説明

水素移動反応を使用する光学活性化合物の調製の方法

光学活性化合物の調製のための接触法、および所望の製剤原料へのそれらのその後の変換。特に、この方法は、不斉接触還元および水素移動反応を使用する(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノールの調製に関するものであり、それによってリバスチグミンおよびリバスチグミン酒石酸水素塩などの製剤原料を形成する改良された経路を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学活性化合物の調製のための接触法、および所望の製剤原料へのそれらのその後の変換に関する。より具体的には、本発明は、不斉接触還元および水素移動反応を使用する(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノールの調製のための接触法に関するものであり、それによってリバスチグミンおよびリバスチグミン酒石酸水素塩などの製剤原料を形成する改良された経路を提供する。
【背景技術】
【0002】
現在、リバスチグミンの形成のための効率的で大規模な生成方法は公開されていない。先行技術の方法は、熱力学的に非効率的であるか、または経済的に不利である。
【0003】
製剤原料リバスチグミン(登録商標Exelonとして市販されている[3−[(1S)−1−ジメチルアミノエチル]−フェニル]−N−エチル−N−メチルカルバメート)および(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノールを製造する方法は、参照により本明細書に組み込まれるWO98/42643およびWO2005/058804により知られている。しかし、上に考察している通り、これらの方法は、より大きな規模において非効率的である。製剤原料リバスチグミンは、現在、アルツハイマー病の治療のために使用されており、現存の非効率的生産方法を改良する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の少なくとも一態様の目的は、1つもしくは複数の上述の問題を除去または少なくとも緩和することである。
【0005】
本発明の少なくとも一態様のさらなる目的は、(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノールの製造のための改良された方法を提供することである。
【0006】
本発明の少なくとも一態様のよりさらなる目的は、リバスチグミンおよびその塩の製造のための改良された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によって、以下の一般式(I)
【0008】
【化1】

(式中、
=C1〜20アルキル、C2〜20アルケニル、C2〜20アルキニル、C1〜20有機ハロゲン化物、好ましくはC2〜20有機ハロゲン化物、アリール、アミンまたはアミド基、
および
n=1から5)
による化合物の調製方法が提供され、
前記方法は、
(a)以下の一般式(II)
【0009】
【化2】

(式中、
=C1〜20アルキル、C2〜20アルケニル、C2〜20アルキニル、C1〜20有機ハロゲン化物、好ましくはC2〜20有機ハロゲン化物、アリール、アミンまたはアミド基、
n=1から5)
に示すヒドロキシフェノン(hydroxyphenone)に不斉接触還元を実施するステップ
を含み、
前記不斉接触還元は、水素移動反応を使用して実施する。
【0010】
好ましくは、水素移動反応は、キラル遷移金属系触媒を使用して実施する。
【0011】
典型的には、不斉接触還元は、以下の光学活性化合物(III)
【0012】
【化3】

の鏡像体過剰を生じ得る。
【0013】
光学活性化合物(III)を形成するばかりでなく、不斉接触還元はまた、より少ない量の以下の光学活性化合物(IV)
【0014】
【化4】

も生成し得る。
【0015】
代替として、しかし現在のところより好ましくないが、不斉接触還元は、光学活性化合物(IV)
【0016】
【化5】

の鏡像体過剰を生じ得る。
【0017】
光学活性化合物(IV)を形成するばかりでなく、不斉接触還元はまた、より少ない量の以下の光学活性化合物(III)
【0018】
【化6】

も生成し得る。
【0019】
上に示した通り、不斉接触還元は、化合物(IV)に対する化合物(III)の鏡像体過剰を結果として生じ得る。典型的には、本明細書に定義される不斉接触還元は、例えば、結晶化などのいずれかの形態の精製工程に先立って、約96%:4%以上、約98%:2%以上、約99%:1%以上の化合物(III)対化合物(IV)の鏡像体過剰率を結果として生じ得る。結晶化精製工程は、鏡像体過剰率を向上させ得る。不斉接触還元生成物の結晶化された生成物は、約97%:3%以上、約98%:2%以上、約99%:1%以上、または約>99.5%:約<0.5%、または約>99.7%:約<0.3%の化合物(III)対化合物(IV)の鏡像体過剰率を結果として生じ得る。したがって、本発明は、形成される化合物の商業的に有用な鏡像体比(例えば、高い比率の化合物(III))を結果として生じ得る。
【0020】
驚いたことに、形成される化合物の鏡像体比は、使用される触媒の量に依存し得ることがわかった。例えば、触媒の量を増加させることによって、形成される化合物(III)の量が増加し得る。
【0021】
したがって、本発明は、ヒドロキシフェノンの還元で立体化学的選択性を導入するために、キラル触媒を利用することに頼る方法に関する。還元されるヒドロキシフェノンは、キラルポリオールまたはキラルジオールであってよい。
【0022】
一般式(I)〜(IV)において、nは1に等しくてよく、一般式(I)、(III)および(IV)はジオールに関すること、一般式(II)は1つだけヒドロキシル化されたフェノンに関することを意味する。
【0023】
一般式(I)〜(IV)の芳香環のヒドロキシル基は、芳香環上の3位に生じてもよい。
【0024】
従来、Rは、C1〜10アルキル、C2〜10アルケニル、C2〜10アルキニル、またはC1〜20有機ハロゲン化物、例えばC2〜20有機ハロゲン化物であってよい。
【0025】
典型的には、Rは、メチル、エチル、プロピル、またはブチルのいずれかであってよい。好ましくは、Rは、メチルであってよい。
【0026】
特定の実施形態において、Rはメチルであってよく、nは1に等しくてよく、ヒドロキシル基は、結果として生ずる構造、一般式(II)を有する芳香環上の3位に、例えば生じ、次に式(V)として下に示される1−(3−ヒドロキシ−フェニル)−エタノンになってよい。
【0027】
1−(3−ヒドロキシ−フェニル)−エタノンは、下の式(VI)として示される(R)−3−(1−ヒドロキシ−エチル)−フェノールのキラルジオールに選択的に還元されてよい。
【0028】
【化7】

【0029】
水素移動反応は、遷移金属系触媒などのキラル金属触媒を使用し実施して、不斉反応を実施し得る。例えば、いずれかの適切な第1、第2、または第3列遷移系金属触媒を使用してよい。典型的には、キラル金属系触媒は、複合型Ru、Rh、またはIr系触媒であってよく、アリール、単座、二座、もしくは多座配位子、または、参照により本明細書に組み込まれる、野依ら、Acc.Chem.Res.1997年、30巻(2)、97〜102頁に記載されている複数の不飽和(例えばアリール)配位子を、例えば有してよい。好ましくは、キラル金属系触媒は、Ru系触媒であってよい。好ましい種類のキラル金属触媒は、(ジフェニルエチレンジアミン)系Ru触媒であってよい。
【0030】
特に、キラル金属触媒は、以下の一般式(VII)
【0031】
【化8】

(式中、
M=遷移金属、
=アリール系基、カルボニル、C2〜20アルケニル、またはC2〜20アルキニル、
および
=ハロゲン化物、有機ハロゲン化物、ボロハライド(borohalide)、スルホン酸塩、ニトリル、カルベン、一酸化炭素、ホスフィン、カルボニル、アミン−またはアミド−含有基)
を有してよい。
【0032】
遷移金属Mは、第1、第2、または第3列遷移金属であってよい。典型的には、遷移金属Mは、Ru、Rh、またはIrであってよい。好ましくは、遷移金属Mは、Ruであってよい。
【0033】
は、置換アリール基、置換フェニル基、C2〜10アルケニル、またはC2〜10アルキニルであってよい。典型的には、Lは、p−シメン、ベンゼン、シクロオクタジエン、トリフェニルホスフィン、またはノルボルナジエンであってよい。
【0034】
は、有機フッ化物(organofluoride)、有機塩化物、またはフルオロホウ酸塩であってよい。典型的には、Lは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、テトラフルオロホウ酸塩、トリペンタフルオロフェニルボラン(すなわち、BARF)、メシル酸塩、トリフルオロ酢酸塩、トリフレート、メチルアリル、またはアセチルアセトナト(acetylacetonato)であってよい。
【0035】
特定の実施形態において、キラル金属触媒は、構造(VIII)
【0036】
【化9】

