説明

水素化合物を含有する四塩化珪素または四塩化ゲルマニウムを精製する方法および装置

本発明は少なくとも1種の水素含有化合物で汚染された四塩化珪素または四塩化ゲルマニウムの精製法に関し、前記方法において、精製すべき四塩化珪素または四塩化ゲルマニウムを目的とする方法で、冷たいプラズマを使用して処理し、こうして処理した相から精製した四塩化珪素または四塩化ゲルマニウムを単離する。本発明は更に本発明の方法を実施する装置に関し、前記装置は、四塩化珪素または四塩化ゲルマニウムの貯蔵装置および蒸発装置(4.1または5.1)を有し、これらの装置は接続管により調節装置(4.4または5.4)を有する反応器(4.3または5.3)の入口に接続され、反応器は誘電的に阻止される放電を生じ、その出口はパイプにより直接的にまたは少なくとも1個の他の反応器(5.5)により間接的に凝縮装置(4.5または5.11)に案内され、凝縮装置は下流収集容器(4.6または5.12)を有し、収集容器は排出管(4.6.2または5.12.1)により蒸留装置(4.8または5.13)に接続され、場合により装置(4.1)への供給管(4.6.1)が備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸留により分離することが困難である少なくとも1種の水素化合物で汚染された四塩化珪素または四塩化ゲルマニウムを処理する方法および装置に関する。
【0002】
四塩化珪素(SiCl)は、例えば光導波体の製造に使用される。これらの用途には高純度SiClが必要である。特に水素含有不純物はppm量でのみ存在する場合においても、決定的な欠点を有する。
【0003】
四塩化珪素中の水素含有不純物は分離が困難である不純物と分離が簡単である不純物に区別することが必要である。例えばHClは簡単な分別蒸留により四塩化珪素から1質量ppm未満の範囲の濃度に低下して分離できる。他方で、特に炭化水素、塩素化炭化水素およびアルキル基を含有するシランのような相当する化合物は、簡単な分別蒸留により1質量ppm未満の範囲の濃度に低下して分離できない。
【0004】
できるだけ純度の高い形、特に高純度の形で使用できる四塩化ゲルマニウムも同様に試みた。
【0005】
四塩化珪素から炭化水素、塩素化炭化水素、およびアルキル基を含有するシランのような相当する化合物を除去する可能な方法はかなり前から知られている。
【0006】
従って前記成分を含有する四塩化珪素は米国特許第4372834号および欧州特許第0488765号に記載されるように、200〜380nmの波長範囲のUV線を使用して塩素の存在で処理することができ、引き続き得られた塩素化生成物を、蒸留によりSiClから分離することができる。この方法の重大な欠点は、装置部品を塩素ガスと接触させ、塩素ガスを欧州特許第0488765号によりかなりの量で添加し、特に激しい腐食にさらされ、この腐食が必然的にしばしば装置の休止時間を生じることである。更に添加される塩素は同様にきわめて高い純度の要求を満たすことが必要である。両者とも装置の高い運転費用を生じる。記載することができる他の具体的な欠点は、例えば欧州特許第0488765号により提案されるUV線源の特に乏しいエネルギー効率である。これは特に長い処理時間を生じ、これが同様に高い費用を生じる。
【0007】
珪素のハロゲンおよび水素化合物を精製する一般的な方法は同様に知られている(ドイツ特許第1058482号)。この方法において、還元剤、例えば水素、珪素、ナトリウム、アルミニウム、または亜鉛の添加によりおよびガス放電、特に濃いガス放電の作用により、クロロシランおよびブロモシランを処理することができ、かなり高い分子量化合物の形成を生じ、ラジカル形成および存在するラジカルの組合せにより、元素、炭素、ホウ素または燐をクロロシリコンのかなり高い分子量化合物に導入することができ、これらのかなり高い分子量化合物を蒸留により分離する。この方法の具体的な欠点は還元剤の添加が必要なことである。特にドイツ特許第1058482号はSiClフラクションの精製に還元剤として水素の添加を記載する。
【0008】
