説明

水和ポリマーインプラントを骨に接着するための方法、デバイスおよび組成物

インプラントを骨に結合する方法を提供するものであり、ここで該インプラントは、平滑な水和された表面および利用可能な化学官能基を含む付着表面を含む、水和されたポリマーを含有する。該方法は、以下の諸工程:該インプラントまたは該骨を、イソシアネート-含有化合物で処理する工程;該付着表面を、該骨に当接した状態で配置する工程;および該イソシアネート-含有化合物を硬化させて、該インプラントと該骨とを結合する工程を含む。本発明は、また医療用インプラントをも包含し、該インプラントは、熱可塑性物質を含む付着表面を含む水和ポリマーを有し、該水和ポリマーは、少なくとも2種のポリマーを含む相互侵入型ポリマー網状構造を有し、該水和ポリマーは、少なくとも一つの表面において低い摩擦係数を持つ。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願との相互引照)
本件特許出願は、2008年3月21日付で出願された米国特許出願第61/070,305号の、35U.S.C. §119に基く利益を請求するものである。該特許出願の開示事項を、本明細書において完全に提示されているものとして、ここに参考として組入れる。
【0002】
(言及による組入れ)
本明細書において述べられた全ての刊行物および特許出願は、あたかも各個々の刊行物および特許出願が、具体的にかつ個々に、参考文献として組入れるべきものであることが示されているものとして、本明細書に参考文献として組み入れられるものである。
【0003】
疾患または損傷に伴って、関節表面を覆う通常平坦で、滑らかな軟骨は、徐々に劣化して、骨を露出させ、また活動によって再燃、悪化し、かつ静養により軽減される、関節炎痛の発生に導く。今日では、骨関節炎に罹患した患者は、医学的なその苦痛の管理、または効果的ではあるが、著しく骨を犠牲にする外科手術の実施という、2つの選択肢の一方のみを選択しなければならない状況に直面している。医学的な管理は、体重の減量、物理療法、および鎮痛薬および非-ステロイド系の抗炎症薬の使用を含む。これらは、苦痛を減じる上で効果的であり得るが、治癒力のあるものではない。その他の選択肢は、該軟骨の喪失成分を復元するグルコサミンまたはヒアルロナン等の薬物投与を含むが、米国におけるその広範な使用にも拘らず、その有効性は依然として疑問視されている。
【0004】
医療の介入が失敗に終わり、かつ患者の関節痛が耐え難いものとなった場合、外科手術が推奨されている。関節全体の関節形成術が外科的処置の一つであり、そこでは該関節の患部が除去され、新たな、人工的部品で置換えられる(これは、包括的に補綴術と呼ばれている)。この高度に効果的ではあるが、侵襲的な処置において、該疾患のある関節部軟骨およびその下方の、軟骨下の骨は、該損傷を受けた関節から除去される。様々な代用系が開発されており、これらは、典型的には超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)および/または金属(例えば、チタンまたはコバルトクロム)、またはより最近では、セラミックスで構成されている。その幾つかは、所定位置にネジ止めされ、他のものは、骨の内部成長を促進するような方法で接着するか、処理される。これら材料は、全関節置換療法において首尾良く利用されており、重篤な股関節または膝関節の骨関節炎に罹患している患者における、顕著な苦痛の緩和および機能の改善をもたらしている。
【0005】
多くの患者が、毎年、米国内で、全股関節の関節形成術(THA)を受けており、この形成術は、股臼における人工盃状窩の移植および大腿部側における球関節および幹状部の移植を含む。このTHAの目的は、運動性を高め、股関節の機能を改善し、かつ苦痛を軽減することにある。典型的に、股関節補綴具は、交換が必要となるまで、少なくとも10-15年持続する。しかし、外科的処置としてのその成功にも拘らず、THAは、著しく骨を犠牲にしており、全大腿上部の切除を必要とすることから、依然として最後の手段としての処置であると考えられている。しばしば再建、交換を困難にしているのが、この大腿部の主要な改変である。この処置は、年配者(通常該インプラントの寿命よりも長生きしない)において、生存率90%以上を示すが、該インプラントの寿命は、より若年の、より活動的な患者においては、大幅に短縮される。結果として、より若年の患者は、その寿命中に、多数回に渡る、困難な再建術を受ける可能性に直面する。該再建は、該インプラントが過度に摩耗し、また摩耗粒子による該補綴具近傍の骨の再吸収が起った場合に、並びに該インプラントの周りの応力遮断により誘発される骨の再吸収に起因する該補綴具の控えめな緩みが見られた場合に、必要とされる。
【0006】
上記THAの限界は、THAが少なくとも5年間またはそれ以上、該関節の寿命を延長し得るという望みと共に、該工業分野がより骨-犠牲の少ない、より若年の患者に対する選択肢を探求することを促した。処置の改善を目的とする一つの方法は、より侵襲性の低い外科的処置、例えば関節鏡検査法による関節灌注法、創面切除術、磨滅法、および滑膜切除術を開発することであった。しかし、骨関節炎の治療におけるこれら外科的技術の相対的な利点は、依然として論争の的となっている。THAに対する代替法、即ち股関節表面の付替え法が、新たな支持表面(金属担持ポリエチレンではなく寧ろ金属担持金属)のために、最近再び現れた。多くの患者にとって、該処置の有効性の延長が期待できるが、股関節表面の付替え法は、該大腿部側における十分な骨のストックを保持しており、そのため後の全股関節置換が可能となる。不幸なことに、股関節表面の付替え法を提案する医師は、その処置が依然としてできる限り延期すべきものであることを進言している。
【0007】
金属担持金属による表面の付替えにおいて、該大腿先端部は、適切に形状付与され、また次に大腿頸状部を通して長いペグにより固定されている金属キャップにより覆われる。該キャップと盃状部との間には、より正確な嵌合が必要とされ、またこの処置は、一般的に、該大腿構成要素のより大きな径のために、従来の交換と比較して、該股臼由来のより多くの骨を犠牲にする。更に、表面の付替え(resurfacing)操作は、急峻な学習曲線を持ち、またTHAよりも長い時間を要する。該ペグ近傍の骨の再吸収により起こされる大腿頸状部の骨折が、報告されており、また長期に及ぶ該支持表面からの金属イオンの遊離による影響、効果も、今のところヒトについては知られていない。これらの複雑さの結果として、今日の表面の付替えデバイスは、THAの場合におけるように、股関節の痛みに耐え得ない患者においてのみ必要とされているに過ぎない。
【0008】
関節インプラントは、通常、プレス嵌メカニズムにより、または骨用接着剤の使用により所定位置に保持されている。プレス嵌メカニズムにおいて、該インプラントは、経時に伴って、該インプラントを所定位置に保持するように、新たな骨が生成されるまで、骨によって形成された空所にしっかり嵌め込まれる。該インプラントは、一般に粗面化された端部を有していて、細胞が移動しかつ成長するための表面を与える。該内部での骨の伸びは、強力な結合をもたらす。プレス嵌メカニズムは、該骨が強力かつ健全であり、再成長し得るものであることを要する。この処置は、技術的に要求の厳しいものであり、また該インプラントの嵌合は、正確でなければならない。
【0009】
骨用接着剤は、該インプラントと該骨との間に配置され、該空所および該インプラントおよび該骨両者内の孔に侵入することができる。該骨用接着剤は、該インプラントを所定位置に接着するのではなく、寧ろ硬化しかつこれを所定位置に保持する。骨用接着剤は、あらゆる種類の骨について使用できるが、該骨が損傷を受けておりあるいは脆弱な場合には、該プレス嵌メカニズムよりも好ましい。
【0010】
骨用接着剤の最も古い型は、1960年代以来使用されており、またポリメチルメタクリレート(PMMA)を含んでいる。PMMAは、目、皮膚、および呼吸系に対して刺激性の無色の液体である。該PMMAは、他の成分とペースト状に混合され、次いで該骨の表面上に展開または注入される。これが硬化されるにつれて、温度が上昇するが、これは、神経および骨を含む身体組織に対して、熱による損傷を引起す恐れがある。該PMMA含有骨用接着剤は、アレルギー反応を引起す恐れがある。
【0011】
時間の経過を通して、金属およびプラスチックインプラントは摩耗し、また骨および身体は加齢し、かつ変化するので、最初PMMA含有骨用接着剤により所定位置に保持されたインプラントは、緩められ、また使用不能なものとなり、または苦痛を与えるものとなる。これは、肉体的に活発なレシピエントに対して特に言えることである。結局、多数回に渡り再建手術が行われる。それ故、該インプラントを取外し、また新たなインプラントを、その位置に挿入する必要がある。施される大半の手術に起因する、苦痛および障害に加えて、該使用済みの接着剤の除去工程は、骨の破壊を含む追加の損傷をもたらす可能性がある。米国における膝関節の再建手術の例は、毎年少なくとも22,000件であると見積もられている。患者がより若年期に最初のインプラントを受け入れた場合、より一層多数回に及ぶ再建手術が必要とされるものと予想することができる。
【0012】
