説明

水性コーティングのウエットエッジおよびオープンタイムを延長するための低VOC添加剤

水分散性ポリマー、水不溶性可塑剤、シクロヘキサンジメタノール、および任意に両親媒性成分を用いる低VOCコーティング添加剤を開示する。添加剤をコーティングに添加して、コーティングの性能特性,例えばウエットエッジタイム、オープンタイム、耐スクラブ性、湿潤接着、および耐水性、の少なくとも1つを改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、概略的には、コーティングにおける低揮発性有機化合物(VOC)添加剤の使用に関する。別の側面において、本発明は、VOC約20質量%未満を有するコーティング添加剤であって、ガラス転移温度(Tg)少なくとも約20℃を有する水分散性ポリマー、および分子量1000g/モル未満を有する水不溶性可塑剤を含むコーティング添加剤であってコーティングの乾燥特性を改善するために操作できる添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術の説明
一般的に、装飾または保護のコーティングを基材に適用する場合には、ある時間が経過した後になお湿潤しているコーティングにおける不規則性を補償できることへの要求が存在する。例えば、このような補償は、先にコートした基材の上への再ブラッシング(コーティングの主領域の上に、またはコーティングの端部の上に、のいずれでも)によって実現できる。加えて、基材に適用した際にコーティングが比較的短いタックフリー時間を示すことが望ましい。長年、溶媒系コーティングは、殆どの考えられる用途において典型的に用いられてきた。溶媒系コーティングにおいては、有機溶媒を用いてコーティング組成物の乾燥特性を改変して上記要求を実現する。例えば、オープンタイム30〜45分を有する有機溶媒系アルキッドは容易に得ることができる。しかし、溶媒系コーティングは、比較的高いVOC量を有する傾向がある。よって、コーティング中のVOCに対する増大した制限のために、多くの製造業は、種々の用途のために水性コーティングを用い始めている。
【0003】
しかし水性コーティングは、増大したタックフリー時間に加え、典型的には、基材に適用した後になお湿潤しているコーティングにおける不規則性を補償するのに適切であるよりも少ないオープンタイムおよびウエットエッジタイムを与える。水性コーティングは、一般的には、分散した高分子量ポリマーを、コーティング中のバインダー物質として用いる。このようなポリマーの使用は、コーティング組成物の乾燥時に短いウエットエッジタイムをもたらす。分散したポリマー粒子は、適用されたコーティングの端部領域において、コーティングが適用された後比較的すぐに融合する傾向があるからである。連続フィルムが形成されるに従ってコーティングの粘度は急速に増大する。これはコーティングの含むポリマーの高分子量に起因し、制限されたウエットエッジタイムおよびオープンタイムを招来する。
【0004】
これらの欠点を軽減するために、添加剤を典型的には水性コーティングと組合せて乾燥特性を改善する。小分子アルキレングリコール,例えばエチレングリコールまたはプロピレングリコールを組入れてより長いウエットエッジタイムまたはオープンタイムを実現することが製造業における一般的な慣行である。しかし、これらの小分子グリコールの添加は、コーティング組成物の全体のVOC量に寄与する。規制が、コーティング中の可能なVOC含有量を制限するため、アルキレングリコールの量はしばしば低減しなければならず、これはウエットエッジタイムおよびオープンタイムの低下をもたらす。従って、コーティングのVOC量に顕著に寄与することなく、そして他のコーティング性能特性で妥協することなく、ウエットエッジタイムおよびオープンタイムを延ばすことができる添加剤に対する要求が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の要約
本発明の一態様において、コーティングの性能を向上させるための添加剤を提供する。添加剤は:(a)ガラス転移温度(Tg)約20℃〜約160℃を有する水分散性ポリマー;(b)分子量約1,000g/モル未満を有する水不溶性可塑剤;および(c)シクロヘキサンジメタノール;を含む。また、該添加剤は、揮発性有機化合物(VOC)量約20質量%未満を有する。
【0006】
本発明の別の態様において、水、バインダーおよび添加剤を含むコーティングを提供する。添加剤は:(a)ガラス転移温度(Tg)約20℃〜約160℃を有する水分散性ポリマー;(b)分子量約1000g/モル未満を有する水不溶性可塑剤;および(c)シクロヘキサンジメタノール;を含む。また、該添加剤はVOC量約20質量%未満を有する。
【0007】
本発明の更なる態様において、水、バインダー、および添加剤を含み、該添加剤がVOC量約20質量%未満を有するコーティングを提供する。また、本発明の他の態様において、コーティングは、以下の特性:ウエットエッジタイム少なくとも約1.5分;オープンタイム少なくとも約1.5分;耐スクラブ性少なくとも約500サイクル;湿潤接着少なくとも約3;および耐水性少なくとも約3;のうち少なくとも1つを有することができる。
【0008】
本発明の更に別の態様において、コーティング添加剤の製造方法を提供する。該方法は:(a)Tg約20〜約160℃を有する水分散性ポリマー、分子量約1000g/モル未満を有する水不溶性可塑剤、およびシクロヘキサンジメタノールを組合せること;ならびに(b)混合物を高温で中和および分散させて水性分散体を得ること;を含む。得られる分散体は、VOC量約20質量%未満を有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
本発明の一態様に従い、低揮発性有機化合物(VOC)量の添加剤を提供し、これは一般的には水分散性ポリマーおよび水不溶性可塑剤を含む。添加剤をコーティング中で用いて、コーティング特性,例えばオープンタイム、ウエットエッジタイム、耐ブロック性、光沢、および耐スクラブ性を、基材への適用時および乾燥時に改善するようにできる。
【0010】
水分散性ポリマーは、水に添加したときに水性分散体を容易に形成する任意のポリマーであることができる。一態様において、水分散性ポリマーは、ガラス転移温度(Tg)少なくとも約20℃を有することができる。
【0011】
本発明の一態様において、添加剤は、添加剤中の固形分の総質量基準で少なくとも約20質量%の水分散性ポリマーを含むことができる。加えて、添加剤は、水分散性ポリマーを、添加剤中の固形分の総質量基準で約30〜約70質量%の範囲、約40〜約60質量%、または45〜55質量%で含むことができる。
【0012】
本発明の一態様において、水分散性ポリマーは、塩基での中和を受けたビニルポリマーであることができる。中和前に、ビニルポリマーは、重合したエチレン性不飽和モノマー(これらの少なくとも1種はカルボン酸末端基および/または無水物末端基を含むことができ、これにより該ビニルポリマーは少なくとも1つのカルボン酸末端基および/または少なくとも1つの無水物末端基を有するモノマー残基を含むことができる)で形成できる。好適なカルボン酸および/または無水物含有モノマーとしては、これらに限定するものではないが、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、およびマレイン酸の無水物が挙げられる。
【0013】
本発明の一態様において、ビニルポリマーは、中和前に、上記の重合したカルボン酸および/または無水物含有モノマーで形成されたコポリマー、ならびに1種以上のエチレン性不飽和モノマーであることができる。このようなエチレン性不飽和モノマーとしては、これらに限定されるものではないが、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソプレン、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、イソ−オクチルアクリレート、イソ−オクチルメタクリレート、トリメチロールプロピルトリアクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルトルエン、クロロメチルスチレン、グリシジルメタクリレート、カルボジイミドメタクリレート、C1−C18アルキルクロトネート、ジ−n−ブチルマレエート、α−またはβ−ビニルナフタレン、ジ−オクチルマレエート、アリルメタクリレート、ジ−アリルマレエート、ジ−アリルマロネート、メチルオキシブテニルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ヒドロキシブテニルメタクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチルメタクリレート、アセトアセトキシエチルアクリレート、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ビニルエチレンカーボネート、エポキシブテン、3,4−ジヒドロキシブテン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メタクリルアミド、アクリルアミド、ブチルアクリルアミド、エチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ブタジエン、ビニルエステルモノマー、ビニル(メタ)アクリレート、イソプロペニル(メタ)アクリレート、脂環式エポキシ(メタ)アクリレート、エチルホルムアミド、4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、2,2−ジメチル−1,4−ビニル−1,3−ジオキソラン、3,4−ジ−アセトキシ−1−ブテン、モノビニルアジペート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、2−t−ブチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N−(2−メタクリロイルオキシ−エチル)エチレンウレア、およびメタクリルアミド−エチルエチレンウレアが挙げられる。更なるモノマーは、The Brandon Associates,2nd edition,1992 Merrimack,N.H.,およびPolymers and Monomers,1996−1997 Catalog(Polyscience,Inc.,Warrington,Pa.より)に記載されている。
【0014】
ビニルポリマーは、鎖重合の分野で公知の任意の方法によって調製できる。このような重合法としては、これらに限定するものではないが、バルク重合、溶液重合またはエマルション重合が挙げられる。一態様において、米国特許第6,262,149号(参照により本明細書に組入れる)に記載される、エマルション重合についての一般的な方法を用いてビニルポリマーを形成できる。
【0015】
一態様において、ビニルポリマーは、中和前に、酸価少なくとも約80mgKOH/g、約100〜約500mgKOH/gの範囲、約150〜約300mgKOH/gの範囲、または180〜250mgKOH/gの範囲を有することができる。更に、ビニルポリマーは、Tg少なくとも約40℃、または約60〜約130℃の範囲、または70〜110℃の範囲を有することができる。
【0016】
市販で入手可能なビニルポリマーの好適例としては、これらに限定するものではないが、JONCRYL 67,JONCRYL 678,JONCRYL ECO 694(全てBASFから入手可能),Neocryl BT−100またはBT−175(DSM Neoresinsから入手可能),MOREZ 101(Rohm and Haasから入手可能),CARBOSET GA−1166,GA−2299,またはGA−2300(Noveonから入手可能),EASTACRYL Emulsion 30D(Eastman Chemical Co.から入手可能),Secryl 35(Omnova Solutionsから入手可能)およびVANCRYL 65または68(Cytec Surface Specialtiesから入手可能)が挙げられる。
【0017】
上記のように、本発明のビニルポリマーを塩基で中和して水分散性ビニルポリマーを形成できる。ビニルポリマーを中和するために本発明において使用できる塩基は2つの分類に分けることができる。第1の分類の塩基は、アルカリ金属塩基またはアルカリ土類金属塩基を含むことができ、これは水性溶液中でビニルポリマー上のカルボン酸および/または無水物の末端基を中和できる。このような塩基の組成物としては、アルカリ金属およびアルカリ土類金属に由来する塩基,例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、および他の塩基金属化合物が挙げられる。本発明において有用なこの第1の分類の塩基による好適な塩基としては、これらに限定するものではないが、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素マグネシウム、アルカリ金属ボレート化合物、およびこれらの水和物、リン酸ナトリウム、重リン酸カリウム、およびピロリン酸ナトリウムが挙げられる。この第1の分類の塩基でのビニルポリマーの中和は、ビニルポリマーの金属塩を形成できる。
【0018】
第2の分類の塩基は、揮発性窒素塩基を含むことができる。このような塩基としては、塩基的反応性化合物(熱の作用を通じて、または環境雰囲気への曝露時に揮発できるもの)が挙げられ、そして窒素化合物を挙げることができる。本発明において有用なこの第2の分類の塩基による好適な塩基としては、これらに限定するものではないが、アンモニア、水酸化アンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、およびモルホリンが挙げられる。この第2の分類の塩基によるビニルポリマーの中和は、例えばビニルポリマーのアンモニウム塩を形成できる。
【0019】
本発明の別の態様において、水分散性ポリマーは、スルホポリマーであることができる。スルホポリマーは、スルホネート部分を有する少なくとも1種のモノマー残基を含む任意のポリマーであることができる。一態様において、スルホポリマーは、スルホポリエステル、スルホポリアミド、またはスルホポリエステルアミドを含むことができる。本発明の別の態様において、スルホポリマーは、1種以上のグリコールモノマー、ジカルボン酸モノマー、ジアミンモノマー、および/またはスルホモノマーの残基を含むことができる。
【0020】
一態様において、スルホポリマーは、1種以上のグリコールモノマー,例えば脂肪族グリコール、脂環式グリコール、および/またはアラルキルグリコールで形成できる。このようなグリコールモノマーの例としては、これらに限定するものではないが、ジエチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、チオジエタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、p−キシリレンジオールが挙げられる。更に、スルホポリマーは、上記グリコールの2種以上から調製されるコポリマーであることができる。
【0021】
スルホポリマーは、1種以上のジカルボン酸モノマー,例えば脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、および/または芳香族ジカルボン酸で形成できる。このようなジカルボン酸モノマーの例としては、これらに限定するものではないが、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸、およびイソフタル酸が挙げられる。
