説明

水素生成装置

【課題】 車載PEFCの実使用条件下において、残留アンモニア濃度を数ppmのオーダーに低減した改質ガスを供給することが可能な水素生成装置を提供する。
【解決手段】 液化アンモニアを貯蔵するアンモニア貯蔵容器2、31と、ルテニウム触媒又はロジウム触媒を収容し、前記アンモニア貯蔵容器から供給されるアンモニアを600℃〜900℃で分解して水素及び窒素を主成分とする改質ガスを生成する改質器7、35と、前記改質ガス中のアンモニアを水中に溶解除去するアンモニア除去器14、37とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアを原料として、主として燃料電池の燃料として使用される水素を生成するための水素生成装置に関し、特に、固体高分子型燃料電池(PEFC)での使用に適するアンモニア濃度が低減された水素を生成することができる水素生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
COP3(地球温暖化防止会議/京都議定書)などで地球温暖化の主要な原因とされている二酸化炭素を大量に排出する自動車からの排出量削減が急務とされている。また、石油エネルギーの枯渇が懸念される中、石油の代替エネルギーについても考慮しなければならない。
【0003】
こうした状況の中で、理想的なクリーンエネルギー源として水素が注目されており、水素を燃料として使用する燃料電池自動車の実用化が検討されている。
【0004】
しかし、水素は取り扱いが困難な物質であり、液体状態での貯蔵運搬には、超高圧ボンベや−250度以下の極低温に保冷できる容器を使用することが必要である。
【0005】
水素を安全かつ簡便に貯蔵運搬する目的で水素吸蔵合金の開発も進められているが、単位重量当たりの水素吸蔵量が小さいため、実用化には至っていない。また、貯蔵運搬性に優れるメタノールを水素源として使用することも検討されているが、メタノールはその改質反応において二酸化炭素を生成してしまうという問題がある。
【0006】
これに対して、アンモニアは、貯蔵運搬性に優れ、燃料ステーションや輸送タンクローリーなどのインフラとして既存のLPG用の設備を転用できる利点があり、表1にその物性値を示す通り、単位質量、及び、単位体積当たりのエネルギー密度はメタノールと遜色のない値であり、更に、アンモニアは、水素原子、及び、窒素原子のみから構成されているために、その分解反応において二酸化炭素などの有害物質を排出しない点で、最も優れる水素供給源であると考えられる。
【表1】

【0007】
また、IFA(International Fertilizer Industry Association)の1999年の調査結果によると世界のアンモニア製造能力は、1998年度は1億5200万tであり、すでに成熟した製造体制を有しているということができる。
【0008】
アンモニア製造には、現状では、主として軽炭化水素系のナフサやGTL、LPG等の天然ガスが使用されており、アンモニア1000tの製造には32kWhの電力と27.21GJ(LHV)の原料天然ガスが必要とされているものの、廃プラスチックからのアンモニア原料の製造、下水処理場からのアンモニアの回収、太陽光を用いたアンモニアの光合成など、風力発電などによる水の電解によるアンモニア製造、更には、Haber−Bosch法による空気中の窒素との合成や生体からの排泄物である尿素からの合成、より低コストで有害な副生成物を生じないアンモニア製造方法の検討も行われており、これらの問題も今後クリアされていくものと考えられる。
【0009】
ここで、アンモニアの分解反応は、平衡反応であるため、生成した改質ガス中には未反応の残留アンモニアが含有されている。また、本願発明者らの研究によると、改質器への原料アンモニアガスの供給速度を大きくする程、残留アンモニア濃度は増大することが分かっている。
【0010】
一方、アンモニアは高濃度では人体に悪影響を与える有毒性のガスであり、米国政府衛生学者会議(ACGIH)によると、アンモニアの人体に対する許容値は25ppmとされている。従って、高濃度の残留アンモニアを含む改質ガスを燃料電池の燃料ガスとして使用した場合には、その排ガス中にアンモニアが含まれることになり、好ましくないという問題がある。
【0011】
また、現在、車載用燃料電池として実用化が有力視されている固体高分子形燃料電池(PEFC)に関しては、燃料ガス中のアンモニア濃度が13ppmの場合には、1時間後に出力電流が低下することが報告されている(F.Uribe,et.al.,"EffectofAmmoniaasPotentialFuelImpurityonProtonExchangeMembraneFuelCellPerformance",JournalofTheElectrochemicalSociety,149,2002.)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者らは、上記の状況を背景として、自動車の走行を賄うに足る十分な空間速度をもって燃料ガスの供給を行うことが可能であり、しかも、残留アンモニア濃度を人体への悪影響やPEFCの出力電流の低下を生じない13ppm以下のレベルに抑制することが可能な水素生成装置として、ニッケル触媒を用いて800℃以上の温度条件下でアンモニアガスの改質を行う水素生成装置の開発を行っている(特許文献1)。
