説明

水素発生装置及び燃料電池システム

【課題】水素発生材料収容容器が未使用か使用済みかを容易に判別可能な水素発生装置及びこれを用いた燃料電池システムを提供する。
【解決手段】本発明の水素発生装置は、水との発熱反応により水素を発生する水素発生材料2を収容する水素発生材料収容容器1と、水素発生材料収容容器1の内部に水を供給する水供給部3と、水素発生材料収容容器1の外部表面に設けられ、温度変化を検知して非可逆的な状態変化を生じる非可逆材料を用いて水素発生材料収容容器1の表面温度の上昇を検出する温度検出部5とを備える。温度検出部5には、水素発生材料2と水との発熱反応により生じる温度変化を検知したとき、非可逆的に変色する非可逆性材料が塗布されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水との反応により水素を発生する水素発生材料を用いた水素発生装置及び燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコン、携帯電話などのコードレス機器の普及に伴い、その電源である二次電池はますます小型化、高容量化が要望されている。現在、エネルギー密度が高く、小型軽量化が図れる二次電池としてリチウムイオン二次電池が実用化されており、ポータブル電源として需要が増大している。しかし、このリチウム二次電池は、一部のコードレス機器に対して十分な連続使用時間を保証することができないという問題がある。
【0003】
上記問題の解決に向けて、例えば、固体高分子型燃料電池などの燃料電池の開発が進められている。燃料電池は、燃料及び酸素の供給さえ行えば、連続的に使用することが可能である。電解質に固体高分子電解質、正極活物質に空気中の酸素、負極活物質に燃料(水素、メタノールなど)を用いる固体高分子型燃料電池は、リチウムイオン二次電池よりも高エネルギー密度化が期待できる電池として注目されている。
【0004】
このような燃料電池に用いる燃料に関しては、水素、メタノールなどが提案され、種々開発が行われているが、高出力が期待できる点で、水素を燃料とする燃料電池が注目されている。
【0005】
燃料電池に水素を供給する方法としては、例えば、水素源となる水素発生材料と水とを反応させて水素を発生させる水素発生装置から発生した水素を燃料電池に供給することが検討されている。例えば、特許文献1には、水素発生材料を収容する水素発生材料収容容器を備え、水を水素発生材料収容容器へ供給し、水素発生材料収容容器内で水と水素発生材料とを反応させることにより水素を発生させる水素発生装置が開示されている。
【0006】
また、安定的に水素を製造する技術として、特許文献2には、水との発熱反応により水素を発生する水素発生材料を収容する水素発生材料収容容器と、水素発生材料収容容器の内部に水を供給する水供給部と、水供給部を制御する制御部とを備え、水素発生材料収容容器への水の供給量を制御しながら水素発生材料収容容器の内部を発熱反応が維持できる温度に保持し、水素発生速度の変動を抑制可能な水素発生装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−306700号公報
【特許文献2】特開2007−45646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、コードレス機器などの実際の使用場面を想定すると、ユーザが機器を連続的に使用する場合に限らず、動作及び停止を繰り返す間欠的な使用を行う場合も考えられる。したがって、燃料電池の燃料として水素を用いる場合、この水素を発生させる水素発生装置においても、任意のタイミングで水素の発生を停止させ、かつ任意のタイミングで再び水素の発生を開始させ、その後再び安定に水素が発生する状態を維持するというように水素を間欠的に発生させる装置が求められる。そのため、素早く、効率よくかつ安定的に水素を発生させる観点からは、特許文献2に開示の技術においても未だ改良の余地がある。
【0009】