更に最近(ほぼ1980年代以来)では、リン酸カルシウムで作成した生分解性骨用接着剤が使用されている。PMMAと同様に、該接着剤はペーストとして製造され、骨の所定部位に注入される。PMMAとは異なり、この接着剤の硬化は、殆ど予測不可能であり、最大強度に達するまでに数時間を要する。該接着剤の漏れは、恐らく組織の損傷および神経の痛みをもたらし、致命的な閉塞形成事例を越える問題があらわになった。生分解性骨用接着剤を用いたインプラントは、重い荷重に耐えられず、またこれは一般には膝関節用インプラントに対しては使用されない。これは、時間の経過に伴って、その外側表面から再吸収され、また理想的には骨組織により置換されて、骨-インプラント結合を生成する。
【0013】
骨に対するヒドロゲルの結合が、以前より報告されている。例えば、2008年4月17日付で出願された米国特許出願第12/148,534号は、相互侵入型網状構造(IPN)として形成されるヒドロゲル、および反応性モノマーまたはマクロモノマーを含むプリカーサ溶液の適用による、該ヒドロゲルの骨に対する接着を記載しており、該モノマーは、後に重合されて侵入性のポリマーを生成し、該ポリマーは、該骨と結合し、また該ヒドロゲルと物理的に絡み合い、および/またはこれと化学的に結合する。この特許出願の開示事項を、参考としてここに組入れる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、一般的にヒドロゲルおよびヒドロゲル複合体等の水和ポリマー、およびこのような水和ポリマーの整形外科における応用に関するものである。特に、本発明は、ポリウレタンポリマーを用いて、哺乳動物の骨または骨-様構造体に、水和ポリマーを接着するための方法および組成物に関する。本発明は、また水和ポリマーを骨または骨-様構造体に結合するための、ポリウレタン等の熱成形性ポリマーの使用にも関連する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一局面によれば、インプラントを骨に結合(attach)する方法が提供され、ここで該インプラントは、平滑な(lubricious)水和された表面および利用可能な化学官能基を含む付着表面(attachment surface)を含む、水和されたポリマーを含む。本発明の方法は、以下の諸工程を含む:該インプラントまたは該骨を、イソシアネート-含有化合物で処理する工程;該付着表面を、該骨に付着した状態(in apposition to bone)で配置する工程;および該イソシアネート-含有化合物を硬化させて、該インプラントと該骨とを結合する工程。幾つかの態様において、該イソシアネート-含有化合物を硬化させる工程は、該インプラントと該イソシアネート-含有化合物との間に共有結合を形成する段階、例えば該イソシアネート-含有化合物にUV輻射線(UV radiation)を照射する段階を含む。
【0016】
幾つかの態様において、該イソシアネート-含有化合物を硬化させる工程は、ポリウレタンまたはポリウレタンの誘導体を生成する。該イソシアネート-含有化合物を硬化させる工程は、上記インプラントと上記イソシアネート-含有化合物との間に非-共有結合性の化学結合を生成する段階を含む。幾つかの態様において、該イソシアネート-含有化合物は、該化合物を硬化させる工程の後に架橋され、また幾つかの態様において、該イソシアネート-含有化合物は、該化合物を硬化させる工程後に、熱可塑性とすることができる。幾つかの態様において、該インプラントは、架橋された材料を含む。
【0017】
幾つかの態様は、上記付着表面に溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド等)を適用して、該付着表面を少なくとも部分的に溶解し、かつ該付着表面の溶解した部分を、上記骨の内部に流入させる段階をも含む。
【0018】
幾つかの態様は、上記処理工程に先立って、上記水和ポリマーを膨潤させる段階をも含む。該膨潤は、水性溶液中で起り得る。幾つかの態様においては、該処理段階に先立って、該水和ポリマーを少なくとも部分的に乾燥させる段階をも含む。
【0019】
幾つかの態様において、該イソシアネート-含有化合物は、ヒドロキシル基およびアミン基の少なくとも一方を含む。該イソシアネート-含有化合物は、また芳香族化学物質、例えばTDIまたはMDI、および/または脂肪族化学物質、例えばIPDIまたはHDIの一部である、イソシアネート官能基を持つことができる。
【0020】
幾つかの態様において、上記処置工程は、該イソシアネート-含有化合物を、該インプラントの該付着表面上に展開(spread)させる段階および/または該インプラントの少なくとも該付着表面を該イソシアネート-含有化合物に浸漬する段階を含む。該イソシアネート-含有化合物は、開始剤、触媒、促進剤または酸化防止剤の少なくとも1種を含むことができる。
【0021】
幾つかの態様においては、骨の少なくとも一部を、上記配置工程の前に除去する。他の態様においては、該配置工程に先立って、骨を除去することはない。該骨は、関節、例えば股関節、肩甲関節、膝関節、肘関節、指関節、足指関節、手関節、足関節、小関節面、顎関節、肋間部関節および胸肋間部関節の一部であり得る。
【0022】
幾つかの態様において、上記水和ポリマーは、少なくとも1種の生体分子を含む。このような態様において、該生体分子は、骨伝達性(osteoconductive)であり得、該分子は、例えばヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、骨形態形成性タンパク質、成長因子、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、コラーゲン、ラミニン、ビスホスホネート、および任意のこれらの誘導体であり得る。該生体分子は、該インプラントに繋がれていてもよい。
【0023】
幾つかの態様において、上記付着表面は、複数の空所(space)を持ち、結果として上記イソシアネート-含有化合物は、例えば該化合物を硬化させる工程前に、該付着表面内の少なくとも一つの空所内に流入することができる。他の態様において、該付着表面は平滑である。
【0024】
幾つかの態様において、上記処理工程は、該化合物を硬化させる工程前に、該イソシアネート-含有化合物を該骨の孔に流込む段階を含み、かつ該化合物を硬化させる工程は、該イソシアネート-含有化合物を該骨と機械的に噛合わせる段階を含む。該化合物を硬化させる工程前に、該イソシアネート-含有化合物を、上記インプラント内に流込むことができる。
【0025】
幾つかの態様において、本発明の方法は、該化合物を硬化させる工程前に、該インプラントに圧力を印加する段階を含む。幾つかの態様において、インプラントは、ポリウレタンを含むことができる。
【0026】
幾つかの態様において、該化合物を硬化させる工程は、該イソシアネート-含有化合物を重合して、生分解性ポリマーとする段階を含み、結果として、幾つかの態様においては、上記付着表面と該骨との間の界面の1%-99%が、該生分解性ポリマーで覆われることになる。
【0027】
本発明のもう一つの局面は、インプラントを骨に結合する方法を提供するものであり、ここで該インプラントは、平滑な水和された表面および熱可塑性物質を含む付着表面を含有する、水和されたポリマーを含む。該方法は以下の諸工程を含む:該付着表面を、該骨に付着した状態で配置する工程;および刺激を与えて、該熱可塑性物質を、該骨内に流入させ、かつこれと結合させる工程。幾つかの態様において、該刺激は、所定の周波数、例えば該熱可塑性物質の共鳴周波数に近い周波数を持つ赤外輻射線の照射であり得る。幾つかの態様において、該刺激は、集束された光ビームの照射であり得、ここで該熱可塑性物質は、部分的または完全に不透明であり、かつ該水和ポリマーは、実質的に透明である。該熱可塑性物質は、生分解性であってもよい。
【0028】
本発明のもう一つの局面では、医療用インプラントが提供され、該インプラントは、水和されたポリマーおよび熱可塑性物質(例えば、ポリウレタン等)を含む付着表面を有し、該水和ポリマーは、少なくとも2種のポリマーを含む相互侵入型(interpenetrating)ポリマーの網状構造および場合により少なくとも1種の利用可能な化学官能基を含み、該水和ポリマーは、少なくとも一つの表面において低い摩擦係数を持つ。該水和ポリマーは、またイオン化可能なポリマーおよび中性ポリマー、例えば親水性ポリマーを含むこともできる。
【0029】
幾つかの態様において、任意に、該官能基は、カルボン酸基、アミン基、ウレタン基、およびヒドロキシル基から選択される。幾つかの態様において、該水和ポリマーは、粒状繊維、粒状フィラー、およびマトリックスの内の少なくとも一つを含む。
【0030】
幾つかの態様において、該熱可塑性物質は、該水和ポリマーの一表面に共有結合していてもよい。幾つかの態様において、該熱可塑性物質は、該水和ポリマー上の被膜であってもよい。幾つかの態様において、該熱可塑性物質は、硬質および軟質セグメントを持つことができる。幾つかの態様において、該熱可塑性物質は、該水和ポリマーと物理的に絡み合っていてもよい。幾つかの態様において、該熱可塑性物質は、複数の空所を持つことができる。
【0031】
