説明

水素結合性ポリオルガノシロキサンベースの充填材処理剤

組成物は、(i)マトリクス、(ii)充填材および(iii)水素結合できるポリオルガノシロキサンを含む充填材処理剤を含む。この充填材処理剤は、糖類−シロキサンポリマー、アミノ官能性ポリオルガノシロキサンまたはこれらの組み合わせであってよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、米国特許法第119条第(e)項に基づいて、2007年2月20日出願の米国仮特許出願第第60/902205号の利益を主張する。米国仮特許出願第60/902205号は、参照により本願明細書に引用したものとする。
【0002】
本発明は、水素結合性ポリオルガノシロキサンベースの充填材処理剤に関する。
【背景技術】
【0003】
処理した充填材は、水素結合できるポリオルガノシロキサンを使用して調製される。処理された充填材は、マトリクス(例えばポリオルガノシロキサン液体、有機官能性シリコーンワックス、ポリオルガノシロキサン樹脂または硬化性組成物)に分散できる。得られる組成物は熱伝導性または導電性であり得るし、熱伝導性かつ導電性でもあり得るし、あるいは熱伝導性でも導電性でもないこともある。熱伝導性組成物は、放熱材料(TIM)用途に有用である。導電性組成物は、電磁波(EMI)シールド用途を含めた様々な応用に有用である。非導電性組成物は、さまざまな用途(例えばエラストマーを作製すること)に有用である。
【0004】
(解決すべき課題)
通常、マトリクス中のより高い充填材充填量は、さまざまな利益をもたらす。非導電性充填材について、組成物中の充填材充填量を増加させることは、その組成物から調製されるエラストマーの強度を増加させることができる。導電性充填材について、充填材充填量が増加するにつれて、伝導率は一般に増加し、この傾向は導電率にも熱伝導率にもあてはまる。一般に使用されるいくつかの充填材は、熱伝導率についての酸化アルミニウム、および熱伝導率および導電率の両方についての銀である。現在まで、酸化アルミニウム充填材処理剤は、熱伝導性組成物の性能を高める大部分の試みを構成していた。使用される充填材処理剤は、しばしば2つの明確に異なった官能性部分つまり、処理剤を酸化アルミニウム面に繋ぎ止めることを目的とする反応性またはテザー(tether)部分、および組成物マトリクスとの好ましい相互作用を提供することを目的とする相溶化部分を有する。例としては、MeSi(OMe)3、PhSi(OMe)3、R’Si(OMe)3(式中、R’はC6-18アルキル基のようなアルキル基を表す)、MMeMexSi(OMe)3、MVixSi(OMe)3、HO(Me2SiO)14H、(Me3Si)2NHおよびアセトキシ類似体が挙げられる(式中、添え字xは25〜110の範囲の値を有する)。しかしながら、これらの処理剤では、反応性官能基が、例えばAlOSi結合の形であることが予想される、充填材面との安定結合を必ずしも形成するわけではないことが見出されている。この反応性官能基は、充填材面処理の間、逃げてしまう副生成物を生じかねず、これは処理コストを上昇させる。さらに、反応性官能基がその後の剪断により消費され得るため、かかる剪断から生じる生成された新しい充填材面は無処理のままである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
改良された性能のために、当該技術分野において、通常は組成物粘度と同等視される加工する能力をできるだけ損なわずに、マトリクス中のより高い充填材充填量を可能にする技術を追求するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
充填材表面を処理することに代わる戦略は、クラスター形成したかもしくは分散したかのいずれか、またはクラスター形成しかつ分散した複数の水素結合を、充填材表面に相溶化部分をテザーでつなぐ手段として利用する。水素結合できるポリオルガノシロキサンは、充填材処理剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】12〜13日のエージングの後の組成物の粘度を示すグラフである。これらの組成物は、下記の実施例に記載されており、0.3%の、アミノ官能性ポリジメチルシロキサンポリマー、またはアミノ官能性ポリジメチルシロキサンおよびグルコノラクトンの反応生成物である糖類−シロキサンポリマーで処理された充填材を含んでいた。
【図2】12〜13日のエージングの後の組成物の粘度を示すグラフである。これらの組成物は、下記の実施例に記載されており、1%の、アミノ官能性ポリジメチルシロキサンポリマー、またはアミノ官能性ポリジメチルシロキサンおよびグルコノラクトンの反応生成物である糖類−シロキサンポリマーで処理された充填材を含んでいた。
【図3】12〜13日のエージングの後の組成物の粘度を示すグラフである。これらの組成物は、下記の実施例に記載されており、0.3%の、アミノ官能性ポリジメチルシロキサンおよびラクトビオノラクトンの反応生成物である糖類−シロキサンポリマーで処理された充填材を含んでいた。
【図4】12〜13日のエージングの後の組成物の粘度を示すグラフである。これらの組成物は、下記の実施例に記載されており、1%の、アミノ官能性ポリジメチルシロキサンおよびラクトビオノラクトンの反応生成物である糖類−シロキサンポリマーで処理された充填材を含んでいた。
【図5】付加的な剪断の前後で、エージングの4週間後の組成物の粘度を示すグラフである。
【図6】本願明細書に記載されている組成物から製造されるTIMを有するデバイスである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
すべての量、比率および割合(%)は、特に明記しない限り重量によるものである。冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、各々1つ以上を意味する。「M」は式R3SiO1/2の単位を表し、「D」は式R2SiO2/2の単位を表し、「T」は式RSiO3/2の単位を表し、およびQは式SiO4/2の単位を表し、式中、Rは一価の基または原子である。「Me」はメチル基を表し、「Et」はエチル基を表し、「Ph」はフェニル基を表し、「Pr」はプロピル基を表し、および「Vi」はビニル基を表す。「MMe」は式Me3SiO1/2のトリメチルシロキシ単位を表し、「MVi」は式(Me)2ViSiO1/2のジメチルビニルシロキシ単位を表し、「DMe」は式Me2SiO2/2のジメチルシロキシ単位を表す。「Mw」は、重量平均分子量を意味する。
【0009】
(水素結合できるポリオルガノシロキサン)
上記水素結合できるポリオルガノシロキサンは、1分子あたり、平均少なくとも1つの水素結合できるケイ素に結合した基を有する。その基は、複数のヒドロキシル官能性を有する有機基または少なくとも1つのアミノ官能基を有する有機基から選択できる。この水素結合できるポリオルガノシロキサンは、水素結合が充填材に対するポリオルガノシロキサンのための付着の主要な様式であることを意味する。このポリオルガノシロキサンは、充填材と共有結合を形成することができなくてもよい。このポリオルガノシロキサンは、縮合可能なシリル基、例えばケイ素に結合したアルコキシ基、シラザンおよびシラノールを含まなくてもよい。水素結合できるポリオルガノシロキサンは、糖類−シロキサンポリマー、アミノ官能性ポリオルガノシロキサンおよびこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。あるいはこの水素結合できるポリオルガノシロキサンは、糖類−シロキサンポリマーであってもよい。
【0010】
(糖類−シロキサンポリマー)
糖類−シロキサンポリマーは、単位式(I)を有する:
(R1(3-a)2aSiO1/2b(R1(2-c)2cSiO2/2d(R2SiO3/2e(R13SiO1/2f(R12SiO2/2g(R1SiO3/2h(SiO4/2i
各添え字aは独立に0、1、2、または3である。添え字cは、0、1または2である。1分子あたりの平均で、量(a+c)は、少なくとも1であってもよい。添え字bは、0以上である。添え字dは、0以上である。添え字eは、0以上である。量(b+d+e)は、1以上である。添え字fは、0以上である。添え字gは、0以上である。添え字hは、0以上である。添え字iは、0以上である。e、hおよびiがすべて0であるとき、この糖類−シロキサンポリマーは直鎖状であり、そのポリマーは以下の式(II)を有することができる:
