説明

水晶発振器

【課題】水晶発振器の出力振幅の調整機能を簡易な構成で実現する。
【解決手段】水晶発振器は、電源に接続される電源端子(VCC)と、接地電位に維持される接地端子(GND)と、電源端子と接地端子とに接続され、電源端子と接地端子との間に印加された電源電圧に基づく振幅レベルの発振信号(V0)を出力する水晶発振回路(6)と、イネーブル信号(VEN1、VEN2)が入力されるイネーブル端子(EN1、EN2)と、イネーブル端子と接地端子とに接続され、水晶発振回路から入力される発振信号を波形整形してイネーブル端子と接地端子との間のイネーブル信号の電圧に応じた振幅レベルの基準クロック信号(CLK1、CLK2)を出力するバッファ回路(2a、2b)と、バッファ回路から出力される基準クロック信号が出力される出力端子(OUT1、OUT2)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の携帯機器には、当該携帯機器の基準クロック信号源として水晶振動子を発振させるための水晶発振器が設けられている。近年、携帯機器に対する更なる低消費電力化の要求が強まってきており、携帯機器の仕様に応じて、水晶発振器の振幅を任意に調整可能とする技術が考えられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、振幅を任意に調整できる水晶発振器の技術が開示されている。図8は、特許文献1の図1に示された水晶発振器に対応した図である。
【0004】
図8に示す水晶発振器において、水晶振動子60の振動により発生した発振(oscillation)信号(交流信号)(IN)は、P型トランジスタM7とN型トランジスタM8とから成るバッファ回路104に入力されて、その波形整形が行われる。バッファ回路104から出力されるインバータ出力信号は、コンデンサCB1、CB2によってその直流成分がカットされた後、出力増幅回路105を構成するN型トランジスタM9及びP型トランジスタM10のそれぞれの制御端子Gに印加される。この結果、出力増幅回路105は、出力端子(OUT端子)から負荷(図示せず)に向けて発振信号を供給する。
【0005】
また、図8に示す水晶発振器は、出力増幅回路105を構成するN型トランジスタM9の制御端子G電圧を変化させて振幅を調整するための回路として、安定化電源106とN型トランジスタM11の制御端子Gとの間のラインと接地端子との間に、抵抗R1と、分圧抵抗RD1〜RD3とが直列に接続されて設けられている。さらに、分圧抵抗RD1と分圧抵抗RD2との接続点と接地端子との間にMOSスイッチ回路MSW1が設けられ、分圧抵抗RD2と分圧抵抗RD3との接続点と接地端子との間にMOSスイッチ回路MSW2が設けられ、分圧抵抗RD3と接地端子との間にMOSスイッチ回路MSW3が設けられている。これらのMOSスイッチ回路MSW1〜MSW3のいずれか一つが選択されてオンすることで、N型トランジスタM9の制御端子Gの電圧VG(M9)を3段階に調整することができる。なお、出力増幅回路105の出力電圧Voutは、N型トランジスタM9の制御端子Gの電圧VG(M9)と制御端子Gと主端子Sとの間の電圧VGS(M9)との差(=VG(M9)―VGS(M9))で表される。よって、N型トランジスタM9の制御端子Gの電圧VG(M9)の調整に伴って、出力電圧Voutの振幅が調整される。
【0006】
さらに、MOSスイッチ回路MSW1〜MSW3のいずれかをオンするためのデータがメモリ回路111に格納されている。メモリ回路111内のデータをデコーダ12によってデコードすることで、オン対象とするMOSスイッチ回路MSW1〜MSW3が決定される。例えば、MOSスイッチ回路MSW1のみをオンするためのデータがメモリ回路111に格納されている場合、当該データに基づいてMOSスイッチ回路MSW1がオンすることにより、N型トランジスタM9の制御端子Gの電圧は、基準電圧Vregを抵抗R1と分圧抵抗RD1との分圧比に基づいて分圧した電圧(=Vreg・R1/(R1+R2))となる。
【0007】
このように、メモリ回路111に格納されたデータに基づいてデコーダ12によりデコードしたアナログ信号に従って、MOSスイッチ回路MSW1〜MSW3のいずれかをオンすることによって、発振信号の振幅を任意に調整可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−311379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、携帯機器の製造業者側で当該携帯機器に水晶発振器が搭載される際に、特許文献1のように、水晶発振器の振幅を調整するためのデータが予め格納されているメモリ(PROM等)から当該データを読み出して、当該データに基づいて当該水晶発振器の振幅を調整する工程が必要であった。しかし、上記メモリを用いた調整工程は、携帯機器の製造工程にとって煩雑であった。また、上記メモリの存在自体が携帯機器の小型化を図る上で障害となっていた。