本発明の課題は、水素化合物を含有する四塩化珪素または四塩化ゲルマニウムを精製する特別の方法を提供することである。具体的な目的は、四塩化珪素または四塩化ゲルマニウムから、水素含有微量物質または二次成分、例えばHCl、−Si−OH−含有物質、−C−H−含有物質、−Si−C−H−含有物質、およびSi−H含有物質、または相当するGe物質を除去することである。
【0009】
以下に四塩化珪素および四塩化ゲルマニウムを四ハロゲン化物と省略して記載する。
【0010】
本発明により、前記課題は請求項に記載される方法により解決される。
【0011】
意想外にも、冷たいプラズマ、例えば、排他的でなく、誘電的に阻止される放電(DBD=誘電バリア放電)にもとづくプラズマの使用による四塩化珪素の処理が、四塩化物に不純物として存在する水素含有化合物を、有利に還元剤を添加しなくても反応させ、すなわちSiClから分離できる物質に変換させることができ、引き続きこの物質を簡単で経済的な方法で四塩化物相から分離できることが判明した。従ってドイツ特許第1058482号による技術水準により記載される高純度で、費用のかかる還元剤の添加を、本発明の方法により有利に省くことができる。更に本発明の方法は、欧州特許第0488765号による技術水準と比較して、塩素(Cl)を添加せずに有利に実施できる。
【0012】
本発明の方法の有効性を監視するために、特に案内パラメーターとして、メチルトリクロロシラン(MTCS)を使用できる。
【0013】
従って、本発明によるSiClグレードは1質量ppm未満のMTCSを含有し、SiCl中のMTCSの分析的検出限界は0.2質量ppmである。MTCSの決定はFTIRまたは1H−NMR法を使用して実施できる。
【0014】
更に、意想外にも、四塩化珪素の前記方法が四塩化ゲルマニウムの精製にも使用できることが判明した。
【0015】
従って本発明は、少なくとも1種の水素含有化合物で汚染された四塩化珪素または四塩化ゲルマニウムを処理する方法を提供し、前記方法において、精製すべき四塩化珪素または四塩化ゲルマニウムを、還元剤を別に添加せずに、すなわち目的とする方法で、冷たいプラズマ、特にDBDを使用して製造したプラズマを使用して処理し、こうして処理した相から、特に引き続く蒸留により、高純度四塩化珪素または四塩化ゲルマニウムを単離する。
【0016】
本発明の方法は、有利に冷たいプラズマを使用して実施する。
【0017】
以下に冷たいプラズマまたはDBDを記載する場合は、これは非熱力学的平衡で存在するすべての種類のプラズマおよび工業的プラズマの変形を含む。非熱力学的平衡でのプラズマの定義は該当する専門的文献、例えばPlasmatechnik:Grundlagen und Anwendungen.Eine Einfuehrung. Authors Cooperative、Carl Hanser Verlag Munich/Vienna1984(ISBN3−446−13627−4)に見出される。
【0018】
冷たいプラズマを製造する多くの技術が知られている[Plasmatechnik:Grundlagen und Anwendungen.Eine Einfuehrung. Authors Cooperative、Carl Hanser Verlag Munich/Vienna1984(ISBN3−446−13627−4)]。前記四ハロゲン化物を処理する本発明の方法に関して、1〜10Hz、特に10〜10Hzの周波数を有するAC放電が有利であるが、排他的でなく、高周波放電(RF)またはマイクロ波放電、コロナ放電、容量結合放電、(高圧から低圧までの)グロー放電、高周波放電、バリア放電としても知られる誘電的に阻止される放電、または前記放電の混在した形も含む。容量的にまたは誘電的に結合してまたは他のパルスした形で運転できるこれらの電気的ガス放電(グロー放電)の混在した形も同様に適している。AC電位を使用して運転されるまたはパルスした形で運転されるバリア放電を使用することが有利である。
【0019】
バリア放電は2つの金属電極の間で製造することができ、少なくとも一方の電極は誘電物質が被覆され、誘電物質は2つの金属電極の間でスパークまたはアークの形成を阻止する。その代わりに誘電物質により放電時間およびエネルギー量が制限される多くの短い、きわめて局在化したミクロ放電が形成される。適当な誘電物質はセラミック、ガラス、ほうろう、または絶縁プラスチック、例えばテフロンである。他の適当な材料は例えばVDE0303およびDIN40685に記載されている。
