説明

水性エポキシ樹脂組成物、その硬化物、新規2官能性ヒドロキシ化合物、新規2官能性エポキシ樹脂、及びそれらの製造方法

【課題】保存安定性、耐食性・密着性等に優れる2官能性水性エポキシ樹脂組成物、その硬化物の製造方法を提供する。
【解決手段】下記式(1)


で表される構造を有し、且つ分子両末端がエポキシ基である2官能性エポキシ樹脂と水とを含有する水性エポキシ樹脂組成物、その硬化物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存安定性や得られる加工物の耐食性・密着性等に優れる水性エポキシ樹脂組成物、その硬化物、グリシジル基を有しながらも低粘度で水性化が容易である新規2官能性エポキシ樹脂、その原料として好適に用いられる新規2官能性ヒドロキシ化合物、及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂組成物は一般的に得られる硬化物の機械的性質、耐食性、密着性等に優れるため、塗料、接着剤、積層板、電気・電子部品用途等の各分野で広く使用されている。エポキシ樹脂は有機溶剤に希釈し組成物として使用されることが多いが、近年の環境問題から、エポキシ樹脂が有する上述の高性能を損なうことなく、該組成物中から排出する有機溶剤量の低減が望まれている。
【0003】
上記問題に対し、従来溶剤が水主体である水性エポキシ樹脂組成物とすることで解決を図る方法が行われており、水性エポキシ樹脂としては例えば、エポキシ樹脂をポリオキシアルキルアミンと反応させて得られるもの、リン酸変性エポキシ樹脂にカルボキシル基を導入後、アミン類で中和したもの、エポキシ樹脂とアルカノールアミン類を反応させ、側鎖にカルボキシル基を導入後、アミン類で中和したもの、アミン変性エポキシ樹脂に4級オニウム塩を導入したものなどが知られている(例えば、特許文献1〜4参照。)。
【0004】
これらのエポキシ樹脂を水性化する方法は、いずれもグリシジル基を活性点として変性する方法であり、得られた水性エポキシ樹脂中にグリシジル基を有するものではなく、従って、硬化時の反応性が制限されるため、設計の自由度に制限をうけるものであり、従来使用されていた有機溶剤系のエポキシ樹脂用硬化剤が使用できなくなったり、塗料用に調製する際に有機溶剤系とは異なる手法が必要になったりするなどの問題が生じている。
【0005】
さらにエポキシ樹脂骨格の他に、親水性の部分であるアクリル樹脂やポリオキシアルキルアミン、アルカノールアミン等の構造が樹脂骨格中に導入されるため、連続的なエポキシ樹脂骨格を得ることと、水性化させることとのバランスを保つことが困難であり、得られる硬化物の性能に悪影響を与えることが少なくない。
【0006】
例えば、エポキシ樹脂とポリオキシアルキルアミンとを反応させる場合は、得られる水性エポキシ樹脂は直鎖状になるものの、水性化に必要なオキシエチレン鎖の含有量が増し、エポキシ樹脂特有の剛直な樹脂骨格が得られず、硬化物の強度が不足する。
【0007】
また、エポキシ樹脂にカルボキシル基を導入し、アミン類で中和する場合には、中和に用いたアミン類が樹脂と反応しているものではないことから、ワニス保存中や加熱加工時に容易に揮発し臭気が発生したり、加工時に用いる加熱炉を腐食したりする問題がある。
【0008】
また、アミン変性エポキシ樹脂に4級オニウム塩を導入したものは、得られる樹脂の粘度が高く、例えば塗料用組成物に調製する場合に樹脂分を増量することが困難であり、厚膜の塗膜を得ることが出来ない等の問題がある。
【0009】
【特許文献1】特開平10−183055号公報(第3〜4頁)
【特許文献2】特開平7−157711号公報(第2〜4頁)
【特許文献3】特開2000−053745号公報(第3〜4頁)
【特許文献4】特開2005−239928号公報(第6〜7頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記実状に鑑み、本発明の課題は、塗料、接着剤、繊維集束剤、コンクリートプライマー等に好適に用いることができる、保存安定性や得られる加工物の耐食性・密着性等に優れる水性エポキシ樹脂組成物、その硬化物、グリシジル基を有しながらも低粘度で水性化が容易である新規2官能性エポキシ樹脂、その原料として好適に用いることができる新規2官能性ヒドロキシ化合物、及びそれらの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、側鎖に特定のオニウム塩構造を有する2官能性エポキシ樹脂、及び該2官能性エポキシ樹脂を含有する組成物が、前記の課題を解決する方法として有効であることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
即ち、本発明は、下記一般式(1)
【0013】
【化1】

〔式(1)中、R、R、R、R、Rは同一でも異なっても良い、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R、R、Rは同一でも異なっても良い炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは水素原子又はメチル基であり、Xは単結合又は炭素数1〜4のアルキレン鎖であり、Qは窒素原子又はリン原子であり、Yは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子又は水酸基である。〕
で表される構造を有し、且つ分子両末端がエポキシ基である2官能性エポキシ樹脂を含有する水性エポキシ樹脂組成物、及びその硬化物を提供するものである。
【0014】
更に、本発明は、下記一般式(3)
【0015】
【化2】

〔式(3)中、R〜R、R、X、Q、Yは前記と同じであり、pは繰り返し数の平均値であって0〜50である。〕
及び、下記一般式(4)
【0016】
【化3】

〔式(4)中、R〜R、R、X、Q、Yは前記と同じであり、Aは前記一般式(1)で表される構造とは異なる、1分子中に2個の水酸基又はカルボキシル基を有する化合物の残基であり、q及びrは繰り返し数の平均値であって、それぞれ独立にq=0〜45、r=0〜55である。尚、それぞれの繰り返し単位はランダムに結合していることを示す。〕
で表される新規2官能性エポキシ樹脂を提供するものである。
【0017】
更に、本発明は、下記一般式(5)
【0018】
【化4】

〔式(5)中、R、R、R、R、Rは同一でも異なっても良い、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R、R、Rは同一でも異なっても良い炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは水素原子又はメチル基であり、Xは単結合又は炭素数1〜4のアルキレン鎖であり、Qは窒素原子又はリン原子であり、Yは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子又は水酸基である。)
で表される新規2官能性ヒドロキシ化合物をも提供するものである。
【0019】
更に又、本発明は、前記一般式(3)、(4)で表される2官能性エポキシ樹脂、及び前記一般式(5)で表される2官能性ヒドロキシ化合物の製造方法をも提供するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、保存安定性や得られる加工物の耐食性・密着性等に優れ、且つ、加工時に臭気が発生せず、塗料、接着剤、繊維集束剤、コンクリートプライマー等に好適に用いることができる水性有機溶剤や界面活性化剤を一切含まない水溶性エポキシ樹脂組成物、あるいは水性有機溶剤や界面活性化剤の使用量を大幅に低減できる水性エポキシ樹脂組成物を提供することができる。
【0021】
又、本発明では、エポキシ基を有したまま水性化が可能であり、且つ粘度が低い新規2官能性水性エポキシ樹脂を提供することが出来る。
【0022】
更に又、本発明では、前記エポキシ樹脂の原料として用いることができ、又、汎用エポキシ樹脂などと反応させて、親水性を付与する伸長剤としても有用である、2官能性ヒドロキシ化合物を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いる2官能性エポキシ樹脂(A)は、下記一般式(1)
【0024】
【化5】

〔式(1)中、R、R、R、R、Rは同一でも異なっても良い、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R、R、Rは同一でも異なっても良い炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは水素原子又はメチル基であり、Xは単結合又は炭素数1〜4のアルキレン鎖であり、Qは窒素原子又はリン原子であり、Yは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子又は水酸基である。〕
で表される構造を有し、且つ分子両末端がエポキシ基であることを特徴とする。
【0025】
前記一般式(1)中の側鎖の末端にあるオニウム塩構造によって、分子に親水性を付与し、また、主鎖中の芳香族骨格によって、得られる加工物(硬化物)の物性、特に機械的物性の低下を防止することが可能である。また該オニウム塩構造をとることにより、フリーのアミン等の低分子化合物が、硬化の途中で揮発することがなく、従って、加熱硬化させる場合に用いる加熱炉への腐食原因を有するものではない。更に、分岐した側鎖の鎖長が短く反応性基であるエポキシ基が分子鎖の両末端にそのまま存在する、2官能性エポキシ樹脂であることから、低粘度であり、且つ従来エポキシ樹脂用の硬化剤として使用されている種々の活性水素含有化合物をそのまま硬化剤として使用することが可能である。
【0026】
従って、1分子中に存在する前記一般式(1)で表される構造単位の割合によって、親水性のレベルを容易に調製することが可能であり、用途や目的とする物性に応じて、該構造単位の導入量を選択することが好ましい。特に塗料用途等の防食性を重視する用途においては、一般に水性エポキシ樹脂組成物中に含まれる界面活性剤の添加量は少ないほど好ましいものであるが、例えば、前記一般式(1)で表される構造単位の含有量が多い場合には、界面活性剤を使用しなくても水で無限希釈可能な水溶性のエポキシ樹脂とすることも出来、エポキシ基を有しながら水溶性であるという特異な性質を有するものである。
【0027】
前記2官能性エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量としては、特に制限させるものではないが、塗料用途等に用いた際の耐食性と基材への密着性に優れ、且つ水性エポキシ樹脂組成物としたときの保存安定性に優れる点から、200〜8000g/eqであることが好ましく、特に230〜5500g/eqであることが好ましい。
【0028】
前記一般式(1)で表される構造の中でも、後述する製造方法で合成する場合の、工業的原料入手の容易性や、水性エポキシ樹脂組成物としたときの保存安定性及び得られる加工物の耐食性等に優れる点から、前記一般式(1)中のR、R、R、Rが水素原子であり、R、R、R、Rがメチル基であり、Qが窒素原子であり、Yが塩素原子又は水酸基であることが好ましく、また、Xはエチレン鎖であることが好ましく、更に、Rは水素原子であることが好ましい。
【0029】
前記一般式(1)で表される構造を有する2官能性エポキシ樹脂(A)としては、本発明の新規2官能性エポキシ樹脂である、下記一般式(3)
【0030】
【化6】