2a1(3-a)SiO−[(R21SiO)j(R12SiO)km−SiR1(3-a)2a
【0011】
上記の式において、各R1は、同じであってもよいし、または異なっていてもよい。各R1は、水素、1〜12個の炭素原子のアルキル基、有機基または式R3−Qの基を含む。Qは、エポキシ、シクロエポキシ、一級または二級アミノ、エチレンジアミン、カルボキシ、ハロゲン、ビニル、アリル、無水物またはメルカプト官能基を含む。添え字jおよびkは、0〜10,000の範囲の整数であって、同じであってもよいし、または異なっていてもよい。添え字mは、このポリマーが100万未満の分子量を有するような整数である。
【0012】
各R2は、式Z−(G1n−(G2oを有し、ポリマー1分子あたり平均少なくとも1つのR2が存在する。G1は、5〜12個の炭素原子を含む糖類成分である。量(n+o)は1〜10の範囲の値を有し、添え字nまたは添え字oは0であってもよい。G2は5〜12個の炭素原子を含む糖類成分であり、G2はさらに有機基または有機ケイ素基で置換される。Zは、連結基である。各Zは、独立に以下からなる群から選択される:
−R3−NHC(O)−R4−、
−R3−NHC(O)O−R4−、
−R3−NH−C(O)−NH−R4−、
−R3−C(O)−O−R4−、
−R3−O−R4−、
−R3−CH(OH)−CH2−O−R4−、
−R3−S−R4−、
−R3−CH(OH)−CH2−NH−R4−、
−R3−N(R1)−R4−、
−NHC(O)−R4−、
−NHC(O)O−R4−、
−NH−C(O)−NH−R4−、
−C(O)−O−R4−、
−O−R4−、
−CH(OH)−CH2−O−R4−、
−S−R4−、
−CH(OH)−CH2−NH−R4−、
−N(R1)−R4−、
−R3−NHC(O)−、
−R3−NHC(O)O−、
−R3−NH−C(O)−NH−、
−R3−C(O)−O−、
−R3−O−、
−R3−CH(OH)−CH2−O−、
−R3−S−、
−R3−CH(OH)−CH2−NH−、および
−R3−N(R1)−。
【0013】
各R3および各R4は独立に、式(R5r(R6s(R7tの基を含む二価のスペーサである(式中、添え字r、sおよびtのうちの少なくとも1つは1である)。各R5および各R7は、独立に、1〜12個の炭素原子のアルキレン基または式(R9O)pの基である(式中、R9は1〜12個の炭素原子のアルキレン基のような二価有機基であり、添え字pは1〜50の範囲の整数であり、各R9Oは同じであってもよいし、または異なっていてもよい)。R6は、−N(R8)−である(式中、R8は水素、1〜12個の炭素原子のアルキル基、Zがこれまでに定義されている式Z−Xの基、またはR3である)。各Xは、独立に二価カルボン酸、リン酸エステル、硫酸エステル、スルホン酸エステルまたは第四アンモニウム基である。この糖類−シロキサンポリマーは官能化されたオルガノシロキサンポリマーおよび少なくとも1つのヒドロキシル官能性糖類の反応生成物であり、そのため、このオルガノシロキサン成分は連結基(Z)を介して糖類成分に共有結合される。理論に束縛されることは望まないが、上記糖類−シロキサンポリマーで処理された充填材が硬化性マトリクス中に分散する場合、1つ以上のR1およびR9について選択される基は、それらがマトリクスと反応性であり相溶性を高めるかまたは強化をもたらすように、選択することができると考えられる。例えば、ヒドロシリル化反応硬化性マトリクスが選択されるとき、1つ以上の基R1およびR9はアルケニル基(例えばビニル)を含むことができる。
【0014】
あるいは糖類−シロキサンポリマーは、式(III)を有することができる:
【化1】

(式中、各添え字uは独立に5〜12であり、添え字vは、0〜10,000あるいは11〜300の範囲の値を有する)。
【0015】
各R14は、独立に水素原子または1〜4個の炭素原子の一価の炭化水素基である。各R13は、独立に二価有機基である。二価有機基としては、非置換二価炭化水素基(例えばエチレン、プロピレンおよびブチレンのようなアルキレン基)ならびに置換された二価炭化水素基(例えばプロピルアミノエチル(例えば、−(CH33N−(CH22−)などの二価アミノ官能性基が挙げられる。あるいは各R13は、プロピルであってもよい。あるいは各R13は、プロピルアミノエチルであってもよい。
【0016】
各R12は、独立に一価の非置換炭化水素基である。一価の非置換炭化水素基の例としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基および芳香族基が挙げられる。アルキル基は、メチル、エチルおよびプロピルを含む。アルケニル基は、ビニルおよびアリルを含む。シクロアルキル基は、シクロペンチルおよびシクロヘキシルを含む。芳香族基は、フェニル、トリル、キシリルおよびベンジルを含む。
【0017】
各R11は、独立に水素原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基または糖類基である。アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシおよびブトキシが挙げられる。
【0018】
各R10は、水素原子または一価の置換もしくは非置換の炭化水素基である。理論に束縛されることは望まないが、上記糖類−シロキサンポリマーで処理された充填材が硬化性マトリクス中に分散する場合、R14、R12、R11およびR10について選択される基のうちの1つ以上は、それらが相溶性を高めるためにマトリクスと反応性であるように選択することができると考えられる。例えば、ヒドロシリル化反応硬化性マトリクスが選択されるとき、基R14、R12、R11およびR10のうちの1つ以上はアルケニル基(例えばビニル)を含むことができる。
【0019】
この式を有する糖類−シロキサンポリマーの例としては、以下が挙げられる。
【化2】

【0020】
(製造方法)
糖類−シロキサンポリマーおよびそれらを製造する方法は、当該技術分野で公知である。例えば、米国特許第4,591,652号は、アミン末端置換基を有するシランをアルドン酸ラクトンと反応させることによって、ポリヒドロキシルシランを製造する方法を記載する。特開昭62−68820号公報は、アミノシロキサンおよび糖類ラクトンから製造される糖類残基を含有するオルガノポリシロキサンを開示する。国際公開第94/29324号パンフレットは、エポキシ−トリシロキサン反応生成物および糖類ラクトンから形成される表面活性剤または表面改質剤を含むシロキサニルで変性された化合物、およびそれらの調製のための方法を記載する。国際公開第02/088456号パンフレットは、アミノシロキサンおよび糖類ラクトンを反応させることから形成されるアミド官能性アミノポリジオルガノシロキサンを記載する。国際公開第2006/127882号パンフレットは、典型的な糖類−シロキサンポリマーを開示する。
【0021】
糖類およびシロキサンを連結するための合成方法も、当該技術分野で公知である。例えば、米国特許第5,831,080号は、アリル官能性糖類基をヒドロシリル化することによって作製される配糖体基を含むオルガノシリコーン化合物を記載する。米国特許第6,517,933B1号は、糖類を含む一組の天然に存在するビルディングブロックおよびポリシロキサンを含む一組の合成ビルディングブロックを含む複合型ポリマー材料を記載する。多くの可能性のある連結化学が、記載されている。上述した特許文献の完全な開示は、参照によって本願明細書に引用したものとする。加えて、糖類−シロキサンポリマーは、糖類−シロキサンポリマー上の官能基部位に、アニオン性またはカチオン性モノマーのさらなる反応により変性することができる。
【0022】
上記の典型的な糖類−シロキサンポリマーは、(A)アミノ官能性ポリオルガノシロキサンおよび(B)ラクトンを1:1のモル比で反応させることによって、調製することができる。成分(A)は、アミノ官能性ポリオルガノシロキサンである。成分(A)は、式(VI)を有することができる:
【化3】

(式中、R12、R13、R14および添え字vは上記のとおりである)。
【0023】
成分(A)としては、トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチル(アミノエチルアミノイソブチル)シロキサン)、ポリ(ジメチルシロキサン/メチル(アミノプロピル)シロキサン)およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0024】
