説明

水素専用6行程エンジン

【課題】燃料として水素を使用するエンジンは、著しい小出力と、ノッキングやバックファイヤーのために実用化の目処は立っていない。これを商業的に実用化できる高駆動で安定した自動車エンジンにするのが本発明の課題である。
【解決手段】2〜7気圧の高圧の水素と空気を当量宛予混合し、前記予混合気をあらかじめ冷空気で筒内を満たし、冷却した筒内に噴入させ、前記噴入気を圧縮、爆発させ、下部排気孔より排出し、残留廃ガスを上部排気孔より排出させることが出来る6行程により高出力を実現した水素専用6行程エンジンとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素を燃料とするレシプロ式エンジンで、水素専用6行程エンジンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料として水素を使用するエンジンは、著しい小出力と、ノッキングやバックファイヤーのために実用化の目処は立っていない。
【特許文献1】特開平05−240049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
燃料として水素を使用するエンジンは、著しい小出力と、ノッキングやバックファイヤーのために実用化の目処は立っていない。これを商業的に実用化できる高駆動で安定した自動車エンジンにするのが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
その第一は、水素の小出力の原因である総熱量の低さを考慮して、水素と空気を2〜7気圧の当量混合ガスとして筒内に圧入し、発生熱量をガソリンやプロパンなどに匹敵するようにする。
【0005】
その第二は、水素の着火エネルギーが著しく低いことを考慮して、異状発火させぬように、筒内、特に筒内補機の温度を水素の発火温度以下にするように、筒内にエンジンオイル又はエマルジョンを高圧で噴霧し、静電気で前記補機に付着させる。
【0006】
その第三は、水素の密閉容器中での燃焼速度は、音速と大体同速であるので火焔の形状は球形状と考えられ、効率的な仕事は超短時間に発揮されるのでピストンに対する圧力は、超短ストロークでボアの半径程度が最高と考えられる。その為、同一の仕事を期待する時は、ボアは従来ピストンの√2倍の大きさにし、回転数を多くする。
【0007】
以上の3点から水素用エンジンは図1に示す6行程エンジンが必要となり、図2に示すように運転される。またこれらの補機としてインジェクタースパークプラグや、圧力ガス流体の予混合機、エンジンと同一のクランクシャフトを共有する水素用、空気用のコンプレッサーが必要である。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、空気と水素の両方を5〜7気圧に圧縮し、これを予混合して筒内に圧入、これを更にピストンで圧縮して爆発させ、動力を生み出す構造とした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
「水素専用6行程エンジンの説明」
図2の中心のエンジンブロック中の中心にあるのが6行程エンジンで、シリンダー1の中にピストン2が摺動自在に納まっており、上蓋部中心にインジェクタースパークプラグ3が取付けられている。
【0010】
エンジン上蓋部の左にインテークマニホール4、右にエクゾーストマニホール5が取付けられ、それぞれにバルブ6・7が設けられている。ピストン2はコンロッド8により、クランクシャフト9に運動を伝達する。このエンジンは水素燃料の出力を上げるために総熱量を上げる必要から高圧の空気と高圧の水素の予混合ガスが必要である。
【0011】
水素コンプレッサー41は水素を5〜7気圧に圧縮して、ガス予混合機33に送り込むためのもので、前記6行程エンジンのクランクシャフト9に連結している。
【0012】
水素コンプレッサー41は、本特許出願外の水素発生装置からの常圧(1気圧)の水素を吸入口40より導入し、クランクシャフト9に伝結されたピストン14により加圧し、高圧水素吐出口20よりバルブ27を経て水素ボンベ26に貯留され、適時バルブ27・29を経てガス予混合機33に入る。
【0013】
空気コンプレッサー42は、空気を5〜7気圧に加圧するためのもので、バルブ19より空気を取り込み、ピストン15により加圧し高圧の空気を得てバルブ21より吐出させ、バルブ28を経て空気ボンベ25に貯留され、エンジンの運転の適時にバルブ28・30を経てガス予混合機33に入る。
【0014】
予混合された高圧の空気と高圧の水素は、ガス予混合機33を出て圧力調整器34に入り、ここでアクセルペタル35からの信号によりECUより混合ガスと流量が決定され、バルブ6はECUの指示により開閉し、高圧の水素空気混合気がエンジンの筒内に送り込まれる。なお図2中の22はトラップである。