に示される通りであってよい。
【0037】
水素移動反応は、以下の(1R,2R)−(−)−クロロ−N−(4−トルエンスルホニル−1,2−ジフェニルエチレンジアミン)(p−シメン)ルテニウム、もしくはルテニウムp−シメン塩化物二量体と組み合わせた(1R,2R)−(−)−N−4−トルエンスルホニル−1,2−ジフェニルエチレンジアミンのいずれか1つ、またはその組合せによる、キラル金属触媒を使用して実施されてよい。
【0038】
触媒は、式Iの出発化合物に対して、約0.005モル%から約5.0モル%、約0.01モル%から約1.0モル%、または約0.05モル%から約0.5モル%までの範囲で存在してよい。典型的には、触媒は、約0.1モル%の量で存在してよい。
【0039】
水素移動反応の反応は、CからC10アルコールなどのアルコール系溶液中で実施されてよい。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、i−プロパノール、ブタノール、またはそれらの組合せを、反応媒体として使用してよい。三級アミン(例えば、トリエチルアミン)などのアミンもまた、存在してよい。さらに、HCOOHまたはアルコールなどの水素供与体が、存在しなければならない。水素供与体として機能するアルコールは、二級アルコール(例えば、イソプロパノール)またはエタノールであってよい。触媒反応収率および速度を向上させるために、接触法は、約1〜10時間または典型的には約4時間の間、約50〜100℃または約70±10℃まで加熱してよい。次に、反応生成物を、例えば結晶化によって精製してよい。例えば、反応生成物を蒸留し、トルエンなどの有機溶媒を付加してよい。次に、エタノールなどのアルコールを付加してよい。既知の方法によって、得られた生成物を濾過し除去してよい。
【0040】
水素移動反応は、約70%、80%、90%、95%、99%、99.5%、または99.9%を超える鏡像体過剰率を有する、高度に鏡像異性的に純粋な化合物(例えば、ポリオールまたは(R)−3−(1−ヒドロキシ−エチル)−フェノールなどのジオール)を結果として生成し得る。
【0041】
水素移動反応はまた、約70%、80%、90%、95%、99%、99.5%、または99.9%を超える高い変換率も結果として生じ得る。
【0042】
次に、式(III)および(IV)においてなど、上で言及した鏡像異性的に純粋なポリオールまたはジオールの形成において、ポリールまたはジオールを、一連のステップを経て、(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノールなどのキラルアミノアルコールへ変換してよい。一連のステップにおいて、最初に、アルコール性ヒドロキシ基を、求核置換のために活性化する。活性化技術として、スルホン酸エステルを形成するヒドロキシ基のスルホニル化が、記述され得る。したがって、ヒドロキシ基は誘導体化され、脱離基を提供する。例えば、ヒドロキシル基は、スルホン酸無水物(例えば、メタンスルホン酸無水物)、塩化スルホニル、アルキルスルホン酸、エチルスルホン酸、またはトシル化物(例えば、p−トルエンスルホン酸塩)などの、例えばスルホニル化剤を使用して、スルホニル化を受けてよい。したがって、両方のヒドロキシ基(すなわち、フェノール性ヒドロキシ基およびアルコール性ヒドロキシ基)を、メタンスルホン酸無水物を使用してメシル化するか、または別の方法でスルホン化してよい。スルホニル化剤、例えばメタンスルホン酸無水物を、塩基、特に、例えばヒューニッヒ塩基(エチルジイソプロピルアミン)などの非求核性塩基の存在下で、ポリオールまたはジオールと接触させてよい。一手順において、メタンスルホン酸無水物または別のスルホニル化剤を、非プロトン溶媒、例えば双極性の非プロトン溶媒、例えば酢酸エチル、および場合によっては求核性触媒、例えば4−ジメチルアミノピリジンの存在下で、ポリオールまたはジオール、例えば(R)−3−(1−ヒドロキシエチル)フェノールと結合させる。次に、ヒューニッヒ塩基または別の非求核性塩基を、冷却下で、例えば、結果として生じる発熱反応が完了する(熱の発生が止まる)まで、温度を約0℃以下に維持して付加する。
【0043】
次に、活性化されたポリオールまたはジオールは、求核剤、例えば、ジアルキルアミン、特にジメチルアミンなどのアミンと接触させて、活性化された(特にメシル化された)アルコール性ヒドロキシ基に、キラル中心の同時反転による求核置換を受けさせてよい。次に、遊離フェノール性ヒドロキシ基を再生成し、したがって、メシル化された、または別の方法でスルホニル化されたフェノール基を、アルカリ水溶液(例えば、NaOH、KOH等)中で開裂して、キラルアミノアルコールを形成してよい。
【0044】
本明細書に使用される用語「活性化」または用語「活性化された」は、1個を超える−OHヒドロキシル基を有する化合物において、各々のヒドロキシル基が誘導体化され、かかる誘導体化において、少なくとも1個のヒドロキシル基が、求核攻撃のために活性化されることを意味する。例えば、式(VI)に関して、例えば、メシル化剤を使用することによる活性化ステップに続いて、アルコール性ヒドロキシル基−OHは活性化され、フェノール性ヒドロキシル基−OHは誘導体化されて、メタンスルホン酸3−(1−メタンスルホニルオキシ−エチル)−フェニルエステルを形成する。
【0045】
形成される好ましいキラルアミノアルコールは、下に構造(IX)
【0046】
【化10】

に示される(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノールであってよい。
【0047】
次に、形成されたキラルアミノアルコール(例えば、(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノール)は、成分、例えば医薬品有効成分の調製のための出発物質として、使用してよい。かかる実施例は、アシル化/塩形成を経てのアシル化により、例えば、リバスチグミン酒石酸水素塩を形成する可能性がある。
【0048】
本明細書に使用される用語アシル化は、−OH基を−OCOR’基へ変換することであり、式中、R’はアルキル等であり、またはOR’’であり、またはNR’’であり、R’’は、アルキル等である。好ましい実施形態において、−OH基のアシル化は、−OH基が、式R’’NCOXのアシル化剤、好ましい名前としてはカルバミル化剤によって、−OCONR’’基へ変換されるカルバミル化のことであり、式中、好ましくはR’’は、C(CH)であり、Xは、OHまたは活性化基、例えばハロである。アシル化は広い用語として本明細書で使用され、例えばリバスチグミンの調製において使用されるカルバミル化などの反応を包含する。
【0049】
本明細書に使用される用語アルコールは、アルキル基のまたは芳香族のアルコールを含む。
【0050】
次に、アシル化された/塩形態(例えばリバスチグミン酒石酸水素塩)は、例えば塩基遊離を受けて、リバスチグミンの遊離基形態を形成し得る。代替として、キラルアミノアルコールは、直接アシル化されて、アシル化された遊離塩基を形成し得る。したがって、好ましい実施形態において、(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノールを使用して、アルツハイマー病を治療するのに使用され得るリバスチグミン酒石酸水素塩またはリバスチグミンを形成してよい。したがって、(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノールを、リバスチグミンの塩、遊離基、またはプロドラッグ形態に形成してよい。リバスチグミンの遊離基、塩、および/または、プロドラッグ形態をまた、医薬送達生成物、例えば医薬組成物、例えば、カプセルもしくはその他の経口製剤、または経皮送達系、例えば、参照によって本明細書に組み込まれる、WO2007/064407に記載されているような、例えば経皮パッチに形成してよい。好ましい実施形態において、リバスチグミンは、経皮パッチ中に使用してよく、リバスチグミン酒石酸水素塩は、カプセル中に使用してよい。
【0051】
リバスチグミン塩またはリバスチグミン遊離塩基を含み、検出可能な量の3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノールをさらに含む生成物(例えば、組成物)はまた、本発明の一態様も形成し、3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノールは、(R)−鏡像体、(S)−鏡像体、またはそれらの組合せであってよい。したがって、3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノールのラセミ混合物は、単離されたまたは鏡像異性的に純粋な(R)−および(S)−鏡像体が含まれる本発明の中に含まれる。
【0052】
本発明の第2の態様によって、以下の式(X)
【0053】
【化11】

に示す3−(1−ヒドロキシ−エチル)−フェノールの調製方法が提供され、
前記方法は、
(a)以下の式(V)
【0054】
【化12】

に示す1−(3−ヒドロキシ−フェニル)−エタノンに不斉接触還元を実施するステップ
を含み、
前記不斉接触還元は、水素移動反応を使用して実施する。
【0055】
典型的には、不斉接触還元は、以下の光学活性化合物(VI)、
【0056】
【化13】

(R)−3−(1−ヒドロキシ−エチル)−フェノールの鏡像体過剰を生じ得る。
【0057】
光学活性化合物(VI)を形成するばかりでなく、不斉接触還元はまた、より少ない量の以下の化合物(XI)、
【0058】
【化14】

(S)−3−(1−ヒドロキシ−エチル)−フェノールも生成し得る。
【0059】
代替として、しかし現在のところより好ましくないが、不斉接触還元は、光学活性化合物(XI)
【0060】
【化15】

の鏡像体過剰を生じ得る。
【0061】
光学活性化合物(XI)を形成するばかりでなく、不斉接触還元はまた、より少ない量の以下の光学活性化合物(VI)
【0062】
【化16】