【0010】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的は、出力の振幅の調整機能を簡易な構成で実現してなる水晶発振器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、以下の点に気が付いた。すなわち、水晶発振器が搭載される携帯機器では、その小型化と併行して音声通話、メール、GPS(Global positioning system)、無線LAN(Local Area Network)等の多機能化が進んでおり、様々な用途に応じた基準クロック信号が用いられるようになっている。このため、複数の水晶発振器を搭載する携帯機器が増えていく中、実装面積、部品点数、及びトータルコスト削減のために、1個の水晶発振器から様々な用途に応じた基準クロック信号を出力する多系統出力型(デュアル出力型、トリプル出力型等)の水晶発振器が求められている。
【0012】
多系統出力型の水晶発振器では、GPSや無線LAN等の一時的に利用される機能に応じた基準クロック信号については継続的に出力する必要がないため、当該基準クロック信号の出力を利用時期に応じて停止するためのイネーブル機能(イネーブル端子)が設けられている。
【0013】
本発明者等は、このイネーブル端子に着目した。そして、このイネーブル機能を利用し、当該イネーブル端子に印加されるイネーブル信号の電圧を変化させて水晶発振器の振幅を調整するよう構成することによって、水晶発振器の振幅を調整するためのデータが予め格納されているメモリ(PROM等)を設けずに、上記の振幅の調整機能を簡易な構成で実現することを想到した。
【0014】
そこで、本発明に係る水晶発振器は、電源に接続される電源端子と、接地電位に維持される接地端子と、前記電源端子と前記接地端子とに接続され、前記電源端子と前記接地端子との間に印加された電源電圧に基づく振幅の第1の発振信号を出力する水晶発振回路と、イネーブル信号が入力されるイネーブル端子と、前記イネーブル端子と前記接地端子とに接続され、前記水晶発振回路から入力される前記第1の発振信号を波形整形して前記イネーブル端子と前記接地端子との間の前記イネーブル信号の電圧に応じた振幅の第2の発振信号を出力するバッファ回路と、前記バッファ回路から出力される前記第2の発振信号が出力される出力端子と、を備えるものである。
【0015】
この構成によれば、水晶発振器の出力(第2の発振信号)の振幅を調整するためのデータが予め格納させたメモリ(PROM等)を設けることなく、イネーブル端子に入力されるイネーブル信号の電圧に基づき当該出力の振幅を調整できる。さらに、イネーブル端子の電圧を接地端子において維持されている接地電位に近づけることによって、水晶発振器の出力をオンからオフに切り替えることもできる。すなわち、イネーブル機能を利用することによって、イネーブル端子に入力されるイネーブル信号の電圧を変化させるという簡易な構成で、水晶発振器の出力の振幅の調整機能を実現できる。
【0016】
上記の水晶発振器において、前記バッファ回路は、P型トランジスタとN型トランジスタとを含むインバータ回路により構成され、前記P型トランジスタの制御端子と前記N型トランジスタの制御端子とが共に前記水晶発振回路の出力端と接続され、前記P型トランジスタの一方の主端子が前記イネーブル端子と接続され、前記P型トランジスタの他方の主端子が前記N型トランジスタの一方の主端子と接続され、その接続点から前記第2の発振信号が取り出され、かつ前記N型トランジスタの他方の主端子が前記接地端子に接続されている、としてもよい。
【0017】
この構成によれば、CMOS出力型の水晶発振器において、イネーブル信号に入力されるイネーブル信号の電圧を変化させるという簡易な構成で、水晶発振器の出力の振幅の調整機能とイネーブル機能とを実現できる。
【0018】
