説明

水系反応性樹脂

【課題】 本発明は、従来の水系反応性樹脂と比較して、経時的により安定な水系反応性樹脂、具体的には接着強度及び耐水性の両方の初期状態からの低下がより少なく、接着強度及び耐水性が初期状態のまま維持される水系反応性樹脂、その水系反応性樹脂を含んで成る接着剤、その接着剤を用いて得られる接着フィルム、その接着フィルムとガラス基材又はプラスチック基材との積層品を提供する。
【解決手段】(A)有機ポリイソシアネート成分と、(B)50℃で溶融状態であるポリオール成分と、(C)分子内に少なくとも一つの活性水素及び加水分解性シリル基を有する化合物とを反応させることで得られ、架橋構造を形成し得る反応性シリル基を、「Si」として、固形分を基準として0.1〜0.4重量%含有し、(A)に対する(B)の重量比((B)/(A))が2.0以上であることを特徴とする水系反応性樹脂である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期保存しても接着力の低下が少ない接着フィルム、塗工することで該接着フィルムを作製するための水系反応性樹脂、及び接着フィルムが貼り付けられた積層品、特にガラス/接着フィルム積層品に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基材の飛散防止やプラスチック基材の損傷を防止するためにポリウレタン製フィルムをガラス基材又はプラスチック基材上に接着剤を介して積層することや、ポリウレタン樹脂そのものを、直接、ガラス基材又はプラスチック基材上に塗工してポリウレタン樹脂フィルムを形成すること等が検討されている。また、ガラス基材等とポリウレタン樹脂フィルムとの接着性を向上するために、シラン化合物をポリウレタン樹脂フィルム内に組み込むこと、又はポリウレタン樹脂フィルムに混合することも行われている。
【0003】
例えば、特許文献1は、水性ウレタン樹脂とエポキシ含有シラン化合物を含む接着組成物を、可撓性を有するプラスチック、金属又はセラミックス等の支持部材表面に、膜状に積層させたガラス用接着フィルムを開示する。
特許文献2は、ガラス基材と樹脂フィルムがシランカップリング剤層を介して接着されて成る積層ガラスを開示する。
【0004】
特許文献3は、反応性ポリウレタン水性エマルジョンを、透明基材に塗工し、加熱してウレタン化反応を完結させることで、ウレタン樹脂フィルムによって透明基材が被覆された積層体の製造方法を開示する。
【0005】
しかしながら、特許文献1、2では、シラン化合物を用いてフィルムと基材とを接着することから、接着フィルムを直ぐにガラス基材に貼り付けないと接着性能を維持できず、接着フィルムの強度も経時的に低下する傾向がある。更に、得られたガラス/接着フィルム積層品は、耐水性が不十分であり、水がかかる環境下で使用する場合、長期間の使用に耐えられず、基材からフィルムが剥離することもある。
【0006】
特許文献3のウレタンエマルジョンは、界面活性剤を必須成分とするので、接着強度が十分ではない。更に、ウレタンエマルジョンからウレタンフィルムを基材上に生成するためには、反応性が弱いブロック化イソシアネートをポリオール成分と反応させなければならないので、高温で長時間(120℃で4時間)加熱することが必要である(特許文献3段落番号0036参照)。
【0007】
出願人は、末端NCO含有ウレタンプレポリマーとシラン化合物とを反応させて得られる水系反応性樹脂の特許を有している(特許文献4参照)。特許文献4に係る水系反応性樹脂は、ウレタン樹脂であり種々の用途に利用することは可能であるが、元来、水系塗料原料として開発されたものであり、ガラス基材と樹脂フィルム等を接着するための接着フィルムとして使用するためには、検討する余地が残されている。
【0008】
【特許文献1】特開2004−91682号
【特許文献2】特開平7−205374号
【特許文献3】特開平7−108664号
【特許文献4】特許第3618882号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来の水系反応性樹脂と比較して、経時的により安定な水系反応性樹脂、具体的には接着強度及び耐水性の両方の初期状態からの低下がより少なく、接着強度及び耐水性が初期状態のまま維持される水系反応性樹脂、その水系反応性樹脂を含んで成る接着剤、その接着剤を用いて得られる接着フィルム、その接着フィルムとガラス基材又はプラスチック基材との積層品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上述の課題を解決するために、鋭意検討した結果、Siで架橋したウレタン樹脂に着目し、該樹脂の架橋密度を特定範囲にし、樹脂原料であるポリオール成分を動きやすくすれば、樹脂の接着強度、耐水性の両方の物性を初期状態により維持し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、本発明は、一の要旨において、
(A)有機ポリイソシアネート成分と、(B)50℃で溶融状態であるポリオール成分と、(C)分子内に少なくとも一つの活性水素及び加水分解性シリル基を有する化合物とを反応させることで得られる水系反応性樹脂であって、
架橋構造を形成し得る反応性シリル基を、「Si」として、固形分を基準として0.1〜0.4重量%含有し、
(A)に対する(B)の重量比((B)/(A))が2.0以上であることを特徴とする水系反応性樹脂を提供する。
【0012】
本発明では、水系反応性樹脂原料として、「(B)50℃で溶融状態のポリオール成分」を使用する。その融点はさほど高くないので、樹脂中の(B)ポリオール成分に由来する部分は流動性が比較的高く動きやすい。従って、水系反応性樹脂は、樹脂フィルムとガラス基材等の間の接着に使用する接着フィルムとして用いる場合、特に高い温度で加熱しなくとも容易に溶融し、基材表面に均一に塗工(又は塗布)することができるので、接着強度も高くなると考えられる。
【0013】
更に、本発明では、架橋構造を形成し得る反応性シリル基は、「Si」として、水系反応性樹脂に固形分を基準として0.1〜0.4重量%含有される。樹脂中の架橋密度が高すぎることも、低すぎることもなく、一定範囲に維持されることで、上述の(B)ポリオール成分に由来する流動性も保たれ、得られる接着フィルムの初期状態における接着強度、耐水性が長期にわたって高いまま維持され得ると考えられる。架橋構造を形成し得る反応性シリル基が、「Si」として、水系反応性樹脂に固形分を基準として0.1重量%未満含有される場合、接着強度及び耐水性の両方が優れた樹脂が得られるが、Si架橋密度が低いため樹脂中に水を多く取り込み易くなり、初期状態の優れた耐水性が維持されない。また、架橋構造を形成し得る反応性シリル基が、「Si」として、水系反応性樹脂に固形分を基準として0.4重量%を超えると、架橋密度が高くなりすぎ、上述の(B)ポリオール成分に由来する流動性も低下し、接着強度、耐水性が初期段階から乏しいものとなり、得られる接着フィルムの基材への接着性も低下する。
【0014】
また、本発明では、(B)/(A)が2.0以上であるので、(B)50℃で溶融状態のポリオール成分の含量が多くなる。従って、本発明の水系反応性樹脂は、接着フィルムとしてガラス基材等と樹脂フィルム等との接着に使用する場合、特に高い温度に加熱しなくとも溶融し易く、接着強度に優れたものとなり、基材への塗工性も良くなり、そのことから接着強度も、高いものとなる。
一方、(B)/(A)が2.0未満の場合、樹脂の接着強度、耐水性が初期段階から低くなり得る。
【0015】
本発明の一の要旨における一つの態様として、
(A)、(B)、(C)成分と、さらに、(D)分子内に少なくとも一つの活性水素及びアニオン基を有する化合物とを反応させることで得られ、
アニオン基を、固形分を基準として0.01〜1.1meq/g含有する水系反応性樹脂を提供する。
アニオン基を0.01〜1.1meq/g含有することで、樹脂の初期状態における接着強度、耐水性がさらに向上する。
【0016】
本発明の一の要旨における別の態様として、
