説明

水性の多成分系、その製造法およびその使用

(I)以下(A)、(B)を含有する、少なくとも1つの水性のバインダー成分(A)以下(A1)、(A2)を含有する、少なくとも1つの二次分散液(A1)少なくとも1つの水溶性のまたは水分散性の、多段階の共重合によって製造可能な、少なくとも2個のイソシアネート反応性官能基を有する(メタ)アクリレート共重合体および(A2)分子中で少なくとも2個のヒドロキシル基、56〜500mg KOH/gのOH価、酸価<10mg KOH/gおよび300〜2,000ダルトンの数平均分子量Mnを有する、少なくとも1つの低分子量のおよび/またはオリゴマーの、実質的に非分岐状の疎水性ポリエステル;および(B)少なくとも1つの添加剤;ならびに(II)以下(C)を含有する、少なくとも1つの水不含の架橋剤成分(C)少なくとも1つの親水化ポリイソシアネート、を含有する水性の多成分系;その製造法およびその使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、新規の水性の多成分系に関する。それ以外に本発明は、水性の多成分系の新規の製造法に関する。なかでも本発明は、新規の水性の硬化可能な材料を製造するための新規の水性の多成分系および新規の方法に従って製造された水性の多成分系の使用に関する。
【0002】
従来技術
ドイツ特許出願DE19914899A1から、水性の硬化可能な材料、殊に水性の被覆材料の製造に用いられる多成分系が公知である。
【0003】
公知の多成分系は、バインダーとして多段階の共重合法に従って製造されたイソシアネート反応性官能基を有する(メタ)アクリレート共重合体と、低分子量のおよび/またはオリゴマーの、実質的に非分岐状の疎水性ポリエステルとを含有する非水性のバインダー成分(I)を含有する。
【0004】
それ以外に公知の多成分系は、親水化ポリイソシアネートを含有してよい非水性の架橋剤成分(II)を含有する。
【0005】
さらに公知の多成分系は、(メタ)アクリレート共重合体、ポリエステル樹脂およびポリウレタンから成る群から選択された少なくとも1つの水溶性のまたは水分散性のバインダーを含有してよい水性成分(III)を含有する。
【0006】
公知の多成分系から製造された水性の被覆材料、殊にクリア塗料は均一かつ安定している。それらは高い光沢、低いヘーズ、非常に良好なレベリング、非常に良好な視覚上の印象(外観)および高いワキ限界(Kochergrenze)を有する被覆、殊にクリア塗膜を供給する。
【0007】
しかしながら、公知の多成分系から水性の被覆材料が製造される場合、速やかに均一な混合を達成するために攪拌機のような装置が依然として使用されなければならない。塗装場、殊に自動車補修塗装のための塗装場での作業実施においてはしかし、水性の被覆材料は少量でも速やかにかつ確実に、手動混合(Vermischen per Hand)することによって均一に製造されうることが必要である。
【0008】
課題
本発明の課題は、簡単にかつ非常に良好に再現可能に製造されうる新規の水性の多成分系を提供することである。
【0009】
新規の水性の多成分系は、新規の水性の硬化可能な材料、有利には水性の熱的に硬化可能な材料または熱的にかつ化学線により硬化可能な材料、殊に水性の熱的に硬化可能な被覆材料または熱的にかつ化学線により硬化可能な被覆材料、接着剤、シーラントおよび成形品およびシート用の前駆体を、速やかにかつ簡単に手動混合することによって製造することを可能にするべきである。
【0010】
新規の水性の硬化可能な材料、有利には新規の水性の熱的に硬化可能な材料または熱的にかつ化学線により硬化可能な材料、殊に新規の水性の熱的に硬化可能な被覆材料または熱的にかつ化学線により硬化可能な被覆材料、接着剤、シーラントおよび成形品およびシート用の前駆体は、従来技術の硬化された熱硬化性材料の特性プロフィールを実際には上回らない場合、少なくともそれと同じ有利な特性プロフィールを有する、新規の硬化された熱硬化性材料、有利には新規の熱的に硬化された熱硬化性材料または熱的にかつ化学線により硬化された熱硬化性材料、殊に新規の熱的に硬化された被覆または熱的にかつ化学線により硬化された被覆、接着層、シール、成形品およびシートを供給するべきである。
【0011】
本発明による解決
それに従って、
(I)以下(A)、(B)を含有する、少なくとも1つの水性のバインダー成分
(A)以下(A1)、(A2)を含有する、少なくとも1つの二次分散液、
(A1)少なくとも1つの水溶性のまたは水分散性の、多段階の共重合によって製造可能な、少なくとも2個のイソシアネート反応性官能基を有する(メタ)アクリレート共重合体および
(A2)分子中で少なくとも2個のヒドロキシル基、56〜500mg KOH/gのOH価、酸価<10mg KOH/gおよび300〜2,000ダルトンの数平均分子量Mnを有する、少なくとも1つの低分子量のおよび/またはオリゴマーの、実質的に非分岐状の疎水性ポリエステル;および
(B)少なくとも1つの添加剤;ならびに
(II)以下(C)を含有する、少なくとも1つの水不含の架橋剤成分
(C)少なくとも1つの親水化ポリイソシアネート
を含有する新規の水性の多成分系が見つけ出された。
【0012】
以後、新規の水性の多成分系は≫本発明による系≪と呼ばれる。
【0013】
それ以外に、
(1)バインダー成分(I)の製造のために、少なくとも1つの水溶性のまたは水分散性の、多段階の共重合によって製造可能な、少なくとも2個のイソシアネート反応性官能基を有する(メタ)アクリレート共重合体(A1)、分子中で少なくとも2個のヒドロキシル基、56〜500mg KOH/gのOH価、酸価<10mg KOH/gおよび300〜2,000ダルトンの数平均分子量Mnを有する、少なくとも1つの低分子量のおよび/またはオリゴマーの、実質的に非分岐状の疎水性ポリエステル(A2);および少なくとも1つの添加剤(B)を水に分散させ、かつ
(2)架橋剤成分(II)の製造のために、少なくとも1つの親水化ポリイソシアネート(C)を少なくとも1つの不活性の有機溶剤(B)と混合し、かつ結果的に得られる混合物を均一化し、その後
(3)バインダー成分(I)および架橋剤成分(II)を、その後使用されるまで互いに分けて貯蔵することによる、
本発明による系の新規の製造法が見つけ出された。
【0014】
以後、本発明による系の新規の製造法は≫本発明による方法≪と呼ばれる。
【0015】
