説明

水切り乾燥方法および水切り乾燥システム

【課題】本発明は、煩雑な水切り溶剤の組成管理を必要とせず、かつ水切り性に優れた水切り乾燥方法、および水切り乾燥システムの提供を目的とする。
【解決手段】特定の条件を満たすハイドロフルオロカーボンおよびハイドロフルオロエーテルからなる群から選ばれる1種以上のフッ素系溶剤(A)を含む沸騰状態の水切り溶剤に、水またはアルコール水が付着した物品を浸漬させて該物品に付着した水分を蒸発させ、該物品を乾燥させる水切り乾燥工程を有する水切り乾燥方法。また、該水切り乾燥方法に使用する水切り乾燥システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水切り乾燥方法および水切り乾燥システムに関する。
【背景技術】
【0002】
精密機械工業、光学機械工業、電気電子工業、プラスチック工業等の分野では、レンズ、液晶表示装置部品、電子部品、精密機械部品等の物品を、メッキ工程、研磨工程等において水洗したり、水系や準水系洗浄剤で洗浄した後に、水リンスすることがある。しかし、水洗または水リンス後の物品に水が残留すると、次工程において水に起因する支障が生じる場合が多い。また、物品に残留した水によってシミが発生すると製品の外観が低下するうえ、そのシミによる次工程での接着不良や溶接不良、錆の発生等が起こって製品の品質が低下することがある。水の残留によりシミが一旦できると洗浄等で除去することは難しい。以上のことから、前記分野では物品の水洗または水リンス後、物品から水分を分離して乾燥する水切り乾燥が行われる。
【0003】
水切り乾燥方法としては、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコールからなる水切り溶剤を浸漬槽に収容し、該水切り溶剤中に水が付着した物品を浸漬して該物品から水を分離させ、該物品を引き上げて乾燥させる方法が知られている。しかし、該方法は、アルコールが引火点を有するために防爆対策が必要である。また、水切り乾燥を続けると、アルコールに水分が混入することにより、アルコールへの水の溶解力が低下し、水切り性が低下する。アルコール中の水分濃度の管理には、別途蒸留等の操作が必要となるが、その操作は煩雑である。
【0004】
また、前記水切り溶剤として、フッ素系溶剤にアルコールおよび界面活性剤を添加した水切り溶剤を使用する方法が知られている。前記フッ素系溶剤としては、クロロフルオロカーボン(CFC)、パーフルオロカーボン(PFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロフルオロエーテル(HFE)等が使用される。該方法では、フッ素系溶剤にアルコールおよび界面活性剤を添加することで水切り溶剤と水との親和性を高めており、それにより物品に付着した水を溶解して分離する効果を高めている。
これらの中で、CFC類およびHCFC類は、塩素原子を含有するためにオゾン破壊係数(ODP)を有していることから、CFC類は1995年に生産終了、HCFC類も段階的に使用が制限・廃止されつつある。PFC類は塩素を含有しないために地球のオゾン層を破壊せず、モントリオール議定書の下での段階的な廃止は実施されていない。しかし、PFC類は化学的安定性が高く、大気中における寿命が長いために、高い地球温暖化ポテンシャル(GWP)を有するとみなされており、その使用は徐々に制限されている。塩素系溶剤は大気中の寿命は短いが、地下水中および土壌中では分解に長期間を要するため、水質汚濁防止法、土壌汚染対策法等で排水基準が定められている。また、揮発性有機化合物(VOC)として、大気への放出量も制限されているため、塩素系溶剤の使用時には、漏洩や大気放出のための対策が必要となる。
また、前記方法は、物品の水切りを連続して実施すると、水切り溶剤中の水の量が増大するために水の溶解性が低下して水切り性が乏しくなる。また、水の量がフッ素系溶剤の飽和溶解度を超えると、溶解しきれない水によって水切り溶剤が懸濁するため、引き上げた物品に水が付着して水切り性が低下する。特に、短時間で水切りを行う目的で超音波、揺動、噴流等で強制的に水切り溶剤を撹拌する場合等に水切り溶剤が懸濁しやすい。
【0005】
そこで、前記方法では、水切り溶剤の懸濁を解消するために、浸漬槽の液面付近の水切り溶剤をオーバーフローにより水分離槽に送る方法が採用されている。水切り溶剤に溶解しない水は、比重の差から水切り溶剤の液面に浮上し、オーバーフローによって液面付近のフッ素系溶剤とともに水分離槽に送られる。水分離槽では、比重の差を利用してフッ素系溶剤層と水層に分離され、分離したフッ素系溶剤層が水切り溶剤として浸漬槽に導入される。具体的には、例えば、以下に示す方法(i)が挙げられる。
(i)浸漬槽にて水切り溶剤に物品を浸漬して水切り乾燥する工程と、浸漬槽からオーバーフローした水切り溶剤を水分離槽にて比重を利用して二層分離する工程と、分離したフッ素系溶剤層をコアレッサ式のフィルタでろ過し、残存する水を更に分離する工程と、ろ過後のフッ素系溶剤層を水切り溶剤として浸漬槽に導入する工程とを有する水切り乾燥方法(特許文献1)。
【0006】
しかし、方法(i)では、浸漬槽に導入されるフッ素系溶剤層には飽和量の水分が含まれているため、浸漬槽中の水切り溶剤の液温が低下して飽和水分濃度が低下すると懸濁状態となるおそれがある。また、水切り溶剤に添加するアルコールおよび界面活性剤は、フッ素系溶剤よりも水との親和性が高いことが多く、水切りにおいて混入した水に抽出されやすい。そのため、水切り乾燥を連続して実施すると水切り溶剤中のアルコールおよび界面活性剤の量が減少する。アルコールおよび界面活性剤が減少すると水切り性が低下するので、水切り乾燥を連続して実施する場合はアルコールおよび界面活性剤を随時添加する必要がある。一方、アルコールを添加しすぎると水切り溶剤が引火組成になるおそれがあるので、水切り溶剤の組成は厳密に管理される。このような水切り溶剤の組成管理は、溶剤の比重、沸点の変動を基にして行われ、操作が煩雑である。
また、界面活性剤を添加した水切り溶剤による物品の水切りにおいては、界面活性剤によって、物品から水が剥離されて除去されるが、その後、物品への界面活性剤の残留を避けるために、さらに界面活性剤を除去するためのすすぎ洗浄が必要となる。
【0007】
一方、水切り乾燥方法としては、水切り溶剤を沸騰させた沸騰液を使用する方法も知られている。例えば、以下に示す方法(ii)および方法(iii)が挙げられる。
(ii)PFCからなる水切り溶剤中に物品を浸漬し、該溶剤に超音波振動を与えて物品に付着した水を分離する工程と、前記水切り溶剤から引き上げた物品を、PFCからなる水切り溶剤を沸騰させた沸騰液中に浸漬し、物品から残余の水分を分離する工程と、前記沸騰液から引き上げた物品を該沸騰液の蒸気中で乾燥させる工程と、前記蒸気を回収して循環させる工程とを有する水切り乾燥方法(特許文献2)。