(A)有機ポリイソシアネート成分と、(B)ポリオール成分と、(C)分子内に少なくとも一つの活性水素及び加水分解性シリル基を有する化合物と、(D)分子内に少なくとも一つの活性水素及びアニオン基を有する化合物とを反応させてウレタンプレポリマーを得、
該ウレタンプレポリマーを、鎖長延長反応させることで得られる水系反応性樹脂を提供する。
(A)〜(D)成分の反応によって得られたウレタンプレポリマーを鎖長延長すると、樹脂の初期状態における接着強度、耐水性がさらに向上する。
【0017】
本発明の他の要旨は、上述の水系反応性樹脂を含む接着剤を提供する。本発明に係る接着剤は、経時安定性に優れた上述の水系反応性樹脂を含むので、耐水性、接着強度が初期状態から、低下し難い。
【0018】
本発明の好ましい要旨は、上述の接着剤から得られた接着フィルムを提供する。接着フィルムの耐水性、接着強度についても、上述の水系反応性樹脂、接着剤と同様、経時安定性に優れるので、基材に積層されたとしても剥がれ難く、長期間の使用に耐えることが可能である。
【0019】
本発明の更に別の要旨は、上述の接着フィルムが基材に積層された積層品を提供する。本発明に係る積層品は、経時安定性に優れた接着フィルムが積層されているので、長期間使用されても、接着フィルムが基材から剥離し難く、さらに屋外で雨や水飛沫にさらされても、強いものとなる。
【0020】
本発明における更に別の要旨の一の態様は、接着フィルムの基材への積層温度が50℃以上である上記積層品を提供する。貼り付け温度が50℃以上の場合、接着フィルムが溶融状態となり、基材に対して均一な貼り付けが可能となる。
本発明における更に別の要旨の別の態様として、基材はガラス又はプラスチックである上述の積層品を提供する。ガラス及びプラスチックは種々の用途に利用される基材である。従って、ガラス基材及びプラスチック基材と接着フィルムとの積層品は、多くの分野で幅広く利用することが可能である。
【0021】
尚、本明細書において「水系」とは、樹脂が水性媒体中に存在している状態を意味し、これは樹脂が水性媒体に溶解している状態及び/又は溶解していない状態を意味する。
さらにまた、本発明において「水性媒体」とは、水道水、蒸留水又はイオン交換水等の一般的な水をいうが、水溶性又は水に分散可能な有機溶剤であって、単量体等の本発明に関する樹脂の原料と反応性の乏しい有機溶剤、例えば、アセトン、酢酸エチル等を含んでもよく、さらに水溶性又は水に分散可能な単量体、オリゴマー、プレポリマー及び/又は樹脂等を含んでもよく、また後述するように水系の樹脂又は水溶性樹脂を製造する際に通常使用される、乳化剤、重合性乳化剤、重合反応開始剤、鎖延長剤及び/又は各種添加剤等を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、
(A)有機ポリイソシアネート成分と、(B)50℃で溶融状態であるポリオール成分と、(C)分子内に少なくとも一つの活性水素及び加水分解性シリル基を有する化合物とを反応させることで得られる水系反応性樹脂であって、
架橋構造を形成し得る反応性シリル基を、「Si」として、固形分を基準として0.1〜0.4重量%含有し、
(A)に対する(B)の重量比((B)/(A))が2.0以上であることを特徴とする水系反応性樹脂を提供する。
上記したように、本発明に係る水系反応性樹脂は、従来の水系反応性樹脂と比較して、初期状態における接着強度及び耐水性からの低下がより少なく、経時安定性に優れ、長期間、接着強度及び耐水性を高いレベルで維持できる。
【0023】
本発明に係る接着剤は、上述の水系反応性樹脂を含むので、初期状態における接着強度及び耐水性からの低下がより少なく、経時安定性に優れ、長期間、接着強度及び耐水性を高いレベルで維持できる。
【0024】
本発明に係る接着フィルムは、上述の接着剤から得られたフィルムであり、より具体的には乾燥されてフィルム状になったものであるから、接着剤と同様、接着強度、耐水性、経時安定性が優れる。(B)50℃で溶融状態のポリオール成分を含んでいるため、基材と積層する際、さほど強い加熱は必要ない。加熱温度が50℃を超えれば、接着フィルムは溶融状態となり得、基材への均一な積層が可能となる。
【0025】
本発明に係る積層品は、上述の接着フィルムが基材に積層されたものである。接着フィルムの耐水性、強度、経時安定性が優れるため、積層品を屋外に設置しても、雨、水飛沫によって接着フィルムが基材から剥離し難い。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明において、「(A)有機ポリイソシアネート成分」は、一般にウレタン樹脂の製造に使用されるものを使用することができ、本発明が目的とする水系反応性樹脂を得ることができる限り、特に制限されるものではない。その具体例としては、エチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及び1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類;水素添加4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート及びイソフォロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート及びナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートを例示できる。これらのうち、経時的変色性を考慮すべき用途に使用する場合、脂肪族及び/又は脂環式ジイソシアネートを単独で又は混合して使用することが好ましく、さらに価格を考慮すると、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート及び/又はイソフォロンジイソシアネートを使用することが特に好ましい。
【0027】
本発明では、「(B)50℃で溶融状態であるポリオール成分」とは、50℃以上の温度で結晶状態ではないポリオール成分を意味し、より具体的には、非晶質ポリオール成分(融点が不明確であり、原則、溶融状態なポリオール)及び融点が50℃未満の結晶性ポリオール成分を意味する。従って、「50℃で溶融状態」とは、50℃で溶融し始めるという意味ではなく、50℃で溶融状態にあることを意味し、50℃より低い温度で溶融状態であることも含む。従って、「溶融」とは、より具体的には固相にある物質が熱せられてガラス相又は液相になる変化、いわゆる、融解を意味する。
このようなポリオール成分の50℃での状態が溶融状態であるか否かは、融点を測定することで判断する。融点は、示差走査熱量測定(DSC)を、SIIナノテクノロジー社製DSC6220(商品名)を用い、アルミ容器に試料を10mg秤量し、昇温速度10℃/minで測定し、融解ピークの頂点を融点とした。50℃以上で融点を得られなかった場合、「(B)50℃で溶融状態であるポリオール成分」であると判断する。
【0028】
このような(B)ポリオール成分として、i)ポリエステルポリオール、ii)ポリエーテルポリオール、iii)ポリカーボネートポリオール等を例示できる。
i)〜iii)のポリオールは、重量平均分子量が5000以下、特に3000以下であることが好ましく、2500以下であることが最も望ましい。重量平均分子量が5000を超えると、(A)成分、(C)成分、(D)成分と反応させて得られるウレタンプレポリマーの分子量が高くなりすぎ、このウレタンプレポリマーを水に分散させるのが困難となる。尚、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した。測定条件は下記の通りである。硬質球状多孔性ポリスチレン−ジビニルベンゼン系ゲルを充填したカラム(例えば、昭和電工(株)製Shodex(登録商標)LF−804(商品名))を使用し、移動相にはTHFを用いた。検出器としてRIを使用し、標準物質として単分散分子量のポリスチレンを用いた検量線による分子量換算で、重量平均分子量を求めた。
【0029】