も生成し得る。
【0063】
上に示した通り、不斉接触還元は、化合物(XI)に対する化合物(VI)の鏡像体過剰を結果として生じ得る。典型的には、本明細書に定義される不斉接触還元は、例えば、結晶化などのいずれかの形態の精製工程に先立って、約96%:4%以上、約98%:2%以上、約99%:1%以上の化合物(VI)対化合物(XI)の鏡像体過剰率を結果として生じ得る。結晶化精製工程は、鏡像体過剰率を向上させ得る。不斉接触還元の結晶化された生成物は、約97%:3%以上、約98%:2%以上、約99%:1%以上、または約>99.5%:約<0.5%、または約>99.7%:約<0.3%の化合物(VI)対化合物(XI)の鏡像体過剰率を結果として生じ得る。したがって、本発明は、(特定の実施形態において、中間または最終生成物としての医薬品のために)形成される化合物の商業的に有用な鏡像体比を結果として生じ得る。驚いたことに、形成される化合物の鏡像体比が、使用される触媒の量に依存し得ることがわかった。例えば、触媒の量を増加させると、形成される化合物(VI)の量が増加し得る。
【0064】
次に、(R)−3−(1−ヒドロキシ−エチル)−フェノール(すなわち、化合物(VI))は、一連のステップを経て、(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノール)へ変換されてよい。一連のステップにおいて、最初に、アルコール性ヒドロキシ基を、求核置換のために活性化する。活性化技術として、スルホン酸エステルを形成するヒドロキシ基のスルホニル化が、記述され得る。したがって、ヒドロキシ基は誘導体化され、脱離基を提供する。例えば、ヒドロキシル基は、スルホン酸無水物(例えば、メタンスルホン酸無水物)、塩化スルホニル、アルキルスルホン酸、エチルスルホン酸、またはトシル化物(例えば、p−トルエンスルホン酸塩)などの、例えばスルホニル化剤を使用して、スルホニル化を受けてよい。したがって、両方のヒドロキシ基(すなわち、フェノール性ヒドロキシ基およびアルコール性ヒドロキシ基)を、メタンスルホン酸無水物を使用してメシル化するか、または別の方法でスルホニル化してよい。
【0065】
(R)−3−(1−ヒドロキシ−エチル)−フェノールがメシル化される態様において、モノメシル化された種、例えば(R)−3−(1−ヒドロキシエチル)フェニルメタンスルホネート、および/または(R)−1−(3−ヒドロキシフェニル)エチルメタンスルホネートを経て、メシル化反応は起こってよい。
【0066】
スルホニル化剤、例えばメタンスルホン酸無水物を、塩基、特に、例えばヒューニッヒ塩基(エチルジイソプロピルアミン)などの非求核性塩基の存在下で、ポリオールまたはジオールと接触させてよい。一手順において、メタンスルホン酸無水物または他のスルホニル化剤を、非プロトン溶媒、例えば双極性の非プロトン溶媒、例えば酢酸エチル、および場合によっては求核性触媒、例えば4−ジメチルアミノピリジンの存在下で、(R)−3−(1−ヒドロキシエチル)フェノールと結合させる。次に、冷却下で、例えば、結果として生じる発熱反応が完了する(例えば、熱の発生が止まる)まで、温度を約0℃以下に維持して、ヒューニッヒ塩基または別の非求核性塩基を付加する。
【0067】
次に、活性化された(R)−3−(1−ヒドロキシエチル)フェノールは、求核剤、例えば、ジアルキルアミン、特にジメチルアミンなどのアミンと接触させて、活性化された(特にメシル化された)アルコール性ヒドロキシ基に求核置換を受けさせてよい。次に、メシル化された、または別の方法でスルホニル化されたフェノール基を、アルカリ水溶液(例えば、NaOH、KOH等)中で開裂して、下に構造(IX)
【0068】
【化17】

として示される(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノールを形成してよい。
【0069】
次に、形成されたキラルアミノアルコール、(S)−3−(1−ジメチルアミノエチル)フェノール)を、例えばアシル化、特にアシル化/塩形成、および次に、例えば塩からの塩基遊離を経て、有用な有効医薬化合物の生成のための医薬品有効成分出発物質として使用してよい。好ましい実施形態において、(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノール)を使用して、アルツハイマー病を治療するのに使用され得るリバスチグミンまたはリバスチグミン酒石酸水素塩を形成してよい。
【0070】
本発明の第3の態様によって、少なくとも部分的に第1および第2の態様によって形成される有効医薬化合物を含む医薬組成物が提供される。
【0071】
上に示した通り、好ましいキラルアミノアルコールは、(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノールである。(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノール)は、成分、例えば、アシル化、特にアシル化/塩形成下で、リバスチグミンまたはその塩形態(例えばリバスチグミン酒石酸水素塩)などの有効医薬化合物を形成する出発物質として、使用することができる。次に、塩基遊離下で、リバスチグミンは、その塩から形成され得る。次に、リバスチグミンおよびリバスチグミン酒石酸水素塩を使用して、アルツハイマー病および/またはパーキンソン病認知症を治療するために使用され得るリバスチグミン含有生成物を形成してよい。
【0072】
本発明の第4の態様によって、少なくとも部分的に第1および第2の態様によって形成される有効医薬化合物、例えば第3の態様による医薬組成物を含む経皮パッチが提供される。
【0073】
本発明の第5の態様によって、第3の態様による医薬組成物を含むカプセルが提供される。
【0074】
本発明の第6の態様によって、医薬組成物の生成のための医薬品有効成分の調製における第1および第2の態様によって得ることが可能なもしくは得られた、キラルアルコールまたはその誘導体(例えば、ジメシル化された誘導体、例えば化合物I、III、IV、VI、またはXIのジメシル化された誘導体)の使用が提供される。
【0075】
典型的には、キラルアルコールは、(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノールを形成するために使用され得る(R)−3−(1−ヒドロキシ−エチル)−フェノールであってよい。(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノールは、リバスチグミンまたはその塩の形態(例えば、リバスチグミン酒石酸水素塩)を含む医薬組成物を製造するために使用してよい。
【0076】
本発明の第7の態様によって、以下の一般式(VII)
【0077】
【化18】

(式中、
M=遷移金属、
=アリール系基、カルボニル、C2〜20アルケニル、またはC2〜20アルキニル、
および
=本発明の第1および第2の態様に使用するための、ハロゲン化物、有機ハロゲン化物、ボロハライド、スルホン酸塩、ニトリル、カルベン、一酸化炭素、ホスフィン、カルボニル、アミン−またはアミド−含有基)
を有するキラル金属触媒が提供される。
【0078】
典型的には、遷移金属Mは、第1、第2、または第3列遷移金属であってよい。典型的には、遷移金属Mは、Ru、Rh、またはIrであってよい。好ましくは、遷移金属Mは、Ruであってよい。
【0079】
は、置換アリール基、置換フェニル基、C2〜10アルケニル、またはC2〜10アルキニルであってよい。典型的には、Lは、p−シメン、ベンゼン、シクロオクタジエン、トリフェニルホスフィン、またはノルボルナジエンであってよい。Lは、中性配位子であってよい。
【0080】
は、有機フッ化物、有機塩化物、またはフルオロホウ酸塩であってよい。典型的には、Lは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、テトラフルオロホウ酸塩、トリペンタフルオロフェニルボラン(すなわち、BARF)、メシル酸塩、トリフルオロ酢酸塩、トリフレート、メチルアリル、またはアセチルアセトナトであってよい。Lは、陰イオン性配位子であってよい。検出可能な量のキラル金属触媒または前記キラル金属触媒の金属を含む生成物(例えば、組成物)。
【0081】
本発明の第7の態様の代替の実施形態において、以下の一般式(VIIa)
【0082】
【化19】

を有するキラル金属触媒が提供される。
【0083】
特定の実施形態において、キラル金属触媒は、下の構造(VIII)
【0084】
【化20】

に示される通りであってよい。
【0085】
代替の特定の実施形態において、キラル金属触媒は、下の構造(VIIIa)
【0086】
【化21】

に示される通りであってよい。
【0087】
好ましいキラル金属触媒は、以下の(1R,2R)−(−)−クロロ−N−(4−トルエンスルホニル−1,2−ジフェニルエチレンジアミン)(p−シメン)ルテニウム、もしくはルテニウムp−シメン塩化物二量体と組み合わせた(1R,2R)−(−)−N−4−トルエンスルホニル−1,2−ジフェニルエチレンジアミンのいずれか1つ、またはその組合せであってよい。
【0088】
本発明の第8の態様によって、以下の一般式(II)
【0089】
【化22】

(式中、
=C1〜20アルキル、C2〜20アルケニル、C2〜20アルキニル、C1〜20有機ハロゲン化物、好ましくはC2〜20有機ハロゲン化物、アリール、アミンまたはアミド基、
および
n=1から5)
に示す化合物の還元における、第7の態様による触媒の使用が提供される。
【0090】
代替の好ましいキラル金属触媒は、(R,R,R)−クロロ−N−(カンファースルホニル−1,2−ジフェニルエチレンジアミン)(p−シメン)ルテニウム(R,R,R)−CsDPEN)である。
【0091】
本発明の第9の態様によって、
(a)1−(3−ヒドロキシ−フェニル)−エタノン(化合物V)に水素移動反応を使用して不斉接触還元を実施して、下に示されるように、
【0092】
【化23】

(R)−3−(1−ヒドロキシ−エチル)−フェノール(化合物VI)を形成するステップ、
(b)形成された(R)−3−(1−ヒドロキシ−エチル)−フェノールのヒドロキシル基に、活性化、好ましくは誘導体化のステップを実施して、(R)−3−(1−ヒドロキシ−エチル)−フェノールに、活性化されたアルコール性ヒドロキシ基および活性化された、好ましくは誘導体化されたフェノール性ヒドロキシ基を、例えばメシル化された基を形成するステップ、
(c)ジメチルアミンによって活性化されたアルコール性ヒドロキシ基に、求核置換を実施するステップ、ならびに
(d)活性化された、好ましくは誘導体化されたフェノール性ヒドロキシ基を開裂するステップ
を含む、
(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノールが形成される、
(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノールの調製方法が提供される。
【0093】
典型的には、活性化ステップは、特にヒドロキシル基の誘導体化により、活性化基を使用して、脱離基を形成してよい。例えば、スルホニル基を、(R)−3−(1−ヒドロキシ−エチル)フェノールのヒドロキシル基に付加して、スルホン酸塩脱離基を形成してよい。ヒドロキシル基は、メシル化、またはスルホニル化剤、例えばスルホン酸無水物(例えば、メタンスルホン酸無水物)、塩化スルホニル、アルキルスルホン酸、エチルスルホン酸、またはトシル化物(例えば、p−トルエンスルホン酸塩)を使用して、その他のスルホニル化を受けてよい。したがって、両方のヒドロキシ基(すなわち、フェノール性ヒドロキシ基およびアルコール性ヒドロキシ基)は、スルホニル化、例えばメシル化されてよい。
【0094】
非プロトン有機溶媒(例えば、酢酸エチル)の存在下で、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(すなわち、ヒューニッヒ塩基)などの塩基を、温度を低下させて付加してよい。次に、求核置換反応は、活性化されたアルコール性ヒドロキシ基を置換するために使用されてよい、例えば、ジアルキルアミン(例えば、ジメチルアミン)などのアミンによって、実施されてよい。次に、メシル化された、または別の方法でスルホニル化されたフェノール基を、アルカリ水溶液(例えば、NaOH、KOH等)中で開裂して、(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノールを形成してよい。
【0095】
本発明の第10の態様によって、
(a)1−(3−ヒドロキシ−フェニル)−エタノン(化合物(V))に、水素移動反応を使用して不斉接触還元を実施して、以下に示されるように、
【0096】
【化24】