【0013】
しかしながら、特許文献1の水素生成装置では、アンモニアガスの改質を800℃以上の高温で行う必要があることから、改質器の高耐熱仕様化のためのコスト増の問題があり、更には、より長時間に渡って低アンモニア濃度の燃料ガス生成を可能とすることによる車両の航続距離延長などが求められていた。
【特許文献1】特開2005−145748号公報
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記の課題を解決するべくなされたものであり、液化アンモニアを貯蔵するアンモニア貯蔵容器と、ルテニウム触媒又はロジウム触媒を収容し、前記アンモニア貯蔵容器から供給されるアンモニアを600℃〜900℃で分解して水素及び窒素を主成分とする改質ガスを生成する改質器と、前記改質ガス中のアンモニアを水中に溶解除去するアンモニア除去器とを備えることを特徴とする水素生成装置である。
【0015】
即ち、本発明は、特許文献1において開示したニッケル触媒に代えて、ルテニウム触媒又はロジウム触媒を改質器において使用することにより、より低温の反応(改質)温度をもって、より長時間に渡って低アンモニア濃度の燃料ガスを供給することが可能な水素生成装置を実現したものである。
【0016】
本発明のアンモニア貯蔵容器は、アンモニアを液体状態で貯蔵するものであるが、アンモニアは、0.846MPaで圧縮液化されるため、LPGとほぼ同じ仕様の高圧タンクを使用することができる。
【0017】
本発明の改質器は、アンモニア分解の反応触媒としてルテニウム触媒又はロジウム触媒を使用する。
【0018】
車載可能な改質器のサイズを考慮すると、改質器に収容できる触媒の最大量は、嵩体積で10Lのオーダーであると考えられるが、本発明では、触媒としてルテニウム触媒又はロジウム触媒を使用することにより、10Lのオーダー又はそれ以下の触媒量をもって、残留アンモニア濃度を増加させることなく、車両走行に十分な量の水素をより低い改質温度で生成することを可能にしたものである。
【0019】
本発明の水素生成装置では、改質器を、所定サイズのアルミナボールを収容した前室と、ルテニウム触媒又はロジウム触媒を収容した触媒室とに区画し、アンモニア貯蔵容器からのアンモニアガスが、アルミナボールを収容した前室を経て触媒室に導かれるよう構成することが可能である。
【0020】
即ち、特許文献1に示されるように、改質器におけるアンモニアの改質効率を高めるためには、アンモニア貯蔵容器からのアンモニアガスを予備加熱して改質器に供給するための昇温器を備えることが通常必要となるが、上記構成の改質器を使用した場合には、熱容量の小さいアルミナボールによって、ルテニウム触媒又はロジウム触媒を通過する直前のアンモニアガスを効率よく予備加熱することが可能となるために、特許文献1の水素生成装置において必要とされていた昇温器を省略することが可能となり、車両に搭載する場合に必要となる水素生成装置の小型化を容易に達成することが可能になる。
【0021】
本発明のアンモニア除去器は、改質器から排出された改質ガス中のアンモニアを水中に溶解することにより除去するものである。なお、アンモニアの水中への溶解は、改質ガスと水の接触面積を十分に大きくできる任意の方式により行うことが可能であり、例えば、改質ガスをバブリング方式で水中を潜らせるバブリング水槽を使用することが可能である。
【0022】
本発明の水素生成装置は、アンモニア除去器から排出されるアンモニア溶解水を加熱乃至は減圧することでアンモニアを蒸発させる蒸発器を更に備えることが可能であり、これにより、アンモニア除去器の水を循環利用することが可能となる。
【0023】
また、本発明の水素生成装置は、蒸発器に接続され、アンモニアを圧縮液化する圧縮ポンプを更に備えることが可能であり、これにより、改質ガス中の残留アンモニアを回収利用することが可能となる。
【0024】
また、本発明の水素生成装置は、液体アンモニアを加熱してアンモニアを気化させるための気化器を更に備えることが可能である。この場合におけるアンモニア気化のための熱源は、電気加熱式のヒーターと、改質器から排出される改質ガスとの熱交換を行う熱交換手段との併用とすることが可能であり、運転中は改質器からの改質ガスの熱量により気化を行うことで、エネルギーの有効利用を図ることが可能である。
【0025】