【0015】
インジェクタースパークプラグ3は、オイルタンク36より送られたオイル又はエマルジョンを高圧力で静電気の雰囲気の下に筒内に噴霧し、筒内の温度を下げ、筒内壁並びに補機に静電吸着させ、これらを冷却し潤滑させ、図2に図中37は、噴霧用のオイル又はエマルジョンの圧力調整用のバルブである。図中31はエンジンの上部排気孔兼空気吸入孔の切換バルブである。図中32は、切換バルブからの排気の流れを示している。
【0016】
図2に示すガス予混合機33は、図4に示すように円筒形又は角筒形等の管状体61であり、この中に先端を釣り針状に曲げた遮蔽板66・67・68・69・70を流量に応じて数板を交互に反対向きに取付けたものである。
【0017】
矢印62,63のように水素と空気を当量宛入口65・64から圧入させると遮蔽板66に当たり、点線の矢印74のように反転し、次の遮蔽板67に当たっても遮蔽板67の先端で曲げられて、矢印75のように反転するなどして水素と空気は次第に混合し、矢印76・72が混合を繰り返し、矢印73となり、出口71から矢印10のように流れ出る時には全く均等に混ざっており、エンジンの中で安定した着火と爆発ができる。
【0018】
図1のインジェクタースパークプラグ3は、図3の噴霧76と図5の噴霧81に示すようにエマルジョンを筒内に陽極の高い帯電性を持たせて噴霧し、エンジンブロック筒内壁並びに補機を冷却と潤滑の役割を果たし、なおかつ火花による筒内で圧縮された水素と空気の混合ガスに点火する役割を持っている。
【0019】
図3のエンジンブロックのヘッド59に取付けられ、陽極管50の上部から矢印53のようにエマルジョンが高圧で圧入される。図中52はエマルジョンを高圧の帯電性を持たせて噴霧するためと、筒内の混合ガスに点火するスパークの電源としての高電圧タップである。
【0020】
図中78・79は金属性の外殻で、絶縁性のセラミック80・56を囲んでいる。
【0021】
陽極管50の中心に金属製の棒状ニードル57が設けられており、先端が針状になっていて弁の役割を果たす。磁性ニードルの上端に止め具60がついている。棒状ニードル57の上部の外側に管状の軟鉄心55があり、棒状ニードル57に副ってECUの指示によって継断するソレノイドコイル54の磁力によって上下し、棒状ニードル57の上端の止め具60を叩いて、棒状ニードル57を上下させ、弁を開閉させ、エマルジョンを下部先端より噴霧76させる。
【0022】
他方、高電圧タップにECUの指示によって高電圧がかけられる時は陽極管50先端と、その囲りの陰極針51の間でスパークが起こり、筒内の混合ガスが点火される。
【0023】
「水素専用6行程エンジンの筒内システムの説明」
本発明は、水素を燃料とするレシプロ式エンジンに関するものである。
【0024】
レシプロ式エンジンは、水素の総発熱量が低いことから、炭化水素系と比べると著しく出力が小さい。このため、水素を同じ容量のシリンダーで使用する場合は、水素と空気の両方の圧力を高めて、総発熱量の劣位を補わなければならない。
【0025】
また、水素の火焔伝達速度が音速に近いことから、その出力は一瞬の間のことで、その間に爆発力を動力に変換しなければならないので、短いストロークのクランクを定めなければならない。
【0026】
また水素の着火のエネルギーは、他のガスと比べると非常に小さい。また気化潜熱もない。つまり着火し易いという事で、少しでも着火原因があると異状着火が起こり、ノックやバックファイヤーの原因となり、出力が大幅に減少する。よって、筒内の着火原因要件を管理しなければならない。
【0027】
また水素には、潤滑物質が全くないために、筒内補機の摩擦摩耗に配慮しなければならない。
【0028】
以上の点を配慮して本発明は6行程エンジンとした。
【0029】
本発明の6サイクルエンジンを図5に基づいて説明する。
【0030】
「第一行程」(冷却吸入行程)
前述の爆発工程における熱気を冷却するため、エクゾーストマニホール5より冷気82を引き込み、さらに上蓋部のインジェクタースパークプラグ3よりプラスの静電気を帯びたエマルジョン81を噴射させ、これをマイナスの静電気を帯びた筒内壁並びに筒内補機に吸着、冷却させ、筒内を空気で満たす。このときピストン2は矢印83のように下方に移り、下死点に至る。このときピストン2の上部は下部排気孔85を開き、筒内冷却のための余分の空気を排出する。
【0031】
「第二行程」(混合気圧入行程)
