説明

水管壁を備えた竪型ごみ焼却炉

【課題】廃熱ボイラを採用したときの竪型ごみ焼却炉のエネルギー効率の向上を図ると同時に、燃焼熱の損失と排ガス量の増大を解消でき、さらに、クリンカ等の防止性能にも優れる、水管壁を備えた竪型ごみ焼却炉を提供する。
【解決手段】竪型の焼却炉の内壁をなす耐火物製の炉壁2と、焼却炉内を燃焼室11と再燃焼室12に区分するとともに、燃焼ガスwを混合・攪拌させる耐火物製の排ガス混合手段9と、焼却炉の底部に配置されて燃焼完結後の焼却灰Aを排出する焼却灰排出機構ADと、燃焼室側面の炉壁2に接続された投入口CEとにより主体が構成される竪型ごみ焼却炉1において、炉壁2の外周面に複数本の水管を並列に配設固定した水管壁3を設けている。水管壁3の上下端に上部ヘッダ4と下部ヘッダ5を各々設けるとともに、投入口CEが接続される炉壁開口部26の上方及び下方の高さ位置に、水管を分割・中継する1組の中間ヘッダ6、7を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業廃棄物や一般廃棄物などのごみを焼却する竪型ごみ焼却炉の水管壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
竪型ごみ焼却炉は、焼却炉本体下部が漏斗状に絞られた炉壁構造を有し、投入ごみを堆積させた炉内底部に温度調節された一次空気を送入してごみを燃焼させる燃焼方式であるが、従来、高発熱量のごみの燃焼により発生するクリンカや溶融したガラス類が炉壁に溶着・肥大化して焼却灰の排出を阻害したり、高温化による耐火物の損傷を防止するため、炉下部の炉壁に冷却ジャケットが設けられていた。
【0003】
[以下、従来の竪型ごみ焼却炉の構造説明]
図7は、特許文献1の「産業廃棄物焼却用竪型ごみ焼却炉」に開示された、従来技術の竪型ごみ焼却炉の概略構造と燃焼状態を示す模式図である。
【0004】
図7において、竪型ごみ焼却炉Bは、中央の円筒部CP及びその下部に連接する漏斗部FPからなる焼却炉本体MBと、底部に配設された焼却灰排出機構ADと、焼却炉本体MBの上部に排ガス混合手段GMを介して戴置された再燃焼室RCとを主体に構築されている。
【0005】
前記焼却炉本体MBは、その外殻をなす図示しない鋼製のケーシングと内側の上部耐火物UR(円筒部CPに配置)及び下部耐火物LR(漏斗部FPに配置)から構成され、その側面には、ごみRを投入するための開閉式の投入ダンパCDを備えた投入口CEが配設されるとともに、ごみの燃焼によって発生したガスの2次燃焼のために常温の2次空気sを送入する複数の2次空気ノズルSN(1基のみ図示)が配置されている。なお、GBは竪型ごみ焼却炉Bの起動時に用いる着火バーナであり、また、RBは再燃バーナである。
【0006】
焼却炉本体MB下部の漏斗部FPは、ごみ層を厚くして性状の異なるごみ質を平準化させるために漏斗状に絞られて形成されており、その側面及び底部には、ごみ質に応じて調温された1次空気aを供給する複数の1次空気ノズルN1〜N4が夫々配置されるとともに、下部耐火物LRを覆って背面から冷却する、冷却ジャケットCJ(上部を空冷ジャケットAJ、下部を水冷ジャケットWJとした2分割タイプを図示)が配置されている。
【0007】
焼却灰排出機構ADは、漏斗部FPの下方に連接して設けられ、上部に配置された対向する一対の出没自在なごみ支持板RS,RSと、底部に設けられた開閉自在の焼却灰排出板OD,OD及び、図示しないこれらの駆動機構により構成されている。
【0008】
このごみ支持板RS,RSは、図7のように通常時は炉内から退出した状態に位置しているが、焼却灰Aを排出するときには、図中の1点鎖線で示すように灰層zの中に突出されて、上部にあるごみRと焼却灰Aの荷重を支持したのち、焼却灰排出板OD,ODを下方に開放することにより、ごみ支持板RS,RSから下方の焼却灰Aを灰搬出装置AHに落下させるように制御されている。
【0009】
[以下、従来の竪型ごみ焼却炉の燃焼及びクリンカ防止方法]
次に、このように構成された竪型ごみ焼却炉Bにおけるごみの燃焼状況と、冷却ジャケットCJによる焼却灰Aの冷却状況について説明する。
【0010】
