説明

水力発電機付き落差マンホール

【課題】設置やメンテナンスが容易な下水による発電装置を提供する。
【解決手段】略垂直方向に配置されるマンホール本体1の上部に上流側下水管7が、下部に下流側下水管9が、接続される。振子式クリーナ11は、上流側下水管7から流れ込む下水を受け、ゴミを濾し、溜まったゴミの重さで振れてゴミを落とす。振子式クリーナ11の下方には、濾された下水を導く導水管13が配置されて発電機15に接続される。振子式クリーナは、長手方向の全体が略くの字形状を有する筒状本体17角部に回動軸19が設けられ、略くの字形状の上方部分によって形成される受水部にゴミを濾すメッシュ部23が設けられ、振れ方向と反対方向の回動を規制する振れ止27が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、下水道のマンホール内の下水流により発電を行うための装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下水道の下水流により発電を行うための装置は、たとえば特許文献1、特許文献2に記載される。
【特許文献1】特開2003-254220
【特許文献2】WO99/67531
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1、特許文献2の装置は、下水道管に直接に発電機を取付けるため、通常の地下に埋設された下水道管に設ける場合には、下水道管の掘り起こし作業など面倒であり、設置費用がコスト高になる。
また、下水道管に直接に発電機を取付けるため、下水に含まれるいろいろなゴミが、発電機の回転部分に付着しトラブルの原因になることが容易に考えられる。また、このゴミを取り除くには、下水道管の掘り起こし作業、装置の分解作業などが必要となり、メンテナンス費用が膨大になってしまう。
【0004】
この発明は、以上の問題点を解決するために、設置やメンテナンスが容易な下水による発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、第一発明は、略垂直方向に配置されるマンホール本体と、このマンホール本体の上部に接続される上流側下水管と、前記マンホール本体の下部に接続される下流側下水管と、前記マンホール本体の内部に設けられ、前記上流側下水管から流れ込む下水を導く導水管と、この導水管に接続されて水力発電を行う発電機と、を有することを特徴とする水力発電機付き落差マンホールである。
第二発明は、略垂直方向に配置されるマンホール本体と、このマンホール本体の上部に接続される上流側下水管と、前記マンホール本体の下部に接続される下流側下水管と、前記上流側下水管から流れ込む下水を受け、ゴミを濾し、溜まったゴミの重さで振れてゴミを落とす振子式クリーナと、この振子式クリーナから排水された下水を導いて水力発電を行う発電機と、を有することを特徴とする水力発電機付き落差マンホールである。
第三発明は、さらに、前記振子式クリーナは、前記下水を通すための筒状で、長手方向の全体が略くの字形状を有し、この略くの字形状の角部に設けられる回動軸と、前記略くの字形状の上方部分によって形成され前記流れ込む下水を斜めに受ける受水部と、この受水部に設けられてゴミを濾すメッシュ部と、前記略くの字形状の下方部分によって形成され前記ゴミが濾された下水を鉛直に排水する排水部と、振れ方向と反対方向の回動を規制する振れ止と、を有して構成され、前記振子式クリーナの下方には、排水された下水を導く導水管が配置されて前記発電機に接続されることを特徴とする水力発電機付き落差マンホールである。
【発明の効果】
【0006】
第一発明によれば、マンホールの内部において下水を導く導水管を設けて発電機に接続すればいいので、下水道管の掘り起こし作業が不要で、しかもマンホール内で作業員の通常の作業が行え、設置が容易である。また、下水の落下するエネルギーを利用して発電が行えるので、下水の勢いを削ぐことができ、よって、マンホールの設計時に留意しなければならないマンホール底部の洗掘防止が、容易に果たせる。
【0007】
第二、又は第三発明によれば、振子式クリーナによって、ゴミを濾し、溜まったゴミの重さで振れてゴミを落とすことができるので、ゴミを取り除く作業が軽減でき、メンテナンスが容易になる。
第三発明によれば、さらに、振子式クリーナを簡易な構造により得られ、装置コストを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明の一実施形態を、図1、図2に示す。
(全体構成)
この実施形態では、既に埋設されている既設マンホールに水力発電機を設置して装置を構成する。
地中に略垂直方向にマンホール本体1が配置されている。このマンホール本体1は、輪切り状の複数のリング体3が上下に重ねられ嵌合されて構成される。マンホール本体1の頂部には、蓋5が配置される。また、マンホール本体1の上部に、略水平な上流側下水管7が接続されている。また、マンホール本体1の下部に略水平な下流側下水管9が接続されている。
【0009】
マンホール本体1の内部には、上流側下水管7から流れ込む下水を受け、ゴミを濾し、溜まったゴミの重さで振れてゴミを落とす振子式クリーナ11が配置される。この振子式クリーナ11の下方には、濾され排水された下水を導く導水管13が配置されて、発電機15に接続される。発電機15から排水された下水は、下流側下水管9へ流出する。
【0010】
(振子式クリーナ11)
振子式クリーナ11は、受けた下水を通すための筒状本体17が、長手方向の全体が略くの字形状を有する。この略くの字形状の角部に回動軸19が設けられ、略くの字形状の全体が回動可能になり、振れる動きを行える。
【0011】
略くの字形状の上方部分によって受水部21が形成され、上流側下水管7から流れ込む下水を斜めに受ける。この受水部21の入り口から少し奥に、ゴミを濾すメッシュ部23が設けられる。また、略くの字形状の下方部分によって排水部25が形成され、ゴミが濾された下水を鉛直に排水する。よって、略くの字形状は、上流側下水管7へ向かって少し傾いた姿勢を有する。
