説明

水力発電制御システムおよびその調速機制御装置

【課題】負荷設定器側で対策を講じてモータリング現象を確実に抑制することができるようにする。
【解決手段】調速機制御装置における速度設定器および負荷設定器の双方の出力に基づいて水車のガイドベーンの開度を制御する水力発電制御システムにおいて、前記負荷設定器(65P)1の入力段に前記ガイドベーンの開度のフィードバック信号を取り込み、電力系
統への水車発電機の並入時における前記負荷設定器の出力を前記ガイドベーン開度相当とし、前記並入時における前記水車発電機のモータリング現象を抑制することを特徴とする水力発電制御システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、調速機制御装置における速度設定器および負荷設定器の双方の出力に基づいて水車のガイドベーンの開度を制御する水力発電制御システムおよびその調速機制御装置に関し、特に電力系統への並入時に発生する水車発電機のモータリング現象の抑制に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水力発電制御システムによる水車発電機の回転速度および出力の制御は周知のように調速機制御装置により行われている。
調速機制御装置は周知のとおり、ガイドベーン開度を制御するアクチュエータに対して、水車またはポンプ水車の回転速度およびガイドベーン開度の各フィードバック信号を利用した制御量を出力して、水車発電機の回転速度および出力を制御する装置である。
【0003】
従来の水力発電制御システムにおける調速機制御装置の負荷設定器(65P)は、図8に
示すように、その入力側には、負荷設定器(65P)の出力をゼロ「0」とするゼロ「0」
指令、負荷設定器(65P)の出力を上げる指令「上げ指令」、負荷設定器(65P)の出力を下げる指令「下げ指令」が、それぞれ直接与えられる。
【0004】
従来の水力発電制御システムによる動作は、動作タイムチャートは図9に示すようになる。
この図9に示すように、従来の水力発電制御システムでは、電力系統への水車発電機の並入時に、電力系統から水車発電機へ電力が供給される所謂モータリング現象が発生する場合がある。
電力系統への水車発電機並入(電力系統と水車発電機とが並列接続)後は、中央給電所、制御所、配電盤、等からの自動調整機能または運転員による人為的操作による調速機制御装置の負荷設定器(65P)の出力である増減指令によって負荷が調整されるが、従来の制御システムでは、前記並入時の負荷設定器(65P)の出力は0から開始されてため、並入時の電力系統への水車発電機の同期投入時には、負荷設定器(65P)とガイドベーン開度には負の偏差が生じ、この時に揃速減指令が与えられて速度設定器(65F)が低い位置の場合には前記並入後の定格回転速度を維持するためのガイドベーン開度も不足して、即ち水車のトルクが不足して、前述の電力系統から水車発電機へ電力が供給される所謂モータリング現象が従来の水力発電制御システムでは発生する場合がある。
【0005】
前述のようなモータリング現象を抑制する一つ方策として、発電機を電力系統に並入する時点で決める調速機制御装置の速度設定手段による発電機出力周波数設定値を、前記並入直後の一定時間、補正手段により補正して電力系統の周波数に一致させる調速方法がある。(特許文献1を参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−41991号公報(要約、図1及びその説明)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の制御システムでは、前記並入時の負荷設定器(65P)の出力は0から開始されて
ため、並入時の電力系統への水車発電機の同期投入時には、負荷設定器(65P)とガイド
ベーン開度には負の偏差が生じ、この時に同期のための揃速制御指令が与えられることか
ら、負荷設定器(65P)の出力が低い場合には前記並入後の定格回転速度を維持するため
のガイドベーン開度も不足して、即ち水車のトルクが不足して、前述の電力系統から水車発電機へ電力が供給される所謂モータリング現象が従来の制御システムでは発生する場合がある。