幾つかの態様において、該水和ポリマーは、ポリウレタン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、生体ポリマー、または任意のこれらの誘導体の内の少なくとも1つを含む。該水和ポリマーは、また哺乳動物の関節、例えば股関節、肩甲関節、膝関節、肘関節、指関節、足指関節、手関節、足関節、小関節面、顎関節、肋間部関節または胸肋間部関節における、天然の軟骨表面と交換すべく改造された表面を持つこともできる。幾つかの態様において、該熱可塑性物質は、哺乳動物の関節表面と一致するように改造された表面を持つことができる。
【0032】
本発明の新規な諸特徴は、特に添付した特許請求の範囲において示されている。本発明の諸特徴並びに利点の更に十分な理解は、本発明の原理を利用している、例示的な態様を示す以下の詳細な説明、および添付図を参照することにより、達成されるであろう。ここで、添付図は、夫々以下の通りである:
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1A-Bは、本発明の幾つかの態様に従う、水和ポリマーインプラントと骨との結合を、模式的に示した図である。
【図2】図2A-Cは、本発明の幾つかの他の態様に従う、水和ポリマーインプラントと骨との結合を、模式的に示した図である。
【図3】図3A-Cは、水和ポリマーインプラントと骨との結合およびその後の骨の同化(osteointegration)を示す図である。
【図4】図4A-Cは、幾つかの本発明の局面に従う、水和ポリマーインプラントと大腿先端部との結合を示す図である。
【図5】図5A-Dは、幾つかの本発明の局面に従う、結合法を模式的に示した図である。
【図6】図6は、大腿先端部モデルと結合した、本発明による水和ポリマーインプラントを示す図である。
【図7】図7は、股臼モデルと結合した、本発明による水和ポリマーインプラントを示す図である。
【図8】図8は、牛の骨サンプルと結合した、水和ポリマーインエレメントを示す図である。
【図9】図9A-Bは、本発明の幾つかの局面に従う、水和ポリマーインプラントと骨との熱可塑性結合を、模式的に示した図である。
【図10】図10A-Bは、水和ポリマーインプラントと骨との結合を示す斜視図であり、また図10C-Eは、経時に伴って内部に伸びた骨を示す、図10Aに示したインプラントおよび骨の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、水和ポリマー(例えば、ヒドロゲル等)と、骨および骨-様構造体または表面とを接着するための方法並びに組成物に関するものである。幾つかの態様において、該水和ポリマーは、利用可能な化学官能基、例えばアミン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、またはウレタン基、あるいはこれら官能基の組合せを含む。該ポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、半-相互侵入型または相互侵入型ポリマー網状構造をとることができる。本発明は、またこのような水和ポリマーで作られた医療用インプラントおよびこれと骨および骨-様構造体または表面との接着にも関連する。このような医療用インプラントは、軟骨と交換するように設計された滑らかな接合表面および身体のあらゆる関節において使用するための、該インプラントを骨に固定するように設計された付着表面を持つように形成される。このデバイスは、哺乳動物の関節において、該関節の一方の側に移植されて、水和ポリマー-担持軟骨を形成することができる。該デバイスは、更に、水和ポリマー-担持水和ポリマーの関節結合を生成する、対向する関節表面上に移植される第二の嵌合部品を持つことができる。あるいはまた、該デバイスは、更に金属、セラミックス、または非-水和ポリマーとの間に関節結合を形成する、対向する関節表面上に移植される第二の嵌合部品を持つことができる。
【0035】
図1A-Bは、本発明の一態様を例示する。平滑な水和された関節結合表面3を持つ医療用インプラント2は、イソシアネート-含有化合物4によって骨6に固定されており、該化合物は、骨6と該インプラント2の付着表面5との間の媒介物として機能する。この例示された態様において、該イソシアネート-含有化合物は、該インプラントとは分離状態にあり、また該インプラントの付着表面または該骨の何れかに適用することができる。該インプラントおよび骨を一緒にし、かつ該イソシアネート-含有化合物を硬化した後、該インプラントを該骨に固定する。該イソシアネート-含有化合物4と該インプラントの付着表面5との接着のメカニズムは、化学的および/または物理的なものであり、化学的接着は、例えば該デバイスの材料上に見出される反応性官能基と該イソシアネート-含有化合物中の化学基との間で形成される共有結合、および/または様々な非-共有結合性の相互作用、例えば吸着、疎水性相互作用、結晶の生成、水素結合、π-結合による積層、ファンデルワールス相互作用、および該デバイスと該硬化されたイソシアネート-含有化合物との間の絡合い等である。幾つかの態様において、該物理的な接着は、該デバイスの付着表面内およびこれに隣接する骨における空所、粗面、表面特性および/または孔の噛合いの結果であり得る。幾つかの他の態様においては、該付着表面は平滑である。幾つかの態様において、該イソシアネート-含有化合物は、イソシアネート系化学物質および該イソシアネートと反応性の化学基で官能化された分子、例えばアルコール、アミン、およびカルボン酸、および幾つかの場合には触媒、促進剤、阻害剤、および/または開始剤を含む、予め調製された混合物である。該イソシアネート-含有化合物は、液体、ゲル、パテ、ペーストまたはその他の流体であり得る。
【0036】
幾つかの態様において、ポリウレタンは、水和ポリマーと骨との間の迅速な接着およびその後の水和ポリマーと骨との間の骨同化(osteointegration)両者を促進するために、水和ポリマーインプラントとの化学的結合において媒介物として使用される。この二重の作用は、軟骨と交換するための、水和ポリマーと骨との間の長期に渡る接着を助長するであろう。該インプラントの骨に対する固定は、以下の事柄の1またはそれ以上に基いている:(1) 水和ポリマーの該付着表面上の既存のまたは調製された官能基とポリウレタンを主成分とするポリマー接着剤との間の共有結合;(2) 該インプラントの付着表面と該ポリウレタンを主成分とするポリマーの網状構造との間の相互侵入および物理的な絡合い;(3) 骨マトリックスと該ポリウレタンを主成分とするポリマー接着剤との化学的反応および/またはこれら相互の侵入;および(4) 水和ポリマーインプラント-骨接着剤および付随的な骨の内部成長および該水和ポリマーに対する付着のための足場(骨組)両者としての該ポリウレタン成分の二重の機能。該ポリウレタンは、再吸収性または非-再吸収性、多孔質または非-多孔質等の様々な形状をとることができ、またインプラントと骨との間の界面を完全にまたは部分的にのみ覆うように使用することができる。
【0037】
図2Aは一態様を示すものであり、そこでは、組込まれたポリウレタンを主成分とする層12を付着表面として持つ、水和ポリマー製医療用インプラント10が、イソシアネート-含有化合物14の使用によって、骨または他の表面16に結合されている。該インプラントおよび骨を一緒にし、かつ該イソシアネート-含有化合物を硬化した後、該インプラントは、該骨に固定される。
【0038】
図2Bは一態様を示すものであり、そこでは、組込まれたポリウレタンを主成分とする層22を付着表面として持つ、水和ポリマー製医療用インプラント20が、イソシアネート-含有化合物24が適用されている骨または他の表面26と付着された状態に置くことにより、該骨に結合されている。該化合物24の硬化後、該インプラント20および骨26は、相互に接着される。
【0039】
図2Cは一態様を示すものであり、そこでは、組込まれたポリウレタンを主成分とする層32を付着表面として持つ、水和ポリマー30が、該ポリマーおよび所定量のイソシアネート-含有化合物34を、同一のまたは別のイソシアネート-含有化合物35が適用されている骨36と付着された状態に置くことにより、該骨36に結合されている。該化合物34および35の硬化後、該インプラント30および骨36は、相互に接着される。
【0040】
本発明は、またポリウレタン等の熱成形性ポリマーの使用にも係り、該熱成形性ポリマーは、その場での反応性および容易に調節し得る機械的特性、接着性、多孔性、骨伝達性、熱可塑性、およびインビボ再吸収挙動(即ち、これらは、様々な割合で、非-再吸収性または再吸収性のものとすることができる)等の、水和ポリマーインプラントと骨または骨-様構造体との結合にとって有用な諸特性を持つ。該ポリウレタンを主成分とするポリマー接着剤の選択的な加熱は、固体状態から液体または粘稠な液体状態への相転移を生じて、該ポリマー層を展性または流動性を持つものとするであろう。該水和ポリマーインプラントを該骨上に配置すると、該ポリマー層は、該骨の間隙および孔に侵入するであろう。熱および他の刺激を排除すると、該ポリマーは再度硬化し、該ポリマーとその下方の骨との密な噛合い、および該水和ポリマーインプラントと該骨との間の堅固な固定状態をもたらすであろう。
【0041】