【0022】
スルホポリマーは、1種以上のジアミンモノマーで形成できる。このようなジアミンモノマーの例としては、これらに限定するものではないが、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、4−オキサヘプタン−1,7−ジアミン、4,7−ジオキサデカン−1,10−ジアミン、1,4−シクロヘキサンビスメチルアミン、1,3−シクロヘキサンビスメチルアミン、ヘプタメチレンジアミン、および/またはドデカメチレンジアミンが挙げられる。
【0023】
一態様において、スルホポリマーは、スルホモノマーの残基を含むことができる。スルホモノマーは二官能成分であることができ、ここで金属スルホネート基は芳香族酸核,例えばベンゼン核、ナフタレン核、ジフェニル核、オキシジフェニル核、スルホニルジフェニル核またはメチレンジフェニル核に付いている。このような二官能スルホモノマーの例としては、これらに限定するものではないが、スルホフタル酸、スルホテレフタル酸、スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸のエステル、および/またはメタロスルホアリールスルホネートが挙げられる。更に、二官能スルホモノマーは、ジカルボン酸またはそのエステルであって金属スルホネート基を含有するもの、金属スルホネート基を含有するグリコール、または金属スルホネート基を含有するヒドロキシ酸であることができる。金属スルホネート基の金属イオンは、Na+、K+、Li+等であることができる。加えて、二官能スルホモノマーは、5−ソジオスルホイソフタル酸を含むことができる。
【0024】
スルホポリマーを形成するために使用できる追加のモノマーおよび重合法は、米国特許第3,734,874号、第3,779,993号および第4,335,220号(これらは参照により本明細書に組入れる)に記載されている。
【0025】
本発明の一態様において、スルホポリマーは、数平均分子量少なくとも約5,000を有する直鎖ポリマーであることができる。加えて、スルホポリマーは、Tg少なくとも約25℃を有することができる。更に、スルホポリマーは、Tg約30〜約60℃の範囲、または35〜55℃の範囲を有することができる。
【0026】
市販で入手可能なスルホポリマーの好適例としては、これらに限定するものではないが、EASTMAN AQ−29、AQ−38、AQ−48およびAQ55のポリマー(全てEastman Chemical Companyから入手可能)が挙げられる。
【0027】
本発明において用いる水不溶性可塑剤は、原則としては任意の疎水性化合物(分子量1000g/モル未満を有し、そして水中の制限された溶解性を有するもの)であることができる。可塑剤は、自身をポリマー鎖間に埋め込むことによってポリマーの自由体積を増大させ、従ってポリマーのガラス転移温度を低下させることができる化合物である。本発明において使用される可塑剤は、固体または液体のいずれであることもできる。本発明の一態様において、本発明のために好適な可塑剤は、沸点約250℃超、または300℃超を有することができる。本発明の添加剤は低VOC量を示すからである。本発明の別の態様において、水中での可塑剤の溶解性は20℃で約10質量%未満、または20℃で約5質量%未満である。
【0028】
本発明のために好適な1つの分類の可塑剤は、グリコール、トリオールおよび/またはポリオールのエステルから選択される化合物によって表される。このような可塑剤の例としては、これらに限定するものではないが、トリ(エチレングリコール)ビス(2−エチルヘキサノエート)、トリ(エチレングリコール)ビス(n−オクタノエート)、テトラ(エチレングリコール)ビス(2−エチルヘキサノエート)、テトラ(エチレングリコール)ジヘキサノエート、または他のトリ(エチレングリコール)−、テトラ(エチレングリコール)−、ジ(エチレングリコール)−、およびエチレングリコール−系のC3〜C18アルキルのジエステルまたはモノエステル;ジ(プロピレングリコール)ビス(2−エチルヘキサノエート)、トリ(プロピレングリコール)ビス(2−エチルヘキサノエート)、トリ(プロピレングリコール)ジヘキサノエート、または他のトリ(プロピレングリコール)−、テトラ(プロピレングリコール)−、ジ(プロピレングリコール)−およびプロピレングリコール−系のC3〜C18アルキルのジエステルまたはモノエステル(脂肪酸,例えばラウリン酸、大豆酸、ひまわり油脂肪酸、コーン油脂肪酸、ココナッツ油脂肪酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、テトラデカン酸等を有するエステルが挙げられる);2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート;2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート;グリセロールトリアセテート、グリセロールトリブチレート、グリセロールトリヘキサノエート、グリセロールトリ(2−エチルヘキサノエート)、グリセロールジブチレート、グリセロールジイソブチレート、グリセロールジ(2−エチルヘキサノエート)、トリメチロールプロパントリアセテート等;ジプロピレングリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジベンゾエート、プロピレングリコールジベンゾエート、トリプロピレングリコールジベンゾエート、グリセロールトリベンゾエート、ペンタエリスリトールテトラベンゾエート、および他の、グリコール、トリオール、またはポリオールの芳香族エステル;2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートのベンジルフタレートエステル;ならびに単糖または二糖のエステル,例えばスクロースアセテートイソブチレート(SAIB)が挙げられる。
【0029】
本発明のために好適な可塑剤はまた、単官能芳香族カルボン酸および単官能アルコールのモノエステルであることができる。このようなベンゾエートの例としては、これらに限定するものではないが、2−エチルヘキシルベンゾエート、イソデシルベンゾエート、n−オクチルベンゾエート、他の、C6〜C18脂肪族アルコールのベンゾエート等が挙げられる。
【0030】
本発明のために好適な別の分類の可塑剤は、ジカルボン酸および/またはトリカルボン酸のエステルから選択される化合物で表される。このような可塑剤の例としては、ジイソノニルシクロヘキサン−1,2−ジカルボキシレート、ビス(2−エチルヘキシル)フタレート、ジイソノニルフタレート、ジノニルフタレート、ジイソオクチルフタレートジブチルフタレート、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジウンデシルフタレート、ブチルベンジルフタレートまたは他の、C49アルコールのベンジルフタレートエステル、ジイソデシルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジエチルテレフタレート、ジブチルテレフタレート、ジオクチルテレフタレート、または他のビス(C3〜C18−アルキル)フタレートまたはテレフタレート;トリメチルトリメリエート;トリイソノニルトリメリテート、トリ(2−エチルヘキシル)トリメリエート、トリ(n−オクチル、n−デシル)トリメリエート、トリ−(ヘプチル、ノニル)トリメリエート、n−オクチルトリメリエート等;が挙げられ;脂肪族可塑剤としてはまた、ジトリデシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジイソノニルアジペート、ビス(2−エチルヘキシル)アジペート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、ジブチルマレエート、ジイソブチルマレエート等;ジオクチルアゼレート、トリエチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、トリオクチルシトレート、アセチルトリオクチルシトレート、トリヘキシルシトレート、ブチリルトリヘキシルシトレート等が挙げられる。
【0031】
本発明のために好適な別の分類の可塑剤は、安息香酸と、アルコール、ジオール、トリオールまたはポリオールとのエステルから選択される化合物で表される。本発明において、可塑剤は制限された水溶性のものであることが望ましいため、疎水性部分を有するエステルは特に好ましい。このような可塑剤の例は、2−エチルヘキシルベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジベンゾエート、イソデシルベンゾエート、プロピレングリコールジベンゾエート、トリプロピレングリコールジベンゾエート、グリセロールトリベンゾエート、ペンタエリスリトールテトラベンゾエート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートのベンジルフタレートエステル、C7〜C9直鎖アルコールのベンジルフタレートエステル(Santicizer(登録商標)261)、ならびに他の、安息香酸の脂肪族および芳香族のモノエステル、ジエステル、およびトリエステル等が挙げられる。この分類の可塑剤としてはまた、アルコール、ジオールおよびトリオールの脂肪酸のエステルおよびジエステルのものが挙げられる。例としては、ラウリン酸メチル、大豆酸メチル、ミリスチン酸メチル等;プロピレングリコールのひまわり油脂肪酸とのモノエステルまたはジエステル、プロピレングリコールのコーン油脂肪酸とのエステル、プロピレングリコールのリノール酸とのモノエステルまたはジエステル、プロピレングリコールのパルミチン酸とのモノエステルまたはジエステル、プロピレングリコールのヘキサデセン酸とのモノエステルまたはジエステル、プロピレングリコールのミリスチン酸とのモノエステルまたはジエステル、プロピレングリコールのテトラデカン酸とのモノエステルまたはジエステル、および他の、C3〜C18アルキル酸のモノエステル、ジエステル、およびトリエステルが挙げられる。
【0032】
本発明のために好適な追加の分類の可塑剤は、グリコール、トリオール、および/またはポリオールのエーテルから選択される化合物で表される。本発明においては可塑剤が水不溶性であることが望ましいため、疎水性部分を有するエーテルが特に好ましい。このような可塑剤の例としては、エチレングリコールモノ(2−エチルヘキシルエーテル)、エチレングリコールビス(2−エチルヘキシルエーテル)、プロピレングリコールモノ(2−エチルヘキシルエーテル)、プロピレングリコールビス(2−エチルヘキシルエーテル)、プロピレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールジヘキシルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノ(2−エチルヘキシルエーテル)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールブチルエーテル、グリセロールトリアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノヘキシルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0033】
本発明で使用できる他の可塑剤としては、これらに限定するものではないが、トリブチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、tert−ブチルフェニルジフェニルホスフェート、トリキシリルホスフェート、イソデシルジフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリ(2−ブトキシルエチル)ホスフェート、2−エチルヘキシル2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、更に他のトリアリールホスフェートおよびトリアルキルホスフェート、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化大豆油、エポキシ化トール油、エチル3−エトキシプロピオネート、脂肪族エステル,例えばラウリン酸メチル、大豆酸メチル、ミリスチン酸メチル等、脂肪族アルコール、ロジンアルコール(例えば、Abitol E Hydroabietyl Alcohol ,Eastman Chemical Co.から入手可能);ロジン酸(または水素化ロジン酸)をアルコール,例えばメタノール、グリセロール、ペンタエリスリトール、トリエチレングリコール等と反応させることによって得られるロジンエステルが挙げられる。このようなロジンエステルの例としては、Metalyn 200,Foralyn 5020−F,Abalyn D−E,Foral 85−E,Foralyn 90,Pentalyn H−E,Pentalyn 350−M,Permalyn 5110,Permalyn 6110,Staybelite Ester 3−E(全て、Eastman Chemical Co.から入手可能)が挙げられる。
【0034】
本発明の一態様において、添加剤は、添加剤中の固形分の総質量基準で少なくとも約20質量%の水不溶性可塑剤を含むことができる。加えて、添加剤は、水不溶性可塑剤を、添加剤中の固形分の総質量基準で約30〜約70質量%の範囲、約40〜約60質量%の範囲、または45〜55質量%の範囲で含むことができる。
【0035】
本明細書で用いる水不溶性可塑剤成分は、添加剤中または任意のコーティング組成物中のいずれにおいても、水不溶性可塑剤成分の実際の物理状態に関わらず固形分の総質量に寄与すると考えられる。例えば、可塑剤成分が液体である場合、その不揮発性成分は、添加剤の種々の成分の質量%を定義する目的で「固形分」と考える。
【0036】
別の態様において、添加剤は任意に両親媒性成分を含むことができる。両親媒性成分は、親水性および疎水性の両者の特性を示す任意の成分を含むことができる。本発明の一態様において、添加剤は、添加剤中の固形分の総質量基準で約1〜約60質量%の範囲、約2〜約40質量%の範囲、または3〜30質量%の範囲の両親媒性成分を含むことができる。本明細書で用いるように、両親媒性成分が存在する場合、これは添加剤中または任意のコーティング組成物中のいずれにおいても、両親媒性成分の実際の物理状態に関わらず固形分の総質量に寄与すると考えられる。例えば、両親媒性成分が液体界面活性剤である場合、その不揮発性成分は、添加剤の種々の成分の質量%を定義する目的で「固形分」と考える。
【0037】
本発明の別の態様において、添加剤は、添加剤中の固形分の総質量基準で約40〜約58質量%の範囲の水分散性ポリマー、添加剤中の固形分の総質量基準で約40〜約58質量%の範囲の水不溶性可塑剤、および添加剤中の固形分の総質量基準で約2〜約20質量%の範囲の両親媒性成分を含む。
【0038】