また、特許文献1のように、モータリング現象を抑制する一つ方策として、発電機を電力系統に並入する時点で決める調速機制御装置の速度設定手段による発電機出力周波数設定値を、前記並入直後の一定時間、補正手段により補正して電力系統の周波数に一致させる調速方法がある。
特許文献1の調速方法を使用しない従来の水力発電制御システムではモータリング現象が発生する場合があり、特許文献1では調速機制御装置の速度設定手段による発電機出力周波数設定値を、前記並入直後の一定時間、補正手段により補正するため、補正手段として、切り替えスイッチ、補正装置が使用される。
ここで、周波数設定値を補正するための切り替えスイッチ、補正装置を使用することなく、負荷設定器(65P)側で対策を講じてモータリング現象を確実に抑制することができ
るようにすることも必要である。
【0008】
この発明は、前述のような実情に鑑みてなされたもので、負荷設定器側で対策を講じてモータリング現象を確実に抑制することができるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る水力発電制御システムは、調速機制御装置における速度設定器および負荷設定器の双方の出力に基づいて水車のガイドベーンの開度を制御する水力発電制御システムにおいて、前記負荷設定器の入力段に前記ガイドベーンの開度のフィードバック信号を取り込み、電力系統への水車発電機の並入時における前記負荷設定器の出力を前記ガイドベーン開度相当とし、前記並入時における前記水車発電機のモータリング現象を抑制するものである。
また、この発明に係る調速機制御装置は、速度設定器および負荷設定器を備え、前記速度設定器および前記負荷設定器の双方の出力に基づいて水車のガイドベーンの開度を制御する調速機制御装置において、前記負荷設定器の入力段に前記ガイドベーンの開度のフィードバック信号を取り込み、電力系統への水車発電機の並入時における前記負荷設定器の出力を前記ガイドベーン開度相当とし、前記並入時における前記水車発電機のモータリング現象を抑制するものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明は、調速機制御装置における速度設定器および負荷設定器の双方の出力に基づいて水車のガイドベーンの開度を制御する水力発電制御システムにおいて、前記負荷設定器の入力段に前記ガイドベーンの開度のフィードバック信号を取り込み、電力系統への水車発電機の並入時における前記負荷設定器の出力を前記ガイドベーン開度相当とし、前記並入時における前記水車発電機のモータリング現象を抑制するので、負荷設定器側で対策を講じてモータリング現象を確実に抑制することができる効果がある。
また、この発明は、速度設定器および負荷設定器を備え、前記速度設定器および前記負荷設定器の双方の出力に基づいて水車のガイドベーンの開度を制御する調速機制御装置において、前記負荷設定器の入力段に前記ガイドベーンの開度のフィードバック信号を取り込み、電力系統への水車発電機の並入時における前記負荷設定器の出力を前記ガイドベーン開度相当とし、前記並入時における前記水車発電機のモータリング現象を抑制するので、負荷設定器側で対策を講じてモータリング現象を確実に抑制することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の各実施例に共通の水力発電制御システムおよびその調速機制御装置の一例を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1を示す図で、水力発電制御システムにおける調速機制御装置の負荷設定器(65P)の入力段に対するモータリング現象対策の一例を示すブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態1を示す図で、図2の事例を使用した場合の水力発電制御システムによる動作タイムチャート示す図である。
【図4】この発明の実施の形態2を示す図で、水力発電制御システムにおける調速機制御装置の負荷設定器(65P)の入力段に対するモータリング現象対策の他の例を示すブロック図である。
【図5】この発明の実施の形態2を示す図で、図4の事例を使用した場合の水力発電制御システムによる動作タイムチャート示す図である。