幾つかの態様において、該イソシアネート-含有化合物接着剤または熱成形性ポリマー層は、生分解性(再吸収性)であり、また骨の内部成長を維持するインプラントとの組合せで使用することができる。該生分解性ポリマーは、移植に先立って、該骨または該インプラントに適用することができる。移植後、該分解性のポリマーは、数週間乃至数年に渡って徐々に溶解し、また骨、繊維組織、または骨組織となる繊維組織により置換される。該生分解性のポリマーは、該水和ポリマーインプラントと該骨との間に完全な媒介層を形成し、結果として該水和ポリマーインプラントと骨とが、相互に直接接触することのないように、適用することができる。あるいはまた、該生分解性のポリマーを、該インプラントを該骨上に移植する前に、該骨の表面または該水和ポリマーインプラントの何れかの不連続領域に適用して、該生分解性ポリマーが、一旦該インプラントが移植された場合には、該水和ポリマーインプラントの付着表面と該骨の表面との間の界面の1%〜99%を覆うようにすることができる。この態様において、該生分解性ポリマーは、該水和ポリマーインプラントと該骨との間の初期の固定をもたらし、一方で骨の内部成長は、該生分解性ポリマーにより覆われていない、該水和ポリマーインプラントの領域において起る。従って、骨の内部成長が起った後、該生分解性ポリマーは、徐々に分解するであろう。該ポリマーが分解するにつれて、該骨の内部成長が、今や該インプラント-骨固定の強度を与える。
【0042】
本発明は、損傷を受けた軟骨と置換するように設計され、またネジ、固定ピン、または該デバイスを固定するための他の骨-犠牲手段を使用する必要なしに、関節内の特定の位置に接着するように設計された、ヒドロゲル等の水和ポリマーを主成分とする関節形成術用インプラントを含む。これは、更に該インプラントの骨との接触表面の如何なる実質的な調製または加工をも必要とすることなしに、該水和ポリマーインプラントと骨との迅速な接着を可能とし、また結果として骨の内部成長および骨の同化を可能として、図3に示すように、該インプラントを所定位置に更にしっかりと固定する。本発明は、疾患のあるまたは損傷を受けた軟骨または軟骨性構造体の除去後、身体内のあらゆる関節に対して、水和ポリマーインプラントを結合するのに使用できる。これらの関節は、膝関節、股関節、脊柱(腰部または頸部領域における小関節面または円盤)、肘関節、足関節、足部関節、足指関節、腕関節、指関節、手首関節、肩甲関節、顎関節、胸骨関節、および肋間部関節を含むが、これらに限定されるものではない。幾つかの整形外科学用途において、該水和ポリマーインプラントは、滑らかであり、その関節との結合表面における比較的低い摩擦係数を持ち、良好な機械的特性を有し、また非-再吸収性である。
【0043】
図4A-Cに示したように、本明細書に記載する上記材料は、壊死関節、嚢胞を含む関節および/または破壊された骨を持つ関節の表面を再建するために使用することができる。これらは、また骨-犠牲関節形成術後に利用することもできる。一態様において、ポリウレタンを主成分とする接着剤の薄層を持つ、水和ポリマーで構成されるインプラント50は、正常な関節領域に配置される。追加の体積のポリウレタンを主成分とする接着剤52が、その下方の骨の空隙を満たす。該ポリウレタンを主成分とする接着剤は、骨の足場として機能する。時間の経過とともに、骨が該硬化されたポリウレタンを主成分とするポリマー(図4Cにおいて領域58として図示されている)内に伸び、該骨の形態を復元し、かつ該水和ポリマーインプラントを該骨に対して繋留または固定するのに役立つ。
【0044】
本発明の一態様は、(1) 該水和ポリマーインプラントの付着表面における同時の反応および硬化中の隣接領域における該イソシアネート-含有化合物の重合/架橋;(2) 該水和ポリマーの網状構造における、得られるポリウレタンポリマーの相互侵入;および(3) 該隣接する骨と該ポリウレタンとの嵌合をもたらす。
【0045】
本発明のもう一つの態様は、(1) 目的とする骨と接触する付着表面上に、ポリウレタンを主成分とする被膜または層を持つ水和ポリマーインプラントを製造するために、その製造中にあるいは移植に先立つ、該インプラントの付着表面のポリウレタン被膜による被覆;(2) その後の、同一のまたは異なるポリウレタンを主成分とする接着性ポリマーを備えた、骨の調製;(3) 該ポリウレタン-変性水和ポリマーインプラントと、該ポリウレタンで被覆した骨との付着;(4) 該水和ポリマーインプラントの該ポリウレタン-被覆面と骨との間の、化学反応および/または相互の嵌合による接着を与える。この得られる連続なポリウレタンを主成分とするポリマーは、該水和ポリマーインプラントと該骨とを、軟骨下または小柱状の骨内部の間隙および孔および(該インプラントの表面も多孔質である場合には)該インプラントの間隙および孔を満たすことにより接着する。
【0046】
該水和ポリマーインプラントは、少なくとも部分的にホモポリマー、コポリマー、半-相互侵入型または相互侵入型ポリマー網状構造のヒドロゲル構造を持つことができる。該水和ポリマーインプラント用のポリマーの例は、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリウレタン、生体ポリマー(例えば、コラーゲン、ヒアルラン(hyaluran)またはキトサン)、およびこれらの誘導体および組合せを含むが、これらに限定されない。該ヒドロゲルは、二種のポリマー、例えばポリ(エチレングリコール)-ジアクリレート/ポリ(アクリル酸)(PEG/PAA)またはポリ(ビニルアルコール)/ポリ(アクリル酸)(PVA/PAA)あるいはまたポリウレタン/ポリ(アクリル酸)を含む、相互侵入型または半-相互侵入型ポリマー網状構造を持つものであり得る。該ヒドロゲルは、第一および第二のポリマーを含む相互侵入型網状構造を持つものであり得る。該第一のポリマーは、高い機械的強度を持つ熱可塑性物質であり得、その例はポリウレタン(PU)(エラスタン(ElasthaneTM) 55Dまたは他のポリエーテルウレタン、ポリカーボネートウレタン、ポリカーボネートウレタンウレア、シリコーンポリエーテルウレタン、ポリウレタンウレア、およびシリコーンポリカーボネートウレタンを含むが、これらに限定されない);アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS);ポリ乳酸(PLA);ポリスルホン(PSU)、ポリビニルアセテート(PVA)を含むが、これらに限定されない。該第二のポリマーは、カルボン酸-含有ビニルモノマー、例えばアクリル酸およびメタクリル酸、またはスルホン酸-含有ビニルモノマー(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、スルホプロピルアクリル酸エステル、ヒアルロン酸、ヘパラン硫酸、およびコンドロイチン硫酸を含むが、これらに限定されない)を含むが、これらに限定されない、イオン化可能なビニルモノマーから誘導される親水性ポリマーであり得る。該第二のモノマーは、また非イオン性の、例えばアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、メチルメタクリレート、N-ビニルピロリドン、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレートまたはこれらの組合せまたは誘導体等であり得る。イオン性および非-イオン性モノマーのコポリマーも使用できる。更に、架橋された線状ポリマー鎖並びに生体分子、例えばタンパク質およびポリペプチド(コラーゲン、ヒアルロン酸、またはキトサン)を使用することも可能である。適当な水和ポリマーおよびヒドロゲルの製法に関しては、継続中の米国特許出願SN 12/148,534号(出願日:4/17/08);同SN 61/079,060(出願日:7/8/08);同SN 61/086,442号(出願日:8/5/08);および同SN 61/095,273号(出願日:9/8/2008)を参照のこと。これら特許出願の開示事項を、参考としてここに組入れる。
【0047】
幾つかの態様において、該水和ポリマーは、利用可能かつ反応性の官能基、例えばカルボキシル基、ウレタン基、アミン基、またはヒドロキシル基、もしくはこれら官能基の組合せを含む。これらの官能基は、該接着剤中に含まれるイソシアネートと選択的に反応して、ウレタンまたはウレア結合を形成することができる。本発明にとって有用な一特定の種類の水和ポリマーは、ポリ(アクリル酸)および他の親水性ポリマーの網状構造で構成される、相互侵入型ポリマーの網状構造である。ポリ(アクリル酸)は、豊富なカルボン酸側鎖基を含む。このような水和ポリマーの一例は、ポリ(エチレングリコール)-ジアクリレート/ポリ(アクリル酸)(PEG/PAA)相互侵入型のポリマー網状構造で構成されるヒドロゲルであり、これは、文献記載の方法で、二官能性または一官能性架橋剤(例えば、トリエチレングリコールジメタクリレートまたはメチレンビスアクリルアミド)によりPAAを架橋し、または架橋することなしに、2-段階逐次光重合することにより製造される。γ-線照射または電子ビーム照射を利用して、該水和ポリマーインプラントを架橋することも可能である。異なる官能基(例えば、アミン基またはヒドロキシル基)または官能基の組合せを持つ他のヒドロゲルを使用することも可能である。
【0048】
