説明

水素ガス充填装置

【課題】本発明は、高い安全性を確保した上で、水素ガス充填装置の設置面積を縮小することが可能であると共に、現地での据え付けを短時間で行なうことの可能な水素ガス充填装置を提供することを課題とする。
【解決手段】支持台13と、支持台13の上面13aに配置され、水素ガスを圧縮する圧縮機14と、支持台13の上面13aに配置され、圧縮された水素ガスを貯蔵する蓄圧器28−1,28−2,28−3と、支持台13の上面13aに配置され、蓄圧器28−1,28−2,28−3から供給された水素ガスを冷媒またはブラインにより冷却する熱交換器47と、支持台13の上面13aに配置された筐体61と、筐体61内に収容され、熱交換器47から回収した冷媒またはブラインを冷却し、冷却した冷媒またはブラインを熱交換器47に供給する冷凍機62と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ガス充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代の自動車として、水素ガスを燃料として用いる燃料電池搭載車両(「水素自動車」、或いは「水素エンジン自動車」ともいう)の開発が進められている。燃料電池搭載車両は、炭酸ガス、NOx、SOx等の排出がなく、水を排出するだけの環境にやさしい自動車とされている。
【0003】
上記燃料電池搭載車両は、燃料補給時には通常のガソリン自動車と同様に、その燃料である水素ガスを充填する水素ガス充填装置を備えた供給基地(水素ステーション)まで走行し、該水素ガス充填装置から水素ガスを補給する。
【0004】
上記水素ガス充填装置では、車載用水素貯蔵タンクの温度上昇を抑える目的で、予め冷却した水素ガスを供給している。水素ガスの予冷には、例えば、ブライン等が流通する流路内に水素ガス配管を配置した構造の熱交換器を用いる(例えば、特許文献1参照。)。
水素ガスを冷却した後のブライン等は、別途設置された冷凍機に導入され、冷凍機により冷却された後、再び熱交換器に戻され水素ガスの冷却に利用される。
【0005】
ところで、水素ガスは、爆発範囲が広く、着火エネルギーが小さいため、燃焼及び爆発の危険性の高いガスである。このため、水素ガスの漏洩の危険性のある環境下で使用する電気機器に対しては、所定の防爆性能が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−164177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、水素ガス充填装置に利用可能な防爆性能を有する冷凍機は、一般に流通していない。そこで、ブライン等を冷却する冷凍機は、安全確保の観点から、水素ガス充填装置を構成する蓄圧器、圧縮機、及び熱交換器等の水素ガスの漏洩の恐れのある機器から、所定距離、例えば、数m以上離間した位置に設置する必要がある。これにより、水素ガス充填装置の設置面積が広くなるため、水素ガス充填装置の設置面積を縮小することが困難であった。
【0008】
また、水素ステーションに水素ガス充填装置を新規に設置する場合、蓄圧器、圧縮機、熱交換器、及び冷凍機等の各種機器を個別に水素ステーションに搬入し、現地で設置や配管工事を実施するため、水素ガス充填装置の据え付けに多くの時間を要するという問題もあった。
【0009】
そこで本発明は、高い安全性を確保した上で、水素ガス充填装置の設置面積を縮小することが可能であると共に、現地での据え付けを短時間で行なうことの可能な水素ガス充填装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明によれば、支持台と、前記支持台の上面に配置され、水素ガスを圧縮する圧縮機と、前記支持台の上面に配置され、前記圧縮機により圧縮された前記水素ガスを貯蔵する蓄圧器と、前記支持台の上面に配置され、前記蓄圧器から供給された前記水素ガスを冷媒またはブラインにより冷却する熱交換器と、前記支持台の上面に配置された筐体と、前記筐体内に収容され、前記熱交換器から回収した前記冷媒またはブラインを冷却し、冷却した前記冷媒またはブラインを前記熱交換器に供給する冷凍機と、を有することを特徴とする水素ガス充填装置が提供される。
