説明

水浄化装置及び水浄化方法

【課題】特別な動力を必要とせずに装置内を減圧することができ、純度の高い浄化水を効率よく生成できると共に、優れた冷却機能を備えた水浄化装置及び水浄化方法の提供。
【解決手段】浄化対象水と、不揮発性化合物含有水溶液とを半透過膜を介して接触させ、該半透過膜により浄化対象水から分離された水で不揮発性化合物含有水溶液を希釈する希釈手段と、希釈された不揮発性化合物含有水溶液を加熱し、該希釈された不揮発性化合物含有水溶液から水蒸気を分離して、濃縮された不揮発性化合物含有水溶液を得る分離手段と、分離された水蒸気を冷却して、水を生成する凝縮手段と、凝縮手段により生成された水の一部を浄化水として回収すると共に、残りの水を減圧下で蒸発させて水蒸気を得る蒸発手段と、得られた水蒸気を、濃縮された不揮発性化合物含有水溶液で吸収する吸収手段とを有する水浄化装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特別な動力を必要とせずに装置内を減圧することができ、純度の高い浄化水を効率よく生成できると共に、優れた冷却機能を備えた水浄化装置及び水浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
浸透圧差のある2種の水溶液間で水を選択的に分離し移動させる方法として、外部圧力を用いた逆浸透(RO)法と、浸透圧を利用して低エネルギーで分離を行う順浸透(FO)法が知られている。
前記順浸透法の一つとして、揮発性アニオン及び揮発性カチオンを含む揮発性イオン含有水溶液を用いる方法がある。例えば特許文献1では、図1に示すように、浄化対象水を、揮発性アニオン及び揮発性カチオンを含む揮発性イオン含有水溶液と半透過膜11を介して接触させ、該半透過膜11により前記浄化対象水から分離された水で前記揮発性イオン含有水溶液を希釈する希釈手段12と、
前記希釈手段により希釈された揮発性イオン含有水溶液から、前記揮発性アニオン及び前記揮発性カチオンを揮発させて、浄化水を得る蒸留塔17を含む分離手段15と、
前記分離手段15により気化分離したアニオンガス及びカチオンガスを、前記希釈された揮発性イオン含有水溶液に戻し、溶解するガス吸収器16を含む溶解手段14と、を有する水浄化装置が提案されている。
【0003】
しかし、この提案の水浄化装置では、希釈手段により水を取り込んだ後、分離手段により揮発性イオンを分離して浄化水を回収しており、分離しきれなかった揮発性イオンが浄化水中に混入してしまうおそれがある。
【0004】
また、吸収式冷却システムは、水の吸収力の高い溶質(例えばLiBr)の水溶液に、水蒸気を吸収させることにより、低圧で気化させて低温状態を得ることができる(特許文献2、非特許文献1参照)。
前記吸収式冷却システムとしては、単効用及び多重効用のいずれであってもよく、例えば、図2に示すように、分離手段2と、凝縮手段3と、蒸発手段4と、吸収手段5とを有し、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。
前記分離手段2では、水蒸気を吸収して希釈された不揮発性化合物(LiBr)水溶液に、熱エネルギーを与えて、水を蒸発させ、水蒸気と濃縮されたLiBr水溶液とに分離する。
次に、前記凝縮手段3では、前記分離手段2により分離された水蒸気を冷却し、水を生成する。
次に、前記凝縮手段3により生成された水は減圧バルブで減圧され、高真空状態となっている蒸発手段4で蒸発する。この時、水の蒸発による気化熱により管内の冷媒を冷却する。この冷却された管内を循環する冷媒を利用して、空調器7により室内の冷房を行う。
次に、蒸発手段4で得られた水蒸気は、吸収手段5においてLiBr水溶液に吸収される。これにより、蒸発手段4の高真空状態が維持される。また、LiBr水溶液は水蒸気を吸収する際に、発熱するので、吸収手段5は冷却される。
次に、希釈されたLiBr水溶液は送液ポンプ(不図示)で分離手段2へ送られ、再生される。以上のサイクルを繰り返すことで、冷却された冷媒(水)を連続的に供給することができる。
【0005】
前記吸収式冷却システムは、優れた冷却機能を有しているが、系中の水は全量循環させる必要があり、本願発明のように、浄化水を回収することは全く予定されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開2005/0145568号明細書