図5に示したように、上記イソシアネート-含有化合物中のイソシアネート基は、水和ポリマー表面上の多くの異なる官能基と反応することができる。例えば、ポリ(アクリルアミド)およびPAAを使用する場合、該アクリルアミド中のアミン基および該PAA中のカルボン酸基は、両者共に該イソシアネートと反応して隣接するポリウレタンと結合を形成することができる。ポリ(ビニルアルコール)を使用した場合には、ヒドロキシル基が、アミン基並びにカルボン酸基の代わりにイソシアネートと反応するであろう。もう一つの組合せは、ポリ(ビニルアルコール)とポリ(アクリルアミド)との組合せであり、この場合、ヒドロキシル基およびアミン基が、イソシアネートと反応する。イソシアネートも、インプラント表面上のアミン基と反応して、置換ウレア結合を生成することができる。イソシアネートは、またインプラント表面上のウレタン基と反応して、アロファネート結合を生成することができる。これらのカップリング反応は、相互に一斉に、また該イソシアネート-含有化合物の硬化の結果得られる該ポリウレタンを主成分とするポリマーと該水和ポリマーインプラントの相互の拡散および絡合いによって作用し得る。これら追加の物理的な絡合いは、これら2種の物質間の接着性を強化し得る。これは、如何なる共有結合による結合もなしに、単独で作用でき、また水素結合、疎水性相互作用、結晶化、π-結合による積層、またはファンデルワールス相互作用等の非-共有結合型の相互作用のみによって強化できる。
【0049】
幾つかの態様において、該結合法は、図5A-Dに示したように、ヒドロゲル表面上の利用可能な官能基と、イソシアネート-含有化合物との間の化学反応を含む。図5Aに示したように、ジイソシアネート化合物60は、ヒドロキシル官能基62、アミン官能基64、および/またはカルボン酸官能基66の何れかを含む、他の1または複数のポリマー(例えば、柔軟なセグメントおよび連鎖延長性部分)と反応する。既存の水和ポリマー70上に存在するカルボン酸官能基68の存在下で一緒に反応した場合、化学反応が起り、この反応は、図5Bに示す組成物を与える。
【0050】
図5Bにおいては、幾つかの構造が得られる:即ち、ポリウレタンを主成分とするポリマー72(二酸化炭素副生成物を含む)、および該ヒドロゲル表面78に存在する該ポリマーの主鎖76との間のアミド結合。もう一つの構成を図5Cに示したが、ここではポリウレタンを主成分とするポリマー80は、アミド結合82および隣接する水和ポリマー86に対する物理的な絡合い84両者によって結合される。図5Dは、骨90等の対象が、本明細書に記載の方法により、如何にして、ポリウレタンを主成分とするポリマー92を介して、隣接するヒドロゲル94に結合されるかを示している。
【0051】
一例において、本発明の一態様によれば、ポリ(テトラメチレンオキサイド)ジオールおよびメチレンジフェニルジイソシアネートを含むイソシアネート-含有化合物を、プレポリマー溶液中のブタンジオールおよびヒドロゲル表面上のカルボン酸基と反応させた。その結果、該ヒドロゲルに結合した、ポリウレタンを主成分とするポリマーが得られ、該ポリウレタンポリマーおよびヒドロゲルは、物理的に絡合いおよび/または該ポリウレタンプリカーサ中のイソシアネート基と該ヒドロゲル上のカルボン酸基との間の反応に由来するアミド結合を通して共有結合的に結合した。骨と直接的に付着させて注型すると、該ポリウレタンポリマーも骨に結合し、かつ該ヒドロゲルと骨との間の介在接着剤層として機能した。
【0052】
もう一つの例において、PEG/PAAヒドロゲル(リン酸緩衝塩水中で膨潤)を調製するために、その表面を軽くたたいて乾燥し、次いで加熱銃または圧縮空気を用いて、穏やかに風乾させた。このヒドロゲルは、その表面上に豊富な量のポリ(アクリル酸)ポリマー鎖を有していた。次いで、該イソシアネート-含有化合物(メチレンジフェニルジイソシアネートおよびジオールプレポリマー混合物を含む)を、該ヒドロゲル表面上に展開し、更に該ヒドロゲルを、骨の上に、接着剤を含む側を下にして配置し、該ヒドロゲルの該骨に対する密接な圧接状態を維持するために圧力を印加しつつ、数分間硬化させた。該接着剤の硬化は、完了するまで数時間継続した。その結果、該ヒドロゲルの表面上でポリウレタンウレア層が生成し、かつ該表面に化学的に結合し、また物理的に骨と噛合っていた。
【0053】
本発明の方法、デバイスおよび組成物は、水和ポリマーおよびヒドロゲルを、様々な表面に結合するのに利用し得る。PEG/PAAヒドロゲルは、本発明を利用して、様々な対象に結合された。一態様においては、図6に示したように、ヒドロゲルキャップ50の下方にポリウレタンを主成分とするポリマー(図示せず)を用いて、半球形状のヒドロゲル50が、大腿部モデル56の大腿先端部に結合された。移植過程を図4A-Cに模式的に示した。該ヒドロゲル50およびポリウレタンを主成分とする接着性ポリマー52は、該大腿先端部の表面上に配置される。該ポリマー52は、該大腿先端部に対する該ヒドロゲル50の接着に加えて、該大腿先端部におけるあらゆる欠陥54内を満たすことができる。時間の経過に伴って、該骨は、図4Cに模式的に示した如く、骨の同化によって、該充填欠陥内に伸びる。
【0054】
図7に示されているもう一つの例においては、半月形ヒドロゲルシート100が、股臼モデル102に結合された。様々なヒドロゲルを主成分とするインプラントの詳細は、米国特許出願SN 12/148,534号に見出すことができる。
【0055】
図8に示された更に別の例においては、PEG/PAAヒドロゲル110が、牛の骨のサンプルに結合された。これらのサンプルを、一軸材料テスト装置を使用して、重ね剪断および剥離テストに掛けた。該重ね剪断テストは、60kPaなる結合剪断強さを示し、また該剥離テストは、0.08N/mmまでの剥離強さを示した。また、ポリウレタン接着剤を用いた場合の、ポリカーボネートウレタンと牛海綿骨質との間の結合強さに関しても、重ね剪断テストを行った。その剪断強さは、0.21-0.68MPaなる範囲であった。これらの水和ポリマー-骨検体に関する、これら重ね剪断および剥離試験は、ポリウレタンを主成分とする接着剤の強度のために、該水和ポリマーを該骨から分離するのに必要な負荷の大きさを明らかにする。これは、該水和ポリマーと該ポリウレタン接着剤間並びに該ポリウレタン接着剤と骨との間の接着性を明らかにする。
【0056】
ポリウレタン-ウレア接着剤を介する、非-平滑性ポリカーボネートウレタンの骨に対する結合は、該インプラントの該付着表面の骨に対する結合能を明らかにする。一つの平滑な、水和された表面および一つの付着表面で構成される完全なデバイスを骨に結合するためには、まず、該インプラントデバイスを作成する。一態様において、該インプラントはポリウレタンで作られている。該インプラントの一つの表面を、ポリ(アクリル酸)で変性して、ポリウレタンおよびポリ(アクリル酸)の相互侵入型ポリマー網状構造を生成する。この表面を水で膨潤させて、平滑な水和された表面を生成する。該インプラントの第二の表面、即ち付着表面は、無水状態に維持する。該ポリウレタンを主成分とする接着剤を、該付着面に適用し、また該デバイスの付着表面を、骨の表面に当接させて配置する。該接着剤を硬化させ、該骨と該インプラントの付着表面とを結合させる。
【0057】
一態様において、該ポリウレタン物質の添加は、該ヒドロゲルを製造した後に行う。他の態様において、該ポリウレタンは、該ヒドロゲルの製造と同時に、該ヒドロゲルに添加される。該ポリウレタンは、例えばバイオネート(BionateTM) 75D等の市販品として入手できるポリカーボネートポリウレタン等の如く、予備成形されたものであってもよく、あるいは製造中(あるいは移植中)に合成することもできる。
【0058】
上記媒介層は、各々少なくとも2つのイソシアネート基を持つ、1種またはそれ以上の化学物質、および各々典型的には、ポリウレタン構造の土台を形成する、少なくとも2つのヒドロキシル基(ジオール化合物)を持つ、通常は少なくとも2種の他の化学物質(軟質セグメントおよび連鎖延長剤)を含有する、プレポリマープリカーサ溶液から製造できる。該ポリウレタンは、あらゆる型の硬質セグメント、軟質セグメント、または連鎖延長性部分を持つことができる。軟質セグメントの例は、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリテトラメチレンオキサイド(PTMO)、ポリ(ジメチルシロキサン)、およびポリカーボネート、並びにこれらの誘導体および組合せを含むが、これらに限定されるものではない。該イソシアネートは、脂肪族イソシアネート(例えば、ヘキサメチルジイソシアネート(HDI)またはIPDI)または芳香族(例えば、MDIまたはTDI)イソシアネートの何れであってもよい。該硬化反応を加速するために、開始剤、触媒、または促進剤を添加することも可能である。様々な硬質および軟質セグメントおよび連鎖延長性部分のリストは、生物医学用途におけるポリウレタン(Polyurethanes in Biomedical Applications)(Nina M.K. Lamba, Kimberly A. Woodhouse, Stuart L. Cooper, Michael D. Lelah, CRCプレス(CRC press)刊, 1987)において見出すことができる。この文献の開示事項を、参考としてここに組入れる。
【0059】