なかでも、新規の硬化可能な材料を製造するための本発明による系および本発明による方法によって得られる本発明による系の新規の使用が見つけ出され、これは以後、≫本発明による使用≪と呼ばれる。
【0016】
さらに他の本発明の対象は、発明の詳細な記載から明らかとなる。
【0017】
本発明の利点
従来技術に鑑みて、本発明の基礎をなす課題が、本発明による系、本発明による方法および本発明による使用によって解決されえたことは意想外であり、かつ当業者にとって予期しえなかった。
【0018】
殊に、本発明による系が、殊に本発明による方法によって簡単にかつ非常に良好に再現可能に製造されえたことは意想外であった。
【0019】
本発明による系は、新規の水性の硬化可能な材料、有利には新規の水性の熱的に硬化可能な材料または熱的にかつ化学線により硬化可能な材料、殊に水性の熱的に硬化可能な被覆材料または熱的にかつ化学線により硬化可能な被覆材料、接着剤、シーラントおよび成形品およびシート用の前駆体を、速やかにかつ簡単に手動混合することによって製造することを可能にした。
【0020】
新規の水性の硬化可能な材料、有利には新規の水性の熱的に硬化可能な材料または熱的にかつ化学線により硬化可能な材料、殊に新規の水性の熱的に硬化可能な被覆材料または熱的にかつ化学線により硬化可能な被覆材料、接着剤、シーラントおよび成形品およびシート用の前駆体は、従来技術の硬化された熱硬化性材料の特性プロフィールを実際には上回らない場合、少なくともそれと同じ有利な特性プロフィールを有する、新規の硬化された熱硬化性材料、有利には新規の熱的に硬化された熱硬化性材料または熱的にかつ化学線により硬化された熱硬化性材料、殊に新規の熱的に硬化された熱硬化性被覆または熱的にかつ化学線により硬化された熱硬化性被覆、接着層、シール、成形品およびシートを供給した。
【0021】
本発明の詳細な記載
本発明による系は多成分系、殊に二成分系である。
【0022】
本発明による系は、少なくとも1つの、殊に1つの水性のバインダー成分(I)を含有する。
【0023】
水性のバインダー成分(I)は、少なくとも1つの、殊に1つの二次分散液(A)を含有する。
【0024】
二次分散液(A)は、少なくとも1つの、殊に1つの水溶性のまたは水分散性の、多段階の、殊に二段階の共重合によって製造可能な、少なくとも2個のイソシアネート反応性官能基を有する(メタ)アクリレート共重合体(A1)を含有する。
【0025】
有利には、イソシアネート反応性官能基は、ヒドロキシル基、チオール基ならびに第一級アミノ基および第二級アミノ基から成る群から選択される。殊に、ヒドロキシル基が使用される。
【0026】
適した水溶性のまたは水分散性の、多段階の、殊に二段階の共重合によって製造可能な(メタ)アクリレート共重合体(A1)の例ならびにその適した製造法は、詳細な形で、
−ドイツ特許出願DE19914899A1、第9頁、第22行目〜第25行目、それと関連して第9頁、第50行目〜第13頁、第33行目、および
−国際特許出願1997/14731、手書きで数字を付けられた第4頁、第1行目〜第9行目、それと関連して手書きで数字を付けられた第12頁、第5行目〜手書きで数字を付けられた第22頁、第33行目、
から公知である。
【0027】
水性の二次分散液(A)中の(メタ)アクリレート共重合体(A1)の含有率は非常に幅広く変化しえ、従って個々のケースの要求に優れた形で適合させられうる。有利には、(A1)の含有率は、そのつど(A)に対して10〜60質量%、有利には15〜55質量%および殊に20〜50質量%である。
【0028】
それ以外に、水性の二次分散液(A)は、分子中で少なくとも2個の、有利には4個のおよび殊に3個のヒドロキシル基、56〜500mg KOH/gの、有利には70〜450mg KOH/gの、有利には80〜400mg KOH/gのおよび殊に100〜300mg KOH/gのOH価、酸価<10mg KOH/gおよび有利には<3mg KOH/gおよび300〜2,000ダルトンの数平均分子量Mnを有する、少なくとも1つの、殊に1つの低分子量のおよび/またはオリゴマーの、実質的に非分岐状の疎水性ポリエステル(A2)を含有する。
【0029】
有利には、低分子量の疎水性ポリエステル(A2)は、300〜1,000ダルトンの、殊に300〜700ダルトンの数平均分子量を有する。
【0030】
有利には、オリゴマーの疎水性ポリエステル(A2)は、400〜2,000ダルトンの、有利には450〜1,500ダルトンの、とりわけ有利には600〜1,200ダルトンのおよび殊に450〜1,000ダルトンの数平均分子量を有する。
【0031】
有利には、ポリエステル(A2)は、一般式F1:
[R−CH(OH)−CH−OOC−]R (F1)、
[式中、置換基は、以下の意味を有する:
Rは、置換または非置換の二価のC〜C20−アルカンジイル基、C〜C20−アルケンジイル基、C〜C20−シクロアルカンジイル基またはC〜C20−シクロアルケンジイル基、C〜C12−アリーリデン基または二価のC〜C20−アリールアルキル基、C〜C20−アリールアルケニル基、C〜C20−アリールシクロアルキル基、またはC〜C20−アリールシクロアルケニル基;または
少なくとも1つのカルボン酸エステル基を含有する、置換または非置換の二価の脂肪族基、脂環式基、非環式または環式のオレフィン性不飽和基、芳香族基、脂肪族−芳香族基、脂環式−芳香族基、非環式−不飽和−芳香族基または環式−不飽和−芳香族基であり;
は、水素原子または一価の置換または非置換のC〜C20−アルキル基、C〜C20−アルケニル基、C〜C12−シクロアルキル基またはC〜C12−シクロアルケニル基、C〜C12−アリール基またはC〜C20−アリールアルキル基、C〜C20−アリールアルケニル基、C〜C20−アリールシクロアルキル基、C〜C20−アリールシクロアルケニル基、C〜C20−アルキルアリール基、C〜C20−アルケニルアリール基、C〜C20−シクロアルキルアリール基、C〜C20−シクロアルケニルアリール基、C〜C20−アルキルシクロアルキル基、C〜C20−アルキルシクロアルケニル基、C〜C20−アルケニルシクロアルキル基、C〜C20−アルケニルシクロアルケニル基、C〜C20−シクロアルキルアルキル基、C〜C20−シクロアルケニルアルキル基、C〜C20−シクロアルキルアルケニル基またはC〜C20−シクロアルケニルアルケニル基である]
を有する。
【0032】
有利には、基Rは、少なくとも1個のヒドロキシル基を含有する。
【0033】