上記の水晶発振器において、前記バッファ回路は、第1のN型トランジスタと、第2のN型トランジスタと、インバータ回路と、を含むソースフォロワ回路又はエミッタフォロワ回路により構成され、前記第1のN型トランジスタの制御端子が前記インバータ回路を介して前記水晶発振回路の出力端と接続され、前記第2のN型トランジスタの制御端子が前記水晶発振回路の出力端と接続され、前記第1のN型トランジスタの一方の主端子が前記電源端子と接続され、前記第1のN型トランジスタの他方の主端子が前記第2のN型トランジスタの一方の主端子と接続され、その接続点から前記第2の発振信号が取り出され、 かつ前記第2のN型トランジスタの他方の主端子が前記接地端子に接続されており、前記インバータ回路は、P型トランジスタとN型トランジスタとを含むインバータ回路により構成され、前記P型トランジスタの制御端子と前記N型トランジスタの制御端子とが共に前記水晶発振回路の出力端と接続され、前記P型トランジスタの一方の主端子が前記イネーブル端子と接続され、前記P型トランジスタの他方の主端子が前記N型トランジスタの一方の主端子と接続され、その接続点が前記第1のN型トランジスタの制御端子と接続され、かつ前記N型トランジスタの他方の主端子が前記接地端子に接続されている、としてもよい。
【0019】
この構成によれば、クリップドサイン出力型の水晶発振器において、イネーブル信号に入力されるイネーブル信号の電圧を変化させるという簡易な構成で、水晶発振器の出力の振幅の調整機能とイネーブル機能とを実現できる。
【0020】
上記の水晶発振器において、前記バッファ回路と前記イネーブル端子又は前記接地端子との間前記イネーブル信号に基づいてオンオフするスイッチ回路が設けられている、としてもよい。
【0021】
この構成によれば、イネーブル機能を確実に遂行することができる。
【0022】
上記の水晶発振器において、前記水晶発振回路と前記バッファ回路との間に、前記第1の発振信号の電位レベルを調整するレベルシフタが設けられている、としてもよい。
【0023】
この構成によれば、水晶発振器の出力の電位レベルを調整することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、水晶発振器において、出力振幅の調整機能を簡易な構成で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は本発明の第1の実施の形態に係る水晶発振器の全体構成を示すブロック図である。
【図2】図2は本発明の第1の実施の形態に係る水晶発振器の出力駆動回路の構成を示す回路図である。
【図3】図3は本発明の第1の実施の形態に係る水晶発振器の出力駆動回路の変形例の構成を示す回路図である。
【図4】図4は本発明の第2の実施の形態に係る水晶発振器の出力駆動回路の構成を示す回路図である。
【図5】図5は本発明の第2の実施の形態に係る水晶発振器の出力駆動回路の変形例の構成を示す回路図である。
【図6】図6は本発明の第1の実施の形態に係る水晶発振器から出力される基準クロック信号CLKの波形図である。
【図7】図7は本発明の第2の実施の形態に係る水晶発振器から出力されるクリップドサイン信号CSINの波形図である。
【図8】図8は従来の水晶発振器の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
(第1の実施の形態)
[水晶発振器の全体構成]
図1は本発明の第1の実施の形態に係る水晶発振器の全体構成を示すブロック図である。なお、本発明の第1の実施の形態では、負荷の論理回路を直接駆動できるよう、図6に示すような矩形波の基準クロック信号CLKを出力するCMOS出力型かつ多系統出力型の水晶発振器の場合を例に挙げて説明する
図1に示す水晶発振器20は、水晶振動子60に固有の周波数温度特性を補正する温度補償機能を備えた、TCXO(Temperature Compensated Crystal Oscillator;温度補償型水晶発振器)、VCTCXO(Voltage Compensated Temperature Compensated Crystal Oscillator;電圧制御温度補償型水晶発振器)、若しくはTCVCXO(Temperature Compensated Voltage Compensated Crystal Oscillator;温度補償型電圧制御水晶発振器)等である。
【0027】
水晶発振器20は、本実施の形態ではトリプル出力型であり、電源端子VCC、接地端子GND、出力端子OUT3、出力端子OUT1、出力端子OUT2、イネーブル端子EN1、イネーブル端子EN2、を少なくとも備えている。
【0028】
電源端子VCCは水晶発振器20の内部回路に供給される電源電圧VCCが印加され、接地端子GNDは接地電位に維持される。
【0029】
出力端子OUT1、OUT2は、それぞれ一時的に利用される機能に用いられる基準クロック信号CLK1、CLK2を出力するための端子である。出力端子OUT3は、常時又は高頻度に利用される機能に用いられる基準クロック信号CLK3を出力するための端子である。なお、水晶発振器20は、トリプル出力型に限定されず、デュアル出力型であってもよい。