(R)−3−(1−ヒドロキシ−エチル)−フェノール(化合物(VI))を形成するステップ、
(b)(R)−3−(1−ヒドロキシ−エチル)−フェノールを(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノールへ変換するステップ、
(c)(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノールをアシル化して、リバスチグミンを形成するステップ
を含むリバスチグミンの調製方法が提供される。
【0097】
ステップ(c)は、ステップ(c1)および(c2)、すなわち
(c1)形成された(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノールにアシル化/塩形成を実施するステップ、および
(c2)(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノールのアシル化された/塩の形態に塩基遊離を実施するステップ
を含んでよい。
【0098】
本明細書に記載されるいずれかの方法によって作製されたリバスチグミン遊離塩基は、薬学的に許容される酸と接触させて、その酸付加塩を形成してよい。遊離塩基もしくはその酸付加塩、またはその両方は、薬物送達生成物、例えば医薬組成物(例えば、経口投与のためのカプセル)または経皮送達系、例えば経皮パッチ中に組み込まれてよい。
【0099】
(R)−3−(1−ヒドロキシ−エチル)−フェノールは、ジメチルアミンによる求核置換によって、ならびにより具体的には、(R)−3−(1−ヒドロキシ−エチル)−フェノールに、活性化されたアルコール性ヒドロキシ基、および活性化された、好ましくは誘導体化されたフェノール性ヒドロキシ基を形成することによって、(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノールへ変換されてよい。次に、求核置換反応は、(R)−3−(1−ヒドロキシ−エチル)−フェノールをジメチルアミノと接触させることによって、活性化されたアルコール性ヒドロキシ基に実施されてよい。次に、活性化されたフェノール性ヒドロキシ基を開裂して、(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノールを形成してよい。
【0100】
この後者の化合物は、式C(CH)NC(O)X(式中、Xは、OHまたは活性化基、例えばクロロなどの例えばハロである)のアシル化剤で、次にアシル化されて、遊離塩基または酸付加塩としてリバスチグミンを形成し得る。
【0101】
本発明の一態様は、検出可能な量の出発物質、副生成物、中間体等を含む生成物(例えば、組成物)を含む。本発明から直接的または間接的に得られる生成物中に発見され得る検出可能な化合物の例としては、1−(3−ヒドロキシ−フェニル)−エタノン、3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノール、3−(1−ヒドロキシエチル)フェニルメタンスルホネート、1−(3−ヒドロキシフェニル)エチルメタンスルホネート、メタンスルホン酸3−(1−メタンスルホニルオキシ−エチル)−フェニルエステル、およびメタンスルホン酸3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェニルエステルが挙げられる。3−(1−ヒドロキシエチル)−フェノールは、(R)−鏡像体、(S)−鏡像体、またはそれらの組合せであってよい。したがって、3−(1−ヒドロキシエチル)−フェノールのラセミ混合物は、単離されたまたは鏡像異性的に純粋な(R)−および(S)−鏡像体が含まれる本発明の中に含まれる。特定の実施形態において、化合物は、(R)−3−(1−ヒドロキシエチル)−フェノールであり、(R)−3−(1−ヒドロキシエチル)−フェノールは、(R)−3−(1−ヒドロキシエチル)−フェノールの合成の文脈で以前に記述した通り、(S)−異性体に対して鏡像体過剰、例えば96%以上の過剰率であり得る。本明細書に定義される鏡像体過剰率は、キラル固定相(Daicel chemical industries)および移動相としてヘプタンとイソプロパノールとの適切な混合物を使用する、キラルHPLC法を使用して測定された。
【0102】
メタンスルホン酸3−(1−メタンスルホニルオキシ−エチル)−フェニルエステル自体が、出可能な量の化合物を含む生成物(例えば、組成物)と同様に、本発明の一態様を形成する。メタンスルホン酸3−(1−メタンスルホニルオキシ−エチル)−フェニルは、(R)−鏡像体、(S)−鏡像体、またはそれらの組合せであってよい。したがって、メタンスルホン酸3−(1−メタンスルホニルオキシ−エチル)−フェニルのラセミ混合物は、単離されたまたは鏡像異性的に純粋な(R)−および(S)−鏡像体が含まれる本発明の中に含まれる。
【0103】
メタンスルホン酸3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェニルエステル自体が、検出可能な量のかかる化合物を含む生成物(例えば、組成物)と同様に、本発明の一態様を形成する。メタンスルホン酸3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェニルエステルは、(R)−鏡像体、(S)−鏡像体、またはそれらの組合せであってよい。したがって、メタンスルホン酸3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェニルエステルのラセミ混合物は、単離されたまたは鏡像異性的に純粋な(R)−および(S)−鏡像体が含まれる本発明の中に含まれる。
【0104】
3−(1−ヒドロキシエチル)−フェニルメタンスルホネート自体が、検出可能な量のかかる化合物を含む生成物(例えば、組成物)と同様に、本発明の一態様を形成する。3−(1−ヒドロキシエチル)−フェニルメタンスルホネートは、(R)−鏡像体、(S)−鏡像体、またはそれらの組合せであってよい。したがって、3−(1−ヒドロキシエチル)−フェニルメタンスルホネートのラセミ混合物は、単離されたまたは鏡像異性的に純粋な(R)−および(S)−鏡像体が含まれる本発明の中に含まれる。
【0105】
1−(3−ヒドロキフェニル)−エチルメタンスルホネート自体が、検出可能な量のかかる化合物を含む生成物(例えば、組成物)と同様に、本発明の一態様を形成する。1−(3−ヒドロキフェニル)−エチルメタンスルホネートは、(R)−鏡像体、(S)−鏡像体、またはそれらの組合せであってよい。したがって、1−(3−ヒドロキフェニル)−エチルメタンスルホネートのラセミ混合物は、単離されたまたは鏡像異性的に純粋な(R)−および(S)−鏡像体が含まれる本発明の中に含まれる。
【0106】
したがって、本発明から直接的または間接的に得られる生成物中に発見され得る検出可能な化合物の例としては、1−(3−ヒドロキシ−フェニル)−エタノン、(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノール、メタンスルホン酸3−(1−メタンスルホニルオキシ−エチル)−フェニルエステル、メタンスルホン酸3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェニルエステル、キラル金属触媒および/または前記キラル金属触媒の金属が挙げられる。
【0107】
また、ジメチルアミンによる(R)−3−(1−ヒドロキシエチル)−フェノールのヒドロキシエチル基の求核置換を達成するステップ、および式C(CH)NC(O)X(式中、Xは、OHまたは活性化基、例えばハロである)のアシル化剤で、結果として生じる生成物のフェノール性ヒドロキシ基をアシル化するステップを含む、リバスチグミンを調製する方法も含まれる。求核置換は、ヒドロキシエチルラジカルのヒドロキシ基を活性化させ、ジメチルアミンと活性化された化合物を接触させることによって、進行してよい。出発化合物(R)−3−(1−ヒドロキシエチル)−フェノールは、ラセミ体の中に含まれる方法の一分類中にあるが、方法の別の分類においては、前述の通り、その(S)−異性体に対して鏡像体過剰、例えば96%以上の過剰率にある。したがって、(R)−3−(1−ヒドロキシエチル)−フェノールは、単離された形態にあってよい。(R)−3−(1−ヒドロキシエチル)−フェノールが、十分な鏡像体過剰にない場合、またはさもなければ、増強された鏡像体過剰率が望まれる場合、最終生成物3−[1−ジメチルアミノエチル]−フェニル]N−エチル−N−メチルカルバメートは、例えばHPLCなどの従来の手順によって、またはキラル分割剤の使用によって、所望の(1S)−異性体(リバスチグミン)を選択するために処理されてよい。前述の通り、アシル化は、アシル化/塩形成の方法であってよい。いずれにしても、リバスチグミンは、その酸付加塩へ変換されてよく、同様に、リバスチグミンまたはその酸付加塩はさらに、医薬送達生成物へ加工されてよい。
【0108】
本発明の実施形態を、添付の図面に関して、例によってのみここに記載する。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】1−(3−ヒドロキシ−フェニル)−エタノンの不斉接触還元および水素移動反応を使用する、(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノールの形成のための本発明による(ステップごとのまたは別の仕方での)方法の図である。
【図2】1−(3−ヒドロキシ−フェニル)−エタノンの不斉接触還元および水素移動反応を使用して、(R)−3−(1−ヒドロキシ−エチル)−フェノールを形成する本発明による方法の図である。
【発明を実施するための形態】
【0110】
本発明は、ヒドロキシフェノン標的分子に立体化学的選択性を導入するために、キラル触媒を利用することに頼る方法に関する。不斉水素移動反応を使用することによって、1−(3−ヒドロキシ−フェニル)−エタノンなどのヒドロキシフェノンを、遊離フェノール官能性を保護することを必要とせずに、高い触媒回転率および選択性によって、高度に鏡像異性的に純粋なジオールへ変換する。
【0111】
図2は、本発明の実施形態に関するものであり、(R)−3−(1−ヒドロキシ−エチル)フェノールを形成するための1−(3−ヒドロキシ−フェニル)−エタノンの不斉還元を示す。図1に例証される通り、適切なさらなる処理ステップによって、(R)−3−(1−ヒドロキシ−エチル)−フェノールの鏡像体過剰率は、リバスチグミンまたはリバスチグミン酒石酸水素塩を大規模に形成するために使用され得る生成物(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノールへ持ち越される。
【0112】
最初に、図1および2に示される1−(3−ヒドロキシ−フェニル)−エタノンは、不斉水素移動反応を使用する不斉還元を受けて、(S)−3−(1−ヒドロキシ−エチル)−フェノールを形成する。したがって、水素移動反応は、エナンチオ選択的な方法で1−(3−ヒドロキシ−フェニル)−エタノンなどのヒドロキシフェノンを還元する。
【0113】
図1に示される通り、(S)−3−(1−ヒドロキシ−エチル)−フェノールは、例えば、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(すなわち、ヒューニッヒ塩基)の存在下で、ヒドロキシル基の二重メシル化を受けて、ジメシル化された化合物(R)−メタンスルホン酸3−(1−メタンスルホニルオキシ−エチル)−フェニルエステルを形成してよい。次に、反転下でのジメチルアミンによるベンジルのメシル酸塩の求核置換があって、化合物(S)−メタンスルホン酸3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェニルエステルを形成してよく、次に、水酸化ナトリウム水溶液でのフェノールのメシル酸塩の開裂があって、最終的に(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノールを形成してよい。(S)−3−(1−ジメチルアミノエチル)−フェノールは、非常に高い鏡像異性的に純粋な形態で生成される。
【0114】
本発明の有利な態様において、例えば、動的集塊状結晶化を経て鏡像体のさらなる分離を開始することによって鏡像体純度を高めるために、生成物の結晶化を使用してよい。一般的に、いずれの鏡像体過剰(例えば、(S)−3−(1−ジメチルアミノエチル)−フェノール)もその全体が結晶に濃縮して、ほとんどのラセミ液をその他の鏡像体中に濃縮したままにするので、集塊状結晶化は、鏡像体純度の効率的な上昇を可能にするという利点を有する。前記集塊状分割は、3−(1−ジメチルアミノエチル)−フェノールの効率的な鏡像体分割に導く。集塊状結晶化はまた、ジアステレオ異性の塩の形成を経て鏡像体の濃縮の必要性を回避するという利点も有する。
【0115】
動的分離法における第1段階は、過飽和溶液の調製である。系の状態(例えば、温度、圧力、溶媒組成等)を調節して、溶媒中の鏡像体の成分に溶解を引き起こし、次にさらに調節して、溶媒中の少なくとも1つの鏡像体の成分の量が、このさらに調節された状態下で、前記鏡像体の溶解度より大きくなるようにするいずれかの方法によって、過飽和溶液を調製してよい。例えば、混合物に存在する量より少なく、少なくとも所望の鏡像体の溶解度を低下させるのに十分な量で、溶媒/鏡像体混合物に貧溶媒を付加することによって、過飽和溶液を調製してよい。代替として、蒸留を使用して溶媒/鏡像体混合物を濃縮することによって、過飽和溶液を調製してよい。
【0116】
代替として、溶媒/鏡像体の混合物、例えば懸濁液を、溶媒中の両方の鏡像体を溶解するのに十分な高さの温度まで加熱し、次に溶媒中の1つまたは両方の鏡像体の量がその温度でのそれらの溶解度より大きくなるレベルまで、溶液を冷却することによって、過飽和溶液を調製してよい。好ましくは、加熱された溶液は、均一溶液である。
【0117】
溶媒/鏡像体混合物を、溶媒の沸点までの温度、例えば、沸点より約10℃以上低い温度に加熱してよい。一態様において、溶媒/鏡像体混合物を、40℃より高い、例えば50℃より高い、60℃より高いなど、例えば70℃より高い、または90℃より高い温度に加熱してよい。溶媒/鏡像体混合物を、約100℃まで、例えば約90℃まで、または約80℃まで、約70℃までなどに加熱してよい。
【0118】
溶液を、5℃を超えて、例えば10℃を超えて、20℃または30℃を超えてなどで冷却してよい。溶液を、100℃未満、例えば80℃未満または60℃未満、40℃未満などで冷却してよい。
【0119】
溶液を、溶液の氷点より高い温度まで冷却してよい。例えば、溶液を、30℃より低く、より好ましくは20℃より低く、さらにより好ましくは10℃より低く、およびさらにより好ましくは5℃より低くなるまで、冷却してよい。溶液を、約0℃に等しいかまたはその上の値、例えば約10℃より上または約20℃より上まで冷却してよい。
【0120】
溶媒は、両方の鏡像体を溶解して単一の共融点を有する系を生成することが可能な、いずれかの適切な溶媒またはその混合物であってよい。適切な溶媒としては、非極性溶媒、例えば、トルエン、ベンゼンなどの芳香族非極性溶媒;メチル、エチル、または酢酸イソプロピルなどの酢酸アルキル溶媒、例えば、酢酸イソプロピル;非極性アルキルまたはシクロアルキル溶媒、例えばシクロヘキシルが挙げられる。好ましい態様において、溶媒は、酢酸イソプロピル、または酢酸イソプロピルとヘキサンもしくはトルエンとの混合物である。
【0121】
代替として、溶媒は、極性触媒、例えば水、イソプロパノール/水混合物、または酸性/塩基性水性アルコール混合物である。
【0122】
溶媒が非極性溶媒である本発明の態様において、溶媒の含水量は、無視可能、例えば、溶液に対して0.3重量%未満、例えば0.03重量%未満または0.003重量%未満であってよい。
【0123】
結晶化は、結晶化を誘起するのに適切ないずれかの形態での所望の鏡像体の付加によって誘起されてよい。例えば、(場合によっては、溶媒中に固体相として存在する)1種もしくは複数の種晶として、または溶解した形態で鏡像体を含む過飽和溶液として、鏡像体を付加してよい。この態様において、付加する溶液の鏡像体が、所望の鏡像異性形態の種晶を急速に形成するように、鏡像体の過飽和溶液を、主溶液の温度より高い温度で主溶液中に導入してよい。種晶は、結晶形態での所望の鏡像体の形成のための基質として作用する。好ましくは、種晶は微粒子化される。一態様において、少なくとも90重量%、例えば少なくとも99重量%または少なくとも99.9重量%の種は、400μm未満、例えば、350μm未満もしくは300μm未満、275μm未満などのサイズ(または非球形種の場合には最大寸法)を有する。一態様において、少なくとも90重量%、例えば少なくとも99重量%または少なくとも99.9重量%の種は、100μmを超える、150μmを超えるなど、例えば200μmを超えるもしくは250μmを超えるサイズ(または非球形種の場合には最大寸法)を有する。一態様において、実質的に全ての微粒子化された種は、<275μmのサイズを有する。種晶のサイズは、電子顕微鏡法または動的光散乱などのいずれかの適切な技術を使用して、例えば、Malvern Mastersizer2000測定装置を使用して、測定してよい。
【0124】
ほんの少量の鏡像体だけが、核生成中心として作用するために必要とされるので、必要とされる所望の鏡像体の種晶の全質量は、溶液中の鏡像体の量に対して比較的少ない。例えば、所望の鏡像体の種晶を、混合物中の所望の鏡像体の全量に対して0.0005g/gを超える、例えば0.001g/gを超える、0.005g/gを超えるまたは0.01g/gを超えるなどの量で、付加してよい。所望の鏡像体の種晶を、混合物中の所望の鏡像体の全量に対して0.1g/g未満、例えば0.05g/g未満、0.03g/g未満などの量で、付加してよい。
【0125】
好ましい鏡像体の溶解された分子が、形成する結晶(自発的に形成する、または種)と接触する速度を最大化するために、結晶化ステップの間、液体を持続的に撹拌してよい。結晶化工程が実行される時間は、所望の純度および収率、ならびに所望の鏡像体の鏡像体過剰率に依存する可能性がある。
【0126】
一態様(例えば、所望の鏡像体のその他の鏡像体に対する比率が、63:35未満、例えば60:40未満または55:45未満である場合)において、種の付加に続いて、精製された鏡像体の結晶の回収を開始する前の時間は、5分を超える、例えば10分を超える、15分を超えるまたは20分を超えるなどであってよい。この時間はまた、5時間未満、例えば2時間未満、45分未満または35分未満などであってもよい。
【0127】
一態様(例えば、所望の鏡像体のその他の鏡像体に対する比率が、63:35を超える、例えば75:25を超えるまたは85:15を超える、95:5を超えるまたは99:1を超えるなどの場合)において、種の付加に続いて、精製された鏡像体の結晶の回収を開始する前の時間は、2時間を超える、例えば4時間を超える、8時間を超えるまたは16時間を超えるなどであってよい。この時間はまた、48時間未満、例えば36時間未満、30時間未満または24時間未満などであってもよい。
【0128】
好ましい鏡像体の結晶を、いずれかの適切な方法で回収してよい、例えば結晶を、濾過によって除去してよい。この段階の間、場合によって行われる撹拌を停止してよい。撹拌しないいずれの結晶形成も、拡散制限力学によって、その後制御される可能性があるので、これは、より好ましくない鏡像体のいずれかの結晶が自発的に形成する率を減少させる効果を有する。
【0129】
次に、結晶化または再結晶化の手順は、2回以上、例えば、2、3、または4回、反復されてよい。
【0130】
結晶化手順を場合によって使用して、式(IX)の(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノールを、90:10以上、例えば95:5以上、例えば99.1以上、例えば99.5:0.5以上、例えば99.9:0.1以上の鏡像体割当量(S:R)で得ることができる。
【0131】
図2は、1−(3−ヒドロキシ−フェニル)−エタノンの水素移動反応を示す。EtOH中で、NEt約0.4当量、HCOOH約2当量、約0.1モル%の触媒によって、約70±10℃で、約4時間、反応を実行する。使用される触媒は、以下
【0132】
【化25】