i)ポリエステルポリオールは、カルボン酸と多価アルコールとを反応させて得ることができる。
カルボン酸としてはアジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が挙げられ、多価アルコールとしてはエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールが挙げられる。
【0030】
50℃で溶融状態のポリエステルポリオールとして、「融点が50℃未満の結晶性ポリエステルポリオール」を例示できる。
結晶性ポリエステルポリオールの融点は、カルボン酸と多価アルコールの組み合わせで決まり、一般的に、直鎖状カルボン酸と直鎖状多価アルコールとを反応させると、その融点を設計しやすい。融点が50℃未満の結晶性ポリエステルポリオールが得られる、直鎖状のカルボン酸と直鎖状多価アルコールとの好ましい組み合わせを以下に例示する:
アジピン酸と1,3−プロパンジオール、アジピン酸と1,5−ペンタンジオール;
セバシン酸と1,3−プロパンジオール。
上記組み合わせでは、得られた結晶性ポリエステルポリオールは、融点が50℃未満となり、50℃で溶融状態となる。上記組合せでは、多価アルコールの炭素数が奇数であるため、多価アルコール部分で屈曲構造を生じ得、ポリエステルポリオール構造に立体障害を生じ得ることで融点が低下し得ると考えられる。尚、カルボン酸と多価アルコールとの組み合わせは上記に限定するものではなく、結晶性ポリエステルポリオールの融点が50℃未満となるカルボン酸と多価アルコールの組み合わせであれば差支えない。
【0031】
「融点50℃未満の結晶性ポリエステルポリオール」は、「嵩高い構造(又は屈曲構造)を有するカルボン酸」を用いて、ポリエステルポリオールの構造に立体障害を生じさせることで得られることがある。例えば、1,4−ブタンジオールや1,6−ヘキサンジオールは、アジピン酸やセバシン酸と反応させると、生成する結晶性ポリエステルポリオールの融点が50℃を超えるので、「融点50℃未満の結晶性ポリエステルポリオール」を得ることができない。嵩高い構造(又は屈曲構造)を有するカルボン酸として、o−フタル酸を用い、1,4−ブタンジオールや1,6−ヘキサンジオールと反応させると、融点が50℃未満の結晶性ポリエステルポリオールが得られる。具体例として、以下に記載したカルボン酸と多価アルコールの組み合わせで得られた結晶性ポエステルポリオールは、融点が50℃未満となる:
o−フタル酸と1,4−ブタンジオール、o−フタル酸と1,5−ペンタンジオール、o−フタル酸と1,6−ヘキサンジオール、無水フタル酸と1,4−ブタンジオール、無水フタル酸と1,5−ペンタンジオール、無水フタル酸と1,6−ヘキサンジオール。
【0032】
ポリエステルポリオールの構造に立体障害を持たせる別の方法として、「屈曲構造と嵩高い構造を有する多価アルコール」を配合することで、得られる結晶性ポリエステルポリオールの融点を低くすることができる。
「屈曲構造と嵩高い構造を有する多価アルコール」としては、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。これらは、炭素鎖中に、メチル基、エチル基及びシクロヘキシレン等の炭化水素基を有し、これらの基が嵩高い構造となってポリエステルポリオール構造に立体障害を生じさせると考えられる。
【0033】
融点を下げる多価アルコールの組合せの一例としては、アジピン酸と1,6−ヘキサンジオールとから得られた結晶性ポリオールの融点は50℃を超えるが(約56℃)、アジピン酸/1,6−ヘキサンジオール/ネオペンチルグリコール=3/1/2(モル比)となるように配合すれば、生成物である結晶性ポリエステルポリオールは融点が35℃となる。従って、上記結晶性ポリエステルポリオールは、50℃で溶融状態となる。
【0034】
カルボン酸と「嵩高い構造の多価アルコール」との2成分のみを組み合わせることで、非晶性ポリエステルポリオールを生成しても良い。非晶性ポリエステルポリオールは、融点を有さないので、原則として、温度に関わらず、溶融状態であるといえる。
具体例として、多価アルコールとしてネオペンチルグリコールを用いた場合、ネオペンチルグリコールと組み合わせるカルボン酸はアジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸のいずれでも良く、これらのカルボン酸とネオペンチルグリコールとの組み合わせから非晶性ポリエステルポリオールを製造することができる。
【0035】
ii)ポリエーテルポリオールとして、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、重量平均分子量1500以下のポリエチレングリコール;
ビスフェノールAにプロピレンオキサイド又はエチレンオキサイドの少なくとも一方を開環付加重合させたもの(共重合体の場合は、ブロック共重合体、ランダム共重合体のいずれでもよい。);
等を例示できる。
【0036】
iii)ポリカーボネートポリオールとして、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレン)カーボネートポリオールを例示できる。
ポリオールとして、これら以外にも、ポリアクリル酸エステル系ポリオールを単独で、又は混合して使用することができる。
【0037】
後述する(A)、(B)、(C)及び場合により(D)成分を反応させる際に、(A)に対する(B)の重量比((B)/(A))は、2.0以上である。((B)/(A))は、2〜5であることが好ましく、2〜4であることがより好ましく、2〜3.5であることが特に好ましい。
【0038】
本発明における「(C)分子内に少なくとも一つの活性水素および加水分解性シリル基を有する化合物」とは、分子内に少なくとも一つの活性水素を含有する官能基及び加水分解性シリル基を有する化合物であって、目的とする水系反応性樹脂を得ることができるものであれば、特に限定されるものではない。
「活性水素を含有する官能基」として、例えば、水酸基、アミノ基及びチオール基を例示できる。
【0039】
「加水分解性シリル基」とは、加水分解することによってケイ素に結合するヒドロキシル基(Si−OH)を与えるケイ素含有の官能基をいう。
「加水分解性シリル基」として、より具体的には、例えば、
式(I):−Si(X)(Y)3−a
[Yは、−OCHもしくは−OC又は−O(CH−O(CH−H(但し、n、pは、1から3の整数)、
Xは、−(CH−H(但し、qは、0から3の整数)、
aは、0から2の整数である。]
で示される官能基を例示することができる。
また、「ヒドロキシシリル基」とは、−Si−(OH)、−Si(X)−(OH)、−Si(X)−(OH)を示す。尚、Xは、−(CH−H(但し、qは、0から3の整数)又はHである。
【0040】
「加水分解性シリル基」は、アルコキシシリル基であることが望ましく、モノ−、ジ−、トリ−アルコキシシリル基のいずれであってもよい。「アルコキシシリル基」として、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基、ジエトキシシリル基、モノエトキシシリル基、及びモノメトキシシリル基等のアルコキシシリル基を例示でき、特に、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、ジメトキシシリル基、及びジエトキシシリル基が好ましい。
これらの加水分解性シリル基、好ましくはアルコキシシリル基は、(A)水系反応性樹脂に含有され、水性媒体中で、一般的に水と反応してヒドロキシシリル基となる。その生成したヒドロキシシリル基同士が結合して、シロキサン結合を形成することで、(A)水系反応性樹脂に架橋構造を形成すると考えられる。
【0041】
(C)分子内に少なくとも一つの活性水素および加水分解性シリル基を有する化合物として具体的には、例えば、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等を例示できる。