【0011】
また、請求項2に係る発明によれば、前記支持台の上面は、2つの領域に分割されており、前記2つの領域のうち、一方の領域である第1の領域に、前記圧縮機、前記蓄圧器、及び前記熱交換器を配置すると共に、他方の領域である第2の領域に、前記冷凍機を収容する前記筐体を配置したことを特徴とする請求項1記載の水素ガス充填装置が提供される。
【0012】
また、請求項3に係る発明によれば、前記支持台の上面うち、前記第1の領域と前記第2の領域との間に位置する部分に、障壁を設けたことを特徴とする請求項2記載の水素ガス充填装置が提供される。
【0013】
また、請求項4に係る発明によれば、前記冷凍機は、空冷式冷凍機であり、前記筐体は、筐体本体と、該筐体本体に設けられた吸気口と、前記筐体本体に設けられた排気口と、を有することを特徴とする請求項1ないし3のうち、いずれか1項記載の水素ガス充填装置が提供される。
【0014】
また、請求項5に係る発明によれば、前記筐体本体は、平面視矩形とされ、4つの側壁を有しており、前記4つの側壁のうち、前記第1の領域と対向しない側壁に、前記吸気口を配置したことを特徴とする請求項4記載の水素ガス充填装置が提供される。
【0015】
また、請求項6に係る発明によれば、前記4つの側壁のうち、前記第1の領域と対向する側壁の反対側に位置する側壁の下部に、前記吸気口を配置したことを特徴とする請求項5記載の水素ガス充填装置が提供される。
【0016】
また、請求項7に係る発明によれば、前記吸気口に、ガラリを設けたことを特徴とする請求項4ないし6のうち、いずれか1項記載の水素ガス充填装置が提供される。
【0017】
また、請求項8に係る発明によれば、前記排気口を、前記筐体本体の天井部に配置したことを特徴とする請求項4ないし7のうち、いずれか1項記載の水素ガス充填装置が提供される。
【0018】
また、請求項9に係る発明によれば、前記熱交換器により冷却された水素ガスを燃料電池搭載車両の車載用水素貯蔵タンクに供給するディスペンサーを有し、前記ディスペンサーを、前記第1の領域に配置したことを特徴とする請求項2ないし8のうち、いずれか1項記載の水素ガス充填装置が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の水素ガス充填装置によれば、支持台の上面に配置された筐体内に冷凍機を収容することで、圧縮機、蓄圧器、及び熱交換器から水素ガスが漏洩した際、筐体により水素ガスが冷凍機の内部に流入することを抑制可能となる。
これにより、支持台の上面に配置される圧縮機、蓄圧器、及び熱交換器の近傍に、筐体に収容された冷凍機を配置することが可能となる。
【0020】
よって、高い安全性を確保した上で、圧縮機、蓄圧器、熱交換器、及び冷凍機を収容する筐体が配置される支持台の外形のサイズを小型化することが可能となるので、水素ガス充填装置の設置面積を縮小できる。
【0021】
また、支持台の上面に、圧縮機、蓄圧器、熱交換器、及び冷凍機を収容する筐体を配置すると共に、現地(設置場所)に水素ガス充填装置を運搬する前に、予め圧縮機、蓄圧器、熱交換器、及び冷凍機等の機器間を接続する配管工事を完了させることで、支持台ごと現地に水素ガス充填装置を運搬することが可能となる。
【0022】
これにより、現地に到着後に、圧縮機、蓄圧器、熱交換器、及び冷凍機等の機器間を接続する配管工事を行なう必要がなくなるため、現地での水素ガス充填装置の据え付けを短時間で行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係る水素ガス充填装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】図1に示す水素ガス充填装置をA視した際の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明を適用した実施の形態について詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の実施形態の構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の水素ガス充填装置の寸法関係とは異なる場合がある。
