説明

水素ガスエンジン及び省エネ自動車

【課題】化石燃料を使用することなく、温暖化ガスの排出を抑制する。
【解決手段】供給された空気を圧縮する圧縮機107と、圧縮機107により圧縮された圧縮空気と、燃料ガスとを混合して、その混合ガスを燃焼させる燃焼器102と、燃焼器102における燃料ガスと圧縮空気の燃焼時における膨張力を利用して、動力を発生させるタービン106と、水を電気分解することによって水素ガス及び酸素ガスを発生させるガス発生装置101と、ガス発生装置101を燃焼器102に、分配ユニット200を通じて、或いは直接接続し、水素ガス及び酸素ガスを燃料ガスとして燃焼器に供給する移送管113とを備え、圧縮機107は、タービン106により発生された動力により、空気の圧縮を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ガス及び酸素ガスを燃料ガスとして利用する水素ガスエンジン及びそのエンジンを搭載した省エネ自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化などの環境問題が発生し、自動車に関しては、燃費の効率化や、排気ガスの清浄化が試みられている。ところが、化石燃料を使用した内燃機関のみを備えた自動車では、その改善の限界が生じている。そこで、現在においては、内燃機関と電動機の2つの原動機を備えたハイブリッド自動車が開発され、実用化されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−020911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1で開示されたハイブリッド車については、化石燃料のみを燃料に使用する自動車よりも、大気汚染ガスの排出が抑えられている。ところが、そのハイブリッド車では、依然として内燃機関による走行が主となっており、その燃料としてガソリンが使用されていることから、二酸化炭素などの大気汚染物が排出されている。
【0005】
そこで、本発明は以上の点に鑑みてなされたもので、化石燃料を使用することなく、温暖化ガスの排出を抑制できる水素ガスエンジン及び、そのエンジンを搭載した省エネ自動車を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、水素ガスエンジンであって、
供給された空気を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機による圧縮空気と、燃料ガスとの混合ガスを燃焼させる燃焼器と、
前記燃焼器における、前記混合ガスの燃焼による膨張力を利用して、動力を発生させる駆動部と、
水を電気分解することによって水素ガス及び酸素ガスを生成するガス発生装置と、
前記ガス発生装置を前記燃焼器に直接接続させ、前記水素ガス及び酸素ガスを、前記燃料ガスとして前記燃焼器に供給する燃料ガス供給手段と
を備え、前記圧縮手段は、前記タービンにより発生された動力により、空気の圧縮を行う
ことを特徴とする。
【0007】
なお、上記発明では、前記駆動部は、前記混合ガスの燃焼による膨張力を利用して回転されるタービンとすることができる。
【0008】
また、前記燃焼器及び前記圧縮機は、有底のシリンダーと、該シリンダー内を上下動するピストンにより、該シリンダー内に画成された燃焼室とすることができ、前記駆動部は、前記混合ガスの燃焼による膨張力を利用して上下動する前記ピストンとすることができる。
【0009】
この発明では、ガス発生装置によって、水から水素ガス及び酸素ガスを発生させ、その水素ガス及び酸素ガスを、動力エンジンの燃料ガスとして使用している。すなわち、その動力エンジンのための燃料が、水と電気であるため、燃料が安価であり、それらを簡単に入手でき、経済的となる。したがって、ガソリンのような化石燃料に比べて、コストを大幅に軽減できる。また、水素ガス及び酸素ガスは、燃焼後に水に変化するので、無公害、無汚染、無毒性で、環境を汚染しないクリーン燃焼が実現できる。
【0010】
上記発明において、前記燃料ガス供給手段は、前記ガス発生装置からの発生ガスを利用して火炎を発生させ、その火炎を前記燃焼器に供給することが好ましい。この場合には、火炎を発生するための装置が不要となるため、部品を減少させ、装置を小型化できる。
【0011】
上記発明において、前記燃焼器は、前記ガス発生装置からの発生ガスの一部により火炎を発生させ、前記圧縮空気を、その火炎を残りの発生ガスと混合させて燃焼させることが好ましい。この場合には、ガス発生装置から発生した火炎を燃焼器に供給することによって、燃焼器での燃焼を促進させることができる。
【0012】
上記発明において、受光により電力を発生させる、太陽光(ソーラー)発電機などの光発電機をさらに備え、前記ガス発生装置は、前記電気分解に必要な電力を、前記光発電機からも取ることが好ましい。この場合には、光エネルギーから取った電力で、ガス発生装置を駆動するための電力を補うので、環境を汚染しないクリーン燃焼が実現できる。