成分(B)は、ラクトンである。成分(B)は、式(VII)を有することができる:
【化4】

(式中、R11および添え字uは上記のとおりである)。成分(B)としては、ブチロラクトン、ε−カプロラクトンおよびδ−グルコノラクトンが挙げられる。あるいは成分(B)は、ラクトビオノラクトンであってもよい。
【0025】
(アミノ官能性ポリオルガノシロキサン)
上記水素結合できるポリオルガノシロキサンは、アミノ官能性ポリオルガノシロキサンであってもよい。このアミノ官能性ポリオルガノシロキサンは、単位式(XVIII)を有することができる:(R34(3-eee)35eeeSiO1/2fff(R34ggg35(2-ggg)SiO2/2hhh(R35SiO3/2iii(R343SiO1/2jjj(R342SiO2/2kkk(R34SiO3/2mmm(SiO4/2nnn。単位式(XVIII)において、各添え字eeeは、独立に0、1、2、または3である。添え字gggは、0、1または2である。添え字fffは、0以上である。添え字hhhは、0以上である。添え字iiiは、0以上である。量(fff+hhh+iii)は、1以上である。添え字jjjは、0以上である。添え字kkkは、0以上である。添え字mmmは、0以上である。添え字nnnは、0以上である。iii、mmmおよびnnnがすべて0であるとき、アミノ官能性ポリオルガノシロキサンは直鎖状であり、以下の式(XIX)を有することができる:
35eee34(3-eee)SiO−[(R3534SiO)ooo(R342SiO)pppqqq−SiR34(3-eee)35eee
【0026】
上記の式において、各R34は、同じであってもよいし、または異なっていてもよい。各R34には、水素原子または有機基を含む。好適な有機基には、置換および非置換の炭化水素基が含まれる。好適な非置換炭化水素基の例としては、アルキル基(例えば1〜12個の炭素原子のアルキル基)が挙げられる。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、ヘプチル、ウンデシルおよびデシルが挙げられる。あるいは各R34は、メチルであってもよい。各R35はアミノ官能基を含み、かつ各R35は同じであってもよいし、または異なっていてもよい。好適なアミノ官能性基の例としては、アミノエチル、アミノプロピル、アミノブチル、アミノエチルアミノプロピルおよびアミノエチルアミノイソブチルが挙げられる。各添え字oooは、独立に0〜10,000の範囲の値を有する整数である。各添え字pppは、独立に1〜10,000の範囲の値を有する整数である。各添え字oooおよび各添え字pppは、同じであってもよいし、または異なっていてもよい。添え字qqqは、このアミノ官能性ポリオルガノシロキサンが100万未満の分子量を有するような値を有する整数である。
【0027】
アミノ官能性ポリオルガノシロキサンの例としては、トリメチルシロキシ末端(ジメチル、メチル(アミノエチルアミノイソブチル)シロキサン;トリメチルシロキシ末端(ジメチル、メチル(アミノエチルアミノプロピル)シロキサン;ジメチル、メチル(アミノエチルアミノイソブチル)シロキシ末端ポリジメチルシロキサン;ジメチル、メチル(アミノエチルアミノプロピル)シロキシ末端ポリジメチルシロキサン;およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
上記の水素結合できるポリオルガノシロキサンは、充填材処理剤として用いることができる。この充填材処理剤は、例えば、米国特許第5,075,038号、同第5,011,870号、同第5,227,093号、同第6,534,581号、同第6,361,716号、同第6,465,550号、同第6,433,055号、同第6,448,329号、同第6,783,692号、同第6,791,839号、同第6,815,486号、および同第7,074,490号、および国際公開第2005/047378号、同第2006/025552号、同第2006/065282号、同第2006/064928号、同第2006/107003号および同第2006/107004号(これらのすべてを、適切な充填材および処理した充填材が分散され得るマトリクスを開示するために、参照により本願明細書に引用したものとする)に記載されている組成物の充填材を処理するため、もしくは充填材充填量を増加するため、またはその両方のために用いてもよい。
【0029】
(組成物)
上記の水素結合できるポリオルガノシロキサンは、
(i)マトリクスと、
(ii)充填材と、
(iii)上記のとおりの水素結合できるポリオルガノシロキサンを含む充填材処理剤
とを含む組成物において使用する充填材を処理するために用いることができる。
【0030】
(マトリクス)
マトリクスは、特に限定されない。マトリクスは、非硬化性材料(例えばポリオルガノシロキサン流体、有機官能性シリコーンワックス)、ポリオルガノシロキサン樹脂(例えばMQ樹脂もしくはDT樹脂)またはシリコーン有機ブロックコポリマーであってもよい。マトリクスが非硬化性場合、上記組成物は、例えば、グリースまたは相変化組成物(phase change composition)であってもよい。
【0031】
有機官能性シリコーンワックス
有機官能性シリコーンワックスは、当該技術分野で公知であり、市販されている。このワックスは、非架橋有機官能性シリコーンワックス、架橋された有機官能性シリコーンワックスまたはこれらの組み合わせを含む。非架橋有機官能性シリコーンワックスは、式(VIII)を有することができる:
16172SiO(R173SiO)y(R1715SiO)zSiR17216
【0032】
各R15は、独立に、少なくとも16個の炭素原子、あるいは少なくとも20個の炭素原子、あるいは少なくとも24個の炭素原子、あるいは少なくとも26個の炭素原子の置換または非置換の一価の炭化水素基ような有機のワックス状基である。最大炭素原子数は、特に限定されず、30個の炭素原子より大きくてもよい。非架橋有機官能性シリコーンワックスは、米国特許第5,380,527号(第3列、第10−57行)に記載されている方法のような当該技術分野で公知の方法により調製することができる。
【0033】
15についての一価の炭化水素基は、分枝状または非分枝状であってもよく、飽和または不飽和であってもよく、および非置換であってもよい。各R16は、独立に有機基(例えば少なくとも1個の炭素原子の置換または非置換の一価の炭化水素基)である。R16は、R15またはR17であってよい。R16についての一価の炭化水素は、分枝状または非分枝状であってもよく、飽和であってもよく、および非置換であってもよい。R16としては、置換および非置換アルキル基、置換および非置換芳香族基およびこれらの組み合わせが挙げられる。R16は、非置換アルキル基(例えばメチル、エチル、プロピルまたはブチル)であってもよい。
【0034】
各R17は、独立に有機基(例えば1〜6個の炭素原子の置換または非置換の一価の炭化水素基)である。R17は分枝状であってもよく、非分枝状であってもよく、または環状であってもよい。R17についての環状基は、フェニル基を含む。R17についての一価の炭化水素は、分枝状または非分枝状であってもよく、飽和または不飽和であってもよく、および非置換であってもよい。R17は、非置換アルキル基(例えばメチル、エチル、プロピルまたはブチル)であってよい。上記の式において、添え字yは0〜200であり、zは1〜200である。
【0035】
非架橋シリコーンワックスは、環状であってもよい。適切な環状非架橋有機官能性シリコーンワックスは、式(IX)を有することができる:(R172SiO)aa(R1715SiO)bb(式中、R15およびR17は上記のとおりである)。この式において、添え字aaは0以上であり、添え字bbは1以上であるが、ただし量(aa+bb)は1〜8である。環状非架橋シリコーンワックスおよび非環状非架橋シリコーンワックスの組合せは、成分(i)において使用することができる。
【0036】
あるいは、成分(i)は、架橋された有機官能性シリコーンワックスを含むことができる。架橋された有機官能性シリコーンワックスは、遷移金属触媒の存在下でのケイ素に結合した水素原子を有するシロキサンまたはケイ素に結合した水素原子を有するオルガノシロキサンと、α−オレフィンと、架橋剤との反応生成物を含むことができる。架橋された有機官能性ワックスは、当該技術分野で公知であり、市販されている。
【0037】