【図6】この発明の実施の形態3を示す図で、水力発電制御システムにおける調速機制御装置の負荷設定器(65P)の入力段に対するモータリング現象対策の更に他の例を示すブロック図である。
【図7】この発明の実施の形態3を示す図で、図6の事例を使用した場合の水力発電制御システムによる動作タイムチャート示す図である。
【図8】従来の一般的な水力発電制御システムにおける調速機制御装置の負荷設定器(65P)の入力段を示すブロック図である。
【図9】従来の一般的な水力発電制御システムによる動作タイムチャート示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
以下この発明の実施の形態1を図1〜図3により説明する。図1はこの発明の各実施例に共通の水力発電制御システムおよびその調速機制御装置の一例を示すブロック図、図2は水力発電制御システムにおける調速機制御装置の負荷設定器(65P)の入力段に対する
モータリング現象対策の一例を示すブロック図、図3は図2の事例を使用した場合の水力発電制御システムによる動作タイムチャート示す図である。
【0013】
図1において、1は負荷設定器(65P)、2は速度設定器(65F)、23は負荷制限器(77)であり、中央給電所、制御所所、配電盤、等からの自動調整機能または運転員操作による出力増減指令、速度増減指令により、それぞれ設定変更可能な内部メモリに構成されている。3は水車またはポンプ水車の回転速度または出力トルクを制御する調速機制御装置であり、調速機制御装置3の諸機能は、マイクロプロセッサのソフトウェア、または演算増幅器によるアナログ回路により実現される。
【0014】
図示のように、負荷設定器(65P)1の出力とガイドベーン開度との加算要素1aによ
る偏差に速度垂下率を乗算要素1bにより乗算した値と、速度設定器(65F)2の出力と
回転速度信号との加算要素2aによる偏差とを、加算要素2bのより加算した制御信号値は(Δ65)23と表記してあり、定常状態である安定時にはゼロ「0」である。制御信号値(Δ65)23は調速機制御装置3内のPIDコントローラ4に入力される。
【0015】
PIDコントローラ4は、それぞれ前記制御信号値(Δ65)23を入力とする比例演算要素(P)5、積分演算要素(I)6、微分演算要素(D)7により構成され、周知のPID制御を行う。PIDコントローラ4の出力、即ち調速機制御装置3の出力は、前記比例演算要素(P)5の出力と積分演算要素(I)6の出力と微分演算要素(D)7のとの和であり、ガバナ制御出力(65C)22となる。
ガバナ制御出力(65C)22はガイドベーン9のアクチュエータ8を駆動させて、ガイ
ドベーン9の開度を決定する。
【0016】
10は非揚水方式の水力発電方式に使用される水車または可変速揚水発電方式で使用されるポンプ水車であり、当該水車10に供給される水の流量および当該水車10のトルク特性により、ガイドベーン9の開度と、水車10の発電機系のフィードバック量である回転速度19と水路系のフィードバック量である有効落差(He)16により、水車10に供給される水の流量(Q)11および水車の出力トルク(TL)17が決定される。
水路系では、水車10を通過する水の流量11により、サージタンク12の水位(Hs)14が決まり、水位14より水車下流側圧力15と、損失水頭13(流量11の関数)の2項との差が有効落差16となる。
【0017】
発電機18と水車10には慣性モーメントGD2があり、この慣性モーメントGD2、供給された水のエネルギにより与えられた水車トルク17と発電機18が発生する電力20(W)との差、系統周波数条件、等に基づいて、発電機、水車軸系は加減速制御され、回転速度19が決定される。
【0018】
次に主機起動から電力系統への発電機並入(電力系統に発電機の出力端を並列に投入)までの動作について説明する(図3も参照)。
水車またはポンプ水車10の始動時には、中央給電所、制御所所、配電盤、等からの負荷制限器(77)24からの増指令によって、ガイドベーン9を水車起動開度まで間欠的に開く。
なお、回転速度が定格回転速度の80%に達して、かつPIDコントローラ4の出力が始めてゼロ「0」以下になった瞬間、ガバナ制御(PID制御)可能となる。
ガバナ制御と負荷制限(77)運転は低値選択マクロ25により、低値を出力する。