本発明においては、これらを単独又はそれらの2種以上を組み合わせて使用することが可能であるが、トリアルコキシシリル基を有する化合物がより好ましく、アミノトリアルコキシシランであるγ-アミノプロピルトリエトキシシランが特に好ましい。
【0042】
(C)分子内に少なくとも一つの活性水素および加水分解性シリル基を有する化合物は、加水分解性シリル基が、「Si」として水系反応性脂固形分100g当たり100mg(0.1重量%)〜400mg(0.4重量%)になるよう使用する。架橋構造の効果が十分に現れるように、加水分解性シリル基が「Si」として水系反応性樹脂固形分100g当たり、100mg(0.1重量%)〜300mg(0.3重量%)とすることが最も好ましい。
【0043】
加水分解性シリル基が「Si」として、水系反応性樹脂固形分100g当たり100mg(0.1重量%)より少ない場合は、接着強度及び耐水性に優れた樹脂が得られるが、樹脂中にSi架橋が少ないので、水を樹脂中に取り込み易く、優れた耐水性を長期にわたって維持できない。また、加水分解性シリル基が「Si」として、水系反応性樹脂固形分中で400mg(0.4重量%)を越えると、架橋密度が高くなりすぎて(B)ポリオール成分が樹脂中で動き難くなり、水系反応性樹脂から得られた接着フィルムを基材に貼り付ける際、長時間の加熱が必要となる。
【0044】
本発明における「(D)分子内に少なくとも1個の活性水素とアニオン基を有する化合物」とは、分子内に少なくとも一つの活性水素を有する官能基(例えば、水酸基、アミノ基及びチオール基等)と後述するアニオン基を含有する化合物であって、本発明が目的とする水系反応性樹脂を得ることができるものであれば特に限定されるものではない。
【0045】
本明細書において「アニオン基」として、「負電荷を有する官能基」、「負電荷が対カチオンによって電気的に中和されている官能基」及び「水中で水素イオンを放出して負電荷を有する官能基を形成し得る官能基」を例示することができる。
【0046】
「負電荷を有する官能基」及び「負電荷が対カチオンによって電気的に中和されている官能基」として、例えば、カルボン酸塩基(−COO及び−COOM1)、スルホン酸塩基(−SO及びスルホン酸基(又はスルホ基)(−SOH))、及びリン酸塩基(−PO、−PO2−及び−POM3M4)等を例示できる[但し、M1、M2、M3、及びM4は、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニウムである(尚、M3及びM4は、いずれか一方が水素であってもよい。また、アンモニウムには、いわゆるアンモニウムNHの他に、トリエチルアミン等の有機アミンに基づくアンモニウムが含まれる)]。
【0047】
更に「水中で水素イオンを放出して負電荷を有する官能基を形成し得る官能基」として、例えば、カルボキシル基(−COOH)、スルホン酸基(又はスルホ基)(−SOH)、及びリン酸基(−PO)等を例示できる。
これらの官能基は、各官能基の周囲の状態、例えば、pH等を変えることによって、容易に相互に変換可能であることはいうまでもない。本発明における「アニオン基」に関しては、水系反応性樹脂の特性に応じて、これらの官能基を単独で又はそれらを2種以上組み合わせて用いることができる。
【0048】
得られる水系反応性樹脂の水溶液又は分散液の安定性及び水系反応性樹脂から形成される皮膜の着色性等の観点から、アニオン基としてカルボキシル基(COOH)及びスルホン酸基(−SOH)が好ましく、塩基で中和されたカルボキシル基及びスルホン酸基、即ち、カルボン酸塩基(−COOM1)及びスルホン酸塩基(−SOM2)も好ましく、カルボキシル基とカルボン酸塩基との組合せ及びスルホン酸基とスルホン酸塩基との組合せも好ましい。
【0049】
そのような化合物として、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、カルボキシル基含有ポリカプロラクトンジオール、硫酸塩含有ポリエステルポリオール及びジ(β−ヒドロキシエチル)イソフタル酸−5−スルホン酸等を例示できる。ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸が特に好ましい。
【0050】
アニオン基は、水系反応性樹脂の固形分を基準として、水系反応性樹脂中に0.01〜1.1meq/g含有されていることが好ましく、0.2〜0.6meq/g含有されていることがより好ましく、0.2〜0.4meq/g含有されていることが最も好ましい。
「meq/g」とは、水系反応性樹脂固形分1g当たりに含まれるアニオン基のミリモル数を示す。アニオン基が0.01meq/gより少ないと、(A)水系反応性樹脂の粒子径が大きくなり得、著しく不安定な分散液となり得るので、水系反応性樹脂として、不十分と成り得る。1.1meq/gを超えると、水系反応性樹脂の親水性が高くなりすぎるので、形成される皮膜の耐水性の低下、樹脂水溶液(分散液)の粘度上昇等の問題を生じ得る。
【0051】
なお、アニオン基の含有量は、ポリオール成分等の親水性とのバランスを考慮して決定される。例えば、ポリオールとしてポリオキシエチレングリコールを使用すると、これ自体が親水性を有しているため、官能基の含有量は低く設定すべきであるが、ポリオールとして疎水性のものを使用すると高く設定する必要がある。
【0052】
本発明に係る水系反応性樹脂は、「(A)有機ポリイソシアネート成分」と、「(B)50℃で溶融状態であるポリオール成分」、「(C)分子内に少なくとも一つの活性水素及びアニオン基を有する化合物」及び「(D)分子内に少なくとも一つの活性水素及び加水分解性シリル基を有する化合物」を反応させてウレタンプレポリマーを得ることができ、このウレタンプレポリマーを水系反応性樹脂としてよいが、
必要に応じて、更に該ウレタンプレポリマーを、鎖長延長反応させて得て得られる樹脂を水系反応性樹脂としてもよい。
【0053】
「ウレタンプレポリマー」は、「(A)有機ポリイソシアネート成分」と、「(B)ポリオール成分」及び「(D)分子内に少なくとも一つの活性水素及びアニオン基を有する化合物」を、NCO過剰の状態で反応させ、次に得られた末端NCO含有ウレタンプレポリマーのNCOの一部或いは全部を、「(C)分子内に少なくとも一つの活性水素及び加水分解性シリル基を有する化合物」と反応させて、得ることが好ましい。
【0054】
得られた「ウレタンプレポリマー」は、水(純水あるいは塩基性化合物を含んだ水溶液)中に溶解又は分散して、鎖長延長反応させることが好ましい。必要に応じて分子内に少なくとも2個の活性水素を有する低分子化合物よりなる鎖延長剤を用いてもよい。
【0055】
鎖延長剤を使用しないで、NCOが残存した状態でウレタンプレポリマーを水に分散、あるいは溶解すると、水が鎖延長剤として作用し得る。ウレタンプレポリマーはカルボキシル基(−COOH)、スルホン酸基(−SOH)及びリン酸基(−PO)等を有し得るが、塩基性化合物によってカルボキシル基(−COOH)、スルホン酸基(−SOH)及びリン酸基(−PO)がアニオン(−COO−)、(−SO)及び(−PO)に成るので、たとえ鎖長延長してプレポリマーをポリウレタンにして高分子量化したとしてもても水に分散しやすいものと成り得る。
【0056】
「塩基性化合物」として、例えばトリエチルアミン、トリエタノールアミン、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を使用することができる。塩基性化合物を用いる際に、水系反応性樹脂の水溶液あるいは水系反応性樹脂分散液のpHが6〜10になる様に塩基性化合物の量を決定することが好ましい。pHが6未満となる場合、水系反応性樹脂水溶液あるいは水系反応性樹脂分散液の安定性が不十分と成り得る。一方、pHが10を超える場合、水系反応性樹脂水溶液あるいは水系反応性樹脂分散液の安定性は良好であるが、水系反応性樹脂が加水分解される可能性があり得、更に水系反応性樹脂の側鎖および、あるいは末端に組み込まれた加水分解性シリル基が水性媒体中で、互いに反応し得るので、保存安定性に問題が生じ得る。