ごみRは、投入ダンパCDの開閉により、所定の間隔で投入口CEから焼却炉本体MB内に投入される。竪型ごみ焼却炉Bの平常操業状態において、焼却炉本体MB内にはごみの燃焼状態により位置が移動するものの、上から火炎層t、ごみ層u、おき燃焼層y及び灰層zの順に各層が形成されている。投入されたごみRは、まず、ごみ層uに堆積されるとともに、下方のおき燃焼層yから上昇する熱分解ガスeの保有する熱と1次空気ノズルN1から供給される高温の1次空気aによって、プラスチック類や紙・繊維類等の高発熱量の易燃物が着火されてガス化燃焼し、水分の多いごみや難燃物は乾燥されるとともに炭化燃焼を続け、上述の易燃物とともに熱分解ガスeを発生させる。
【0011】
この高温の熱分解ガスeは、ごみ層u内を通過しながら上昇し、その熱で上部のごみRの乾燥・着火及びガス化を促進しながら火炎層tに到達したのち、複数の2次空気ノズルSNから火炎層t上方に供給される常温の2次空気sによって、未燃分が2次燃焼された燃焼ガスwとなる。さらに、排ガス混合手段GMの開口部を通って再燃焼室RCに流入し、未反応ガスや浮遊炭素粒子の完全焼却とダイオキシン類等有機化合物の熱分解及び燃焼が行われた排ガスgとなって、竪型ごみ焼却炉Bから排出される。
【0012】
おき燃焼層yでは、ごみ層uで燃焼できなかった未燃炭化物や難燃物に、下層の灰層zから上昇する熱気と、1次空気ノズルN2,N3からの高温の1次空気aの供給により、時間をかけておき燃焼がなされるとともに、この燃焼により熱分解ガスeを発生させる。
【0013】
灰層zでは、1次空気ノズルN3,N4から供給される高温の1次空気aにより、残留する未燃炭化物の燃焼が完結される。そして、燃焼完結後の焼却灰Aは、上述のごみ支持板RS,RSと焼却灰排出板OD,ODの開閉動作により、灰搬出装置AHに排出されるまで滞留される。
【0014】
なお、上述の1次空気aは、再燃焼室RC内に複数の伝熱管を並列配置して設けられた高温空気予熱器HPに、ごみピット周辺の空気を図示しない押込送風機から送入して昇温させたのち、ごみ質に応じて必要により常温空気を混合させ、温度調節して用いられる。
【0015】
ここで、漏斗部FPにおいて、下部耐火物LRの背面に配置された冷却ジャケットCJでは、上側の空冷ジャケットAJに冷却空気が送入されることにより、下部耐火物LR表面が徐冷されているため、ごみ層uと接する表面の温度が700℃程度以下に維持されており、ごみRの燃焼を阻害することなく、易燃物の部分燃焼によるクリンカの発生・溶着が防止されている。
【0016】
また、下側の水冷ジャケットWJには冷却水が送入されているため、おき燃焼層yに接する下部耐火物LRの表面温度は400〜500℃に抑えられており、ガラス類の溶融による溶着・固化が防止されている。
【特許文献1】特開2001−304519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、図7に示す従来の竪型ごみ焼却炉Bでは、冷却ジャケットCJの冷却効果は漏斗部FPだけに作用するため、ごみの焼却によって火炎層tの温度が過上昇した場合には、2次空気sの噴射量を増加させて冷却し、さらに不足の場合には、噴射水ノズルCNから火炎層tに向けて噴射水cを噴霧して、火炎層tの温度を安定させる制御操作を都度行う必要があり、燃焼熱の損失を招くだけでなく、冷却用の2次空気や蒸発水が加わることで排ガスgの発生量が増大するために、後続設備の機器容量を拡張する必要が生じていた。
【0018】
また、漏斗部FPでは、常時ごみRが下部耐火物LR表面に接触し移動しない状態のため、特に高発熱量物質を多く含み、設計発熱量が高い産業廃棄物等を焼却した場合に、高発熱量の易燃物の局部的燃焼による異常高温によりクリンカが形成されて耐火物に溶着・肥大化する事態を完全には防止できないという問題があった。
【0019】
さらに、従来、中小規模の焼却施設(処理日量100t程度迄)の設置計画では、設備の初期費用を考慮して、排ガスgの冷却設備に水噴射式のガス冷却塔が使用される場合が多かったものの、エネルギーの有効利用の観点から、最近では、この規模においても廃熱ボイラが選択される状況になりつつある。
【0020】