【0013】
上記発明において、風力により電力を発生させる風力発電機をさらに備え、前記ガス発生装置は、前記電気分解に必要な電力を、前記風力発電機からも取ることが好ましい。この場合には、風力から取った電力で前記ガス発生装置を駆動するための電力を補うので、環境を汚染しないクリーン燃焼が実現できる。
【0014】
また、他の発明は、上記発明の水素ガスエンジンにより走行する省エネ自動車である。この発明によれば、化石燃料を使用することなく、温暖化ガスの排出を抑制する自動車を提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、化石燃料を使用することなく、温暖化ガスの排出を抑制できる水素ガスエンジン及び、そのエンジンを搭載した省エネ自動車を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本実施形態に係る、自動車1の外観図である。
【図2】図2は、本実施形態に係る水素ガスタービンエンジン10を搭載した自動車1の内部構造を示すブロック図である。
【図3】図3(a)は、実施形態の分配ユニット200の内部構造を示す断面図であり、図3(b)は、(a)におけるA−A断面図である。
【図4】図4は、本実施形態に係る水素ガスタービンエンジン10の動作を示すフローチャートである。
【図5】図5は、実施形態に係る分配ユニット200の動作を示すフローチャートである。
【図6】図6は、実施形態に係る分配ユニット200の動作(全てのガスを供給する場合)を示す断面図である。
【図7】図7は、実施形態に係る分配ユニット200の動作(火炎を供給する場合)を示す断面図である。
【図8】図8は、実施形態に係る分配ユニット200の動作(一部のガスを分配する場合)を示す断面図である。
【図9】図9は、変更例に係る4サイクルエンジンを搭載した自動車1の内部構造を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(水素ガスタービンエンジン10の構成)
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態においては、本発明の例として、水素ガスタービンエンジンで走行する省エネ自動車を説明する。本実施形態では、駆動部として、混合ガスの燃焼による膨張力を利用して回転されるタービンを用いた、水素ガスタービンエンジンを例に説明する。図1は、本実施形態に係る水素ガスタービンエンジンを動力エンジンとして搭載した省エネ自動車の外観図であり、図2は、その内部構造を示すブロック図である。
【0018】
なお、本実施形態では、本発明の水素ガスタービンエンジンを、自動車に搭載した場合を例に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、この水素ガスタービンエンジンを、飛行機や船舶など他の乗物にも適用することができる。
【0019】
図2に示すように、その自動車の水素ガスタービンエンジン10は、主として、ガス発生装置101、燃焼器102を備え、さらに、一つの軸に連結されたタービン106、圧縮機107及び発電機108を備えている。
【0020】
ガス発生装置101は、水を電気分解することによって水素ガス及び酸素ガスを発生する装置であり、燃料としての水が、貯水タンク104から供給され、電源105又は充電器及び蓄電池111からの電力を使って、水を電気分解する。
【0021】
この装置の動作原理は、交流を、一時的に直流に変換し、陽極と陰極へそれぞれの電流を入力する。そして、その両極が挿入された電解槽において、水を電気分解し、水素ガスと酸素ガスを燃料ガスとして発生させる。その水として、蒸留水又は軟水が使用でき、電源からの電気エネルギーを加えることにより、水素ガスと酸素ガスの混合ガスが発生する。この発生ガスの圧力は、圧力スイッチとコントローラによって自動的に制御され、フロー調整器を経由されることにより、その発生ガスの出力を調整することができる。
【0022】
ガス発生装置101には、燃焼器102が、移送管113を介して、接続されている。この移送管113は、発生ガスを、燃料ガスとして、燃焼器102へ供給するための燃料ガス供給手段である。すなわち、ガス発生装置101から生じた水素ガス及び酸素ガスは、燃料ガスとして、移送管113を通じて、燃焼器102に供給される。
【0023】
また、移送管113は、前記燃料ガスを利用して、自ら火炎を発生させる機能として、分配ユニット200を備えている。図3に示すように、この分配ユニット200は、燃料ガスに着火する着火装置202と、発生した火炎の逆流を防止する逆止弁ユニット210と、その火炎を噴射する火炎放射器220と、燃料ガスの一部を分岐させる分岐ユニット230とから構成される。