【0030】
イネーブル端子EN1、EN2は、スイッチ回路4a、4bのオンオフを切り替えるとともに、バッファ回路2a、2bから出力される基準クロック信号CLK1、CLK2の振幅を調整するためのイネーブル信号VEN1、VEN2が印加される。つまり、イネーブル信号VEN1、VEN2は、スイッチ回路4a、4bに供給されるとともに、バッファ回路2a、2b及びレベルシフタ8a、8bにも供給される。
【0031】
水晶発振器20は、水晶発振回路6と、出力駆動回路10とを少なくとも備えている。出力駆動回路10は、基準クロック信号CLK3用のバッファ回路2cと、基準クロック信号CLK1用のバッファ回路2a、スイッチ回路4a、及びレベルシフタ8aと、基準クロック信号CLK2用のバッファ回路2b、スイッチ回路4b、及びレベルシフタ8bとを備える。
【0032】
水晶発振回路6は、不図示の水晶振動子60と接続されており、水晶振動子60を所定の発振条件で発振させて生成される発振信号V0を出力する。なお、発振信号V0は、その振幅ピーク部がクリップされることなく、電源電圧VCCの電位と接地端子GNDの電位との間でフルスイングするものとする。
【0033】
バッファ回路2aは、水晶発振回路6から出力される発振信号V0を、周波数、振幅、及び出力端子OUT1に接続される負荷に応じて波形整形し、その結果として生成された基準クロック信号CLK1を出力端子OUT1から外部に出力する。また、バッファ回路2aは、その一対の電源電圧(動作電圧)印加端子(図示せず)がイネーブル端子EN1と接地端子GNDとに接続されていて、イネーブル端子EN1に入力されるイネーブル信号VEN1の電圧に応じた振幅の基準クロック信号CLK1を生成するよう構成されている。なお、バッファ回路2aは、後述のとおりCMOSトランジスタ(インバータ)として実現される。バッファ回路2b、2cは、バッファ回路2aと同様であるので説明を省略する。
【0034】
スイッチ回路4aは、バッファ回路2aの電源電圧印加端子と接地端子GNDとの間に設けられ、その制御端子に入力されるイネーブル信号VEN1の電位が所定の電位(Lowレベル)のときにオフして、バッファ回路2aへのイネーブル信号VEN1の電圧(イネーブル端子EN1と接地端子GNDとの間の電位差)の供給を遮断する。これにより、バッファ回路2aから基準クロック信号CLK1の出力が停止して、出力端子OUT1の電位はハイインピーダンスとなる。スイッチ回路4bは、スイッチ回路4aと同様であるので説明を省略する。
【0035】
レベルシフタ8aは、バッファ回路2aに印加される電源電圧として、電源端子VCCに印加される電源電圧VCCではなく、イネーブル端子EN1に印加されるイネーブル信号VEN1が用いられたことに伴い、バッファ回路2aを構成する後述のCMOSトランジスタのゲート−ソース間電圧を調整する目的で設けられている。レベルシフタ8bは、レベルシフタ8aと同様であるので説明を省略する。
[水晶発振器の出力駆動回路の構成]
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る水晶発振器の出力駆動回路の構成を示す回路図である。なお、本発明においては、トランジスタの負荷電流が流れる端子(例えば、電界効果トランジスタにおけるソース及びドレインや、バイポーラトランジスタにおけるエミッタ及びコレクタ)のことを「主端子」と呼ぶ。また、トランジスタの制御電圧が印加される端子(例えば、電界効果トランジスタにおけるゲートや、バイポーラトランジスタにおけるベース)のことを「制御端子」と呼ぶ。
【0036】
また、電界効果トランジスタのうちゲートに負電圧を印加してオンさせるPMOSトランジスタや、バイポーラトランジスタのうちエミッタ電圧に対してベース電圧を低くしてベースから電流を引き出すPNPトランジスタのことを「P型トランジスタ」と呼ぶ。また、電界効果トランジスタのうちゲートに正電圧を印加してオンさせるNMOSトランジスタや、バイポーラトランジスタのうちエミッタ電圧に対してベース電圧を高くしてベースに電流を流し込むNPNトランジスタのことを「N型トランジスタ」と呼ぶ。
【0037】
バッファ回路2は、P型トランジスタM20としてのPMOSトランジスタと、N型トランジスタM21としてのNMOSトランジスタとを直列に接続したCMOSトランジスタとして構成されている。詳述すると、P型トランジスタM20とN型トランジスタM21との主端子D(ドレイン)同士が接続され、その接続点から基準クロック信号CLKが取り出される。P型トランジスタM20の主端子S(ソース)がイネーブル端子ENと接続され、N型トランジスタM21がスイッチ回路4を介して接地端子GNDと接続されている。つまり、バッファ回路2の電源電圧は、イネーブル端子ENに印加されるイネーブル信号VENの電圧であり、電源端子VCCに印加される電源電圧VCCとは独立している。P型トランジスタM20とN型トランジスタM21との制御端子G(ゲート)同士が接続され、その接続点がレベルシフタ8の出力端と接続される。