基Rは、−F、−Cl、−Br、−I、−CN、−NO、−OH、−OR、−SH、−SR、−NH、−NHR、−N(NRおよび/または−OOC−R[式中、置換基Rは、水素原子を除いて、置換基Rの意味を有する]から成る群から選択された少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい。
【0034】
有利には、基Rはモノ置換メチル基である。
【0035】
とりわけ有利には、メチル基は、−OOC−R[式中、Rは分岐状のC〜C12−アルキル基を意味する]でモノ置換されている。
【0036】
適した疎水性ポリエステル(A2)の例ならびにその製造法は、詳細な形で、ドイツ特許出願DE19914899A1、第3頁、第11行目〜第8頁、第32行目から公知である。
【0037】
水性の二次分散液(A)中の疎水性ポリエステル(A2)の含有率は幅広く変化しえ、そのため個々のケースの要求に優れた形で適合させられうる。有利には、(A2)の含有率は、そのつど(A)に対して1〜30質量%、有利には2〜25質量%および殊に3〜20質量%である。
【0038】
水性の二次分散液(A)中で、(メタ)アクリレート共重合体(A1)対疎水性ポリエステル(A2)の質量比は幅広く変化しえ、それゆえ個々のケースの要求に優れた形で適合させられうる。有利には、質量比(A1):(A2)は、7:1〜3:1、有利には6:1〜3.5:1および殊に5.5:1〜4:1である。
【0039】
水性の二次分散液(A)は、少なくとも1つの添加剤(B)を含有する。有利には、該二次分散液(A)は、少なくとも2つの添加剤(B)および殊に少なくとも3つの添加剤(B)を含有する。
【0040】
有利には、添加剤(B)は、それが通常、熱的に硬化可能な材料または熱的にかつ化学線により硬化可能な材料、有利には水性の硬化可能な材料、とりわけ有利には水性の被覆材料、接着剤、シーラントおよび成形品およびシート用の前駆体、極めて有利には水性の被覆材料、殊に水性のサーフェーサー、ベース塗料およびクリア塗料、特に水性のクリア塗料において使用されるように使用される。
【0041】
本発明の範囲内で、化学線とは、電磁線、例えば近赤外線(NIR)、可視光線、UV線、X線および、放射線、殊にUV線、および粒子線、例えば電子線、β線、α線、陽子線および中性子線、殊に電子線であると理解される。
【0042】
有利には、添加剤(B)は、前で記載されるバインダー(A1)とは異なる、水溶性のおよび水分散性の、物理的に、熱的に化学線により硬化可能なバインダーおよび熱的にかつ化学線により硬化可能なバインダー、殊にポリウレタン;後で記載されるポリイソシアネート(C)とは異なり、かつ>100℃の温度で初めてバインダーと反応する架橋剤、中和剤、有機溶剤、殊に水混和性の有機溶剤;熱的に、化学線により硬化可能な反応性希釈剤および熱的にかつ化学線により硬化可能な反応性希釈剤;透明のおよび不透明の、色付与する、効果付与する顔料および色付与および効果付与する顔料;透明のおよび不透明の充填剤;ナノ粒子;分子分散可溶性着色剤;光安定剤;酸化防止剤;中和剤;湿潤剤;乳化剤;スリップ剤;重合抑制剤;熱架橋のための触媒;熱不安定性ラジカル開始剤;光開始剤および光共開始剤(Photocoinitiatoren);接着促進剤;レベリング剤;皮膜形成性助剤;レオロジー助剤;難燃剤;腐食抑制剤;ろう剤;乾燥促進剤;殺生剤および艶消し剤;から成る群から選択される。
【0043】
有利には、該添加剤(B)は、通常のかつ公知の有効量で使用される。
【0044】
適した添加剤(B)の例は、ドイツ特許出願DE19914899A1、第14頁、第36行目〜第16頁、第63行目、第17頁、第7行目〜第18頁、第13行目、第18頁、第16行目〜第21行目、第19頁、第10行目〜第22行目および第30行目〜第61行目から公知である。
【0045】
添加剤(B)の一部は、少なくとも1つの、殊に1つの分離された添加剤成分(III)としてか、または少なくとも1つの、殊に1つの分離された添加剤成分(III)中に存在してもよい。
【0046】
有利には、添加剤(B)は、少なくとも1つの、殊に1つの成分(I)中に存在しかつ、該添加剤(B)が、後で記載される成分(II)の貯蔵安定性を不所望の反応によって減少させない場合には、成分(II)中にも存在してよい。有利には、成分(II)中に存在してもよい添加剤(B)は、不活性の、殊に水混和性の有機溶剤(B)である。
【0047】
成分(I)の組成は幅広く変化しえ、そうして個々のケースの要求に優れた形で適合させられうる。
【0048】
有利には、成分(I)の固体含有率は、そのつど(I)に対して10〜70質量%、有利には15〜65質量%、とりわけ有利には20〜60質量%および殊に25〜55質量%である。
【0049】
これ以下で、固体含有率とは、硬化された熱硬化性材料の固体をともに構成するかまたは構成する、成分のまたは硬化可能な材料の全ての構成要素の全体と理解されるべきである。
【0050】
有利には、成分(I)は、そのつど(I)に対して20〜90質量%、有利には25〜85質量%、とりわけ有利には30〜80質量%および殊に35〜75質量%の水性の二次分散液(A)を含有する。
【0051】
有利には、成分(I)は、そのつど(I)に対して10〜80質量%、有利には15〜75質量%、とりわけ有利には20〜70質量%および殊に25〜65質量%の添加剤(B)を含有する。
【0052】
成分(I)の製造は、本発明による方法の範囲内で、適した混合集成装置、例えば攪拌釜、インラインディゾルバー、ローター/ステーター式分散装置、ウルトラチュラックス、マイクロフルイダイザー、高圧ホモジナイザーまたはノズルジェット式分散装置を用いた、前で記載される構成要素(A)および(B)の混合および結果的に得られる混合物の均一化によって行われる。
【0053】
本発明による系は、さらに少なくとも1つの、殊に1つの水不含の架橋剤成分(II)を含有する。
【0054】
該架橋剤成分(II)は、少なくとも1つの、殊に1つの親水化ポリイソシアネート(C)を含有する。
【0055】
親水化ポリイソシアネート(C)は、非イオン性の親水性基、殊にポリオキシアルキレン基によって、またはイオン性の親水性基、有利には酸基、殊にスルホン酸基によって親水化されていてもよい。本発明により、イオン性基、殊にスルホン酸基による親水化が有利である。
【0056】