【0020】
バリア放電は適当に0.1ミリバール〜10バールの圧力で運転することができる。前記放電は電極に電圧の変化を適用することにより電気的に生じる。放電帯域の圧力、電極の間隔、AC電圧の周波数および振幅に依存して、点火電圧を上まわる場合に、わずか数ナノ秒の継続時間を有し、空間的および時間的にランダムに分配される放電が形成される。
【0021】
本発明の目的に使用できる反応器を、例として、図1、2および3により説明する。
【0022】
図1は種々の、しかし排他的でなく使用できる、例えば前記四ハロゲン化物の処理のためのプラズマ反応器の変形の原理的構造を示す。
【0023】
図2は充電された充填層反応器または表面放電反応器にもとづく有利な構成を示す。図1fおよび1e参照。例えば静止放電反応器は誘電性充填部品を充填することができる。図2に示されるように、誘電性球またはペレット(2.6)を2つの誘電性バリア(2.4)の間に充填して、(球の)層または反応空間(2.1)を形成できる。このタイプの反応器において、放電が特に有利に誘電性充填部品(2.6)の表面上で点火する。図2において、(2.2)および(2.3)は例えば2つの金属電極を表し、前記電極は互いに向かい合って配置され、AC電圧源(2.5)に接続される。2つの電極の間の放電アークの形成を抑制するために、2つの電極は誘電物質(2.4)で被覆することができる。このような放電は両面で誘電的に阻止されていると呼ばれる。しかし電極の一方のみを誘電物質で被覆することもできる。この場合に、片面で誘電的に阻止され、適当な電気的励起により運転されるガス放電が形成される。特に有利な変形において、誘電物質(2.4)が中央に配置される。引き続き上側金属電極および下側金属電極の両方に、片面で阻止される放電を形成できる。
【0024】
電気的励起は以下のように特徴付けられる。
【0025】
2つの電極にAC電圧を印加する場合に、放電体積中の電界強度が十分に高い場合に、所望の放電の点火が起こる。必要な電圧は誘電物質と対電極の間の自由距離(d)、使用される誘電物質および放電区間の圧力、ガス組成および放電空間中の誘電物質の間に存在する任意の内装部品に依存する。距離(d)は0.01〜100mm、有利に0.1〜10mmの範囲の値に適当に調節する。必要な電圧はミクロ系で、10Vp〜100kVp、有利に100Vp〜15kPv、特に有利に500Vp〜5kVpであってもよい。AC電圧の周波数は有利に1Hz〜30GHz、有利に50Hz〜250MHzであり、工業的に使用できるマイクロ波発生器の範囲では、例えば2.45GHzである。他の透過周波数は明らかに除外されない。
【0026】
図2に示されるプラズマ反応器は、前記方法を実施するために、有利にペレット(2.6)で充填される。電気的放電がまず行われ、ペレット表面上の滑り放電の形で最初に行われる。これは空間的に直に接するペレット表面でのイオンおよびラジカルの濃度を増加し、ガス流に存在する水素含有化合物の反応を改良する。
【0027】
使用されるペレットは有利に酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、二酸化珪素、酸化マグネシウム、またはこれらの混合酸化物からなる群から選択される担体材料を有する。酸化珪素ペレット(ガラスペレット)が有利である。
【0028】
以下にペレットを記載する場合は、これは、粒子、粉末、ダストまたは他の粒度状態を含む。直径は100nm〜10mm、有利に10μm〜1mmの範囲内で変動することができる。
【0029】
プラズマ反応器の電極は互いに平行に配列したシート状構造として形成することができるかまたは管状電極により包囲された中心電極とともに同軸配置を形成することができる。放電の形成を促進するために、例えばらせん電極により空間的不均一性を備えることができ、らせん電極は、電界の位置的増加を生じ、こうして放電(点火)の形成を改良する。電極上の誘電性プレート(2.4)に、例えばくしの形の波形表面を備えることができる(J.Lang等、WO98/49368号、およびこれに引用される二次的文献参照)。