【0057】
上述の水系反応性樹脂の溶液あるいは分散液において、固形分濃度は25〜50重量%であることが好ましく、30〜45重量%であることがより好ましく、30〜40重量%であることが特に好ましい。ここで、固形分濃度とは、加熱前の樹脂溶液あるいは樹脂分散液の重量を基準として、105℃のオーブン内で3時間加熱後の重量百分率をいう。
【0058】
本発明に係る水系反応性樹脂は、粘度が10〜500mPa・sであることが好ましく、10〜200mPa・sであることがより好ましく、10〜100mPa・sであることが特に好ましい。ここで、粘度とは、BM粘度計を用いてローターNo.1〜3を用いて30℃で、60rpmで測定した値をいう。
【0059】
水系反応性樹脂の粒子径は、50〜200nmであることが好ましく、50〜180nmであることがより好ましく、60〜170nmであることが特に好ましい。ここで、粒子径とは、上述したように動的光散乱法で測定し、キュラント法により解析して得た、エマルジョンの平均粒子径をいう。
【0060】
本発明に係る接着剤は、上述の水系反応性樹脂を含んで成る。水系反応性樹脂のみで各種添加剤を入れなくても、接着剤として機能し得るが、必要に応じて、一般的なウレタン樹脂を合成する際に添加される酸化防止剤及びUV吸収剤等の各種安定剤や、樹脂の水系溶媒中での安定性を向上させるための各種界面活性剤等が配合されてもよい。更に、この本発明に係る接着剤はフィルム化されるので、必要に応じて、水溶性イソシアネート、水溶性エポキシ樹脂、アジリジン系化合物、オキサゾリン化合物等の架橋剤を併用しても良い。
【0061】
上述の接着剤には、公知の顔料、防錆剤、増粘剤、分散剤、消泡剤、防腐剤及び成膜助剤等を必要に応じて含有させることで得ることができる。
「顔料」とは、通常、顔料とされるものであれば特に限定されることはない。顔料は、通常、有機顔料と無機顔料に分類される。
「有機顔料」として、例えば、ファストエロ、ジアゾエロー、ジアゾオレンジ及びナフトールレッド等の不溶性アゾ顔料、銅フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、ファナールレーキ、タンニンレーキ及びカタノール等の染色レーキ、イソインドリノエローグリーニッシュ及びイソエンドリノエローレディッシュ等のイソインドリノ系顔料、キナクリドン系顔料、ペリレンスーカット及びペリレンマルーン等のペリレン系顔料等を例示できる。
「無機顔料」として、例えば、カーボンブラック、鉛白、鉛丹、黄鉛、銀朱、群青、酸化コバルト、二酸化チタン、チタニウムイエロー、ストロンチウムクロメート、モリブテン赤、モリブテンホワイト、鉄黒、リトボン、エメラルドグリーン、ギネー緑、コバルト青等を例示できる。
【0062】
「充填剤」とは、性能向上、コスト低減等の目的で添加される物質をいい、通常、充填剤とされるものであれば、特に制限されるものではない。具体的には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、タルク、クレー、アルミナ等を例示できる。
「防錆剤」とは、素材の腐食を抑制するために加えられる物質をいい、通常、防錆剤とされるものであれば、特に制限されるものではない。例えば、鉛丹、白鉛、亜鉛化鉛、塩基性硫酸白鉛、塩基性クロム酸鉛、鉛酸カルシウム、クロム酸亜鉛、鉛酸シアナミド、亜粉末、ジクロロメート、バリウムクロメート、亜硝酸ソーダ、ジシクロヘキシルアンモニウムニトリル、シクロヘキシルアミンカーボネート、防錆油等を例示できる。
【0063】
更に、接着剤には、必要に応じて種々性能を上げる目的で他の樹脂を混和することもできる。他の樹脂として例えば、キシレン樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、タッキファイヤー、ワックスエマルジョン等を例示できる。
尚、本発明において、接着剤とは、水溶液型接着剤、水分散型接着剤の双方を示す。尚、本発明の接着剤は、インク、シーリング材、化粧料等にも転用可能である。
【0064】
本発明に係る接着フィルムは、上述の接着剤をプラスチック、金属、ガラス等の支持部材に塗工し、60〜150℃で1〜10分間、乾燥することで得ることができる。塗工方法としては、ロールコーター法、ダイコーター法、ナイフコーター法、ブレードコーター法、バーコーター法等、通常の方法であれば差支えない。接着フィルムの厚さとしては特に限定されるものではないが、20〜50μmが好ましく、20〜40μmが特に好ましく、25〜30μmが最も望ましい。
【0065】
本発明に係る積層品は、上述の接着フィルムを基材に積層して得ることができる。基材の一例として、ガラス、プラスチック、金属、木材、繊維、紙を例示できるが、基材がガラス、プラスチックの場合に、接着フィルムは経時安定性を発揮できる。
ガラス基材は、その種類を特に限定されるものではなく、例えば、ケイ酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩およびこれら混合系のガラス、カルコゲン化物ガラス等を例示することができる。
【0066】
得られたガラス/接着フィルム積層品は、以下の用途等に利用される。
住宅用防犯ペアガラス(ペアガラス軽量化、機能性フィルム(熱遮断、防音、吸音特性)付与)、
ユニットバス扉のガラス部(飛散防止、衣裳性)、
ショーウインドー、宝石ショーケース用(飛散防止、防犯)、
建材ガラス全般(店舗、案内板、看板、冷凍、冷蔵庫)(飛散防止、軽量化)、
バスのシャワールーム壁、ドア(飛散防止、衣裳性)、
自動車サンルーフ(飛散防止、軽量化、耐候性)、
自動車リアウインドウ(飛散防止、軽量化、耐候性)、
自動車計器板パネル(傷防止、透過性)
AL家具(飛散防止、衣裳性)、
オフィス、事務機器、棚板、間仕切り(飛散防止、衣裳性)、
工作機械窓(飛散防止、傷つき防止、透明性)、
音響機器、車両、建材の3次元成型加工(低融点フィルムの加工性、耐熱性)、
美術品(額縁ガラス)(紫外線UVカット、380ナノ以上カット)、
遊技場(パチンコ、スロット、UFOキャッチャー、窓ガラス)(傷防止、透明性)
電子関係(携帯電話窓、タッチパネル)(傷防止、透明性、アクリル板への密着性、防塵、防水性、耐剛性性(薄肉化)、打ち抜き加工性)、
LED、LCDパネル(アクリル板への密着性、エチレン−酢酸ビニルホットメルトシートとの密着性、透過性)、
高速道路防音壁、透過板など(ポリカーボネート板の白化防止、透明性、耐候性)、
サングラス、スキーゴーグル(透明性、耐候性、耐水、防水性)、
突板シート(耐候性、無黄変、難燃性(溶剤塗装代替))、
建材シート(物性(強度、耐熱性、耐水性、耐久性)、脱溶剤)。
【0067】
上述の積層品に使用するプラスチック基材としては、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、アセテート樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂等のプラスチックフィルムが挙げられるが、ポリエステル樹脂であるポリエチレンテレフタレート樹脂を使用することが本発明に適する。
【0068】
本発明に係る積層品の製造方法の一例を以下に記載する。
先ず、本発明に係る接着フィルムを基材表面に設置し、ある程度の温度に接着フィルムを加熱する。接着フィルムが溶融し始めたら、ローラー等で基材表面に均一に塗工し、加熱温度を維持したまま、30分程度放置する。その後、室温で30分程度放置することで、本発明に係る積層品の製造が完了する。
加熱温度は、50℃以上が好ましく、特に50〜80℃が望ましい。加熱温度が50℃未満の場合、接着フィルムが溶融しないので、基材に接着フィルムを積層することができない。
尚、本明細書では、接着フィルムとガラスとの積層品を「ガラス/接着フィルム積層品」と標記し、接着フィルムとプラスチックとの積層品を「プラスチック/接着フィルム積層品」と標記する。
【0069】
以下に、本発明の主な態様を記載する。
1.