の通りである。
【0133】
キラル触媒(VIII)は、1−(3−ヒドロキシ−フェニル)−エタノンのキラル(R)−3−(1−ヒドロキシ−エチル)−フェノールに対する、約99%を超える変換および約97.5%を超える選択的還元を結果として生じる。遊離ヒドロキシル基を有する基質は、ヒドロキシル基の酸素が、一般的に使用されるルテニウム触媒に強力に結合し、それによって非活性化および低い回転数に導き得るので、難題をもたらす。
【0134】
本明細書に記載される水素移動反応系は、1−(3−ヒドロキシ−フェニル)−エタノンなどのヒドロキシフェノンの立体選択的還元において、優秀な結果を出すことがわかった。
【0135】
次に、得られた(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノールを、出発物質、またはさもなければ例えば中間体として使用してリバスチグミンを作製してよい。特に、出発物質を、式C(CH)NC(O)X(式中、XはOHまたは活性化基、例えばハロ、特にクロロである)のアシル化剤によってアシル化(カルバミル化もまた意味し得る)して、リバスチグミンを形成してよい。リバスチグミンは、酸付加塩の形態で提示されてよい。したがって、アシル化/塩形成下での(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノールは、リバスチグミン酒石酸水素塩を形成し得る。次に、塩基遊離下で、リバスチグミンが形成される。
【0136】
したがって、リバスチグミンは、遊離塩基としてまたは薬学的に許容される塩の形態で、投与されてよい。薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法によって、親化合物から合成することができる。一般的に、水中もしくは有機溶媒中、またはこの2つの混合物中で、典型的には化学量論的な量の適切な酸と、リバスチグミンの遊離塩基形態を反応させることによって、かかる塩を調製することができる。非水性媒体の例は、ジエチルエーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、およびアセトニトリルである。適切な塩のリストは、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第17刊、Mack Publishing Company、Easton、Pa.、US、1985年、1418頁にあり、この開示は、参照により本明細書に組み込まれる。また、Stahlら編、『薬学的塩の特性選択および使用のハンドブック(Handbook of Pharmaceutical Salts Properties Selection and Use)』、Verlag Helvetica Chimica Acta and Wiley−VCH、2002年、特に表1,2、3、および4を参照せよ。この出版物の開示は、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0137】
かかる酸付加塩の例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、カムホレート(camphorate)、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオネート(cyclopentanepropionate)、ジグルコネート(digluconate)、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタノエート(glucoheptanoate)、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホネート(hydroxyethanesulfonate)、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチネート(pectinate)、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸水素塩、酒石酸塩、チオアシネート(thiocyanate)、トシル酸塩、およびウンデカノエート(undecanoate)が挙げられる。
【0138】
リバスチグミンは、遊離塩基または塩としてのどちらで投与されるとしても、薬物送達生成物から、すなわち有効なAPIが送達され得る生成物から、身体へ典型的に送達される。代表的な薬物送達生成物は、有効なAPIおよび薬学的に許容される希釈剤、賦形剤または担体、ならびに、場合によって、少なくとも1種の付加的な活性化合物を含む医薬組成物を含む。かかる組成物は、例として、経口または経皮であってよい。経口組成物は、カプセル、錠剤、分散剤、または溶液を含んでよい。別の種類の薬物送達生成物は、経皮パッチである。
【0139】
本発明の上に記載された実施形態は、単に代表的なものだけであり、これに対する様々な改変例および改善例は、本発明の範囲から逸脱せずに作製され得ることは、当業者にとって明確であろう。例えば、水素移動反応を使用する1−(3−ヒドロキシ−フェニル)−エタノンなどのヒドロキシフェノンの不斉還元において、様々なキラル金属触媒を使用してよい。さらに、ヒドロキシフェノンの還元された形態は、いずれかの適切な既知の方法を使用して必要とされるキラルアミノフェノールへ変換されてよい。
【実施例】
【0140】
以下の手順は、代表的なものだけである。記述された温度は、約±10℃で幅があってよく、反応剤および溶媒の量もまた、記述された量から幅があってよく、したがっておよそ述べられた値であってよい。
【0141】
実施例1a:水素移動反応を経ての(R)−3−(1−ヒドロキシ−エチル)−フェノール
不活性化(N)の1L反応器中で、1−(3−ヒドロキシ−フェニル)−エタノン180.0gおよび(1R,2R)−(−)−クロロ−N−(4−トルエンスルホニル―1,2―ジフェニルエチレンジアミン)(p−シメン)ルテニウム(またはルテニウムp−シメン塩化物二量体と組み合わせた(1R,2R)−(−)−N−4−トルエンスルホニル―1,2―ジフェニルエチレンジアミン)858mgを、無水エタノール474gに溶解した。溶液を70℃まで加熱して、30分間撹拌した。トリエチルアミン54.6gを付加した。ホルム酸124.2gを、最大撹拌速度によって、4時間以内で約70℃で付加した。反応液を、70℃で4時間撹拌し、次に温度を60℃まで低下させた。アセトン165gを2時間以内で付加し、60℃で2時間、撹拌を継続した。溶媒595gを蒸留によって除去し、トルエン519gを66℃で付加した。溶媒257gを蒸留によって除去した。トルエン208gを66℃で付加した。無水エタノール48gを66℃で付加し、30分間、撹拌を継続した。温度を、3時間以内で0℃まで低下させた。約0℃で2時間、撹拌を継続した。
【0142】
固体を濾過し、各回トルエン3×130gによって3回洗浄した。湿った生成物(194.7g)を、約50℃/20mbarで少なくとも8時間乾燥させて、(R)−3−(1−ヒドロキシ−エチル)−フェノール165.6g(収率90%、鏡像体比99.3:0.7)を生じた。
【0143】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6, ppm): 1.25 (s, 3H); 4.60 (m, 1H); 5.08 (s, 1H); 6.58 (d, 1H); 6.73 (m, 2H); 7.08 (t, 1H); 9.27 (s, 1H).
IR (ATR, cm-1): 3382, 1617, 1590, 1481, 1407, 1372, 1294, 1269, 1168, 1085, 1070, 1009, 997, 939, 868, 787, 736, 699, 626.
【0144】
実施例1bから1f:水素移動反応を経ての(R)−3−(1−ヒドロキシ−エチル)−フェノール
実施例1に記載された手順に類似する手順に続いて、実施例1bから1fを調製した。
【0145】
【表1】