【0030】
図3はDBDを製造する反応器の有利な構成を示す。
【0031】
図3の反応器の反応空間(3.3)は2つの壁(3.1および3.2)により適当に境界付けられ、2つの壁は本発明の方法に使用するために、数mm、有利に0.1〜3mmの間隔を有する。片面で阻止された放電の場合は、すでに示されたように、一方の壁が電気的絶縁材料、例えば溶融シリカまたは酸化物セラミックからなり、一方の反応器壁が導電性材料、例えばステンレス鋼からなることができる。両面で阻止された放電の場合は、両方の壁が一般に電気的絶縁材料(高い誘電強度を有する誘電性物質)からなる。ここで電極(3.4および3.5)に、例えばパルスDC源(3.6)により備えられた電気エネルギーの注入が用意されるべきである。精製される四ハロゲン化物含有相を入口(3.7)により適当に導入する。処理された相を引き続き(3.8)により例えば他の反応器、収集容器または蒸留装置に導入することができる。
【0032】
本発明の方法において、適当な反応器はミクロ反応器として形成することができる。
【0033】
更に例えば本発明の方法を実施する反応器としてオゾン発生器を使用することができる。
【0034】
本発明の方法で処理される四ハロゲン化物を処理するためのガス放電を発生するために、1個以上の反応器を使用することができる。1個より多い反応器を使用する場合は、直列にまたは並列して接続することができる。
【0035】
知られているように、プラズマ放電の場合の注入した電気エネルギーは圧力pと電極の間隔dの積(p・d)に依存し、一定のガス圧力で、反応器の形状の変化により、プラズマ中だけで、個々のラジカル反応を促進または抑制することができる。本発明の方法において、電極の間隔と圧力の積は0.01〜300mm・バール、有利に0.05〜100mm・バール、特に0.08〜0.3mm・バール、特に0.1〜0.2mm・バールの範囲にあるべきである。
【0036】
放電は1〜10Vの種々のAC電圧またはパルス電圧により生じることができる。更に放電を生じるために適用される電圧曲線の形は、例えば、排他的でないが、長方形、台形、正弦曲線、三角形、パルスした形であってもよく、個々の波形のブロックを形成してもよい。適当な電圧−時間曲線はフーリエ合成により形成できる。
【0037】
高い電子密度を達成し、反応器の全放電空間で放電を基本的に同時に形成するために、パルス励起電圧が特に適している。パルス運転でのパルス時間はガス系に依存し、有利に10ns〜1msの範囲である。電圧の振幅はミクロ系で、10Vp〜100kVp、有利に100Vp〜10kVp、特に500Vp〜5kVpであってもよい。このパルスDC電圧は高い反復速度、例えば10nsパルス(変調比=10:1)の場合に、10MHzから、例えばバースト関数として、低い周波数(10〜0.01Hz)に運転し、変調して、吸着した物質の反応を可能にすることができる。
【0038】
本発明の方法に使用されるプラズマ反応器は電気的および熱的に適した任意の材料から形成することができる。プラスチック、セラミックおよびガラスと組み合わせたステンレス鋼が特に有利である。種々の材料から形成されるハイブリッド構造が同様に有利である。
【0039】
誘電的に阻止される放電は短時間のフィラメント状放電からなる移行するガス放電であることが知られている。電極の間の距離は一般に約1mmである。両方の電極は金属から適当に形成される。誘電性物質、例えばガラスまたはセラミックが電極の上にまたは間に適当に適用/挿入される。反応器壁自体が2つの電極の一方を形成する、すなわち金属材料である場合は、この放電は、片面で阻止された放電と呼ばれる。
【0040】
この場合に、50Hz〜100MHz、特に100Hz〜1MHz、きわめて有利に400〜4000Hzの周波数を有する誘電的に阻止された放電が有利であり、特に10〜100kHzの範囲のすべての値が有利である。
【0041】
更に約1Wより大きい出力で運転する反応器を使用する場合は、例えば水により冷却される電極を使用することが有利である。
【0042】