米国特許第5,493,041号は、架橋された有機官能性シロキサンワックスおよびそれらの調製のための方法を開示する。例えば、架橋された有機官能性シリコーンワックスは、遷移金属(例えば白金)触媒の存在下での、ケイ素に結合した水素原子を有する市販のシロキサンを、わずかに化学量論的に過剰のオレフィンおよび非共役α,ω−ジエン架橋剤と反応させることにより調製することができる。オレフィンは、当該技術分野で公知であり、市販されている。異なる数の炭素原子を有するオレフィンの混合物を使用することができ、例えば30個の炭素原子を有するオレフィンおよび30個を超える炭素原子を有するオレフィンの混合物を使用して、架橋された有機官能性シリコーンワックスを調製することができる。架橋剤は、有機基、1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素原子に結合したアルケニル基を有するオルガノシリコーンまたはこれらの組み合わせであってよい。当業者なら、過度に実験することなく架橋された有機官能性シロキサンワックスを調製することができるであろう。
【0038】
シリコーン樹脂
シリコーン樹脂は、当該技術分野で公知であり、市販されている。シリコーン樹脂は、M、D、TおよびQ単位の組合せ(例えば、DT、MDT、DTQ、MQ、MDQ、MDTQまたはMTQ樹脂、あるいはDTまたはMQ樹脂)を含むことができる。
【0039】
DT樹脂としては、下式を含む樹脂が挙げられる(X):
(R1819SiO2/2cc(R20SiO3/2dd
【0040】
18、R19およびR20の各例は、同じであってもよいし、または異なっていてもよい。R18およびR19は、各単位の中で異なってもよい。各R18、R19およびR20は、独立にヒドロキシル基または一価の有機基(例えば置換または非置換の炭化水素基またはアルコキシ基)を表す。炭化水素基は、飽和であってもよいし、または不飽和でもよい。炭化水素基は、分枝状または非分枝状であってもよく、環状であってもよく、またはこれらの組み合わせであってもよい。炭化水素基は、1〜40個の炭素原子、あるいは1〜30個の炭素原子、あるいは1〜20個の炭素原子、あるいは1〜10個の炭素原子、あるいは1〜6個の炭素原子を有することができる。非置換炭化水素基は、アルキル基(例えばメチル、エチル、プロピルおよびブチル、あるいはメチルまたはエチル、あるいはメチル)を含み、芳香族基(例えばフェニル、トリル、キシリル、ベンジルおよびフェニルエチル、あるいはフェニル)を含む。不飽和非置換炭化水素基は、アルケニル(例えばビニル、アリル、ブテニルおよびヘキセニル)を含む。
【0041】
上記の式において、添え字ccは1〜200、あるいは1〜100、あるいは1〜50、あるいは1〜37、あるいは1〜25である。添え字ddは、1〜100、あるいは1〜75、あるいは1〜50、あるいは1〜37、あるいは1〜25である。
【0042】
あるいはDT樹脂は、式(XI):
(R182SiO2/2cc(R192SiO2/2dd(R18SiO3/2cc(R19SiO3/2ddを有することができる(式中、R18、R19、cc、およびddは、上記のとおりである)。あるいはこの式において、各R18はアルキル基であってもよく、各R19は芳香族基であってもよい。
【0043】
MQ樹脂としては、式(XII):
(R181920SiO1/2ee(SiO4/2ff(式中、R18、R19およびR20は上記のとおりであり、添え字eeは1〜100であり、添え字ffは1〜100であり、ffに対するeeの平均比は0.65〜1.9である)の樹脂が挙げられる。
【0044】
シリコーンポリマーは、上記シリコーン樹脂に加えて、またはその一部分の代わりに成分(i)に加えることができる。このシリコーンポリマーは、上記組成物の0〜35%の量で加えることができる。シリコーンポリマーは、直鎖状または分枝状ポリジオルガノシロキサン(例えばポリジメチルシロキサン)であってよい。シリコーンポリマーとしては、式(R181920SiO1/22(R1819SiO2/2ggのポリマーが挙げられる(式中、R18、R19およびR20は上記のとおりであり、添え字ggは5〜800、あるいは50〜200である)。
【0045】
シリコーン−有機ブロックコポリマー
シリコーン有機ブロックコポリマーは、当該技術分野で公知であり、市販されている。好適なシリコーン有機ブロックコポリマーには、シリコーンアクリル酸エステルブロックコポリマー、シリコーン−アミドブロックコポリマー、シリコーン−エポキシブロックコポリマー、シリコーン−エーテルブロックコポリマー、シリコーン−イミドブロックコポリマー、シリコーン−スチレンブロックコポリマー、シリコーン−ウレタンブロックコポリマー、シリコーン−尿素ブロックコポリマー、シリコーン−ビニルエーテルブロックコポリマーおよびこれらの組み合わせが含まれる。シリコーン有機ブロックコポリマーおよびそれらの調製のための方法は、当該技術分野で公知である。例えば、The Polymeric Materials Encyclopedia,CRC Press,Inc.,1996中のBogdan C.Simionescu, Valeria HarabagiuおよびCristofor I.Simionescu,「Siloxane−Containing Polymers」;Thermoplastic Elastomers,A Comprehensive Review(N.R.Legge, G.Holden, H.E.Schroeder編集), Hanser Publishers,1987中のJames E.McGrath,「Research on Thermoplastic Elastomers」;Encyclopedia of Polymer Science and Engineering(H.F.Mark, N.M.Bikales, C.G.Overberger, G.Menges, J.I.Kroschwitz編集), John Wiley & Sons,1989,第15巻,243頁のBruce HardmanおよびArnold Torkelson,「Silicones」;ならびにI.Yilgor, J.S.Riffle, G.L.WilkesおよびJ.E.McGrath,「Polymer Bulletin」,8,535−542(1982)を参照。シリコーン有機ブロックコポリマーおよびそれらの調製のための方法は、米国特許第Re33,141号、同第4,558,110号、同第4,631,329号、および同第4,793,555号に見出すこともできる。。シリコーン−ウレタンブロックコポリマーおよびシリコーン−アミドブロックコポリマーおよびそれらの調製のための方法は、米国特許第4,501,861号、同第4,604,442号、同第5,981,680号および同第6,051,216号に開示されている。
【0046】
(硬化パッケージ)
あるいは、マトリクスは、硬化パッケージであってもよい。硬化パッケージは、(a)ベースポリマーと、(b)架橋剤もしくは(c)触媒のいずれか、または(b)および(c)の両方とを含むことができる。硬化パッケージの例としては、付加硬化パッケージ、湿分硬化パッケージ、過酸化物硬化パッケージおよび放射線硬化パッケージが挙げられる。
【0047】
湿分硬化パッケージ
成分(i)は、湿分硬化パッケージを含むことができる。この湿分硬化パッケージは、以下のものを含むことができる:100重量部の(A)ベースポリマー、このパッケージを硬化させるのに十分な量の(B)架橋剤、および任意にこのパッケージの硬化を加速するのに十分な量の(C)触媒。
【0048】
成分(A)ベースポリマー
この湿分硬化パッケージ中の成分(A)は、1分子あたり平均少なくとも2つの加水分解性置換基(例えば、ハロゲン原子、アセトアミド基、アシルオキシ基(例えばアセトキシ)、アルコキシ基、アミド基、アミノ基、アミノキシ基、ヒドロキシル基、オキシモ基、ケトオキシモ基、メチルアセトアミド基、アルコキシシリルヒドロカルビレン基またはこれらの組み合わせ)を有するポリオルガノシロキサンである。成分(A)の加水分解性置換基は、末端、ペンダントまたは末端およびペンダントの位置の両方に存在することができる。成分(A)は、直鎖状または分枝状構造を有することができる。成分(A)は、ホモポリマーまたは共重合体であってよい。
【0049】
成分(A)は、アルコキシで末端ブロックされたポリジオルガノシロキサン、アルコキシシリルヒドロカルビレンで末端ブロックされたポリジオルガノシロキサン、ヒドロキシルで末端ブロックされたポリジオルガノシロキサンまたはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0050】