本発明の一態様において、両親媒性成分は界面活性剤であることができる。界面活性剤はイオン性または非イオン性であることができる。加えて、界面活性剤は両性であることができる。一態様において、界面活性剤は、親水性−親油性バランス(HLB)値少なくとも約3を有することができる。加えて、界面活性剤はHLB値約6〜約16の範囲を有することができる。本明細書で与えるHLB値は、Griffin法によって評価される0〜20の評定に基づく。使用できる界面活性剤の例としては、これらに限定するものではないが、アルキル硫酸、アルキルスルホン酸または脂肪酸のアルカリ塩またはアンモニウム塩;オキシエチル化アルキルフェノール;エトキシ化アルキルアミン、およびこれらの混合物が挙げられる。好適な界面活性剤のリストは、論文McCutcheon’s Emulsifiers&Detergents,North American EditionおよびInternational Edition,MC Publishing Co.,Glen Rock,N.J.,1993で得ることができる。好適な市販で入手可能な界面活性剤の例としては、これらに限定するものではないが、エトキシ化タローアルキルアミン(ポリオキシエチレンタローアミン)(Clariant Corp.からGENAMIN T 150Mとして、またはICI AmericasからMILSTAT N−20として入手可能)、およびエトキシ化ココアルキルアミン(ポリオキシエチレンココアミン)(Akzo NobelからETHOMEEN C/25として入手可能)が挙げられる。
【0039】
本発明の別の態様において、両親媒性成分は、両親媒性ポリエステルであることができる。加えて、両親媒性ポリエステルは、液体スルホポリエステルであることができる。液体スルホポリエステルは、金属スルホネート基を有する少なくとも1種のモノマー残基を含む任意のポリエステルであることができる。液体スルホポリエステルは、好ましくは、Tg約20℃未満を有する。一態様において液体スルホポリエステルは、1種以上のグリコールモノマー;ポリオールモノマー;ジカルボン酸含有モノマーもしくは無水物含有モノマー;1種以上の一塩基脂肪酸、一塩基脂肪族エステル、天然油、もしくは部分鹸化油;および/または1種以上のスルホモノマーもしくはスルホモノマー付加物であって少なくとも1つの金属スルホネート基を有するもの、の残基を含むことができる。液体スルホポリエステルの調製は、米国特許出願第2008/0092776号(その全部を参照により本明細書に組入れる)に開示されている。
【0040】
本発明の別の態様において、添加剤は、少なくとも1種のシクロヘキサンジメタノールを更に含む。シクロヘキサンジメタノールは、1,2、1,3、または1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびこれらの混合物のいずれであることもできる。シクロヘキサンジメタノールの量は、添加剤中の固形分の総質量基準で約5〜約70質量%、約15〜約65質量%、または25〜52質量%であることができる。
【0041】
一態様において、添加剤は、添加剤中の固形分の総質量基準で約30〜約65質量%の範囲の水分散性ポリマー、添加剤中の固形分の総質量基準で約5〜約40質量%の水不溶性可塑剤、および添加剤中の固形分の総質量基準で約30〜約65質量%のシクロヘキサンジメタノールを含む。
【0042】
本発明の別の態様において、本発明の添加剤は、少なくとも1種のレオロジー調整剤を更に含んで、添加剤の水性分散を安定化させるのを助けることができる。このようなレオロジー調整剤の例としては、これらに限定するものではないが、Acrysol SCT−275(非イオンウレタン溶液,Rohm and Haasから入手可能)等が挙げられる。添加剤中のレオロジー調整剤の量は、添加剤の総固形分基準で約0.1〜約5質量%、または0.3〜2質量%であることができる。レオロジー調整剤を用いることとは別に、添加剤の水性分散の安定性はまた、添加剤の固形分のパーセントを増大させてより粘稠な分散液を得ることによって改善できる。本発明の一態様において、水性分散液の粘度は、レオロジー調整剤なしで約10,000cP〜約50,000cPであることができる。
【0043】
上記のように、本発明の添加剤は、水分散性ポリマーを含むことができる。水分散性ポリマーは、中和されたビニルポリマーであることができる。一態様において、中和されたビニルポリマーは、ビニルポリマーを塩基および水で容器内にて中和して、中和された混合物を得ることより、調製できる。中和された混合物を保持する容器を、次いで、ある時間回すことができる。一態様において、容器は少なくとも10時間、約12時間〜約48時間の範囲で、回すことができる。別の態様において、中和されたビニルポリマーは、ビニルポリマー、塩基および水を反応器に充填することによって調製できる。成分を続いて当該分野で公知の任意の手段(例えば、これらに限定するものではないが、機械撹拌が挙げられる)で混合できる。混合は、室温または高温で実施できる。
【0044】
一態様において、中和された混合物中のビニルポリマーの量は、混合物の総質量基準で、少なくとも約10質量%、約20〜約50質量%の範囲、または30〜40質量%の範囲であることができる。
【0045】
塩基は、水分散性ポリマーを、少なくとも約40%、少なくとも約60%、または少なくとも約80%にてより低い酸価のポリマーに十分に中和できる任意の量で、中和された混合物中に存在できる。中和された混合物中の固形分の総量は、中和された混合物の総質量基準で少なくとも約5質量%、約5〜約50質量%の範囲、約15〜約40質量%の範囲、または約20〜30質量%の範囲であることができる。
【0046】
上記のように、水分散性ポリマーはスルホポリマーであることができる。一態様において、スルホポリマーは、継続撹拌しながら固体水分散性スルホポリマーを水に添加することによって調製できる。
【0047】
上記のように、添加剤の任意の両親媒性成分は液体スルホポリエステルであることができる。
【0048】
本発明の一態様において、添加剤は、水分散性ポリマー、水不溶性可塑剤、シクロヘキサンジメタノール、および任意に両親媒性成分、ならびに任意の他の望ましい成分をブレンドすることによって調製できる。ブレンドは、当該分野の任意の公知の方法によって任意の順序で達成できる。一態様において、添加剤は、(a)水分散性ポリマー、水不溶性可塑剤、任意に両親媒性成分、および任意の他の望ましい成分を混合するステップ、(b)得られる混合物を温度約150〜200℃に加熱して均一混合物を得るステップ、(c)該均一混合物を約80〜120℃に冷却するステップ、ならびに(d)塩基の水性溶液を該均一混合物に好適速度で添加して均一水性分散液を得るステップ、を含む方法によって調製する。
【0049】
一態様において、ブレンドは、添加剤の総質量基準で少なくとも約10質量%の固形分、約15〜約75質量%の固形分、または20〜50質量%の固形分、を含む添加剤をもたらすことができる。
【0050】
上記のように、添加剤は、低VOC量を有することができる。本発明の一態様において、添加剤は、添加剤の総質量基準でのVOC量約20質量%未満、約15質量%未満、または10質量%未満を有することができる。加えて、添加剤をコーティング中で用いてコーティング組成物を形成する場合、コーティング組成物もまた低VOC量を有することができる。コーティング組成物は、VOC量約150g/l未満、約100g/l未満、または50g/l未満を有することができる。
【0051】
VOC規制の試験方法は地域によって異なる。米国では、VOC量は、Environmental Protection Agency (EPA) Reference Method 24(これはASTM D3960と等価である)に従って評価する。本件におけるVOC量は、EPA Reference Method 24によって評価した。この方法の下で、揮発分の総量をまず評価し、次いで水および除いた溶媒の量を評価し、そして揮発分の総量から減じてVOCの量を評価する。欧州連合においては、VOCは、Decopaint Directive 2004/42/CEにて評価する。これは「VOCは、基準圧101.3kPaで測定される初留点が250℃以下である任意の有機化合物を意味する」と記載する。
【0052】
上記のように、本発明の一態様において、添加物をコーティングと組合せて改質コーティング組成物を形成できる。使用のために好適なコーティングは、製造業において公知の任意の水系コーティングであることができ、これらに限定するものではないが、ラテックスコーティングおよび水性ポリウレタン分散液が挙げられる。本発明の一態様において、コーティング組成物は、水、少なくとも1種のバインダー、少なくとも1種の顔料、および少なくとも1種の添加剤を含むことができる。
【0053】
本発明の一態様において、コーティング組成物は、水を約20〜約90質量%の量で含むことができる。加えて、コーティング組成物は、バインダーおよび添加剤を集合的に約10〜約80質量%の量で含むことができる。
【0054】
バインダーは、顔料を共にそして基材に対して結合させることが製造業において公知である任意のバインダーであることができる。バインダーの例としては、これらに限定するものではないが、ワックス、カゼイン、卵テンペラ、アラビアガム、亜麻仁油、シェラック、澱粉のり、ゼラチン、デキストリン、ポリエステル、アルキッド、エポキシ、アクリル、ポリウレタン、およびラテックスエマルションが挙げられる。一態様において、バインダーの固形分は、コーティング組成物の総質量の少なくとも約5質量%含むことができる。加えて、バインダーの固形分は、コーティング組成物の総質量の約10〜約60質量%の範囲、または20〜40質量%の範囲で含むことができる。
【0055】
顔料は製造業で公知の任意の顔料であることができ、天然、合成、有機、無機の顔料、およびこれらの混合物が挙げられる。好適な市販で入手可能な顔料の例としては、これらに限定するものではないが、FLEXIVERSE水性分散液顔料(Sun Chemicalから入手可能)およびTI−PURE顔料(DuPontから入手可能)が挙げられる。本発明の一態様において、コーティング組成物は、顔料を、コーティング組成物の総質量基準で少なくとも約10質量%の量で含むことができる。加えて、コーティング組成物は、顔料を、コーティング組成物の総質量基準で約15〜約45質量%の範囲、または25〜35質量%の範囲の量で含むことができる。
【0056】
本発明の一態様において、コーティング組成物は、水性コーティングおよび添加剤を含むことができ、ここでコーティング組成物は、該ラテックスポリマーおよび該添加剤における固形分の総質量基準で約70〜約97質量%の範囲のフィルム形成性ラテックスポリマーおよび約3〜30質量%の範囲の添加剤を含む。一態様において、フィルム形成性ラテックスポリマーは、少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーから形成される任意のポリマーであることができる。更に、フィルム形成性ラテックスポリマーは、Tg約−5〜約80℃の範囲を有することができる。
【0057】
本発明の一態様において、コーティングは、融合剤を任意に含むことができる。このような融合剤は、コーティング中に用いられる場合に、均一フィルムを形成するような様式で蒸発する任意の剤であることができる。市販で入手可能な融合剤の例は、TEXANOL(エステル−アルコール,Eastman Chemical Companyから入手可能)である。他の融合剤としては、これらに限定するものではないが、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノ−イソブチレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジ−イソブチレート、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。これらの融合剤は本発明の添加剤とは異なり、これらは揮発性で典型的にはコーティングのオープンタイム特性に対する不利な効果を有する。
【0058】
本発明のコーティング組成物は、追加のコーティング添加剤を更に含むことができる。このようなコーティング添加剤の例としては、これらに限定するものではないが、1種以上のレベリング調整剤、レオロジー調整剤、および流動調整剤,例えばシリコーン、フッ化炭素またはセルロース物質;増量剤;艶消し剤;顔料、湿潤剤および分散剤ならびに界面活性剤;紫外光(UV)吸収剤;ヒンダードアミン光安定剤(HALS);ホスファイト、着色顔料;着色剤;消泡剤および泡止め剤;沈降防止剤、垂れ防止剤、および体質剤;皮張り防止剤;色むら防止剤および色浮き防止剤;殺生物剤、殺菌剤および防カビ剤;防食剤;または増粘剤が挙げられる。このような添加剤の具体例は、Raw Materials Index(National Paint&Coatings Association,1500 Rhode Island Avenue,N.W.,Washington,D.C.20005より公表)に見出すことができる。このような添加剤の更なる例は、米国特許第5,371,148号(参照により本明細書に組入れる)に見出すことができる。
【0059】
艶消し剤の例としては、これらに限定するものではないが、合成シリカ(Davison Chemical Division of W.R.Grace&Companyから商品名SYLOIDで入手可能);ポリプロピレン(Hercules Inc.から商品名HERCOFLATで入手可能);および合成シリケート(J.M.Huber Corporationから商品名ZEOLEXで入手可能)が挙げられる。
【0060】
分散剤および界面活性剤の例としては、これらに限定するものではないが、ナトリウムビス(トリデシル)スルホサクシネート、ナトリウムジ(2−エチルヘキシル)スルホサクシネート、ナトリウムジヘキシルスルホサクシネート、ナトリウムジシクロヘキシルスルホサクシネート、ナトリウムジアミルスルホサクシネート、ナトリウムジイソブチルスルホサクシネート、ジナトリウムイソ−デシルスルホサクシネート、スルホコハク酸のジナトリウムエトキシ化アルコール半エステル、ジナトリウムアルキルアミドポリエトキシスルホサクシネート、テトラナトリウムN−(1,2−ジカルボキシエチル)−N−オクタデシルスルホサクシナメート、ジナトリウムN−オクタスルホサクシナメート、硫酸化エトキシ化ノニルフェノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。
【0061】
粘度制御剤、懸濁制御剤、および流動制御剤の例としては、これらに限定するものではないが、ポリアミノアミドホスフェート、ポリアミンアミドの高分子量カルボン酸塩、および不飽和脂肪酸のアルキレンアミン塩(全てBYK Chemie U.S.A.から商品名ANTI TERRAで入手可能)が挙げられる。更なる例としては、ポリシロキサンコポリマー、ポリアクリレート溶液、セルロースエステル、ヒドロキシエチルセルロース、疎水変性ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアミドワックス、ポリオレフィンワックス、カルボキシメチルセルロース、アンモニウムポリアクリレート、ナトリウムポリアクリレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、グアーガム等が挙げられる。増粘剤の他の例としては、メチレン/エチレンオキサイド会合増粘剤および水溶性カルボキシル化増粘剤,例えばUCAR POLYPHOBE増粘剤(Union Carbideより)が挙げられる。
【0062】