更に図4および5は本発明の方法を実施する装置の有利な構成の流れ図を示す。
【0043】
従って本発明は本発明の方法により四塩化珪素または四塩化ゲルマニウムを処理する装置を提供し、前記装置は、四塩化珪素または四塩化ゲルマニウムの貯蔵装置および蒸発装置(4.1または5.1)を有し、これらの装置は接続管により調節装置(4.4または5.4)を有する反応器(4.3または5.3)の入口に接続され、反応器は誘電的に阻止される放電を生じ、その出口はパイプにより直接的にまたは少なくとも1個の他の反応器(5.5)により間接的に凝縮装置(4.5または5.11)に案内され、凝縮装置は下流収集容器(4.6または5.12)を有し、収集容器は排出管(4.6.2または5.12.1)により蒸留装置(4.8または5.13)に接続され、場合により装置(4.1)への供給管(4.6.1)が備えられている。
【0044】
本発明の方法を実施するために、処理される四塩化珪素または四塩化ゲルマニウム相(これ以後相と省略する)を有利に気相に変換する。この目的のために、随伴ガス、有利に不活性ガスを過圧下で、有利に適当な場合は予熱し、一般に室温で液体である、精製される四ハロゲン化物含有相に導入し、こうして精製される生成物で富化された気相を反応器に供給することができる。しかし貯蔵装置(4.1)を予熱し、四ハロゲン化物を気相に変換することもできる。しかし、本発明による処理は、例えば降下フィルムの場合に形成される混合相(液相と気相が同時に存在する)で実施することもできる。
【0045】
処理される相を有利に反応器の放電帯域に、流速0.01〜100m/s、特に約0.1〜10m/sで導入する。放電に対する露出時間は有利に10ns〜1sであり、すなわち処理される相は有利に放電帯域で全部で1ms〜10分を消費する。
【0046】
前記相の処理は、本発明により、絶対圧力0.1ミリバール〜10バール、有利に1ミリバール〜2バール、特に100ミリバール〜1.5バール、特に有利に200ミリバール〜1バール、特に250〜500ミリバールで適当に実施し、処理される相は、四塩化珪素の場合は、有利に−40〜200℃、特に20〜80℃、特に有利に40〜60℃である。四塩化ゲルマニウムの場合は、相当する温度は、有利にこれより高くてもよい。
【0047】
本発明の方法を実施する場合に、窒素または精製の作業に関して不活性である他の緩衝ガス、有利にアルゴン、またはほかにヘリウム、キセノン、または他の希ガス、またはこれらの混合物を処理される相に、工程の一箇所以上の位置で添加することができる。
【0048】
更に選択されたハロゲン供与体、例えば塩素を本発明の方法に添加することができる。
【0049】
本発明は連続法でまたはバッチ法により実施することができる。
【0050】
汚染の程度に依存して、処理される相を本発明の方法に循環し、誘電的に阻止される放電を使用して少なくとも一度適当に処理することができる。この場合に、気体の四塩化珪素または四塩化ゲルマニウムの反応器中の滞在時間を、本発明による処理を特に有利に1つのサイクルでまたは複数のサイクルで(循環モード)、すなわち例えば2個、3個またはそれ以上の循環で実施できるように調節できる。連続法は一般に1つのサイクルで実施する。この場合に十分な滞在時間を可能にする装置、例えば複数の反応器が直列におよび/または並列に接続されている装置を使用することが有利である。
【0051】
更に本発明の方法は、特に連続的に実施する場合は、例えば案内パラメーターとしてメチルトリクロロシラン含量を使用して、有利に液体四塩化珪素または四塩化ゲルマニウムでの分析的測定により随伴することができる。
【0052】
本発明の方法において、この方法で処理された相を一般に段階的に冷却し、精製したSiClまたはGeClフラクションを排出し、すなわち純粋生成物を有利に分別蒸留により処理された相から分離する。
【0053】
本発明の方法は一般に、水素化合物を含有する、精製すべき四塩化珪素または四塩化ゲルマニウムを蒸発させ、気相をDBDにより処理し、こうして目的とされる方法で処理された相を凝縮し、このサイクルを1回または場合により2回以上繰り返すことにより実施する。ここで不活性ガス、例えば希ガスを予熱し、精製される四塩化珪素または四塩化ゲルマニウムを蒸発するためのキャリアガスとして利用することが有利である。更に塩素供与対を装置に、1個以上の位置で、例えば気相を反応器に導入する前に、供給することができる。