そこで、本発明は、冷却設備に廃熱ボイラを採用したときの竪型ごみ焼却炉のエネルギー効率の向上を図ると同時に、従来技術の問題点である燃焼熱の損失と排ガス量の増大を解消でき、さらに、クリンカ等の防止性能にも優れる、水管壁を備えた竪型ごみ焼却炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
請求項1に係る発明は、竪型の焼却炉の内壁をなす耐火物製の炉壁と、該炉壁に囲まれた焼却炉内を燃焼室と再燃焼室に区分するとともに、燃焼ガスを混合・攪拌させる耐火物製の排ガス混合手段と、前記焼却炉の底部に配置されて燃焼完結後の焼却灰を排出する焼却灰排出機構と、前記燃焼室側面の炉壁に接続された投入口とにより主体が構成される竪型ごみ焼却炉において、上記炉壁の外周面に複数本の水管を並列に配設固定した水管壁を設けたことを特徴とする。
【0022】
請求項2に係る発明は、前記水管壁の上下端に上部ヘッダと下部ヘッダを各々設けるとともに、上記投入口が接続される炉壁開口部の上方及び下方の高さ位置に、前記水管を分割・中継する1組の中間ヘッダを設けたことを特徴とする。
【0023】
請求項3に係る発明は、前記排ガス混合手段の内部に冷却体流路を設け、冷却用流体を循環させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
以上述べたように、本発明に係る水管壁を備えた竪型ごみ焼却炉によれば、炉壁の外周面に複数本の水管を並列に配設固定した水管壁を設けたことにより、炉内で発生した燃焼熱を効率的に回収しながらボイラ水を昇温できるだけでなく、炉壁全体が水冷されるため耐火物の寿命を延ばすことができるとともに、漏斗部におけるクリンカやガラス類の溶着・成長を防止できる。さらに、火炎層の温度の過上昇が抑制されるため、冷却用の空気や噴射水の供給を必要とせず、排ガス量が増加しないことから後続設備の小型化が可能となり、設備費が低減できる。
【0025】
また、該水管壁の上下端に上部ヘッダと下部ヘッダを各々設けるとともに、上記投入口が接続される炉壁開口部の上方及び下方の高さ位置に、前記水管を分割・中継する1組の中間ヘッダを設けたことにより、大型の投入口があっても無理なく水管壁を配設でき、水管の配置密度を略均一にして炉壁に温度むらを生じさせないといった優れた特徴を備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照して説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。また、背景技術で説明した図7と同一の装置や物質には、同一の符号を付し、詳細説明は省略する。
【0027】
図1は、本発明の実施形態にかかる水管壁を備えた竪型ごみ焼却炉の概略構造と燃焼状態を示す断面模式図、図2は、図1の竪型ごみ焼却炉及び水管壁を含む廃熱ボイラ全体を示す概略構成図、図3は、図1の竪型ごみ焼却炉の壁面構造を示す図1におけるI−I断
面図であり、図4は、図1の投入口付近の水管壁構造を示す概略構成図である。
【0028】
[以下、本発明の実施形態にかかる構造の説明]
図1において、1は、竪型ごみ焼却炉であって、該焼却炉1の内壁をなす耐火物製の炉壁2と、該炉壁2の外周面に設けられた水管壁3と、前記炉壁2の中間高さに配置された耐火物製の排ガス混合手段9と、該排ガス混合手段9の下方の炉壁2に空けられた開口部26に接続される投入口CEと、前記炉壁2の下部に連設される焼却灰排出機構ADとにより主体が構成されている。前記炉壁2で囲繞される炉本体は略円筒形状をなし、その下部には漏斗状に容積を絞られた漏斗部FPが形成されている。前記投入口CEは、炉壁2の開口部26に合わせて接続されており、上部に設けたダンパCDの開閉によりごみRが炉本体内に間欠投入されるようになっている。
【0029】
前記水管壁3の上端と下端には、各々上部ヘッダ4と下部ヘッダ5が配設されており、別置の汽水ドラム8と配管で接続された循環経路が構成されている。また、投入口CEが接続される前記炉壁2の開口部26の上方及び下方に位置する水管壁3には、上側の中間上部ヘッダ6と下側の中間下部ヘッダ7とからなる1組の中間ヘッダが、水管壁3を構成する後述の複数の水管21を上下に分割・中継するように配設されている。前記下部ヘッダ5から供給されるボイラ水が複数の水管21を上昇して上部ヘッダ4に至る経路に、このように中間へッダを設けることにより、上部・中間・下部の各ヘッダ間に配置される水管21の本数が任意に変更可能となる。