特に、上記のような水素発生装置を燃料源として備える燃料電池システムにおいては、水素発生材料収容容器を交換する際に、交換後の水素発生材料収容容器が未使用で未反応の水素発生材料を所定の量収容したものであることを確認することは、その後の水素発生を効率よく行うためには重要なチェック手順の一つであると考えられ、この点で改良の余地があるといえる。水素発生材料収容容器が未使用であることを確認する方法としては、水素発生開始時点で未反応の水素発生材料の量を検出することが考えられるが、水と発熱反応して水素を発生する水素発生材料として用いられるアルミニウムやマグネシウムなどの金属は、水と反応しても形状や重量などの変化が少なく、未反応の水素発生材料の量を検出することは難しい。そのため、簡単に水素発生材料収容容器が使用済みであるかどうかを確認する方法が求められる。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、事前に使用済みであるかどうかを簡単に検出可能な水素発生装置及びこれを用いた燃料電池システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の水素発生装置は、水との発熱反応により水素を発生する水素発生材料を用いて水素を発生させる水素発生装置であって、上記水素発生材料を収容する水素発生材料収容容器と、上記水素発生材料収容容器の内部に水を供給する水供給部と、上記水素発生材料収容容器の外部表面に設けられ、温度変化を検知して非可逆的な状態変化を生じる非可逆材料を用いて上記水素発生材料収容容器の表面温度の上昇を検出する温度検出部とを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の燃料電池システムは、上記本発明の水素発生装置と、上記本発明の水素発生装置で生成された水素を用いて発電する燃料電池とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、水素発生材料収容容器が未使用か使用済みかを容易に判別可能な水素発生装置及びこれを用いた燃料電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の水素発生装置に用いる水素発生材料収容容器の一例を示す模式図であり、Aは未使用の状態を示し、Bは使用済みの状態を示す。
【図2】本発明の水素発生装置に用いる水素発生材料収容容器の他の例を示す模式図であり、Aは未使用の状態を示し、Bは使用済みの状態を示す。
【図3】本発明の水素発生装置に用いる水素発生材料収容容器の他の例を示す模式図であり、Aは未使用の状態を示し、Bは使用済みの状態を示す。
【図4】本発明の水素発生装置に用いる水素発生材料収容容器の他の例を示す模式図であり、Aは未使用の状態を示し、Bは使用済みの状態示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の水素発生装置は、水との発熱反応により水素を発生する水素発生材料を用いて水素を発生させる水素発生装置であって、上記水素発生材料を収容する水素発生材料収容容器と、上記水素発生材料収容容器の内部に水を供給する水供給部と、上記水素発生材料収容容器の外部表面に設けられ、温度変化を検知して非可逆的な状態変化を生じる非可逆材料を用いて上記水素発生材料収容容器の表面温度の上昇を検出する温度検出部とを備えることを特徴とする。これにより、使用しようとする水素発生材料収容容器が未使用であるかを簡単に知ることができる。その結果、水素発生を開始する際、使用しようとする水素発生材料収容容器が未使用である場合には、収容されている未反応の水素発生材料の量に応じて水の供給量を制御可能となるため、素早く、効率よくかつ安定的に水素を発生させることができる。
【0016】
上記非可逆性材料は、水素発生材料と水との発熱反応により生じる温度変化を検知したとき、非可逆的に変色することが好ましい。これにより、保管時には非可逆性材料は変化を生じることがなく、水素発生材料と水との発熱反応が起こったときのみに変化することから、非可逆性材料の変色を水素発生材料収容容器の使用済みの印として利用できる。
【0017】
上記非可逆性材料は、水素発生材料と水との発熱反応により生じる温度変化を検知したとき、非可逆的に電気的特性が変化することが好ましい。これにより、保管時には非可逆性材料は変化を生じることがなく、水素発生材料と水との発熱反応が起こったときのみに変化することから、非可逆性材料の電気的特性の変化を水素発生材料収容容器の使用済みの印として利用できる。