〔式(3)中、R〜R、R、X、Q、Yは前記と同じであり、pは繰り返し数の平均値であって0〜50である。〕
で表される化合物や、下記一般式(4)
【0031】
【化7】

〔式(4)中、R〜R、R、X、Q、Yは前記と同じであり、Aは前記一般式(1)で表される構造とは異なる、1分子中に2個の水酸基又はカルボキシル基を有する化合物の残基であり、q及びrは繰り返し数の平均値であって、それぞれ独立にq=0〜45、r=0〜55である。尚、それぞれの繰り返し単位はランダムに結合していることを示す。〕
で表される化合物を挙げることができる。
【0032】
前記一般式(3)及び(4)中のR、R、R、Rが水素原子であり、R、R、R、Rがメチル基であり、Qが窒素原子であり、Yが塩素原子又は水酸基である化合物は、前述のように、水性エポキシ樹脂組成物としたときの保存安定性や、得られる加工物の耐食性等に優れる点から好ましいものである。
【0033】
更に、後述する製造方法によって、前記一般式(3)及び(4)で表される化合物を合成する際の工業的原料入手が容易である点から、前記一般式(3)及び(4)中のXとしてはエチレン鎖であることが好ましく、同様にRとしては水素原子であることが好ましい。
【0034】
又、前記一般式(4)中のqとrとの比q/rが、20/80〜95/5であることが、水性エポキシ樹脂組成物としたときの保存安定性と水希釈性に優れる点から好ましいものであり、特に前記比率として30/70〜80/20であることが好ましい。
【0035】
又、前記一般式(4)中のAは2官能のヒドロキシ化合物や2官能のカルボン酸から水素原子を除いた2価の残基であるが、前記一般式(4)で表される化合物を用いて得られる水性エポキシ樹脂組成物を用いた加工物の機械的物性(強度)や、塗料用等に用いた際の基材との密着性に優れる点から、芳香環上に置換基を有していてもよいビスフェノール類の残基であることが好ましく、特にビスフェノールAの残基であることが好ましい。
【0036】
本発明の水性エポキシ樹脂組成物に用いる2官能性エポキシ樹脂(A)の製造方法としては、特に限定されるものではないが、本発明の製造方法であることが、原料入手の容易性や工業的生産に優れる点で好ましいものである。
【0037】
以下、本発明の製造方法について詳述する。
本発明の製造方法は、まず、本発明の下記一般式(5)
【0038】
【化8】

〔式(5)中、R、R、R、R、Rは同一でも異なっても良い、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R、R、Rは同一でも異なっても良い炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは水素原子又はメチル基であり、Xは単結合又は炭素数1〜4のアルキレン鎖であり、Qは窒素原子又はリン原子であり、Yは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子又は水酸基である。)
で表される、本発明の新規カチオン基含有2官能性ヒドロキシ化合物(a1)を合成することから始めることが好ましい。本発明の2官能性ヒドロキシ化合物としては、特に得られるエポキシ樹脂が低粘度であって、且つ水性エポキシ樹脂組成物としたときの保存安定性に優れる点から、前記一般式(5)中のR、R、R、Rが水素原子であり、R、R、R、Rがメチル基であり、Qが窒素原子であり、Yが塩素原子又は水酸基であることが好ましい。
【0039】
前記一般式(5)で表される2官能性ヒドロキシ化合物(a1)は、下記一般式(2)
【0040】
【化9】

〔式(2)中、R、R、R、R、Rは同一でも異なっても良い、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Xは単結合又は炭素数1〜4のアルキレン鎖である。〕
で表される水酸基とカルボキシル基とを有する化合物(x1)と、四級オニウム塩含有エポキシ化合物(x2)とを反応させることによって製造することが好ましい。
【0041】
前記一般式(2)で表される化合物(x1)としては、例えば、無触媒あるいは触媒の存在下、オルソクレゾール、2,6−キシレノール、オルソブチルフェノールなどのオルソ位に置換基を有していても良いフェノール類と、2−オキソプロパン酸、3−オキソブタン酸、3−アセチルプロピオン酸、グリオキシル酸などの1分子中にカルボキシル基とこれとは独立したカルボニル基を含有する化合物との反応によって得ることが出来る。前記触媒としては、種々のものが使用できるが、例えば、酸性触媒としては塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シュウ酸などの有機酸、三弗化ホウ素、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛などのルイス酸を挙げることができ、塩基性触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム等のアルカリ(土類)金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩などが挙げられる。これら触媒の使用量は特に限定されるものではないが、原料として用いるオルソ位に置換基を有していてもよいフェノール類に対して0.1〜30重量%用いるのが好ましい。前記触媒の形態も特に限定されず、水溶液であっても、固形のまま使用しても良い。
【0042】
前記反応は無溶剤下で、あるいは有機溶剤の存在下で行うことができる。用いうる有機溶剤としては、例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン等が挙げられ、単独でも、2種以上を混合して用いても良い。有機溶剤の使用量としては、用いる原料の総重量に対して通常50〜300重量%、好ましくは100〜250重量%である。反応温度としては通常40〜180℃、反応時間は通常1〜10時間である。また、反応中に生成する水は系外に分留管などを用いて留去することは、反応を速やかに行う上で好ましい。
【0043】
また、前記反応によって得られる化合物(x1)の着色が大きい場合は、それを抑制するために、酸化防止剤や還元剤を添加しても良い。前記酸化防止剤としては特に限定されないが、例えば、2,6−ジアルキルフェノール誘導体などのヒンダードフェノール系化合物、2価のイオウ系化合物、3価のリン原子を含む亜リン酸エステル系化合物などを挙げることができる。又、前記還元剤としては特に限定されないが、例えば次亜リン酸、亜リン酸、チオ硫酸、亜硫酸、ハイドロサルファイトまたはこれら塩などが挙げられる。
【0044】
反応終了後、反応混合物のpH値が3〜7、好ましくは5〜7になるまで中和あるいは水洗処理を行う。中和処理や水洗処理の方法については特に制限されず、例えば、酸性触媒を用いた場合は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア、トリエチレンテトラミン、アニリン等の塩基性物質を、塩基性触媒を用いた場合は塩酸、第一リン酸水素ナトリウム、蓚酸等の酸性物質を中和剤として用いることができる。
【0045】
中和あるいは水洗処理を行った後、減圧加熱下で溶剤及び未反応物を留去することによって、前記化合物(x1)を得ることが出来る。
【0046】
この様にして得られる化合物(x1)の中でも、得られる2官能性エポキシ樹脂の水溶性に優れ、水性エポキシ樹脂組成物とした時の保存安定性に優れる点、得られる化合物の耐食性・機械的強度等に優れる点から、前記一般式(2)中のR、R、R、Rが水素原子であり、Rがメチル基であることが好ましく、又、前記一般式(2)中のXがエチレン鎖であることが好ましく、ジフェノール酸であることがもっとも好ましい。尚、ジフェノール酸としては、大塚化学株式会社から市販されているので、該市販品をそのまま使用することが可能である。
【0047】
前記四級オニウム塩含有エポキシ化合物(x2)としては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、ビニル基を有する脂環式モノエポキシド等のエポキシ基含有ビニルモノマーと、4級オニウム塩を有するアクリル酸モノマー、4級オニウム塩を有するメタクリル酸モノマー等の4級オニウム塩を有するビニルモノマーとの共重合物や、下記一般式(6)
【0048】
【化10】