【0025】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係る水素ガス充填装置の概略構成を示す平面図であり、図2は、図1に示す水素ガス充填装置をA視した際の側面図である。
なお、図2では、説明の便宜上、図1に示す筐体61のみ断面図として図示する。また、図2に示す筐体61の断面は、図1に示す筐体61のB−B線断面に対応している。さらに、図2では、図1に示す燃料電池搭載車両11、水素ガス供給ライン15、バルブ16,21,22,24〜26,33,34,37,38,42,45、圧縮水素ガス導入及び導出ライン18、導入ライン18A、導出ライン18B、蓄圧器28−1,28−2,28−3、蓄圧器支持体29、分岐ライン32,36,41,44、及びディスペンス用ホース56の図示を省略する。
【0026】
図1及び図2を参照するに、本実施の形態の水素ガス充填装置10は、支持台13と、圧縮機14と、水素ガス供給ライン15と、バルブ16,21,22,24〜26,33,34,37,38,42,45,55と、圧縮水素ガス導入及び導出ライン18と、蓄圧器28−1,28−2,28−3と、蓄圧器支持体29と、分岐ライン32,36,41,44と、熱交換器47と、冷媒回収用配管51と、冷媒供給用配管52と、ディスペンサー54と、ディスペンス用ホース56と、筐体61と、冷凍機62と、障壁64と、を有する。
【0027】
支持台13は、矩形の板状部材である支持板66と、支持板66の下面66a側に設けられ、設置場所12から支持板66を浮かせた状態で支持する複数の脚部67と、を有する。
支持台13の上面13a(支持板66の上面)は、平坦な面とされている。支持台13の上面13aは、2つの領域に分割されており、第1の領域13A(一方の領域)と、第2の領域13B(他方の領域)と、を有する。第1及び第2の領域13A,13Bは、平面視矩形とされている。
【0028】
圧縮機14は、第1の領域13Aに配置されている。圧縮機14は、水素ガス供給ライン15及びバルブ16を介して、水素ガス供給源(図示せず)と接続されている。圧縮機14は、水素ガス供給源(図示せず)から供給された水素ガスを圧縮する。
【0029】
圧縮水素ガス導入及び導出ライン18は、圧縮機14と接続されており、途中で導入ライン18Aと導出ライン18Bとに分岐されている。言い換えれば、圧縮水素ガス導入及び導出ライン18は、途中で2つのラインに分岐されている。
【0030】
分岐直後の導入ライン18Aには、バルブ21が設けられている。導入ライン18Aは、バルブ21、蓄圧器28−1の近傍に配置されたバルブ24、及びバルブ21とバルブ24との間に配置されたバルブ25を介して、蓄圧器28−1と接続されている。
導入ライン18Aは、バルブ21,24,25が開いた状態で、かつバルブ22,26が閉じた状態のときに、圧縮機14が圧縮した水素ガスを蓄圧器28−1に導入する。これにより、蓄圧器28−1内には、圧縮された水素ガスが充填される。
【0031】
分岐直後の導出ライン18Bには、バルブ22が設けられている。導出ライン18Bは、バルブ24とバルブ25との間に位置する導入ライン18Aと接続されている。導出ライン18Bと導入ライン18Aとの接続位置の近傍に位置する導出ライン18Bには、バルブ26が設けられている。
また、バルブ22とバルブ26との間に位置する導出ライン18Bは、ディスペンサー54と接続されている。
【0032】
蓄圧器28−1,28−2,28−3は、それぞれ2つずつ設けられており、第1の領域13Aに配置された蓄圧器支持体29に支持されている。
蓄圧器28−1は、バルブ24,26が開いた状態で、かつバルブ22,25が閉じた状態において、ディスペンサー54を介して蓄圧器28−1内の圧縮された水素ガスを熱交換器47に供給する。
