説明

水系電解質組成物、及びそれから得られる電解質層を備えた密閉型フィルム一次電池

【課題】水系電解質組成物、及びそれから得られる電解質層を備えた密閉型フィルム一次電池を提供すること。
【解決手段】正極と負極との間に分離膜が形成されており、分離膜には、複数の貫通ホールが形成されており、正極と負極との間にある非流動性電解質層は、各電極と平行に延びている第1電解質層、第2電解質層、及びそれらにそれぞれ一体に連結されるように前記分離膜の貫通ホールの内部を満たしている複数の第3電解質層を備え、分離膜に形成された貫通ホール内に満たされた第3電解質により電解質層内でのイオン移動経路が短縮し、電解質層には、水分の外部への蒸発を抑制するための親水性微粒子が分散されている密閉型フィルム一次電池である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質組成物及び密閉型フィルム一次電池に関し、より詳細には、特に水系電解質組成物及びそれから得られる電解質層を備えた密閉型フィルム一次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、能動型電波識別(Radio Frequency Identification:RFID)及びセンサーノード技術に関する研究が活発に進められている。それらの技術は、デジタルTV、ホームネットワーク、知能型ロボットなどと共にその波及効果が非常に大きくて膨大であって現在のCDMA(Code Devision Multiple Access)技術を凌駕する技術であって、今後、未来の核心産業として定着すると予想されている。すなわち、リーダを通じてタグ内に収録されている情報を読み取った既存の受動的な機能から外れて、タグの認識距離を画期的に延長させるだけでなく、タグ周辺の事物情報及び環境情報まで自ら感知することによって、窮極的には、ネットワーキングを通じる人と事物との通信から事物と事物との通信まで情報フローの領域を拡大できると期待している。したがって、かかるRFIDタグ及びセンサーノードの駆動のためには、タグやノード規格に適した超小型かつ軽量であり、長寿命の電源素子を使用してリーダから完全に独立した自立電源を確保することが重要である。
【0003】
これまでRFIDタグ及びセンサーノードに一部適用されて、その可能性を認められた電源素子のうち一つとしてフィルム一次電池が使われている。フィルム一次電池は、電極及び電解質の構成は、従来の乾電池及びアルカリ電池と同じであるが、担持容器として円筒形缶の代わりにPET系包装材を使用した積層フィルム材で具現したものである。したがって、既存の円筒形電池に使われた電解質をフィルム形態の電池にそのまま適用するとき、多くの問題点が発生した。具体的に説明すれば、円筒形電池を適用する場合には、円筒形電池が密閉型であるため、電極間に分離膜を設置した後で缶内の空いた空間が十分に満たされるように水系電解液を注入する。一方、フィルム形態の電池は、電極及び分離膜を単純に積層して得られるため、各電極と電解質との接触が弱化して界面抵抗が高くなるという問題点がある。また、フィルム間の限定された空間により、両電極間の空間に電解液を十分に注入するのに限界がある。そして、フィルム電池は、完全な密閉型構造でないため、長期間保存する場合、または高温に放置する場合、電解質層を構成する電解液が乾燥して性能が急激に低下するという短所がある。
【0004】
特に、これまで提案された従来技術によるフィルム一次電池では、電解液を十分に注入できないため、両電極間に挿入される分離膜として多孔性材質の膜を使用し、電解液を分離膜内に含浸させる方法で電解質層を形成した。しかし、かかる方法で製造されたフィルム一次電池では、所定の厚さ以上の分離膜が必要であるので、フィルム一次電池の総厚を縮めるのに限界があり、電解質層内でのイオン移動経路が分離膜内に形成されている不規則な形状の孔隙に沿って形成されるため、イオン移動経路が長くて不規則であり、内部抵抗が高くなり、出力特性が低下して高率で連続放電させるか、またはパルス放電時に性能が急激に低下するという問題点がある。また、多孔性分離膜としてセルロース系や不織布系の物質からなる分離膜を使用する場合、強酸または強塩基電解液が使われる時に分離膜が電解液により縮められるか、または溶けてしまうという問題があるので、電池の長期間保管時に電池の性能が低下するか、または電池の作動が止まるという問題も発生する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、前記した従来技術での問題点を解決しようとするものであって、電解液内の水分の蒸発を抑制でき、強酸または強塩基性電解液に対して耐性を有する分離膜と共に有効に使われる水系電解質組成物を提供するところにある。