【0024】
逆止弁ユニット210は、ガス発生装置101からの経路を開閉するバルブ204と、燃料ガスが通過する内部空間213と、空間213の中で移動するボール211とから構成される。
【0025】
内部空間213では、ボール211の移動を規制するテーパー214及びストッパ212が形成されている。テーパー214は、ガス発生装置101方向へ移動するボール211を止める形であり、内部空間213の圧力が高くなったとき、テーパー214がボール211によって塞がれ、ボール211は、内部空間213の中のガスが、ガス発生装置101へ、逆流するのを止める。
【0026】
反対側のストッパ212は、下流方向の火炎放射器220へ移動するボール211を止める4つのフランジであり、図6に示すように、内部空間213の圧力が低くなったとき、ストッパ212がボール211を止めるが、ストッパ212,212の間の隙間がガスの流路となり、ガスの火炎放射器220への流れは止められない。その際、図8に示すように、分岐ユニット230のバルブ205を開けば、ガスの一部が移送管114側へ流出する。
【0027】
分岐ユニット230は、逆止弁ユニット210からの経路を開閉するバルブ205と、燃料ガスが通過する内部空間233と、空間233の中で移動するボール231とから構成される。
【0028】
内部空間233では、ボール231の移動を規制するテーパー234及びストッパ232が形成されている。テーパー234は、内部空間213側へ移動するボール231を規制する形状であり、内部空間233の圧力が高くなったとき、テーパー234がボール231によって閉塞され、ボール231は、内部空間233の中のガスが、内部空間213側へ、戻るのを規制する。
【0029】
反対側のストッパ232は、下流方向へ移動するボール231を止めるフランジであり、内部空間233の圧力が低くなったとき(内部空間213の圧力が高くなったとき)、ストッパ232がボール231を規制するが、ストッパ232,232の間の隙間がガスの流路となり、ガスの移送管214への流入は制限されない。
【0030】
火炎放射器220は、内部空間213からの燃料ガスが通過する内部空間223と、内部空間223の中で移動するボール221とから構成される。内部空間223内に、燃料ガスに着火する着火装置202が配置され、また、圧縮器107からの導管201が接続されている。この内部空間223では、ボール221の移動を規制するテーパー224及びストッパ222が形成されている。
【0031】
テーパー224は、内部空間213方向へ移動するボール221を規制する形であり、内部空間223の圧力が高くなったとき、テーパー224がボール221によって閉塞され、ボール221は、内部空間223の中のガスが、内部空間213へ、逆流するのを規制する。
【0032】
火炎放射器220は、火炎を噴射する圧力として、圧縮機107の圧縮空気の一部を使用している。すなわち、この内部空間223の圧力を上昇させるために、導管201のバルブ206を開き、圧縮空気を内部空間223の中へ流入させる。このように圧縮空気が吹き込まれることにより、ボール221がテーパー224へ押しつけられる。そして、図7に示すように、内部空間223の圧力が高くなったときに、着火装置202がそのガスに着火すれば、発生した火炎が燃焼器102側へ放出される。
【0033】
反対側のストッパ222は、下流方向へ移動するボール221を規制するフランジであり、図6に示すように、内部空間223の圧力が低くなったとき、ストッパ222がボール221を規制するが、ストッパ222と222との間の隙間がガスの流路となり、ガスの燃焼器102への流れは制限されない。
【0034】
さらに、燃料ガス供給手段としての移送管113は、ガス発生装置101からの燃料ガス(発生ガス)の一部又は全部により火炎を発生させる機能も備えている。詳しくは、分岐ユニット230のバルブ234を閉止し、ガス発生装置101からの発生ガスの全部を火炎放射器220へ送り出した場合は、火炎放射器220では、燃料ガスの全部により火炎を発生させる。
【0035】
分岐ユニット230から、ガス発生装置101からの燃料ガスの一部を、火炎放射器220へ送り出した場合は、火炎放射器220では、燃料ガスの一部により火炎を発生させ、残りの燃料ガスは、移送管113とは異なる移送管114を通じて、燃焼器102に供給される。
【0036】
そして、燃焼器102は、圧縮空気を火炎及び残りの燃料ガスに混合し、それらを燃焼させる。すなわち、分配ユニット200からの火炎を、燃焼器102に供給することによって、燃焼器102の中の燃焼を促進させることができる。
【0037】