なお、本発明の水素生成装置を燃料自動車に搭載して使用する場合には、アンモニアの気化潜熱をエアーコンディショナーの冷却用に使用することも可能であり、この場合には、エアーコンディショナー用の車載コンプレッサーを不要とすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1は、水素燃料電池自動車への燃料源として本発明の水素生成装置を使用した場合の有効性を実証するための実験機として製作された、本発明の一実施形態に係る水素生成装置1である。
【0027】
図示されるように、ボンベ2に収容される0.846MPaの液化アンモニアは、レギュレーター3により圧力調整されて減圧され、流量調整用のニードルバルブ4を経て、最高820℃まで昇温可能とされたヒーター6を備える加熱シェル5に導かれる。
【0028】
なお、ニードルバルブ4周辺の配管には、アンモニアの潜熱によるガス温度低下を防止し、ガス温度を一定温度(20℃)として流量変動を防ぐためにリボンヒーター4aが設けられている。
【0029】
加熱シェル5で昇温されたアンモニアガスは、所定量の触媒を収容する改質器7に導かれ、水素と窒素を主成分とする改質ガスに分解される。
【0030】
ここで、改質器7内のアンモニアガスの温度は、900℃まで昇温可能とされたヒーター8により調整可能とされており、改質器7に送られるアンモニアガスの圧力、及び、改質器7内のアンモニアガスの温度は、それぞれ、圧力計9、及び、温度計10によりモニターされる。
【0031】
改質器7から排出された改質ガスは、冷却槽12にて冷却され、レギュレーター13で常圧に調整された後、精製水中で改質ガスをバブリングさせることにより改質ガス中のアンモニアを溶解除去するアンモニア除去器14に送られる。
【0032】
アンモニア除去器14から排出された改質ガスは、窒素ガス16により希釈された後、FT−IR分析器17、GCアナライザ18により、残留アンモニア濃度、及び、水素、窒素濃度の測定が可能とされ、また、アンモニア除去器14の水はサンプリングされて、PH測定器19によりPH測定が可能とされている。
【0033】
なお、レギュレーター13とアンモニア除去器14の間には、分岐バルブ15が設けられ、アンモニア除去器14を経ない改質ガスを直接FT−IR分析器17、GCアナライザ18に導いて、残留アンモニア、水素、窒素の各濃度の比較測定が可能になっている。
【0034】
図2は、図1の水素生成装置1の改質器にニッケル/アルミナ触媒(平均粒径2〜3mmのアルミナペレット表面にニッケルをコートした触媒)を使用した場合と、ルテニウム/アルミナ触媒(平均粒径2〜3mmのアルミナペレット表面にルテニウムをコートした触媒)を使用した場合におけるアンモニア除去器14を経ない改質ガス中のアンモニア濃度の測定結果である。
【0035】
図示のように、改質器7にニッケル/アルミナ触媒を使用した場合、改質(触媒)温度700℃では、アンモニアの改質器内の空間速度SV=600/hour(SV:25℃の標準状態のアンモニアの体積流量を触媒の嵩体積(L)で除した値)で390ppm、SV=1200/hourで700ppmであったのに対し、ルテニウム/アルミナ触媒を使用した場合には、SV=400/hourで78ppm、SV=800/hourで174ppmであった。更に、改質(触媒)温度を800℃とした場合には、ニッケル/アルミナ触媒では、SV=600/hourで334ppm、SV=1200/hourで283ppmであったのに対し、ルテニウム/アルミナ触媒では、SV=400/hourで50ppm、SV=800/hourで56ppmであった。
【0036】
上記のように、ニッケル/アルミナ触媒を使用した場合に比較して、ルテニウム/アルミナ触媒を使用することにより改質ガス中におけるアンモニア濃度を広い反応温度範囲に渡って格段に低減できることが確認された。
【0037】
図3(a)〜(d)は、改質器7において嵩体積300ccのルテニウム/アルミナ触媒を使用し、空間速度SVを400/hour〜2000/hourの範囲で変化させ、改質温度をそれぞれ、500℃、600℃、700℃及び800℃としてアンモニアガスの改質を行い、水温を25℃に保ったアンモニア除去器14を通過させた改質ガスの残留アンモニア濃度の測定結果である。
【0038】
図示のように、改質温度を500℃とした場合には、全ての空間速度において3分以内に残留アンモニア濃度が13ppm以上となるが、改質温度600℃では、空間速度SV=400/hourにおいては概ね10分に渡って13ppm以下の残留アンモニア濃度が維持されており、更に、改質温度700℃では、空間速度SVが400〜800hourの範囲で約50分に渡って13ppm以下の残留アンモニア濃度が維持され、改質温度800℃では、空間速度SV=800/hourにおいては約100分に渡って、空間速度SV=400/hourにおいては約160分に渡って、13ppm以下の残留アンモニア濃度が維持されることが確認された。