【0033】
蓄圧器28−2は、導入ライン18Aから分岐した分岐ライン32と接続されている。蓄圧器28−2の近傍に位置する分岐ライン32には、バルブ33が設けられている。また、導入ライン18Aの近傍に位置する分岐ライン32には、バルブ34が設けられている。バルブ21,33,34が開いた状態で、かつバルブ22が閉じた状態において、蓄圧器28−2内に圧縮された水素ガスが貯蔵される。
【0034】
蓄圧器28−3は、導入ライン18Aから分岐した分岐ライン36と接続されている。蓄圧器28−3の近傍に位置する分岐ライン36には、バルブ37が設けられている。また、導入ライン18Aの近傍に位置する分岐ライン36には、バルブ38が設けられている。バルブ21,37,38が開いた状態で、かつバルブ22が閉じた状態において、蓄圧器28−3内に圧縮された水素ガスが貯蔵される。
【0035】
なお、本実施の形態では、一例として、6本の蓄圧器を設けた場合を例に挙げて説明したが、蓄圧器の数は、使用する頻度等に応じて適宜選択することができ、6本に限定されない。
【0036】
分岐ライン41は、導出ライン18Bから分岐されており、バルブ33とバルブ34との間に位置する分岐ライン32と接続されている。また、分岐ライン41には、バルブ42が設けられている。
バルブ21,22,34が閉じた状態で、かつバルブ33,42が開いた状態において、蓄圧器28−2内の圧縮された水素ガスが導出され、該圧縮された水素ガスがディスペンサー54を介して熱交換器47に供給される。
【0037】
分岐ライン44は、導出ライン18Bから分岐されており、バルブ37とバルブ38との間に位置する分岐ライン36と接続されている。また、分岐ライン44には、バルブ45が設けられている。バルブ21,22,38が閉じた状態で、かつバルブ37,45が開いた状態において、蓄圧器28−3内の圧縮された水素ガスが導出され、該圧縮された水素ガスが熱交換器47に供給される。
【0038】
上記説明したバルブ16,21,22,24〜26,33,34,37,38,42,45、圧縮水素ガス導入及び導出ライン18、蓄圧器28−1,28−2,28−3、及び分岐ライン32,36,41,44は、第1の領域13Aに配置されている。
【0039】
熱交換器47は、第1の領域13Aに配置されている。熱交換器47は、ディスペンサー54と接続されると共に、冷凍器62と接続された冷媒回収用配管51及び冷媒供給用配管52と接続されている。
図示していないが、熱交換器47は、ブラインが貯留された容器内に水素ガスが流通する水素ガス用配管及び冷媒回収用配管51と冷媒供給用配管52との間で循環利用される冷媒流通用配管を配置した構成とされている。
【0040】
熱交換器47で使用された例えばR404等の冷媒は、冷媒回収用配管51により冷凍機62に送られて冷凍機62で冷却され、冷凍機62で冷却された冷媒は、冷媒供給用配管52により熱交換器47に供給される。
つまり、熱交換器47で使用される冷媒は、冷凍機62、冷媒回収用配管51、及び冷媒供給用配管52により循環利用される。
【0041】
冷媒回収用配管51及び冷媒供給用配管52は、その大部分が、支持板66の下面66a側を引き回されている。支持板66には、冷媒回収用配管51及び冷媒供給用配管52を支持板66の下面66a側に引き回すための穴(図示せず)がそれぞれ設けられている。これは、水素ガスが空気よりも軽く、上方に拡散しやすいことに起因する。
【0042】
ディスペンサー54は、第1の領域13Aに配置されている。ディスペンサー54は、図示しない流量計及び流量調節弁を備える。また、ディスペンサー54には、燃料電池搭載車両11の車載用水素貯蔵タンク57へ水素ガスを供給するためのディスペンス用ホース56が接続されている。
【0043】