〔式(6)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Qは窒素原子又はリン原子であり、Yは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、R、R、Rは同一でも異なっても良い炭素数1〜4のアルキル基である。〕
で表される化合物が挙げられる。
【0049】
前記ビニル基を有する脂環式モノエポキシドとしては、例えば、セロキサイド2000(商品名:ダイセル化学工業株式会社製)が挙げられ、4級オニウム塩を有するアクリル酸モノマーとしては、例えば、DMAEA−Q(株式会社興人製、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート−メチルクロライド塩、79%水溶液)や、DMAPAA−Q(株式会社興人製、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド−メチルクロライド塩、75%水溶液)等が挙げられる。
【0050】
また、エポキシ基含有ビニルモノマーと、アクリルアミドや3級アミンを有するアクリルモノマーを共重合させた後に、アルキルハライドで4級塩化した化合物も使用することができる。
【0051】
これらの中でも、得られる2官能性エポキシ樹脂の水溶性に優れ、水性エポキシ樹脂組成物としたときの保存安定性に優れる点から、前記一般式(6)で表される化合物を用いることが好ましく、特に入手が容易である点から、前記一般式(6)中のR、R、Rがそれぞれ同一または異なる炭素原子数1〜4の直鎖状のアルキル基である化合物を用いることが好ましく、Rが水素原子、Qが窒素原子、R、R、Rがメチル基であり、Xが塩素原子であるSY−GTA80[商品名、阪本薬品工業株式会社製、NV=80重量%水溶液、エポキシ当量(固形分):151g/eq]を用いることが最も好ましい。
【0052】
前記一般式(2)で表される化合物(x1)と前記四級オニウム塩含有エポキシ化合物(x2)との反応方法としては、前記化合物(x1)中のカルボキシル基と前記四級オニウム塩含有エポキシ化合物(x2)中のグリシジル基とを優先的に反応させるものであれば良く、無触媒下あるいは触媒存在下で行うことができるが、触媒を使用すると前記一般式(2)で表される化合物(x1)中のフェノール性水酸基と前記四級オニウム塩含有エポキシ化合物(x2)中のグリシジル基とが反応する副反応が起こりやすく、又、四級オニウム塩含有エポキシ化合物(x2)の重合反応が進行し易くなる点を鑑みると、無触媒下で反応させる方法が好ましい。
【0053】
しかしながら、前記化合物(x1)と前記エポキシ化合物(x2)の組み合わせによっては、反応が速やかに進行しない等の問題が生じることがあり、適当な触媒を使用することも可能である。使用しうる触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム等のアルカリ(土類)金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、ブトキシリチウム、メトキシナトリウム等の金属アルコラート、塩化リチウム、塩化アルミニウム等のルイス酸およびルイス酸とトリフェニルホスフィンオキサイド等のルイス塩基との混合物、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム等のクロライド、ブロマイド、ヨーダイド、テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、ベンジルトリブチルホスホニウム等のクロライド、ブロマイド、ヨーダイド、アセテート等の4級アンモニウム塩、トリエチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の3級アミン類、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類等が挙げられる。2種以上の触媒を併用しても構わない。触媒の使用量としては、通常、前記化合物(x1)に対して、5ppm(重量基準)〜2wt%の範囲で使用され、好ましくは20ppm(重量基準)〜0.5wt%である。これら触媒の形態も特に限定されず、適当な溶剤に希釈してもよいし、水溶液の形態で使用してもよいし、固形の形態で使用しても構わない。
【0054】
前記反応を行う際の反応温度としては、適度な反応速度と、副反応の抑制の点から30〜70℃の範囲であることが好ましい。
【0055】
又、前記反応は無溶剤下で、あるいは溶剤の存在下で行うことができる。前記溶剤としては、前記化合物(x1)と前記エポキシ化合物(x2)とを均一に溶解し、且つ、化合物(x1)、エポキシ化合物(x2)および反応生成物である、前記一般式(5)で表される2官能性ヒドロキシ化合物(a1)に対して不活性であれば特に限定されるものではなく、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等のアルコール類、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、デカリン等の炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、エトキシエチルプロピロネート、3−メトキシブチルアセテート、メトキシプロピルアセテート、セロソルブアセテート等のエステル類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、イソブチルセロソロブ、tert−ブチルセロソロブ等のセロソルブ類、モノグライム、ジグライム、トリグライム等のグライム類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル等、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。これらは1種でも2種以上の混合溶剤としても使用することができる。これらの中でも得られる反応生成物の溶液をそのまま本発明の水性エポキシ樹脂組成物として用いることが可能である点から、水単独、又は、アルコール類、セロソルブ類、グライム類、非プロトン性極性溶媒、あるいはそれぞれの混合溶剤を用いることが好ましい。
【0056】
前記化合物(x1)と前記エポキシ化合物(x2)との反応比率としては、特に限定されないが、化合物(x1)中のカルボキシル基当量とエポキシ化合物(x2)中のエポキシ当量との比(x1)/(x2)が小さいときは、カルボキシル基が残存し、後述する、得られる2官能性ヒドロキシ化合物(a1)とエピハロヒドリン(a2)との反応時に、該カルボキシル基とエピハロヒドリン(a2)とが反応するため、3官能性のエポキシ樹脂となり、最終的にもろい分岐構造を形成しやすく、また、該比率が大きい場合は、未反応のエポキシ化合物(x2)が多くなり、後述する、得られる2官能性ヒドロキシ化合物(a1)とエピハロヒドリン(a2)との反応時に、該2官能性ヒドロキシ化合物(a1)中のフェノール性水酸基とエポキシ化合物(x2)との副反応が起こり、この結果、分子の片末端がエポキシ基で一方がオニウム塩の構造である1官能性のエポキシ樹脂や、両末端がオニウム塩の構造である無官能性の樹脂が生成され、後記する硬化剤(C)との反応で三次元架橋に寄与しないものが混入しやすくなる点を鑑みると、前記比率(x1)/(x2)としては通常0.8以上、2以下であり、好ましくは1以上1.5以下である。
【0057】
前記反応によって得られたカチオン基含有2官能性ヒドロキシ化合物(a1)は、そのまま使用しても、必要に応じて溶剤の除去や未反応のエポキシ化合物(x2)、副生成物(重合物など)の除去等の精製工程を行っても良い。
【0058】
また、得られるカチオン基含有2官能性ヒドロキシ化合物(a1)の着色が大きい場合は、それを抑制するために、酸化防止剤や還元剤を添加しても良い。酸化防止剤としては特に限定されないが、例えば2,6−ジアルキルフェノール誘導体などのヒンダードフェノール系化合物や2価のイオウ系化合物や3価のリン原子を含む亜リン酸エステル系化合物などを挙げることができる。還元剤としては特に限定されないが、例えば次亜リン酸、亜リン酸、チオ硫酸、亜硫酸、ハイドロサルファイトまたはこれら塩などが挙げられる。
【0059】
前記反応で得られる2官能性ヒドロキシ化合物(a1)は、本発明で用いる2官能性エポキシ樹脂(A)の原料(エピハロヒドリンとの反応原料や汎用エポキシ樹脂への伸長剤)として有用である。
【0060】
本発明の2官能性エポキシ樹脂(A)の製造方法としては、前記化合物(x1)と前記エポキシ化合物(x2)とエピハロヒドリン(a2)とを反応させて得られるものであることが好ましく、工業的生産方法として好ましい点から、前記2官能性ヒドロキシ化合物(a1)とエピハロヒドリン(a2)とを原料とする方法が好ましい。
【0061】
前記製造方法としては、下記に示すものを挙げることができる。
まず、前記一般式(3)で表される2官能性エポキシ樹脂を得る方法としては、
(I)前記2官能性ヒドロキシ化合物(a1)とエピハロヒドリン(a2)とを反応させる方法(いわゆる一段法)、
(II)(I)で得られた2官能性エポキシ樹脂を、更に前記2官能性ヒドロキシ化合物(a1)を用いて伸長反応させる方法(いわゆる2段法)、
が挙げられる。
【0062】
更に、前記一般式(4)で表される2官能性エポキシ樹脂を得る方法としては、
(III)前記2官能性ヒドロキシ化合物(a1)と、前記(a1)以外の、1分子中に2個の水酸基又はカルボキシル基を有する化合物(a3)との混合物と、エピハロヒドリン(a2)と、を反応させる方法(共縮反応)、
(IV)(I)で得られた2官能性エポキシ樹脂を、前記(a1)以外の、1分子中に2個の水酸基又はカルボキシル基を有する化合物(a3)を用いて伸長反応させる方法、
(V)本発明の2官能性エポキシ樹脂以外の2官能性エポキシ樹脂〔カチオン基不含2官能性エポキシ樹脂(a4)〕を、前記2官能性ヒドロキシ化合物(a1)を用いて伸長反応させる方法、
が挙げられる。
【0063】
(I)前記2官能性ヒドロキシ化合物(a1)とエピハロヒドリン(a2)との反応手法は、従来フェノール類とエピハロヒドリンとの反応によりエポキシ樹脂を得る反応をそのまま用いることができる。例えば、2官能性ヒドロキシ化合物(a1)中の芳香族性ヒドロキシ基1モルに対し、エピハロヒドリン(a2)0.3〜10モルを添加し、更に、該芳香族性ヒドロキシ基1モルに対し0.9〜2.0モルの塩基を一括添加または徐々に添加しながら、20〜120℃の温度で0.5〜10時間反応させる方法が挙げられる。前記塩基としては、固形でもその水溶液を使用してもよく、水溶液を使用する場合は、連続的に添加すると共に、反応混合物中から減圧下、または常圧下、連続的に水及びエピハロヒドリン(a2)を留出させ、更に分液して水は除去しエピハロヒドリン(a2)は反応混合物中に連続的に戻す方法でもよい。
【0064】
後述する(II)及び(IV)の手法、即ち、得られる2官能性エポキシ樹脂を伸長反応させる場合には、前記芳香族性ヒドロキシ基1モルに対し、エピハロヒドリン(a2)を2〜10モルを使用することが好ましく、又、得られるエポキシ樹脂組成物の優れた硬化性と硬化物物性を発現するための適切な分子量を与えるためには、芳香族性ヒドロキシ基1モルに対し、エピハロヒドリン(a2)を0.3〜1モルを使用することが好ましい。
【0065】
なお、工業生産を行う際は、エポキシ樹脂生産の初バッチでは仕込みに用いるエピハロヒドリン(a2)の全てが新しいものであるが、次バッチ以降は、粗反応生成物から回収されたエピハロヒドリンと、反応で消費される分で消失する分に相当する新しいエピハロヒドリン類とを併用することが好ましい。
【0066】
前記エピハロヒドリン(a2)としては、特に限定されるものではなく、例えば、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリン等が挙げられ、工業的入手が容易なことからエピクロルヒドリンを用いることが好ましい。
【0067】
また、前記塩基としても特に限定されず、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属水酸化物等が挙げられる。特にエポキシ樹脂合成反応の触媒活性に優れる点からアルカリ金属水酸化物が好ましく、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。使用に際しては、これらの塩基を10〜55重量%程度の水溶液の形態で使用してもよいし、固形の形態で使用しても構わない。
【0068】
また、有機溶媒を併用することにより、エポキシ樹脂の合成における反応速度を高めることができる。このような有機溶媒としては特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、水、メタノール、エタノール、1−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、イソブチルセロソロブ、tert−ブチルセロソロブ等のセロソルブ類、モノグライム、ジグライム、トリグライム等のグライム類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、ジエトキシエタン等のエーテル類、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で使用してもよいし、また、極性を調整するために適宜二種以上を併用してもよい。これらの中でも得られる反応生成物の溶液をそのまま本発明の水性エポキシ樹脂組成物として用いることが可能である点から、水単独、又は、アルコール類、セロソルブ類、グライム類、非プロトン性極性溶媒、あるいはそれぞれの混合溶剤を用いることが好ましい。
【0069】
前述の反応で得られた反応物を水洗後、必要により、加熱減圧下、蒸留によって未反応のエピハロヒドリン(a2)や併用する有機溶媒を留去する。また更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂とするために、得られたエポキシ樹脂を再びトルエン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなどの有機溶媒に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えてさらに反応を行うこともできる。この際、反応速度の向上を目的として、4級アンモニウム塩やクラウンエーテル等の相関移動触媒を存在させてもよい。相関移動触媒を使用する場合のその使用量としては、用いるエポキシ樹脂に対して0.1〜3.0重量%の範囲が好ましい。反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に、加熱減圧下トルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤を留去することにより高純度のエポキシ樹脂を得ることができる。この様にして得られるエポキシ樹脂中のハロゲンイオン量は、原料として用いたエポキシ化合物(x2)中の対イオンの種類によらず、いずれも数ppm以下のレベルであることから、分子内に取り込まれている四級オニウム塩の対イオンは、触媒として用いたアルカリによって、OHとなっていることが判明している。対イオンがOHであることは、電子材料や水性化材料としても有用であり、工業的価値の高いものである。
【0070】
(II)前述の(I)の手法で得られた2官能性エポキシ樹脂を、更に前記2官能性ヒドロキシ化合物(a1)を用いて伸長反応させる方法としては、例えば、無触媒または必要に応じて触媒存在下で、100〜220℃で加熱攪拌する方法が挙げられる。この反応時には、適切な有機溶剤の存在下に行う事もできる。前記触媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、オニウム塩、ホスフィン類、アルカリ金属水酸化物等が挙げられる。原料として用いる2官能性エポキシ樹脂と、前記2官能性ヒドロキシ化合物(a1)との反応比率としては特に限定されるものではなく、所望とするエポキシ当量(分子量)に応じて、適宜設定することが好ましい。
【0071】
この反応時に用いることができる有機溶剤としては、原料及び生成物を均一に溶解する事ができれば特に限定されるものではないが、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、デカリン等の炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、エトキシエチルプロピロネート、3−メトキシブチルアセテート、メトキシプロピルアセテート、セロソルブアセテート等のエステル類、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、イソブチルセロソロブ、tert−ブチルセロソロブ等のセロソルブ類、モノグライム、ジグライム、トリグライム等のグライム類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の極性溶剤等が挙げられ、水も用いることができ、単独でも、2種以上を併用しても良い。
【0072】
(III)前記2官能性ヒドロキシ化合物(a1)と、前記(a1)以外の、1分子中に2個の水酸基又はカルボキシル基を有する化合物(a3)との混合物と、エピハロヒドリン(a2)とを反応させる方法については、前述の(I)の手法に準じるものであり、前記化合物(a3)を併用することによって、得られる2官能性エポキシ樹脂の水への溶解性や分子量、用途に応じて必要な加工物の柔軟性・密着性・耐食性等を調整することが可能となる。特に水性エポキシ樹脂組成物としたときの保存安定性と水希釈性に優れる点から前記2官能性ヒドロキシ化合物(a1)と、分子中に2個の水酸基又はカルボキシル基を有する化合物(a3)とのモル比としては、20/80〜95/5であることが好ましく、特に30/70〜80/20であることが好ましい。
【0073】
ここで用いることができる前記化合物(a3)としては、特に限定されるものではないが、例えば、芳香環上に置換基を有していても良いレゾルシン、ハイドロキノン、カテコール等の2価フェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、テトラブロモビスフェノールA等のビスフェノール類、ビフェノール、テトラメチルビフェノール等のビフェノール類、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類、前記2官能性フェノール類の芳香核を水素添加した化合物等、又、カルボン酸類としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカン酸、コハク酸、グルタル酸等の脂肪族2価カルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族2価カルボン酸やその水添物が挙げられ、単独でも2種以上の混合物としても使用することができる。
【0074】
これらの中でも、得られる水性エポキシ樹脂組成物を用いた加工物の機械的物性(強度)や、塗料用等に用いた際の基材との密着性に優れる点から、芳香環上に置換基を有していてもよいビスフェノール類を用いることが好ましく、特にビスフェノールAを用いることが好ましい。
【0075】
(IV)(I)で得られた2官能性エポキシ樹脂を、前記(a1)以外の、1分子中に2個の水酸基又はカルボキシル基を有する化合物(a3)を用いて伸長反応させる方法は、前述の(II)の手法に準じるものである。ここで用いることができる前記化合物(a3)及びその好ましいものについては、前述の(III)で述べたものと同じである。前記2官能性エポキシ樹脂と前記化合物(a3)との反応比率としても、特に限定されるものではなく、水への溶解性や分子量、用途に応じて必要な加工物の柔軟性・密着性・耐食性等に応じて、適宜選択することが好ましい。特に水性エポキシ樹脂組成物としたときの保存安定性と水希釈性に優れる点から前記2官能性エポキシ樹脂と、分子中に2個の水酸基又はカルボキシル基を有する化合物(a3)とのモル比としては、20/80〜95/5であることが好ましく、特に30/70〜80/20であることが好ましい。
【0076】
(V)本発明の2官能性エポキシ樹脂以外の2官能性エポキシ樹脂〔カチオン基不含2官能性エポキシ樹脂(a4)〕を、前記2官能性ヒドロキシ化合物(a1)を用いて伸長反応についても、その手法としては、前述の(II)で述べたことと同様である。
【0077】
ここで用いることができるカチオン基不含2官能エポキシ樹脂(a4)としては、特に限定されるものではなく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスクレゾールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタンとエピハロヒドリンとの縮合物等、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、トリメチロールプロパンとエピハロヒドリンとの縮合物が挙げられ、これらは1種類でも、2種類以上でも併用する事ができる。これらの中でも、反応性が良好であり、得られる水性エポキシ樹脂組成物を用いた加工物の耐食性が良好である点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0078】
これらのカチオン基不含2官能エポキシ樹脂(a4)と前記2官能性ヒドロキシ化合物(a1)との反応比率としても、特に限定されるものではなく、水への溶解性や分子量、用途に応じて必要な加工物の柔軟性・密着性・耐食性等に応じて、適宜選択することが好ましい。特に水性エポキシ樹脂組成物としたときの保存安定性と水希釈性に優れる点から前記2官能性ヒドロキシ化合物(a1)とカチオン基不含2官能エポキシ樹脂(a4)とのモル比としては、20/80〜95/5であることが好ましく、特に30/70〜80/20であることが好ましい。
【0079】
前述の反応(I)〜(V)で得られた生成物は、必要に応じて触媒の失活・溶媒や未反応原料の留去・乾燥等の精製工程を行うことによって、純度の高いものとすることが出来る。
【0080】
本発明で用いる水(B)としては、化合物(A)を均一に溶解または分散させるために使用するものであり、脱イオン水が好ましい。水(B)は、2官能性ヒドロキシ化合物(a1)や2官能性エポキシ樹脂(A)の反応時または反応終了後に添加し、均一に攪拌混合することによって、本発明の水性エポキシ樹脂組成物とすることができる。
【0081】
本発明の水性エポキシ樹脂組成物において、本発明の2官能性エポキシ樹脂(A)は単独でも、構造の異なる2種以上を併用して用いても良く、さらには、又は本発明の効果を損なわない範囲でその他のエポキシ樹脂と併用して用いることもできる。併用する場合には、エポキシ樹脂全体に占める本発明の2官能性エポキシ樹脂(A)の割合は30重量%以上が好ましく、特に40重量%以上が好ましい。
【0082】
併用されうるその他のエポキシ樹脂としては、種々のエポキシ樹脂を使用することができ、特に限定されるものではないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。またこれらのエポキシ樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。更に、これらのエポキシ樹脂は、後記する界面活性剤や造膜助剤(有機溶剤)を水と併用して、予め水性化し、エマルジョンとして用いることもできる。
【0083】
本発明の水性エポキシ樹脂組成物としては、必要に応じて親水性の助剤として水溶性有機溶剤や界面活性剤などを使用することができる。水溶性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、メチルソロソルブ、エチルセロソルブ、n−プロピルセロソルブ、イソプロピルセロソロブ、ブチルセロソルブ、イソブチルセロソルブ、tert−ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、モノグライム、ジグライム、トリグライム等のグライム類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノエチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類などが挙げられ、これらの中でも、エポキシ樹脂(A)に対する溶解性が良好である点から、イソプロパノール、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、イソブチルセロソルブ、tert−ブチルセロソルブ、ジグライム、プロピレングリコールモノメチルエーテルを用いることが好ましい。
【0084】
本発明のエポキシ樹脂(A)はそれ自身が親水性の基を有し、水性であることから、従来エポキシ樹脂エマルジョン等に使用されていた界面活性剤を使用しなくても、容易に水性エポキシ樹脂組成物とすることが可能であるが、より保存安定性に優れたもの、または、前述のその他のエポキシ樹脂を併用する場合等には、界面活性剤を用いることが可能である。界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンエーテルリン酸エステル類などの陰イオン性界面活性剤、アルキルベタイン、アルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルアンモニウムハイドロオキサイド等の両性イオン界面活性剤、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル、ポリオキシアルキレンスチレン化フェノールなどの非イオン性界面活性剤が挙げられ、これらの中でも、エポキシ樹脂との相溶性、及びエポキシ基との非反応性の点から、非イオン性界面活性剤が好ましく、ポリオキシアルキレン多環フェニルエーテルが更に好ましい。これら界面活性剤の使用量は、エマルジョン化が可能であれば特に制限はないが、水性エポキシ樹脂組成物中におけるエポキシ樹脂総量100重量部に対して0.1重量部以上が好ましく、かつ、水性塗料用途等に用いる場合は乾燥塗膜の耐水性が良好な点から、5重量部以下であることが好ましく、2.5重量部以下であることが更に好ましい。
【0085】
これらの助剤は、2官能性ヒドロキシ化合物(a1)や2官能性エポキシ樹脂(A)の反応時または反応終了後に添加し、均一に攪拌混合することによって、本発明の水性エポキシ樹脂組成物とすることができる。
【0086】
また、本発明の水性エポキシ樹脂組成物としては、本発明の特性を損なわない範囲で、必要に応じて、他のポリエステル系水性樹脂、アクリル系水性樹脂等を併用しても良い。
【0087】
本発明の水性エポキシ樹脂組成物は、得られる加工物の性能、例えば基材との密着性、耐食性、機械的物性(強度)等をより優れたものとする(三次元架橋構造を形成させる)ために、硬化剤(C)を用いることが好ましい。
【0088】
前記硬化剤(C)としては、前記エポキシ樹脂(A)中におけるグリシジル基と硬化反応が可能である、従来エポキシ樹脂用の硬化剤として知られている化合物であれば特に限定されるものではなく、例えばアミン系硬化剤、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ポリカルボン酸類、ポリカルボン酸無水物類、フェニルイミダゾール等のイミダゾール類、ジシアンジアミド類、アジピン酸ジヒドラジド等のジヒドラジン等が挙げられる。
【0089】
これらの中でも、2個以上のアミノ基を有する化合物からなるアミン系硬化剤が好ましく、その構造は2個以上の1〜3級アミノ基を有する化合物であれば特に制限されるものではないが、水との相溶性が良好な点から、脂肪族系多官能性アミン類を主成分とするものが更に好ましく、例えば、ペンタエチレンヘキサミン、テトラエチレンペンタミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、メタキシレンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルネンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、N−アミノエチルピペラジン等、前記脂肪族系多官能性アミン類のアミノ基の一部を脂肪族ジカルボン酸と重縮合しアミド化したポリアミドポリアミン類、及びそれらの変性物等が挙げられる。
【0090】
前記脂肪族ジカルボン酸としては、トール油脂肪酸、リノレン酸、リノール酸等からなるダイマー酸等が挙げられる。
【0091】
前記変性物としては、エポキシ樹脂(A)との相溶性、ならびに塗膜の乾燥性、耐薬品性、耐食性等が良好な点から、前記多官能性アミン類、若しくは、前記ポリアミドポリアミン類と2価以上のフェノール類とエピクロルヒドリンから誘導される化合物とのアダクト物、及び/または、前記多官能性アミン類、若しくは、前記ポリアミドポリアミン類とフェノール類とホルムアルデヒドから誘導される化合物とのマンニッヒ変性ポリアミンが特に好ましい。
【0092】
アミン系硬化剤を用いる場合は、そのままでも、また、アミンを酸中和後、水を添加して水溶液としたものや、エマルジョン化したものも使用することができる。これらの硬化剤は1種類で用いることもできるし、2種類以上で併用することも可能である。
【0093】
本発明の水性エポキシ樹脂組成物中の硬化剤(C)として、アミン系硬化剤を用いる場合のその配合量としては、特に制限されるものではないが、得られる加工物の耐衝撃性、耐食性等に優れる点から、エポキシ樹脂(A)を含む、水性エポキシ樹脂組成物中のエポキシ基の総量とアミン系硬化剤中の活性水素基のモル比(エポキシ基/活性水素基)が100/60〜100/120であることが好ましい。
【0094】
また、硬化剤(C)としては前記エポキシ樹脂(A)中における水酸基と硬化反応が可能である化合物を使用することができる。工業的入手の容易さから、アミノ樹脂、イソシアネート化合物、又はフェノール樹脂を用いることが好ましい。
【0095】
前記アミノ樹脂としては、例えば、メラミンとアルデヒド化合物から誘導されるメラミン樹脂、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン等とアルデヒド化合物から誘導されるグアナミン樹脂、尿素、チオ尿素等とアルデヒド化合物から誘導される尿素樹脂等が挙げられる。これらは単独でも2種類以上の併用でも使用できる。
【0096】
更に、前記アミノ樹脂としてはメラミン、尿素等のアミノ成分が共縮合されたものや樹脂中のメチロール基がメタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等のアルコールで置換されたものも使用することができる。
【0097】
前記アミノ樹脂の使用割合としては、水性エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂(A)を含むエポキシ樹脂固形分総量100重量部に対してアミノ樹脂中の固形分が1〜40重量部であることが好ましく、更に好ましくは2〜30重量部である。
【0098】
前記イソシアネート化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、ジイソシアネートとして、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート、水素化トリレジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、水素化メタキシリレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート類等が挙げられ、無溶剤でも、溶剤に希釈されているものも使用できる。
【0099】
前記ジイソシアネート以外のポリイソシアネートとしては、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ジメチルトリフェニルメタンテトライソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアナートフェニル)−トリホスフェート等が挙げられる。
【0100】
更にイソシアネート化合物としては、上記イソシアネートを用いて、蒸気圧低下や粘度、官能基数、反応性の調整、特殊な物性を付与する等の目的で、種々の変性反応を行ったものも使用することができる。これらの例としては、アルコール類との反応物であるウレタンプレポリマー類、イソシアネート基同士を付加反応させて得られるアロファネート変性イソシアネート類、ビウレット変性イソシアネート類、ウレトジオン変性イソシアネート類、イソシアヌレート変性イソシアネート類、イソシアネート基の縮合反応等を利用したカルボジイミド変性体、ウレトニミン変性体、アシル尿素ジイソシアネート体等が挙げられる。
【0101】
前記ウレタンプレポリマー類としては、例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、オレイルアルコール等の不飽和アルコールの2量体からなるジオール類、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ポリエステルポリオール等のポリオールと上記イソシアネート化合物とを反応させて得られる、末端にイソシアネート基を有する化合物類等が挙げられる。
【0102】
これらのイソシアネート化合物は、単独で用いても、2種類以上の混合物として用いても良い。
【0103】
前記イソシアネート化合物と使用割合としては、特に制限されるものではないが、得られる硬化物の前記性能に優れる点から、水性エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂(A)を含むエポキシ樹脂固形分総量100重量部に対してイソシアネート化合物中の固形分を1〜30重量部で用いることが好ましく、更に好ましくは3〜25重量部である。
【0104】
前記フェノール樹脂としては、フェノール類とアルデヒド化合物とを触媒の存在下に縮合反応させた化合物であれば特に限定されず、単独でも2種類以上の併用も可能である。
【0105】
前記フェノール類としては、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−tert−ブチルフェノール、m−tert−ブチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−シクロヘキシルフェノール、ノニルフェノール、キシレノール等の1価フェノール類や、ビスフェノールA、ビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールZ等のビスフェノール類、1,5−ジオキシナフタレン、1,6−ジオキシナフタレン等のナフタレンジオール類、ビフェノール、テトラメチルビフェノールが挙げられ、これらは単独または2種類以上の併用も可能である。
【0106】
前記触媒としては、塩基性触媒または酸触媒を使用することができる。塩基性触媒としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、アミン類、アンモニアなどが挙げられ、レゾール型縮合物が得られる。酸触媒としては塩酸、リン酸、シュウ酸等が挙げられ、ノボラック型縮合物が得られる。
【0107】
前記フェノール樹脂の使用割合としては、特に限定されないが、水性エポキシ樹脂組成物のエポキシ樹脂(A)を含むエポキシ樹脂固形分総量100重量部に対してフェノール樹脂中の固形分1〜40重量部で用いることが好ましく、更に好ましくは2〜30重量部である。
【0108】
また本発明の水性エポキシ樹脂組成物には、必要に応じて硬化促進剤を併用することも可能であり、例えば、2,4,6−トリ(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン(DBU)等の第三級アミン類、2−メチル−4−エチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルフォスフィン等のフォスフィン類、フェノール、クレゾール等のフェノール類が挙げられる。
【0109】
更に本発明の水性エポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、ハジキ防止剤、ダレ止め剤、流展剤、消泡剤、硬化促進剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の各種添加剤を配合してもよい。
【0110】
本発明の水性エポキシ樹脂組成物の用途としては、特に制限されるものではないが、例えば、塗料、接着剤、繊維集束剤、コンクリートプライマー等として好適に用いることができ、特に耐食性や水による無限希釈性に優れる点から水性塗料用組成物として用いることが好ましい。
【0111】
本発明の水性エポキシ樹脂組成物を塗料用途に用いる場合には、必要に応じて、防錆顔料、着色顔料、体質顔料等の各種フィラーや各種添加剤等を配合することが好ましい。前記防錆顔料としては亜鉛粉末、リンモリブテン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、クロム酸バリウム、クロム酸アルミニウム、グラファイト等の鱗片状顔料等が挙げられ、着色顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、硫化亜鉛、ベンガラが挙げられ、また体質顔料としては硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、カオリン等が挙げられる。これらフィラーの配合量としては、エポキシ樹脂、水、及び硬化剤の合計100重量部に対して、10〜70重量部であることが、塗膜性能、塗装作業性等の点から好ましい。
【0112】
本発明の水性エポキシ樹脂組成物を塗料用に使用する場合における塗装方法については、特に限定されず、ロールコート、スプレー、刷毛、ヘラ、バーコーター、浸漬塗装、電着塗装方法にて行う事ができ、その加工方法としては、常温乾燥〜加熱硬化を行うことができる。加熱する場合は50〜250℃、好ましくは60〜230℃で、2〜30分、好ましくは5〜20分反応させることにより、塗膜を得ることが出来る。
【0113】
また、本発明の水性エポキシ樹脂組成物を接着剤として使用する場合は、特に限定されず、スプレー、刷毛、ヘラにて基材へ塗布後、基材の接着面を合わせることで行う事ができ、接合部は周囲の固定や圧着する事で強固な接着層を形成することができる。基材としては鋼板、コンクリート、モルタル、木材、樹脂シート、樹脂フィルムが適し、必要に応じて研磨等の物理的処理やコロナ処理等の電気処理、化成処理等の化学処理などの各種表面処理を施した後に塗布すると更に好ましい。
【0114】
また、本発明の水性エポキシ樹脂組成物を繊維集束剤として使用する場合は、特に限定されず行う事ができ、例えば、紡糸直後の繊維にローラーコーターを用いて塗布し、繊維ストランドとして巻き取った後、乾燥を行う方法が挙げられる。用いる繊維としては、特に制限されるものではなく、例えば、ガラス繊維、セラミック繊維、石綿繊維、炭素繊維、ステンレス繊維等の無機繊維、綿、麻等の天然繊維、ポリエステル、ポリアミド、ウレタン等の合成繊維等が挙げられ、その基材の形状としては短繊維、長繊維、ヤーン、マット、シート等が挙げられる。繊維集束剤としての使用量としては繊維に対して樹脂固形分として0.1〜2重量%であることが好ましい。
【0115】
また、本発明の水性エポキシ樹脂組成物をコンクリートプライマーとして使用する場合は、特に限定されず、ロール、スプレー、刷毛、ヘラ、鏝にて行う事ができる。
【0116】
本発明の硬化物を得る方法としては、一般的なエポキシ樹脂組成物の硬化方法に準拠すればよいが、加熱温度及び時間は、組み合わせる硬化剤の種類により異なるためそれぞれの最適温度、最適時間を選択することが好ましい。また、成形方法などもエポキシ樹脂組成物の一般的な方法が用いられ、特に本発明の水性エポキシ樹脂組成物に特有の条件は不要である。
【実施例】
【0117】
以下に本発明を実施例により詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中で特に断りのない限り、「部」「%」は重量基準である。
【0118】
実施例1
温度計、撹拌装置、滴下ロート、冷却管、窒素ガス導入管、下部に分液コックが装着された4つ口フラスコに、ジフェノール酸(水酸基当量143g/eq、カルボキシル当量286g/eq、大塚化学株式会社製)286gとSY−GTA80(グリシジル基含有4級オニウム塩−80%水溶液、阪本薬品工業株式会社製)227gとイソプロピルアルコール120gを仕込み、50℃まで加熱撹拌することによって、均一溶液とした。更に同温度で4時間反応させることによって、カチオン基含有2官能性ヒドロキシ化合物(a1−1)を得た。該化合物(a1−1)は、図1の13C−NMRスペクトル及び図2のマススペクトル(マトリックスとして1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエンを使用)で理論構造に相当するM=402のピークが得られたことから、下記構造式(7)のカチオン基含有2官能性ヒドロキシ化合物を含有することが確認された。
【0119】
【化11】