【0038】
スイッチ回路4は、N型トランジスタM22によって構成されている。N型トランジスタM22は、その主端子D(ドレイン)がバッファ回路2のN型トランジスタM21の主端子S(ソース)と接続され、その主端子S(ソース)が接地され、かつその制御端子G(ゲート)がイネーブル端子ENと接続されている。
【0039】
レベルシフタ8は、水晶発振回路6から出力される発振信号V0の電位レベル(VCC−GND間電圧により規定される電位レベル)をバッファ回路2のCMOSトランジスタの閾値電圧に応じた電位レベル(VEN−GND間電圧により規定される電位レベル)にレベルシフトする回路である。レベルシフタ8は、本実施の形態では、コンデンサC1、インバータ回路9、及び抵抗R1により構成されている。コンデンサC1は、水晶発振回路6の出力端とインバータ回路9の入力端との間に設けられ、電源電圧の異なる水晶発振回路6とインバータ回路9とを直流的に絶縁(遮断)しつつ、水晶発振回路6から出力される発振信号V0をインバータ回路9に伝達する。インバータ回路9は、水晶発振回路6からコンデンサC1を介して入力された発振信号V0の電位レベルを上記のとおりレベルシフトする。なお、インバータ回路9の電源電圧としては、イネーブル端子ENに印加されたイネーブル信号VENの電圧が用いられている。また、インバータ回路9の入力端と出力端との間に動作安定用の帰還抵抗R1が設けられており、コンデンサC1との組合せにより、不要な低域ノイズを除去するHPF(ハイパスフィルタ)として機能させる。
[水晶発振器の出力駆動回路の動作]
以下では、図2に示した水晶発振器の出力駆動回路の動作を説明する。
【0040】
イネーブル端子ENに印加されたイネーブル信号VENの電位が接地電位GNDの場合、N型トランジスタM22がオフするため、P型トランジスタM20及びN型トランジスタM21から成るCMOSトランジスタは電源電圧が供給されない動作不能の状態となる。さらに、レベルシフタ8のインバータ回路9においても動作不能の状態になる。これにより、出力端子OUTはハイインピーダンスとなり、水晶発振器20において基準クロック信号CLKの出力を利用時期に応じて停止するためのイネーブル機能が実現される。
【0041】
一方、イネーブル端子ENに印加されたイネーブル信号VENの電位が、N型トランジスタM22の閾値電圧を上回る所望の電位の場合、N型トランジスタM22がオンするため、P型トランジスタM20及びN型トランジスタM21から成るCMOSトランジスタと、レベルシフタ8のインバータ回路9とには、電源電圧としてイネーブル信号VENの電圧が供給された状態となる。これにより、上記CMOSトランジスタが動作可能な状態となり、P型トランジスタM20及びN型トランジスタM21が相補的にオンオフする。そして、水晶発振回路6からレベルシフタ8を介して入力された発振信号V0の任意の振幅が、上記CMOSトランジスタ用の電源電圧に応じた振幅(VEN−GND)に変換される。なお、上記CMOSトランジスタの出力は、発振信号V0の振幅ピーク部に相当する部分がクリップされることなく、イネーブル信号VENの電位と接地端子GNDの電位との間でフルスイングするものとする。従って、イネーブル信号VENの電圧を変化させることによって、基準クロック信号CLKの振幅を任意に調整することができる。つまり、基準クロック信号CLKの振幅の調整機能が実現される。
【0042】
以上のように、携帯機器の製造業者側で、イネーブル端子ENに印加されるイネーブル信号VENの電圧を任意に調整(設定)することによって、水晶発振器の振幅を調整するためのデータが予め格納されているメモリ(PROM等)を設けずに、簡易な構成で基準クロック信号CLKの振幅を任意に調整することができる。
【0043】
[変形例]
図1に示した水晶発振器20は、基準クロック信号CLK1、CLK2用にそれぞれイネーブル端子EN1、EN2を設けているが、1個のイネーブル端子に集約して、かつ当該1個のイネーブル端子ENに印加されたイネーブル信号VENをスイッチ回路4a又はスイッチ回路4bに分配するセレクタ回路を設けるようにしてもよい。
【0044】
図2に示したスイッチ回路4は、N型トランジスタにより構成しているが、バッファ回路2に適宜な論理素子を設けることにより、P型トランジスタにより構成してもよい。また、MOSトランジスタに限らず、バイポーラトランジスタにより構成してもよい。