【特許文献2】特許第3475003号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】日本機械学会論文集(B編)67巻 658号(2001−6) 178−184
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、特別な動力を必要とせずに装置内を減圧することができ、純度の高い浄化水を効率よく生成できると共に、優れた冷却機能を備えた水浄化装置及び水浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 浄化対象水と、不揮発性化合物含有水溶液とを半透過膜を介して接触させ、該半透過膜により前記浄化対象水から分離された水で前記不揮発性化合物含有水溶液を希釈する希釈手段と、
前記希釈手段により希釈された不揮発性化合物含有水溶液を加熱し、該希釈された不揮発性化合物含有水溶液から水蒸気を分離して、濃縮された不揮発性化合物含有水溶液を得る分離手段と、
前記分離手段により分離された水蒸気を冷却して、水を生成する凝縮手段と、
前記凝縮手段により生成された水の一部を浄化水として回収すると共に、残りの水を減圧下で蒸発させて水蒸気を得る蒸発手段と、
前記蒸発手段で得られた水蒸気を、前記分離手段により濃縮された不揮発性化合物含有水溶液で吸収する吸収手段と、
を有することを特徴とする水浄化装置である。
該<1>に記載の水浄化装置においては、希釈手段と、分離手段と、凝縮手段と、蒸発手段と、吸収手段とを有する。
前記希釈手段により、浄化対象水と、不揮発性化合物含有水溶液とを半透過膜を介して接触させ、該半透過膜により前記浄化対象水から分離された水で前記不揮発性化合物含有水溶液を希釈する。
前記分離手段により、前記希釈手段により希釈された不揮発性化合物含有水溶液を加熱し、該希釈された不揮発性化合物含有水溶液から水蒸気を分離して、濃縮された不揮発性化合物含有水溶液を得る。
前記凝縮手段により、前記分離手段により分離された水蒸気を冷却して、水を生成する。
前記蒸発手段により、前記凝縮手段により生成された水の一部を浄化水として回収すると共に、残りの水を減圧下で蒸発させて水蒸気を得る。
前記吸収手段により、前記蒸発手段で得られた水蒸気を、前記分離手段により濃縮された不揮発性化合物含有水溶液で吸収する。その結果、特別な動力を必要とせずに装置内を減圧することができ、純度の高い浄化水を効率よく生成することができる。
<2> 希釈手段が分離手段と吸収手段の間に設けられ、
前記不揮発性化合物含有水溶液が、前記分離手段と前記吸収手段との間で、濃度を変えて循環する前記<1>に記載の水浄化装置である。
該<2>に記載の水浄化装置においては、希釈手段が分離手段と吸収手段の間に設けられているので、純度の高い浄化水を生成することができる。
また、前記不揮発性化合物含有水溶液が、前記分離手段と前記吸収手段との間で、濃度を変えて循環するので、極めて効率よく純度の高い浄化水を生成することができる。
<3> 不揮発性化合物が、水吸収性を有する化合物である前記<1>から<2>のいずれかに記載の水浄化装置である。
該<3>に記載の水浄化装置においては、不揮発性化合物が、水吸収性を有する化合物であることにより、蒸発手段で発生した水蒸気を吸収して、装置内の減圧を維持することができる。
<4> 不揮発性化合物が、水溶性を有する化合物である前記<1>から<3>のいずれかに記載の水浄化装置である。
該<4>に記載の水浄化装置においては、不揮発性化合物が、水溶性を有する化合物であることにより、高濃度水溶液を用いることができるため、半透膜を介することで高い浸透圧をかけることができ、浄化対象水から水を吸収して、浄化水を回収することができる。
<5> 不揮発性化合物が、LiBrである前記<1>から<4>のいずれかに記載の水浄化装置である。
該<5>に記載の水浄化装置においては、不揮発性化合物が、LiBrである。該LiBrは不揮発性であり、水溶性かつ水吸収性を備えているので、溶質として好適である。
<6> 蒸発手段が、内部を冷媒が循環する冷却管を有し、
前記蒸発手段で水が蒸発するときの気化熱により冷却管内の冷媒が冷却され、これを利用して冷房を行う前記<1>から<5>のいずれかに記載の水浄化装置である。