【0146】
実施例2:ジメシル酸塩およびアミノメシル酸塩を経ての(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノール
機械撹拌付きの0.75L丸底フラスコ中に、窒素下で、メタンスルホン酸無水物96.5g、(R)−3−(1−ヒドロキシ−エチル)−フェノール30.0g、4−ジメチルアミノピリジン0.27g、および酢酸エチル270gを入れた。0℃まで冷却する前に、20℃で15分間、撹拌を継続した。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(すなわち、ヒューニッヒ塩基)74.4gを、3時間以内で0℃(発熱性)で付加し、30分間約−5℃で撹拌を継続した後で、20℃まで加熱し、結果として生じる懸濁液をさらに30分間撹拌した。
【0147】
この時点で引き出される(R)−メタンスルホン酸3−(1−メタンスルホニルオキシ−エチル)−フェニルエステル)のサンプル
【0148】
1H NMR (400 MHz, CDCl3, ppm): 1.70 (d, 3H); 2.84 (s, 3H); 3.18 (s, 3H);
5.75 (q, 1H); 7.30 (d, 1H); 7.38 (m, 2H); 7.49 (t, 1H).
【0149】
ジメチルアミンの気体79.1gを、>4時間以内で15〜25℃で、実験室用レクチャーボトルから気相中に付加した。反応は適度に発熱性であった。変換を止める前に、懸濁液を、>10時間、20℃で撹拌した。水60gを付加して塩を溶解し、結果として生じる二相性溶液の水相約100gを除去した。
【0150】
水100gを付加した。約5分間撹拌後、水相約100gを除去した。
【0151】
Cellflock40PL濾過助剤3gを付加し、溶液を濾過し、別の0.75L丸底フラスコへ移した。相を分離し、水相を廃棄した。
【0152】
酢酸エチル391gを蒸留によって除去した。
【0153】
この時点で引き出される(S)−メタンスルホン酸3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェニルエステルのサンプル
【0154】
1H NMR (400 MHz, CDCl3, ppm): 1.37 (d, 3H); 2.21 (s, 3H); 3.15 (s, 3H); 3.31 (q, 1H); 7.18 (d, 1H); 7.26 (m, 2H); 7.37 (t, 1H).
IR (ATR, cm-1): 3631, 2979, 2941, 2820, 2773, 1607, 1584, 1484, 1443, 1369, 1179, 1128, 967, 917, 823, 804, 700.
MS (ESI, m/z): 244 (100%, MH+), 199.
【0155】
水80gを付加し、水が蒸留を完了し始めるまで、蒸留を継続した。NaOHの30%水溶液87gを付加し、結果として生じる二相溶液を、2時間急速撹拌しながら90℃まで加熱した。透明で暗色の一相溶液を得た。温度を約80℃まで低下させた。トルエン174gを付加し、オルトホスホン酸24gによって約80℃で、pHを8.7に調節した。二相混合物を、約80℃の温度まで加熱して、相を分離した。水相を廃棄した。
【0156】
トルエン相を、水15gによって80℃で洗浄した。トルエン約100gを蒸留除去した。
【0157】
シリカゲル60 3gを付加し、懸濁液を、80℃で0.25L丸底フラスコ中へ濾過した。濾過ケーキを、高温のトルエン17gによって洗浄した。トルエン0.5ml中に懸濁された(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノール20mgを、70℃で付加し、結晶化を結果として生じた。懸濁液を、70℃で30分間保持し、次に温度を、3時間以内で約0℃の温度まで低下させた。この温度で2時間、撹拌を継続した。固体を濾過し、各回トルエン44gによって2回洗浄した。湿った濾過ケーキ(29.5g)を、0.25L丸底フラスコへ移した。トルエン78gを付加した。懸濁液を100℃まで加熱して(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノールを溶解し、予熱した0.25L丸底フラスコ中へ濾板上で高温で濾過した。温度を約70℃まで低下させ、トルエン0.5ml中に懸濁された(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノール20mgを、70℃で付加し、結晶化を結果として生じた。懸濁液を、70℃で30分間保持し、次に温度を、3時間以内で0℃まで低下させた。この温度で2時間、撹拌を継続した。固体を濾過し、各回トルエン25gによって2回洗浄した。湿った生成物(29.2g)を、45℃/50mbarで少なくとも8時間乾燥させて、無色の結晶として、(収率79%の(R)−3−(1−ヒドロキシ−エチル)−フェノールおよび鏡像体比>99.9:0.1の(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノール28.5gを生じた。
【0158】
1H NMR (400 MHz, CDCl3, ppm): 1.42 (d, 3H); 2.24 (s, 3H); 3.37 (q, 1H); 6.75 (m, 3H); 7.14 (m, 1H).
IR (ATR, cm-1): 3004, 2974, 2874, 2839, 2795, 2672, 2552, 1595, 1465, 1454, 1465, 1454, 1373, 1335, 1270, 1206, 1163, 1082, 1059, 1019, 957, 911, 871, 810, 792, 706.
MS (ESI, m/z): 166 (100%, MH+), 121, 79, 60, 46.
【0159】
実施例3:ジメシル酸塩およびアミノメシル酸塩を経ての(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノール
機械撹拌付きの0.75L丸底フラスコ中に、窒素下で、メタンスルホン酸無水物96.5g、(R)−3−(1−ヒドロキシ−エチル)−フェノール30.0g、4−ジメチルアミノピリジン0.27g、および酢酸エチル270gを入れた。0℃まで冷却する前に、20℃で15分間、撹拌を継続した。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(すなわち、ヒューニッヒ塩基)74.4gを、3時間以内で0℃(発熱性)で付加し、30分間約−5℃で撹拌を継続した後で、20℃まで加熱し、結果として生じる懸濁液をさらに30分間撹拌した。
【0160】
この時点で引き出される(R)−メタンスルホン酸3−(1−メタンスルホニルオキシ−エチル)−フェニルエステル)のサンプル
【0161】
1H NMR (400 MHz, CDCl3, ppm): 1.70 (d, 3H); 2.84 (s, 3H); 3.18 (s, 3H); 5.75 (q, 1H); 7.30 (d, 1H); 7.38 (m, 2H); 7.49 (t, 1H).
【0162】
ジメチルアミンの気体79.1gを、>4時間以内で15〜25℃で、実験室用レクチャーボトルから気相中に付加した。反応は適度に発熱性であった。変換を止める前に、懸濁液を、>10時間20℃で撹拌した。水60gを付加して塩を溶解し、結果として生じる二相性溶液の水相約100gを除去した。
【0163】
水100gを付加した。約5分間撹拌後、水相約100gを除去した。
【0164】
Cellflock40PL濾過助剤3gを付加し、溶液を濾過し、別の0.75L丸底フラスコへ移した。相を分離し、水相を廃棄した。
【0165】
酢酸エチル391gを蒸留によって除去した。
【0166】
この時点で引き出される(S)−メタンスルホン酸3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェニルエステルのサンプル
【0167】
1H NMR (400 MHz, CDCl3, ppm): 1.37 (d, 3H); 2.21 (s, 3H); 3.15 (s, 3H); 3.31 (q, 1H); 7.18 (d, 1H); 7.26 (m, 2H); 7.37 (t, 1H).
IR (ATR, cm-1): 3631, 2979, 2941, 2820, 2773, 1607, 1584, 1484, 1443, 1369, 1179, 1128, 967, 917, 823, 804, 700.
MS (ESI, m/z): 244 (100%, MH+), 199.
【0168】
水100gを付加し、オルトホスホン酸約27gによって80℃で、pHを3.8に調節した。相を分離し、有機相を廃棄した。新しいトルエン174gを付加し、80±10℃の温度で、NaOHの30%水溶液、約62gによって、pHを8.7に調節した。相を分離し、水相を廃棄した。
【0169】
トルエン相を、水15gによって80℃で洗浄した。トルエン約100gを蒸留除去した。
【0170】
シリカゲル60 3gを付加し、懸濁液を、80℃で0.25L丸底フラスコ中へ濾過した。濾過ケーキを、高温のトルエン17gによって洗浄した。トルエン0.5ml中に懸濁された(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノール20mgを、70℃で付加し、結晶化を結果として生じた。懸濁液を、70℃で30分間保持し、次に温度を、3時間以内で約0℃の温度まで低下させた。この温度で2時間、撹拌を継続した。固体を濾過し、各回トルエン44gによって2回洗浄した。湿った濾過ケーキ(29.5g)を、0.25L丸底フラスコへ移した。トルエン78gを付加した。懸濁液を100℃まで加熱して、(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノールを溶解し、予熱した0.25L丸底フラスコ中へ濾板上で高温で濾過した。温度を約70℃まで低下させ、トルエン0.5ml中に懸濁された(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノール20mgを、70℃で付加し、結晶化を結果として生じた。懸濁液を、70℃で30分間保持し、次に温度を、3時間以内で0℃まで低下させた。この温度で2時間、撹拌を継続した。固体を濾過し、各回トルエン25gによって2回洗浄した。湿った生成物(29.2g)を、45℃/50mbarで少なくとも8時間乾燥させて、無色の結晶として、(収率79%の(R)−3−(1−ヒドロキシ−エチル)−フェノールおよび鏡像体比>99.9:0.1の(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノール28.5gを生じた。
【0171】
1H NMR (400 MHz, CDCl3, ppm): 1.42 (d, 3H); 2.24 (s, 3H); 3.37 (q, 1H); 6.75 (m, 3H); 7.14 (m, 1H).
IR (ATR, cm-1): 3004, 2974, 2874, 2839, 2795, 2672, 2552, 1595, 1465, 1454, 1465, 1454, 1373, 1335, 1270, 1206, 1163, 1082, 1059, 1019, 957, 911, 871, 810, 792, 706.
MS (ESI, m/z): 166 (100%, MH+), 121, 79, 60, 46.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式(I)
【化26】

