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーターなどを用いて行うことができる。前記粘着剤は、乾燥(水蒸発)後の粘着剤層の厚みが、例えば10〜100μm程度となるように塗布される。
【0024】
水蒸発工程終了時における粘着剤層中の溶剤不溶分を20重量%以下に抑制する方法としては、例えば、(i)前記アクリル系粘着剤に熱架橋を起こす架橋剤を実質的に添加することなく基材に塗布した後、水蒸発(乾燥)を行い、その後、UV架橋法やEB架橋法により架橋させる方法、(ii)前記アクリル系粘着剤に熱架橋を起こす架橋剤を添加するが、水蒸発を実質的に架橋を起こさせない温度、又は架橋速度の遅い温度で行い、次いで架橋が進行する温度で架橋させる方法等が挙げられる。
【0025】
水蒸発工程終了時における粘着剤層中の溶剤不溶分は、好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは12重量%以下である。
【0026】
水蒸発工程後の架橋は、慣用の方法、例えば、熱架橋法、UV架橋法、EB架橋法などにより行うことができる。架橋後の粘着剤層中の溶剤不溶分は、粘着性等を損なわない範囲で選択できるが、一般には25〜70重量%程度、好ましくは30〜50重量%程度である。
【0027】
本発明では、水分散型のアクリル系粘着剤を用いているにもかかわらず、粗面に対する接着力が良好で且つ保持性能にも優れる。このような効果が奏される詳細な理由は明らかでないが、水が蒸発し水分散型粘着剤の粒子同士が融着する際、溶剤不溶分を低く抑えることで粒子がより融着しやすくなることに起因するものと推測される。
【実施例】
【0028】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、「部」は、特に断りがない限り重量基準である。
【0029】
実施例1
冷却管、窒素導入管、温度計及び攪拌機を備えた反応容器に、アクリル酸ブチル98部、アクリル酸2部、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド(開始剤)0.1部、ドデカンチオール(連鎖移動剤)0.03部を、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸アンモニウム(乳化剤)2部を添加した水100部に加えて乳化重合したのち、10重量%アンモニウム水を添加してpH8に調整した。得られた水分散型アクリル系粘着剤の固形分中の溶剤不溶分は0重量%であった。この粘着剤を厚さ40μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに塗布し、120℃で3分乾燥(水蒸発)させて厚さ50μmの粘着剤層を設けた。その後、EBを3Mrad照射することによって架橋させ、粘着シートを得た。乾燥終了時の粘着剤層の溶剤不溶分は0重量%、架橋後の粘着剤層の溶剤不溶分は40重量%であった。
【0030】
実施例2
実施例1と同様の反応容器に、アクリル酸ブチル98部、アクリル酸2部、2,2′−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド(開始剤)0.1部、ドデカンチオール(連鎖移動剤)0.01部を、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸アンモニウム(乳化剤)2部を添加した水100部に加えて乳化重合したのち、10重量%アンモニウム水を添加してpH8に調整した。得られた水分散型アクリル系粘着剤の固形分中の溶剤不溶分は10重量%であった。この粘着剤を厚さ40μmのPETフィルムに塗布し、120℃で3分乾燥(水蒸発)させて厚さ50μmの粘着剤層を設けた。その後、EBを2.7Mrad照射することによって架橋させ、粘着シートを得た。乾燥終了時の粘着剤層の溶剤不溶分は10重量%、架橋後の粘着剤層の溶剤不溶分は40重量%であった。
【0031】
実施例3
実施例1と同様にして得られた水分散型アクリル系粘着剤に、ブロックイソシアネート型架橋剤(商品名:コロネート2513、日本ポリウレタン工業株式会社製)を4部添加し、これを厚さ40μmのPETフィルムに塗布し、80℃で3分乾燥(水蒸発)させて厚さ50μmの粘着剤層を設けた。その後、150℃で3分間熱処理することによって架橋させ、厚さ50μmの粘着剤層を有する粘着シートを得た。乾燥終了時の粘着剤層の溶剤不溶分は5重量%、架橋後の粘着剤層の溶剤不溶分は40重量%であった。
【0032】
比較例1
実施例1と同様にして得られた水分散型アクリル系粘着剤に、ブロックイソシアネート型架橋剤(商品名:コロネート2513、日本ポリウレタン工業株式会社製)を4部添加し、これを厚さ40μmのPETフィルムに塗布し、150℃で3分乾燥させて厚さ50μmの粘着剤層を有する粘着シートを得た。この時の粘着剤層の溶剤不溶分は40重量%であった。