(A)有機ポリイソシアネート成分と、(B)50℃で溶融状態であるポリオール成分と、(C)分子内に少なくとも一つの活性水素及び加水分解性シリル基を有する化合物とを反応させることで得られる水系反応性樹脂であって、
架橋構造を形成し得る反応性シリル基を、「Si」として、固形分を基準として0.1〜0.4重量%含有し、
(A)に対する(B)の重量比((B)/(A))が2.0以上であることを特徴とする水系反応性樹脂。
2.
(A)、(B)、(C)成分と、さらに、(D)分子内に少なくとも一つの活性水素及びアニオン基を有する化合物とを反応させることで得られ、
アニオン基を、固形分を基準として0.01〜1.1meq/g含有する上記1に記載の水系反応性樹脂。
3.
(A)有機ポリイソシアネート成分と、(B)ポリオール成分と、(C)分子内に少なくとも一つの活性水素及び加水分解性シリル基を有する化合物と、(D)分子内に少なくとも一つの活性水素及びアニオン基を有する化合物とを反応させてウレタンプレポリマーを得、
該ウレタンプレポリマーを、鎖長延長反応させることで得られる上記1又は2に記載の水系反応性樹脂。
4.
上記1〜3に記載の水系反応性樹脂を含んで成る接着剤。
5.
上記4に記載の接着剤から得られた接着フィルム。
6.
上記5に記載の接着フィルムが基材に積層された積層品。
7.
上記接着フィルムが基材に50℃以上の温度で積層された上記6に記載の積層品。
8.
上記基材はガラス又はプラスチックである上記6又は7に記載の積層品。
【実施例】
【0070】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1
攪拌装置、温度計、窒素導入管及び還流冷却管を備えた4つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート(IPDI 住化バイエル(株)製)66.6g、ポリエステルジオール(豊国製油(株)製 HS 2F−231AS MW2000)225g、ジメチロールブタン酸(DMBA)13.3gを入れ、溶剤として酢酸エチル150gを加え、オイルバスを使用して80℃に加熱して4時間反応させた。その後60℃まで温度を下げて、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(GE東芝シリコーン(株)製 SILQUEST A1100)3.3gを添加し、20分間反応させた。その後50℃まで冷却し、トリエチルアミン8.3g加え10分間攪拌した。次に、このNCO基が残存したプレポリマーを水461g中に分散させ、直ちにピペラジン・6水和物(Pz・6HO)14.5gを水100gに溶解した水溶液を加え、50℃にて3時間鎖長延長反応を行って高分子量化させた。こうして得られた液を、ロータリーエバポレーターにて酢酸エチルを除去し、固形分35重量%の水系反応性樹脂の分散液を得た。
【0071】
実施例2
攪拌装置、温度計、窒素導入管及び還流冷却管を備えた4つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート(IPDI 住化バイエル(株)製)66.6g、ポリテトラメチレングリコール(三菱化学(株)製 PTMG2000 MW2000)225g、ジメチロールプロピオン酸(DMPA)12.1gを入れ、溶剤として酢酸エチル150gを加え、オイルバスを使用して80℃に加熱して4時間反応させた。その後60℃まで温度を下げて、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(GE東芝シリコーン(株)製 SILQUEST A1100)6.6gを添加し、20分間反応させた。その後50℃まで冷却し、トリエチルアミン8.3g加え10分間攪拌した。次に、このNCO基が残存したプレポリマーを水461g中に分散させ、直ちにピペラジン・6水和物(Pz・6HO)14.5gを水100gに溶解した水溶液を加え、50℃にて3時間鎖長延長反応を行って高分子量化させた。こうして得られた液を、ロータリーエバポレーターにて酢酸エチルを除去し、固形分35重量%の水系反応性樹脂の分散液を得た。
【0072】
実施例3
攪拌装置、温度計、窒素導入管及び還流冷却管を備えた4つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート(IPDI 住化バイエル(株)製)66.6g、ポリカーボネートジオール(日本ポリウレタン(株)製 ニッポラン963 MW2000)150g、ジメチロールブタン酸(DMBA)13.3gを入れ、溶剤として酢酸エチル150gを加え、オイルバスを使用して80℃に加熱して4時間反応させた。その後60℃まで温度を下げて、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(GE東芝シリコーン(株)製 SILQUEST A1100)3.3gを添加し、20分間反応させた。その後50℃まで冷却し、トリエチルアミン8.3g加え10分間攪拌した。次に、このNCO基ガ残存したプレポリマーを水379g中に分散させ、直ちにピペラジン・6水和物(Pz・6HO)14.5gを水50gに溶解した水溶液を加え、50℃にて3時間鎖長延長反応を行って高分子量化させた。こうして得られた液を、ロータリーエバポレーターにて酢酸エチルを除去し、固形分35重量%の水系反応性樹脂の分散液を得た。
【0073】
実施例4
攪拌装置、温度計、窒素導入管及び還流冷却管を備えた4つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート(IPDI 住化バイエル(株)製)66.6g、ポリエステルジオール(豊国製油(株)製 HS 2F−231AS MW2000)157g、ポリエステルジオール(日本ポリウレタン(株)製 ニッポラン163 MW2600)68g、ジメチロールブタン酸(DMBA)13.3gを入れ、溶剤として酢酸エチル150gを加え、オイルバスを使用して80℃に加熱して4時間反応させた。その後60℃まで温度を下げて、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(GE東芝シリコーン(株)製 SILQUEST A1100)3.3gを添加し、20分間反応させた。その後50℃まで冷却し、トリエチルアミン8.3g加え10分間攪拌した。次に、このNCO基が残存したプレポリマーを水461g中に分散させ、直ちにピペラジン・6水和物(Pz・6HO)14.5gを水100gに溶解した水溶液を加え、50℃にて3時間鎖長延長反応を行って高分子量化させた。こうして得られた液を、ロータリーエバポレーターにて酢酸エチルを除去し、固形分35重量%の水系反応性樹脂の分散液を得た。
【0074】
比較例1
γ−アミノプロピルトリエトキシシランを反応させない以外は、実施例1と同様の方法で35重量%の水系反応性樹脂の分散液を得た。
比較例2
γ−アミノプロピルトリエトキシシランを12.1g反応させた以外は、実施例1と同様の方法で35重量%の水系反応性樹脂の分散液を得た。
【0075】
比較例3
攪拌装置、温度計、窒素導入管及び還流冷却管を備えた4つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート(IPDI 住化バイエル(株)製)66.6g、ポリカーボネートジオール(日本ポリウレタン(株)製 ニッポラン963 MW2000)120g、ジメチロールブタン酸(DMBA)13.3gを入れ、溶剤として酢酸エチル150gを加え、オイルバスを使用して80℃に加熱して4時間反応させた。その後60℃まで温度を下げて、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(GE東芝シリコーン(株)製 SILQUEST A1100)3.3gを添加し、20分間反応させた。その後50℃まで冷却し、トリエチルアミン8.3g加え10分間攪拌した。次に、このNCO基が残存したプレポリマーを水323g中に分散させ、直ちにピペラジン・6水和物(Pz・6HO)14.5gを水50gに溶解した水溶液を加え、50℃にて3時間鎖長延長反応を行って高分子量化させた。こうして得られた液を、ロータリーエバポレーターにて酢酸エチルを除去し、固形分35重量%の水系反応性樹脂の分散液を得た。