【0018】
上記非可逆性材料は、水素発生材料と水との発熱反応により生じる温度変化を検知したとき、非可逆的に体積が変化するものであることが好ましい。これにより、保管時には非可逆性材料は変化を生じることがなく、水素発生材料と水との発熱反応が起こったときのみに変化することから、非可逆性材料の体積の変化を水素発生材料収容容器の使用済みの印として利用できる。
【0019】
上記温度検出部は、水素発生材料と水との発熱反応により生じる温度変化を検知したことを、文字列、記号あるいは模様を用いて表示することが好ましい。これにより、使用しようとする水素発生材料収容容器が使用済みであることを目視で容易かつ正確に知ることができる。
【0020】
上記水供給部を制御する制御部をさらに含み、上記制御部は、上記水素発生材料の反応率を検出する反応率検出器を備え、上記水素発生材料の反応率に基づいて上記水供給部から上記水素発生材料収容容器に供給される水の供給量を制御することが好ましい。これにより、使用済みの水素発生材料を再利用する場合にも素早く、効率よくかつ安定的に水素を発生させることができる。水素発生材料の反応率が高い場合には当該水素発生材料の再利用を中止できる。このように、反応率検出器を備えることで、より使い勝手を向上させることができる。
【0021】
本発明の燃料電池システムは、上記本発明の水素発生装置と、上記水素発生装置で生成された水素を用いて発電する燃料電池とを備えることを特徴とする。これにより、水素発生材料収容容器を交換したときに、素早く、効率よくかつ安定的に動作可能な燃料電池システムを実現できる。
【0022】
以下、本発明の実施形態を、図面を用いて説明する。ただし、本発明は下記の実施形態に制限されない。
【0023】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態1に係る水素発生装置について図1を用いて説明する。図1は、本発明の水素発生装置に用いる水素発生材料収容容器の一例を示す模式図であり、Aは未使用の状態を示し、Bは使用済みの状態を示している。
【0024】
本実施形態の水素発生装置は、図1Aに示すように、水素発生材料2を収容する水素発生材料収容容器1と、水素発生材料収容容器1の内部に水を供給する水供給部3と、水供給部3を制御する制御部(図示せず)と、水素を排出する水素排出部4と、水素発生材料収容容器1の外部表面に設けられた温度検出部5とを備えている。
【0025】
温度検出部5は、温度変化で非可逆的に変色する非可逆性材料を用いて、水素発生材料収容容器1の表面温度の変化を検出する。
【0026】
本実施形態における非可逆性材料としては、例えば、保存状態(常温)では変色せず、ある温度を検知したときに変色し、その後温度が下がっても元の色に戻らない非可逆性塗料を用いることができる。例えば、上記非可逆性塗料を温度検出部5に塗布した場合、温度検出部5に塗布された上記非可逆性塗料の色の変化を水素発生材料収容容器1の使用済みの印として利用できる。上記非可逆性塗料の具体例としては、例えば、感熱記録紙に幅広く利用されているロイコ染料とフェノール系酸性物質の顕色剤を組み合わせた塗料が挙げられる。
【0027】
上記非可逆性塗料は、水素発生材料2と水との発熱反応により生じる温度変化を検知できるものであれば良い。検知温度としては、常温を上回り水の沸点を下回る温度、例えば、80℃に設定する。この場合、上記非可逆性塗料は、水素と水素発生材料2との発熱反応が起きたときのみ変色するため、使用者は、非可逆性塗料の色の変化を見れば水素発生材料収容容器1が未使用かどうかを容易に判別できる。
【0028】
水素発生材料収容容器1としては、水素発生材料2を収容できるものであれば、その材質や形状は特に限定されない。例えば、アルミニウム、鉄などの金属、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの樹脂などを好適に用いることができる。
【0029】