【0045】
図2に示したバッファ回路2は、CMOSトランジスタにより構成しているが、バイポーラトランジスタによって構成されたインバータ回路により構成してもよい。換言すると、P型トランジスタM20はPNP型トランジスタであり、N型トランジスタM21はNPN型トランジスタであってもよい。
【0046】
図2に示したバッファ回路2は、1段の構成であるが、複数段設けるようにしてもよい。
【0047】
図2に示したレベルシフタ8の構成に限られず、水晶発振回路6から出力される発振信号V0の任意の振幅をバッファ回路2のCMOSトランジスタの閾値電圧に応じた振幅(VEN−GND)にレベルシフトするように構成された回路であればよい。バッファ回路2のCMOSトランジスタのゲート−ソース間電圧の調整が不要であれば、レベルシフタ8自体が省略されてもよい。
【0048】
図2に示した水晶発振器の出力駆動回路10において、図3に示すように、スイッチ回路4が省略されてもよい。つまり、N型トランジスタM21の主端子Sが、スイッチ回路4を介さずに直接接地端子GNDに接続されている。以下では、図3に示す出力駆動回路10の動作を説明する。
【0049】
イネーブル端子ENに印加されたイネーブル信号VENの電位が、接地電位GND若しくはバッファ回路2の動作が不能となる電位以下となる場合、バッファ回路2は動作不能となり、出力端子OUTはハイインピーダンスとなる。これにより、水晶発振器20において基準クロック信号CLKの出力を利用時期に応じて停止するための基準クロック信号CLKのイネーブル機能が実現される。
【0050】
一方、イネーブル端子ENに印加されたイネーブル信号VENの電位が、バッファ回路2が動作不能となる電位を上回る場合、バッファ回路2が動作可能となる。これにより、水晶発振回路6からレベルシフタ8を介して入力された発振信号の任意の振幅が、CMOSトランジスタの電源電圧に応じた振幅(VEN−GND)に変換される。つまり、基準クロック信号CLKの振幅の調整機能が実現される。
【0051】
(第2の実施の形態)
[水晶発振器の全体構成]
本発明の第2の実施の形態では、近距離の赤外線通信等の用途向けに、図7に示すような正弦波のピーク部分をクリップしたようなクリップドサイン信号CSINを出力するクリップドサイン出力型かつ多系統出力型の水晶発振器の場合を例に挙げて説明する。本発明の第2の実施の形態に係る水晶発振器の全体構成は、図1に示した本発明の第1の実施の形態と同様であるため説明を省略する。
【0052】
[水晶発振器の出力駆動回路の構成]
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る水晶発振器の出力駆動回路の構成を示す回路図である。図2に示した本発明の第1の実施の形態に係る水晶発振器の出力駆動回路と対比すると、本実施の形態に係る水晶発振器の出力駆動回路は、クリップドサイン出力型に対応するために、バッファ回路2をソースフォロワ回路として構成した点が相違する。
【0053】
バッファ回路2は、N型トランジスタM30と、N型トランジスタM31と、インバータ回路(波形整形回路)12と、によるソースフォロワ回路として構成されている。N型トランジスタM30の主端子S(ソース)とN型トランジスタM31の主端子D(ドレイン)とが接続され、その接続点からクリップドサイン信号CSINが取り出される。N型トランジスタM30の主端子D(ドレイン)は電源端子VCCに接続され、N型トランジスタM31の主端子S(ソース)はスイッチ回路4を介して接地端子GNDに接続されている。N型トランジスタM30の制御端子G(ゲート)は、インバータ回路12の出力端と接続され、N型トランジスタM31の制御端子G(ゲート)は、レベルシフタ8の出力端と接続されている。
【0054】
インバータ回路12は、P型トランジスタM32及びN型トランジスタM33を備えている。P型トランジスタM32の主端子D(ドレイン)とN型トランジスタM33の主端子D(ドレイン)とが接続され、その接続点がN型トランジスタM30の制御端子G(ゲート)と接続されている。P型トランジスタM32の主端子S(ソース)はイネーブル端子ENと接続され、N型トランジスタM33の主端子S(ソース)は接地端子GNDと接続されている。P型トランジスタM32の制御端子G(ゲート)とN型トランジスタM33の制御端子G(ゲート)とは共にレベルシフタ8の出力端と接続されている。
【0055】
[水晶発振器の出力駆動回路の動作]
以下では、図4に示した水晶発振器の出力駆動回路の動作を説明する。
【0056】