【0120】
実施例2
実施例1で得たヒドロキシ化合物(a1−1)のフラスコに、エピクロルヒドリン370g(4モル)を仕込み、40℃まで加熱攪拌しながら溶解させた。その後、窒素ガスパージを施しながら、49%水酸化ナトリウム水溶液8g(0.1モル)を添加し4時間反応させた。次いで50℃まで加熱し、49%水酸化ナトリウム水溶液100g(1.2モル)を5時間かけて滴下した。その後、水157gを添加し、生成した塩を溶解した後、下部の分液用コックより飽和食塩水を棄却した。未反応のエピクロロヒドリンを常圧条件下でフラスコ温度130℃まで蒸留して留去後、反応液に残った塩をろ別した。ろ液から、更に減圧条件下フラスコ温度130℃で未反応のエピクロロヒドリンを留去することによってエポキシ当量403g/eqのエポキシ樹脂(A−1)を得た。このエポキシ樹脂(A−1)は、マススペクトル(マトリックスとして1,1,4,4−テトラ−1,3−ブタジエンを使用)でn=0の理論構造に相当するM=514のピーク、n=1の理論構造に相当するM=969のピークが得られたことから、下記構造式(8)で表されるエポキシ樹脂を含有することが確認された。ここにイオン交換水233gを加える事によって、不揮発分60%の白色液体状の水性エポキシ樹脂組成物を得た。これを水性エポキシ樹脂組成物(E−1)とする。
【0121】
【化12】