(iii)安定剤および界面活性剤を含有する5〜50℃の塩素系有機溶剤、安定剤を含有する塩素系有機溶剤の沸騰液、および安定剤を含有する5〜50℃の塩素系有機溶剤に物品を順次浸漬する工程と、引き上げた物品を塩素系有機溶剤の蒸気中で乾燥する工程とを有する水切り乾燥方法(特許文献3)。
【0008】
方法(ii)および方法(iii)では、沸騰していない水切り溶剤に物品を浸漬して水をある程度分離した後に、沸騰液に物品を浸漬し、沸騰によって生じる液の対流によって残余の水分を分離する。しかし、沸騰した液の対流だけでは、物品に付着した水を充分に分離できない。そのため、方法(ii)および方法(iii)では、物品を沸騰液に浸漬する前に、沸点未満の水切り溶剤に浸漬する必要があり、沸点未満の水切り溶剤の組成管理等、方法(i)と同様の問題がある。
【0009】
また、水切り乾燥方法としては、前記方法の他にも、以下に示す方法(iv)および方法(v)が示されている。
(iv)水切り溶剤に物品を浸漬した状態で、該物品に向けて、加圧過加熱された水切り溶剤を噴射し、その衝突力と形成される乱流によって物品に付着した水を除去する水切り乾燥方法(特許文献4)。
(v)水が付着した物品を1価アルコール水ですすいだ後、PFCの蒸気中で乾燥する方法。1価アルコール水は、アルコール濃度が60質量%未満であれば消防法で規制されない。
【0010】
しかし、方法(iv)では、物品の形状によっては加圧過加熱されて噴出された溶剤が物品全体に接触せず、充分に水切りできないおそれがある。また、方法(iv)は、水による水切り溶剤の懸濁を解消するために、浸漬槽の液面付近の水切り溶剤をオーバーフローして水分離槽に送る必要があるので、方法(i)と同様の問題がある。
また、方法(v)では、1価アルコール水ですすぐことで物品に付着している水の量が半減する。しかし、蒸気中で物品の水切りを行う方法では、物品が蒸気と同じ温度になって該蒸気の物品表面での凝縮が終了した時点で、それ以上水切りが行われなくなる。そのため、特に熱容量の小さな物品では、充分な水切りが困難である。
また、物品の水切りでは、水切り後の物品の濡れ性等の表面状態の変化を抑えることも重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2005/079943号
【特許文献2】特開平5−114594号公報
【特許文献3】特開平3−114501号公報
【特許文献4】特開2004−249250号公報
【特許文献5】特開平4−300689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、煩雑な水切り溶剤の組成管理を必要とせず、かつ水切り性に優れ、水切り後の物品の濡れ性等の表面状態の変化が制えられた水切り乾燥方法、および水切り乾燥システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。
[1]下記条件(a1)〜(a3)を満たすハイドロフルオロカーボンおよびハイドロフルオロエーテルからなる群から選ばれる1種以上のフッ素系溶剤(A)を含む沸騰状態の水切り溶剤に、水またはアルコール水が付着した物品を浸漬させて該物品に付着した水分を蒸発させ、該物品を乾燥させる水切り乾燥工程を有する水切り乾燥方法。
(a1)沸点が100℃以上である。
(a2)25℃における飽和水分濃度が10質量ppm以上である。
(a3)下記水分蒸発量試験における留出液中の水分濃度が1.7質量%以上である。
(水分蒸発量試験)
フッ素系溶剤に水分濃度3質量%となるように水を加えた液500gを、留出液が150mL得られる時点まで単蒸留し、釜残液中の水分量をメスシリンダーを使用して測定し、下式により留出液の水分濃度P(質量%)を算出する。
P=(W−W)/W×100
ただし、前記式中、Wは単蒸留前の水分量(g)、Wは釜残液の水分量(g)、Wは留出液の質量(g)である。
[2]前記水切り乾燥工程で発生する蒸気を冷却して凝縮し、その凝縮液を、比重の違いによりフッ素系溶剤層と水層の二層に分離し、該フッ素系溶剤層を前記水切り溶剤として前記水切り乾燥工程に導入する溶剤再生工程を有する前記[1]に記載の水切り乾燥方法。
[3]前記フッ素系溶剤(A)が1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロオクタンである前記[1]または[2]に記載の水切り乾燥方法。
[4]前記フッ素系溶剤(A)が、2−トリフルオロメチル−3−エトキシドデカフルオロヘキサンおよび1−メチル−2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチル(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル)エーテルの少なくとも一方である前記[1]または[2]に記載の水切り乾燥方法。
【0014】
[5]前記[1]に記載の水切り乾燥方法により、水またはアルコール水が付着した物品を水切り乾燥する水切り乾燥システムであって、
前記水切り溶剤を収容する浸漬槽と、該浸漬槽に収容された水切り溶剤を加熱して沸騰させる加熱手段とを有する水切り乾燥部を有する水切り乾燥システム。
[6]前記水切り乾燥部が、前記水切り溶剤の沸騰により発生する蒸気を冷却する冷却コイルを有し、かつ、
前記水切り乾燥部から、前記蒸気の冷却による凝縮液を導出し、該凝縮液から前記前記水切り溶剤を再生して前記浸漬槽に導入する溶剤再生部を有する前記[5]に記載の水切り乾燥システム。
【発明の効果】
【0015】
本発明の水切り乾燥方法によれば、煩雑な水切り溶剤の組成管理を行わなくてもよく、優れた水切り性で物品の水切りを実施でき、水切り後の物品の濡れ性等の表面状態の変化が制えられる。
また、本発明の水切り乾燥システムは、煩雑な水切り溶剤の組成管理を必要とせず、水が付着した物品の水切り性が優れ、水切り後の物品の濡れ性等の表面状態の変化が制えられる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の水切り乾燥システムの一例を示した模式図である。
【図2】比較例1で使用した水切り乾燥システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[水切り乾燥システム]
本発明の水切り乾燥システムは、本発明の水切り乾燥方法を実施して、水またはアルコール水が付着した物品からそれらを分離して乾燥するシステムである。なお、本発明書において、水切りとは、水が付着した物品から水を除去することを意味し、いわゆる水切り乾燥、脱水、乾燥といった様態を含む。本発明の水切り乾燥システムは、例えば、精密機械工業等の分野において、物品を水洗や水リンスした場合、アルコール水ですすいだ場合等、物品に付着した水またはアルコール水を該物品から除去する際に使用する。本明細書中では、水およびアルコール水をまとめて水分ということがある。
以下、本発明の水切り乾燥システムの一例を示して詳細に説明する。本実施形態の水切り乾燥システム1は、図1に示すように、水切り乾燥部10と溶剤再生部20を有する。
【0018】