【0076】
比較例4
ポリエステルジオールを日本ポリウレタン(株)製 ニッポラン4073に変更した以外は、実施例3と同様の方法で35重量%の水系反応性樹脂の分散液を得た。
比較例5
ポリエステルジオールを日本ポリウレタン(株)製 ニッポラン980Nに変更した以外は、実施例1と同様の方法で35重量%の水系反応性樹脂の分散液を得た。
比較例6
比較例1で得たエマルジョン100gに対して、デグサ製エポキシシラン「Dynasilane Glymo」を2g添加して使用した。
【0077】
以上の実施例1〜4と比較例1〜6の成分と、物理的、化学的性質を下記表1〜2にまとめた。
尚、表中成分の略号は、下記意味を有する。
(A1)は、イソホロンジイソシアネート(IPDI)を示す。
(B1)は、ポリエステルジオール(豊国製油(株)製 HS 2F−231AS MW2000、融点35℃)を示す。
(B2)は、ポリテトラメチレングリコール(三菱化学(株)製 PTMG2000 MW2000、融点22℃)を示す。
(B3)は、ポリカーボネートジオール(日本ポリウレタン(株)製 ニッポラン963 MW2000、非晶質)を示す。
(B’4)は、ポリエステルジオール(日本ポリウレタン(株)製 ニッポラン163 MW2600、融点57℃を示す。
(B’5)は、ポリエステルジオール(日本ポリウレタン(株)製 ニッポラン4073、融点52℃)を示す。
(B’6)は、ポリエステルジオール(日本ポリウレタン(株)製 ニッポラン980N、融点53℃)を示す。
(C1)は、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(GE東芝シリコーン(株)製 SILQUEST A1100)を示す。
(D1)は、ジメチロールプロピオン酸(DMPA)を示す。
(D2)は、ジメチロールブタン酸(DMBA)を示す。
Pz・6HOは、ピペラジン・6水和物を示す。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【0080】
<接着フィルム並びに積層品の作製方法>
実施例1〜4、比較例1〜6の水系反応性樹脂の分散液をプラスチック支持部材に塗装し、乾燥して、接着フィルムをプラスチック支持部材上に作製した(以下、これを「プラスチック支持部材/接着フィルム」といい、「プラスチック支持部材/」の部分を省略して、単に「接着フィルム」ということもある)。「プラスチック支持部材/接着フィルム」を、接着フィルムの側から所望の基材(具体的には、例えばガラス及びプラスチック等)に貼り付け、基材に接着フィルムとプラスチック支持部材が、この順番で基材に積層された積層品を得た。ガラスと接着フィルムとの積層品を「ガラス/接着フィルム積層品」、プラスチックと接着フィルムとの積層品を「プラスチック/接着フィルム積層品」という。通常積層品は、プラスチック支持部材を剥がさない状態で保管、輸送及び使用等を行う。接着フィルム及び積層品の具体的作製方法は、以下詳細に説明する。
【0081】
1.接着フィルムの作製
(1)PET/接着フィルム
三菱化学ポリエステルフィルム(株)製ポリエチレンテレフタレートフィルム(ダイアオイルO300Eを用いて易接着処理をしたポリエチレンテレフタレートフィルム)に、実施例1〜4、比較例1〜6の水系反応性樹脂のエマルジョンをアプリケーター(ヨシミツ精機社製 YBA型ベーカーアプリケーター)で塗装し、130℃で3分間乾燥し、厚さ25〜30μmのPET/接着フィルムを作製した。得られたPET/接着フィルムを、幅25mm、長さ250mmに切断した。
【0082】
(2)PEN/接着フィルム
帝人デュポンフィルム(株)製ポリエチレンナフタレートフィルム(Teonex Q65F)に、実施例1〜4、比較例1〜6の水系反応性樹脂のエマルジョンをアプリケーター(ヨシミツ精機社製 YBA型ベーカーアプリケーター)で塗装し、130℃で3分間乾燥し、厚さ25〜30μmのPEN/接着フィルムを作製した。得られたPEN/接着フィルムを、幅25mm、長さ250mmに切断した。
【0083】
(3)ポリカーボネート/接着フィルム
三菱エンジニアリングプラスチック(株)製ポリカーボネートフィルム(Eupilon Sheet CFEM)にエマルジョンをアプリケーター(ヨシミツ精機社製 YBA型ベーカーアプリケーター)で塗装し、130℃で3分間乾燥し、厚さ25〜30μmのポリカーボネート/接着フィルムを作製した。得られたポリカーボネート/接着フィルムを、幅25mm、長さ250mmに切断した。
【0084】
2.ガラス/接着フィルム積層品の作製
条件1
80℃の状態にて、上記PET/接着フィルムとガラス基材(エンジニアリングテストサービス製 JISR 3202)を2kgのハンドローラーを用いて貼り合わせた。得られたガラス/接着フィルム積層品を、80℃の条件下にて30分放置した後、更に23℃、65%RHの条件下で20分間放置した。
条件2
50℃の状態にて、上記接着PET/接着フィルム(エンジニアリングテストサービス製 JISR 3202)とガラスを2kgのハンドローラーを用いて貼り合わせた。得られたガラス/接着フィルム積層品を、50℃の条件下にて30分間放置した後、更に23℃、65%RHの条件下で20分間放置した。
【0085】
条件3
23℃、65%RHの条件下で、上記PET/接着フィルムとガラスを2kgのハンドローラーを用いて貼り合わせた。得られたガラス/接着フィルム積層品を、更に23℃、65RH%の条件下にて30分間放置した。
【0086】
条件4
80℃の状態にて、上記PEN/接着フィルムとガラス(エンジニアリングテストサービス製 JISR 3202)を2kgのハンドローラーを用いて貼り合わせた。得られたガラス/接着フィルム積層品を、80℃の条件下にて30分間放置した後、更に23℃、65%RHの条件下で20分間放置した。
条件5
80℃の状態にて、上記接着ポリカーボネート/接着フィルムとガラス(エンジニアリングテストサービス製 JISR 3202)を2kgのハンドローラーを用いて貼り合わせた。得られたガラス/接着フィルム積層品を、80℃の条件下にて30分放置した後、更に23℃、65%RHの条件下で20分間放置した。
【0087】
3.プラスチック/接着フィルム積層品の作成
80℃の状態にて、上記PET/接着フィルムとプラスチック基材を2kgのハンドローラーを用いて貼り合わせた。得られたプラスチック/接着フィルム積層品を、80℃の条件下にて30分間放置した後、更に23℃、65%RHの条件下で20分間放置した。
使用したプラスチック基材は下記のとおりである。
・ポリメタクリル酸メチル(PMMA)
(エンジニアリングテストサービスから入手 三菱レーヨン製 アクリライトL001)
・ポリカーボネート
(エンジニアリングテストサービスから入手 三菱エンジニアリングプラスチックス製 ユーピロ)
・ポリエチレンテレフタレート(PET)
(エンジニアリングテストサービスから入手 タキロン製 Gタイプ 6010)
【0088】
<積層品の接着試験方法>
得られたガラス/接着フィルム積層品、プラスチック/接着フィルム積層品について、接着試験を実施した。以下に詳細を記載する。尚、特に記載しない限り、下記の試験の際に、ガラス/接着フィルム積層品及びプラスチック/接着フィルム積層品から、プラスチック支持部材を剥がさない状態で、積層品の試験を行った。
1.ガラス/接着フィルム積層品の接着試験方法