【0122】
実施例3
温度計、撹拌装置、滴下ロート、冷却管、窒素ガス導入管が装着された4つ口フラスコに実施例2で得られたエポキシ樹脂(A−1)300部、ジフェノール酸20部、メトキシプロパノール36部を加え、50℃に昇温し攪拌均一化した。更に、90℃で2時間攪拌する事によって、エポキシ当量560g/eqのエポキシ樹脂(A−2)を得た。エポキシ樹脂(A−2)に、イオン交換水284部を加え均一溶解させることによって、不揮発分50%の白色液体状の水性エポキシ樹脂組成物(E−2)を得た。
【0123】
実施例4
実施例1で得た(a1−1)のフラスコに、ビスフェノールA228g、エピクロルヒドリン1480g(4モル)を仕込み、40℃まで加熱攪拌しながら溶解させた。その後、窒素ガスパージを施しながら、49%水酸化ナトリウム水溶液33g(0.1モル)を添加し4時間反応させた。次いで50℃まで加熱し、49%水酸化ナトリウム水溶液400g(1.2モル)を5時間かけて滴下した。その後、水564部を添加し、生成した塩を溶解した後、下部の分液用コックより飽和食塩水を棄却した。未反応のエピクロロヒドリンを常圧条件下でフラスコ温度130℃まで蒸留して留去後、反応液に残った塩をろ別した。ろ液から、更に減圧条件下フラスコ温度130℃で未反応のエピクロロヒドリンを留去したのちプロピルセロソルブ99gを加え攪拌均一化する事によって、不揮発分90%、エポキシ当量277g/eqのエポキシ樹脂(A−3)を得た。エポキシ樹脂(A−3)にイオン交換水788部を加え、攪拌均一化することによって、不揮発分50%の水性エポキシ樹脂組成物(E−3)を得た。
【0124】
実施例5
温度計、撹拌装置、滴下ロート、冷却管、窒素ガス導入管が装着された4つ口フラスコに、実施例2で得たエポキシ樹脂(A−1)300部、ビスフェノールA16.7部、メトキシプロパノール35部を仕込み、50℃に昇温し攪拌均一化させた。その後、100℃に昇温し3時間攪拌する事によって、エポキシ当量551g/eqのエポキシ樹脂(A−4)を得た。エポキシ樹脂(A−4)に、イオン交換水282部を加え攪拌均一化することによって、不揮発分50%の水性エポキシ樹脂組成物(E−4)を得た。
【0125】
実施例6
実施例1で得た(a1−1)のフラスコに、ビスフェノールA456g、エピクロルヒドリン2220g(4モル)を仕込み、40℃まで加熱攪拌しながら溶解させた。その後、窒素ガスパージを施しながら、49%水酸化ナトリウム水溶液58.8g(0.1モル)を添加し4時間反応させた。次いで50℃まで加熱し、49%水酸化ナトリウム水溶液705g(1.2モル)を5時間かけて滴下した。その後、水800gを添加し、生成した塩を溶解した後、下部の分液用コックより飽和食塩水を棄却した。未反応のエピクロロヒドリンを常圧条件下でフラスコ温度130℃まで蒸留して留去後、反応液に残った塩をろ別した。ろ液から、更に減圧条件下フラスコ温度130℃で未反応のエピクロロヒドリンを留去した後、プロピルセロソルブ134gを加え攪拌均一化する事によって、不揮発分90%、エポキシ当量 298g/eqのエポキシ樹脂(A−5)を得た。エポキシ樹脂(A−5)にイオン交換水1077gを加え、攪拌均一化することによって不揮発分50%の水性エポキシ樹脂組成物(E−6)を得た。
【0126】
実施例7
温度計、撹拌装置、滴下ロート、冷却管、窒素ガス導入管が装着された4つ口フラスコに、EPICLON850−S(ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、エポキシ当量188g/eq、大日本インキ化学工業株式会社製)300部、実施例1で得られたカチオン基含有2官能性ヒドロキシ化合物(a1−1)184部、メトキシプロパノール48部を仕込み、50℃に昇温、攪拌均一化した。更に100℃に昇温し(a1−1)中のイソプロパノールを留去しながら攪拌を3時間継続する事によってエポキシ当量480g/eqのエポキシ樹脂(A−6)を得た。エポキシ樹脂(A−6)にイオン交換水375部を加え、攪拌均一化することによって不揮発分50%の水性エポキシ樹脂組成物(E−7)を得た。
【0127】
実施例8
温度計、撹拌装置、滴下ロート、冷却管、窒素ガス導入管が装着された4つ口フラスコに、実施例4で得られたエポキシ樹脂(A−3)300部、ビスフェノールA102部、ブチルセロソルブ63部を仕込み、70℃に昇温、攪拌均一化した。更に140℃に昇温後5時間攪拌し、ブチルセロソルブ66部を加え攪拌均一化することによって、エポキシ当量5100g/eqのエポキシ樹脂(A−7)を得た。このエポキシ樹脂(A−7)に対し、イオン交換水532部を加え、攪拌均一化することによって、不揮発分35%の水性エポキシ樹脂組成物(E−7)を得た。
【0128】
実施例9
温度計、撹拌装置、滴下ロート、冷却管、窒素ガス導入管が装着された4つ口フラスコに、実施例2で得たエポキシ樹脂(A−1)300部、ビスフェノールA76部、メトキシプロパノール66部を仕込み、50℃に昇温し攪拌均一化させた。その後、140℃に昇温し4時間攪拌した後、ブチルセロソルブ41部を加え攪拌均一化する事によって、エポキシ当量5300g/eqのエポキシ樹脂(A−8)を得た。エポキシ樹脂(A−8)に、イオン交換水591部を加え攪拌均一化することによって、不揮発分35%の水性エポキシ樹脂組成物(E−8)を得た。
【0129】
合成例1 (特許文献1記載の化合物)
温度計、撹拌装置、滴下ロート、冷却管、窒素ガス導入管が装着された4つ口フラスコに、EPICLON 1055(ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂、エポキシ当量475g/eq、大日本インキ化学工業株式会社製)300部、ブチルセロソルブ135部を仕込み、100℃に昇温して攪拌均一化後、モノエタノールアミン(アルカノールアミン、日本触媒株式会社製)4部、ジェファーミンM−1000(ポリオキシアルキレン化合物、ピー・ティー・アイジャパン株式会社製)101部を発熱に注意しながら順次仕込み、130℃において溶液粘度が飽和するまで反応を行う事によってエポキシ樹脂(A’−1)を得た。エポキシ樹脂(A’−1)に対し、イオン交換水360部を添加し、攪拌均一化することによって、不揮発分45%の水性エポキシ樹脂組成物(E’−1)を得た。
【0130】
合成例2 (特許文献3記載の化合物)
温度計、撹拌装置、滴下ロート、冷却管、窒素ガス導入管が装着された4つ口フラスコに、EPICLON 2055(ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂、エポキシ当量625g/eq、大日本インキ化学工業株式会社製)300部、ジグライム180部を仕込み、70℃に昇温して攪拌均一化後、モノエタノールアミン21部、を加え、100℃にて7時間反応させた。70℃に冷却後、無水コハク酸59部を添加し95℃に昇温し1時間反応させた。次に、反応液を60℃に冷却し、29%アンモニア水35部を添加、攪拌均一化後にイオン交換水527部を加え、攪拌均一化させることによって不揮発分33%の水性エポキシ樹脂組成物(E’−2)を得た。
【0131】
表1に、実施例2〜9、合成例1〜2で得られた水性エポキシ樹脂組成物(E−1)〜(E−8)及び(E’−1)、(E’−2)の性状値、及び40℃の乾燥機内保存時における外観の変化を示す。表1において、ワニス安定性は、水性エポキシ樹脂組成物を100ml容量のマヨネーズ瓶に90g量り取り、40℃の乾燥機内にて保管し、3ヵ月後の外観を目視にて観察した。
〇:沈殿、分離なし、×:分離または凝集物が確認される
また、安定性試験3ヵ月後のマヨネーズ瓶を開け、アミン臭気について官能試験を行った。
○:アミン臭気無、×:アミン臭気有
【0132】
【表1】