【0054】
従って、本発明による、水素化合物で汚染されたSiClまたはGeClの処理は種々の方法で行うことができる。
精製される相をDBD処理する、すなわち他の添加剤を使用しない。
ハロゲン化水素(HX)および/またはハロゲン(X)(有利にXはClである)および/または希ガス(He、Ar、Xe)または窒素のような1種以上の添加剤の存在でDBD処理する。
最初に添加剤を使用せずにDBD処理し、引き続き少なくとも1種の前記添加剤の存在で処理を継続する。
【0055】
本発明の方法は特に有利に還元剤を添加せずに行うことができる。
【0056】
本発明の方法の有効性を決定するパラメーターとして、一般に1〜500質量ppmの量の、精製される四塩化珪素または四塩化ゲルマニウムに存在することがあるメチルトリクロロシラン(MTCS)またはメチルトリクロロゲルマン(MTCGe)含量の減少を使用することが有利である。従って、例えばMTCS133質量ppmから出発して、本発明によるDBD処理が終了後に、前記添加剤の1種を添加しなくても、メチルトリクロロシランは一般にもはや検出されず、すなわちその値は1質量ppm(FTIR法による検出限界)未満または0.2質量ppm(1H−NMR法による検出限界)未満に減少することができる。
【0057】
こうして処理された、有利に案内パラメーターとして、約1質量ppm未満のMTCS含量を有するSiCl相を引き続き分離に導入することができる。分離は有利に分別蒸留により行うことができ、精製した生成物として高純度四塩化珪素が有利に得られる。
【0058】
本発明の方法および装置はきわめて高い有効性を示す。従って前記%範囲までの量でメチルトリクロロシラン(MTCS)またはメチルトリクロロゲルマン(MTCGe)を含有する四塩化珪素または四塩化ゲルマニウムは、本発明のDBD処理法により完全にこれを含まないことができる。精製されるSiClまたはGeCl相にトリクロロシラン(TCS)およびトリクロロゲルマン(TCGe)が付加的に存在する場合は、これを有利な方法で同時に除去することができる。
【0059】
本発明を以下の実施例により説明するが、本発明の対象はこれにより限定されない。
【0060】
実施例
1つの例において、2つの同軸溶融シリカ管により反応空間を形成し、こうして形成される環状間隙の平均直径は有利に25〜30mmであり、長さは250〜300mmである。直径を増加するおよび/または管状反応器を並列に接続する(管束)ことにより、規模の拡大を達成できる。しかし平面配置も同様に可能である。この点で前記方法は反応器面積により記載されるように拡大/縮小できることを記載できる。
【0061】
図3に示される前記プラズマ反応器を処理装置に組み込む(図4参照)。これを予め空にする。四塩化珪素(E)約500mlを(4.1.1)によりガラス容器を有する貯蔵容器/蒸発器(4.1)に導入し、ガラス容器はサーモスタット(4.7)により加熱できる。ここで使用される四塩化珪素は不純物として、メチルトリクロロシラン(MTCS)133g/kgおよびトリクロロシラン(TCS)6g/kgを含有する。貯蔵容器/蒸発器を加熱することにより四塩化珪素を蒸発し、前記反応器(4.3)(図3参照、溶融シリカ、直径約30mm、長さ約250mm)を貫流し、引き続きクリオスタット(4.9)により冷却された凝縮器(4.5)中で凝縮し、収集容器(4.6)に至る。四塩化珪素が反応器を貫流する間に、周波数1.9kHzおよびピークからピークへの振幅35kVを有するAC電圧(4.4)を反応器に印加する。反応器への入力は約40Wである(ヨーロッパ規格による一次的側面出力測定)。装置の作業圧力を圧力調節器により約300ミリバールに調節できる。反応器を貫流する四塩化珪素の量をサーモスタット(4.7)の蒸発器管により調節できる(約250ml/h)。全部の四塩化珪素を貯蔵容器から反応器を経て収集容器に移した後に、四塩化珪素を収集容器(4.6)から取り出して貯蔵容器(4.1)に戻す。