上記しくみによって、分配ユニット200は、燃焼器102へ供給される燃料ガス及び火炎の量及びバランスをコントロールすることができる。すなわち、分配ユニット200は、ガス発生装置101からのガスのみを、火炎を加えることなくそのまま、燃焼器102へ注入することができ、そればかりでなく、分配ユニット200は、燃料ガスの一部、又は全部を使って火炎を発生させ、それを燃焼器102へ注入することができる。このとき、着火される前のガスを、降温液に通すことによって、火炎の温度を適宜調節することもできる。
【0038】
なお、図示されていないが、ガス発生装置101と燃焼器102とを直接接続して、それらを一体化し、移送管113、114及び分配ユニット200を省略する構成としてもよい。
【0039】
圧縮機107は、空気を圧縮する装置であり、外部からの吸気を圧縮し、高温高圧の圧縮空気を燃焼器102へ供給する。また、圧縮機107は、タービン106と同一のシャフトに接続されており、タービン106による回転力により、空気を圧縮する。
【0040】
燃焼器102は、圧縮機107による圧縮空気と、燃料ガスとの混合ガスを燃焼させる装置であり、燃焼させた燃焼ガスをタービン106に供給する。なお、水素ガス及び酸素ガスの燃焼により生じる水は、ドレインや復水器などによって、燃焼器102から排出され、ボイラ109へ供給される。
【0041】
タービン106は、燃焼器102における、混合ガスの燃焼による膨張力を利用して、動力を発生させるガスタービン装置である。具体的に、タービン106においては、燃焼されて膨張した燃料ガスを、羽根車にぶつけることで、その熱エネルギーを、回転運動エネルギーに変え、動力を発生させる。そして、本実施形態において、この発生した動力は、発電機108aと車輪24の両方に伝達され、それにより、電力を発生させたり、車輪24を回転駆動されたりする。
【0042】
詳しくは、タービン106は、タービン軸106aを介して、変速機112と接続されており、また、変速機112には、車輪24と24とを連結する車軸110が接続されている。タービン106が回転することで、その動力がタービン軸106aを介して、変速機112に伝達される。そして、変速機112によって、回転数、速度、トルク等が変換され、動力が車軸110に伝達され、車輪110に連結された車輪24と24が回転駆動し、自動車が走行する。
【0043】
なお、変速機112には、補助動力として電気モータ117が接続されており、電気モータ117からの動力によっても、車軸110を回転できるようになっている。すなわち、変速機112は、タービン106からの動力と、電気モータ117の動力とを、いずれか一方を選択的に、或いは両方を同時に、車軸110へ伝達できるようになっており、これら2つの動力の、回転数、速度、トルクを調整する。電気モータ117への電力は、電源105や、充電器及び蓄電池111、発電機108a及び108bから供給される。このように、電気モータ117の動力を、補助的に併用することによって、水素・酸素ガス発生の立ち上がり時における、起動遅延などによる初期タイムラグを解消している。
【0044】
一方、燃料ガスの燃焼によりタービン106が回転されることで、タービン106と同じ軸に接続された発電機108aが回転し、その回転によって発電される。そして、発生した電力は、充電器及び蓄電池111に供給される。なお、本実施形態において、タービン106から排気された燃焼ガスは、ボイラー109に供給される。
【0045】
ボイラ109は、燃料ガスによりプロセス蒸気を発生する装置である。詳しくは、本実施形態において、タービン106から排気された燃料ガスが、ボイラ109に供給され、ボイラにおいて、燃焼器102からの水と熱交換によってプロセス蒸気が発生し、このプロセス蒸気が蒸気タービン103に供給される。また、ボイラ109は、排気口115と接続されており、蒸気タービン103に供給されないプロセス蒸気を排気口115から排出させる。
【0046】
蒸気タービン103は、ボイラ109からのプロセス蒸気によって、運動エネルギーを発生させる装置である。具体的に、発電機108bでは、ボイラ109のプロセス蒸気が通過する位置に羽根車を配置し、その羽根車をプロセス蒸気によって回転させることで、運動エネルギーを取得する。そして、本実施形態では、このタービン(羽根車)の回転軸に発電機108bが接続されており、このタービンの回転によって発電機108bが発電するようになっている。この発電機108bも、充電器及び蓄電池111と接続されており、発生した電力は充電器及び蓄電池111に供給される。
【0047】
また、本実施形態においては、受光により電力を発生させる光発電機21と、風力により電力を発生する風力発電機22とが設けられている。本実施形態では、光発電機21と風力発電機22とからの電力を充電器及び蓄電池111で貯め、充電器及び蓄電池111から、ガス発生装置101に電力を供給し、ガス発生装置101における電気分解の電力としている。
【0048】