水切り乾燥部10は、物品の水切り乾燥を行う部分である。水切り乾燥部10は、水切り溶剤を収容する浸漬槽11と、浸漬槽11に収容された水切り溶剤を加熱して沸騰させる加熱手段12と、水切り溶剤の沸騰により生じた蒸気を冷却する冷却コイル13とを有している。
水切り乾燥部10の下部が、上部が開放状態の浸漬槽11から構成されている。また、水切り乾燥部10の上部の内周壁に冷却コイル13が設けられ、さらに冷却コイル13により蒸気を冷却して凝縮した凝縮液が集められる樋14が設けられている。
浸漬槽11には、水切り溶剤31が収容されている。
【0019】
浸漬槽11は、沸騰状態の水切り溶剤31に、水分が付着した物品を浸漬する槽である。浸漬槽11では、加熱手段12により水切り溶剤31を加熱して沸騰させる。加熱手段12としては、電気ヒータ等が挙げられる。
浸漬槽11における水切り溶剤31の沸騰により発生した蒸気は、冷却コイル13により冷却される。これにより、蒸気が水切り乾燥部10の外部に拡散することが抑制されており、水切り乾燥部10内に蒸気ゾーン10Aが形成される。蒸気ゾーン10Aの高さは、水切り乾燥に適用する物品の大きさや形状、および物品の引き上げ速度によっても異なるが、水切り溶剤31から引き上げた物品が蒸気ゾーン10Aを通過する間に、該物品によって引き上げられた水切り溶剤31が物品から充分に液切りされる程度の高さであればよい。
冷却コイル13により冷却されて凝縮した凝縮液は、後述する水分離槽21に送られるようになっている。
【0020】
溶剤再生部20は、水切り乾燥部10における物品の水切り乾燥により、水が混入した水切り溶剤31の蒸気の凝縮液を導出し、該凝縮液から水切り溶剤31を再生して浸漬槽11に導入する部分である。
溶剤再生部20は、水分離槽21を有している。水分離槽21は、導出管22によって水切り乾燥部10の上部の樋14と連結されており、水切り溶剤31の蒸気を冷却した凝縮液が水切り乾燥部10から導出されて流入するようになっている。また、水分離槽21と浸漬槽11が導入管23で連結されている。
水分離槽21は、比重分離法により水切り溶剤から水を分離する槽であり、水切り乾燥部10から流入してきた凝縮液を静置して、比重の違いにより、下層のフッ素系溶剤層(α)と上層の水層(β)とに二層分離するようになっている。また、水分離槽21では、フッ素系溶剤層(α)を導出できるように、水分離槽21の底部に導出管23の上流端が開口しており、フッ素系溶剤層(α)が浸漬槽11に導入されるようになっている。
導出管22および導入管23における送液は、ポンプ等の送液手段により行える。
【0021】
水切り溶剤31は、下記条件(a1)〜(a3)を満たすハイドロフルオロカーボン(HFC)およびハイドロフルオロエーテル(HFE)からなる群から選ばれる1種以上のフッ素系溶剤(A)を含む溶剤である。
(a1)沸点が100℃以上である。
(a2)25℃における飽和水分濃度が10質量ppm以上である。
(a3)下記水分蒸発量試験における留出液中の水分濃度が1.7質量%以上である。
(水分蒸発量試験)
フッ素系溶剤に水分濃度3質量%となるように水を加えた液500gを、留出液が150mL得られる時点まで単蒸留し、釜残液中の水分量をメスシリンダーを使用して測定し、下式により留出液の水分濃度P(質量%)を算出する。
P=(W−W)/W×100
ただし、前記式中、Wは単蒸留前の水分量(g)、Wは釜残液の水分量(g)、Wは留出液の質量(g)である。
【0022】
水分蒸発量試験では、釜残液が比重の差から水とフッ素系溶剤とに分離するので、分離した水の量をメスシリンダーで測定することで釜残液中の水分量を測定できる。
【0023】
フッ素系溶剤(A)の沸点は、水切り性の点から、100℃以上であり、110℃以上が好ましい。また、フッ素系溶剤(A)の沸点は、物品への熱影響、および急激に水が蒸発する際の衝撃による物品への損傷を防ぐ点から、150℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましい。
【0024】
フッ素系溶剤(A)の25℃における飽和水分濃度は、水切り性の点から、10質量ppm以上であり、30質量ppm以上が好ましい。フッ素系溶剤の25℃における飽和水分濃度は、例えば、カールフィッシャー水分計により測定される。
【0025】
フッ素系溶剤(A)の水分蒸発量試験における留出液中の水分濃度は、下限値以上であれば、物品の浸漬によって浸漬槽に混入した水を浸漬槽から速やかに除去でき、浸漬槽の水切り性を安定して維持できる。なお、留出液中の水分濃度が高いほど、浸漬槽の水分割合が低く保たれるため、より好ましい。
また、フッ素系溶剤(A)は、取り扱い性の点から、常温で液体状態であることが好ましい。また、フッ素系溶剤(A)は、難燃性または不燃性であるものが好ましい。
【0026】
HFCは、C(ただし、nは3以上の整数、pは1以上の整数、qは1以上の整数であり、p+q=2n+2またはp+q=2nである。)で表される化合物である。p+q=2n+2の場合は脂肪族HFCであり、p+q=2nの場合は脂環族HFCである。
【0027】
条件(a1)〜(a3)を満たすHFCとしては、例えば、前記式におけるnが7〜12の化合物が挙げられる。
また、前記式(1)におけるフッ素原子の数(p)は、難燃性、不燃性の点から、n+1以上が好ましく、n+3以上がより好ましい。
【0028】
HFCとしては、脂肪族HFCが好ましく、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロオクタン(沸点:115℃、融点:−68℃、25℃における飽和水分濃度50質量ppm)が特に好ましい。市販品としては、例えば、商品名「アサヒクリンAC−6000」(旭硝子株式会社製)が挙げられる。
HFCは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
条件(a1)〜(a3)を満たすHFEとしては、下式(1)で表される化合物が好ましい。
−O−R (1)
(ただし、式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立にアルキル基または含フッ素アルキル基であり、RおよびRの少なくとも一方が含フッ素アルキル基である。また、RおよびRに含まれる水素原子の数の合計は1個以上であり、かつRおよびRに含まれる炭素原子の数の合計は7〜10である。)
【0030】
前記含フッ素アルキル基とは、アルキル基の水素原子の1個以上がフッ素原子に置換された基である。
およびRに含まれる炭素原子の数の合計は、7〜10が好ましい。
HFEとしては、難燃性、不燃性の点から、前記式(1)のRおよびRに含まれる炭素原子の数の合計をmとしたとき、RおよびRに含まれるフッ素原子の数の合計がm+1以上の化合物が好ましく、m+3以上の化合物がより好ましい。
【0031】