【0030】
前記排ガス混合手段9は、炉壁2で囲まれた炉本体の内部空間を下方の燃焼室11と上方の再燃焼室12に区分する、例えば、耐火物で構築された上段の円状体と下段の環状体を複数の支柱により上下連結して構築された構造体であり、前記環状体の外周は炉壁2に接続固定されている。また、排ガス混合手段9内には、内部を貫通する冷却体流路10が設けられており、前記汽水ドラム8との間にポンプ13が配置された循環流路が構成されている。このように排ガス混合手段9に、ボイラ水を循環させる水冷機構が採用されているため、燃焼室11上部の高温環境下において、耐火物の寿命を延ばすことができる。
【0031】
図2は、本実施形態における竪型ごみ焼却炉に設けられた水管壁を含む廃熱ボイラ全体の概略構成を示している。前記竪型ごみ焼却炉1に配設される水管壁3と、炉壁2上部に接続された煙道14と、連設するボイラ本体15と、ボイラ本体15内に設けられた水平伝熱管群からなる複数の蒸発管16、過熱器17、及び節炭器18とにより廃熱ボイラ20が構成されている。なお、19はボイラ本体の底部に配設されたダスト排出装置である。
【0032】
前記水管壁3の上部ヘッダ4及び下部ヘッダ5には、汽水ドラム8に配管接続された循環流路が構成されている(図1参照)。さらに、複数の蒸発管16、及び過熱器17と前記汽水ドラム8の間には、ボイラ水または蒸気の循環流路が各々設けられ、また、節炭器18には、図示しない給水装置からのボイラ水の供給路と、加熱後のボイラ水を汽水ドラム8に送入する予熱流路とが接続されている(図示省略)。上記の各流路構成によって、ボイラ水を効率的に加熱して蒸気化することにより、熱回収効率を高めている。
【0033】
[以下、本発明の実施形態にかかる運転状況の説明]
次に、本実施形態における水管壁を備えた竪型ごみ焼却炉の運転状況について、図1及び図2を用いて説明する。なお、平常操業状態において、竪型ごみ焼却炉1内に投入されたごみRの燃焼による火炎層t、ごみ層u、おき燃焼層yと灰層zの燃焼状態については、前述の背景技術と同様のため、詳細説明は省略する。
【0034】
竪型ごみ焼却炉1では従来技術と同様に、投入口CEから間欠投入したごみRを漏斗部FPに堆積させた状態で、予め温度調節された一次空気pを流量調節しながら一次空気ノズルN1〜N4から送入して燃焼させる。この1次空気pには、通常、臭気成分の多いごみピット周辺の常温空気を廃熱ボイラ20で発生させた蒸気により予熱したものが使用されている。
【0035】
平常操業状態では、ごみ質によっても異なるが、1次空気pの空気過剰率λ1 (=「1次空気供給量/理論空気量」)を概ね0.2〜0.9程度、好適には0.4〜0.5程度の低空気比で運転し、高発熱量ごみを抑制燃焼させながら、未燃炭化物を時間をかけておき燃焼させることにより完全焼却するとともに、低空気比燃焼によって多く発生する熱分解ガスeは、火炎層tの上方の炉壁2に設けられた複数の2次空気ノズルSNから、必要量の2次空気s(例えば、2次空気sの空気過剰率λ2 =1程度)を送入して2次燃焼させている。この2次燃焼により未燃分がほぼ燃焼された燃焼ガスwは、燃焼室11を上昇し、前記排ガス混合手段9の上下の構造体を連結する支柱間の隙間を旋回しながら通過して再燃焼室12に流入し、再燃焼室12の容積を有効に利用しながら再燃焼されることにより、ダイオキシン類の完全分解がなされた排ガスgとなって煙道14に排出される。
【0036】
さらに、煙道14を通った排ガスgは、ボイラ本体15を通過しながら、その内部に設けられた水平伝熱管群である蒸発管16、加熱器17、及び節炭器18で熱回収されて減温ガスhとなり、後続のバグフィルタ等の排ガス処理設備において、ばいじんや有害ガスの中和・濾過・吸収がなされて浄化処理される。
【0037】