多くの種類のレオロジー調整剤が水系コーティングにおいて用いられる。これらとしては、クレー、アルカリ膨潤性エマルション(ASE)、疎水変性アルカリ膨潤性エマルション(HASE)、疎水変性エトキシ化ウレタンレジン(HEUR)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、および疎水変性ヒドロキシエチルセルロース(HMHEC)が挙げられる。市販のレオロジー調整剤の例としては、ACRYSOLTM RM−2020,ACRYSOLTM RM−5,ACRYSOLTM DR−1,ACRYSOLTM ASE−60ER,ACRYSOLTM TT−935,およびACRYSOLTM SCT−275(Rohm&Haas Companyより入手可能)が挙げられる。
【0063】
幾つかの専売泡止め剤が市販で入手可能であり、例えば、BUBREAK(Buckman Laboratories Inc.のもの),BYK(BYK Chemie,U.S.A.のもの),FOAMASTERおよびNOPCO(Henkel Corp.のもの),DREWPLUS(Ashland Chemical CompanyのDrew Industrial Divisionのもの),TRYSOLおよびTROYKYD(Troy Chemical Corporationのもの),ならびにSAG(Union Carbide Corporationのもの)が挙げられる。
【0064】
殺菌剤、防カビ剤、および殺生物剤の例としては、これらに限定するものではないが、4,4−ジメチルオキサゾリジン、3,4,4−トリメチルオキサゾリジン、改質バリウムメタボレート、カリウムN−ヒドロキシ−メチル−N−メチルジチオカルバメート、2−(チオシアノ−メチルチオ)ベンゾチアゾール、カリウムジメチルジチオカルバメート、アダマンタン、N−(トリクロロメチルチオ)フタルイミド、2,4,5,6−テトラクロロ−イソフタロニトリル、オルトフェニルフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、デヒドロ酢酸、ナフテン酸銅、銅オクトエート、有機ヒ素、トリブチルスズオキサイド、ナフテン酸亜鉛、および銅−8−キノリネートが挙げられる。
【0065】
UV吸収剤の例は、250〜400nmの範囲の光を吸収し、最小吸収が400〜700nmの間である単独化合物または化合物の混合物である。UV吸収剤の例としては、これらに限定するものではないが、トリアジン、シアノアクリレート、ベンゾトリアゾール、ナフタレン、ベンゾフェノン、およびベンズオキサジン−4−オンが挙げられる。市販で入手可能なUV吸収剤としては、これらに限定するものではないが、CYASORB UV−9(Cytec Industries,CAS# 131−57−7),CYASORB UV−24 (Cytec Industries,CAS# 131−53−3),CYASORB UV−531(Cytec Industries,CAS# 1843−05−6),CYASORB UV−2337(Cytec Industries,CAS# 25973−55−1),CYASORB UV−5411(Cytec Industries,CAS# 3147−75−9),CYASORB UV−5365(Cytec Industries,CAS# 2440−22−4),CYASORB UV− 1164(Cytec Industries,CAS# 2725−22−6),CYASORB UV−3638(Cytec Industries,CAS# 18600−59−4),TINUVIN 213(Ciba Specialty Chemicals,−CAS# 104810−47−1),TINUVIN 234(Ciba Specialty Chemicals,CAS# 70321−86−7),TINUVIN 320(Ciba Specialty Chemicals,CAS# 3846−71−7),TINUVIN 326(Ciba Specialty Chemicals,CAS# 3896−11−5),TINUVIN 327(Ciba Specialty Chemicals,CAS# 3864−99−1),TINUVIN 328(Ciba Specialty Chemicals,CAS# 25973−55−1),TINUVIN 329(Ciba Specialty Chemicals,CAS# 3147−75−9),TINUVIN 350(Ciba Specialty Chemicals, CAS# 36437−37−3),TINUVIN 360(Ciba Specialty Chemicals,CAS# 103597−45−1),TINUVIN 571(Ciba Specialty Chemicals,CAS# 23328−53−2)およびTINUVIN 1577(Ciba Specialty Chemicals,CAS# 147315−50−2)が挙げられる。追加の好適なUV吸収剤は、Plastic Additives Handbook 5th Edition,Hanser Gardner Publications,Inc.,Cincinnati,OH,2001に列挙されている。異なる商品名で販売されている同一の分子もまた、本発明によって網羅される。加えて、UV吸収剤の組合せを使用できる。
【0066】
好適であることができるヒンダードアミン光安定剤(HALS)の例としては、これらに限定するものではないが、CYASORB UV−3346(Cytec Industries,CAS# 90751−07−8),CYASORB UV−3529(Cytec Industries,CAS# 193098−40−7),CYASORB UV−3641(Cytec Industries,CAS# 106917−30−0),CYASORB UV−3581(Cytec Industries,CAS# 79720−19−7),CYASORB UV−3853(Cytec Industries,CAS# 167078−06−0),CYASORB UV−3853 S(Cytec Industries,CAS# 24860−22−8),TINUVIN 622(Ciba Specialty Chemicals,CAS# 65447−77−0),TINUVIN 770(Ciba Specialty Chemicals,CAS# 52829−07−9),TINUVIN 144(Ciba Specialty Chemicals,CAS# 63843−89−0),TINUVIN 123(Ciba Specialty Chemicals,CAS# 129757−67−1),CHIMASSORB 944(Ciba Specialty Chemicals,CAS# 71878−19−8),CHIMASSORB 119(Ciba Specialty Chemicals,CAS# 106990−43−6),CHIMASSORB 2020(Ciba Specialty Chemicals,CAS# 192268−64−7),LOWILITE 76(Great Lakes Chemical Corp.,CAS# 41556−26−7),LOWILITE 62(Great Lakes Chemical Corp.,CAS# 65447−77−0),LOWILITE 94(Great Lakes Chemical Corp.,CAS# 71878−19−8),UVASIL 299LM(Great Lakes Chemical Corp.,CAS# 182635−99−0),UVASIL 299HM(Great Lakes Chemical Corp.,CAS# 182635−99−0),Dastib 1082(Vocht a.s.,CAS# 131290−28−3),UVINUL 4049H(BASF Corp.,CAS# 109423−00−9),UVINUL 4050H(BASF Corp.,CAS# 124172−53−8),UVINUL 5050H(BASF Corp.,CAS# 199237−39−3),MARK LA 57(Asahi Denka Co.,Ltd.,CAS# 64022−61−3),MARK LA 52(Asahi Denka Co.,Ltd.,CAS# 91788−83−9),MARK LA 62(Asahi Denka Co.,Ltd.,CAS# 107119−91−5),MARK LA 67(Asahi Denka Co.,Ltd.,CAS# 100631−43−4),MARK LA 63(Asahi Denka Co.,Ltd.Co.,Ltd.Co.,CAS# 115055−30−6),MARK LA 68(Asahi Denka Co.,Ltd.,CAS# 100631−44−5),HOSTAVIN N 20(Clariant Corp.,CAS# 95078−42−5),HOSTAVIN N 24(Clariant Corp.,CAS# 85099−51−1,CAS# 85099−50−9),HOSTAVIN N 30(Clariant Corp.,CAS# 78276−66−1),DIACETAM−5(GTPZAB Gigiena Truda,USSR,CAS# 76505−58−3),UVASORB−HA 88(3V Sigma,CAS# 136504−96−6),GOODRITE UV−3034(BF Goodrich Chemical Co.,CAS# 71029−16−8),GOODRITE UV−3150(BF Goodrich Chemical Co.,CAS# 96204−36−3),GOODRITE UV−3159(BF Goodrich Chemical Co.,CAS# 130277−45−1),SANDUVOR 3050(Clariant Corp.,CAS# 85099−51−0),SANDUVOR PR−31(Clariant Corp.,CAS# 147783−69−5),UV CHECK AM806(Ferro Corp.,CAS#154636−12−1),SUMISORB TM−061(Sumitomo Chemical Company,CAS# 84214−94−8),SUMISORB LS−060(Sumitomo Chemical Company,CAS# 99473−08−2),UVASIL 299 LM(Great Lakes Chemical Corp.,CAS# 164648−93−5),UVASIL 299 HM(Great Lakes Chemical Corp.,CAS# 164648−93−5),およびNYLOSTAB S−EED(Clariant Corp.,CAS# 42774−15−2)が挙げられる。追加のヒンダードアミン光安定剤は、Plastic Additives Handbook 5th Edition,Hanser Gardner Publications,Inc.,Cincinnati,OH,2001に列挙されることができる。
【0067】
ホスファイトの例としては、これらに限定するものではないが、以下のブランド名で販売されている化合物が挙げられる:IRGAFOS TNPP(Ciba Specialty Chemicals,CAS# 26523−78−4),IRGAFOS 168(Ciba Specialty Chemicals,CAS# 31570−04−4),ULTRANOX 626(GE Specialty Chemicals,CAS# 26741−53−7),MARK PEP 36(Asahi Denka Co.,Ltd.,CAS#80693−00−l),MARK HP−10(Asahi Denka Co.,Ltd.,CAS# 140221−14−3),IRGAFOS P−EPQ(Ciba Specialty Chemicals,CAS# 38613−77−3),SANDOSTAB P−EPQ(Clariant Corp.,CAS# 119345−01−6),ETHANOX 398(Albemarle Corp.,CAS# 118337−09−0),WESTON 618(GE Specialty Chemicals,CAS# 3806−34−6),IRGAFOS 12(Ciba Specialty Chemicals,CAS# 80410−33−9),IRGAFOS 38(Ciba Specialty Chemicals,CAS# 145650−60−8),ULTRANOX 641(GE Specialty Chemicals,CAS# 161717−32−4),DOVERPHOS S−9228(Dover Chemical Corp.CAS# 154862−43−8)等。
【0068】
上記のように、添加剤をコーティング中で用いて、基材への適用時および乾燥時のコーティングの特性を改善できる。本発明において使用できる基材は、製造業において公知の任意の基材であってこれに対してコーティングを適用できるものであり、例えば、これらに限定するものではないが、木材、ドライウォール、紙、ポリエステルフィルム(例えばポリエチレンおよびポリプロピレン)、金属(例えばアルミニウムおよびスチール)、ガラス、ウレタンエラストマー、プライマー処理された(塗装された)基材等である。
【0069】
一態様において、コーティング組成物は、基材に対して適用される際に、改善された特性,例えば、これらに限定するものではないが、ウエットエッジタイム、オープンタイム、耐ブロック性、光沢、耐スクラブ性、タックフリー時間、および指触乾燥時間(dry-to-touch time)を有することができる。本明細書で用いる用語「ウエットエッジタイム」は、適用されたコーティングの端部領域が、基材に適用された後で、機能できる状態を維持する時間と定義する。例えば、この時間の間、再ブラシ、または新しくコートされた湿潤基材の端部領域の上の更なるコーティングの適用が、最終乾燥コーティングにおける欠点(例えばラップライン)の原因となることなく可能である。ウエットエッジタイムは、以下の例の試験方法の項において与える記載に従って評価される。本発明の一態様において、コーティング組成物は、ウエットエッジタイム少なくとも約1.5分、少なくとも約3分、または少なくとも5分を有することができる。
【0070】
本明細書で用いる用語「オープンタイム」は、適用されたコーティングの主領域(バルク)が、基材に適用された後で、機能できる状態を維持する時間と定義する。例えば、この時間の間、再ブラシ、または新しくコートされた湿潤基材の主領域の上の更なるコーティングの適用が、最終乾燥コーティングにおける欠点(例えばブラシマーク)の原因となることなく可能である。オープンタイムは、以下の例の試験方法の項において与える記載に従って評価される。本発明の一態様において、コーティング組成物は、オープンタイム少なくとも約2分、少なくとも約5分、または少なくとも8分を有することができる。
【0071】
本明細書で用いる用語「耐ブロック性」は、2つの対向する表面に適用した場合に、接触時に圧力を適用した際(例えば、ドアおよびドア枠をコーティングした場合)に自身が貼り付かないコーティングの能力と定義する。耐ブロック性は、0〜10の評定で測定し、10が最良である(すなわち、コーティングが自身に対する貼り付きの兆候を示さない)。耐ブロック性は、所定時間間隔の後で測定でき、典型的には日単位で測定する。耐ブロック性は、ASTM Method D4946−89に従って評価する。本発明の一態様において、コーティング組成物は、7日耐ブロック性で少なくとも約3、または少なくとも6を有することができる。
【0072】
本明細書で用いる用語「耐スクラブ性」は、基材に対するコーティングの浸食に必要なスクラブサイクルの数と定義する。耐スクラブ性は、ASTM Method D−2486に従って評価する。本発明の一態様において、コーティング組成物は、耐スクラブ性少なくとも約500サイクル、少なくとも約700サイクル、または少なくとも1,000サイクルを有することができる。
【0073】