HFEとしては、前記式(1)におけるRおよびRがともに部分フッ素化アルキル基である化合物が好ましく、2−トリフルオロメチル−3−エトキシドデカフルオロヘキサン(沸点:130℃、融点:−100℃、25℃における飽和水分濃度45質量ppm)、1−メチル−2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチル(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル)エーテル(CFCFHCFCH(CH)−O−CFCFHCF、沸点:131℃、25℃における飽和水分濃度410質量ppm)がより好ましい。前記部分フッ素化アルキル基とは、水素原子を1個以上有する含フッ素アルキル基である。
HFEの市販品としては、例えば、商品名「Novec HFE−7500」、「Novec HFE−7600」(以上、3M株式会社製)が挙げられる。
HFEは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
フッ素系溶剤(A)は、前記HFC、HFEに加えて、下式(2)で表されるPFPE(パーフルオロポリエーテル)および下式(3)で表されるHFPE(ハイドロフルオロポリエーテル)のうち、条件(a1)〜(a3)を満たす化合物を含んでもよい。
CF−(OCF(CF)CF−(OCF−(OCF) (2)
HFO−(OC−(OCF−OCFH (3)
(ただし、前記式中、a〜dは整数であり、a+bは2以上であり、c+dは3以上である。)
【0033】
PFPEの重量平均分子量は、500〜700が好ましい。また、HFPEの重量平均分子量は、460〜580が好ましい。
前記式(2)で表されるPFPEの市販品としては、例えば、商品名「ガルデンHT110」(沸点:110℃、融点:−100℃、25℃における飽和水分濃度14質量ppm)、「ガルデンHT135」(沸点:135℃、融点:−100℃、25℃における飽和水分濃度14質量ppm)が挙げられる。
前記式(3)で表されるHFPEの市販品としては、例えば、商品名「H−ガルデン ZV100」(ソルヴェイソレクシス社製、沸点:100℃、25℃における飽和水分濃度100質量ppm)が挙げられる。
PFPEおよびHFPEは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
フッ素系溶剤(A)としては、水切り性の点から、前記したもののなかでもHFC、HFEが好ましく、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロオクタン、2−トリフルオロメチル−3−エトキシドデカフルオロヘキサン、1−メチル−2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチル(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル)エーテルがより好ましい。
【0035】
フッ素系溶剤(A)は、1種の溶剤からなっていてもよく、2種以上の溶剤からなっていてもよい。フッ素系溶剤(A)が2種以上の溶剤からなる場合、それらの溶剤は共沸組成または共沸様組成を有することが好ましい。前記共沸様組成とは、真の共沸点を有さないが、その蒸気組成と液体組成がほぼ同一で、蒸発、凝縮を繰り返した後の組成変化が無視できる程度にしか変化しない組成物をいう。本発明においては、蒸発、凝縮を繰り返した後の組成変化が±3質量%以内の組成物を意味する。
【0036】
本発明においては、フッ素系溶剤(A)として、HFCまたはHFEのいずれか一方を使用することがより好ましく、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロオクタンの単独使用、2−トリフルオロメチル−3−エトキシドデカフルオロヘキサンの単独使用、1−メチル−2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチル(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル)エーテルの単独使用、2−トリフルオロメチル−3−エトキシドデカフルオロヘキサンおよび1−メチル−2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチル(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル)エーテルの併用が特に好ましい。
【0037】
水切り溶剤31は、フッ素系溶剤(A)の他に、フッ素系溶剤(A)の沸点における飽和濃度以下の水分が含まれていてもよい。本実施形態のように溶剤再生部20で水切り溶剤31を再生して連続使用する場合、後述するように、物品から除去された水分が飽和濃度以下の割合で含まれる。
【0038】
[水切り乾燥方法]
以下、本発明の水切り乾燥方法の一例として、前記水切り乾燥システム1を使用した水切り乾燥方法について説明する。
水切り乾燥方法を適用できる物品としては、例えば、プリント基板、フープ剤関係、液晶表示器、磁気記録部品、半導体材料、クロック用水晶、磁気記録部品、光電変換部品等の電子部品、モーター部品、ロボット部品等の電機部品、ベアリング、時計等の精密機械部品、光学レンズ、プリズム、ポリゴンミラー、光学フィルター等の光学部品、超硬チップ等の加工用精密機械部品等、様々な物品が挙げられる。
これらの物品を構成する基材の材質としては、例えば、鉄、ステンレス、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、銀、銅、銅合金、錫、硫酸アルマイト等の金属、および、銅、亜鉛、ニッケル、クロム、金で材料表面をめっき処理した金属、炭素、ケイ素、タングステン、ニッケル、チタン、モリブデン、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等を焼結させた焼結金属材料、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキサイド、フェノール樹脂、ナイロン6、ナイロン66、PTFE樹脂、PCTFE樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン、不飽和ポリエステル樹脂のようなプラスチック材料や、ポリフェニレンサルファイド、ポリブチレンテレフタレート、エチレンテレフタレートとパラヒドロキシ安息香酸との重縮合体、フェノールおよびフタル酸とパラヒドロキシ安息香酸との重縮合体、2,6−ヒドロキシナフトエ酸とパラヒドロキシ安息香酸との重縮合体等の高分子材料のうち、使用するフッ素系溶剤の沸点での耐熱性があるもの、ガラスが挙げられる。
使用する水切り溶剤31は、これらの物品への影響が少ない。
【0039】
本発明の水切り乾燥方法には、水が付着した物品と、アルコール水が付着した物品の両方を適用できる。つまり、本発明の水切り乾燥方法には、水切り乾燥の前工程でアルコール水ですすいだ物品を適用してもよい。水洗または水リンス後の物品をアルコール水ですすぐと、物品に付着している水の量が減少するため、水切り乾燥に要する時間が短縮される。