【0006】
本発明の他の目的は、電解質層内でのイオン移動経路を短縮させて電池の出力特性を向上させ、さらに薄型化されたフィルム一次電池を具現できる密閉型フィルム一次電池を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明による水系電解質組成物は、水溶性高分子と、水系電解液と、親水性微粒子と、からなる。
【0008】
前記親水性微粒子は、多孔性無機物または有機物からなる。
【0009】
前記他の目的を達成するために、本発明による密閉型フィルム一次電池は、正極と、負極と、前記正極と負極との間でそれらとそれぞれ所定距離ほど離隔された状態でそれらと平行に延びており、複数の貫通ホールが形成された薄膜からなる分離膜と、前記正極と負極との空間に満たされている非流動性電解質層と、を備える。前記電解質層は、前記正極と前記分離膜との間で前記正極と平行に延びている第1電解質層と、前記負極と前記分離膜との間で前記負極と平行に延びている第2電解質層と、前記第1電解質層及び第2電解質層にそれぞれ一体に連結されるように前記分離膜の貫通ホールの内部を満たしている複数の第3電解質層と、を備える。
【0010】
前記分離膜は、疎水性高分子、織造されたガラスファイバまたは織造されたカーボンファイバからなる。
【0011】
前記電解質層は、水溶性高分子と、水系電解液と、親水性微粒子との混合物からなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明による水系電解質組成物は、親水性微粒子を含んでいる。前記親水性微粒子を構成する多孔性無機物または有機物内に水系電解液が含浸されて、前記水系電解液の外部への蒸発を防止する。このように親水性微粒子を含む本発明による水系電解質組成物を使用して、複数の貫通ホールが穿孔された分離膜の両側表面に前記親水性微粒子が分散されている電解質層を形成することによって、電解質層からの水分蒸発を抑制できる。また、本発明による電解質組成物に含まれる水溶性高分子は、優秀な接着力を有するか、または溶媒蒸発後に固体化されることによって、電解質層により電極と分離膜とが一体化できる。
【0013】
本発明による密閉型フィルム一次電池は、分離膜に形成された貫通ホール内に形成される電解質層により提供される短縮したイオン移動経路により優秀なイオン伝導度を提供することによって、高率放電特性、高出力特性、及びパルス出力特性が向上し、長期間保管及び長期間放電時にも電池の性能低下が防止されて優秀な長期間安定性を提供できる。また、分離膜に形成される貫通ホールをイオン移動経路として利用するので、分離膜を強酸または強塩基に対する耐性に優れた材料で形成できて長期間使用時にも分離膜の腐食または収縮のような変形を防止できて電池の寿命を延長させ、さらに薄い分離膜を形成できるので、電池をさらに薄型化できる。
【0014】
本発明による密閉型フィルム一次電池は、既存の電池製造工程に使われる設備をそのまま使用して製造できるので、低コストによる自動化、連続化及び量産化が容易である。
【0015】
本発明は、情報通信部のIT新成長動力核心技術開発事業の一環として行った研究から導出されたものである〔課題管理番号:2005−S−106−02、課題名:RFID/USN用センサータグ及びセンサーノード技術開発〕。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の望ましい実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の望ましい実施形態による密閉型フィルム一次電池100の要部斜視図である。図2は、図1のII−II´線の断面による部分の一部構造を示す断面図である。
【0017】
図1及び図2に示すように、本発明の望ましい実施形態による密閉型フィルム一次電池100は、正極110と、負極120と、それらの間に介在されている分離膜130と、を備える。
【0018】
前記分離膜130は、前記正極110と負極120との間でそれらとそれぞれ所定の距離d1,d2ほど離隔された状態でそれらと平行に延びている。前記分離膜130は、約5ないし500μmの厚さを有する。
【0019】
前記分離膜130は、疎水性物質からなる。また、前記分離膜130は、多孔性または非多孔性物質からなる。
【0020】