以下の例は、本発明の製造および使用を当業者に教示するための本発明の例示を意図し、そして本発明の範囲のいかなる限定も意図しない。
【0074】
試験方法
オープンタイムおよびウエットエッジタイムの試験
1インチのポリエステル塗料ブラシ(平坦な先を有するもの)を水で濡らす。重ねたペーパータオル内でこれを転がして過剰の水分を除く。必要になるまで、湿ったタオルの中にブラシを置いておく。3milのBird Barフィルムアプリケータ(ギャップ0.006インチ)(Paul N.Gardner Company,Inc.,316 Northeast First Street,Pompano Beach,Florida,33060)をLENETAの無地黒色チャート,フォーム125 BH(The Leneta Company,15 Whitney Road,Mahwah,New Jersey,07430)の上部の中心に置く。湿潤塗料をアプリケータの中心から細い線でチャートを下って約半分のところまでおく。次いで塗料をチャートにアプリケータで塗布し、そして直ちにストップウォッチを開始させる。ドローダウンの上部で開始し、ドローダウンの中心の隣り合わせの湿潤塗料コーティングを、舌圧子を用いて3回評定する。この方法を、ドローダウンの下部まで2〜3インチ毎に繰返す。予め湿潤させた塗料ブラシに塗料を一杯に、しかし滴らないように付ける。特定した時間間隔で、通常1〜2分毎に、4サイクルについて、塗料を付けた塗料ブラシを用いて、評定する線の1組に亘るように塗料を塗布する。各時間間隔の後、ブラシに再度塗料を付ける。判定前に試験パネルを乾燥させる。オープンタイムの不合格は、第1の時間間隔で乾燥後に中心線が視認できるものと判定する。ウエットエッジ不合格時間は、第1の時間間隔でドローダウンの端部が視認できるものと判定する。右および左の両者のウエットエッジ不合格時間を報告する。
【0075】
VOC試験
揮発性有機化合物(VOC)試験は、EPA Reference Method 24 (ASTM D3960)に従って実施した。試験すべき各物質の小さい(約0.5グラム)サンプルを、予め計量したアルミニウムパン内で測定した。次いでアルミニウムパンを強制換気オーブン内に60分間110℃で置いた。この試験の間に損失された物質のパーセンテージを揮発分と認める。次に、水および除いた溶媒の量をMethod 24にて評価し、揮発分の総量から減じて、サンプル中のVOCの量を決定する。
【0076】
加熱ブロック試験
耐ブロック性を、ASTM Method D 4946−89を用いて評価した。塗料をLENETA不透明チャート,フォームN−2C(The Leneta Company,15 Whitney Road,Mahwah,New Jersey,07430)に、3milバード型フィルムアプリケータ(Paul N.Gardner Company,Inc.,316 North East First Street,Pompano Beach,Florida, 33060)を用いて塗布する。パネルを乾燥させ、そして相対湿度50%で23.8℃にて貯蔵する。特定した時間で、3つの1.5×1.5インチ角を試験パネルから切断する。試験パネルを50℃のオーブン内に入れる。各々の角形の塗装側を、試験パネルの塗装面の上に置く。8♯ゴムストッパを各々の角形の上に置き、次いで1000gの重りをストッパの上部の上に置く。重りとストッパの両者は予め50℃に加熱する。サンプルをそのままに30分間置き、次いで重りおよびストッパを取り除く。サンプルを相対湿度50%および23.8℃で30分間放冷する。次いで角形を分離する。次いで各サンプルを以下に与える基準に従って評定する。
【0077】
【表1】