該ポリウレタンを主成分とするポリマーの、長期に渡るインビボ安定性を改善するために、酸化防止剤を添加することができる。一態様において、該ポリウレタン媒介物は、細胞の内部への伸びおよび骨マトリックス堆積用の足場として作用するように配置される。
【0060】
該ポリウレタンを主成分とするポリマーは、生体分子で含浸し、あるいはこれにより繋ぎ止めることができ、該生体分子としては、骨伝達性生体分子、例えばヒドロキシアパタイト、炭酸塩化されたアパタイト、リン酸三カルシウム、骨形態形成性タンパク質(BMPs)、成長因子、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、コラーゲン、ラミニン、およびビスホスホネート、並びにこれらの誘導体および組合せを包含するが、これらに限定されない。
【0061】
幾つかの態様において、骨-界面領域(支持層)は、該骨のカルシウム-含有およびリン酸塩-含有骨-マトリックス構成要素と結合することができる。該支持層(骨-界面層)は、合成骨-様構造体、例えば多孔質リン酸カルシウム含有物質(その例は、炭酸塩化されたアパタイト、β-リン酸三カルシウム、またはヒドロキシアパタイトを含むが、これらに限定されない)に対して繋ぎ止めることができる。
【0062】
幾つかの態様においては、上記の如く、該デバイスの多孔性は、骨の内部成長を容易にするために望ましい。これを達成するための一つの方法は、該ポリウレタンの親水性/疎水性比を変更して、該材料の接着性およびその骨成長能力に変化を与えることである。該ポリウレタンを主成分とするポリマーは、多少とも親水性または疎水性となり、またより高いまたはより低い膨張または膨潤能力を持つように変性することができる。該ポリマーは、結晶化し、あるいは発泡しおよび孔(連続または独立気泡)を生成し、もしくは孔を全く持たないように変性することができる。該ヒドロゲルは、粒状繊維または粒状フィラーで強化することができる。多孔性は、発泡剤の使用、水との制御された反応(二酸化炭素を生成するための)、または封入され、次いで洗い流される孔形成剤(porogens)(例えば、塩または糖結晶もしくはポリマー粒子)の使用の何れかにより、実現することができる。該水和ポリマーインプラントは、粒状繊維または粒状フィラーで強化することができる。
【0063】
もう一つの例において、該インプラント付着表面は、組織の内部成長/同化、一体化および骨の形成に適応するために、10〜2,000μmなる範囲の多孔性または粗面性、15〜70%なる範囲の多孔度、および1MPaを越える圧縮強さを持つことにより特徴付けられる。該骨-界面領域は、焼結ポリカーボネートウレタンビーズによって作ることができる。簡単に言えば、バイオネート(BionateTM) 55D、バイオネート65Dおよびバイオネート75D等を含むが、これらに限定されない、ポリカーボネートウレタン粒子(粒径範囲:250-1,500μm)を、熱(220-250℃)、圧力(0.001-100MPa)および/または溶媒を用いて、金型内で10〜30分間焼結する。該ビーズは、任意の方法、例えばBrown等, Journal of Biomedical Materials Research Part B: 応用バイオマテリアルズ(Applied Biomaterials),「溶媒/非-溶媒焼結:組織再生用の微小球状の足場を製造する新たな経路(Solvent/Non-solvent sintering: A novel route to create microsphere scaffolds for tissue regeneration)」, 2008; 86B(2): 396-406またはBorden等, Journal of Biomedical Materials Research, 2002; 61(3): 421-9:「骨組織を操作するための焼結マトリックス:インビトロでの骨伝達性に関する研究(The sintered matrix for bone tissue engineering: in vitro osteoconductivity studies)」に記載されている方法により製造することができる。該骨-界面領域は、またカルシウム-含有成分およびリン酸塩-含有成分で、予備被覆することも可能である。更に別の例において、生体分子は、該骨-界面領域に対して化学的または物理的に結合することができる。該多孔質構造物は、上記平滑性ポリマーの何れかで作られた、上方の支持表面と共に使用される。
【0064】
該水和ポリマーインプラントに結合されあるいはこれと一緒に混和される、任意の成形されたポリウレタン媒介物は、骨、骨-様表面、または軟骨の表面に結合することができる。一態様において、該成形された媒介物は、選択的に軟化し、溶融し、あるいは軟骨下または小柱骨の孔または間隙内に流入させることができ、その手段としては、例えば機械的な振動(振動溶接)、超音波エネルギー(超音波溶接)、高周波数電磁エネルギー(ラジオ周波数(RF)溶接;およびマイクロ波溶接)、レーザービームエネルギー、赤外(IR)エネルギー、選択的スペクトル赤外(IR)エネルギー、光(UVまたは可視)および熱が挙げられる。該エネルギー源を取外した後に、該材料は再度固化する。この方法は、模式的に図9に示されており、そこでは、熱流動性の層122を持つ水和ポリマーインプラント120が、該エネルギー126の適用を介して、骨124に接着されている。該熱流動性物質は、またヒドロキシアパタイト、放射性造影剤、または該物質のより迅速な加熱を可能とする金属粒子等の、包埋された添加物を含むこともできる。
【0065】
一態様において、該ポリウレタン媒介層は、選択的な赤外励起によって、選択的に軟化または溶融される。セグメント化ポリウレタンは、様々な硬質および軟質セグメントを含み、その各々は、適当な周波数を持つ赤外輻射光により選択的に共鳴し得る、特徴的な化学結合を維持することができる。故に、ポリカーボネートウレタン(例えば、バイオネート(BionateTM) 75D)を、該水和ポリマーインプラントと該骨との間の媒介層として使用することができる。このポリウレタンは、赤外分光分析において、1550-1750cm-1なる範囲に吸収ピークを示す、炭素-酸素二重結合を保持している。該周波数領域における赤外輻射光の照射は、該物質の加熱を生じ、結果として液化し、更にその結果として該物質の該骨の孔への浸透を生じ、また該物質が冷却され、かつ固化した後に、機械的な絡合いを生じさせる。この選択的な励起は、該水和ポリマーインプラントの残部の加熱(また結果的にこれを軟化しまたは溶融する)ことを回避するために必要とされ、従って該励起周波数は、該水和ポリマーインプラントの持つ分子結合の励起周波数に近いものであってはならない。従って、該デバイスの冷却は、該媒介物質の再度の硬化、固化を引起し、それにより該デバイスの繋留、固定がもたらされる。
【0066】
もう一つの態様において、該媒介層は、該デバイスを構成する該水和ポリマーインプラントの値よりも低い溶融または軟化温度を持つ。この場合、該媒介層の溶融または軟化温度以上であるが、該水和ポリマーインプラントの融点よりも低い温度での該デバイスの加熱は、選択的な溶融を引起し、そのため該媒介層物質の該骨の孔への浸透を生じ、また該物質が溶融、軟化温度未満の温度に戻された後には、機械的な絡合いを生じさせる。該デバイスの加熱は、その移植の直前に、該デバイスの近傍における発熱体によって達成できる。加熱および機械的な加圧の組合せを適用して、該骨の微細構造のへこみに従って、該媒介物質の永久的なクリープを誘発し、また結果的にその機械的な噛合いを高めることができる。
【0067】
もう一つの態様において、該媒介層は、集束されたレーザービームが、該水和ポリマーインプラントの残部を溶融することなく、該媒介層を選択的に軟化あるいは溶融し得るような、光学的(即ち、不透明性)および熱的諸特性を持つ。このような態様において、該実質的に透明な水和ポリマーインプラントは、該骨の上に配置され、集束されたレーザーエネルギーパルスを放出する、手持式の装置は、該部分的または完全に不透明な媒介層を局所的に加熱して、その選択的な軟化または溶融を引起し、結果的に該骨の孔への浸透を生じ、また該物質が溶融、軟化温度未満の温度に戻された後には、機械的な絡合いを生じさせる。該レーザー光の周波数も、該媒介層材料の1またはそれ以上の原子または分子結合の共鳴周波数に近いものとなるように、調整することができる。
【0068】
一態様において、該媒介層は、低エネルギーレベルでの放出を要請することにより、該熱転移(または相転移)を容易にするような幾何学的特徴を持つことができる。これらの幾何学的特徴は、表面積を増大し、かつ該影響を被る(軟化または溶融)領域の体積を減じるピラー、隆起/穴、溝、またはその他の突起/突出部であり得る。
【0069】
もう一つの態様において、該媒介層は、これを軟化し、あるいは流動化さえもする適当な溶媒を使用して、一時的に溶解することも可能である。ポリウレタンについて、このような溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)であり得る。該溶媒の適用は、移植の数分前に行って、該媒介層の部分的な溶解を引起し、結果としてこれを該骨の孔に侵入させ、かつ該溶媒の除去およびその後の該ポリウレタンの固化後に、機械的な噛合いを達成することができる。