[式中、
=C1〜20アルキル、C2〜20アルケニル、C2〜20アルキニル、C2〜20有機ハロゲン化物、アリール、アミンまたはアミド基、および
n=1から5]
に示す化合物の調製方法であって、
(a)以下の一般式(II)
【化27】

[式中、
=C1〜20アルキル、C2〜20アルケニル、C2〜20アルキニル、C2〜20有機ハロゲン化物、アリール、アミン−またはアミド−含有基、
n=1から5]
に示すヒドロキシフェノンに不斉接触還元を実施するステップであって、
前記不斉接触還元が、水素移動反応を使用して実施され、
前記不斉接触還元が、キラル金属触媒を使用して実施されるステップ
を含む方法。
【請求項2】
形成される光学活性化合物(III)
【化28】

の量が、光学活性化合物(IV)
【化29】

の量を超える、
請求項1に記載の化合物の調製方法。
【請求項3】
不斉接触還元が、約96%:4%以上、約98%:2%以上、または約99%:1%以上の化合物(III)対化合物(IV)の鏡像体過剰率を形成する、請求項1または2のいずれかに記載の化合物の調製方法。
【請求項4】
結晶化ステップの後、化合物(III)対化合物(IV)の鏡像体過剰率が、約97%:3%以上、約98%:2%以上、約99%:1%以上、または約>99.5%:約<0.5%、または約>99.7%:約<0.03%である、請求項1から3のいずれかに記載の化合物の調製方法。
【請求項5】
一般式(I)から(IV)において、n=1である、請求項1から4のいずれかに記載の化合物の調製方法。
【請求項6】
一般式(I)から(IV)において、n=1であり、ヒドロキシル基が芳香環上の3位に生じる、請求項1から5のいずれかに記載の化合物の調製方法。
【請求項7】
が、C1〜10アルキル、C2〜10アルケニル、C2〜10アルキニル、またはC2〜10有機ハロゲン化物である、請求項1から6のいずれかに記載の化合物の調製方法。
【請求項8】
が、メチル、エチル、プロピル、およびブチルのいずれかから選択される、請求項1から7のいずれかに記載の化合物の調製方法。
【請求項9】
がメチルであり、n=1であり、調製される化合物が、下に式(VI)
【化30】