ガバナ制御状態となると、ガイドベーン9は無負荷開度まで下がる。
【0019】
電力系統に発電機18を並入するために、中央給電所、制御所所、配電盤等からの自動調整機能または運転員操作による速度設定器(65F)2からの増減指令により、系統周波
数に近づけるように揃速を開始し、自動同期装置(図示省略)により発電機18を電力系統に並列投入(並入)する。
並入後は負荷設定器(65P)1の増減操作が可能となり、中央給電所、制御所所、配電
盤等からの自動調整機能または運転員操作により、負荷設定器(65P)1を増減操作して
、負荷を調整する。
【0020】
ここで、前述の課題「周波数設定値を補正するための切り替えスイッチ、補正装置を使用することなく、負荷設定器(65P)側で対策を講じてモータリング現象を確実に抑制す
ることができるようにすることも必要」を解決するための負荷設定器(65P)1側での対
策として、同期投入時に、図8、図9に示す従来方式における負荷設定器(65P)1とガ
イドベーン開度の負の偏差(負荷設定器(65P)1とガイドベーン開度との偏差、つまり
、負荷設定器(65P)1の出力とガイドベーン開度との加算要素1aによる加算値、が負
の値)を、負とならないようにキャンセルする具体的な手段を本発明の実施の形態は提示する。
【0021】
本実施の形態1におけるモータリング現象抑止対策としての負荷設定器(65P)1の制
御方式は図2に例示してあり、この図2に例示のように、定格回転速度の80%以上(95G
)32かつ解列(52B)31の条件で、レートリミッタ33により、負荷設定器(65P)1の出力をガイドベーン9の開度に追従させる(図3参照)。これをノーロード(無負荷)時の負荷設定器(65P)34とし、前述の並入時の負荷設定器(65P)1の開始値とする。
並入信号36を条件に、中央給電所、制御所所、配電盤等からの自動調整機能または運転員操作により負荷設定器(65P)1の増減操作を可能とするのは従来の制御方式と同じ
である。なお、解列(52B)31は、前記並入とは逆で、水車発電機18を電力系統から
切り離した状態、つまり、並入されていない状態をいう。
【0022】
図2、図3に例示する本実施の形態1により、同期投入時に、ガイドベーン9の開度相当となる。即ちガイドベーン9からのフィードバック信号であるガイドベーン開度と負荷負荷設定器(65P)1の出力との偏差が微小値となり、その結果、同期投入時に揃速減指
令が与えられて、速度設定器(65F)2が低い位置にいる場合でも、定格回転速度を維持
するためのガイドベーン開度を得ることができ、図3に例示のように、モータリング現象抑制を可能とすることができる。
【0023】
本実施の形態1は、総じて、調速機制御装置における速度設定器および負荷設定器の双方の出力に基づいて水車のガイドベーンの開度を制御する水力発電制御システムにおいて、前記負荷設定器の入力段に前記ガイドベーンの開度のフィードバック信号を取り込み、電力系統への水車発電機の並入時における前記負荷設定器の出力を前記ガイドベーン開度相当とし、前記並入時における前記水車発電機のモータリング現象を抑制する水力発電制御システムであり、
前記水車発電機の回転速度が定格回転速度の所定%以上かつ解列の条件下で、前記負荷設定器の出力を前記ガイドベーンの開度に追従させる水力発電制御システムであり、
水車またはポンプ水車の回転速度または出力の制御を行う調速機制御装置において、系統並列時に負荷設定器である65Pの初期値をガイドベーン開度相当とすることで、系統並
列時のモータリングを抑制する制御方式であり、
速度設定器および負荷設定器を備え、前記速度設定器および前記負荷設定器の双方の出力に基づいて水車のガイドベーンの開度を制御する調速機制御装置において、前記負荷設定器の入力段に前記ガイドベーンの開度のフィードバック信号を取り込み、電力系統への水車発電機の並入時における前記負荷設定器の出力を前記ガイドベーン開度相当とし、前記並入時における前記水車発電機のモータリング現象を抑制する調速機制御装置であり、
前記水車発電機の回転速度が定格回転速度の所定%以上かつ解列の条件下で、前記負荷設定器の出力を前記ガイドベーンの開度に追従させる調速機制御装置である。
【0024】
実施の形態2.