充電器及び蓄電池111は、発電機108a,108b,光発電機21及び風力発電機22からの電力を貯める電池と、その充電装置であり、蓄電池としては、リチウムマンガン電池、リチウムイオン電機、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池等の蓄電池を使用することができる。このように、電力を充電器及び蓄電池111に貯めておくことによって、余剰電力を、水の電気分解や、燃焼ガスの燃焼等に使用できる。なお、この充電器及び蓄電池111には、外部の電源105が接続されており、電源105からの電力供給によっても、充電が可能となっている。この電源105は、家庭用コンセントや、充電スタンド(充電スポット)の電力供給プラグへの接続端子であり、その他のバッテリーであってもよい。
【0049】
制御部116は、自動車の駆動に関する全般を制御するCPUであり、操作部23(アクセルやハンドル等)での操作に応じて、例えば、ガス発生装置101への電力や水の供給量や、タービン106で必要とされるガス圧や火炎温度の調整、変速機112の調整など、各装置の駆動信号を制御する。
【0050】
なお、本実施形態における水素ガスタービンエンジンについては、単数のガス発生装置を用いたが、例えば、複数のガス発生装置を並列して配置することもできる。
【0051】
(水素ガスタービンエンジンの動作)
そして、本実施形態では、このような水素ガスタービンエンジンで車輪24を駆動することによって、省エネ自動車1を走行させる。図4は、水素ガスタービンエンジンで自動車1を走らせるための方法の手順を示すフローチャートである。
【0052】
先ず、ドライバーがアクセルを踏み込むことで、ガス発生装置101には、貯水タンク104からの水と、充電器及び蓄電池111からの電力が供給される(ステップS101)。ガス発生装置101では、その水を電気分解し、燃料ガスを発生させる(ステップS102)。そして、この燃料ガスは燃焼器102に供給される(ステップS103)。この際、圧縮機107では、外部から空気を吸い込み、その空気を圧縮して、圧縮空気が、燃焼器102へ供給される(ステップS104及びS105)。
【0053】
燃焼器102では、供給された燃料ガスと、圧縮空気とを混合し、燃焼器102の内部で混合ガスを燃焼させて(ステップS106)、この燃焼されたガスをタービン106に供給する(ステップS107)。タービン106では、この燃焼ガスの膨張力によって、タービン(羽根車)を回転させ(ステップS108)、動力が発生する(ステップS109)。これにより、このタービンの軸106aに接続された変速機112を介して、車軸110が回転し、その車軸110の両端に繋がった車輪24が回転駆動されて、自動車1が走行する(ステップS110)。
【0054】
この際、制御部116は、操作部23(アクセルやハンドル等)の操作に応じて、ガス発生装置101での水素ガス及び酸素ガスの発生量や、燃焼器102での燃料ガスの燃焼量、変速機112の調整なども同時に行う。上述したように、ガス発生装置101には、燃焼器102が、移送管113を介して、接続され、ガス発生装置101から生じた水素ガス及び酸素ガスは、移送管113を通じて、燃焼器102に供給される。
【0055】
また、この移送管113には燃料ガスの一部を分岐させる機能と、燃料ガスの一部又は全部を利用して、火炎を発生させる機能とを有する分配ユニット200が備えられている。図5に詳しく示すように、ステップS102において、制御部116は、分配ユニット200を、以下のように制御する。
【0056】
先ず、制御部116は、燃料ガス及び火炎の必要量を算出し、これらのバランスを算出し(ステップS201)、この算出結果に基づいて、バルブ205の開放量、着火の要否を決定する。
【0057】
次いで、制御部116は、燃料ガスの全部を燃焼器102に供給するか、発生ガスの一部を分岐するか、を判断する(ステップS202)。燃料ガスの一部を分岐させて燃焼器102に供給する場合は、バルブ205を、必要量だけ開く(ステップS203)。これにより、ガス発生装置101から生じた水素ガス及び酸素ガスが、移送管113を通じて、分配ユニット200に供給されたとき、図8に示すように、その発生ガスの一部は、移送管114側へ分岐され、その分岐されたガスは、燃焼器102にそのまま供給される(ステップS204a)。
【0058】
また、その燃料ガスの残りの部分は、移送管113の内部空間223へ供給され、着火される(ステップS204b)。この結果、燃焼器102には、火炎及び燃料ガスの両方が供給される(ステップS205及びS11)。
【0059】
一方、燃料ガスの全部を燃焼器102に供給する場合は、バルブ205を完全に閉止する(ステップS206)。そして、制御部116は、ステップS201での決定に応じて、着火するかどうかを判断する(ステップS207)。着火が不要な場合は(ステップS207:N)、図6に示すように、燃料ガスは、着火されることなく、内部空間223を通過する。この結果、燃焼器102には、燃料ガスのみが直接供給される(ステップS208及びS11)。