前述の非イオン性基またはイオン性基によって親水化されえ、そうして親水化ポリイソシアネート(C)を形成する、適したポリイソシアネートの例は、ドイツ特許出願DE19914899A1、第18頁、第40行目〜第19頁、第9行目から公知である。
【0057】
殊に、親水化脂肪族ポリイソシアネート(C)が使用される。
【0058】
架橋剤成分(II)中の親水化ポリイソシアネート(C)の含有率は幅広く変化しえ、そうして個々のケースの要求に優れた形で適合させられうる。有利には、架橋剤成分(II)中の親水化ポリイソシアネート(C)の含有率は、そのつど(II)に対して5〜90質量%、有利には10〜80質量%、とりわけ有利には12〜70質量%および殊に15〜60質量%である。
【0059】
有利には、架橋剤成分(II)は、なお少なくとも1つの、殊に1つの親水化されなかった、殊に疎水性のポリイソシアネート(D)を含有する。適したポリイソシアネート(D)の例は、ドイツ特許出願DE19914899A1、第18頁、第40行目〜第19頁、第9行目から公知である。遊離イソシアネート基以外になお化学線により活性化されうる基を含有するポリイソシアネートも考慮に入れられる。適したポリイソシアネート(D)の例は、ヨーロッパ特許出願EP0928800A1またはドイツ特許出願DE10129970A1から公知である。
【0060】
本発明により、親水化ポリイソシアネート(C)およびポリイソシアネート(D)が同一の母体構造を有する場合に有利である。
【0061】
架橋剤成分(II)中の親水化されなかったポリイソシアネート(D)の含有率も同様に幅広く変化しえ、そうして個々のケースの要求に優れた形で適合させられうる。有利には、架橋剤成分(II)は、そのつど(II)に対して10〜95質量%、有利には20〜90質量%、とりわけ有利には30〜90質量%および殊に40〜85質量%の、親水化されなかったポリイソシアネート(D)を含有する。
【0062】
有利には、架橋剤成分(II)は、なお少なくとも1つの不活性の有機溶剤(B)、すなわちイソシアネート反応性官能基を含有しない有機溶剤を含有する。
【0063】
架橋剤成分(II)中の有機溶剤(B)の含有率は非常に幅広く変化しえ、そうして個々のケースの要求に優れた形で適合させられうる。一般的に、架橋剤成分(II)が手動混合のために有利である低い粘度を有するようになるだけの量の有機溶剤(B)が添加される。有利には、架橋剤成分(II)は、有機溶剤(B)をそのつど(II)に対して5〜50質量%、とりわけ有利には10〜45質量%および殊に15〜40質量%の量で含有する。
【0064】
架橋剤成分(II)の製造は、本発明による方法の範囲内で、前で記載されたそれらの構成要素(C)および(B)ならびに場合により(D)の混合および結果的に得られる混合物の均一化によって行われ、その際、前で記載された混合集成装置が使用されうる。
【0065】
本発明による系の結果的に得られる成分(I)および(II)ならびに場合によりさらに他の成分(III)、例えば添加剤成分(III)は、それらの本発明による使用まで互いに分けて貯蔵される。成分(I)および(II)ならびに場合により(III)が、化学線により活性化されうる構成要素を含有する場合、当該成分は化学線の排除下で貯蔵される。
【0066】
本発明による使用の範囲内で、本発明による系は、後述で≫本発明による材料≪と呼ばれる新規の水性の硬化可能な材料の製造に用いられる。
【0067】
本発明による材料の製造のために、少なくとも1つの、殊に1つのバインダー成分(I)および少なくとも1つの、殊に1つの架橋剤成分(II)ならびに場合により添加剤成分(III)が、場合により化学線の排除下で互いに混合され、かつ結果的に得られる混合物が均一化される。その際、本発明による系の成分(I)および(II)ならびに場合により(III)が問題なくかつ速やかに手動により互いに混合されえ、かつ結果的に得られる混合物が問題なくかつ速やかに手動により均一化されうるという、その極めて優れた利点が明らかとなる。
【0068】
本発明による使用に際して、成分(I)対成分(II)の質量比は幅広く変化しえ、そうして個々のケースの要求に優れた形で適合させられうる。有利には、質量比(I):(II)は、(I)におけるイソシアネート反応性官能基対(II)におけるイソシアネート基の当量比が、2:1〜1:3、有利には1.5:1〜1:2.5、とりわけ有利には1.2:1〜1:2および殊に1.1:1〜1:1.7となるように調節される。
【0069】
有利には、本発明による材料は、新規の熱的に硬化可能な水性の被覆材料または熱的にかつ化学線により硬化可能な水性の被覆材料、接着剤、シーラントおよび成形品およびシート用の前駆体として使用される。
【0070】
有利には、それは本発明による被覆材料として使用される。
【0071】
とりわけ有利には、本発明による被覆材料は、新規の熱的にまたは熱的にかつ化学線により硬化可能な水性のプライマー、サーフェーサー、ベース塗料、ソリッドカラー塗料およびクリア塗料、殊にクリア塗料である。
【0072】
本発明による材料は、本発明による使用の範囲内で、本発明による熱硬化性材料の製造に用いられる。
【0073】
有利には、本発明による熱硬化性材料は、新規の被覆、接着層、シール、成形品およびシート、殊に新規の被覆である。
【0074】
有利には、本発明による被覆は、新規のプライマー塗膜、サーフェーサー塗膜または耐チッピング性下塗り層、ベース塗膜、ソリッドカラー塗膜およびクリア塗膜、殊にクリア塗膜である。
【0075】
これらの本発明による塗膜は、単層または多層であってもよい。極めて有利には、該塗膜は多層であり、かつその際に少なくとも2つの塗膜、殊に少なくとも1つの電着塗膜、少なくとも1つのサーフェーサー塗膜または耐チッピング性塗膜ならびに少なくとも1つのベース塗膜および少なくとも1つのクリア塗膜または少なくとも1つのソリッドカラー塗膜を包含してもよい。
【0076】
とりわけ有利には、本発明による多層塗膜は、少なくとも1つのベース塗膜および少なくとも1つのクリア塗膜を包含する。
【0077】
本発明による多層塗膜のクリア塗膜を、本発明によるクリア塗料から製造することは特に有利である。
【0078】
本発明によるクリア塗膜は、本発明による多層塗膜の最も外側の層であり、該層は本質的に視覚上の全体的印象(外観)を決定し、かつ色付与および/または効果付与するベース塗膜を、機械的なおよび化学的な損傷と放射線による損傷とから保護する。その際、本発明によるクリア塗膜は
−機械的応力、例えば引張、伸び、衝撃、引裂または摩耗に対してとりわけ影響を受けないことが明らかとなり