【0078】
耐スクラブ性試験
耐スクラブ性試験は、ASTM Method D 2486−00,表題 Standard Test Methods for Scrub Resistance of Wall Paints、を用いて行った。
【0079】
粘度試験
塗料の粘度は、STORMER粘度計(ASTM Method D−562−01,Method B)、およびICI円錐平板粘度計(ASTM Method D4287−00)を用いて測定した。両装置は、Paul N.Gardner Company,Inc.,316 North East First Street,Pompano Beach,Florida,33060から入手可能である。
【0080】
湿潤接着試験
パネル作製:Devguard 4308 Alkyd Industrial Gloss Enamel塗料,ミディアムグリーン(ICI DEVOE High Performance Coatings)をスクラブ試験パネル,フォームP 121 −10N(The Leneta Company,15 Whitney Road,Mahwah,New Jersey,07430)に、3milバードバーアプリケータ(Paul N.Gardner Company,Inc.,316 North East First Street,Pompano Beach,Florida,33060)で塗布した。パネルを3〜6週間、相対湿度50%および温度23.8℃で空気硬化させた。硬化させたパネルに、3milバードバーアプリケータを用いて試験塗料を塗布した。試験塗料パネルを相対湿度50%および温度23.8℃で硬化させた。
【0081】
試験:各試験塗料パネルを、Model P−A−T Paint Adhesion Test Kit(Paul N.Gardner Company,Inc.,316 North East First Street, Pompano Beach,Florida,33060)により、ASTM Method D−3359,Method Bに従って、多歯カッターブレードを用いて評定した。評定したパネルを湿度100%で1時間、室温にて状態調整した。パネルを取出して、ペーパータオルで軽くたたいて乾燥させた。直ちに、評定に亘るようにScotch 600テープを適用した。テープをしっかり擦って確実に良好に接着させた。テープを素早くかつ滑らかに角度約180度で引き戻した。
【0082】
湿潤接着を以下のように判定した:
評定 説明
5 0%損失
4 10%損失
3 50%損失
0 100%損失
【0083】
結果は0.1の増分で報告できる。
【0084】
例1−水分散性ポリマーの分散液1の調製
以下の含有成分を1クオート広口瓶内に入れた:
・150.0g JONCRYL 67ビニルポリマー(酸価,213mg KOH/g;Tg73°C;BASF Corporation)
・46.9g 水酸化アンモニウム(28%NH3 水中)、および
・303.1g 脱塩水
【0085】
上記の混合物を、キャビネット内のローラー上に、制御された温度50℃で、均一水性分散液(30%固形分)を得るための時間置いた。
【0086】
例2−塗料配合用のマスターバッチベースの調製
バインダーおよび顔料を含有する塗料ベースのマスターバッチは、以下の含有成分を、コールズ(Cowles)ブレードを有する高速ミキサを用いて、表2で列挙するような添加の順序に従って混合することによって調製した。
【0087】
【表2】