ディスペンサー54は、車載用水素貯蔵タンク57との間の圧力差により蓄圧器28−1,28−2,28−3から導出された水素ガスを、流量計及び流量調節弁によって流量調節した後、熱交換器47へ供給する。熱交換器47により冷却された水素ガス(具体的には、例えば、−40〜0℃の範囲内に冷却された水素ガス)は、ディスペンサー54に設けられたディスペンス用ホース56を介して車載用水素貯蔵タンク57内に充填される。
【0044】
筐体61は、筐体本体71と、排気口72と、吸気口73と、を有する。筐体本体71は、第2の領域13B(支持台13の上面13aの一部)に配置されている。筐体本体71は、その内部に冷凍機62を収容している。
【0045】
このように、支持台13の上面13aに筐体61を設け、筐体61内に冷凍機62を収容することで、圧縮機14、蓄圧器28−1,28−2,28−3、熱交換器47、及びディスペンサー54から水素ガスが漏洩した際、筐体61により水素ガスが冷凍機62の内部に流入することを抑制可能となる。
これにより、1つの支持台13の上面13aに配置された圧縮機14、蓄圧器28−1,28−2,28−3、及び熱交換器47の近傍に、筐体61に収容された冷凍機62を配置することが可能となる。
【0046】
よって、高い安全性を確保した上で、圧縮機14、蓄圧器28−1,28−2,28−3、熱交換器47、及びディスペンサー54、及び冷凍機62を収容する筐体61が配置される支持台13の外形のサイズを小型化して、水素ガス充填装置10の設置面積を縮小することができる。
【0047】
また、支持台13の上面13aに、圧縮機14、蓄圧器28−1,28−2,28−3、熱交換器47、及びディスペンサー54、及び筐体61に収容された冷凍機62を配置すると共に、現地(設置場所12)に運搬する前に、予め圧縮機14、蓄圧器28−1,28−2,28−3、熱交換器47、及び冷凍機62等の機器間を接続する配管工事を完了させることで、支持台13ごと現地に水素ガス充填装置10を運搬することが可能となる。
【0048】
これにより、現地に到着後に、圧縮機14、蓄圧器28−1,28−2,28−3、熱交換器47、及び冷凍機62等の機器間を接続する配管工事を行なう必要がなくなるため、現地での水素ガス充填装置10の据え付けを短時間で行なうことができる。
【0049】
筐体本体71は、平面視矩形とされており、第1〜第4の側壁71A,71B,71C,71D(4つの側壁)と、底板部71Eと、天井部71Fと、を有する。筐体本体71の材料としては、例えば、鋼を用いることができる。
【0050】
排気口72は、天井部71Fに設けられている。排気口72は、筐体61内のガスを排気することで、筐体61内の熱を外部に放出するためのものである。
また、排気口72は、冷凍機62の排気を妨げなければ、天井部71Fの略全体に形成してもよい。
さらに、エアーカーテン効果を期待する場合、天井部71Fのうち、第1の領域13Aの近傍に、障壁64に平行なスリット状や、長方形として形成するとよい。
【0051】
吸気口73は、第1〜第4の側壁71A,71B,71C,71Dのうち、排気口72からできるだけ離間し、かつ第1の領域13Aと対向しない第2の側壁71Bの下部(支持台13の上面13a近傍)に形成されている。
【0052】
このように、排気口72からできるだけ離間した位置に吸気口73を配置することで、排気口72から排気された温かいガスが吸気口73を介して冷凍機62内に取り込まれることを抑制できる。つまり、吸気口73は、ショートサイクル防止のために、排気口72からできるだけ離間した位置に吸気口73を配置するとよい。
【0053】
また、第1の領域13Aと対向しない第2の側壁71Bに吸気口73を設けることにより、第1の領域13Aに配置された圧縮機14、蓄圧器28−1,28−2,28−3、熱交換器47、及びディスペンサー54から水素ガスが漏れた際、吸気口73を介して、冷凍機62内に水素ガスが流入することを抑制できる。
【0054】
また、吸気口73は、第2の側壁71Bの下部に配置することが最も好ましいが、第1の領域13Aと対向しない第3の側壁71Cの下部または第4の側壁71Dの下部に配置してもよい。
【0055】