アルコール水に使用するアルコールとしては、アリルアルコール、アルカノール等が挙げられる。なかでも、炭素数1〜3のアルカノールが好ましく、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールが特に好ましい。これらアルコールは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
アルコール水のアルコール濃度は、消防法の規制を受けない点から、60質量%未満が好ましく、フッ素系溶剤からのアルコールの除去しやすさの点から、30質量%以下がより好ましい。また、アルコール水のアルコール濃度は、水切り時間の短縮の点から、25質量%以上が好ましい。水洗または水リンス後の物品を、アルコール濃度が25〜30質量%のアルコール水によりすすぐと、物品に付着している水分量は1/2〜1/3(質量比)となる。
【0041】
また、物品に付着している水分の温度、つまり水洗または水リンス時の水の温度またはすすぎ時のアルコール水の温度は、常温以上かつ沸点よりも10℃低い温度以下であることが好ましく、沸点から20℃低い温度以上かつ沸点から10℃低い温度以下であることがより好ましい。前記水分の温度が上限値以下であれば、水分が水切り乾燥を実施する前に蒸発して物品にシミが生じることを抑制しやすい。前記水分の温度が下限値以上であれば、水切り乾燥時に水分を蒸発させやすく、水切り時間をより短縮できる。
【0042】
本実施形態の水切り乾燥方法は、下記工程を有する。
水切り乾燥工程:フッ素系溶剤(A)を含む沸騰状態の水切り溶剤31に、水またはアルコール水が付着した物品を浸漬させて該物品に付着した水を蒸発させ、該物品を乾燥させる工程。
溶剤再生工程:前記水切り乾燥工程で発生する蒸気を冷却して凝縮し、その凝縮液を、比重の違いによりフッ素系溶剤層と水層の二層に分離し、該フッ素系溶剤層を前記水切り溶剤として前記水切り乾燥工程に導入する工程。
【0043】
水切り乾燥工程:
水切り乾燥部10において、加熱手段12により浸漬槽11の水切り溶剤31を沸点まで加熱して沸騰状態とする。そして、水またはアルコール水が付着した物品を、浸漬槽11の上方から沸騰状態の水切り溶剤31中に浸漬する。これにより、物品表面に付着した水分が、水切り溶剤31と共に蒸発して物品から分離される。また、物品にアルコール水が付着している場合、アルコール成分は水切り溶剤31に溶解することによっても物品から分離される。
前記水切り溶剤31の沸点とは、水切り溶剤31が2種以上のフッ素系溶剤(A)を含む共沸組成または共沸様組成である場合はその共沸点である。また、水切り溶剤31が2種以上のフッ素系溶剤(A)を含み、共沸組成も共沸様組成も有さない場合は、沸騰している方の溶剤の沸点が水切り溶剤31の沸点である。また、水切り溶剤31が1種のフッ素系溶剤(A)を含む場合は該フッ素系溶剤(A)の沸点が水切り溶剤31の沸点である。
【0044】
水切り溶剤31の沸騰状態は、水分の蒸発量が多くなり水切り性が向上する点から、水切り溶剤31の蒸発量がより多い状態が好ましい。
水切り溶剤31への物品の浸漬時間は、30秒〜10分間が好ましい。浸漬時間が下限値以上であれば、水切り性が向上する。浸漬時間が上限値以下であれば、生産性が向上する。
【0045】
また、浸漬槽11における沸騰状態の水切り溶剤31に含まれる水分濃度は、沸点における飽和水分濃度以下に保つことが好ましく、沸点における飽和水分濃度の90%以下が好ましい。これにより、浸漬した物品を引き上げる際に物品に水が再付着することを抑制しやすくなり、また水分溶解量がより多くなり、水切り性が向上する。浸漬槽11の水切り溶剤31の水分量は、単位時間当たりにおいて、水切り乾燥部10から導出される水分量を水切り乾燥部10に導入される水分量と同等以上とすることで、沸点における飽和水分濃度以下に調節できる。
本実施形態では、後述するように、凝縮液を水分離槽21で比重分離して得たフッ素系溶剤層(α)を浸漬槽に導入する。該フッ素系溶剤層(α)には、凝縮液の比重分離を行う温度での飽和濃度の水分が含まれる。しかし、凝縮液の比重分離を行う温度は水切り溶剤31の沸点よりも低い温度である。フッ素系溶剤(A)の水分の飽和濃度は一般に温度が高いほど高いので、水切り乾燥部10に導入される水分量は水切り乾燥部10から導出される水分量よりも少なく、浸漬槽11における水切り溶剤31の水分量は沸点における飽和水分濃度以下に保たれる。
【0046】
物品を浸漬槽11の沸騰した水切り溶剤31に浸漬して水分を分離した後、水切り溶剤31から物品を引き上げて乾燥させる。水切り溶剤31から引き上げた物品の乾燥は、水切り乾燥10の蒸気ゾーン10Aで水切り溶剤31の蒸気を通過させた後に冷却コイル13に囲まれた部分で行うことが好ましい。物品を該蒸気と接触させることにより、物品の温度が水切り溶剤の沸点で保たれ、この間に物品によって引き上げられた水切り溶剤31の液切りを行うことによって、水切り溶剤の持ち出しを最小限に抑えられる。また、蒸気ゾーン10A中での液切りによって物品に付着した水切り溶剤が減少することで、冷却コイル13で囲まれた部分での物品の乾燥が容易になる。また、物品を蒸気と接触させ物品の温度を沸点温度に保つことは、以下の効果も奏する。水切り溶剤が物品の表面から揮発する際には、蒸発潜熱により物品の表面温度が低下する。物品の表面温度が周囲の温度よりも下がると、空気中の水分が物品表面に結露したり、蒸発するまでの間に物品表面に付着している水切り溶剤が雰囲気中の水分を吸収したりすることで、乾燥シミが生じるおそれがある。しかし、物品を蒸気に接触させることで、該蒸気の温度まで物品が温められ、乾燥時に表面温度の低下が抑制されるので、物品の水切り乾燥における仕上がりの品質が向上する。
【0047】
溶剤再生工程:
水切り乾燥部10において蒸気が冷却コイル13で冷却された凝縮液には、物品から分離した水分が含まれている。溶剤再生工程では、該凝縮液から水分を分離し、水切り溶剤を再生して水切り乾燥部10の浸漬槽11に導入する。
水切り乾燥部10の樋14に集められた凝縮液は、導出管22を通じて導出され、水分離槽21に流入する。フッ素系溶剤(A)は水よりも比重が大きく、水はフッ素系溶剤(A)にわずかしか溶解しない。そのため、水分離槽21において凝縮液を静置することで、比重の差から下層のフッ素系溶剤(α)と上層の水層(β)に二層分離できる。
【0048】
水分離槽21における液温T(℃)は、水切り溶剤31の沸点Tbよりも低い温度であり、凝縮液の比重分離を容易かつ迅速に行う点から、水切り溶剤31の沸点Tbよりも10℃低い温度以上が好ましく、該沸点Tbよりも5℃低い温度以上が好ましい。つまり、水分離槽21における液温Tは、Tb−10≦T<Tbとすることが好ましく、Tb−5≦T<Tbとすることがより好ましい。液温Tが下限値以上であれば、凝縮液が急激に冷却されて凝縮液が懸濁することを抑制しやすく、凝縮液の比重分離が容易になる。