【0133】
試験例1〜10、及び比較試験例1〜6
次に、得られた水性エポキシ樹脂組成物を用いて表2、3の配合比で水性塗料を作成し、#400のサンドペーバーで表面処理を行った冷却圧延鋼板に対しバーコーターにて塗布した後、塗膜物性評価を行った。なお、表2記載の塗料はPWC=50%、塗膜物性は膜厚60μm、25℃×7日養生後の試験結果であり、表3記載の塗料はPWC=55%、塗膜物性は膜厚15μm、焼付条件160℃×20分の試験結果である。尚、各試験方法及び評価基準は下記の通りである。
【0134】
耐おもり落下性:JIS K−5600−5−3(1999)に準拠し、デュポン式にて、撃心1/2インチ、荷重500gにて行った。
〇:50cmで亀裂等の発生無し。×:50cmで亀裂等の発生が認められる。
【0135】
付着性試験:JIS K−5600−5−6(1999)に準拠し、1mm間隔で切れ目を入れ、テープを貼り付け後に引き剥がした後の塗膜状態を目視で観察した。
〇:剥がれなし。×:剥がれが見られる。
【0136】
耐液体性(水浸せき法):JIS K−5600−2(1999)に準拠し、40℃×1週間後の塗膜浸漬面における膨れの発生を観察した。
〇:膨れ発生せず。×:膨れ発生。
【0137】
耐中性塩水噴霧性:JIS K−5600−7−1(1999)に準拠して行った。300hr試験後のフラット部におけるブリスターの有無を確認した。
〇:膨れ発生せず。×:膨れ発生。
【0138】
【表2】