竪型ごみ焼却炉1に設けられた水管壁3は、図3に示す壁面構造のとおり、耐火物製の炉壁2の背面に金属製のフィン22で連結された複数の水管21が配設された構造(施工用フック類は不図示)であり、他方の面には保温材23が配設されてケーシング24で覆われている。この複数の水管21内のボイラ水が炉内の燃焼熱の一部を吸収することにより、炉内温度の過上昇が抑制される。なお、この水管21を通るボイラ水の流量は、炉内温度が適正な範囲となるようにごみ質等を考慮して設定される。このように水管壁3を設けたことにより、火炎層tの温度が過上昇したときに、2次空気sを冷却用に追加供給する従来の制御操作が不要となるため、図7に示した従来技術に対して排ガスgの発生量が2〜3割程度低減されて、各設備の小型化が可能となる。さらに、通常運転時には、炉内冷却用の噴射水cを緊急時を除いて使用する必要も生じない。
【0038】
[以下、本発明の実施形態における細部の説明]
一方、図8は、図7に示す従来の竪型ごみ焼却炉Bにおける漏斗部FPの壁面構造を示し、下部耐火物LRの背面には、外側のケーシング24と内側ケーシング25からなる二重ケーシング製の冷却ジャケットCJ(空冷ジャケットAJまたは水冷ジャケットWJ)が配設されている。この冷却流体には空気または水が使用されており、冷却空気はジャケット冷却後に大気放出される一方、冷却水は図示しないクーリングタワーに返送・冷却されて循環使用される。
【0039】
これに対して、本実施形態における竪型ごみ焼却炉1は、上述の図3に示す壁面構造が炉壁2共通のものとして漏斗部FPにも適用されており、水管壁3を構成する複数の水管21内にボイラ水を循環させて余熱回収し、熱ロスをできるだけ少なくできる高効率の方式であるだけでなく、漏斗部FP全体が水冷とされて高い冷却効果を保つために、クリンカやガラス類の溶着対策上、顕著な効果が発揮される。
【0040】
次に、図4は、本実施形態にかかる投入口付近の水管壁構造を示す概略構成図であり、投入口CEが接続された炉壁2付近を投入口CE側から見たものである。但し、図3に示したフィン22、保温材23とケーシング24は除いて表示してある。図4において、炉壁2に設けられた開口部26の上方及び下方位置に、中間上部ヘッダ6と中間下部ヘッダ7が水平に配設されており、複数の水管21が上部ヘッダ4から中間上部ヘッダ6に、下部ヘッダ5から中間下部ヘッダ7にそれぞれ連結されている。中間上部ヘッダ6と中間下部ヘッダ7の間で、開口部26を介して対向する部分の水管21は取り除かれており、開口部26に近接する左右の水管21の幾本かは図のように屈曲させて配管している。
【0041】
このような構成を採ることにより、草木類などの嵩高の廃棄物や医療系廃棄物を入れた収納容器等を破砕しないで投入可能な大型の投入口CE(例えば、規模にもよるが開口部の横幅1.2m程度以上)を設ける場合であっても、水管21を過度に屈曲させずに炉壁2に取付けることができ、また、配管間隔のばらつきが少なくなることから壁面の温度むらを防止できる。なお、図4のように屈曲使用する水管21にはフィン22は設けていない。また、比較的大きめの開口部を必要とする炉内検視扉や着火バーナ等は、この中間ヘッダ間に設けると水管21の取合上有利である。
【0042】
[以下、他の実施形態等の説明]
図5及び図6は、本発明の他の実施形態にかかる水管壁を備えた竪型ごみ焼却炉と廃熱ボイラ全体を示す概略構成図である。図5の実施形態では、図2に対して上部の煙道14を水平煙道とし、水管壁3の上部ヘッダ4の位置を下げて再燃焼室12の容積を減少させた構成となっている。この実施形態では、排ガスgの流れが悪くなる反面、竪型ごみ焼却炉1内の熱効率が向上するという利点があり、また、煙道14の容積の一部を再燃焼室として利用できるため、炉高が抑えられて設備費が低減できる。さらに、投入口CE側に寄って堆積する傾向がある投入ごみRの偏りが緩和されるように、漏斗部FPの上部形状を円錐形でなく、投入口CE側をほぼ垂直に形成した偏心円錐形としている。
【0043】