イネーブル端子ENに印加されたイネーブル信号VENの電位が接地電位GNDの場合、インバータ回路12及びレベルシフタ8は動作不能な状態となる。これにより、N型トランジスタM30、M31は電気的にオフするため、出力端子OUTはハイインピーダンスとなり、水晶発振器20においてクリップドサイン信号CSINの出力を利用時期に応じて停止するためのイネーブル機能が実現される。
【0057】
一方、イネーブル端子ENに印加されたイネーブル信号VENの電位がインバータ回路12が動作不能となる電位を上回る場合、インバータ回路12には電源電圧としてイネーブル信号VENの電圧が供給された状態となる。これにより、インバータ回路12が動作可能な状態となり、水晶発振回路6からレベルシフタ8を介して入力された発振信号V0の任意の振幅が、CMOSトランジスタ用の電源電圧に応じた振幅(VEN−GND)に変換される。なお、インバータ回路12の出力はN型トランジスタM30の制御端子Gに入力される。
【0058】
ここで、N型トランジスタM30及びN型トランジスタM31の各制御端子Gに入力されるゲート信号の位相は反転した関係となっており、クリップドサイン信号CSINの立上り時には、N型トランジスタM30はオンし、かつN型トランジスタM31はオフしており、逆にクリップドサイン信号CSINの立下り時には、N型トランジスタM30はオフし、かつN型トランジスタM31はオンしている。最終的には、N型トランジスタM30及びN型トランジスタM31各々のインピーダンスが最適化されることによって、クリップドサイン信号CSINの波形は、図7に示すように、正弦波のピーク部がクリップされ、若干丸みを帯びたような波形となる。また、クリップドサイン信号CSINの振幅は、インバータ回路12の出力振幅に略比例した関係となるので、イネーブル信号VENの電圧を変化させることによって、クリップドサイン信号CSINの振幅を任意に調整することができる。つまり、クリップドサイン信号CSINの振幅の調整機能が実現される。
【0059】
以上のように、携帯機器の製造業者側で、イネーブル端子ENに印加されるイネーブル信号VENの電圧を任意に調整することによって、水晶発振器の振幅を調整するためのデータが予め格納されているメモリ(PROM等)を設けずに、クリップドサイン信号CSINの振幅を任意に調整することができる。
[変形例]
図4に示したスイッチ回路4は、N型トランジスタにより構成しているが、バッファ回路2に適宜な論理素子を設けることにより、P型トランジスタにより構成してもよい。また、MOSトランジスタに限らず、バイポーラトランジスタにより構成してもよい。
【0060】
図4に示したインバータ回路12は、CMOSトランジスタにより構成しているが、バイポーラトランジスタによって構成してもよい。
【0061】
図4に示したバッファ回路2は、1段の構成であるが、複数段設けるようにしてもよい。また、バッファ回路2は、バイポーラトランジスタによるエミッタフォロワ回路により構成してもよい。
【0062】
図4に示したレベルシフタ8の構成は、これには限られず、水晶発振回路6から出力される発振信号V0の任意の振幅をインバータ回路12のCMOSトランジスタの電源電圧に応じた振幅にレベルシフトするように構成された回路であればよい。インバータ回路12のCMOSトランジスタのゲート−ソース間電圧の調整が不要であれば、レベルシフタ8自体が省略されてもよい。
【0063】
図4に示した水晶発振器の出力駆動回路10において、図5に示すように、スイッチ回路4が省略されてもよい。つまり、N型トランジスタM31の主端子Sが、スイッチ回路4を介さずに直接接地端子GNDに接続されている。以下では、図5に示す出力駆動回路10の動作を説明する。
【0064】
イネーブル端子ENに印加されたイネーブル信号VENの電位が、接地電位GND若しくはインバータ回路12の動作が不能となる電位以下となる場合、インバータ回路12及びレベルシフタ8は動作不能となり、N型トランジスタM30の制御端子Gはハイインピーダンスとなる。これにより、水晶発振器20においてクリップドサイン信号CSINの出力を利用時期に応じて停止するためのクリップドサイン信号CSINのイネーブル機能が実現される。
【0065】
一方、イネーブル端子ENに印加されたイネーブル信号VENの電位が、インバータ回路12が動作不能となる電位を上回る場合、インバータ回路12が動作可能となり、水晶発振回路6からレベルシフタ8を介して入力された発振信号V0の振幅をインバータ回路12(CMOSトランジスタ)の電源電圧に応じた振幅に変換し、その出力をN型トランジスタM30の制御端子Gに入力する。これにより、クリップドサイン信号CSINの振幅の調整機能が実現される。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、イネーブル機能と振幅調整機能とを併せ持つ多系統出力型の水晶発振器にとって有用である。