前記分離膜130は、疎水性高分子からなる。例えば、前記分離膜130は、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンとの共重合体、フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンとの共重合体、ナイロン、ポリアクリロニトリル、エチルビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスルホン、ポリイミド、ポリウレタン、ポリブタジエン、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート及びポリブチルメタクリレートからなる群から選択されるいずれか一つの高分子、またはそれらのうち選択される少なくとも二つの高分子のブレンドからなりうる。または、前記分離膜130は、織造されたガラスファイバまたはカーボンファイバからなりうる。
【0021】
図3は、前記分離膜130として使われる例示的な分離膜130Aの構成を示す平面図である。
【0022】
図3に示したように、前記分離膜130Aは、圧延加工されたフィルム形態の疎水性薄膜134からなり、前記疎水性薄膜134には、複数の貫通ホール132が形成されている。図3には、前記貫通ホール132が円形に例示されている。しかし、本発明は、これに限定されない。すなわち、前記貫通ホール132は、楕円形または多角形に形成される。前記貫通ホール132は、約10μmないし2mmの比較的大きい開口幅W1を有する。
【0023】
図4は、前記分離膜130として使われる他の例示的な分離膜130Bの構成を示す平面図である。
【0024】
図4に示したように、前記分離膜130Bは、織造された薄膜234から形成され、前記薄膜234には、複数の貫通ホール232が形成されている。前記貫通ホール232は、約10μmないし2mmの開口幅W2を有する。
【0025】
再び図1及び図2に示すように、前記正極110と負極120との空間に満たされている非流動性電解質層140が形成されている。前記電解質層140は、前記正極110と前記分離膜130との間で前記正極110と平行に延びている第1電解質層142と、前記負極120と前記分離膜130との間で前記負極120と平行に延びている第2電解質層144と、前記第1電解質層142及び第2電解質層144にそれぞれ一体に連結されるように前記分離膜130の貫通ホール(図3の132または図4の232)の内部を満たしている複数の第3電解質層146と、を備える。前記第3電解質層146は、前記分離膜130の貫通ホールの開口幅(図3のW1または図4のW2)によって決定される幅d3を有する。前記第3電解質層146は、前記正極110と負極120との間で前記電解質層140内に存在するイオンの短縮された移動経路を提供することによって、前記密閉型フィルム一次電池100内での内部抵抗を減らし、出力特性を向上させる役割を行う。
【0026】
前記第1電解質層142及び第2電解質層144は、それぞれ約10ないし300μmの厚さを有するように形成される。
【0027】
前記電解質層140は、水溶性高分子と、水系電解液と、親水性微粒子との混合物からなりうる。前記親水性微粒子は、前記電解質層140内で水系電解液内に分散されている状態で水系電解液との相互作用により電解液の蒸発を抑制するように作用する。
【0028】
前記電解質層140に含まれる前記水溶性高分子は、例えばポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、澱粉、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、セルロース、セルロースアセテート、カルボキシメチルセルロース、寒天及びナフィオン高分子からなる群から選択されるいずれか一つの高分子、またはそれらのうち選択される少なくとも二つの高分子のブレンドからなりうる。
【0029】
前記電解質層140に含まれる前記水系電解液は、例えば水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、臭化カリウム(KBr)、塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化亜鉛(ZnCl2)、塩化アンモニウム(NH4Cl)、硫酸(H2SO4)またはナフィオン電解質を含む水溶液からなりうる。
【0030】
前記電解質層140に含まれる前記親水性微粒子は、多孔性無機物または有機物からなりうる。前記親水性微粒子が多孔性無機物からなる場合、前記親水性微粒子は、シリカ、タルク、アルミナ(Al23)、チタニア(TiO2)、粘土またはゼオライトからなりうる。また、前記親水性微粒子が有機物からなる場合、前記親水性微粒子は、ポリエチレンイミン、エチレングリコールまたはポリエチレングリコールからなりうる。
【0031】
本発明による密閉型フィルム一次電池の電解質層を形成するための例示的な方法を図1ないし図4を参照して説明すれば、次の通りである。
【0032】