また、吸気口73に、ガラリ(図示せず)を設けるとよい。該ガラリとしては、例えば、一対のフレーム材を離間対設し、一対のフレーム材間に所定間隔を存して複数枚のガラリ羽根の両端側を固定するようにしたものを用いることができる。
このように、吸気口73にガラリを設けることにより、吸気口73を介して、筐体61内に雨水等の水滴が侵入することを防止できる。
【0056】
さらに、上記吸気口73に、フィルター(図示せず)を設けてもよい。このように、吸気口73にフィルターを設けることで、吸気口73を介して、大気中に存在する塵や埃が筐体11内に侵入することを抑制できる。
【0057】
冷凍機62は、筐体61内に収容されており、冷媒回収用配管51及び冷媒供給用配管52と接続されている。冷凍機62としては、例えば、空冷式冷凍機や水冷式冷凍機等を使用することができるが、水素ガス充填装置10の軽量化及び構造の簡素化の観点から、空冷式冷凍機が好ましい。
【0058】
なお、冷凍機62として空冷式冷凍機を用いる場合、先に説明した排気口72及び吸気口73が必要となるが、冷凍機62として水冷式冷凍機を用いた場合、排気口72及び吸気口73は不用となる。
【0059】
障壁64は、支持台13の上面13aのうち、第1の領域13Aと第2の領域13Bとの間に位置する部分に設けられている。障壁64としては、例えば、鋼板を用いることができる。
【0060】
このように、圧縮機14、蓄圧器28−1,28−2,28−3、熱交換器47、及びディスペンサー54が配置された第1の領域13Aと、冷凍機62を収容する筐体61が配置された第2の領域13Bとの間に障壁64を設けることで、圧縮機14、蓄圧器28−1,28−2,28−3、熱交換器47、及びディスペンサー54のうちの、いずれかの機器から水素ガスが漏れて着火した場合でも、障壁64が防炎壁として機能するため、第2の領域13B側に炎が到達することを抑制可能となる。これにより、水素ガス充填装置10の安全性をさらに高めることができる。
【0061】
また、障壁64の高さは、筐体61の高さよりも高くするとよい。これにより、障壁64の上端から筐体61に炎が到達することを抑制できる。
【0062】
本実施の形態の水素ガス充填装置によれば、支持台13の上面13aに筐体61を設け、筐体61内に冷凍機62を収容することで、圧縮機14、蓄圧器28−1,28−2,28−3、熱交換器47、及びディスペンサー54から水素ガスが漏洩した際、筐体61により水素ガスが冷凍機62の内部に流入することを抑制可能となる。
これにより、1つの支持台13の上面13aに配置された圧縮機14、蓄圧器28−1,28−2,28−3、及び熱交換器47の近傍に、筐体61に収容された冷凍機62を配置することが可能となる。
【0063】
よって、高い安全性を確保した上で、圧縮機14、蓄圧器28−1,28−2,28−3、熱交換器47、及びディスペンサー54、及び冷凍機62を収容する筐体61が配置される支持台13の外形のサイズを小型化して、水素ガス充填装置10の設置面積を縮小することができる。
【0064】
また、支持台13の上面13aに、圧縮機14、蓄圧器28−1,28−2,28−3、熱交換器47、及びディスペンサー54、及び筐体61に収容された冷凍機62を配置すると共に、現地(設置場所12)に運搬する前に、予め圧縮機14、蓄圧器28−1,28−2,28−3、熱交換器47、及び冷凍機62等の機器間を接続する配管工事を完了させることで、支持台13ごと現地に水素ガス充填装置10を運搬することが可能となる。
【0065】
これにより、現地に到着後に、圧縮機14、蓄圧器28−1,28−2,28−3、熱交換器47、及び冷凍機62等の機器間を接続する配管工事を行なう必要がなくなるため、現地での水素ガス充填装置10の据え付けを短時間で行なうことができる。
【0066】
なお、前述の説明では、例えばR404等の冷媒を熱交換器47から回収し冷凍機62で冷却する構成について詳述したが、冷媒に代えてブラインを利用する構成であっても構わない。