以下この発明の実施の形態2を図4および図5により説明する。図4は水力発電制御システムにおける調速機制御装置の負荷設定器(65P)1の入力段に対するモータリング現
象対策の他の例を示すブロック図、図5は図4の事例を使用した場合の水力発電制御システムによる動作タイムチャート示す図である。
【0025】
前述の実施の形態1では定格回転速度の80%以上(95G)32であり、かつ解列(52B)31である条件で、負荷設定器(65P)の出力をレートリミッタ33によりガイドベーン
9の開度に追従させる具体策を述べた。
ところで、この実施の形態1に例示の対策では、負荷設定器(65P)の出力がガイドベ
ーン9の開度に追従して近づいていくが、負荷設定器(65P)の変化に対して若干の時間
遅れで追従していく形となる。従って、同期投入のタイミングによっては負荷設定器(65P)の出力とガイドベーン開度とに微小の偏差が残っていた。
【0026】
この改善として、本実施の形態2では、負荷設定器(65P)1の出力=ガイドベーン開
度となった時点で、レートリミッタ33による追従をやめ、それ以降は負荷設定器(65P
)1の出力=ガイドベーン開度とするものである。そのために、本実施の形態2では、図4に例示するように、定格回転速度の80%以上(95G)32かつ解列(52B)31の条件で、レートリミッタ33により、負荷設定器(65P)1の出力をガイドベーン9の開度に追従させるところまでは実施の形態1と同様であるが、レートリミッタ33の後段にガイドベーン開度を設定値としたハイモニタ37を設置する。そしてアナログスイッチ38により、負荷設定器(65P)1の出力がガイドベーン開度となった条件で、ノーロード(無負荷)時の負荷設定器(65P)34の出力=ガイドベーン開度とする。
【0027】
このような本実施の形態2の制御方式により、同期投入のタイミングによらず、負荷設定器(65P)1の出力とガイドベーン開度との偏差はゼロ「0」とすることができ、図5
に例示のように、モータリング現象が発生しない状態となる。
【0028】
本実施の形態2は、総じて、前記負荷設定器の出力が前記ガイドベーンの開度に追いついた時点で、前記負荷設定器の出力=前記ガイドベーンの開度とする水力発電制御システムであり、また、前記負荷設定器の出力が前記ガイドベーンの開度に追いついた時点で、前記負荷設定器の出力=前記ガイドベーンの開度とする調速機制御装置である。
【0029】
実施の形態3.
以下この発明の実施の形態3を図6および図7により説明する。図6は水力発電制御システムにおける調速機制御装置の負荷設定器(65P)1の入力段に対するモータリング現
象対策の更に他の例を示すブロック図、図7は図6の事例を使用した場合の水力発電制御システムによる動作タイムチャート示す図である。
【0030】
前述の実施の形態2では負荷設定器(65P)1の出力をガイドベーン9の開度相当にす
ることで、並入時のモータリングを抑制する場合を例示した。
ところで、この実施の形態2の制御方式では、並入時にはモータリングを抑制できるが、負荷遮断等の解列時においても負荷設定器(65P)1の出力=ガイドベーン開度となるため、負荷遮断等の解列時のガイドベーン9の閉方向の制御量が十分でないという課題がある。
【0031】
この改善として、本実施の形態3では、この改善として負荷遮断(解列)後の一定時間は実施の形態2の制御方式を無効化するものである。そのために、本実施の形態3では、図6に例示するように、負荷遮断時は定格回転速度の80%以上(95G)32と解列(52B)31の条件が成立する。実施の形態2ではこの条件成立後すぐにレートリミッタ33が動作して、負荷設定器(65P)1の出力がガイドベーン開度に追従していたが、本実施の形
態3では、オンディレイタイマー39をレートリミッタ33の前段に入れることで、タイマーの時限までは負荷設定器(65P)1の出力=0とする。ここでオンディレイタイマー
39のタイマー設定値は電協研で規定されているガイドベーン不動時間とする。即ち負荷遮断(解列)後、ガイドベーンが動き始めるまでは、負荷設定器(65P)1の出力=0と
することで、負荷設定器(65P)1の出力とガイドベーン開度との偏差を最大とし、それ
によりガイドベーン9の閉側の制御量22を最大とする制御方式である。
【0032】
このような本実施の形態3の制御方式により、図7に例示のように、モータリング現象が発生しない状態となると共に、負荷遮断時(解列時)における発電機回転数の上昇が抑制される。
【0033】