まず、本発明による水系電解質組成物を製造する。本発明による水系電解質組成物を準備するために、水溶性高分子、水系電解液及び親水性微粒子を準備する。また、図3に示した分離膜130Aまたは図4に示した分離膜130Bのような構造を有する分離膜130を準備する。前記水溶性高分子、水系電解液及び親水性微粒子それぞれの構成材料についての詳細な事項は、前述した通りである。前記水系電解液は、例えば前述した所定の電解質が蒸溜水に約1ないし8Mの濃度で溶解されている電解液からなりうる。前記分離膜130を形成するために、疎水性の高分子フィルムを穿孔して複数の貫通ホール132を形成できる。または、貫通ホール232が形成されるように織造されたガラスファイバまたはカーボンファイバを前記分離膜130として使用できる。前記貫通ホールは、肉眼で見えるほどの比較的大きい開口サイズを有する。
【0033】
前記水溶性高分子、水系電解液及び親水性微粒子を混合して水系電解質組成物を製造する。詳細に説明すれば、まず、前記水系電解液に前記親水性微粒子を入れて混合物を得る。ここで、前記親水性微粒子は、前記水系電解液の総重量を基準として約0.1ないし50重量%で含まれるように添加される。次いで、前記混合物に水溶性高分子を溶かして粘度の非常に高いスラリまたは溶液形態の高分子電解質を製造する。得られた電解質を前記分離膜130の両側面に所定厚さにコーティングして乾燥させる。前記電解質がコーティングされる間に電解質により前記分離膜130に形成された貫通ホールの内部が満たされつつ、前記分離膜130の表面には、電解質からなる均一な厚さの膜が形成される。このようにコーティングされた電解質が乾燥されれば、ゲルまたはペーストのような非流動性電解質層140が形成される。前記電解質層140は、使われる水溶性高分子の種類によって粘着性を有することもでき、溶媒が蒸発された後で固体化されて前記分離膜130と一体化する構造を有することができる。前記電解質層140は、図2に示したように、分離膜130の両側面をそれぞれ覆う第1電解質層142、第2電解質層144、及びそれらの間でそれらと一体に連結されるように前記分離膜130の貫通ホールの内部を満たす複数の第3電解質層146を備える。
【0034】
前記のような過程を通じて得られた分離膜130と電解質層140との結合構造の両側面にそれぞれ正極110及び負極120を形成することによって、密閉型フィルム一次電池100を構成できる。このように形成された本発明による密閉型フィルム一次電池は、電解質層内で前記分離膜の貫通ホールの内部に満たされた前記電解質層の第3電解質層を通じた短い移動経路を通じてイオンが移動するので、優秀な出力特性が得られ、従来技術による分離膜に比べて前記分離膜の厚さを半分レベルまたはそれ以下に縮めても、所望のレベルのイオン伝導度が得られるので、フィルム一次電池をさらに薄型化できる。
【0035】
次いで、本発明による水系電解液組成物及び密閉型フィルム一次電池について、具体的な製造例を挙げてさらに詳細に説明する。しかし、下記製造例は、本発明の理解を助けるために例示されたものであって、本発明の範囲がこれに限定されると解釈されてはならず、本発明の思想を逸脱せずに下記の製造例から多様な変形及び変更が可能である。
【0036】
実施例1
20μm厚さの多孔性ポリエチレン(PE)フィルムを準備した後、穿孔機を利用して前記フィルムに直径500μmの円形貫通ホールを複数個形成して分離膜を製造した。
【0037】
水系電解質組成物を製造するために、まず、6MのKOH溶液内に親水性微粒子であるポリエチレンイミンを5重量%添加し、これに1:1の重量比で混合されたポリアクリル酸とカルボキシメチルセルロースとの高分子ブレンドを10重量%の濃度で入れて非常にすべすべした電解質ゲルを製造した。このように得られた電解質ゲルを前記分離膜の両側表面にコーティングして電解質層を形成した。このとき、前記電解質ゲルを前記分離膜の表面にコーティングする過程で、前記分離膜に形成されている各貫通ホールの内部に電解質ゲルが流入されて前記貫通ホールの内部が前記電解質ゲルで完全に満たされた。
【0038】
前記のように製造された分離膜と電解質層との結合構造の両側表面にそれぞれ正極及び負極フィルムをラミネーションした後で密閉接着させて、密閉型フィルム一次電池を製造した。詳細に説明すれば、前記分離膜の一側表面を覆う電解質層の露出表面上にポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム及び伝導性カーボンを塗布して圧搾した後、再びEMD(Electrolytic MnO2)、結着材及び導電材を入れて製造したスラリをコーティングして正極を形成した。そして、前記分離膜の他側表面を覆う電解質層の露出表面上にZn粒子、結着材及び導電材を混合して製造したスラリをコーティングして負極を形成した。
【0039】
実施例2