【0088】
例3−対照塗料の調製
2つの対照塗料配合物は、以下の含有成分を、表3で列挙する添加の順序に従って混合することによって調製した。対照1は、何らのオープンタイム添加剤も含有しなかった。一方対照2は、プロピレングリコール(従来のオープンタイム添加剤である)を含有していた。対照2において用いたプロピレングリコールは、配合物の総質量基準で3質量%の量であった。顔料体積濃度(PVC)、顔料のバインダーに対する比(顔料/バインダー)、およびVOC量は、各配合について算出することによって評価した。表4は、2つの対照塗料配合物のコーティング特性を列挙する。
【0089】
【表3】

【0090】
【表4】

【0091】
例4−オープンタイム添加剤を含有する種々の塗料配合物の調製および評価
2つの塗料配合物は、以下の含有成分を、表5に列挙する順序に従って混合することによって調製した。配合物1は、オープンタイム添加剤として例1で調製したJoncryl 67分散液を基にし、一方配合物2は、Eastman TEG−EH可塑剤[トリ(エチレングリコール)ビス(2−エチルヘキサノエート)](Eastman Chemical Companyから入手可能な、市販の可塑剤)を基にした。各配合物中のオープンタイム添加剤は、添加剤の100%物質(すなわち、それぞれJoncryl 67およびTEG−EH)ならびに塗料配合物の総質量の基準で3質量%と算出された。顔料体積濃度(PVC)、顔料のバインダーに対する比(顔料/バインダー)、およびVOC量は、各配合物についての算出によって評価した。
【0092】
【表5】

【0093】
以下の塗料配合物は、上記の配合物1および2を、表6に列挙する種々の比でブレンドすることによって調製した。これは、種々の比のJoncryl 67ビニルポリマーおよびTEG−EH可塑剤(本発明のオープンタイム添加剤として機能する)を有する塗料配合物をもたらした。よって、調製した塗料配合物のコーティング特性を表6に列挙する。
【0094】
【表6】

【0095】
例5−水分散性ポリマーおよび水不溶性可塑剤(水酸化カリウムで中和したもの)を含有する添加剤の水性分散液2の調製
Joncryl 67 ビニルポリマー(水分散性ポリマー)(30g)およびトリ(エチレングリコール)ビス(2−エチルヘキサノエート)(TEG−EH)水不溶性可塑剤(30g)を、500ml三口丸底フラスコ(機械撹拌器、水凝縮器および窒素入口を備える)に入れた。混合物を撹拌し、そして徐々に150〜200℃まで加熱して均一混合物を得た。次いでこれを約120℃に冷却した。次いで、水酸化カリウムの水中溶液(10%,50g)を添加漏斗経由で混合物にゆっくり滴下した。添加速度は、温度を100℃未満に下げた後に増大させた。添加を80〜90℃で継続した。混合物は始めクリーム状になり、次いでより透明になった。水酸化カリウム溶液を添加した後、追加の水(20g)を滴下添加して白色粘稠分散液を得た。
【0096】
例6−水分散性ポリマーおよび水不溶性可塑剤(水酸化アンモニウムで中和したもの)を含有する添加剤の水性分散液3の調製
Joncryl 67 ビニルポリマー(30g)およびトリ(エチレングリコール)ビス(2−エチルヘキサノエート)(TEG−EH)(30g)(水不溶性可塑剤)を、500ml三口丸底フラスコ(機械撹拌器、水凝縮器および窒素入口を備える)に入れた。混合物を撹拌し、そして徐々に150〜200℃まで加熱して均一混合物を得た。次いでこれを約120℃に冷却した。次いで、水酸化アンモニウムの溶液(30%,5g)および水(50g)を添加漏斗経由で混合物にゆっくり滴下した。添加速度は、温度を100℃未満に下げた後に増大させた。添加を80〜90℃で継続した。混合物は始めクリーム状になり、次いでより透明になった。アンモニア溶液を添加した後、追加の水(20g)を滴下添加して白色粘稠分散液を得た。
【0097】
例7−塗料配合物の調製および評価
2つの塗料配合物を、以下の含有成分を、表7で列挙した添加の順序に従って混合することによって調製した。配合物9は、オープンタイム添加剤として例5で調製したJoncryl 67/TEG−EH分散液2を基にし、配合物10は、例6で調製したJoncryl 67/TEG−EH分散液3を基にした。各配合物中のオープンタイム添加剤は、添加剤の100%物質(すなわち、分散液中のJoncryl 67およびTEG−EH)ならびに塗料配合物の総質量の基準で3質量%と算出された。顔料体積濃度(PVC)、顔料のバインダーに対する比(顔料/バインダー)、およびVOC量は、各配合物についての算出によって評価した。塗料配合物のコーティング特性を表8に列挙する。
【0098】
【表7】

【0099】
【表8】

【0100】
例8−水分散性ポリマーおよび水不溶性可塑剤を含有する添加剤の水性分散液4の調製
Joncryl 67ビニルポリマー(60g)、トリ(エチレングリコール)ビス(2−エチルヘキサノエート)(TEG−EH)可塑剤(30g)、およびAbitol E Hydroabietyl Alcohol(可塑剤)(Eastman Chemical Co.)(30g)を、1リットルの三口丸底フラスコ(機械撹拌器、水凝縮器および窒素入口を備える)に入れた。混合物を撹拌し、そして徐々に150〜200℃まで加熱して均一混合物を得た。次いでこれを約120℃に冷却した。次いで、水酸化アンモニウムの溶液(30%,10g)および水(100g)を添加漏斗経由で混合物にゆっくり滴下した。添加速度は、温度を100℃未満に下げた後に増大させた。添加を80〜90℃で継続した。混合物は始めクリーム状になり、次いでより透明になった。アンモニア溶液を添加した後、追加の水(40g)を滴下添加して白色粘稠分散液を得た。
【0101】
例9−水分散性ポリマーおよび水不溶性可塑剤を含有する添加剤の水性分散液5の調製
Joncryl 67 ビニルポリマー(60g)およびAbitol E Hydroabietyl Alcohol(可塑剤)(Eastman Chemical Co.)(60g)を、1リットルの三口丸底フラスコ(機械撹拌器、水凝縮器および窒素入口を備える)に入れた。混合物を撹拌し、そして徐々に150〜200℃まで加熱して均一混合物を得た。次いでこれを約120℃に冷却した。次いで、水酸化アンモニウムの溶液(30%,10g)および水(100g)を添加漏斗経由で混合物にゆっくり滴下した。添加速度は、温度を100℃未満に下げた後に増大させた。添加を80〜90℃で継続した。混合物は始めクリーム状になり、次いでより透明になった。アンモニア溶液を添加した後、追加の水(40g)を滴下添加して白色分散液を得た。
【0102】
例10−水分散性ポリマーおよび水不溶性可塑剤を含有する添加剤の水性分散液6の調製
Joncryl 67 ビニルポリマー(60g)、トリエチルシトレート(可塑剤)(30g)、およびAbitol E Hydroabietyl Alcohol(可塑剤)(Eastman Chemical Co.)(60g)を、1リットルの三口丸底フラスコ(機械撹拌器、水凝縮器および窒素入口を備える)に入れた。混合物を撹拌し、そして徐々に150〜200℃まで加熱して均一混合物を得た。次いでこれを約120℃に冷却した。次いで、水酸化アンモニウムの溶液(30%,10g)および水(100g)を添加漏斗経由で混合物にゆっくり滴下した。添加速度は、温度を100℃未満に下げた後に増大させた。添加を80〜90℃で継続した。混合物は始めクリーム状になり、次いでより透明になった。アンモニア溶液を添加した後、追加の水(60g)を滴下添加して白色分散液を得た。
【0103】
例11−水分散性ポリマーおよび水不溶性可塑剤を含有する添加剤の水性分散液7の調製
Joncryl 67 ビニルポリマー(60g)、トリ(エチレングリコール)ビス(2−エチルヘキサノエート)可塑剤(TEG−EH)(34g)、およびEastman SAIB(Eastman Chemical Co.)(スクロースアセテートイソブチレート、26g)(可塑剤)を、1リットルの三口丸底フラスコ(機械撹拌器、水凝縮器および窒素入口を備える)に入れた。混合物を撹拌し、そして徐々に150〜200℃まで加熱して均一混合物を得た。次いでこれを約120℃に冷却した。次いで、水酸化アンモニウムの溶液(30%,10g)および水(100g)を添加漏斗経由で混合物にゆっくり滴下した。添加速度は、温度を100℃未満に下げた後に増大させた。添加を80〜90℃で継続した。混合物は始めクリーム状になり、次いでより透明になった。アンモニア溶液を添加した後、追加の水(40g)を滴下添加して白色粘稠分散液を得た。
【0104】
例12−塗料配合物の調製および評価
4つの実験塗料配合物は、以下の含有成分を、表9に列挙する添加の順序に従って混合することによって調製した。配合物11は、オープンタイム添加剤として例8で調製したJoncryl 67/TEG−EH/Abitol E分散液4を基にした。配合物12は、オープンタイム添加剤として例9において調製したJoncryl 67/Abitol E分散液5を基にした。配合物13は、オープンタイム添加剤として例10において調製したJoncryl 67/トリエチルシトレート/Abitol E分散液6を基にした。配合物14は、オープンタイム添加剤として例11で調製したJoncryl 67/TEG−EH/スクロースアセテートイソブチレート分散液7を基にした。各配合物中のオープンタイム添加剤は、添加剤の100%物質(すなわち、分散液中の、Joncryl 67、TEG−EH、Abitol E、トリエチルシトレート、およびスクロースアセテートイソブチレートの質量)ならびに塗料配合物の総質量の基準で3質量%と算出された。プロピレングリコールを3%で有する追加の対照配合物(配合物15)を対照として準備した。関係するコーティング性能データを表10に列挙する。
【0105】
【表9】