水素発生材料2としては、水との反応により水素を発生するものであれば良い。例えば、アルミニウム、マグネシウム及びそれらの合金よりなる群から選択される少なくとも1種の金属材料を用いることができる。この金属材料と水とが反応して、水素が発生する。特に、上記金属材料が、60μm以下の粒径の粒子を80質量%以上含むものである場合、水との反応性が向上するため好ましい。
【0030】
また、水素発生材料2は、常温(20℃〜30℃の範囲の温度)で水と反応して発熱する発熱材料をさらに含むことが好ましい。水素発生材料2が発熱材料を含む場合、供給される水が低温であっても発熱材料が水と反応して発熱し、金属材料と水との水素発生反応が促進され、迅速に水素を発生させることができるからである。発熱材料としては、例えば、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム及び硫酸カルシウムよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を使用できる。
【0031】
水供給部3を制御する制御部としては特に限定されないが、水の供給量(供給速度)を調整するための開閉可能な弁を備えたポンプなどを使用できる。また、上記制御部は、水素の発生を停止するときに水素発生材料2の反応率を検出する反応率検出器を備えていることが好ましい。再度水素を発生させる際に必要な水の供給量を正確に調整できるからである。
【0032】
ここで、本明細書でいう「反応率」は、水素発生材料2が全て水と反応したと仮定したときの理論的な水素発生量に対する、既に発生した水素量の比率である。従って、反応率が0%の水素発生材料とは、まだ水との反応が一切生じていない状態の水素発生材料を意味する。例えば、水素発生材料2がアルミニウムの場合、アルミニウム1gあたりの理論的な水素発生量は、25℃換算で約1360mlである。
【0033】
水素発生材料2の反応率は、例えば、使用される水素発生材料2の量から求めた、理論的に発生させることができる水素量に対する、水素を発生して供給する経路に設置された流量計などで把握した実際に発生した水素の総量との比率として求めることができる。
【0034】
また、反応率を求める別の方法として、水素発生材料収容容器1の体積膨張を、この水素発生材料収容容器1をさらに取り囲むように配置した外部容器との間に設置した圧力センサによって測定する方法が考えられる。水素発生材料2が水と反応して水素を発生するときに生成される反応生成物は、通常、水素発生材料2よりも体積が大きくなる。このため、水素発生材料2と水との反応が進行するに伴って、水と、未反応の水素発生材料2と、水と反応して生じた反応生成物との体積の総計は、単調的に増加する。そして、水素発生材料収容容器1が、例えば、ポリエチレンなどの樹脂製である場合には、水素発生材料2と水との水素生成反応が進むにつれて体積膨張が生じる。この体積膨張の割合を、水素発生材料収容容器1と、水素発生材料収容容器1を取り囲むように配置した外部容器との間にかかる圧力を用いて把握することにより、水素発生材料2の反応率を把握することができる。
【0035】
ここで、水素発生材料収容容器1を取り囲むように配置した外部容器は、水素発生材料収容容器1を収容でき、かつ、水素発生材料収容容器1と外部容器との間にかかる圧力を正確に測定できるものであれば、その材質や形状は特に限定されない。しかし、水素発生材料収容容器1の温度が100℃程度になることや、水素発生材料2と水との反応に伴って水素発生材料収容容器1の体積膨張が生じることにより受ける圧力の大きさなどを考慮し、外部容器として変形や破損が生じない材質を選択することが好ましい。このような観点から、外部容器の材質としては、アルミニウム、鉄などの金属を用いることができる。
【0036】
上記反応率については、例えば、記憶素子に記録して管理する。水素発生材料収容容器1が後述する方法により使用済みであると判別された場合、上記制御部は、記憶装置に記録されている反応率を読み出し、読み出した反応率に対応した水の供給量の制御を行い、水素の発生を開始させる。読み出した反応率が所定値よりも高い場合には、水素発生の再開を停止、つまり、水素発生材料2の再利用を中止する。なお、上記所定値は、水素発生材料2の反応率がこの値を上回った場合は、水素発生材料2と水との反応がある程度以上に進んでしまっていて、一旦水素発生を停止した場合に、安定した水素の発生反応を再開させることが困難であることを示す基準値に設定する。水素発生材料2中における水素発生物質の種類や、水素発生物質が水素発生材料2中に占める割合、水素発生材料2の総量などの条件により異なるが、例えば60%とすることができる。