【0039】
なお、図3の実験における残留アンモニア濃度の時間による上昇は、アンモニア除去器14の精製水中のアンモニア濃度の上昇によるものであるため、別途精製水中のアンモニアを蒸発させる蒸発器を設け、当該蒸発器とアンモニア除去器14の間で精製水を循環させるなどにより精製水中のアンモニア濃度をコントロールすることで、より長時間の連続運転においても、改質ガス中の残留アンモニア濃度を数ppm以下のオーダーに保つことが可能である。
【0040】
また、図3の結果から、反応温度を高温にする程、改質ガス中の残留アンモニア濃度は低減されると言えるが、改質器の高耐熱仕様化によるコスト増を考慮すると、反応温度を900℃以上に設定することは好ましくない。
【0041】
図4は、上記水素生成装置1において特に好ましく使用することができる改質器7の構成を示す説明図である。
【0042】
図示のように、この改質器7は、例えば2mm程度の粒径のアルミナボールを充填した前室7aと、例えば2〜3mm程度のルテニウム/アルミナ触媒を収容する触媒室7bとを備えており、ボンベ2からのアンモニアガスは、触媒室7bに導かれる前に、前室7aにおいて熱容量の小さいアルミナボールと接触することでヒーター8により制御される温度に効率良く昇温される。従って、この構成の改質器7を使用した場合には、水素生成装置1における加熱シェル5及びそのヒーター6を省略することが可能となり、車両に搭載する場合に必要となる水素生成装置1の小型化を容易に達成することが可能となる。
【0043】
なお、図4中に示される寸法の単位はmmである。
【0044】
図5は、本発明の他の実施形態に係る水素生成装置であり、実車搭載仕様に設計された水素生成装置30の構成を示す概念説明図である。
【0045】
図中31は、液化アンモニアを常温、0.846MPaで貯蔵する容量10Lのアンモニア貯蔵容器であり、アンモニア貯蔵容器31内のアンモニアは、配管32により熱交換器33に導かれる。熱交換器33中の配管32は、改質器34からの配管36と熱接触を保った状態でガス流が相互に対向する方向で配置されており、配管32中のアンモニアは、配管36中の改質ガスと熱交換を行うことにより、所定の温度に予備加熱されて改質器34に導かれる。
【0046】
改質器34には、粒径2〜3mm程度のルテニウム/アルミナ触媒が例えば嵩体積で300cc収容されており、ヒーター35による加熱によって600〜800℃に加熱されたルテニウム/アルミナ触媒に配管32からのアンモニアが接触することで残留アンモニア濃度が300ppm以下とされた水素及び窒素を主成分とする改質ガスに分解される。
【0047】
ここで、改質器34は、図4に示す改質器7と同様の構成とすることが可能である。
【0048】
改質ガスは、改質器34から配管36に導出され、熱交換器33において配管32中のアンモニアと熱交換を行うことで100℃程度まで降温され、更に、20℃〜30℃に温度調整されたバブリング水槽よりなるアンモニア除去器37においてアンモニアが除去され、残留アンモニア濃度が数ppmのオーダーとされた改質ガスが、PEFC38に供給される。
【0049】
PEFC38は、改質ガス中の水素を大気中の酸素と反応させることにより発生させた電力をバッテリー39に導いて充電し、或いは、車両を走行させるモーター40に供給する。
【0050】
なお、PEFC38での発電において副成される水は、アンモニア除去器37の給水に使用することができ、反応に寄与しない窒素は、排ガスとして系外に排出される。
【0051】
また、図示の例では、アンモニア除去器37には、精製水を貯留する精製水タンク41と、改質ガス中のアンモニアを溶解した処理水を貯留するアンモニア水タンク42が接続されているが、車両用ヒーターなどの熱を利用して40℃〜100℃に昇温することでアンモニア水中のアンモニアを蒸発除去する蒸発器とアンモニア除去器37の間で精製水を循環させることにより、アンモニア除去器37内の精製水を常に所定値以下のアンモニア濃度に保つようにすることも可能である。この蒸発器において発生したアンモニアガスは、圧縮ポンプなどを用いて0.846MPa以上に加圧液化し、逆止弁を介してアンモニア貯蔵容器31に戻すように構成すれば、系外への有害物質の排出が極力抑制されたゼロ・エミッション・システムを実現できる。
【0052】
以上、特に好ましい実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上記実施形態により限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内において種々の変更、改変を行うことが可能である。
【0053】