【0106】
【表10】

【0107】
例13−Joncryl−67/TEG−EH/CHDM(47/10/43質量%)の水性分散液8の調製
Joncryl 67ビニルポリマー(211.5g)、トリ(エチレングリコール)ビス(2−エチルヘキサノエート)(TEG−EH)可塑剤(45.0g)、および1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)(193.5g)を、1リットルの三口丸底フラスコ(機械撹拌器、水凝縮器および窒素入口を備える)に入れた。混合物を撹拌し、そして徐々に80〜90℃まで加熱して均一混合物を得た。次いで、水酸化アンモニウムの溶液(30%,58.5g)および水(135g)を添加漏斗経由で混合物にゆっくり滴下した。均一な分散液が得られるまで添加を80〜90℃で継続した。次いで、Acrysol SCT−275、レオロジー調整剤(9.0g)を添加して粘稠分散液を得た。固形分%=70;pH=8.5;ブルックフィールド粘度=7600cP。
【0108】
例14−Joncryl−67/TEG−EH/CHDM(30/25/45質量%)の水性分散液9の調製
Joncryl 67ビニルポリマー(135.0g)、トリ(エチレングリコール)ビス(2−エチルヘキサノエート)(TEG−EH)可塑剤(112.5g)、および1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)(202.5g)を、1リットルの三口丸底フラスコ(機械撹拌器、水凝縮器および窒素入口を備える)に入れた。混合物を撹拌し、そして徐々に130〜150℃まで加熱して均一混合物を得た。次いでこれを約90℃まで冷却した。次いで水酸化アンモニウムの溶液(30%,37.3g)および水(155.6g)を添加漏斗経由で混合物にゆっくり滴下した。均一な分散液が得られるまで添加を80〜90℃で継続した。次いで、Acrysol SCT−275、レオロジー調整剤(9.0g)を添加して粘稠分散液を得た。固形分%=70;pH=8.9;ブルックフィールド粘度=2400cP。
【0109】
例15−Joncryl−67/TEG−EH/CHDM(32/11/57質量%)の水性分散液10の調製
Joncryl 67ビニルポリマー(144.0g)、トリ(エチレングリコール)ビス(2−エチルヘキサノエート)(TEG−EH)可塑剤(49.5g)、および1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)(256.5g)を、1リットルの三口丸底フラスコ(機械撹拌器、水凝縮器および窒素入口を備える)に入れた。混合物を撹拌し、そして徐々に130〜150℃まで加熱して均一混合物を得た。次いでこれを約90℃まで冷却した。次いで水酸化アンモニウムの溶液(30%,39.8g)および水(126.7g)を添加漏斗経由で混合物にゆっくり滴下した。均一な分散液が得られるまで添加を80〜90℃で継続した。次いで、Acrysol SCT−275、レオロジー調整剤(9.0g)を添加して粘稠分散液を得た。固形分%=74;pH=8.8;ブルックフィールド粘度=1760cP。
【0110】
例16−塗料配合物の調製および性能
3つの塗料配合物は、以下の含有成分を、表11に列挙する添加の順序に従って混合することによって調製した。配合物16は、例13による分散液8を用いて調製した。配合物17は、例14による分散液9を用いて調製した。配合物18は、例15による分散液10を用いて調製した。各配合物中のオープンタイム添加剤は、添加剤の100%物質(すなわち、分散液中のJoncryl 67、TEG−EHおよびCHDMの質量)ならびに塗料配合物の総質量の基準で3質量%と算出された。プロピレングリコールを3%で有する追加の対照配合物(配合物19)を対照として準備する。関係するコーティング性能データを表12に列挙する。
【0111】
【表11】

【0112】
【表12】

【0113】
説明
本明細書で用いる用語"a," "an," "the," および"said"は、1以上を意味する。
【0114】
本明細書で用いる用語「および/または」は、2つ以上の事項の列挙において用いる場合、列挙した事項の任意の1つを単独で使用できるか、または列挙した事項の2つ以上の任意の組合せを使用できることを意味する。例えば、組成物が成分A、Bおよび/またはCを含有すると記載される場合、該組成物は、A単独;B単独;C単独;AおよびBを組合せで;AおよびCを組合せで;BおよびCを組合せで;またはA、BおよびCを組合せで;含有できる。
【0115】
本明細書で用いる用語「両親媒性」は、親水性および疎水性の両者の特性を有する物質を意味する。
【0116】
本明細書で用いる用語「含む("comprising," "comprises,"および"comprise")」は、該用語の前に記載した主題から該用語の後に記載された1以上の要素に移行するために用いるオープンエンドの移行語であり、該移行語の後に記載される1つまたは複数の要素は、必ずしも該主題を構成する要素のみではない。
【0117】
本明細書で用いる用語「含有する("containing," "contains,"および"contain")」は、「含む("comprising," "comprises,"および"comprise.")」と同じオープンエンドの意味を有する。
【0118】
本明細書で用いる用語「ガラス転移温度」または「Tg」は、それよりも下ではポリマーが剛直で脆くなり、そして圧力下で割れおよび砕ける可能性がある温度を意味する。
【0119】
本明細書で用いる用語「有する("having," "has,"および"have")」は、「含む("comprising," "comprises,"および"comprise")」と同じオープンエンドの意味を有する。
【0120】
本明細書で用いる用語「包含する("including," "includes,"および"include")」は、「含む("comprising," "comprises,"および"comprise")」と同じオープンエンドの意味を有する。
【0121】
本明細書で用いる用語「ポリオール」は、少なくとも2つのヒドロキシル官能基を有する化学化合物を意味する。
【0122】
本明細書で用いる用語「塩」は、陽イオンおよび陰イオンを含む化合物であって全体で中性電荷を保持する化合物を意味する。
【0123】
本明細書で用いる用語「水」は、脱イオン水、水道水、およびこれらの任意の混合物を意味する。
【0124】
本明細書で用いる用語「水分散性」は、極性物質(例えば水)を含む液体中で物質を分散可能にするような該物質の特性を意味する。
【0125】
上記した本発明の好ましい形態は例示としてのみ用いるべきであり、本発明の範囲を解釈するために限定的な意味に用いるべきではない。上記した例示の態様への自明な改変は、本発明の精神から逸脱することなく当業者によって容易になすことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)Tg約20℃〜約160℃を有する水分散性ポリマー、
b)分子量約1,000g/モル未満を有する水不溶性可塑剤、および
c)シクロヘキサンジメタノール、
を含む水性組成物のオープンタイムを延長するための添加剤組成物であって、
該添加剤が、該添加剤の総質量基準でのVOC量約20質量%未満を有する、添加剤組成物。
【請求項2】
該添加剤が、該添加剤の総質量基準で約20〜約80質量%の該水分散性ポリマーを含む、請求項1に記載の添加剤。
【請求項3】
該添加剤が、該添加剤中の固形分の総質量基準で約20〜約80質量%の該水不溶性可塑剤を含む、請求項1に記載の添加剤。
【請求項4】
該添加剤が、該添加剤中の固形分の総質量基準で約5〜約70質量%のシクロヘキサンジメタノールを含む、請求項1に記載の添加剤。
【請求項5】
該添加剤が、両親媒性成分を更に含む、請求項1に記載の添加剤。
【請求項6】
該添加剤が、該添加剤の固形分の総質量基準で約2〜約40質量%の該両親媒性成分を含む、請求項5に記載の添加剤。
【請求項7】
該添加剤が、該添加剤の固形分の総質量基準で約30〜約60質量%の該水分散性ポリマー、該添加剤の固形分の総質量基準で約5〜約40質量%の該水不溶性可塑剤、および該添加剤の固形分の総質量基準で約30〜約65質量%の該シクロヘキサンジメタノールを含む、請求項1に記載の添加剤。
【請求項8】
該水分散性ポリマーが、中和されたビニルポリマー、および/またはスルホポリマーを含む、請求項1に記載の添加剤。
【請求項9】
該中和されたビニルポリマーが、カルボン酸末端基および/または無水物末端基を有する少なくとも1種のモノマーの残基を含む、請求項8に記載の添加剤。
【請求項10】
該中和されたビニルポリマーが、スチレン、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレートおよび/または2−エチルヘキシルアクリレートの残基を更に含む、請求項9に記載の添加剤。
【請求項11】
該スルホポリマーが、少なくとも1つの金属スルホネート部分を有するスルホモノマーの残基を含む、請求項8に記載の添加剤。
【請求項12】
該スルホモノマーが、5−ソジオスルホイソフタル酸である、請求項11に記載の添加剤。
【請求項13】
該スルホポリマーが、スルホポリエステル、スルホポリアミド、および/またはスルホポリエステルアミドを含む、請求項8に記載の添加剤。
【請求項14】
該水不溶性可塑剤が、グリコール、トリオールおよび/またはポリオールのエステル;単官能芳香族カルボン酸および単官能アルコールのエステル;ジカルボン酸および/またはトリカルボン酸のエステル;からなる群から選択されるエステルである、請求項1に記載の添加剤。
【請求項15】
該水不溶性可塑剤が、グリコール、トリオールおよび/またはポリオールのエーテルである、請求項1に記載の添加剤。
【請求項16】
該両親媒性成分が、界面活性剤および/または両親媒性ポリエステルを含む、請求項5に記載の添加剤。
【請求項17】
水、バインダー、請求項1に記載の添加剤、および任意に両親媒性成分を含む、コーティング。
【請求項18】
水、バインダー、および請求項1に記載の添加剤を含むコーティングであって、該添加剤が、約20質量%未満のVOC量を有し、そして該コーティングがウエットエッジタイム少なくとも約1.5分、耐スクラブ性少なくとも約500サイクル、湿潤接着少なくとも約3、および耐水性少なくとも約3を有する、コーティング。
【請求項19】
コーティング添加剤を製造する方法であって:
a)Tg約20〜約160℃を有する水分散性ポリマーを中和すること;および
b)該中和された水分散性ポリマーを水不溶性可塑剤、シクロヘキサンジメタノール、任意に両親媒性成分、および任意の他の望ましい成分と組合せ、得られる組合せ混合物がVOC量約20質量%未満を有すること;
を含む、方法。
【請求項20】
コーティング添加剤を製造する方法であって:
a)水分散性ポリマー、水不溶性可塑剤、シクロヘキサンジメタノール、任意に両親媒性成分、および任意の他の望ましい成分を混合すること;
b)得られる混合物を温度約150〜200℃に加熱して均一混合物を得ること;
c)該均一混合物を約80〜120℃に冷却し、そして塩基の水性溶液を該均一混合物に好適速度で添加して均一水性分散液を得ること;
を含む、方法。

【公表番号】特表2012−502138(P2012−502138A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526050(P2011−526050)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/004996
【国際公開番号】WO2010/027487
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】