【符号の説明】
【0067】
VCC…電源端子
GND…接地端子
EN1、EN2、EN…イネーブル端子
OUT1、OUT2、OUT3、OUT…出力端子
V0…発振信号
VEN1、VEN1、VEN…イネーブル信号
CLK1、CLK2、CLK3、CLK…基準クロック信号
CSIN…クリップドサイン信号
2、2a、2b、2c…バッファ回路
M20…P型トランジスタ
M21…N型トランジスタ
M22…N型トランジスタ
M30…N型トランジスタ(第1のN型トランジスタ)
M31…N型トランジスタ(第2のN型トランジスタ)
12…インバータ回路
M32…P型トランジスタ
M33…N型トランジスタ
4、4a、4b…スイッチ回路
6…水晶発振回路
60…水晶振動子
8、8a、8b…レベルシフタ
CB1…コンデンサ
R1…帰還抵抗
9…インバータ回路
10…出力駆動回路
20…水晶発振器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源に接続される電源端子と、
接地電位に維持される接地端子と、
前記電源端子と前記接地端子とに接続され、前記電源端子と前記接地端子との間に印加された電源電圧に基づく振幅レベルの第1の発振信号を出力する水晶発振回路と、
イネーブル信号が入力されるイネーブル端子と、
前記イネーブル端子と前記接地端子とに接続され、前記水晶発振回路から入力される前記第1の発振信号を波形整形して前記イネーブル端子と前記接地端子との間の前記イネーブル信号の電圧に応じた振幅レベルの第2の発振信号を出力するバッファ回路と、
前記バッファ回路から出力される前記第2の発振信号が出力される出力端子と、
を備える水晶発振器。
【請求項2】
前記バッファ回路は、
P型トランジスタとN型トランジスタとを含むインバータ回路により構成され、
前記P型トランジスタの制御端子と前記N型トランジスタの制御端子とが共に前記水晶発振回路の出力端と接続され、
前記P型トランジスタの一方の主端子が前記イネーブル端子と接続され、
前記P型トランジスタの他方の主端子が前記N型トランジスタの一方の主端子と接続され、その接続点から前記第2の発振信号が取り出され、
かつ前記N型トランジスタの他方の主端子が前記接地端子に接続されている、
請求項1に記載の水晶発振器。
【請求項3】
前記バッファ回路は、
第1のN型トランジスタと、第2のN型トランジスタと、インバータ回路と、を含むソースフォロワ回路又はエミッタフォロワ回路により構成され、
前記第1のN型トランジスタの制御端子が前記インバータ回路を介して前記水晶発振回路の出力端と接続され、
前記第2のN型トランジスタの制御端子が前記水晶発振回路の出力端と接続され、
前記第1のN型トランジスタの一方の主端子が前記電源端子と接続され、
前記第1のN型トランジスタの他方の主端子が前記第2のN型トランジスタの一方の主端子と接続され、その接続点から前記第2の発振信号が取り出され、
かつ前記第2のN型トランジスタの他方の主端子が前記接地端子に接続されており、
前記インバータ回路は、
P型トランジスタとN型トランジスタとを含むインバータ回路により構成され、
前記P型トランジスタの制御端子と前記N型トランジスタの制御端子とが共に前記水晶発振回路の出力端と接続され、
前記P型トランジスタの一方の主端子が前記イネーブル端子と接続され、
前記P型トランジスタの他方の主端子が前記N型トランジスタの一方の主端子と接続され、その接続点が前記第1のN型トランジスタの制御端子と接続され、
かつ前記N型トランジスタの他方の主端子が前記接地端子に接続されている、
請求項1に記載の水晶発振器。
【請求項4】
前記バッファ回路と前記イネーブル端子又は前記接地端子との間に、前記イネーブル信号に基づいてオンオフするスイッチ回路が設けられている、請求項1に記載の水晶発振器。
【請求項5】
前記水晶発振回路と前記バッファ回路との間に、前記第1の発振信号の電位レベルを調整するレベルシフタが設けられている、請求項1に記載の水晶発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−244064(P2011−244064A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111994(P2010−111994)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】