−湿分(例えば水蒸気の形における)、溶剤および希釈された化学薬品に対してとりわけ抵抗性であることが明らかとなり、かつ
−環境の影響、例えば温度変動およびUV線に対してとりわけ安定性であることがわかり、かつ
−高い光沢および
−非常に種々の基材上で良好な付着を有する。
【0079】
なかでも、該クリア塗膜はその製造後に黄変を有さない。
【0080】
用途に応じて、本発明による材料は一時的なまたは永続的な基材上に塗布される。
【0081】
有利には、本発明によるシートおよび成形品の製造のために、通常のかつ公知の一時的な基材、例えば金属テープおよびプラスチックテープまたは、金属、ガラス、プラスチック、木材またはセラミックからの中空体が使用され、これらは本発明によるシートおよび成形品が損傷されることなく容易に取り除かれうる。
【0082】
本発明による混合物が、被覆、接着剤およびシールの製造のために使用される場合、永続的な基材が使用される。
【0083】
有利には、基材は以下のものである:
−筋力、熱気または風で駆動される、陸路、水路または空路での移動手段、例えば自転車、軌道車、漕艇、帆艇、熱気球、気球またはグライダー、ならびにこの一部、
−エンジンの動力で駆動される、陸路、水路または空路での移動手段、例えばオートバイ、有用車両または自動車両、殊に乗用車、水上船舶または水中艦艇または航空機、ならびにこの一部、
−固定浮体、例えば浮標または港湾設備の一部、
−屋内領域および屋外領域における建築物、
−ドア、窓および家具および
−ガラス中空体、
−工業用小部品、例えばボルト、ナット、ハブキャップまたはリム、
−容器、例えばコイル、コンテナまたはパッケージ、
−電気部品、例えば電子巻線、例えばコイル、
−光学部品、
−機械部品および
−白物製品、例えば家庭用器具、暖房用ボイラーおよび放熱器。
【0084】
本発明によるシートおよび成形品は、同様に基材として用いられうる。
【0085】
殊に、基材は自動車ボディーおよびこの一部である。その際、有利には、本発明による材料もしくはこれから製造された本発明による被覆は、自動車ボディーの初期塗装(OEM)または、本発明によるおよび本発明によらない初期塗膜の補修塗装に用いられる。本発明による初期塗膜、殊に本発明によるクリア塗膜を含有するものは、きわめて優れた上塗り性を有する。本発明による補修塗膜は、本発明によるおよび本発明によらない初期塗膜に対してきわめて優れた形で付着する。
【0086】
方法上、本発明による材料の塗布は特殊性を有するのではなく、むしろ全ての通常のかつ公知の、そのつどの混合物に適した塗布法、例えば電着塗布、吹き付け塗布、噴霧塗布、ドクターブレード塗布、刷毛塗布、流し込み塗布、浸漬塗布、滴下塗布またはローラー塗布によって行われうる。有利には、吹き付け塗布法が適用される。
【0087】
塗布に際して、本発明による材料が付加的に化学線により硬化可能である場合、化学線の排除下で作業することが推奨される。
【0088】
本発明による多層塗膜の製造のために、ウェット・オン・ウェット法および、例えばドイツ特許出願DE19930067A1、第15頁、第23行目〜第16頁、第36行目、またはDE19940855A1、第30欄、第39行目〜第31欄、第48行目、および第32欄、第15行目〜第29行目から公知である形成法が適用されうる。本発明による使用の極めて本質的な利点は、実際には、本発明による多層塗膜の全体の層が本発明による混合物から製造されうるということである。
【0089】
本発明による材料の熱硬化は、一般的にすでに室温で行われるかまたは開始される。
【0090】
加熱によって硬化が促進されるべき場合、静止時間またはフラッシュオフタイムを維持することが推奨される。フラッシュオフタイムまたは静止時間は、30秒〜2時間、有利には1分〜1時間および殊に1〜45分の継続時間を有してよい。静止時間は、例えば、塗布された本発明による材料のレベリングのためにかつ脱ガスのために、および揮発性成分、例えば場合により存在する溶剤の蒸発のために用いられる。フラッシュオフは、高められた温度によってかつ/または低下させられた湿分によって促進されうる。
【0091】
塗布された本発明による材料の熱硬化は、例えば、ガス状、液状および/または固体の高温媒体、例えば高温空気、加熱油または加熱ローラーの、またはマイクロ波放射線、赤外光および/または近赤外光(NIR)の作用によって、有利には静止時間またはフラッシュオフタイム後に促進されうる。有利には、加熱は、空気循環炉(Umluftofen)内でか、またはIRランプおよび/またはNIRランプによる照射によって行われる。
【0092】
化学線による硬化は、例えばドイツ特許出願DE19818735A1、第10欄、第31行目〜第61行目、ドイツ特許出願DE10202565A1、第9頁、段落[0092]〜第10頁、段落[0106]、ドイツ特許出願DE10316890A1、第17頁、段落[0128]〜段落[0130]の中に、国際特許出願WO94/11123、第2頁、第35行目〜第3頁、第6行目、第3頁、第10行目〜第15行目、および第8頁、第1行目〜第14行目、または米国特許US6,743,466B2、第6欄、第53行目〜第7欄、第14行目の中に記載されるような、通常のかつ公知の装置および方法によって実施されうる。
【0093】
本発明による材料の硬化は、酸素の十分なまたは完全な排除下でも実施されうる。
【0094】
本発明の範囲内で、塗布された本発明による混合物の表面上での酸素濃度が、<21体積%、有利には<18体積%、有利には<16体積%、とりわけ有利には<14体積%、極めて有利には<10体積%および殊に<6体積%である場合、酸素は十分に排除されているものと見なされる。
【0095】
本発明の範囲内で、表面上での酸素濃度が、通常のかつ公知の検出法の検出限界値を下回る場合、酸素は完全に排除されているものと見なされる。
【0096】
有利には、酸素の濃度は、≧0.001体積%、とりわけ有利には≧0.01体積%、極めて有利には≧0.1体積%および殊に≧0.5体積%である。
【0097】
酸素の所望された濃度は、ドイツ特許DE10130972C1、第6頁、段落[0047]〜段落[0052]の中で記載された措置によってか、またはシートの載置によって調節されうる。
【0098】