【0033】
比較例2
実施例1と同様にして得られた水分散型アクリル系粘着剤に、エポキシ型架橋剤(商品名:テトラッド−C、三菱瓦斯化学株式会社製)を0.1部添加し、これを厚さ40μmのPETフィルムに塗布し、80℃で3分乾燥(水蒸発)させて厚さ50μmの粘着剤層を設けた。その後、130℃で3分間熱処理することによって架橋させ、厚さ50μmの粘着剤層を有する粘着シートを得た。乾燥終了時の粘着剤層の溶剤不溶分は30重量%、架橋後の粘着剤層の溶剤不溶分は40重量%であった。
【0034】
比較例3
実施例1と同様にして得られた水分散型アクリル系粘着剤に、エポキシ型架橋剤(商品名:テトラッド−C、三菱瓦斯化学株式会社製)を0.05部添加し、これを厚さ40μmのPETフィルムに塗布し、130℃で3分乾燥させて厚さ50μmの粘着剤層を有する粘着シートを得た。この時の粘着剤層の溶剤不溶分は25重量%であった。
【0035】
比較例4
実施例1と同様の反応容器に、アクリル酸ブチル98部、アクリル酸2部、過硫酸アンモニウム(開始剤)0.1部、ドデカンチオール(連鎖移動剤)0.03部を、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸アンモニウム(乳化剤)2部を添加した水100部に加えて乳化重合したのち、10重量%アンモニウム水を添加してpH8に調整した。得られた水分散型アクリル系粘着剤の固形分中の溶剤不溶分は30重量%であった。この粘着剤を厚さ40μmのPETフィルムに塗布し、120℃で3分乾燥して厚さ50μmの粘着剤層を設けた。その後、EBを1Mrad照射することによって架橋させ、粘着シートを得た。この時の粘着剤層の溶剤不溶分は40重量%であった。
【0036】
評価試験
実施例及び比較例で得た粘着シートについて次の特性を調べた。
(粗面接着力)
幅20mm、長さ100mmの大きさの粘着シートを粒度280番の研磨紙に2kgのゴムローラを1往復させる方法にて圧着し、23℃下に20分放置後、23℃、65%RH雰囲気中にて剥離に要する力を測定した(180度ピール、剥離速度300mm/分)。
【0037】
(保持力試験)
幅10mmの粘着シートをフェノール樹脂板に対し10mm×20mmの接着面積で貼り付け、20分経過後80℃下で20分放置した後、フェノール樹脂板を垂下し、粘着テープの自由端に600gの均一荷重を負荷して、80℃での粘着シートの落下時間(落下するまでに要した時間)を測定した。
結果を表1に示す。
【0038】
【表1】

表1の結果より、実施例1〜3の粘着シートは粗面接着力及び保持力の何れの特性も優れていることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステルを主単量体成分とする室温粘着性の水分散型アクリル系粘着剤により粘着剤層が形成された水分散型粘着シートであって、固形分中の溶剤不溶分が20重量%以下の水分散型アクリル系粘着剤を基材上に塗布して粘着剤層を形成し、水蒸発工程終了時における粘着剤層の溶剤不溶分が20重量%以下となるように水蒸発を行い、その後該粘着剤層を架橋させて得られる水分散型粘着シート。
【請求項2】
水分散型アクリル系粘着剤に、ポリイソシアネート、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、金属酸化物、金属過酸化物、金属塩、金属水酸化物、カルボキシル基含有ポリマー、酸無水物、ポリアミンから選択される架橋剤が添加されている請求項1記載の水分散型粘着シート。
【請求項3】
粒度280番の研磨紙に対する粗面接着力が80gf/20mm幅以上であって、保持力(垂下したフェノール樹脂板に10mm×20mmの接着面積で貼り付け、自由端に600gの均一加重を負荷した際の80℃での落下時間)が120分を超える請求項1又は2記載の水分散型粘着シート。
【請求項4】
架橋後の粘着剤層中の溶剤不溶分が、25〜70重量%である請求項1〜3の何れかの項に記載の水分散型粘着シート。
【請求項5】
架橋後の粘着剤層中の溶剤不溶分が、30〜50重量%である請求項1〜4の何れかの項に記載の水分散型粘着シート。

【公開番号】特開2009−7577(P2009−7577A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204819(P2008−204819)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【分割の表示】特願平10−296717の分割
【原出願日】平成10年10月19日(1998.10.19)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】