【0037】
以下、本実施形態の水素発生材料収容容器1が未使用であるかどうかの確認方法について図1を参照しながら説明する。
【0038】
図1Aに示す未使用状態の水素発生材料収容容器1を用意する。この水素発生材料収容容器1の温度検出部5には、非可逆性塗料が塗布されている。また、水素発生材料収容容器1内には、水素発生材料2が収容されている。
【0039】
水供給部3から水素発生材料収容容器1に水を供給すると、水素発生材料収容容器1内では、水素発生材料2と水とが反応して水素が発生し、発生した水素は水素排出部4から排出される。また、上記水素発生材料2と水との反応に伴い水素発生材料収容容器1内の温度が上昇し、水素発生材料収容容器1の表面温度も上昇する。水素発生材料収容容器1の表面温度が所定温度に達すると、図1Bに示すように温度検出部5に塗布されている非可逆性塗料が変色する。一度変色した非可逆性塗料は、水素発生材料収容容器1の表面温度が下がっても再び元の色に戻ることがなく、変色したままである。そのため、温度検出部5に塗布されている非可逆性塗料の変色を、目視で確認、あるいは、光学センサなどを用いて検出することにより、水素発生材料収容容器1が使用済みであるか否かを判別可能である。
【0040】
このような本実施形態の水素発生装置によれば、温度変化で非可逆的に変色する非可逆性材料を用いて水素発生材料収容容器1の表面温度の変化を検出する温度検出部5を備えたことにより、非可逆性材料の変色を水素発生材料収容容器1の使用済みの印として利用でき、水素発生材料収容容器1が使用済みであるかどうかを簡単に判別できる。その結果、水素発生を開始する際、水素発生材料収容容器1が未使用であるかどうかに応じて水の供給量を制御でき、素早く、効率よくかつ安定的に水素を発生させることができる。
【0041】
(実施形態2)
以下、本発明の実施形態2に係る水素発生装置について図2を用いて説明する。図2は、本発明の水素発生装置に用いる水素発生材料収容容器1の一例を示す模式図であり、Aは未使用の状態を示し、Bは使用済みの状態を示している。図2において、図1と同一構成要素については同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0042】
本実施形態の水素発生装置は、図2Aに示すように、水素発生材料2を収容する水素発生材料収容容器1と、水素発生材料収容容器1の内部に水を供給する水供給部3と、水供給部3を制御する制御部(図示せず)と、水素を排出する水素排出部4と、水素発生材料収容容器1の外部表面に設けられた温度検出部6とを備えている。
【0043】
温度検出部6は、温度変化で電気的特性が非可逆的に変化する非可逆性材料を用いて、水素発生材料収容容器1の表面温度の変化を検出する。
【0044】
本実施形態における非可逆性材料としては、例えば、保存状態(常温)では電気抵抗が変化せず、水素発生材料2と水との発熱反応によって生じる水素発生材料収容容器1の温度変化を検知したときに電気抵抗が変化し、その後温度が下がっても電気抵抗は元に戻らない電気回路素子を用いることができる。例えば、上記電気回路素子を温度検出部6に配置した場合、電気回路素子の抵抗値を水素発生材料収容容器1の使用済みの印として利用できる。上記電気回路素子の具体例としては、例えば、図2Aに示すように、端子7aと端子7bとの間を低融点合金7cで接続した温度ヒューズ7が挙げられる。
【0045】
以下、本実施形態の水素発生材料収容容器1が未使用であるかどうかの確認方法について図2を参照しながら説明する。
【0046】
図2Aに示す未使用状態の水素発生材料収容容器1を用意する。この水素発生材料収容容器1の温度検出部6には、温度ヒューズ7が配置されている。また、水素発生材料収容容器1内には、水素発生材料2が収容されている。
【0047】