下死点に至ったピストン2はクランク9の回転86に伴って矢印87のように上昇を始め、下部排気孔85・90とエクゾーストマニホール5を閉じた時、上部にインテークマニホール4より2〜7気圧の水素空気混合気を、図2の高速ガス混合機33から圧力調整弁34を経て取り込み、アクセルペダル35よりECUの指示による圧力で筒内を満たす。
【0032】
「第三行程」(圧縮行程)
冷空気と水素空気の混合気95は矢印88に示すようにピストン2で圧縮され、次第に高圧となる。
【0033】
「第四行程」(爆発行程)
ピストン2が上死点付近に達した時、インジェクタースパークプラグ3の図3の陽極管50にECUからの指示の電圧が掛かり、図3の陰極針51との間のスパークで混合気95は点火され、爆発、膨張89してピストン2を強く矢印99方向に押し下げ、クランクシャフト9を回転させて動力を発生させる。
【0034】
「第五行程」(排気行程)
爆発、膨張したガスは下方排気孔85・90から、矢印91・92の方向に排出し、消音装置に向かう。
【0035】
「第六行程」(掃気行程)
シリンダー1内に残った熱排気98は全排気量の10〜15分の1程度であるが、未だ余熱を持っているので、ピストン2を矢印94方向に上昇させてバルブ7を開いて、矢印93のように筒内から除去する。
【0036】
熱排気を一掃した後、同じエクゾーストマニホール5より冷空気をシリンダー1内に吸入させるように、排気と吸気をスイッチさせる。図2の切換バルブ31がその役割を果たし、矢印93が熱排気の流れであり、冷空気95が吸入空気の流れを示している。
【0037】
このようにして第6行程より元の第1行程に帰り、運転は加速続行される。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、地球の温暖化を防止するために、水素を燃料とする水素専用6行程エンジンであるが、他の気体を燃料とするエンジンにも応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の1本のクランクシャフトでエンジンと空気圧縮ポンプを作動させている縦断面図である。
【図2】本発明の全体のシステムを説明する図である。
【図3】本発明のインジェクタースパークプラグの縦断面図である。
【図4】本発明のガス予混合機の縦断面図である。
【図5】本発明の水素専用6行程エンジンの各行程を説明した縦断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 シリンダー
2 ピストン
3 インジェクタースパークプラグ
4 インテークマニホール
5 エクゾーストマニホール
25 空気ボンベ
26 水素ボンベ
33 ガス予混合機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2〜7気圧の高圧の水素と空気を当量宛予混合し、前記予混合気をあらかじめ冷空気で筒内を満たし、冷却した筒内に噴入させ、前記噴入気と共に、これを圧縮、爆発させ、下部排気孔より排出し、残留廃ガスを上部排気孔より排出させることが出来る6行程により高出力を実現した水素専用6行程エンジン。
【請求項2】
第一行程の冷気吸入段階で上蓋部に設けたインジェクタースパークプラグより、オイル又はエマルジョンを高圧でプラスの静電気を帯電させて噴霧することにより、マイナス極の筒内壁並びに上蓋部補機に吸着させ、冷却し潤滑する水素専用6行程エンジン。
【請求項3】
下端に噴射孔を持つ中空の金属管の中に、先端がニードルピンを持つ金属棒を入れ、中空の金属管とニードルピンをソレノイドコイルの磁気によって上下する軟鉄管で金属棒端の止め金を叩くことによりニードルピンを上下開閉させ、金属管の上部より50〜100気圧で圧入されたオイル又はエマルジョンを筒内に噴霧させ、金属管の上部より陽極の高電圧をかけ、下部の陰極との間でECUの指示でスパークを発生させ、上蓋部の孔よりインジェクターとスパークプラグの機能を有するインジェクタースパークプラグを備える水素専用6行程エンジン。
【請求項4】
円筒又は角筒などの管状体の中に、先端がつり針状に曲げられた遮蔽板を5〜15枚取付け、つり針状に曲げられた部分を交互に反対向きに取付け、水素と空気を通す時前記つり針状の部分で反転し過流を生じさせ、次の遮蔽板では反対向きに過流が生じるようにした高速ガス混合機を備えた水素専用6行程エンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−84547(P2010−84547A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252108(P2008−252108)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(507147976)日本水素株式会社 (18)
【Fターム(参考)】