【0012】
斜めの姿勢の受水部21の背側(図中の右側)に接する位置で、マンホール本体1の内壁に、振れ止27が設けられる。この振れ止27が接することで、振れ方向(図中の反時計回り方向)と反対方向の回動を規制する。また、振れ方向に勢いよく振れて回ったときには、排水部25が振れ止27に接して、接する衝撃によりゴミをより十分に落とすことができる。
【0013】
(導水管13)
濾され排水された下水を導く導水管13の頂部には、皿様の拡径部29が設けられ、水平支持板30によって、マンホール本体1の内壁に支持される。拡径部29の上面に半円球状のメッシュ板31が配置される。導水管13の中ほどは、ジャバラ状の伸縮管33になっており、設置作業が容易に行える。
【0014】
導水管13に平行して、マンホール本体1の内壁には、上流側下水管7の側に、半円筒板35が取付けられ、副管37を構成する。この副管37は、上流側下水管7の下水量が少なくなって勢いがなくなったときに、下水を導き、作業員へ下水が飛散しないようにするためのものである。下水量が少ないときに、装置の設置作業が行われる。また、振子式クリーナ11が振れて、ゴミや下水は落下するときにも、副管37に導かれ同様に飛散を防止する。
【0015】
発電機15は、マイクロ水力発電機と呼ばれるもので、マンホール本体1の底部に形成されるコンクリート製の底部ベース39に据え付けられる。発電機15の吐出口41から排水された下水は、マンホール本体1の底部を経て下流側下水管9へ流出する。
【0016】
「実施形態の効果」
この実施形態によれば、マンホールの内部において、上流側下水管7からの下水を導く導水管13を設けて発電機15に接続すればいいので、下水道管の掘り起こし作業が不要である。しかもマンホール内で作業員の通常の作業によって設置作業が行え、設置が容易である。
【0017】
また、下水の落下するエネルギーを利用して発電を行い、下水の勢いを削ぐことができ、よって、マンホールの設計時に留意しなければならないマンホール底部の洗掘防止が、容易に果たせる。
さらに、振子式クリーナ11によってゴミを濾し、溜まったゴミの重さで振子式クリーナ11が振れて(図1破線参照)、受水部21が下方に傾き、ゴミを落とすことができる。この動きは、日本庭園などに設けられる「獅子脅し」と同じである。この「獅子脅し」効果によって、ゴミを取り除く作業が軽減でき、メンテナンスが容易になる。また、振れ戻って、振れ止27に接したときの衝撃も、固まったゴミをほぐして、次の「獅子脅し」動作のときに、ゴミを取り除く効果を大きくする。
さらに、振れ方向に勢いよく大きく振れて180度以上回ったときには、排水部25が振れ止27に接して、接する衝撃によりゴミをより十分に落とすことができる。
【0018】
さらに、振子式クリーナ11を、筒状本体17、メッシュ部23、回動軸19、振れ止27、からなる簡易な構造により得られ、装置コストを低減できる。
【0019】
「他の実施形態」
図1の実施形態では、既に埋設されている既設マンホールに水力発電機を設置して装置を構成するものであったが、他の実施形態では、水力発電機付き落差マンホールとしてユニット化し、従来の鉛直方向の下水管43に換えて、新たにマンホールを埋設する再に、このユニットを埋設し設置することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の一実施形態に係る水力発電機付き落差マンホールの縦断面図である。
【図2】図1の平面図である。
【符号の説明】
【0021】
1…マンホール本体、3…リング体、5…蓋、7…上流側下水管、9…下流側下水管、11…振子式クリーナ、13…導水管、15…発電機、17…筒状本体、19…回動軸、21…受水部、23…メッシュ部、25…排水部、27…振れ止、29…拡径部、31…メッシュ板、33…伸縮管、35…半円筒板、37…副管、39…底部ベース、41…吐出口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略垂直方向に配置されるマンホール本体と、このマンホール本体の上部に接続される上流側下水管と、前記マンホール本体の下部に接続される下流側下水管と、前記マンホール本体の内部に設けられ、前記上流側下水管から流れ込む下水を導く導水管と、この導水管に接続されて水力発電を行う発電機と、を有することを特徴とする水力発電機付き落差マンホール。
【請求項2】
略垂直方向に配置されるマンホール本体と、このマンホール本体の上部に接続される上流側下水管と、前記マンホール本体の下部に接続される下流側下水管と、前記上流側下水管から流れ込む下水を受け、ゴミを濾し、溜まったゴミの重さで振れてゴミを落とす振子式クリーナと、この振子式クリーナから排水された下水を導いて水力発電を行う発電機と、を有することを特徴とする水力発電機付き落差マンホール。
【請求項3】
前記振子式クリーナは、前記下水を通すための筒状で、長手方向の全体が略くの字形状を有し、この略くの字形状の角部に設けられる回動軸と、前記略くの字形状の上方部分によって形成され前記流れ込む下水を斜めに受ける受水部と、この受水部に設けられてゴミを濾すメッシュ部と、前記略くの字形状の下方部分によって形成され前記ゴミが濾された下水を鉛直に排水する排水部と、振れ方向と反対方向の回動を規制する振れ止と、を有して構成され、前記振子式クリーナの下方には、排水された下水を導く導水管が配置されて前記発電機に接続されることを特徴とする請求項2に記載の水力発電機付き落差マンホール。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−211433(P2007−211433A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−30356(P2006−30356)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(504368446)
【Fターム(参考)】