本実施の形態3は、総じて、並入状態からの負荷遮断時(系統解列時)においては、ガイドベーンが閉まり始めるまでの時間である不動時間の短縮のため、前述の実施の形態1における「電力系統への水車発電機の並入時における前記負荷設定器の出力を前記ガイドベーン開度相当とする制御」および「前記水車発電機の回転速度が定格回転速度の所定%以上かつ解列の条件下で、前記負荷設定器の出力を前記ガイドベーンの開度に追従させる制御」あるいは前述の本実施の形態2における「前記負荷設定器の出力が前記ガイドベーンの開度に追いついた時点で、前記負荷設定器の出力=前記ガイドベーンの開度とする制御」を一定時間実行しない制御方式である。
また、前記並入状態から解列状態へ移行する場合、当該解列への移行から所定時間の間は前記負荷設定器の出力をゼロ相当にする水力発電制御システムであり、前記並入状態か
ら解列状態へ移行する場合、当該解列への移行から所定時間の間は前記負荷設定器の出力をゼロ相当にする調速機制御装置である。
【0034】
なお、本発明において、用語「水車」は、非揚水方式の水力発電方式に使用される水車および可変速揚水発電方式で使用されるポンプ水車の双方を意味する。
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を適宜、変形、省略することができる。
なお、各図中、同一符合は同一または相当部分を示す。
【符号の説明】
【0035】
1 負荷設定器(65P)、
2 速度設定器(65F)、
3 調速機制御装置、
9 ガイドベーン、
10 水車、
18 水車発電機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調速機制御装置における速度設定器および負荷設定器の双方の出力に基づいて水車のガイドベーンの開度を制御する水力発電制御システムにおいて、前記負荷設定器の入力段に前記ガイドベーンの開度のフィードバック信号を取り込み、電力系統への水車発電機の並入時における前記負荷設定器の出力を前記ガイドベーン開度相当とし、前記並入時における前記水車発電機のモータリング現象を抑制することを特徴とする水力発電制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の水力発電制御システムにおいて、前記水車発電機の回転速度が定格回転速度の所定%以上かつ解列の条件下で、前記負荷設定器の出力を前記ガイドベーンの開度に追従させることを特徴とする水力発電制御システム。
【請求項3】
請求項2に記載の水力発電制御システムにおいて、前記負荷設定器の出力が前記ガイドベーンの開度に追いついた時点で、前記負荷設定器の出力=前記ガイドベーンの開度とすることを特徴とする水力発電制御システム。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一に記載の水力発電制御システムおいて、前記並入状態から解列状態へ移行する場合、当該解列への移行から所定時間の間は前記負荷設定器の出力をゼロ相当にすることを特徴とする水力発電制御システム。
【請求項5】
速度設定器および負荷設定器を備え、前記速度設定器および前記負荷設定器の双方の出力に基づいて水車のガイドベーンの開度を制御する調速機制御装置において、前記負荷設定器の入力段に前記ガイドベーンの開度のフィードバック信号を取り込み、電力系統への水車発電機の並入時における前記負荷設定器の出力を前記ガイドベーン開度相当とし、前記並入時における前記水車発電機のモータリング現象を抑制することを特徴とする調速機制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の調速機制御装置において、前記水車発電機の回転速度が定格回転速度の所定%以上かつ解列の条件下で、前記負荷設定器の出力を前記ガイドベーンの開度に追従させることを特徴とする調速機制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の調速機制御装置において、前記負荷設定器の出力が前記ガイドベーンの開度に追いついた時点で、前記負荷設定器の出力=前記ガイドベーンの開度とすることを特徴とする調速機制御装置。
【請求項8】
請求項5〜請求項7の何れか一に記載の調速機制御装置において、前記並入状態から解列状態へ移行する場合、当該解列への移行から所定時間の間は前記負荷設定器の出力をゼロ相当にすることを特徴とする調速機制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−78197(P2013−78197A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216158(P2011−216158)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(511238158)日立三菱水力株式会社 (14)
【Fターム(参考)】