成分(A)は、式(XIII)のポリジオルガノシロキサンを含むことができる:
【化5】

(式中、各R21は独立に加水分解性の置換基であり、各R22は独立に一価の有機基であり、各R23は独立に酸素原子または二価の炭化水素基であり、各添え字hhは独立に0、1または2であり、iiはこのポリジオルガノシロキサンに25℃で少なくとも100mPa・sの粘度を提供するのに十分な値を有する整数である)。
【0051】
21に好適な加水分解性置換基としては、ハロゲン原子、アセトアミド基、アセトキシ基、アシルオキシ基、アルコキシル基、アミド基、アミノ基、アミノキシ基、ヒドロキシル基、オキシモ基、ケトオキシモ基およびメチルアセトアミド基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
22に好適な有機基としては、一価の置換および非置換の炭化水素基が挙げられるが、これらに限定されない。R22についての一価の非置換炭化水素基の例には、メチル、エチル、プロピル、ペンチル、オクチル、ウンデシルおよびオクタデシルのようなアルキル、シクロヘキシルのようなシクロアルキル、フェニル、トリル、キシリル、ベンジルおよび2−フェニルエチルのようなアリールが含まれるが、これらに限定されない。R22についての一価の置換された炭化水素基の例は、塩素化されたアルキル基(例えばクロロメチルおよびクロロプロピル基)、フッ素化アルキル基(例えばフルオロメチル、2−フルオロプロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、4,4,4−トリフルオロブチル、4,4,4,3,3−ペンタフルオロブチル、5,5,5,4,4,3,3−ヘプタフルオロペンチル、6,6,6,5,5,4,4,3,3−ノナフルオロヘキシルおよび8,8,8,7,7−ペンタフルオロオクチル)、塩素化されたシクロアルキル基(例えば2,2−ジクロロシクロプロピル、2,3−ジクロロシクロペンチル)、ならびにフッ素化シクロアルキル基(例えば2,2−ジフルオロシクロプロピル、2,3−ジフルオロシクロブチル、3,4−ジフルオロシクロヘキシルおよび3,4−ジフルオロ−5−メチルシクロヘプチル)などの一価のハロゲン化炭化水素基を含むが、これらに限定されない。R22についての一価の置換された炭化水素基の例には、酸素原子で置換された炭化水素基(例えばグリシドオキシアルキル)、および窒素原子で置換された炭化水素基(例えばアミノアルキル)、およびシアノ官能基(例えばシアノエチルおよびシアノプロピル)が含まれるが、これらに限定されない。あるいは、各R22はアルキル基であってもよい。
【0053】
上記の式(XIII)において、各添え字hhが2であり、各R23が酸素原子である場合、成分(A)は、α,ω−二官能性ポリジオルガノシロキサンを含むことができる。例えば、成分(A)は、式(XIV)を有することができる:R21222SiO−(R222SiO)ii−SiR22221(式中、R21およびR22は上記のとおりであり、添え字iiは50〜1,000、あるいは200〜700の範囲の値を有する整数である)。
【0054】
成分(A)は、各R21がヒドロキシル基であってよく、各R22がメチルのようなアルキル基であってよく、かつ添え字iiはヒドロキシル官能性ポリジオルガノシロキサンが25℃で少なくとも100mPa・sの粘度を有するような値を有することができる、上記の式のヒドロキシル官能性ポリジオルガノシロキサンを含むことができる。あるいは、添え字iiは50〜700の範囲の値を有することができる。例示的なヒドロキシルで末端ブロックされたポリジオルガノシロキサンは、ヒドロキシルで末端ブロックされたポリジメチルシロキサンである。成分(A)として使用に適しているヒドロキシルで末端ブロックされたポリジオルガノシロキサンは、当該技術分野で公知の方法、例えば対応する有機ハロシランの加水分解および縮合または環状ポリジオルガノシロキサンの平衡化により調製することができる。
【0055】
成分(A)は、1つの末端がトリオルガノシリル基(例えば(CH33Si−)で末端ブロックされ、他端がヒドロキシル基で末端ブロックされたポリジメチルシロキサンをさらに含むことができる。ヒドロキシル末端基およびトリオルガノシリル末端基の両方を有するポリジオルガノシロキサンは、全末端基の50%を超える、あるいは75%を超える末端基をヒドロキシル基として有することができる。上記ポリマー中のトリオルガノシリル基の量は、得られる硬化したシーラントの弾性率を調節するために用いることができる。理論に束縛されることは望まないが、トリオルガノシリル末端基のより高い濃度が硬化したシーラントの低い弾性率を提供すると考えられる。
【0056】
あるいは、例えば上の式(XIII)において、各R23が二価炭化水素基であるか、または二価炭化水素基と二価のシロキサン基との組合せである場合、成分(A)は、アルコキシシリルヒドロカルビレンで末端ブロックされたポリジオルガノシロキサンを含むことができる。R23は、エチレン、プロピレンもしくはヘキシレンなどのアルキレン基、フェニレンなどのアリーレン基、または
【化6】

などのアルキルアリーレン基であってもよい。あるいは、各R32および各R23はアルキルであってもよく、各R23はエチレンであってもよく、hhは0であってもよい。
【0057】
成分(A)は、単一のベースポリマーであってもよいし、または以下の特性のうちの少なくとも1つが異なる2つ以上のベースポリマーを含む組合せであってもよい:平均分子量、シロキサン単位、配列および粘度。
【0058】
アルコキシシリルヒドロカルビレンで末端ブロックされたポリジオルガノシロキサンは、ビニル末端ポリジメチルシロキサンを(アルコキシシリルヒドロカルビル)テトラメチルジシロキサンと反応させることにより調製することができる。アルコキシシリルヒドロカルビレンで末端ブロックされたポリジオルガノシロキサンは、当該技術分野で公知であり、米国特許第4,962,076号、同第5,051,455号、および同第5,053,442号に開示されている。
【0059】
成分(A)は、式R21jj22(3-jj)SiO1/2およびSiO4/2のシロキサン単位を含むMQ樹脂をさらに含むことができる(式中、R21およびR22は上記のとおりであり、各添え字jjは0、1または2である)。MQ樹脂は、0.5〜1.2のM単位対Q単位のモル比(M:Q)を有することができる。MQ樹脂を調製する方法は、当該技術分野で公知である。例えば、MQ樹脂は、米国特許第2,676,182号に開示される、Daudtらのシリカヒドロゾルキャッピングプロセスによって生成される生成物を処理することにより調製することができる。要点を述べると、Daudtの方法らは、シリカヒドロゾルを、加水分解性トリオルガノシラン(例えば、トリメチルクロロシラン)、シロキサン(例えば、ヘキサメチルジシロキサン)またはこれらの組み合わせと酸性条件下で反応させて、MおよびQ単位を含む生成物(MQ樹脂)を回収することが必要である。得られるMQ樹脂は、2〜5重量%のケイ素に結合したヒドロキシル基を含むことができる。
【0060】
成分(B)架橋剤
湿分硬化パッケージの成分(B)は、組成物を硬化させるのに十分な量で加えられる架橋剤である。成分(B)の正確な量は、成分(A)および(B)の加水分解性置換基を含めたさまざまな要因に依存するが、しかしながら、成分(B)の量は100重量部の成分(A)に基づいて0.5〜15部の範囲であってよい。成分(B)は、加水分解性基を有するシラン架橋剤またはその部分的または完全加水分解生成物を含むことができる。適切なシラン架橋剤の例は、一般式(XV)R4cSi(R54-c24kkSi(R254-kkを有することができる(式中、各R24は独立に一価の炭化水素基(例えばアルキル基)であり、各R25は加水分解性置換基(例えばハロゲン原子、アセトアミド基、アシルオキシ基(例えばアセトキシ)、アルコキシル基、アミド基、アミノ基、アミノキシ基、ヒドロキシル基、オキシモ基、ケトオキシモ基またはメチルアセトアミド基)であり、添え字kkは0、1、2、または3である)。あるいは各R25は、独立に、ヒドロキシル基、アルコキシ、アセトキシ、アミドまたはオキシムから選択することができる。あるいは成分(B)は、アシルオキシシラン、アルコキシシラン、ケトオキシモシランおよびオキシモシランから選択することができる。
【0061】
成分(C)触媒