【0067】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、高い安全性を確保した上で、水素ガス充填装置の設置面積を縮小することが可能であると共に、現地での据え付けを短時間で行なうことの可能な水素ガス充填装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0069】
10…水素ガス充填装置、11…燃料電池搭載車両、12…設置場所、13…支持台、13a…上面、13A…第1の領域、13B…第2の領域、14…圧縮機、15…水素ガス供給ライン、16,21,22,24〜26,33,34,37,38,42,45…バルブ、18…圧縮水素ガス導入及び導出ライン、18A…導入ライン、18B…導出ライン、28−1,28−2,28−3…蓄圧器、29…蓄圧器支持体、32,36,41,44…分岐ライン、47…熱交換器、51…冷媒回収用配管、52…冷媒供給用配管、54…ディスペンサー、56…ディスペンス用ホース、57…車載用水素貯蔵タンク、61…筐体、62…冷凍機、64…障壁、66…支持板、66a…下面、67…脚部、71…筐体本体、71A…第1の側壁、71B…第2の側壁、71C…第3の側壁、71D…第4の側壁、71E…底板部、71F…天井部、72…排気口、73…吸気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持台と、
前記支持台の上面に配置され、水素ガスを圧縮する圧縮機と、
前記支持台の上面に配置され、前記圧縮機により圧縮された前記水素ガスを貯蔵する蓄圧器と、
前記支持台の上面に配置され、前記蓄圧器から供給された前記水素ガスを冷媒またはブラインにより冷却する熱交換器と、
前記支持台の上面に配置された筐体と、
前記筐体内に収容され、前記熱交換器から回収した前記冷媒またはブラインを冷却し、冷却した前記冷媒またはブラインを前記熱交換器に供給する冷凍機と、
を有することを特徴とする水素ガス充填装置。
【請求項2】
前記支持台の上面は、2つの領域に分割されており、
前記2つの領域のうち、一方の領域である第1の領域に、前記圧縮機、前記蓄圧器、及び前記熱交換器を配置すると共に、他方の領域である第2の領域に、前記冷凍機を収容する前記筐体を配置したことを特徴とする請求項1記載の水素ガス充填装置。
【請求項3】
前記支持台の上面うち、前記第1の領域と前記第2の領域との間に位置する部分に、障壁を設けたことを特徴とする請求項2記載の水素ガス充填装置。
【請求項4】
前記冷凍機は、空冷式冷凍機であり、
前記筐体は、筐体本体と、該筐体本体に設けられた吸気口と、前記筐体本体に設けられた排気口と、を有することを特徴とする請求項1ないし3のうち、いずれか1項記載の水素ガス充填装置。
【請求項5】
前記筐体本体は、平面視矩形とされ、4つの側壁を有しており、
前記4つの側壁のうち、前記第1の領域と対向しない側壁に、前記吸気口を配置したことを特徴とする請求項4記載の水素ガス充填装置。
【請求項6】
前記4つの側壁のうち、前記第1の領域と対向する側壁の反対側に位置する側壁の下部に、前記吸気口を配置したことを特徴とする請求項5記載の水素ガス充填装置。
【請求項7】
前記吸気口に、ガラリを設けたことを特徴とする請求項4ないし6のうち、いずれか1項記載の水素ガス充填装置。
【請求項8】
前記排気口を、前記筐体本体の天井部に配置したことを特徴とする請求項4ないし7のうち、いずれか1項記載の水素ガス充填装置。
【請求項9】
前記熱交換器により冷却された水素ガスを燃料電池搭載車両の車載用水素貯蔵タンクに供給するディスペンサーを有し、
前記ディスペンサーを、前記第1の領域に配置したことを特徴とする請求項2ないし8のうち、いずれか1項記載の水素ガス充填装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−24287(P2013−24287A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157916(P2011−157916)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】