凝縮液の静置時間は、1〜30分間が好ましい。前記静置時間は、水分離槽21に流入した凝縮液が水分離槽21内に留まっている時間である。前記静置時間は、水分離槽21内の液量を、導入管23を流れるフッ素系溶剤層(α)の流量と配管24から排出される水層(β)の流量の合計で除した値である。
【0049】
水分離槽21で分離した水層(β)は配管24から排出する。排出される水層(β)には、微量のフッ素系溶剤(A)が含まれる。また、物品にアルコール水が付着していた場合にはアルコールも含まれる。そのため、水層(β)は、蒸留、パーベーパレーション等の手段により水以外の成分を除去してから廃棄することが好ましい。また、前記手段で水層(β)から回収したフッ素系溶剤(A)は、再利用してもよい。
【0050】
水分離槽21で分離したフッ素系溶剤層(α)は、導入管23を通じて水切り溶剤として浸漬槽11に導入する。フッ素系溶剤層(α)には、水分離槽21における液温でのフッ素系溶剤(A)の飽和水分濃度の水分が含まれる。フッ素系溶剤(A)の飽和水分濃度は、一般に液温の上昇に従って高くなる。水分離槽21における液温は、浸漬槽11における沸点よりも低い。そのため、水切り溶剤として浸漬槽11に導入するフッ素系溶剤層(α)の水分濃度は、水切り溶剤の沸点における飽和水分濃度よりも低くなっている。
【0051】
物品にアルコール水が付着していた場合、凝縮液にはアルコールが含まれている。この場合、導入するフッ素系溶剤層(α)が引火組成とならないようにする必要がある。アルコールは、フッ素系溶剤よりも水への親和性が高く、その多くが水層(β)に含まれる。そのため、物品に付着しているアルコール水のアルコール濃度があまり高くない場合は、特段の設備を設けなくても、フッ素系溶剤層(α)に含まれるアルコールはわずかな量である。アルコール水のアルコール濃度が高い場合は、凝縮液に多量の水を加えて水層(β)の水量を増やすことで、アルコールの大部分を水層(β)に抽出することが好ましい。
【0052】
浸漬槽11へのフッ素系溶剤層(α)の導入量は、浸漬槽11中の水切り溶剤31の量を一定に保つために、水切り乾燥部10からの凝縮液の導出量とほぼ同等とする。
また、物品を浸漬槽11から引き上げる際に水切り溶剤の一部が水切り乾燥部10の外部に持ち出されたり、水分離槽21の水層(β)にわずかに含まれるフッ素系溶剤(A)が水層(β)と共に除かれたりすること等から、連続して水切り乾燥を行うと水切り溶剤31の量が経時的に減少することがある。この場合は、フッ素系溶剤層(α)に加えて別途用意したフッ素系溶剤(A)を浸漬槽11に導入してもよい。
【0053】
本実施形態では、前述のように浸漬槽11において蒸発した水切り溶剤31を凝縮液として回収し、水分離槽21で比重分離したフッ素系溶剤層(α)を水切り溶剤として導入して循環させる。本実施形態における水切り溶剤の循環時間は、特に限定されず、1分〜2時間が好ましく、30分〜1時間がより好ましい。前記循環時間が下限値以上であれば、水切り溶剤31の沸騰のための加熱、蒸気の凝縮のための冷却に要するエネルギーをより小さくでき、また水分離槽21での凝縮液の比重分離が容易になる。また、循環時間が上限値以下であれば、水切り溶剤31の蒸発量がより多くなることで、それに伴う水分の蒸発量も増加し、物品の水切り性が向上する。
前記循環時間は、浸漬槽11から蒸発した水切り溶剤が冷却コイル13で冷却されて凝縮され、水分離槽21での比重分離を経て、再度浸漬槽11に導入されて再び蒸発するまでにかかる時間であり、下式で定義される。
X=Y/Z
ただし、前記式中、Xは循環時間(時間)であり、Yは水切り乾燥システム1内の全液量(kg)であり、Zは導入管23を流れるフッ素系溶剤層(α)の流量(kg/時間)である。
【0054】
以上説明した本発明の水切り乾燥方法によれば、フッ素系溶剤(A)を含む沸騰状態の水切り溶剤に、水分が付着した物品を浸漬することで優れた水切り性で水切り乾燥が実施できる。特に、本発明の水切り乾燥方法によれば、形状が複雑で細かい隙間を有する物品であっても優れた水切り性が得られる。このような効果が得られる要因としては、従来の沸騰液に使用されていたPFC等の飽和水分濃度に比べてフッ素系溶剤(A)の飽和水分濃度が高く、フッ素系溶剤(A)と共に蒸発する水分量が多いため、物品から水分が分離しやすいためであると考えられる。
また、本発明の水切り乾燥方法では、フッ素系溶剤(A)を含む水切り溶剤の沸騰液を使用することで、物品に付着した水分を蒸発させて分離できる。つまり、浸漬槽の水切り溶剤に持ち込まれた水分は、蒸発により浸漬槽から除かれるため、特別な組成管理を行わなくても水切り溶剤が水分で懸濁することを抑制できる。そのため、長時間連続して安定な水切り性能を維持できる。
また、本発明の水切り乾燥方法では、水切り後の物品の濡れ性等の表面状態の変化が制えられる。
【0055】
なお、本発明の水切り乾燥方法は、前述した水切り乾燥システムを使用する方法には限定されない。例えば、導入管23に、水分を除去するコアレッサー型フィルターを設け、導入するフッ素系溶剤層(α)からさらに水分を除去する方法であってもよい。これにより、万一水分が大量に持ち込まれた場合でも、該フィルターで水分を除去することで、浸漬槽11の水切り溶剤が水分の混入により白濁することを抑制できる。また、前記水分離槽の代わりに、コアレッサ方式の濾過型水分離装置を使用して凝縮液から水分を除去し、除去後の溶剤を浸漬槽11に導入してもよい。
また、本発明の水切り乾燥方法は、溶剤再生工程を有しない方法であってもよい。例えば、溶剤再生部を有さず、浸漬槽に別途水切り溶剤を導入しながら水切り乾燥を実施する方法であってもよい。
【0056】
また、水切り溶剤31から引き上げた物品の乾燥は、前記水切り乾燥システム1のように浸漬槽11の上部に形成した蒸気ゾーン10Aで行う方法には限定されない。例えば、浸漬槽とは別に乾燥ゾーンを設け、浸漬槽の水切り溶剤から引き上げた物品を該乾燥ゾーンまで搬送して乾燥してもよい。この場合、物品表面での水の結露、溶剤の水の吸収を抑制する点から、物品の引き上げから乾燥まで、物品が常に水切り溶剤の蒸気雰囲気中にあるようにすることが好ましい。また、浸漬槽に加えて、蒸気を発生させる蒸気発生槽を設け、該蒸気発生槽で別途用意した溶剤を沸騰させた蒸気を利用してもよい。前記蒸気発生のために使用する溶剤としては、水切り乾燥部から導出した凝縮液、該凝縮液から分離したフッ素系溶剤層(α)、または浸漬槽の水切り溶剤とは別に用意したフッ素系溶剤(A)が好ましい。蒸気の発生に別途フッ素系溶剤(A)を用意する場合、該フッ素系溶剤(A)は浸漬槽の水切り溶剤に含まれるフッ素系溶剤(A)と同じ種類の溶剤であってもよく、異なる種類の溶剤であってもよい。
【実施例】
【0057】
以下、実施例および比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[フッ素系溶剤]
本実施例で使用したフッ素系溶剤を表1に示す。
留出液の水分濃度P(質量%)は、フッ素系溶剤に水分濃度3質量%となるように水を加えた液500gを、留出液が150mL得られる時点まで単蒸留し、釜残液中の水分量をメスシリンダーを使用して測定し、下式により算出した。