(1)初期接着性試験
条件1で得られたガラス/接着フィルム積層品を23℃、65%RHの状態で引張り試験機(オリエンテック社製 RTM250)に掛け、引張り速度300mm/minで接着フィルムを180°方向に引き剥がしたときの接着強度を測定した。
条件2で得られたガラス/接着フィルム積層品を23℃、65%の状態RHで引張り試験機(オリエンテック社製 RTM250)に掛け、引張り速度300mm/minで接着フィルムを180°方向に引き剥がしたときの接着強度を測定した。
【0089】
条件3で得られたガラス/接着フィルム積層品を23℃、65%RHの状態で引張り試験機に掛け、引張り速度300mm/minで接着フィルムを180°方向に引き剥がしたときの接着強度を測定した。
条件4で得られたガラス/接着フィルム積層品を、23℃、65%RHの状態で引張り試験機に掛け、引張り速度300mm/minで接着フィルムを180°方向に引き剥がしたときの接着強度を測定した。
条件5で得られたガラス/接着フィルム積層品を、23℃、65%RHの状態で引張り試験機に掛け、引張り速度300mm/minで接着フィルムを180°方向に引き剥がしたときの接着強度を測定した。
【0090】
(2)耐熱性試験
条件1で得られたガラス/接着フィルム積層品を80℃の条件下で120分放置した後、23℃、65%RHの条件下で20分間放置した。同条件下で引張り試験機(オリエンテック社製 RTM250)を用いて、引張り速度300mm/minで接着フィルムを180°方向に引き剥がしたときの接着強度を測定した。
(3)耐湿性試験
条件1で得られたガラス/接着フィルム積層品を40℃、90%RHの条件下で7日間放置した後、23℃、65%RHの条件下で20分間放置した。同条件下で引張り試験機(オリエンテック社製 RTM250)を用い、引張り速度300mm/minで接着フィルムを180°方向に引き剥がしたときの接着強度を測定した。
【0091】
(4)耐水性試験
条件1で得られたガラス/接着フィルム積層品を50℃温水で1日間浸漬した後、23℃、65%RHの条件下で20分間放置した。同条件下で引張り試験機(オリエンテック社製 RTM250)を用い、引張り速度300mm/minで接着フィルムを180°方向に引き剥がしたときの接着強度を測定した。
(5)耐久性試験
条件1で得られたガラス/接着フィルム積層品を、サンシャインウェザーメーターで2000時間耐久性試験を実施した。その後23℃、65%RHの条件下で20分間放置し、同条件下で引張り試験機を用い、引張り速度300mm/minで接着フィルムを180°方向に引き剥がしたときの接着強度を測定した。
【0092】
サンシャインウェザーメータ試験条件
装置名;サンシャインスーパーロングライフウェザーメーター(スガ試験機製)
条件 ; JIS K 7350 プラスチック実験室光源による暴露試験方法
放射エネルギー; 210〜300W/m
サイクル;60分中12分降雨で先降り運転
放電電圧;50V
放電電流;60A
降雨の水圧;0.8〜1.2kgf/cm(0.08〜0.12N/mm
水量;1.0kgf/cmの場合 2100±100cc/min
【0093】
(5)接着剤(水系反応性樹脂)の経時安定性
実施例1〜4、比較例1〜6の水系反応性樹脂の分散液を50℃の条件下で2週間放置し、放置された水系反応性樹脂の分散液を用いてPET/接着フィルムを作製した。PET/接着フィルムの作製条件は、既に述べたものと同様である。得られたPET/接着フィルムを用い、条件1にてガラス/接着フィルム積層品を作製し、初期状態からの経時安定性を評価した。
接着剤の経時安定性は、上述した初期接着性試験、耐水性試験と同様の接着試験を行い、測定された接着強度で評価した。
(6)プラスチック支持部材/接着フィルムの経時安定性
上述した方法で、実施例1〜4、比較例1〜6の水系反応性樹脂の分散液からPET/接着フィルムを作成した。得られたPET/接着フィルムを23℃、65%RHの条件下で2週間放置した。そのPET/接着フィルムを使用し、条件1にてガラス/接着フィルム積層品を作製し、初期状態からの経時安定性を評価した。
経時安定性は、上述した初期接着性試験、耐水性試験と同様の接着試験を行い、測定された接着強度で評価した。
【0094】
2.プラスチック/接着フィルム積層品の接着試験方法
(1)初期接着性試験
上述したように、実施例1〜4、比較例1〜6の水系反応性樹脂を用いてPET/接着フィルムを作製し、それらのPET/接着フィルムと各プラスチック基材(PMMA、ポリカーボネート、PET)とを積層した。得られた各プラスチック/接着フィルム積層品を23℃、65%RHの状態で引張り試験機(オリエンテック社製 RTM250)に掛けた。引張り速度300mm/minでプラスチック/接着フィルム積層品から接着フィルムを180℃方向に引き剥がし、そのときの接着強度を測定した。
(2)耐水性試験
得られた各プラスチック/接着フィルム積層品を50℃温水で1日間浸漬した後、23℃、65%RHの条件下で20分間放置し、23℃、65%RHの状態で引張り試験機(オリエンテック社製 RTM250)に掛けた。引張り速度300mm/minでプラスチック/接着フィルム積層品から接着フィルムを180°方向に引き剥がし、そのときの接着強度を測定した。
【0095】
<ガラス/接着フィルム積層品の接着試験結果>
実施例1〜4と比較例1〜6の水系反応性樹脂を用いて得られたガラス/接着フィルム積層品について、接着試験結果を、下記表3及び4にまとめた。
【表3】

【0096】
【表4】

【0097】
<プラスチック/接着フィルム積層品の接着試験結果>
実施例1〜4と比較例1〜6の水系反応性樹脂を用いて得られたプラスチック/接着フィルム積層品について、接着試験結果を、下記表5及び6にまとめた。
【表5】

【0098】
【表6】

【0099】
表3〜6に示すように、実施例1〜4は、水系樹脂組成物、接着フィルムの両方とも、初期状態の接着強度、耐水性に優れており、これらの優れた物性は2週間放置してもほとんど変化することがない。
これに対し、比較例1は、実施例と比べ、初期状態における接着強度はそれほど変わらないが、耐水性が低い。更に、2週間後、接着強度の低下が確認されたので、接着強度の経時安定性も低い。比較例2〜5は、初期状態の段階から、接着強度、耐水性の両方共、実施例と比べて著しく低い。比較例6は、初期状態では、接着強度、耐水性の両方とも、実施例と同程度の値を示しているが、経時安定性に乏しく、2週間後、接着強度、耐水性の両方共が低下する。
これらの結果から、本発明に係る水系反応性樹脂を含んで成る水系樹脂組成物は、接着剤として優れ、それから得られる接着フィルムも優れていることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)有機ポリイソシアネート成分と、(B)50℃で溶融状態であるポリオール成分と、(C)分子内に少なくとも一つの活性水素及び加水分解性シリル基を有する化合物とを反応させることで得られる水系反応性樹脂であって、
架橋構造を形成し得る反応性シリル基を、「Si」として、固形分を基準として0.1〜0.4重量%含有し、
(A)に対する(B)の重量比((B)/(A))が2.0以上であることを特徴とする水系反応性樹脂。
【請求項2】
請求項1に記載の水系反応性樹脂を含んで成る接着剤。
【請求項3】
請求項2に記載の接着剤から得られた接着フィルム。

【公開番号】特開2008−274088(P2008−274088A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−118798(P2007−118798)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(397020537)日本エヌエスシー株式会社 (13)
【Fターム(参考)】