さらに、図6の実施形態では、竪型ごみ焼却炉1の水管壁3が、投入口CEが配置される中間下部ヘッダ7から中間上部ヘッダ6間の炉壁2では除かれるとともに、ボイラ水を上昇させる連結管27が、中間下部ヘッダ7と中間上部ヘッダ6を連結して1本または複数本設けられている。また、上部ヘッダ4の位置は煙道の一部まで延長されており、熱効率が高められている。ボイラ本体15の前半部は、上部に加熱器16が配置されるとともに、ボイラ輻射壁上部ヘッダ29とボイラ輻射壁下部ヘッダ30の間に水管壁が設けられた構造であり、この輻射壁を通過して減温された減温ガスh’は、図示しない後半部の水平伝熱管群からなる蒸発管と節炭器により熱回収される。また、28は、水管壁を備えた煙道同士をつなぐ煙道接続部である。
【0044】
なお、上記の本発明にかかる実施形態において、炉本体を略円筒形状と説明したが、これに限らず角型等の他形状でも良く、焼却灰排出機構AD並びに排ガス混合手段9は目的を達するものであれば、その構造を限定するものではない。また、排ガス混合手段9の冷却体流路10には、汽水ドラム8との間に循環流路を設けたと説明したが、これに限らず循環流路は独立に設けても良い。また、中間上部ヘッダ6及び中間下部ヘッダ7の間に、連結管27を設けて中継させる代わりに、汽水ドラム8を経由して中継させる中間流路を設けるよう構成しても良い。さらに、炉壁2をなす耐火物の材質・厚さ等は、各部位において適宜選択がなされるものであり、蒸発管16及び過熱器17の配置や数量は、ごみ質や規模等の設計条件に応じて適宜選択可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態にかかる水管壁を備えた竪型ごみ焼却炉の概略構造と燃焼状態を示す断面模式図である。
【図2】図1の竪型ごみ焼却炉及び水管壁を含む廃熱ボイラ全体を示す概略構成図である。
【図3】図1の竪型ごみ焼却炉の壁面構造を示す図1におけるI−I断面図である。
【図4】図1の投入口付近の水管壁構造を示す概略構成図である。
【図5】本発明の他の実施形態にかかる水管壁を備えた竪型ごみ焼却炉と廃熱ボイラ全体を示す概略構成図である。
【図6】同じく本発明の他の実施形態にかかる水管壁を備えた竪型ごみ焼却炉と廃熱ボイラ全体を示す概略構成図である。
【図7】従来の竪型ごみ焼却炉の概略構造と燃焼状態を示す模式図である。
【図8】図7の竪型ごみ焼却炉の漏斗部壁面構造を示す図7におけるI′−I′断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 竪型ごみ焼却炉
2 炉壁
3 水管壁
4 上部ヘッダ
5 下部ヘッダ
6 中間上部ヘッダ
7 中間下部ヘッダ
8 汽水ドラム
9 排ガス混合手段
10 冷却体流路
11 燃焼室
12 再燃焼室
26 開口部
AD 焼却灰排出機構
CE 投入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
竪型の焼却炉の内壁をなす耐火物製の炉壁と、該炉壁に囲まれた焼却炉内を燃焼室と再燃焼室に区分するとともに、燃焼ガスを混合・攪拌させる耐火物製の排ガス混合手段と、前記焼却炉の底部に配置されて燃焼完結後の焼却灰を排出する焼却灰排出機構と、前記燃焼室側面の炉壁に接続された投入口とにより主体が構成される竪型ごみ焼却炉において、
上記炉壁の外周面に複数本の水管を並列に配設固定した水管壁を設けたことを特徴とする水管壁を備えた竪型ごみ焼却炉。
【請求項2】
前記水管壁の上下端に上部ヘッダと下部ヘッダを各々設けるとともに、上記投入口が接続される炉壁開口部の上方及び下方の高さ位置に、前記水管を分割・中継する1組の中間ヘッダを設けたことを特徴とする請求項1に記載の水管壁を備えた竪型ごみ焼却炉。
【請求項3】
前記排ガス混合手段の内部に冷却体流路を設け、冷却用流体を循環させることを特徴とする請求項1又は2に記載の水管壁を備えた竪型ごみ焼却炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−57113(P2007−57113A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−239831(P2005−239831)
【出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【出願人】(000136804)株式会社プランテック (11)
【Fターム(参考)】