該<6>に記載の水浄化装置においては、蒸発手段が、内部を冷媒が循環する冷却管を有し、前記蒸発手段で水が蒸発するときの気化熱により冷却管内の冷媒が冷却され、これを利用して冷房を行うことができ、既存の吸収式冷却システムの有効利用が図れる。
<7> 蒸発手段、吸収手段、及び蒸発手段と吸収手段の間が、いずれも1kPa以下の減圧状態である前記<1>から<6>のいずれかに記載の水浄化装置である。
<8> 分離手段、凝縮手段、及び分離手段と凝縮手段の間が、いずれも5kPa〜10kPaの減圧状態である前記<1>から<7>のいずれかに記載の水浄化装置である。
<9> 半透過膜が、水を選択的に透過する順浸透半透過膜である前記<1>から<8>のいずれかに記載の水浄化装置である。
<10> 浄化対象水が、海水である前記<1>から<9>のいずれかに記載の水浄化装置である。
<11> 浄化対象水と、不揮発性化合物含有水溶液とを半透過膜を介して接触させ、該半透過膜により前記浄化対象水から分離された水で前記不揮発性化合物含有水溶液を希釈する希釈工程と、
前記希釈工程により希釈された不揮発性化合物含有水溶液を加熱し、該希釈された不揮発性化合物含有水溶液から水蒸気を分離して、濃縮された不揮発性化合物含有水溶液を得る分離工程と、
前記分離工程により分離された水蒸気を冷却して、水を生成する凝縮工程と、
前記凝縮工程により生成された水の一部を浄化水として回収すると共に、残りの水を減圧下で蒸発させて水蒸気を得る蒸発工程と、
前記蒸発工程で得られた水蒸気を、前記分離工程により濃縮された不揮発性化合物含有水溶液で吸収する吸収工程と、
を含むことを特徴とする水浄化方法である。
該<11>に記載の水浄化方法においては、希釈工程と、分離工程と、凝縮工程と、蒸発工程と、吸収工程とを含む。
前記希釈工程では、浄化対象水と、不揮発性化合物含有水溶液とを半透過膜を介して接触させ、該半透過膜により前記浄化対象水から分離された水で前記不揮発性化合物含有水溶液を希釈する。
前記分離工程では、前記希釈工程で希釈された不揮発性化合物含有水溶液を加熱し、該希釈された不揮発性化合物含有水溶液から水蒸気を分離して、濃縮された不揮発性化合物含有水溶液を得る。
前記凝縮工程では、前記分離工程で分離された水蒸気を冷却して、水を生成する。
前記蒸発工程では、前記凝縮工程で生成された水の一部を浄化水として回収すると共に、残りの水を減圧下で蒸発させて水蒸気を得る。
前記吸収工程では、前記蒸発工程で得られた水蒸気を、前記分離工程で濃縮された不揮発性化合物含有水溶液で吸収する。その結果、特別な動力を必要とせずに装置内を減圧することができ、純度の高い浄化水を効率よく生成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来の前記諸問題を解決することができ、特別な動力を必要とせずに装置内を減圧することができ、純度の高い浄化水を効率よく生成できると共に、優れた冷却機能を備えた水浄化装置及び水浄化方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、従来の順浸透法による水浄化装置の一例を示す概略図である。
【図2】図2は、従来の吸収式冷却システムの一例を示す概略図である。
【図3】図3は、本発明の水浄化装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(水浄化装置及び水浄化方法)
本発明の水浄化装置は、希釈手段と、分離手段と、凝縮手段と、蒸発手段と、吸収手段とを有し、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。
本発明の水浄化方法は、希釈工程と、分離工程と、凝縮工程と、蒸発工程と、吸収工程とを含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
【0013】
本発明の水浄化方法は、本発明の水浄化装置により好適に実施することができ、前記希釈工程は前記希釈手段により行うことができ、前記分離工程は前記分離手段により行うことができ、前記凝縮工程は前記凝縮手段により行うことができ、前記蒸発工程は前記蒸発手段により行うことができ、前記吸収工程は前記吸収手段により行うことができ、前記その他の工程は前記その他の手段により行うことができる。