成分(C)は、硬化を加速するために硬化パッケージに任意に加えることができる触媒である。湿分硬化パッケージの成分(C)は、金属のカルボン酸塩、スズ化合物、チタン化合物またはジルコニウム化合物を含むことができる。
【0062】
成分(C)は、金属の標準電位列の鉛からマンガン(両者を含む)にわたる金属のカルボン酸塩を含むことができる。あるいは成分(C)は、キレート化されたチタン化合物、チタネート(例えばテトラアルコキシチタネート)またはこれらの組み合わせを含むことができる。適切なチタン化合物の例には、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、テトラブトキシチタネート、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネートおよびビス−(エトキシアセトアセテート)ジイソプロポキシチタン(IV)およびこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。あるいは成分(C)は、スズ化合物(例えばジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキシド、オクチル酸第一スズオキシド(stannous octoate tin oxide)またはこれらの組み合わせ)を含むことができる。湿分硬化パッケージのための触媒の例は、米国特許第4,962,076号、同第5,051,455号、および同第5,053,442号に開示されている。
【0063】
これらの湿分硬化パッケージを含む硬化性シリコーン組成物が湿分への露出からそれらを保護する容器に保存されている場合、これらの湿分硬化パッケージは安定であるが、しかし、湿分にさらされると、この組成物は急速に硬化する。
【0064】
ヒドロシリル化硬化パッケージ
あるいは、上記組成物の成分(i)は、ヒドロシリル化硬化パッケージを含むことができる。ヒドロシリル化硬化パッケージは、以下のものを含むことができる:100重量部のベースポリマー(A’)、この組成物を硬化させるのに十分な量の架橋剤(B’)、およびのこの組成物の硬化を開始するのに十分な量の(C’)触媒。
【0065】
成分(A’)ベースポリマー
ヒドロシリル化硬化パッケージの成分(A’)は、1分子あたり平均少なくとも2つの脂肪族不飽和有機基を有するポリオルガノシロキサンを含むことができる。成分(A’)は、直鎖状または分枝状構造を有することができる。成分(A’)は、ホモポリマーまたは共重合体であってもよい。脂肪族不飽和有機基はアルケニルであってもよく、その例としてはビニル、アリル、ブテニルおよびヘキセニルが挙げられるが、これらに限定されない。不飽和有機基としては、エチニル、プロピニルおよびブチニルが挙げられる(これに限定されない)アルキニル基であってよい。成分(A’)の脂肪族不飽和有機基は、末端、ペンダントまたは末端およびペンダントの位置の両方に存在することができる。
【0066】
成分(A’)中の残りのケイ素に結合した有機基は、脂肪族不飽和を含まない一価の有機基であってもよい。これらの一価の有機基は、1〜20個の炭素原子、あるいは1〜10個の炭素原子を有していてよく、例としてはアルキル基(例えばメチル、エチル、プロピル、ペンチル、オクチル、ウンデシルおよびオクタデシル)、シクロアルキル基(例えばシクロヘキシル)、ならびに芳香族基(例えばフェニル、トリル、キシリル、ベンジルおよび2−フェニルエチル)が挙げられるが、これらに限定されない、。
【0067】
成分(A’)は、次式のポリオルガノシロキサンを含むことができる:
(XVI):R26227SiO(R262SiO)mm(R2627SiO)nnSiR26227
(XVII):R263SiO(R262SiO)oo(R2627SiO)ppSiR263、または
これらの組み合わせ。
【0068】
式(XVI)および(XVII)において、各R26は、独立に脂肪族不飽和を含まない一価の有機基であり、各R27は、独立に脂肪族不飽和有機基であり、添え字mmは2〜2000の範囲の平均値を有し、添え字nnは0〜2000の範囲の平均値を有し、添え字ooは0〜2000の範囲の平均値を有し、かつ添え字ppは2〜2000の範囲の平均値の範囲の平均値を有する。R26についての適切な一価の有機基は、アルキル(例えばメチル、エチル、プロピル、ペンチル、オクチル、ウンデシルおよびオクタデシル)、シクロアルキル(例えばシクロヘキシル)、ならびにアリール(例えばフェニル、トリル、キシリル、ベンジルおよび2−フェニルエチル)を含むが、これらに限定されない。各R27は、独立に一価の脂肪族不飽和有機基である。R27としては、アルケニル基(例えばビニル、アリルおよびブテニル)ならびにアルキニル基(例えばエチニルおよびプロピニル)が挙げられる。
【0069】
成分(A’)は、
i)ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
ii)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)、iii)ジメチルビニルシロキシ末端ポリメチルビニルシロキサン、
iv)トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)、v)トリメチルシロキシ末端ポリメチルビニルシロキサン、
vi)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルフェニルシロキサン)、
vii)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/ジフェニルシロキサン)、viii)フェニル,メチル,ビニル−シロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
ix)ジメチルヘキシルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
x)ジメチルヘキシルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルヘキシルシロキサン)xi)ジメチルヘキシルシロキシ末端ポリメチルヘキシルシロキサン、
xii)トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルヘキシルシロキサン)、
xiii)これらの組み合わせ
などのポリジオルガノシロキサンを含むことができる。
【0070】
成分(A’)としての使用に適しているポリジオルガノシロキサン流体を調製する方法(例えば対応する有機ハロシランの加水分解および縮合または環状ポリジオルガノシロキサンの平衡化)は、当該技術分野で周知である。
【0071】
成分(A’)は、例えば本質的にR283SiO1/2単位およびSiO4/2単位からなるMQ樹脂、本質的にR28SiO3/2単位およびR282SiO2/2単位からなるTD樹脂、本質的にR283SiO1/2単位およびR28SiO3/2単位からなるMT樹脂、本質的にR283SiO1/2単位、R28SiO3/2単位およびR282SiO2/2単位からなるMTD樹脂またはその組合せなどの樹脂をさらに含むことができる。
【0072】
各R28は、一価の有機基である。R28により表される一価の有機基は、1〜20個の炭素原子を有することができる。一価の有機基の例には、一価の非置換炭化水素基および一価のハロゲン化炭化水素基が含まれるが、これらに限定されない。一価の非置換炭化水素基は、アルキル(例えばメチル、エチル、プロピル、ペンチル、オクチル、ウンデシルおよびオクタデシル)、シクロアルキル(例えばシクロヘキシル)、アルケニル(例えばビニル、アリル、ブテニルおよびヘキセニル)、アルキニル(例えばエチニル、プロピニルおよびブチニル)、およびアリール(例えばフェニル、トリル、キシリル、ベンジルおよび2−フェニルエチル)を含むが、これらに限定されない。
【0073】
この樹脂は、平均3〜30mol%の脂肪族不飽和有機基を含むことができる。この脂肪族不飽和有機基は、アルケニル基、アルキニル基またはこれらの組み合わせであってもよい。この樹脂中の脂肪族不飽和有機基のmol%は、その樹脂中のシロキサン単位の全モル数に対するその樹脂中の不飽和基含有シロキサン単位のモル数の比に100を乗算したものである。
【0074】