P=(W−W)/W×100
(ただし、前記式中、Wは単蒸留前の水分量(g)、Wは釜残液の水分量(g)、Wは留出液の質量(g)である。)
【0058】
【表1】

ただし、表1中の略号は、以下の意味を示す。
AC−6000:商品名「アサヒクリンAC−6000」(旭硝子株式会社製、HFC、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロオクタン)
FC−40:商品名「FC−40」(3M株式会社製、PFC)
PF−5080:商品名「PF−5080」(3M株式会社製、PFC)
【0059】
[測定方法]
本実施例では、浸漬槽11に導入する導入管23を流れるフッ素系溶剤層(α)の水分濃度は、カールフィッシャー水分測定器にて測定した。また、浸漬槽11に導入する導入管23を流れるフッ素系溶剤層(α)のエタノール濃度は、ガスクロマトグラフにて測定した。
【0060】
[実施例1]
図1に例示した水切り乾燥システム1により物品の水切り乾燥を行った。浸漬槽11の容量は18L、水分離槽21の容量は18Lとした。水切り溶剤としては、フッ素系溶剤(A)であるアサヒクリンAC−6000(旭硝子株式会社製、HFC)を使用した。また、水切り溶剤の循環時間は、ヒーター12の通電出力を調節して1時間とした。
ガラス板(縦5cm×横5cm)を、アルカリ洗浄剤(白水ヘンケル工業社製「シリロンHS」)0.05質量%、温度50℃の温浴中に、超音波振動を与えながら3分間浸漬した後、流水で5分間すすぎ洗浄を行った。その後、該ガラス板を液温20℃の純水に30秒間浸漬したものを物品とした。前記物品の純水からの引き上げ直後の付着水量は0.3gであった。前記水が付着した物品を、浸漬槽11の水切り溶剤中に5分間浸漬し、蒸気ゾーン10Aに引き上げて30秒間蒸気中で乾燥した。前記と同様にして、物品の浸漬が5分間隔となるように、物品の水切り乾燥を合計して10枚連続で行った。この際、浸漬槽11の水切り溶剤31に懸濁は見られなかった。
水切り乾燥後の物品の乾燥状態とシミ発生の有無を目視にて確認したところ、全ての物品が充分に乾燥されており、シミも見られず良好な外観であった。さらに、ガラス板の表面状態を確認するため、再度純水に浸漬したところ、ガラス板は均一に濡れており、表面状態に変化はなく、AC−6000の沸浴水切りによる表面状態への悪影響は見られなかった。
【0061】
[実施例2]
実施例1と同様に洗浄したガラス板(縦5cm×横5cm)を、液温80℃の純水に浸漬したものを物品とし、物品の水切り溶剤31への浸漬時間を4分間とした以外は、実施例1と同様の方法で連続して10枚の物品の水切り乾燥を実施した。浸漬槽11の水切り溶剤31に懸濁は見られなかった。
水切り乾燥後の物品の乾燥状態とシミ発生の有無を目視にて確認したところ、全ての物品が充分に乾燥されており、シミも見られず良好な外観であった。
【0062】
[実施例3]
予めよく洗浄したガラス板(縦5cm×横5cm)を、エタノール濃度が25質量%で液温20℃のエタノール水に浸漬したものを物品とし、物品の水切り溶剤31への浸漬時間を3分間とした以外は、実施例1と同様の方法で連続して10枚の物品の水切り乾燥を実施した。前記物品のエタノール水からの引き上げ直後の付着水量は0.15gであった。浸漬槽11の水切り溶剤31に懸濁は見られなかった。
水切り乾燥後の物品の乾燥状態とシミ発生の有無を目視にて確認したところ、全ての物品が充分に乾燥されており、シミも見られず良好な外観であった。
【0063】
[実施例4]
実施例1と同様に洗浄したガラス板(縦5cm×横5cm)を、エタノール濃度が25質量%で液温70℃のエタノール水に浸漬したものを物品とし、物品の水切り溶剤31への浸漬時間を3分間とし、物品の浸漬が4分間隔となるようにした以外は、実施例1と同様の方法で連続して10枚の物品の水切り乾燥を実施した。前記物品のエタノール水からの引き上げ直後の付着水量は0.15gであった。浸漬槽11の水切り溶剤31に懸濁は見られなかった。
水切り乾燥後の物品の乾燥状態とシミ発生の有無を目視にて確認したところ、全ての物品が充分に乾燥されており、シミも見られず良好な外観であった。
【0064】
[比較例1]
水切り溶剤をFC−40(3M株式会社製、PFC)とした以外は、実施例1と同様の方法で連続して10枚の物品の水切り乾燥を実施した。物品の純水からの引き上げ直後の付着水量は0.30gであった。浸漬槽11の水切り溶剤31に懸濁は見られなかった。
水切り乾燥後の物品の乾燥状態とシミ発生の有無を目視にて確認したところ、全ての物品が充分に乾燥されており、シミも見られず良好な外観であった。しかし、さらに、ガラス板の表面状態を確認するため、再度純水に浸漬したところ、ガラス板の大部分が水をはじくようになり、ガラス板の表面状態が変化していた。ガラス板の濡れ性の低下のような表面状態の変化は、次工程へ影響を及ぼす場合が多い。
【0065】
[比較例2]
水切り溶剤をPF−5080(3M株式会社製、PFC)とした以外は、実施例1と同様の方法で連続して10枚の物品の水切り乾燥を実施した。物品の純水からの引き上げ直後の付着水量は0.30gであった。浸漬槽11の水切り溶剤31に懸濁は見られなかった。
水切り乾燥後の物品の乾燥状態とシミ発生の有無を目視にて確認したところ、10枚中7枚のガラス板で、ガラス板の一部分に水が残留していた。残留していた水は、ガラス板の熱によって、10秒ほどで乾燥したが、水が乾燥した部分には、シミが見られた。
実施例1〜4および比較例1〜2の水切り性の評価を表2に示す。なお、表2における水切り性の評価は、物品10枚中、乾燥状態が良好でシミが見られなかった物品の数を示している。
【0066】
【表2】

【0067】
[実施例5]
実施例1と同様に洗浄したガラス板(縦5cm×横5cm)を、液温80℃の純水に浸漬したものを物品とした以外は、実施例1と同様の方法で100枚の物品の水切り乾燥を連続して実施した。
前記水切り乾燥において、浸漬槽11の水切り溶剤31に懸濁は見られなかった。つまり、物品から分離されることで混入した凝縮液中の水は、水分離槽21での比重分離によって水層(β)として分離され、浸漬槽11における水切り溶剤31の水分濃度は常に沸点における水切り溶剤の飽和水分濃度以下に保たれていた。よって、水切り溶剤の特別な組成管理を行わなくても連続して水切り乾燥を実施できた。
また、水切り乾燥後の物品の乾燥状態とシミ発生の有無を目視にて確認したところ、全ての物品が充分に乾燥されており、シミも見られず良好な外観であった。
【0068】
[実施例6]
実施例1と同様に洗浄したガラス板(縦5cm×横5cm)を、エタノール濃度が25質量%で液温70℃のエタノール水に浸漬したものを物品とした以外は、実施例1と同様の方法で100枚の物品の水切り乾燥を連続して実施した。