【0014】
<希釈手段及び希釈工程>
前記希釈工程は、浄化対象水と、不揮発性化合物含有水溶液とを半透過膜を介して接触させ、該半透過膜により前記浄化対象水から分離された水で前記不揮発性化合物含有水溶液を希釈する工程であり、希釈手段により実施することができる。
前記希釈手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば半透過膜を有する水浄化装置、などが挙げられる。
前記希釈手段は、分離手段から吸収手段又は吸収手段から分離手段のどちらの間にも設けることができるが、分離手段から吸収手段の間に設けられることが、高濃度の不揮発性化合物の水溶液を用いることができ、吸収手段における水蒸気の高効率吸収の点で好ましい。
【0015】
−浄化対象水−
前記浄化対象水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば海水、河川水、地下水、工業排水、生活排水、下水などが挙げられる。これらの中でも、存在する量が多く、処理可能な量が多い点で海水が特に好ましい。
本発明において、前記浄化水とは、浄化対象水から90%以上不純物を除いたものを意味する。
【0016】
−不揮発性化合物含有水溶液−
前記不揮発性化合物含有水溶液とは、不揮発性化合物を含む水溶液であり、該不揮発性化合物としては、高い浸透圧をかけ、また蒸発手段内で発生する水蒸気を吸収し、系内の圧力を減圧に保つため、水溶性かつ水吸収性を有する化合物が好ましく、例えばLiBr、LiCl、NaCl、NaI等のハロゲン化アルカリ金属;CaCl、MgCl等のハロゲン化アルカリ土類金属、グルコース、フルクトース等の糖類、などが挙げられる。これらの中でも、水への溶解度が高く、水溶液の吸湿性が高い点でLiBrが特に好ましい。
【0017】
前記不揮発性化合物含有水溶液は、前記分離手段と前記吸収手段との間で、濃度を変えて循環しており、その濃度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40質量%〜70質量%であることが好ましい。
前記揮発性化合物含有水溶液には、配管の腐食を防止するため、防腐剤などを添加することができる。
【0018】
−半透過膜−
前記半透過膜としては、その材料、形状、大きさ、構造などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水を選択的に透過する順浸透(FO)半透過膜であることが好ましい。
前記順浸透半透過膜としては、半透膜性を示すものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記順浸透半透過膜の材料としては、例えば酢酸セルロース、芳香族ポリアミド、アルキルポリアミド、ポリアクリロニトリル、スルホン化ポリスルホンなどが挙げられる。
【0019】
<分離手段及び分離工程>
前記分離工程は、前記希釈工程により希釈された不揮発性化合物含有水溶液を加熱し、該希釈された不揮発性化合物含有水溶液から水蒸気を分離して、濃縮された不揮発性化合物含有水溶液を得る工程であり、分離手段により実施することができる。
【0020】
濃縮された不揮発性化合物含有水溶液は吸収手段に送られ、該吸収手段において、水蒸気を吸収して希釈される。該希釈された不揮発性化合物含有水溶液は、希釈手段により希釈され、再度分離手段に送られる。即ち、不揮発性化合物含有水溶液は、前記分離手段と前記吸収手段との間で、濃度を変えて循環している。
前記分離手段では、前記希釈手段の半透過膜により浄化対象水から分離された水の分だけ水量が増加しているので、この分を浄化水として回収する。
【0021】
前記分離手段における加熱源としては、特に制限はなく、目的応じて適宜選択することができ、例えば工場からの廃熱、蒸気熱、太陽熱、更に系内で発生する凝縮熱や溶解熱も利用することができる。
前記分離手段における不揮発性化合物含有水溶液の加熱温度は、80℃〜120℃が好ましい。
前記分離手段としては、希釈された不揮発性化合物含有水溶液から水蒸気を分離できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば再生器などが挙げられる。