水供給部3から水素発生材料収容容器1に水を供給すると、水素発生材料収容容器1内では、水素発生材料2と水とが反応して水素が発生し、発生した水素は水素排出部4から排出される。また、上記水素発生材料2と水との反応に伴い水素発生材料収容容器1内の温度が上昇し、水素発生材料収容容器1の表面温度も上昇する。水素発生材料収容容器1の表面温度が所定温度に達すると、図2Bに示すように温度検出部6に配置されている温度ヒューズ7は、低融点合金7bが溶融して開放状態(非導通状態)になる。一度開放状態になった温度ヒューズ7は、水素発生材料収容容器1の表面温度が下がっても開放状態のままである。そのため、温度ヒューズ7の導通状態を確認することで、水素発生材料収容容器1が使用済みであるか否かを判別可能である。具体的には、端子7aと端子7cとの間の電気抵抗を検出し、電気抵抗が小さい場合は未使用状態と判断し、電気抵抗が大きい場合は使用状態と判断できる。
【0048】
このような本実施形態の水素発生装置によれば、温度変化で非可逆的に電気的特性が変化する非可逆性材料を用いて、水素発生材料収容容器1の表面温度の上昇を検出する温度検出部6を備えたことにより、非可逆性材料の電気的特性の変化を水素発生材料収容容器1の使用済みの印として利用でき、水素発生材料収容容器1が使用済みであるかどうかを簡単に判別できる。その結果、水素発生を開始する際、水素発生材料収容容器1が未使用であるかどうかに応じて水の供給量を制御可能となるため、素早く、効率よくかつ安定的に水素を発生させることができる。
【0049】
(実施形態3)
以下、本発明の実施形態3に係る水素発生装置について図3を用いて説明する。図3は、本発明の水素発生装置に用いる水素発生材料収容容器1の一例を示す模式図であり、Aは未使用の状態を示し、Bは使用済みの状態を示している。図3において、図1と同一構成要素については同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0050】
本実施形態の水素発生装置は、図3Aに示すように、水素発生材料2を収容する水素発生材料収容容器1と、水素発生材料収容容器1の内部に水を供給する水供給部3と、水供給部3を制御する制御部(図示せず)と、水素を排出する水素排出部4と、水素発生材料収容容器1の外部表面に設けられた温度検出部8とを備えている。
【0051】
温度検出部8は、温度変化で非可逆的に体積が変化する非可逆性材料を用いて、水素発生材料収容容器1の表面温度の変化を検出する。
【0052】
本実施形態における非可逆性材料としては、例えば、保存状態(常温)では変化せず、水素発生材料2と水との発熱反応によって生じる水素発生材料収容容器1の温度変化を検知したときに体積が非可逆的に膨張する熱膨張性材料を用いることができる。例えば、上記材料を温度検出部8に塗布した場合、温度検出部8の形状の変化を水素発生材料収容容器1の使用済みの印として利用できる。上記熱膨張性材料の具体例としては、例えば、熱膨張性マイクロカプセルが挙げられる。熱膨張性マイクロカプセルとは、低沸点炭化水素を熱可塑性高分子である外殻で内包した微小球である。熱膨張性マイクロカプセルとしては、膨張開始温度が約75〜85℃、最高熱膨張温度が約110〜120℃であることが好ましい。具体的には、松本油脂製薬株式会社製の“マツモトマイクロスフェアーFシリーズ”などが挙げられる。
【0053】
以下、本実施形態の水素発生材料収容容器1が未使用であるかどうかの確認方法について図3を参照しながら説明する。
【0054】
図3Aに示す未使用状態の水素発生材料収容容器1を用意する。この水素発生材料収容容器1の温度検出部8には、熱膨張性材料が塗布されている。また、水素発生材料収容容器1内には、水素発生材料2が収容されている。
【0055】
水供給部3から水素発生材料収容容器1に水を供給すると、水素発生材料収容容器1内では、水素発生材料2と水とが反応して水素が発生し、発生した水素は水素排出部4から排出される。また、上記水素発生材料2と水との反応に伴い水素発生材料収容容器1内の温度が上昇し、水素発生材料収容容器1の表面温度も上昇する。水素発生材料収容容器1の表面温度が所定温度に達すると、図3Bに示すように温度検出部8に塗布されている熱膨張性材料が膨張する。一度膨張した熱膨張性材料は、水素発生材料収容容器1の表面温度が下がっても再び元の形状に戻ることがなく、膨張したままである。そのため、温度検出部8に塗布されている熱膨張性材料の形状の変化を確認することにより、水素発生材料収容容器1が使用済みであるか否かを判別可能である。