前記水切り乾燥において、浸漬槽11の水切り溶剤31に懸濁は見られなかった。つまり、物品から分離されることで混入した凝縮液中のエタノール水は、水分離槽21での比重分離によって水層(β)として分離され、浸漬槽11における水切り溶剤31の水分濃度は常に沸点における水切り溶剤の飽和水分濃度以下に保たれていた。また浸漬槽11に導入する導入管23を流れるフッ素系溶剤層(α)のエタノール濃度は0.1質量%以下であった。よって、水切り溶剤の特別な組成管理を行わなくても連続して水切り乾燥を実施できた。
また、水切り乾燥後の物品の乾燥状態とシミ発生の有無を目視にて確認したところ、全ての物品が充分に乾燥されており、シミも見られず良好な外観であった。
【0069】
[比較例3]
図2に例示した、物品を水切り溶剤に浸漬して水切りを行う浸漬槽111と、浸漬槽111からオーバーフローにより流入した水切り溶剤を比重分離する水分離槽112と、蒸気ゾーン101Aを形成するために蒸気を発生させる蒸気発生槽113とを有する水切り乾燥システム101により水切り乾燥を行った。
各槽の容量は、浸漬槽111を18L、水分離槽112を15L、蒸気発生槽113を15Lとした。また、水切り乾燥システム101には、浸漬槽111から溢れる水切り溶剤が流れ込む樋114を設け、浸漬槽111から樋114に溢れ出た水切り溶剤が水分離槽112に流入するようにした。水切り乾燥システム101の上部の内周壁には、冷却コイル115を設置し、冷却コイル115により蒸気を冷却して凝縮した凝縮液を集める樋116を設けた。樋116に集めた凝縮液は、水分離槽112に流入するようにした。
浸漬槽111には、その底部にヒータ111aと超音波振動器111bを設置した。また、水分離槽112にヒータ112aを設置し、蒸気発生槽113にヒータ113aを設置した。また、水分離槽112と浸漬槽111とを、ポンプ118を設けた配管117で連結した。
【0070】
浸漬槽111に、水切り溶剤として商品名「アサヒクリンAE−3100E」(旭硝子株式会社製、HFEとエタノールの共沸混合物、エタノール濃度5.5質量%)を満たし、ヒータ111aにより45℃に維持した。また、蒸気発生槽113にアサヒクリンAE−3100Eを満たし、ヒーター113aにより沸騰状態にして蒸気を発生させ、蒸気ゾーン101Aを形成した。
実施例1と同様に洗浄したガラス板(縦5cm×横5cm)を、液温20℃の純水に30秒間浸漬したものを物品とし、該物品を浸漬槽111の水切り溶剤に浸漬し、超音波振動器111bにより超音波を照射して1分間水切りを行った。浸漬槽111から樋114へ流れ出て水分離槽112に流入した水切り溶剤は、水分離槽112で静置して上層の水層と下層の溶剤層に分離し、該溶剤層を、ポンプ118により配管117を通じて約5L/分で浸漬槽111に導入した。水分離槽112における液温は、40℃とした。
次いで、物品を浸漬槽111の水切り溶剤から引き上げ、蒸気ゾーン101Aで30秒間乾燥した。前記と同様の方法で、浸漬間隔5分で、合計100枚の物品を連続して水切り乾燥した。
【0071】
水切り乾燥後の物品の乾燥状態としみ発生の有無を目視にて確認したところ、水切り乾燥の初期では、物品は充分に乾燥され、シミの発生は認められなかった。しかし、水切り乾燥の開始から約2時間後に、浸漬槽111内の水切り溶剤に水による懸濁が見られ初め、ほぼ同時に水切り乾燥後の物品にシミが発生するようになった。なお、この時の浸漬槽111の水切り溶剤中のエタノール濃度は、0.3質量%減少しており、エタノール濃度の減少による水切り性の低下も懸念された。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、精密機械工業、光学機械工業、電気電子工業、プラスチック工業等において、レンズ、液晶表示装置部品、電子部品、精密機械部品等の物品表面の水を分離して除去するための水切り乾燥に適用できる。
【符号の説明】
【0073】
1 水切り乾燥システム
10 水切り乾燥部
11 浸漬槽
12 加熱手段
13 冷却コイル
20 溶剤再生部
21 水分離槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記条件(a1)〜(a3)を満たすハイドロフルオロカーボンおよびハイドロフルオロエーテルからなる群から選ばれる1種以上のフッ素系溶剤(A)を含む沸騰状態の水切り溶剤に、水またはアルコール水が付着した物品を浸漬させて該物品に付着した水分を蒸発させ、該物品を乾燥させる水切り乾燥工程を有する水切り乾燥方法。
(a1)沸点が100℃以上である。
(a2)25℃における飽和水分濃度が10質量ppm以上である。
(a3)下記水分蒸発量試験における留出液中の水分濃度が1.7質量%以上である。
(水分蒸発量試験)
フッ素系溶剤に水分濃度3質量%となるように水を加えた液500gを、留出液が150mL得られる時点まで単蒸留し、釜残液中の水分量をメスシリンダーを使用して測定し、下式により留出液の水分濃度P(質量%)を算出する。
P=(W−W)/W×100
ただし、前記式中、Wは単蒸留前の水分量(g)、Wは釜残液の水分量(g)、Wは留出液の質量(g)である。
【請求項2】
前記水切り乾燥工程で発生する蒸気を冷却して凝縮し、その凝縮液を、比重の違いによりフッ素系溶剤層と水層の二層に分離し、該フッ素系溶剤層を前記水切り溶剤として前記水切り乾燥工程に導入する溶剤再生工程を有する請求項1に記載の水切り乾燥方法。
【請求項3】
前記フッ素系溶剤(A)が1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロオクタンである請求項1または2に記載の水切り乾燥方法。
【請求項4】
前記フッ素系溶剤(A)が、2−トリフルオロメチル−3−エトキシドデカフルオロヘキサンおよび1−メチル−2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチル(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル)エーテルの少なくとも一方である請求項1または2に記載の水切り乾燥方法。
【請求項5】
請求項1に記載の水切り乾燥方法により、水またはアルコール水が付着した物品を水切り乾燥する水切り乾燥システムであって、
前記水切り溶剤を収容する浸漬槽と、該浸漬槽に収容された水切り溶剤を加熱して沸騰させる加熱手段とを有する水切り乾燥部を有する水切り乾燥システム。
【請求項6】
前記水切り乾燥部が、前記水切り溶剤の沸騰により発生する蒸気を冷却する冷却コイルを有し、かつ、
前記水切り乾燥部から、前記蒸気の冷却による凝縮液を導出し、該凝縮液から前記前記水切り溶剤を再生して前記浸漬槽に導入する溶剤再生部を有する請求項5に記載の水切り乾燥システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−255353(P2011−255353A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134185(P2010−134185)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】