前記分離手段における圧力状態は、5kPa〜10kPaであることが好ましい。
【0022】
<凝縮手段及び凝縮工程>
前記凝縮工程は、前記分離工程により分離された水蒸気を冷却して、水を生成する工程であり、凝縮手段により実施される。
【0023】
前記凝縮手段としては、分離された水蒸気を冷却して、水を生成することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば凝縮器などが挙げられる。
前記凝縮手段における圧力状態は、5kPa〜10kPaであることが好ましい。
したがって前記分離手段、前記凝縮手段、及び前記分離手段と前記凝縮手段の間が、いずれも5kPa〜10kPaの減圧状態であることが、効率の良い蒸発と凝縮を行うことができ、より低エネルギーで高い採水速度が得られるためより好ましい。
【0024】
<蒸発手段及び蒸発工程>
前記蒸発工程は、前記凝縮工程により生成された水の一部を浄化水として回収すると共に、残りの水を減圧下で蒸発させて水蒸気を得る工程であり、蒸発手段により実施される。
【0025】
前記蒸発手段としては、生成された水の一部を浄化水として回収すると共に、残りの水を減圧下で蒸発させて水蒸気を得ることができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば蒸発器などが挙げられる。
前記蒸発手段における圧力状態は、1kPa以下であることが好ましい。
前記蒸発手段は、内部を冷媒が循環する冷却管を有しており、
前記蒸発手段で水が蒸発するときの気化熱により冷却管内の冷媒が冷却され、これを利用して冷房を行うことができる。
【0026】
<吸収手段及び吸収工程>
前記吸収工程は、前記蒸発工程で得られた水蒸気を、前記分離手段により濃縮された不揮発性化合物含有水溶液で吸収する工程であり、吸収手段により実施される。
【0027】
前記吸収手段としては、蒸発工程で得られた水蒸気を吸収することができるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば吸収器などが挙げられる。
前記吸収手段における圧力状態は、1kPa以下であることが好ましい。
したがって前記蒸発手段、前記吸収手段、及び前記蒸発手段と前記吸収手段の間が、いずれも1kPa以下の減圧状態であることが、効率の良い蒸発と吸収を行うことができ、より低エネルギーで高い採水速度が得られるためより好ましい。
【0028】
−その他の手段及びその他の工程−
前記その他の工程としては、例えば制御工程、駆動工程などが挙げられ、これらは制御手段、駆動手段により実施される。
前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【0029】
本発明の水浄化方法は、浄化対象水と、不揮発性化合物含有水溶液とを半透過膜を介して接触させ、該半透過膜により前記浄化対象水から分離された水で前記不揮発性化合物含有水溶液を希釈する。
次に、希釈された不揮発性化合物含有水溶液を加熱し、該希釈された不揮発性化合物含有水溶液から水蒸気を分離して、濃縮された不揮発性化合物含有水溶液を得る。
次に、分離された水蒸気を冷却して、水を生成する。
次に、生成された水の一部を浄化水として回収すると共に、残りの水を減圧下で蒸発させて水蒸気を得る。その際、水が蒸発するときの気化熱により冷却管内の冷媒を冷却して冷房を行うことができる。
次に、得られた水蒸気を、前記分離工程により濃縮された不揮発性化合物含有水溶液で吸収する。
【0030】
なお、前記吸収手段の出口及び前記分離手段の入口において、電気伝導度を測定することにより、溶質の必要量をモニタリングすることができる。また、吸収した水の量から分離手段で分離する水の量を求めることができ、凝縮手段の出口及び蒸発手段において回収する水の量を求めることができる。
【0031】
本発明の水浄化装置及び水浄化方法は、特別な動力を必要とせずに装置内を減圧することができ、純度の高い浄化水を効率よく生成できると共に、優れた冷却機能を備えており、既存の吸収式冷却システムを活用して、各種水の浄化に用いることができ、特に海水の浄水化に好適である。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の実施例につき図面を用いて具体的に説明するが、本発明はこの実施例に何ら限定されるものではない。