結果的に得られる本発明による熱硬化性材料、有利には、本発明によるシート、成形品、被覆、接着層およびシール、とりわけ有利には、本発明による被覆、極めて有利には、本発明によるプライマー塗膜、サーフェーサー塗膜または耐チッピング性下塗り層、ベース塗膜、ソリッドカラー塗膜およびクリア塗膜、殊に本発明によるクリア塗膜は、前で記載された下塗りされたまたは下塗りされなかった基材の被覆、接着、封止、包囲および包装のために、ならびに前で記載された下塗りされたまたは下塗りされなかった基材への取り付けまたは組み込みのためにきわめて優れた形で適している。
【0099】
本発明による被覆により被覆され、本発明による接着層により接着され、本発明によるシールにより封止されかつ/または本発明によるシートおよび/または成形品により包囲、包装されかつ/または結合されている、結果的に得られる本発明による基材は、とりわけ長期の使用期間と結び付いたきわめて優れた使用特性を有する。
【0100】
実施例
製造例1
疎水性ポリエステル(A2)の製造
鋼製反応器中に、ヘキヒドロ無水フタル酸263質量部およびトリメチロールプロパン114質量部を装入し、かつ150℃に加熱した。引き続き、結果的に得られる混合物に、1時間にわたってCardura(R)E10(Versatic(R)−酸−グリシジルエステル)423質量部を均等に計量供給した。結果的に得られる反応混合物を、酸価<3mg KOH/gに達するまで150℃で加熱した。引き続き、結果的に得られる疎水性ポリエステル(A2)を100℃に冷却し、かつメチルイソブチルケトンで80質量%の固体含有率に希釈した。希釈系の粘度は、50dPas(23℃)であった。
【0101】
製造例2
水性の二次分散液(A)の製造
攪拌機、還流冷却器および2個の供給容器が備え付けられた鋼製反応器中に、メチルイソブチルケトン127.5質量部を装入し、かつ撹拌下で110℃に加熱した。これに、この温度で同時に3時間にわたって、第一の供給容器からスチレン25.3質量部、メチルメタクリレート29.4質量部、ラウリルメタクリレート16.9質量部、ヒドロキシエチルメタクリレート38質量部およびブチルメタクリレート33.7質量部からのモノマー混合物と、第二の供給容器からメチルイソブチルケトン19.8質量部中でt−ブチルペルオキシエチルヘキサノエート8.7質量部の溶液を均等に計量供給した。引き続き、1時間のあいだ110℃で後重合した。
【0102】
その後、この温度で同時に2.75時間にわたって、第一の供給容器からスチレン10.9質量部、メチルメタクリレート12.6質量部、ラウリルメタクリレート7.2質量部、ヒドロキシエチルメタクリレート40.2質量部、ブチルメタクリレート14.5質量部およびアクリル酸12.2質量部からのモノマー混合物の計量供給を開始し、かつ第二の供給容器から3.5時間にわたってメチルイソブチルケトン23質量部中でt−ブチルペルオキシエチルヘキサノエート5.8質量部の溶液の計量供給を開始した。結果的に得られる反応混合物を、2時間のあいだ110℃で後重合し、かつメタクリレート共重合体(A1)の溶液が結果的に得られた。
【0103】
メタクリレート共重合体(A1)の溶液に、製造例1の疎水性ポリエステル(A2)の溶液68.4質量部、ジメチルエタノールアミン6.7質量部およびトリエタノールアミン11.5質量部を加えた。結果的に得られる混合物を、80℃で脱イオン水110質量部中に分散させた。結果的に得られる分散液を、2時間のあいだ80℃で保った。引き続き、脱イオン水360質量部を添加し、かつメチルイソブチルケトンを真空中で留去した。
【0104】
結果的に得られる二次分散液(A)を、脱イオン水で40質量%の固体含有率に調節した。該分散液(A)は、7.5のpH値および39mg KOH/g固体樹脂の酸価を有していた。
【0105】
製造例3
水性のポリウレタン樹脂分散液(B)の製造
鋼製反応器中に、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル297.2質量部、無水フタル酸32.8質量部、2−ブチル−2−エチルプロパンジオール−1,3 5.7質量部、ネオペンチルグリコール133.5質量部、イソフタル酸346.4質量部およびシクロヘキサン(共沸添加剤)11.2質量部を量り入れた。結果的に得られる混合物を撹拌下で加熱し、その際、3.5mg KOH/gの酸価に達するまで、縮合水を連続的に取り除いた。結果的に得られるポリエステルジオールを60℃に冷却し、かつメチルエチルケトンで80質量%の固体含有率に希釈した。
【0106】
ポリウレタン樹脂合成のために適した鋼製反応器中に、ポリエステルジオール−溶液264.7質量部、2−ブチル−2−エチルプロパンジオール−1,3 2.3質量部、ジメチロールプロピオン酸24.4質量部およびm−テトラメチルキシリリデンジイソシアネート112.4質量部を装入し、かつ一定のイソシアネート含有率に達するまで攪拌下で82℃に加熱した。引き続き、トリメチロールプロパン36.2質量部を加え、かつ結果的に得られる反応混合物を、イソシアネート基がもはや検出可能ではなくなるまで加熱した。メチルエチルケトン44.5質量部の添加後、ポリウレタン樹脂(B)をジメチルエタノールアミン13質量部で中和し、かつ60℃で脱イオン水480質量部中に分散させた。引き続き、メチルエチルケトンを真空中で留去した。
【0107】
結果的に得られるポリウレタン樹脂二次分散液(B)を、脱イオン水で40質量%の固体含有率に調節した。該分散液(B)は、7.2のpH値および30mg KOH/g固体樹脂の酸価を有していた。
【0108】
実施例1
二成分系の製造
1.1 成分(I)の製造
成分(I)を、以下の構成要素の記載された順序における混合によって、かつ結果的に得られる混合物の均一化によって製造した:
−製造例2に記載の水性の二次分散液(A)60質量部、
−製造例3に記載のポリウレタン樹脂分散液(B)25質量部、
−ポリウレタンベースの増粘剤(B)(Dapral(R)210T、脱イオン水中で10%)0.8質量部、
−ブチルグリコールアセテート(B)2.5質量部、
−ブチルグリコール(B)3.0質量部、
−湿潤剤(B)(Deuterol(R)201E)3.0質量部、
−ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンをベースとするレベリング剤(B)(Byk(R)331)0.3質量部、
−シロキサン−ポリアルキレンオキシド−共重合体(B)をベースとするレベリング剤(Silwet(R)L7604)0.2質量部、
−可逆性のフリーラジカルスカベンジャー(reversibler Radikalfaenger)(B)(HALS;Tinuvin(R)292)0.2質量部、