【0070】
該水和ポリマーインプラントは、既存の関節構造体の形状に成型し、あるいは栓、円板、シート、キャップ、盃状部並びに非-対称形状、例えば哺乳動物の関節に見られるような形状にある、骨内に形成された溝に挿入することができる。栓またはシートの場合、これは、関節軟骨の局所的または部分的な欠陥を部分的に修復(全関節の表面を付替える代わりに)するのに使用することができる。該ポリウレタンを主成分とする接着剤は、該水和ポリマーインプラントが、支持または保護表面として機能し得る構成で、該骨に該水和ポリマーインプラントを固定するであろう。
【0071】
該ポリウレタンを主成分とするポリマーは、完全に分解性、部分的に分解性、または非-分解性であり得る。また、これは、該繋留および/または骨同化過程を補助するために、任意の材料の非-分解性で可撓性のマトリックスと、混合することもできる。また、これは、該水和ポリマーインプラントと同時におよび連続的に構築(重合)して、少なくとも一方の側に水和ポリマーインプラントを、および少なくとも他の側にポリウレタンを主成分とするポリマーを持つ複合構造を作ることも可能である。
【0072】
該媒介固定物質、即ちポリウレタンを主成分とする接着剤または熱流動性物質は、任意の固化および硬化処理の後に、生体適合性分解性生成物と共に生分解性物質となり得、そのためこれは、骨、繊維組織、または無機質化組織に転化する繊維組織によって、徐々に置換される。該ポリマーの組成(即ち、コポリマー組成、ポリマーブレンド比、硬質:軟質セグメント比を介する結晶性)および生物学的安定性(即ち、加水分解安定性および酸化安定性)を選択することによって、該ポリマーの機械的および生分解特性は、最初に、該水和ポリマーインプラントと該骨との間の強力な結合をもたらし、一方で該ポリマーの分解を可能とし、かつ移植後の所定の時点(数週間乃至数年)において、機械的特性の相対的な低下をもたらすように調節することができる。該分解の所定の時点は、最小の負荷が課せられる用途(幾つかの末梢部の関節)における数週間から、高い衝撃の掛かる関節(例えば、膝および足の関節)または骨粗鬆症患者および骨形成能が低下する疾患に罹患している患者における数カ月または数年の範囲で変動する可能性がある。該ポリウレタン媒介物として有用な分解性ポリウレタン組成物の例は、以下の文献の引用を通して本明細書に組み入れられる:Gorna K, Gogolewski S., 骨グラフト代替品用の生分解性ポリウレタンフォームの調製、分解および石灰化(Preparation, degradation, and calcification of biodegradable polyurethane foams for bone graft substitutes), J. Biomed. Mater. Res. A. 1/12/2003, 67(3): 813-27; Scott A. Guelcher, Vishal Patel, Katie M. Gallagher, Susan Connolly, Jonathan E. Didier, John S. Doctor, Jeffrey O. Hollinger, Tissue Engineering, 2006 (5月), 12(5): 1247-1259. doi: 10.1089/ten.2006.12.1247., 脂肪族ジイソシアネートおよびジウレアジオール連鎖延長剤からの、生体適合性セグメントを持つポリウレタンの合成(Synthesis of biocompatible segmented polyurethanes from aliphatic diisocyanates and diurea diol chain extenders), Acta Biomaterialia, 第1巻, 第4号, 2005年6月, pp.471-484。
【0073】
図10A-Eに示されたもう一つの態様において、生分解性の媒介固定物質は、ハイブリッド固定技術において使用することができ、該技術においては、該固定物質と骨の内部成長とが組合されて、該水和ポリマーを主成分とするインプラントと該骨との間の一時的に一定の、高強度の接着が形成される。この態様において、該媒介固定物質130は、該水和ポリマーを主成分とするインプラント132と該骨134との間の界面全体ではなく、例えば不連続点、ライン、および該インプラント-骨界面を横切って、規則的またはランダムには移行する幾何学的パターンとして、該界面の部分に適用される。例えば、図10Aは、該媒介固定物質130の、リング状での適用を示し、また図10Bは、該媒介固定物質130の、点またはドット配列での適用を示している。従って、該媒介固定物質は、全体として該界面の1〜99%を覆っており、該固定物質の存在しない該界面の残りの領域は、該ヒドロゲルを主成分とするインプラントと該骨との間で直接接触している。移植に際して、該媒介固定物質は、該インプラントを移植する前に、該骨、該インプラント、またはこれら両者に適用することができる。
【0074】
様々な態様において、該媒介固定物質は、生分解性ポリマーであり、これは、初めに、該水和ポリマーインプラントと骨との間の固定をもたらし、一方で該生分解性ポリマーにより覆われていない、該水和ポリマーインプラントの領域において、骨の内部成長が起こる。従って、骨の内部成長が生じた後には、該生分解性ポリマーは、図10D-Eに示すように、徐々に分解する。該ポリマーが分解するにつれて、その機械的な諸特性は減衰し、また骨136の該インプラント内部への成長を通して形成される、新たな骨の組織が、以降は、インプラント-骨間の固定に要する強度を与える。
【図1A−1B】

【図2A】

【図2B】

【図2C】

【図3A−3C】

【図4A】

【図4B−4C】

【図5A】

【図5B】

【図5C】

【図5D】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
インプラントを骨に結合する方法であって、該インプラントが、平滑な水和された表面および利用可能な化学官能基を含む付着表面を含む、水和されたポリマーを含有し、かつ該方法が以下の諸工程:
該インプラントまたは該骨を、イソシアネート-含有化合物で処理する工程;
該付着表面を、該骨に付着した状態で配置する工程;および
該イソシアネート-含有化合物を硬化させて、該インプラントと該骨とを結合する工程
を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記イソシアネート-含有化合物を硬化させる工程が、前記インプラントと前記イソシアネート-含有化合物との間に共有結合を形成する段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記共有結合を形成する段階が、前記イソシアネート-含有化合物にUV輻射線を照射する段階を含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記イソシアネート-含有化合物を硬化させる工程が、ポリウレタンまたはポリウレタンの誘導体を生成する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記イソシアネート-含有化合物を硬化させる工程が、前記インプラントと前記イソシアネート-含有化合物との間に非-共有結合性の化学結合を生成する段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記イソシアネート-含有化合物が、前記化合物を硬化させる工程後に、架橋される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記イソシアネート-含有化合物が、前記化合物を硬化させる工程後に、熱可塑性物質となる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記インプラントが、架橋された物質を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
更に、前記付着表面に溶媒を適用して、該付着表面を少なくとも部分的に溶解し、かつ該付着表面の溶解した部分を、前記骨に流入させる段階をも含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記溶媒がジメチルスルホキシドを含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
更に、前記処理工程に先立って、前記水和ポリマーを膨潤させる段階をも含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記膨潤が、水性溶液中で起る、請求項11記載の方法。
【請求項13】
更に、前記処理工程に先立って、前記水和ポリマーを少なくとも部分的に乾燥させる段階をも含む、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記イソシアネート-含有化合物が、ヒドロキシル基およびアミン基の少なくとも一方を含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記イソシアネート官能基が、脂肪族の化学物質を含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記脂肪族の化学物質が、IPDIを含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記脂肪族の化学物質が、HDIを含む、請求項15記載の方法。