【0033】
(第1実施例)
本発明の水浄化装置の第1実施例について説明する。
図3は、第1実施例の水浄化装置の概略図である。
この第1実施例の水浄化装置100は、希釈手段1と、分離手段2と、凝縮手段3と、蒸発手段4と、吸収手段5とを有している。
この第1実施例の水浄化装置100では、浄化対象水としては、海水が用いられている。
【0034】
希釈手段1は、浄化対象水と、不揮発性化合物含有水溶液とを半透過膜11を介して接触させ、該半透過膜により前記浄化対象水から分離された水で前記不揮発性化合物含有水溶液を希釈する手段であり、分離手段2と接続されている。
希釈手段1は分離手段2と吸収手段5の間に設けられている。
希釈手段1は、不揮発性化合物含有水溶液が、前記分離手段2と前記吸収手段5との間で、濃度を変えて循環するように構成されている。
不揮発性化合物としては、水溶性かつ水吸収性を有する化合物が用いられ、この第1実施例では、LiBrを用いている。
半透過膜11としては、水を選択的に透過する順浸透半透過膜が用いられ、この第1実施例では、順浸透半透過膜としてHydration Technology Inovations社製Expedition内蔵膜を用いている。
【0035】
分離手段2は、前記希釈手段1により希釈された不揮発性化合物含有水溶液を加熱し、該希釈された不揮発性化合物含有水溶液から水蒸気を分離して、濃縮された不揮発性化合物含有水溶液を得る手段であり、この第1実施例では、再生器が用いられている。
分離手段2は凝縮手段3と接続されており、圧力状態は5kPa〜10kPaである。
【0036】
凝縮手段3は、前記分離手段2により分離された水蒸気を冷却して、水を生成する手段であり、この第1実施例では、凝縮器が用いられている。
凝縮手段3は蒸発手段4と接続されており、圧力状態は5kPa〜10kPaである。
【0037】
蒸発手段4は、前記凝縮手段3により生成された水の一部を浄化水として回収すると共に、残りの水を減圧下で蒸発させて水蒸気を得る手段であり、この第1実施例では、蒸発器が用いられている。
蒸発手段4は吸収手段5と接続されており、圧力状態は1kPa以下である。
蒸発手段4は、内部を冷媒が循環する冷却管を有しており、前記蒸発手段4で水が蒸発するときの気化熱により冷却管内の冷媒が冷却され、これを利用して冷房を行えるように構成されている。
【0038】
吸収手段5は、前記蒸発手段4で得られた水蒸気を、前記分離手段2により濃縮された不揮発性化合物含有水溶液で吸収する手段であり、この第1実施例では、吸収器が用いられている。
吸収手段5は、希釈手段1と接続されており、圧力状態は1kPa以下である。
【0039】
したがって第1実施例の水浄化装置においては、蒸発手段4、吸収手段5、及び蒸発手段4と吸収手段5の間が、いずれも1kPa以下の減圧状態である。
また、第1実施例の水浄化装置においては、分離手段2、凝縮手段3、及び分離手段2と凝縮手段3の間が、いずれも5kPa〜10kPaの減圧状態である
【0040】
本発明の水浄化装置100においては、希釈手段1により、浄化対象水と、不揮発性化合物含有水溶液とを半透過膜11を介して接触させ、該半透過膜により前記浄化対象水から分離された水で前記不揮発性化合物含有水溶液を希釈する。
次に、分離手段2により、希釈された不揮発性化合物含有水溶液を加熱し、該希釈された不揮発性化合物含有水溶液から水蒸気を分離して、濃縮された不揮発性化合物含有水溶液を得る。
次に、凝縮手段3により、分離された水蒸気を冷却して、水を生成する。
次に、蒸発手段4により、生成された水の一部を浄化水として回収すると共に、残りの水を減圧下で蒸発させて水蒸気を得る。その際、水が蒸発するときの気化熱により冷却管内の冷媒を冷却して冷房を行うことができる。
次に、吸収手段5により、得られた水蒸気を、前記分離工程により濃縮された不揮発性化合物含有水溶液で吸収する。
以上により、本発明の水浄化装置によれば、特別な動力を必要とせずに装置内を減圧することができ、純度の高い浄化水を効率よく生成できると共に、優れた冷却機能を発揮することができる。
【0041】