【0056】
このような本実施形態の水素発生装置によれば、温度変化で非可逆的に体積が変化する非可逆性材料を用いて、水素発生材料収容容器1の表面温度の上昇を検出する温度検出部8を備えたことにより、非可逆性材料の体積の変化を水素発生材料収容容器1の使用済みの印として利用でき、水素発生材料収容容器1が使用済みであるかどうかを簡単に判別できる。その結果、水素発生材を開始する際、水素発生材料収容容器1が未使用であるかどうかに応じて水の供給量を制御でき、素早く、効率よくかつ安定的に水素を発生させることができる。
【0057】
なお、本実施形態では、高温で非可逆的に形状が変化する材料として、膨張する熱発泡性塗料を挙げたが、逆に高温で収縮する材料でも良い。
【0058】
(実施形態4)
以下、本発明の実施形態4に係る水素発生装置について図4を用いて説明する。図4は、本発明の水素発生装置に用いる水素発生材料収容容器1の一例を示す模式図であり、Aは未使用の状態を示し、Bは使用済みの状態を示している。図4において、図1と同一構成要素については同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0059】
本実施形態の水素発生装置は、図4Aに示すように、水素発生材料2を収容する水素発生材料収容容器1と、水素発生材料収容容器1の内部に水を供給する水供給部3と、水供給部3を制御する制御部(図示せず)と、水素を排出する水素排出部4と、水素発生材料収容容器1の外部表面に設けられた温度検出部9とを備えている。
【0060】
温度検出部9は、温度変化で非可逆的に変色する非可逆性材料を用いて、水素発生材料収容容器1の表面温度の変化を検出し、その検出結果を示す文字、模様あるいは記号を表示するものである。
【0061】
本実施形態における非可逆性材料としては、上記実施形態1の非可逆性塗料を用いることができる。水素発生材料収容容器1の表面温度の変化を検出したことを示す情報の表示方法としては、例えば、水素発生材料収容容器1の外部表面の一部に、上記実施形態1の非可逆性塗料を所望の文字列、模様、記号などの形状に塗布しておけば、水素発生材料2と水との発熱反応によって生じる温度変化を検知すると、上記非可逆性塗料が変色し、温度検出部9に上記所望の文字列、模様、記号などが現れることになる。
【0062】
以下、本実施形態の水素発生材料収容容器1が未使用であるかどうかの確認方法について図4を参照しながら説明する。
【0063】
図4Aに示す未使用状態の水素発生材料収容容器1を用意する。この水素発生材料収容容器1の温度検出部9には、非可逆性材料が「使用済」の文字列の形状に塗布されている。また、水素発生材料収容容器1内には、水素発生材料2が収容されている。
【0064】
水供給部3から水素発生材料収容容器1に水を供給すると、水素発生材料収容容器1内では、水素発生材料2と水とが反応して水素が発生し、発生した水素は水素排出部4から排出される。また、上記水素発生材料2と水との反応に伴い水素発生材料収容容器1内の温度が上昇し、水素発生材料収容容器1の表面温度も上昇する。水素発生材料収容容器1の表面温度が所定温度に達すると、図4Bに示すように温度検出部9に塗布されている非可逆性塗料が変色し、「使用済」の文字が現れることになる。一度変色した非可逆性塗料は、水素発生材料収容容器1の表面温度が下がっても再び元の色に戻ることがないため、「使用済」の文字は消えずに残る。これにより、使用しようとする水素発生材料収容容器1が未使用であるかどうかを判別できる。
【0065】
このような本実施形態の水素発生装置によれば、温度変化で非可逆的に変色する非可逆性材料を用いて、水素発生材料収容容器1の表面温度の上昇を検出し、その旨を表示する温度検出部9を備えたことにより、非可逆性材料の変色を検出することで水素発生材料収容容器1が未使用であるかどうかを判別できるだけでなく、「使用済」の文字が表示されることで使用者はより確実に判別できる。その結果、水素発生材料収容容器1が未使用であるかどうかに応じて水の供給量を制御でき、素早く、効率よくかつ安定的に水素を発生させることができる。