樹脂を調製する方法は、当該技術分野で周知である。Daudtらの方法は、上に記載されている。本発明で使用する樹脂は、Daudtらの生成物を、最終生成物中の不飽和有機基の3〜30mol%を提供するのに十分な量の不飽和有機基含有末端ブロック剤および脂肪族不飽和を含まない末端ブロック剤と反応させることにより調製することができる。末端ブロック剤の例には、シラザン、シロキサンおよびシランが含まれるが、これらに限定されない。適切な末端ブロック剤は、当該技術分野で公知であり、米国特許第4,584,355号、同第4,591,622号、および同第4,585,836号に例示されている。単一の末端ブロック剤またはかかる薬剤の混合物は、樹脂を調製するために用いることができる。
【0075】
成分(A’)は、単一のベースポリマーであってもよいし、または以下の特性のうちの少なくとも1つが異なる2つ以上のベースポリマーを含む組合せであってもよい:構造、粘度、平均分子量、シロキサン単位および配列。
【0076】
成分(B’)オルガノハイドロジェンポリシロキサン
ヒドロシリル化硬化パッケージの成分(B’)は、1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。ヒドロシリル化硬化パッケージ中の成分(B’)の量は、成分(A’)100重量部あたり、0.5〜15部の範囲であってよい。成分(B’)はホモポリマーまたは共重合体であってよい。成分(B’)は、直鎖状、分枝状、環状、または樹脂状構造を有することができる。成分(B’)中のケイ素に結合した水素原子は、末端、ペンダント、または末端およびペンダントの位置の両方に存在してよい。
【0077】
成分(B’)は、HR292SiO1/2、R293SiO1/2、HR29SiO2/2、R292SiO2/2、R29SiO3/2およびSiO4/2単位が上げられるがこれに限定されないシロキサン単位を含むことができる。前述の式において、各R29は、脂肪族不飽和を含まない一価の有機基から、独立に選択される。
【0078】
成分(B’)は、次式の化合物を含むことができる:
(XVIII)R293SiO(R292SiO)qq(R29HSiO)rrSiR293
(XIX)R292HSiO(R292SiO)ss(R29HSiO)ttSiR292H、
またはこれらの組み合わせ。
【0079】
上記の式において、添え字qqは0〜2000の範囲の平均値を有し、添え字rrは2〜2000の範囲の平均値を有し、添え字ssは0〜2000の範囲の平均値を有し、添え字ttは0〜2000の範囲の平均値を有する。各R29は、独立に一価の有機基である。適切な一価の有機基としては、アルキル(例えばメチル、エチル、プロピル、ペンチル、オクチル、ウンデシルおよびオクタデシル)、シクロアルキル(例えばシクロヘキシル)、アルケニル(例えばビニル、アリル、ブテニルおよびヘキセニル)、アルキニル(例えばエチニル、プロピニルおよびブチニル)、ならびにアリール(例えばフェニル、トリル、キシリル、ベンジルおよび2−フェニルエチル)が挙げられる。
【0080】
成分(B’)としては、
a)ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
b)ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)
c)ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、
d)トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)
e)トリメチルシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、
f)本質的にH(CH32SiO1/2単位およびSiO4/2単位からなる樹脂、および
g)これらの組み合わせ
が挙げられる。
【0081】
成分(B’)は、単一のオルガノハイドロジェンポリシロキサン、または以下の特性のうちの少なくとも1つが異なる2つ以上のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含む組合せであってもよい:構造、平均分子量、粘度、シロキサン単位および配列。成分(B’)は、ヒドロシリル化硬化パッケージの重量に基づいて0.4〜20%の範囲の量で加えることができる。
【0082】
成分(B’)としての使用に適している直鎖状、分枝状、および、環状オルガノハイドロジェンポリシロキサンを調製する方法、例えば有機ハロシランの加水分解および縮合は、当該技術分野で周知である。成分(B’)としての使用に適しているオルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂を調製する方法も、米国特許第5,310,843号、同第4,370,358号、および同第4,707,531号において例示されているとおり、周知である。
【0083】
成分(C’)ヒドロシリル化触媒
ヒドロシリル化硬化パッケージの要素(C’)は、ヒドロシリル化触媒である。成分(C’)は、硬化性シリコーン組成物の重量に基づいて、0.1〜1000ppm、あるいは1〜500ppm、あるいは2〜200、あるいは5〜150ppmの白金族金属の量でヒドロシリル化硬化パッケージに加えられる。
【0084】
適切なヒドロシリル化触媒は、当該技術分野で公知であり、市販されている。成分(C’)は、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウムもしくはイリジウム金属またはその有機金属化合物、あるいはこれらの組み合わせから選択される白金族金属を含むことができる。成分(C’)としては、化合物(例えば塩化白金酸、塩化白金酸六水化物、二塩化白金、および前記化合物と低分子量のオルガノポリシロキサンとの錯体、またはマトリクスもしくはコア−シェル型構造にマイクロカプセル化された白金化合物が挙げられる。白金と低分子量のオルガノポリシロキサンとの錯体としては、1,3−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンと白金との錯体が挙げられる。これらの錯体は、樹脂マトリクス中にマイクロカプセル化することができる。あるいは、上記触媒は、1,3−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンと白金との錯体を含むことができる。触媒が白金と低分子量のオルガノポリシロキサンとの錯体であるとき、触媒の量は、硬化性シリコーン組成物の重量に基づいて0.04〜0.4%の範囲であってよい。
【0085】
成分(C’)についての適切なヒドロシリル化触媒は、例えば米国特許第3,159,601号、同第3,220,972号、同第3,296,291号、同第3,419,593号、同第3,516,946号、同第3,814,730号、同第3,989,668号、同第4,784,879号、同第5,036,117号、および同第5,175,325号および欧州特許第0347895B号に記載されている。マイクロカプセルに入れられたヒドロシリル化触媒およびそれらを調製する方法は、米国特許第4,766,176号および同第5,017,654号に例示されるとおり、当該技術分野で公知である。
【0086】
当業者なら、適切な処理剤を各硬化系に入れるように選択することができるであろう。例えば、当業者なら、アミノエチルアミノプロピル官能性ポリオルガノシロキサン処理剤、およびそれを用いて処理された充填材がヒドロシリル化硬化パッケージに対する抑制剤として作用すると分かるであろう。
【0087】
過酸化物硬化パッケージ
あるいは成分(i)は、過酸化物硬化パッケージを含むことができる。この過酸化物硬化パッケージは、以下のものを含むことができる:100重量部の(A”)ベースポリマー、任意にこの組成物を硬化させるのに十分な量の(B”)架橋剤、およびこの組成物の硬化を加速するのに十分な量の(C”)触媒。
【0088】
成分(A”)ベースポリマー
この過酸化物硬化パッケージの成分(A”)は、1分子あたり平均少なくとも2つの脂肪族不飽和有機基を有するポリジオルガノシロキサンを含む。このポリジオルガノシロキサンは、25℃で少なくとも100mPa・sの粘度を有することができる。ポリジオルガノシロキサンは、ASTM D−962に従ってウィリアムス可塑価(Williams Plasticity number)として測定した粘度で100(これは25℃で4×106mPa・sに等しい)を超える粘度を有するポリジオルガノシロキサンゴムを含むことができる。あるいは粘度は、125〜200ウィリアムス可塑価(25℃での10×106〜80×106mPa・sに相当する)の範囲であってよい。
【0089】