例えば、上記した実施形態では、改質器における触媒として2〜3mm径のルテニウム/アルミナ触媒を使用する場合について説明したが、ルテニウム触媒の形状やサイズ、或いは、アルミナ担体を使用するか否かなどは任意であり、ルテニウムの表面積を一定値以上とできる限り、任意の態様のルテニウムを使用することが可能である。また、ルテニウム触媒に代えてロジウム触媒を改質器に収容した場合にも、上記した実施形態に準じる程度の効率をもってアンモニアガスの改質を行うことが可能である。
【0054】
また、上記した実施形態では、特に残留アンモニアにより出力電流の低下が問題となるPEFCへの利用を前提に説明を行ったが、排ガスなどにおけるアンモニア濃度の低減は全ての燃料電池において共通の課題であり、本発明の水素生成装置は、アルカリ型(AFC)や固形酸化物型(SOFC)など、他の種類の水素燃料電池の水素供給源として使用することが可能である。
【0055】
また、上記した実施形態では、主として、現在最も高い関心を集めている自動車への応用を念頭において説明を行ったが、本発明の水素生成装置は、水素を燃料とする内燃機関など、燃料水素中のアンモニア濃度を低減することが有益である他のあらゆる用途における水素供給源としても同様に使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態に係る水素生成装置の構成を示す説明図。
【図2】改質器における触媒として、ニッケル/アルミナ触媒を使用した場合と、ルテニウム/アルミナ触媒を使用した場合における改質ガス中のアンモニア濃度を比較して示す説明図。
【図3】本発明の一実施形態に係る水素生成装置における反応温度及び空間速度と、残留アンモニア濃度の関係を示す特性図。
【図4】特に好ましい改質器の構成を示す説明図。
【図5】実車搭載仕様に設計された水素生成装置の構成を示す概念説明図。
【符号の説明】
【0057】
1・・・水素生成装置、2・・・ボンベ、3・・・レギュレーター、4・・・ニードルバルブ、4a・・・リボンヒーター、5・・・加熱シェル、6・・・ヒーター、7・・・改質器、7a・・・前室、7b・・・触媒室、8・・・ヒーター、9・・・圧力計、10・・・温度計、12・・・冷却槽、13・・・レギュレーター、14・・・アンモニア除去器、15・・・分岐バルブ、16・・・窒素ガス、17・・・FT−IR分析器、18・・・GCアナライザ、19・・・PH測定器、30・・・水素生成装置、31・・・アンモニア貯蔵容器、32・・・配管、33・・・熱交換器、34・・・改質器、35・・・ヒーター、36・・・配管、37・・・アンモニア除去器、39・・・バッテリー、40・・・モーター、41・・・精製水タンク、42・・・アンモニア水タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化アンモニアを貯蔵するアンモニア貯蔵容器と、
ルテニウム触媒又はロジウム触媒を収容し、前記アンモニア貯蔵容器から供給されるアンモニアを600℃〜900℃で分解して水素及び窒素を主成分とする改質ガスを生成する改質器と、
前記改質ガス中のアンモニアを水中に溶解除去するアンモニア除去器とを備えることを特徴とする水素生成装置。
【請求項2】
前記改質器が、所定サイズのアルミナボールを収容した前室と、前記ルテニウム触媒又はロジウムを収容した触媒室とに区画されており、前記アンモニア貯蔵容器からのアンモニアが、前記前室を経て前記触媒室に導かれることを特徴とする請求項1に記載の水素生成装置。
【請求項3】
前記アンモニア除去器は、水中に前記改質ガスを潜らせることによりアンモニアを溶解除去するバブリング水槽であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水素生成装置。
【請求項4】
前記アンモニア除去器から排出されるアンモニア溶解水を加熱してアンモニアを蒸発させる蒸発器を更に備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の水素生成装置。
【請求項5】
前記蒸発器に接続され、アンモニアを圧縮液化する圧縮ポンプを更に備えることを特徴とする請求項4に記載の水素生成装置。
【請求項6】
前記改質ガスとの熱交換により前記アンモニア貯蔵容器のアンモニアを気化させる気化器を更に備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の水素生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−35458(P2009−35458A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202731(P2007−202731)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(800000080)タマティーエルオー株式会社 (255)
【出願人】(000002129)住友商事株式会社 (42)
【Fターム(参考)】