ポリアクリル酸とカルボキシメチルセルロースとの高分子ブレンドを使用するの代わりに、1:1の重量比で混合されたポリエチレンオキサイドとポリビニルアルコールとの高分子ブレンドを使用した点を除いては、実施例1と同じ方法で密閉型フィルム一次電池を製造した。
【0040】
実施例3
分離膜として100μm厚さの織造されたガラスファイバを使用し、水系電解質組成物を製造するために、6MのKOH溶液の代わりに6MのNH4Cl水溶液を使用した点を除いては、実施例1と同じ方法で密閉型フィルム一次電池を製造した。
【0041】
対照例
従来技術によるマンガン電池及びアルカリ電池にそれぞれ適用されている通常のライナーペーパー/NH4Cl電解質システムを製造した。このために、120μmの厚さのライナーペーパーに6MのNH4Cl水溶液を含浸させた。前記電解質システムに実施例1と同じ方法で正極及び負極を形成して、フィルム一次電池を形成した。
【0042】
図5は、本発明による密閉型フィルム一次電池のイオン伝導度特性を評価するために、実施例1ないし実施例3でそれぞれ製造した密閉型フィルム一次電池のイオン伝導度を対照例の場合と比較した結果を示すグラフである。
【0043】
図5に示したように、実施例1ないし実施例3の場合には、対照例の場合より優秀なイオン伝導度を表した。図5の結果から、実施例1ないし実施例3の場合には、同じ電圧印加条件下で単位長さ当たりイオンの移動経路が短縮して、イオン伝導度が向上した結果が得られたということが分かる。このように向上したイオン伝導度により、優秀な高率放電及び高出力特性が得られる。
【0044】
図6は、本発明による密閉型フィルム一次電池の温度変化によるイオン伝導度の変化量を評価するために、実施例1ないし実施例3でそれぞれ製造した密閉型フィルム一次電池のイオン伝導度を対照例の場合と比較した結果を示すグラフである。
【0045】
図6に示したように、実施例1ないし実施例3の場合には、温度を80℃まで昇温させつつイオン伝導度を測定するとき、対照例の場合に比べてイオン伝導度の変化がほとんどなくほぼ一定な値を表した。図6の結果から、実施例1ないし実施例3で製造した密閉型フィルム一次電池は、長期間保存及び放置時に電解液の蒸発による性能の低下が顕著に抑制されたということが分かる。
【0046】
以上、本発明を望ましい実施例を挙げて詳細に説明したが、本発明は、前記実施例に限定されず、本発明の技術的思想及び範囲内で当業者により色々な変形及び変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、密閉型フィルム一次電池関連の技術分野に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の望ましい実施形態による密閉型フィルム一次電池の要部斜視図である。
【図2】図1のII−II´線の断面による部分の一部構造を示す断面図である。
【図3】本発明の望ましい実施形態による密閉型フィルム一次電池の例示的な分離膜の構成を示す平面図である。
【図4】本発明の望ましい実施形態による密閉型フィルム一次電池の他の例示的な分離膜の構成を示す平面図である。
【図5】本発明による密閉型フィルム一次電池のイオン伝導度特性を対照例の場合と比較した結果を示すグラフである。
【図6】本発明による密閉型フィルム一次電池の温度変化によるイオン伝導度の変化量を対照例の場合と比較した結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0049】
100 密閉型フィルム一次電池
110 正極
120 負極
130,130A,130B 分離膜
132 貫通ホール
134 疎水性薄膜
140 電解質層
142 第1電解質層
144 第2電解質層
146 第3電解質層
232 貫通ホール
234 薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性高分子と、
水系電解液と、
親水性微粒子と、
からなることを特徴とする水系電解質組成物。
【請求項2】
前記水溶性高分子は、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、澱粉、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、セルロース、セルロースアセテート、カルボキシメチルセルロース、寒天及びナフィオン高分子からなる群から選択されるいずれか一つの高分子、またはそれらのうち選択される少なくとも二つの高分子のブレンドからなることを特徴とする請求項1に記載の水系電解質組成物。
【請求項3】