4サイクル後に、こうして処理された四塩化珪素は1質量ppm未満のMTCS含量(FITR)または0.2質量ppm未満のMTCS含量(1H−NMR)を有する。こうして処理された四塩化珪素を引き続き収集容器(4.6)から蒸留装置(4.8)に移し、ここで高純度四塩化珪素(P)のフラクションを分離する。このフラクション中の不純物含量は達成可能な検出限界に相当する。従ってMTCS含量だけでなく、TCS含量も1ppm未満に減少する。従って還元剤を添加せずに、四塩化物からのMTCSおよびTCSの完全な除去が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明によるガス放電の有利な構成のための反応器の例を示す図である。
【図1a】グロー放電にもとづくプラズマ反応器を示す図である。
【図1b】高周波プラズマ反応器(RF放電)を示す図である。
【図1c】パルスコロナプラズマ反応器(パルスコロナ)を示す図である。
【図1d】両面で阻止されたバリア放電にもとづくプラズマ反応器を示す(静止放電−誘電バリア放電)図である。
【図1e】表面放電にもとづくプラズマ反応器(表面放電)を示す図である。
【図1f】三重層プラズマ反応器(充填層)を示す図である。
【図2】誘電的に阻止された放電を実施する反応器の有利な構成の原理的構造を示す図である。
【図3】本発明の方法を実施する反応器の有利な構成を示す図である。
【図4】循環を有する本発明の方法を実施する装置の有利な構成の流れ図である。
【図5】反応器が両方とも直列におよび並列に配置される、本発明の方法を実施する装置の有利な構成の流れ図である。
【符号の説明】
【0063】
図2
EG 供給ガス
d 直径
2.1 反応層または反応空間
2.2 電極
2.3 電極
2.4 誘電物質
2.5 AC電圧源
2.6 誘電性球またはペレット
PG 生成物ガス
図3
3.1 反応空間の壁
3.2 反応空間の壁
3.3 反応空間
3.4 電極
3.5 電極
3.6 AC源
3.7 出発物質相の入口
3.8 処理された相の出口
図4
E 処理される出発物質相
4.1 貯蔵容器(加熱可能、冷却可能)
4.2 圧力容器中の不活性ガス
4.3 ガス放電用反応器
4.4 AC源
4.5 凝縮および監視装置
4.6 収集容器
4.7 加熱装置/冷却装置
4.8 蒸留装置
4.9 冷却装置
P 生成物フラクション
図5
E 処理される出発物質相
5.1 貯蔵容器(加熱可能、冷却可能)
5.2 圧力容器中の不活性ガス
5.3 ガス放電用反応器
5.4 AC源
5.5 ガス放電用反応器
5.6 AC源
5.7 ガス放電用反応器
5.8 AC源
5.9 ガス放電用反応器
5.10 AC源
5.11 凝縮および監視装置
5.12 収集容器
5.13 蒸留装置
P 生成物フラクション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の水素含有化合物で汚染された四塩化珪素または四塩化ゲルマニウムを処理する方法において、精製すべき四塩化珪素または四塩化ゲルマニウムを目的とする方法で、冷たいプラズマを使用して処理し、こうして処理した相から精製した四塩化珪素または四塩化ゲルマニウムを単離することを特徴とする、四塩化珪素または四塩化ゲルマニウムを処理する方法。
【請求項2】
誘電的に阻止される放電、容量結合放電、高周波放電、マイクロ波放電、コロナ放電、(高圧から低圧までの)グロー放電、高周波放電、バリア放電、または前記放電の混在した形を使用して冷たいプラズマを発生する請求項1記載の方法。
【請求項3】
1V〜1×10VのAC電圧またはパルス電圧を使用して誘電的に阻止される放電を生じる請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
50Hz〜100MHzの周波数で誘電的に阻止される放電を生じる請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
処理される四塩化珪素または四塩化ゲルマニウムを放電帯域に0.01〜100m/sの流動速度で導入する請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