−UV吸収剤(B)(Tinuvin(R)384−2)0.2質量部および
−脱イオン水4.8質量部。
【0109】
結果的に得られる成分(I)は貯蔵安定性であって、かつ問題なく輸送することができた。
【0110】
1.2 成分(II)の製造
成分(II)を、以下の構成要素の混合および結果的に得られる混合物の均一化によって製造した:
−ヘキサメチレンジイソシアネート−三量体をベースとする疎水性ポリイソシアネート(D)(Desmodur(R)XP2410)32質量部、
−ヘキサメチレンジイソシアネート−三量体をベースとする親水化ポリイソシアネート(C)(Bayhydur(R)XP2570)38質量部および
−ブチルグリコールアセテート(B)30質量部。
【0111】
二成分系は完全に貯蔵安定性であって、かつ問題なく輸送することができた。
【0112】
実施例2
水性のクリア塗料の製造
水性のクリア塗料を、実施例1.1の成分(I)100質量部と、実施例1.2の成分(II)29質量部との手動混合によって製造した。結果的に得られる水性のクリア塗料は、すでに少し経った後に均一に混ざり合っていた。それを脱イオン水30質量部の添加によって噴霧粘度(Spritzviskositaet)に調節した。それは実地に即した数時間の加工時間を有していた。
【0113】
実施例3
効果付与する多層塗膜の製造
電着塗膜およびサーフェーサー塗膜により被覆したリン酸塩化処理した薄鋼板を、国際特許出願WO1987/003829に記載の水性の金属効果−ベース塗料(Metalleffekt-Basislack)で、12〜15μmの乾燥皮膜層厚が結果的に得られるように被覆した。水性ベース塗料層(Wassebasislackschichten)を、5分間のあいだ室温でかつ10分間のあいだ60℃で乾燥した。
【0114】
実施例2に記載のクリア塗料を、50μmの乾燥皮膜層厚が結果的に得られるように、4分の中間フラッシュオフタイムを有する2つの噴霧工程において均等に該水性ベース塗料層上に塗布した。
【0115】
ワキ限界の測定のために、実施例2に記載のクリア塗料をウェッジ状で水性ベース塗料層上に塗布した。
【0116】
結果的に得られるクリア塗料層を室温で10分間フラッシュオフし、かつ循環空気炉内で60℃で45分間乾燥させた。
【0117】
それぞれ電着塗膜、サーフェーサー塗膜、金属性ベース塗膜およびクリア塗膜を包含する、結果的に得られる多層塗膜は、以下の応用技術的な特性を有していた:
DIN67530に従う光沢(20゜):87単位;
DIN67530に従うヘーズ(20゜):11.4単位;
視覚上の全体的印象(外観):透明;
ベース塗膜の濡れ:良好;および
ワキ限界:85μm。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性の多成分系であって、
(I)以下(A)、(B)を含有する、少なくとも1つの水性のバインダー成分
(A)以下(A1)、(A2)を含有する、少なくとも1つの二次分散液
(A1)少なくとも1つの水溶性のまたは水分散性の、多段階の共重合によって製造可能な、少なくとも2個のイソシアネート反応性官能基を有する(メタ)アクリレート共重合体および
(A2)分子中で少なくとも2個のヒドロキシル基、56〜500mg KOH/gのOH価、酸価<10mg KOH/gおよび300〜2,000ダルトンの数平均分子量Mnを有する、少なくとも1つの低分子量のおよび/またはオリゴマーの、実質的に非分岐状の疎水性ポリエステル;および
(B)少なくとも1つの添加剤;ならびに
(II)以下(C)を含有する、少なくとも1つの水不含の架橋剤成分
(C)少なくとも1個の酸基を含有する、少なくとも1つの親水化ポリイソシアネート
を含有する、水性の多成分系。
【請求項2】
(メタ)アクリレート共重合体(A1)のイソシアネート反応性官能基が、ヒドロキシル基、チオール基ならびに第一級アミノ基および第二級アミノ基から成る群から選択されていることを特徴とする、請求項1記載の水性の多成分系。
【請求項3】
ポリエステル(A2)が、一般式F1
[R−CH(OH)−CH−OOC−]R (F1)、
[式中、置換基は、以下の意味を有する:
Rは、置換または非置換の二価のC〜C20−アルカンジイル基、C〜C20−アルケンジイル基、C〜C20−シクロアルカンジイル基またはC〜C20−シクロアルケンジイル基、C〜C12−アリーリデン基または二価のC〜C20−アリールアルキル基、C〜C20−アリールアルケニル基、C〜C20−アリールシクロアルキル基、またはC〜C20−アリールシクロアルケニル基;または
少なくとも1つのカルボン酸エステル基を含有する、置換または非置換の二価の脂肪族基、脂環式基、非環式または環式のオレフィン性不飽和基、芳香族基、脂肪族−芳香族基、脂環式−芳香族基、非環式−不飽和−芳香族基または環式−不飽和−芳香族基であり;
は、水素原子または一価の置換または非置換のC〜C20−アルキル基、C〜C20−アルケニル基、C〜C12−シクロアルキル基またはC〜C12−シクロアルケニル基、C〜C12−アリール基またはC〜C20−アリールアルキル基、C〜C20−アリールアルケニル基、C〜C20−アリールシクロアルキル基、C〜C20−アリールシクロアルケニル基、C〜C20−アルキルアリール基、C〜C20−アルケニルアリール基、C〜C20−シクロアルキルアリール基、C〜C20−シクロアルケニルアリール基、C〜C20−アルキルシクロアルキル基、C〜C20−アルキルシクロアルケニル基、C〜C20−アルケニルシクロアルキル基、C〜C20−アルケニルシクロアルケニル基、C〜C20−シクロアルキルアルキル基、C〜C20−シクロアルケニルアルキル基、C〜C20−シクロアルキルアルケニル基またはC〜C20−シクロアルケニルアルケニル基である]
を有することを特徴とする、請求項1または2記載の水性の多成分系。
【請求項4】
基Rが、少なくとも1個のヒドロキシル基を含有することを特徴とする、請求項3記載の水性の多成分系。
【請求項5】
基Rが、−F、−Cl、−Br、−I、−CN、−NO、−OH、−OR、−SH、−SR、−NH、−NHR、−N(NRおよび/または−OOC−R[式中、置換基Rは、水素原子を除いて、置換基Rの意味を有する]から成る群から選択された少なくとも1つの置換基で置換されていることを特徴とする、請求項3または4記載の水性の多成分系。
【請求項6】