【0060】
他方、着火が必要な場合は(ステップS207:Y)、図7に示すように、燃料ガスは、内部空間223で着火される(ステップS209)。この結果、燃焼器102には、火炎のみが供給される(ステップS210及びS11)。
【0061】
(作用・効果)
上記実施形態によれば、ガス発生装置101によって、水から水素ガス及び酸素ガスを発生させ、それらのガスを動力エンジンの燃料ガスとして使用するので、燃料となる原料は、水と一般電源のみであり、燃料コストは安価である。すなわち、その動力エンジンのための燃料が、水と電気であるため、燃料が安価であり、それらを簡単に入手でき、それが経済的となる。したがって、ガソリンのような化石燃料に比べて、コストを大幅に軽減できる。また、水素ガス及び酸素ガスは、燃焼後に水に変化するので、無公害、無汚染、無毒性で、環境を汚染しないクリーン燃焼が実現できる。
【0062】
さらに本実施形態では、ガス発生装置101により発生したガスを利用して自ら火炎を発生させ、その火炎を燃焼器102に供給するので、火炎を発生させる装置を製造、配置することがなく、部品点数の減少及び装置全体を小型化することができる。
【0063】
さらに、本実施形態では、ガス発生装置101から発生された発生ガスの一部により火炎を発生させ、その火炎を、残りの発生ガスとともに、圧縮空気と混合して燃焼できる。これにより、ガス発生装置101から発生された火炎を、燃焼器102に供給し、燃焼器102での燃焼を促進させることができる。
【0064】
本実施形態では、光発電機21、又は風力発電機22とをさらに備え、これらの発電機から、ガス発生装置101における電気分解で必要な電力を供給するので、光エネルギー、又は風力から生じた電力によってガス発生装置101を駆動させることができる。その結果、無公害、無汚染、無毒性で環境を汚染しないクリーン燃焼が実現できる。
【0065】
(変更例)
上記実施形態では、駆動部として、混合ガスの燃焼による膨張力を利用して回転されるタービンを用いた、水素ガスタービンエンジンを例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、一般的な4サイクルエンジン又は2サイクルエンジンの構造をそのまま利用することができる。図9は、本発明を一般的な4サイクルエンジンに適用した例を示すブロック図である。
【0066】
すなわち、この変更例では、水素ガスエンジン20において、有底のシリンダー120と、このシリンダー120内を上下動するピストン121により、シリンダー120内に画成された燃焼室122を、前記燃焼器及び前記圧縮機として用いる。この場合、本発明の駆動部は、混合ガスの燃焼による膨張力を利用して上下動するピストン121となる。
【0067】
燃焼室122には、ガス発生装置101が、移送管113及び114を介して、接続されている。この移送管113は、ガス発生装置101から生じた水素ガス及び酸素ガスを、燃料ガスとして、燃焼室122に供給する。また、燃焼器102では、ピストン121によって圧縮された圧縮空気と、燃料ガスとの混合ガスが燃焼され、燃焼時における膨張力によりピストン121を駆動させる。水素ガス及び酸素ガスの燃焼により生じる水は、ドレインや復水器などによって、燃焼室122から排出され、ボイラ109へ供給される。
【0068】
なお、ここでは、分配ユニット200から燃焼室122へ、ガスや火炎を噴射するための圧縮空気を、上述した圧縮器107により発生させ、分配ユニット200に供給している。
【0069】
このようなエンジンでは、ピストン121の上昇により燃料ガス及び空気を吸入し、ピストン121の下降により、これらの混合ガスを圧縮し、この圧縮した状態で着火することにより燃焼させ、燃焼後のガスや水を排出する。
【0070】
このピストン121の上下動により発生した動力は、発電機108aと車輪24の両方に伝達され、それにより、電力を発生させたり、車輪24を回転駆動されたりする。詳述すると、ピストン121は、軸106aを介して、変速機112と接続されており、また、変速機112には、車輪24と24とを連結する車軸110が接続されている。ピストン121が上下動することで、その動力が軸106aを介して、変速機112に伝達される。そして、変速機112によって、回転数、速度、トルク等が変換され、動力が車軸110に伝達され、車輪110に連結された車輪24と24が回転駆動し、自動車が走行する。
【0071】