によって示される(R)−3−(1−ヒドロキシ−エチル)−フェノールである、請求項1から8のいずれかに記載の化合物の調製方法。
【請求項10】
水素移動反応が、キラル遷移金属系触媒を使用して実施される、請求項1から9のいずれかに記載の化合物の調製方法。
【請求項11】
水素移動反応が、複数のアリール、単座、二座、または多座配位子を含む複合型遷移金属系キラル触媒を使用して実施される、請求項1から10のいずれかに記載の化合物の調製方法。
【請求項12】
水素移動反応が、Ru、Rh、またはIr系触媒を使用して実施される、請求項1から11のいずれかに記載の化合物の調製方法。
【請求項13】
水素移動反応が、キラル(ジフェニルエチレンジアミン)系Ru触媒を使用して実施される、請求項1から12のいずれかに記載の化合物の調製方法。
【請求項14】
水素移動反応が、構造(VII)
【化31】

または(VIIa)
【化32】

[式中、
M=遷移金属、
=アリール系基、カルボニル、C2〜20アルケニル、またはC2〜20アルキニル、
および
=ハロゲン化物、有機ハロゲン化物、ボロハライド、スルホン酸塩、ニトリル、カルベン、一酸化炭素、ホスフィン、カルボニル、アミン−またはアミド−含有基]
に示されるキラル金属触媒を使用して実施される、請求項1から13のいずれかに記載の化合物の調製方法。
【請求項15】
遷移金属Mが、Ru、Rh、またはIrである、請求項14に記載の化合物の調製方法。
【請求項16】
が、p−シメン、ベンゼン、シクロオクタジエン、トリフェニルホスフィン、またはノルボルナジエンである、請求項14または15に記載の化合物の調製方法。
【請求項17】
が、塩化物、臭化物、ヨウ化物、テトラフルオロホウ酸塩、トリペンタフルオロフェニルボラン(すなわちBARF)、メシル酸塩、トリフルオロ酢酸塩、トリフレート、メチルアリル、またはアセチルアセトナトである、請求項14から16のいずれかに記載の化合物の調製方法。
【請求項18】
水素移動反応が、構造(VIII)
【化33】

に示されるキラル金属触媒を使用して実施される、請求項1から17のいずれかに記載の化合物の調製方法。
【請求項19】
水素移動反応が、以下の(1R,2R)−(−)−クロロ−N−(4−トルエンスルホニル−1,2−ジフェニルエチレンジアミン)(p−シメン)ルテニウム、もしくはルテニウムp−シメン塩化物二量体と組み合わせた(1R,2R)−(−)−N−4−トルエンスルホニル−1,2−ジフェニルエチレンジアミンのいずれか1つ、またはその組合せから選択されるキラル金属触媒を使用して実施される、請求項1から18のいずれかに記載の化合物の調製方法。
【請求項20】
水素移動反応が、キラル金属触媒を使用して実施され、前記触媒が、約0.005モル%から約5.0モル%、約0.01モル%から約1.0モル%、または約0.05モル%から約0.5モル%の範囲で存在する、請求項1から19のいずれかに記載の化合物の調製方法。
【請求項21】
還元されたヒドロキシフェノンが、以下の一連のステップ
(a)形成されたキラルアルコールのヒドロキシル基に活性化ステップを実施して、キラルアルコールに活性化されたアルコール性ヒドロキシ基、および活性化されたフェノール性ヒドロキシ基を形成するステップ、
(b)活性化されたアルコール性ヒドロキシ基に求核置換を実施するステップ、ならびに
(c)活性化されたフェノール性ヒドロキシ基を開裂して、キラルアミノアルコールを形成するステップ
を経て、キラルアミノアルコールへ変換される、キラルアルコールを形成する、請求項1から20のいずれかに記載の化合物の調製方法。
【請求項22】
活性化ステップが、スルホニル化を使用する、請求項21に記載の化合物の調製方法。
【請求項23】
求核置換が、アミンによって実施される、請求項21または22に記載の化合物の調製方法。
【請求項24】
還元されたヒドロキシフェノン(R)−3−(ヒドロキシ−エチル)フェノール(化合物VI)が、下に構造(IX)
【化34】

として示される(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノールへ変換される、請求項21から23のいずれかに記載の化合物の調製方法。
【請求項25】
(a)1−(3−ヒドロキシ−フェニル)−エタノン(化合物V)に、水素移動反応を使用して不斉接触還元を実施して、下に示されるように、
【化35】

(R)−3−(1−ヒドロキシ−エチル)−フェノール(化合物VI)を形成するステップ、
(b)形成された(R)−3−(1−ヒドロキシ−エチル)−フェノールのヒドロキシル基に活性化ステップを実施して、(R)−3−(1−ヒドロキシ−エチル)−フェノールに活性化されたアルコール性ヒドロキシ基、および活性化されたフェノール性ヒドロキシ基を形成するステップ、
(c)活性化されたアルコール性ヒドロキシ基に求核置換を実施するステップ、ならびに
(d)活性化されたフェノール性ヒドロキシ基を開裂するステップ
を含む、
(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノールが形成される、
式(IX)の(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノールの調製方法。
【請求項26】
(a)式(V)の1−(3−ヒドロキシ−フェニル)−エタノンを還元して、式(VI)の(R)−3−(ヒドロキシ−エチル)フェノールを形成するステップ、
(b)(R)−3−(ヒドロキシ−エチル)フェノール(化合物VI)を変換して、(R)−メタンスルホン酸3−(1−メタンスルホニルオキシ−エチル)−フェニルを形成するステップ、
(c)ジメチルアミンを利用して、活性化されたアルコール性ヒドロキシ基に求核置換を実施するステップ、および
(d)(S)−メタンスルホン酸3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェニルエステルを変換して、キラル(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノールを形成するステップ
を含む、(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノール(化合物IX)の調製方法。
【請求項27】
得られたキラル(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノール(化合物IX)が、結晶化によってさらに精製される、請求項24から26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
結晶化が動的結晶化である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
請求項24、25、26、27、または28によって、還元されたヒドロキシフェノン(R)−3−(ヒドロキシ−エチル)フェノール(化合物VI)が、(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノール(化合物IX)へ変換され、鏡像体比(S):(R)が、90:10以上、例えば95:5以上、例えば99:1以上、例えば99.5:0.5以上、例えば99.9:0.1以上である、請求項21から26、27、または28のいずれかに記載の化合物の調製方法。
【請求項30】
リバスチグミンを遊離塩基、塩、またはそのプロドラッグの形態で形成するためのステップ(複数可)をさらに含む、請求項1から29のいずれかに記載の化合物の調製方法。
【請求項31】
(i)請求項25または26の方法を実施するステップ、
(ii)(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノール(化合物IX)をさらにアシル化して、リバスチグミンを形成するステップ
を含み、結果として生じる生成物のフェノール性ヒドロキシ基が、式C(CH)NC(O)X(式中、XはOHまたは活性化基、例えばハロである)のアシル化剤によってアシル化されて、[3−[(1S)−1−ジメチルアミノエチル]フェニル]N−エチル−N−メチルカルバメートを形成する、リバスチグミンの調製の方法であって、
ステップ(ii)の最終生成物を分割して、[3−[(1S)−1−ジメチルアミノエチル]フェニル]N−エチル−N−メチルカルバメートを、その(1R)−異性体から分割するステップを、場合によってさらに含む方法。
【請求項32】
(i)リバスチグミンを薬学的に許容される酸と接触させて、その酸付加塩を形成するステップ、または
(ii)リバスチグミンを薬物送達生成物中へ組み込むステップ、または
(iii)リバスチグミンを薬学的に許容される酸と接触させて、その酸付加塩を形成し、リバスチグミンを薬物送達生成物中へ組み込むステップ
をさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
医薬組成物の生成のための医薬品有効成分出発物質の調製における、請求項1から20のいずれかによって調製されるキラルアルコールの使用。
【請求項34】
医薬品有効成分出発物質が、(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノールである、請求項33に記載の化合物の使用。
【請求項35】
調製された(S)−3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェノールを使用して、リバスチグミンまたはリバスチグミン酒石酸水素塩を含む医薬組成物を形成する、請求項34に記載の化合物の使用。
【請求項36】
(R)−メタンスルホン酸3−(1−メタンスルホニルオキシ−エチル)−フェニルエステル、または(S)−メタンスルホン酸3−(1−メタンスルホニルオキシ−エチル)−フェニルエステル、またはそれらの混合物。
【請求項37】
(R)−メタンスルホン酸3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェニルエステル、または(S)−メタンスルホン酸3−(1−ジメチルアミノ−エチル)−フェニルエステル、またはそれらの混合物。
【請求項38】
(R)−3−(1−ヒドロキシエチル)−フェニルメタンスルホネート、または(S)−3−(1−ヒドロキシエチル)−フェニルメタンスルホネート、またはそれらの混合物。
【請求項39】
(R)−1−(3−ヒドロキシフェニル)−エチルメタンスルホネート、または(S)−1−(3−ヒドロキシフェニル)−エチルメタンスルホネート、またはそれらの混合物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−513966(P2012−513966A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542822(P2011−542822)
【出願日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067821
【国際公開番号】WO2010/072798
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】