基Rがモノ置換メチル基であることを特徴とする、請求項3から5までのいずれか1項記載の水性の多成分系。
【請求項7】
メチル基が、−OOC−R[式中、Rは、分岐状のC〜C12−アルキル基を意味する]でモノ置換されていることを特徴とする、請求項6記載の水性の多成分系。
【請求項8】
添加剤(B)が、バインダー(A1)とは異なる、水溶性のおよび水分散性の、物理的に、熱的に、化学線によりおよび熱的にかつ化学線により硬化可能なバインダー;ポリイソシアネート(C)とは異なり、かつ>100℃の温度で初めてバインダーと反応する架橋剤、中和剤;有機溶剤;熱的に、化学線によりおよび熱的にかつ化学線により硬化可能な反応性希釈剤;透明のおよび不透明の、色付与する、効果付与するおよび色付与および効果付与する顔料;透明のおよび不透明の充填剤;ナノ粒子、分子分散可溶性着色剤;光安定剤;酸化防止剤;中和剤;湿潤剤;乳化剤;スリップ剤;重合抑制剤;熱架橋のための触媒;熱不安定性ラジカル開始剤;光開始剤および光共開始剤;接着促進剤;レベリング剤;皮膜形成性助剤;レオロジー助剤;難燃剤;腐食抑制剤;ろう剤;乾燥促進剤;殺生剤および艶消し剤;から成る群から選択されていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の水性の多成分系。
【請求項9】
バインダー(A1)とは異なる、水溶性のおよび水分散性の、物理的に、熱的に、化学線によりおよび熱的にかつ化学線により硬化可能なバインダーがポリウレタンであることを特徴とする、請求項8記載の水性の多成分系。
【請求項10】
親水化ポリイソシアネート(C)の少なくとも1個の酸基がスルホン酸基であることを特徴とする、請求項1記載の水性の多成分系。
【請求項11】
架橋剤成分(II)が、少なくとも1つの不活性の有機溶剤(B)を含有することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の水性の多成分系。
【請求項12】
架橋剤成分(II)が、少なくとも1つの疎水性ポリイソシアネート(D)を含有することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の水性の多成分系。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項記載の水性の多成分系の製造法において、
(1)バインダー成分(I)の製造のために、少なくとも1つの水溶性のまたは水分散性の、多段階の共重合によって製造可能な、少なくとも2個のイソシアネート反応性官能基を有する(メタ)アクリレート共重合体(A1)、分子中で少なくとも2個のヒドロキシル基、56〜500mg KOH/gのOH価、酸価<10mg KOH/gおよび300〜2,000ダルトンの数平均分子量Mnを有する、少なくとも1つの低分子量のおよび/またはオリゴマーの、実質的に非分岐の疎水性ポリエステル(A2);および少なくとも1つの添加剤(B)を水に分散させ、かつ
(2)架橋剤成分(II)の製造のために、少なくとも1つの親水化ポリイソシアネート(C)を少なくとも1つの不活性の有機溶剤(B)と混合し、かつ結果的に得られる混合物を均一化し、その後
(3)バインダー成分(I)および架橋剤成分(II)を、その後使用されるまで互いに分けて貯蔵する
ことを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の水性の多成分系の製造法。
【請求項14】
架橋剤成分(II)の製造のために、なお少なくとも1つの疎水性ポリイソシアネート(D)を添加することを特徴とする、請求項13記載の方法。
【請求項15】
水性の硬化可能な材料を製造するための、請求項1から13までのいずれか1項記載の水性の多成分系および請求項14または15記載の方法に従って製造された水性の多成分系の使用。
【請求項16】
水性の硬化可能な材料が、熱的にまたは熱的にかつ化学線により硬化可能であることを特徴とする、請求項15記載の使用。
【請求項17】
化学線としてUV線および/または電子線が使用されることを特徴とする、請求項16記載の使用。
【請求項18】
水性の硬化可能な材料が、水性の被覆材料、接着剤、シーラントおよび成形品およびシート用の前駆体であることを特徴とする、請求項15から17までのいずれか1項記載の使用。
【請求項19】
水性の被覆材料がクリア塗料であることを特徴とする、請求項18記載の使用。
【請求項20】
水性の硬化可能な材料が、硬化された熱硬化性材料の製造に用いられることを特徴とする、請求項15から19までのいずれか1項記載の使用。
【請求項21】
硬化された熱硬化性材料が、被覆、接着層、シール、成形品およびシートであることを特徴とする、請求項20記載の使用。
【請求項22】
被覆がクリア塗膜であることを特徴とする、請求項21記載の使用。
【請求項23】
クリア塗膜が、色付与および/または効果付与する多層塗膜の部分としてのクリア塗膜であることを特徴とする、請求項22記載の使用。
【請求項24】
色付与および/または効果付与する多層塗膜が、ウェット・オン・ウェット法に従って製造されることを特徴とする、請求項23記載の使用。
【請求項25】
硬化された熱硬化性材料が、下塗りされたおよび下塗りされなかった基材の被覆、接着、封止、包囲および包装ならびに下塗りされたおよび下塗りされなかった基材への取り付けおよび組み込みに用いられることを特徴とする、請求項20から24までのいずれか1項記載の使用。
【請求項26】
基材が、自動車ボディーおよびこの一部であることを特徴とする、請求項25記載の使用。

【公表番号】特表2009−526104(P2009−526104A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553677(P2008−553677)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際出願番号】PCT/EP2007/001070
【国際公開番号】WO2007/090640
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス アクチェンゲゼルシャフト (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings AG
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】