【0066】
なお、本実施形態では、水素発生材料収容容器1を使用した後に「使用済」という文字列を表示する場合について説明したが、水素発生材料収容容器1を使用する前に「使用前」の文字列を表示させておき、使用した後に「使用前」の文字列が消える(読めなくなる)ようにしても良い。あるいは、水素発生材料収容容器1の使用前には「使用前」の文字列を表示し、使用後に「使用後」の文字列を表示するようにしても良い。表示する情報は、上記のような文字列だけでなく、マークや写真などの画像であっても良い。また、バーコードのように機械処理が容易な記号であっても良い。
【0067】
また、本実施形態では、上記実施形態1の非可逆性塗料を用いる場合について説明したが、上記実施形態3の熱膨張性材料を用いることもできる。
【0068】
(実施形態5)
本発明の実施形態5に係る燃料電池システムは、上記実施形態1〜4のいずれかの水素発生装置と、この水素発生装置で生成された水素を用いて発電する燃料電池とを備える。これにより、水素発生材料収容容器を交換したときに、素早く、効率よくかつ安定的に動作可能な燃料電池システムを実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の水素発生装置は、事前に使用済みかどうかを判別可能な水素発生装置として産業上幅広く利用可能である。また、この水素発生装置を備えた燃料電池システムは、小型携帯用機器用の電源をはじめとして幅広く利用可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 水素発生材料収容容器
2 水素発生材料
3 水供給部
4 水素排出部
5、6、8、9 温度検出部
7 温度ヒューズ
7a、7c 端子
7b 低融点合金

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水との発熱反応により水素を発生する水素発生材料を用いて水素を発生させる水素発生装置であって、
前記水素発生材料を収容する水素発生材料収容容器と、
前記水素発生材料収容容器の内部に水を供給する水供給部と、
前記水素発生材料収容容器の外部表面に設けられ、温度変化を検知して非可逆的な状態変化を生じる非可逆材料を用いて前記水素発生材料収容容器の表面温度の上昇を検出する温度検出部とを含むことを特徴とする水素発生装置。
【請求項2】
前記非可逆性材料は、前記水素発生材料と前記水との発熱反応により生じる温度変化を検知したとき、非可逆的に変色する請求項1に記載の水素発生装置。
【請求項3】
前記非可逆性材料は、前記水素発生材料と前記水との発熱反応により生じる温度変化を検知したとき、非可逆的に電気的特性が変化する請求項1に記載の水素発生装置。
【請求項4】
前記非可逆性材料は、前記水素発生材料と前記水との発熱反応により生じる温度変化を検知したとき、非可逆的に体積が変化する請求項1に記載の水素発生装置。
【請求項5】
前記温度検出部は、前記水素発生材料と前記水との発熱反応により生じる温度変化を検知したことを、文字列、記号あるいは模様を用いて表示する請求項2に記載の水素発生装置。
【請求項6】
前記水供給部を制御する制御部をさらに含み、
前記制御部は、前記水素発生材料の反応率を検出する反応率検出器を備え、前記水素発生材料の反応率に基づいて前記水供給部から前記水素発生材料収容容器に供給される水の供給量を制御する請求項1ないし5のいずれか1項に記載の水素発生装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の水素発生装置と、前記水素発生装置で生成された水素を用いて発電する燃料電池とを含むことを特徴とする燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−20866(P2011−20866A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164798(P2009−164798)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】