前記水系電解液は、蒸溜水に溶解された1ないし8Mの濃度の水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、臭化カリウム(KBr)、塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化亜鉛(ZnCl2)、塩化アンモニウム(NH4Cl)、硫酸(H2SO4)またはナフィオン溶液からなることを特徴とする請求項1に記載の水系電解質組成物。
【請求項4】
前記親水性微粒子は、多孔性無機物からなることを特徴とする請求項1に記載の水系電解質組成物。
【請求項5】
前記親水性微粒子は、シリカ、タルク、アルミナ(Al23)、チタニア(TiO2)、粘土またはゼオライトからなることを特徴とする請求項4に記載の水系電解質組成物。
【請求項6】
前記親水性微粒子は、有機物からなることを特徴とする請求項1に記載の水系電解質組成物。
【請求項7】
前記親水性微粒子は、ポリエチレンイミン、エチレングリコールまたはポリエチレングリコールからなることを特徴とする請求項6に記載の水系電解質組成物。
【請求項8】
前記親水性微粒子は、前記水系電解液の総重量を基準として0.1ないし50重量%含まれていることを特徴とする請求項1に記載の水系電解質組成物。
【請求項9】
正極と、
負極と、
前記正極と負極との間でそれらとそれぞれ所定距離ほど離隔された状態でそれらと平行に延びており、複数の貫通ホールが形成された薄膜からなる分離膜と、
前記正極と負極との空間に満たされている非流動性電解質層と、を備え、
前記電解質層は、前記正極と前記分離膜との間で前記正極と平行に延びている第1電解質層と、前記負極と前記分離膜との間で前記負極と平行に延びている第2電解質層と、前記第1電解質層及び第2電解質層にそれぞれ一体に連結されるように前記分離膜の貫通ホールの内部を満たしている複数の第3電解質層と、を備えることを特徴とする密閉型フィルム一次電池。
【請求項10】
前記分離膜は、疎水性高分子からなることを特徴とする請求項9に記載の密閉型フィルム一次電池。
【請求項11】
前記分離膜は、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンとの共重合体、フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンとの共重合体、ナイロン、ポリアクリロニトリル、エチルビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスルホン、ポリイミド、ポリウレタン、ポリブタジエン、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート及びポリブチルメタクリレート高分子からなる群から選択されるいずれか一つの高分子、またはそれらのうち選択される少なくとも二つの高分子のブレンドからなることを特徴とする請求項10に記載の密閉型フィルム一次電池。
【請求項12】
前記分離膜は、織造されたガラスファイバまたはカーボンファイバからなることを特徴とする請求項9に記載の密閉型フィルム一次電池。
【請求項13】
前記分離膜に形成された貫通ホールは、10μmないし2mmの開口幅を有することを特徴とする請求項9に記載の密閉型フィルム一次電池。
【請求項14】
前記分離膜は、5ないし500μmの厚さを有することを特徴とする請求項9に記載の密閉型フィルム一次電池。
【請求項15】
前記第1電解質層及び第2電解質層は、それぞれ10ないし300μmの厚さを有することを特徴とする請求項9に記載の密閉型フィルム一次電池。
【請求項16】
前記電解質層は、水溶性高分子と、水系電解液と、親水性微粒子との混合物からなることを特徴とする請求項9に記載の密閉型フィルム一次電池。
【請求項17】
前記親水性微粒子は、シリカ、タルク、アルミナ(Al23)、チタニア(TiO2)、粘土、ゼオライト、ポリエチレンイミン、エチレングリコールまたはポリエチレングリコールからなることを特徴とする請求項16に記載の密閉型フィルム一次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−130559(P2008−130559A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−298193(P2007−298193)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(596180076)韓國電子通信研究院 (733)
【氏名又は名称原語表記】Electronics and Telecommunications Research Institute
【住所又は居所原語表記】161 Kajong−dong, Yusong−gu, Taejon korea
【Fターム(参考)】