【請求項18】
前記イソシアネート-含有化合物が、芳香族化学物質の一部である、イソシアネート官能基を含む、請求項14記載の方法。
【請求項19】
前記芳香族化学物質が、TDIを含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記芳香族化学物質が、MDIを含む、請求項18記載の方法。
【請求項21】
前記処理工程が、前記イソシアネート-含有化合物を、前記インプラントの前記付着表面上に展開させる段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項22】
前記処理工程が、前記インプラントの少なくとも前記付着表面を、前記イソシアネート-含有化合物中に浸漬する段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項23】
前記イソシアネート-含有化合物が、開始剤、触媒または促進剤の内の少なくとも1種を含む、請求項1記載の方法。
【請求項24】
前記イソシアネート-含有化合物が、酸化防止剤を含む、請求項1記載の方法。
【請求項25】
前記骨の少なくとも一部が、前記配置工程の前に除去される、請求項1記載の方法。
【請求項26】
前記配置工程に先立って、骨を全く除去しない、請求項1記載の方法。
【請求項27】
前記骨が、関節の一部である、請求項1記載の方法。
【請求項28】
前記関節が股関節、肩甲関節、膝関節、肘関節、指関節、足指関節、手関節、足関節、小関節面、顎関節、肋間部関節および胸肋間部関節からなる群から選択される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記水和ポリマーが、少なくとも1種の生体分子を含む、請求項1記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも1種の生体分子が、骨伝達性である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記骨伝達性分子が、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、骨形態形成性タンパク質、成長因子、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、コラーゲン、ラミニン、ビスホスホネート、およびこれらの任意の誘導体からなる群から選択される、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記少なくとも1種の生体分子が、該インプラントに繋がれている、請求項29記載の方法。
【請求項33】
前記付着表面が、複数の空所を含む、請求項1記載の方法。
【請求項34】
前記イソシアネート-含有化合物が、前記化合物を硬化させる工程前に、前記付着表面内の少なくとも一つの空所に流入する、請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記付着表面が、平滑である、請求項1記載の方法。
【請求項36】
前記骨が孔を含み、前記処理工程が、前記配置工程前に、前記イソシアネート-含有化合物を該骨の孔に流し込む段階を含み、かつ該化合物を硬化させる工程が、該イソシアネート-含有化合物を該骨と機械的に噛合わせる段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項37】
前記化合物を硬化させる工程に先立って、前記イソシアネート-含有化合物を、前記インプラントに流し込む、請求項1記載の方法。
【請求項38】
更に、前記配置工程前に、前記インプラントに圧力を印加する段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項39】
前記インプラントが、更にポリウレタンを含む、請求項1記載の方法。
【請求項40】
前記化合物を硬化させる工程が、前記イソシアネート-含有化合物を重合して、生分解性ポリマーとする段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項41】
更に、前記付着表面と前記骨との間の界面の1%-99%を、前記生分解性ポリマーで覆う段階をも含む、請求項40記載の方法。
【請求項42】
インプラントを骨に結合する方法であって、該インプラントが、平滑な水和された表面および熱可塑性物質を含む付着表面を含有する、水和されたポリマーを含み、かつ該方法が以下の諸工程:
該付着表面を、該骨に付着した状態で配置する工程;および
刺激を与えて、該熱可塑性物質を、該骨に流入させ、かつこれと結合させる工程;
を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項43】
前記刺激が、赤外線照射を含む、請求項42記載の方法。
【請求項44】
前記赤外線が、前記熱可塑性物質の共鳴周波数に近い周波数を持つ、請求項43記載の方法。
【請求項45】
前記刺激が、集束された光ビームを含み、前記熱可塑性物質が、部分的にまたは完全に不透明であり、かつ前記水和ポリマーが、実質的に透明である、請求項42記載の方法。
【請求項46】
前記熱可塑性物質が、生分解性である、請求項42記載の方法。
【請求項47】
水和ポリマーおよび熱可塑性物質を含む付着表面を含有し、該水和ポリマーが、少なくとも2種のポリマーを含有する相互侵入型ポリマーの網状構造を含み、該水和ポリマーが、少なくとも一つの表面において低い摩擦係数を持つことを特徴とする、医療用インプラント。
【請求項48】
前記水和ポリマーが、イオン化し得るポリマーおよび中性ポリマーを含む、請求項47記載の医療用インプラント。
【請求項49】
前記中性ポリマーが、親水性ポリマーを含む、請求項48記載の医療用インプラント。
【請求項50】
前記水和ポリマーが、カルボン酸基、アミン基、ウレタン基、およびヒドロキシル基からなる群から選択される、少なくとも一つの利用可能な化学官能基を含む、請求項47記載の医療用インプラント。
【請求項51】
前記水和ポリマーが、粒状繊維、粒状フィラー、およびマトリックスの少なくとも一つを含む、請求項47記載の医療用インプラント。
【請求項52】
前記熱可塑性物質が、前記水和ポリマーの一表面に共有結合により結合している、請求項47記載の医療用インプラント。
【請求項53】
前記熱可塑性物質が、前記水和ポリマー上に被膜を含む、請求項47記載の医療用インプラント。
【請求項54】
前記熱可塑性物質が、硬質および軟質セグメントを含む、請求項47記載の医療用インプラント。
【請求項55】
前記熱可塑性物質が、前記水和ポリマーと物理的に絡み合っている、請求項47記載の医療用インプラント。
【請求項56】
前記熱可塑性物質が、熱可塑性ポリウレタンを含む、請求項47記載の医療用インプラント。
【請求項57】
前記水和ポリマーが、ポリウレタン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、生体ポリマー、または任意のこれらの誘導体の少なくとも一つを含む、請求項47記載の医療用インプラント。
【請求項58】
前記熱可塑性物質が、複数の空所を含む、請求項47記載の医療用インプラント。
【請求項59】
前記水和ポリマーが、哺乳動物の関節における天然の軟骨表面の交換に適合した表面を含む、請求項47記載の医療用インプラント。
【請求項60】
前記関節が股関節、肩甲関節、膝関節、肘関節、指関節、足指関節、手関節、足関節、小関節面、顎関節、肋間部関節および胸肋間部関節からなる群から選択される、請求項59記載の医療用インプラント。
【請求項61】
前記熱可塑性物質が、哺乳動物の関節表面と一致するように適合した表面を含む、請求項47記載の医療用インプラント。
【請求項62】
前記関節が股関節、肩甲関節、膝関節、肘関節、指関節、足指関節、手関節、足関節、小関節面、顎関節、肋間部関節および胸肋間部関節からなる群から選択される、請求項61記載の医療用インプラント。

【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A−9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【公表番号】特表2011−515162(P2011−515162A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501016(P2011−501016)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/037979
【国際公開番号】WO2009/117737
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(510252427)バイオミメディカ インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】