以上、本発明の水浄化装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更しても差支えない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の水浄化装置及び水浄化方法は、特別な動力を必要とせずに装置内を減圧することができ、純度の高い浄化水を効率よく生成できると共に、優れた冷却機能を備えており、既存の吸収式冷却システムを活用して、各種水の浄化に用いることができ、特に海水の浄水化に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0043】
1 希釈手段
2 分離手段
3 凝縮手段
4 蒸発手段
5 吸収手段
6 管
7 空調器
8、9 減圧バルブ
11 半透過膜
12 希釈手段
14 溶解手段
15 分離手段
16 ガス吸収器
17 蒸留塔
100 水浄化装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浄化対象水と、不揮発性化合物含有水溶液とを半透過膜を介して接触させ、該半透過膜により前記浄化対象水から分離された水で前記不揮発性化合物含有水溶液を希釈する希釈手段と、
前記希釈手段により希釈された不揮発性化合物含有水溶液を加熱し、該希釈された不揮発性化合物含有水溶液から水蒸気を分離して、濃縮された不揮発性化合物含有水溶液を得る分離手段と、
前記分離手段により分離された水蒸気を冷却して、水を生成する凝縮手段と、
前記凝縮手段により生成された水の一部を浄化水として回収すると共に、残りの水を減圧下で蒸発させて水蒸気を得る蒸発手段と、
前記蒸発手段で得られた水蒸気を、前記分離手段により濃縮された不揮発性化合物含有水溶液で吸収する吸収手段と、
を有することを特徴とする水浄化装置。
【請求項2】
希釈手段が分離手段と吸収手段の間に設けられ、
前記不揮発性化合物含有水溶液が、前記分離手段と前記吸収手段との間で、濃度を変えて循環する請求項1に記載の水浄化装置。
【請求項3】
不揮発性化合物が、水吸収性を有する化合物である請求項1から2のいずれかに記載の水浄化装置。
【請求項4】
不揮発性化合物が、水溶性を有する化合物である請求項1から3のいずれかに記載の水浄化装置。
【請求項5】
不揮発性化合物が、LiBrである請求項1から4のいずれかに記載の水浄化装置。
【請求項6】
蒸発手段が、内部を冷媒が循環する冷却管を有し
前記蒸発手段で水が蒸発するときの気化熱により冷却管内の冷媒が冷却され、これを利用して冷房を行う請求項1から5のいずれかに記載の水浄化装置。
【請求項7】
蒸発手段、吸収手段、及び蒸発手段と吸収手段の間が、いずれも1kPa以下の減圧状態である請求項1から6のいずれかに記載の水浄化装置。
【請求項8】
分離手段、凝縮手段、及び分離手段と凝縮手段の間が、いずれも5kPa〜10kPaの減圧状態である請求項1から7のいずれかに記載の水浄化装置。
【請求項9】
半透過膜が、水を選択的に透過する順浸透半透過膜である請求項1から8のいずれかに記載の水浄化装置。
【請求項10】
浄化対象水が、海水である請求項1から9のいずれかに記載の水浄化装置。
【請求項11】
浄化対象水と、不揮発性化合物含有水溶液とを半透過膜を介して接触させ、該半透過膜により前記浄化対象水から分離された水で前記不揮発性化合物含有水溶液を希釈する希釈工程と、
前記希釈工程により希釈された不揮発性化合物含有水溶液を加熱し、該希釈された不揮発性化合物含有水溶液から水蒸気を分離して、濃縮された不揮発性化合物含有水溶液を得る分離工程と、
前記分離工程により分離された水蒸気を冷却して、水を生成する凝縮工程と、
前記凝縮工程により生成された水の一部を浄化水として回収すると共に、残りの水を減圧下で蒸発させて水蒸気を得る蒸発工程と、
前記蒸発工程で得られた水蒸気を、前記分離工程により濃縮された不揮発性化合物含有水溶液で吸収する吸収工程と、
を含むことを特徴とする水浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−78879(P2011−78879A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231770(P2009−231770)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】