放電当たりの露出時間が10ns〜1msである請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
処理される四塩化珪素または四塩化ゲルマニウムが放電帯域で1ms〜10分の時間を消費する請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
−40〜200℃の気相の温度で誘電的に阻止される放電を生じる請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
処理される相に、希ガス、窒素または不活性緩衝ガスまたは前記ガスの混合物を添加する請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
処理される相に、塩素および/または塩化水素を添加する請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
処理を0.1ミリバールから10バールまでの絶対圧力で実施し、処理される相が−40〜200℃の温度で存在する請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
方法を連続法でまたはバッチ法で運転する請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
方法を液体四塩化珪素フラクションまたは四塩化ゲルマニウムフラクション上の分析的測定により随伴する請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
処理される相を段階的に冷却し、精製した四塩化珪素フラクションまたは四塩化ゲルマニウムフラクションを放電する請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
四塩化珪素フラクションまたは四塩化ゲルマニウムを冷たいプラズマで処理された工程に循環し、案内パラメーターを監視し、場合により凝縮し、副流を取り出し、これを蒸留装置に供給し、循環から取り出した生成物量を相当する量に交換する請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
処理される相を気相に変換し、場合により不活性ガスおよび/または塩素を添加し、気相を少なくとも一度ガス放電に露出し、案内パラメーターにより処理を監視し、処理した相から蒸留により高純度四塩化珪素または四塩化ゲルマニウムからなるフラクションを分離する請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
請求項1から16までのいずれか1項記載の方法により四塩化珪素または四塩化ゲルマニウムを精製する装置において、前記装置は、四塩化珪素または四塩化ゲルマニウムの貯蔵装置および蒸発装置(4.1または5.1)を有し、これらの装置は接続管により調節装置(4.4または5.4)を有する反応器(4.3または5.3)の入口に接続され、反応器は誘電的に阻止される放電を生じ、その出口はパイプにより直接的にまたは少なくとも1個の他の反応器(5.5)により間接的に凝縮装置(4.5または5.11)に案内され、凝縮装置は下流収集容器(4.6または5.12)を有し、収集容器は排出管(4.6.2または5.12.1)により蒸留装置(4.8または5.13)に接続され、場合により装置(4.1)への供給管(4.6.1)が備えられていることを特徴とする四塩化珪素または四塩化ゲルマニウムを精製する装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−509065(P2008−509065A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−524307(P2007−524307)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【国際出願番号】PCT/EP2005/052691
【国際公開番号】WO2006/013129
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】