【0139】
表2の脚注
8290Y60:ジャパンエポキシエジン社製 ポリアミン樹脂「EPICURE 8290Y60」活性水素当量(溶液値=272g/eq)
K−White:テイカ株式会社製 防錆顔料
CR−97:石原産業株式会社製 酸化チタン タイペークCR−97
SNデフォーマー777:サンノプコ株式会社製 消泡剤
BYK−341:ビックケミー社製 添加剤
【0140】
【表3】

【0141】
表3の脚注
S−695:大日本インキ化学工業株式会社製 水溶性メチルエーテル化メラミン樹脂ウォーターゾールS−695」不揮発分65%
硬化触媒 :大日本インキ化学工業株式会社製 ベッカミンP−198
DNW−500:大日本インキ化学工業株式会社製 水溶性イソシアネート「バーノックDNW−500」不揮発分80%、NCO含有量13.5%
NS−100:日東粉化株式会社 炭酸カルシウム
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】実施例1で得られたカチオン基含有2官能性ヒドロキシ化合物の13C−NMRスペクトルである。
【図2】実施例1で得られたカチオン基含有2官能性ヒドロキシ化合物のマススペクトルである。
【図3】実施例2で得られたエポキシ樹脂の13C−NMRスペクトルである。
【図4】実施例2で得られたエポキシ樹脂のマススペクトルである。
【図5】実施例4で得られたエポキシ樹脂の13C−NMRスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