なお、このような水素ガスエンジンの他の方式としては、例えばロータリーエンジンとすることができる。具体的には、ペリトロコイド曲線で形作られたローターハウジングと、このローターハウジング内を回転する三角形状のローターにより、ローターハウジング内に画成された燃焼室122を、前記燃焼器及び前記圧縮機として用いる。この場合、本発明の駆動部は、混合ガスの燃焼による膨張力を利用して回転するローターとなる。
【0072】
このような本変更例に係る水素ガスエンジンによれば、上述した実施形態と同様に、水から水素ガス及び酸素ガスを発生させ、それらのガスを動力エンジンの燃料ガスとして使用することにより、燃料コストを低減できるとともに、無公害、無汚染、無毒性で、環境を汚染しないクリーン燃焼が実現できる。そして、本変更例によれば、既存のガソリンエンジンと同様の構成を用いることができるため、既存の自動車の構造を大幅に変更することなく、本発明を適用することができる、製造コストを低減することができる。
【符号の説明】
【0073】
10…水素ガスタービンエンジン
20…水素ガスエンジン
21…光発電機
22…風力発電機
23…操作部
24…車輪
101…ガス発生装置
102…燃焼器
103…蒸気タービン
104…貯水タンク
105…電源
106…タービン
106a…タービン軸
107…圧縮機
108a,108b…発電機
109…ボイラ
110…車軸
111…充電器及び蓄電池
112…変速機
113…移送管
114…移送管
115…排気口
116…制御部
117…電気モータ
120…シリンダー
121…ピストン
122…燃焼室
200…分配ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスエンジンであって、
供給された空気を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機による圧縮空気と、燃料ガスとの混合ガスを燃焼させる燃焼器と、
前記燃焼器における、前記混合ガスの燃焼による膨張力を利用して、動力を発生させる駆動部と、
水を電気分解することによって水素ガス及び酸素ガスを生成するガス発生装置と、
前記ガス発生装置を前記燃焼器に直接接続させ、前記水素ガス及び酸素ガスを、前記燃料ガスとして前記燃焼器に供給する燃料ガス供給手段と
を備え、
前記圧縮手段は、前記駆動部により発生された動力により、空気の圧縮を行う
ことを特徴とする水素ガスエンジン。
【請求項2】
請求項1に記載の水素ガスエンジンであって、
前記駆動部は、前記混合ガスの燃焼による膨張力を利用して回転されるタービンであることを特徴とする水素ガスエンジン。
【請求項3】
請求項1に記載の水素ガスエンジンであって、
前記燃焼器及び前記圧縮機は、有底のシリンダーと、該シリンダー内を上下動するピストンにより、該シリンダー内に画成された燃焼室であり、
前記駆動部は、前記混合ガスの燃焼による膨張力を利用して上下動する前記ピストンである
ことを特徴とする水素ガスエンジン。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の水素ガスエンジンであって、
前記燃料ガス供給手段は前記ガス発生装置からの発生ガスを利用して火炎を発生させ、その火炎を前記燃焼器に供給する。
ことを特徴とする水素ガスエンジン。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の水素ガスエンジンであって、
前記燃料ガス供給手段は前記ガス発生装置からの発生ガスの一部により火炎を発生させ、
前記燃焼器は、前記圧縮空気を前記火炎及び残りの前記発生ガスに混合し、それらを燃焼させる
ことを特徴とする水素ガスエンジン。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の水素ガスエンジンであって、
受光により電力を発生させる光発電機をさらに備え、前記ガス発生装置は、前記電気分解に必要な電力を、前記光発電機から取る
ことを特徴とする水素ガスエンジン。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の水素ガスエンジンであって、
風力により電力を発生させる風力発電機をさらに備え、前記ガス発生装置は、前記電気分解に必要な電力を、前記風力発電機から取る
ことを特徴とする水素ガスエンジン。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の水素ガスエンジンの動力により走行することを特徴とする省エネ自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−82769(P2012−82769A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230533(P2010−230533)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(504105553)
【Fターム(参考)】