〔式(1)中、R、R、R、R、Rは同一でも異なっても良い、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R、R、Rは同一でも異なっても良い炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは水素原子又はメチル基であり、Xは単結合又は炭素数1〜4のアルキレン鎖であり、Qは窒素原子又はリン原子であり、Yは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子又は水酸基である。〕
で表される構造を有し、且つ分子両末端がエポキシ基である2官能性エポキシ樹脂(A)と水(B)とを含有することを特徴とする水性エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
2官能性エポキシ樹脂(A)が、下記一般式(2)
【化2】

〔式(2)中、R、R、R、R、R及びXは前記と同じである。〕
で表される水酸基とカルボキシル基とを有する化合物(x1)と、四級オニウム塩含有エポキシ化合物(x2)と、エピハロヒドリン(a2)と、を反応させて得られるエポキシ樹脂である請求項1記載の水性エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
2官能性エポキシ樹脂(A)が、下記一般式(3)
【化3】

〔式(3)中、R〜R、R、X、Q、Yは前記と同じであり、pは繰り返し数の平均値であって0〜50である。〕
で表される化合物である請求項1記載の水性エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記一般式(3)中のR、R、R、Rが水素原子であり、R、R、R、Rがメチル基であり、Qが窒素原子であり、Yが塩素原子又は水酸基である請求項3記載の水性エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
2官能性エポキシ樹脂(A)が、下記一般式(4)
【化4】

〔式(4)中、R〜R、R、X、Q、Yは前記と同じであり、Aは前記一般式(1)で表される構造とは異なる、1分子中に2個の水酸基又はカルボキシル基を有する化合物の残基であり、q及びrは繰り返し数の平均値であっ、それぞれ独立にq及びrは繰り返し数の平均値であって、それぞれ独立にq=0〜45、r=0〜55である。尚、それぞれの繰り返し単位はランダムに結合していることを示す。〕
で表される化合物である請求項1記載の水性エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
前記一般式(4)中のqとrとの比q/rが、20/80〜95/5である請求項5記載の水性エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
前記一般式(4)中のAがビスフェノール類の残基である請求項5記載の水性エポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
前記一般式(4)中のR、R、R、Rが水素原子であり、R、R、R、Rがメチル基であり、Qが窒素原子であり、Yが塩素原子又は水酸基である請求項5記載の水性エポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
更に硬化剤(C)を含有する請求項1〜8の何れか1項記載の水性エポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
硬化剤(C)がアミン系硬化剤、アミノ樹脂又はイソシアネート化合物である請求項9記載の水性エポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
水性塗料用組成物である請求項9記載の水性エポキシ樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか1項記載の水性エポキシ樹脂組成物を硬化させて得られることを特徴とする硬化物。
【請求項13】
下記一般式(5)
【化5】

〔式(5)中、R、R、R、R、Rは同一でも異なっても良い、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R、R、Rは同一でも異なっても良い炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは水素原子又はメチル基であり、Xは単結合又は炭素数1〜4のアルキレン鎖であり、Qは窒素原子又はリン原子であり、Yは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子又は水酸基である。)
で表されることを特徴とする新規カチオン基含有2官能性ヒドロキシ化合物。
【請求項14】
前記一般式(5)中のR、R、R、Rが水素原子であり、R、R、R、Rがメチル基であり、Qが窒素原子であり、Yが塩素原子又は水酸基である請求項13記載の新規カチオン基含有2官能性ヒドロキシ化合物。
【請求項15】
下記一般式(3)
【化6】

〔式(3)中、R、R、R、R、Rは同一でも異なっても良い、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R、R、Rは同一でも異なっても良い炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは水素原子又はメチル基であり、Xは単結合又は炭素数1〜4のアルキレン鎖であり、Qは窒素原子又はリン原子であり、Yは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子又は水酸基であり、pは繰り返し数の平均値であって0〜50である。〕
又は下記一般式(4)
【化7】

〔式(4)中、R〜R、R、X、Q、Yは前記と同じであり、Aは前記一般式(1)で表される構造とは異なる、1分子中に2個の水酸基又はカルボキシル基を有する化合物の残基であり、q及びrは繰り返し数の平均値であって、それぞれ独立にq=0〜45、r=0〜55である0〜50である。尚、それぞれの繰り返し単位はランダムに結合していることを示す。〕
で表されることを特徴とする新規カチオン基含有2官能性エポキシ樹脂。
【請求項16】
前記一般式(3)中のR、R、R、Rが水素原子であり、R、R、R、Rがメチル基であり、Qが窒素原子であり、Yが塩素原子又は水酸基である、又は前記一般式(4)中のR、R、R、Rが水素原子であり、R、R、R、Rがメチル基であり、Qが窒素原子であり、Yが塩素原子又は水酸基であり、Aがビスフェノール類の残基である請求項15記載の新規カチオン基含有2官能性エポキシ樹脂。
【請求項17】
下記一般式(2)
【化8】

〔式(2)中、R、R、R、R、Rは同一でも異なっても良い、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Xは単結合又は炭素数1〜4のアルキレン鎖である。〕
で表される水酸基とカルボキシル基とを有する化合物(x1)と、四級オニウム塩含有エポキシ化合物(x2)と、を反応させることを特徴とするカチオン基含有2官能性ヒドロキシ化合物の製造方法。
【請求項18】
前記一般式(2)中のR、R、R、Rが水素原子であり、Rがメチル基である請求項17記載の製造方法。
【請求項19】
四級オニウム塩含有エポキシ化合物(x2)が、下記一般式(6)
【化9】

〔式(6)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Qは窒素原子又はリン原子であり、Yは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、R、R、Rは同一でも異なっても良い炭素数1〜4のアルキル基である。〕
で表される化合物である請求項17又は請求項18記載の製造方法。
【請求項20】
下記一般式(2)
【化10】

〔式(2)中、R、R、R、R、Rは同一でも異なっても良い、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Xは単結合又は炭素数1〜4のアルキレン鎖である。〕
で表される水酸基とカルボキシル基とを有する化合物(x1)と四級オニウム塩含有エポキシ化合物(x2)とを反応させて得られるカチオン基含有2官能性ヒドロキシ化合物(a1)と、エピハロヒドリン(a2)と、を反応させることを特徴とするカチオン基含有2官能性エポキシ樹脂の製造方法。
【請求項21】
下記一般式(2)
【化11】

〔式(2)中、R、R、R、R、Rは同一でも異なっても良い、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Xは単結合又は炭素数1〜4のアルキレン鎖である。〕
で表される水酸基とカルボキシル基とを有する化合物(x1)と四級オニウム塩含有エポキシ化合物(x2)とを反応させて得られるカチオン基含有2官能性ヒドロキシ化合物(a1)と、1分子中に2個の水酸基又はカルボキシル基を有する化合物(a3)と、エピハロヒドリン(a2)と、を反応させることを特徴とするカチオン基含有2官能性エポキシ樹脂の製造方法。
【請求項22】
下記一般式(2)
【化12】

〔式(2)中、R、R、R、R、Rは同一でも異なっても良い、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Xは単結合又は炭素数1〜4のアルキレン鎖である。〕
で表される水酸基とカルボキシル基とを有する化合物(x1)と四級オニウム塩含有エポキシ化合物(x2)とを反応させて得られるカチオン基含有2官能性ヒドロキシ化合物(a1)と、1分子中に2個の水酸基又はカルボキシル基を有する化合物(a3)と、エピハロヒドリン(a2)と、を反応させて得られるカチオン基含有2官能性エポキシ樹脂を用いて、更に、下記一般式(2)
【化13】

〔式(2)中、R、R、R、R、Rは同一でも異なっても良い、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Xは単結合又は炭素数1〜4のアルキレン鎖である。〕
で表される水酸基とカルボキシル基とを有する化合物(x1)と四級オニウム塩含有エポキシ化合物(x2)とを反応させて得られるカチオン基含有2官能性ヒドロキシ化合物(a1)と、を用いて伸長反応を行うことを特徴とするカチオン基含有2官能性エポキシ樹脂の製造方法。
【請求項23】
カチオン基不含2官能性エポキシ樹脂(a4)と、下記一般式(2)
【化14】

〔式(2)中、R、R、R、R、Rは同一でも異なっても良い、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Xは単結合又は炭素数1〜4のアルキレン鎖である。〕
で表される水酸基とカルボキシル基とを有する化合物(x1)と四級オニウム塩含有エポキシ化合物(x2)とを反応させて得られるカチオン基含有2官能性ヒドロキシ化合物(a1)と、を用いて伸長反応を行うことを特徴とするカチオン基含有2官能性エポキシ樹脂の製造方法。
【請求項24】
下記一般式(2)
【化15】

〔式(2)中、R、R、R、R、Rは同一でも異なっても良い、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Xは単結合又は炭素数1〜4のアルキレン鎖である。〕
で表される水酸基とカルボキシル基とを有する化合物(x1)と四級オニウム塩含有エポキシ化合物(x2)とを反応させて得られるカチオン基含有2官能性ヒドロキシ化合物(a1)と、エピハロヒドリン(a2)とを反応させた後、カチオン基不含2官能性ヒドロキシ化合物及び/又はカチオン基不含2官能性カルボキシル基含有化合物(a5)を用いて伸長反応を行うことを特徴とするカチオン基含有2官能性エポキシ樹脂の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−246868(P2007−246868A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−76387(P2006−76387)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】