脂肪族不飽和有機基はアルケニルであってもよく、例としてはビニル、アリル、ブテニルおよびヘキセニルが挙げられるが、これらに限定されない。脂肪族不飽和有機基はアルキニル基であってもよく、例としてはエチニル、プロピニルおよびブチニルが挙げられるが、これらに限定されない。成分(A”)中の不飽和有機基は、末端、ペンダントまたは末端およびペンダントの位置の両方に存在することができる。
【0090】
成分(A”’)中の残りのケイ素に結合した有機基は、脂肪族不飽和を含まない一価の有機基であってもよい。これらの一価の有機基としては、アルキル基(例えばメチル、エチル、プロピル、ペンチル、オクチル、ウンデシルおよびオクタデシル)、シクロアルキル基(例えばシクロヘキシル)、ならびに芳香族基(例えばフェニル、トリル、キシリル、ベンジルおよび2−フェニルエチル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
成分(A”)は、次式のポリジオルガノシロキサンを含むことができる:
(XX):R30231SiO(R302SiO)uu(R3031SiO)vvSiR30231
(XXI):R303SiO(R302SiO)ww(R3031SiO)xxSiR303、または
これらの組み合わせ。
【0092】
式(XX)および(XXI)において、各R30は独立に、脂肪族不飽和を含まない一価の有機基であり、各R31は独立に脂肪族不飽和有機基であり、添え字uuは少なくとも2の平均値を有し、添え字vvは0または正数であってもよく、添え字wwは0または正数であってもよく、および添え字xxは少なくとも2の平均値を有するが、ただしこれらの添え字は式(XX)および(XXI)のポリジオルガノシロキサンに100より大きいウィリアムス可塑価を与えるのに十分な値を有する。R30についての適切な一価の有機基としては、アルキル(例えばメチル、エチル、プロピル、ペンチル、オクチル、ウンデシルおよびオクタデシル)、シクロアルキル(例えばシクロヘキシル)、ならびにアリール(例えばフェニル、トリル、キシリル、ベンジルおよび2−フェニルエチル)が挙げられるが、これらに限定されない。各R31は、独立に脂肪族不飽和の一価の有機基である。R31としては、アルケニル基(例えばビニル、アリルおよびブテニル)ならびにアルキニル基(例えばエチニルおよびプロピニル)が挙げられる。
【0093】
成分(A”)は、単一のポリジオルガノシロキサン、または以下の特性のうちの少なくとも1つが異なる2つ以上のポリジオルガノシロキサンを含む組合せであってもよい:構造、平均分子量、粘度、シロキサン単位および配列。
【0094】
任意の成分(B”)架橋剤
成分(B”)の架橋剤は、この組成物を硬化させることにより調製されるシリコーンエラストマーの圧縮永久歪みを改善するために、過酸化物硬化パッケージに任意に加えられてもよい。組成物中の成分(B”)の量は、成分(A”)100重量部あたり0〜15部の範囲であってよい。成分(B”)は、1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子を有するポリジオルガノハイドロジェンシロキサンを含むことができる。
【0095】
成分(B”)は、次式のポリジオルガノハイドロジェンシロキサンを含むことができる:
(XXII)R323SiO(R322SiO)yy(R32HSiO)zzSiR323
(XXIII)R322HSiO(R322SiO)aaa(R32HSiO)bbbSiR322H、
または
これらの組み合わせ。
【0096】
上記の式では、添え字yyは0〜2000の範囲の平均値を有し、添え字zzは2〜2000の範囲の平均値を有し、aaaは0〜2000の範囲の平均値を有し、添え字bbbは0〜2000の範囲の平均値を有するが、ただし量(yy+zz)は2000未満であり、かつ量(aaa+bbb)は2000未満である。各R32は、独立に一価の有機基である。適切な一価の有機基としては、アルキル(例えばメチル、エチル、プロピル、ペンチル、オクチル、ウンデシルおよびオクタデシル)、シクロアルキル(例えばシクロヘキシル)、アルケニル(例えばビニル、アリル、ブテニルおよびヘキセニル)、アルキニル(例えばエチニル、プロピニルおよびブチニル)、ならびにアリール(例えばフェニル、トリル、キシリル、ベンジルおよび2−フェニルエチル)が挙げられる。
【0097】
成分(B”)としては、以下のものが挙げられる:
i)ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
ii)ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)、
iii)ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、
iv)トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)、
v)トリメチルシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、
vi)これらの組み合わせ。
【0098】
成分(B”)は、単一のポリジオルガノハイドロジェンシロキサン、または以下の特性のうちの少なくとも1つが異なる2つ以上のポリジオルガノハイドロジェンシロキサンを含む組合せであってもよい:構造、平均分子量、粘度、シロキサン単位および配列。
【0099】
成分(C”)触媒
過酸化物硬化パッケージ中の成分(C”)は、過酸化物化合物を含む。組成物に加えられる成分(C”)の量は、成分(C”)について選択される特定の過酸化物化合物に依存するが、しかしながら、その量は成分(A”)100重量部あたり0.2〜5部の範囲であってよい。成分(C”)に適している過酸化物化合物の例としては、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシドおよびこれらの組み合わせ、ならびに安息香酸エステル化合物とかかる過酸化物との組合せ(例えば、過安息香酸第三ブチル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
適切な過酸化物硬化パッケージは、当該技術分野で公知であり、例えば米国特許第4,774,281号に開示されている。
【0101】
放射線硬化パッケージ
あるいは組成物中の成分(i)は、放射線硬化パッケージを含むことができる。この放射線硬化パッケージは以下のものを含むことができる:100重量部の(A”’)ベースポリマー、任意に(B”’)架橋剤、およびこの組成物の硬化を開始するのに十分な量の(C”’)光重合開始剤。
【0102】
放射線硬化パッケージの要素(A”’)は、1分子あたり平均少なくとも2つの放射線硬化性有機基を有するポリオルガノシロキサンを含むことができる。成分(A”’)は、直鎖状または分枝状構造を有することができる。成分(A”’)は、ホモポリマーまたは共重合体であってもよい。好適な放射線硬化性基には、(メタ)アクリレート官能基およびエポキシ官能基が含まれる。好適な(メタ)アクリレート官能基には、アクリルオキシ、メタクリルオキシ、アクリルアミドおよびメタクリルアミドが含まれる。あるいは各Jは、エポキシ官能基であってもよい。適切なエポキシ官能基の例には、3,4−エポキシシクロヘキシル、エポキシエチル(オキシラニル)、エポキシメチル、グリシドオキシ、グリシドオキシアルキル(例えば、グリシドオキシメチル、2−グリシドオキシエチル、3−グリシドオキシプロピルおよび4−グリシドオキシブチル)、エポキシシクロヘキシルアルキル基(例えば、4−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシル、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル、3,4−エポキシ−4−メチルシクロヘキシル、2,3−エポキシシクロペンチル、および2,3−エポキシシクロペンチル)メチル、ならびにオキシラニルアルキル(例えば4−オキシラニルブチルおよび8−オキシラニルオクチル)が含まれる。
【0103】
あるいは各Jは、脂環式エポキシ官能基であってもよい。脂環式エポキシ官能基の例は、以下のものが挙げられる:
【化7】

(式中、各添え字cccは独立に1〜5の範囲の値を有する)。成分(A”’)中の放射線硬化性有機基は、末端、ペンダントまたは末端およびペンダントの位置の両方に存在することができる。
【0104】
成分(A”’)中の残りのケイ素に結合した有機基は、脂肪族不飽和を含まない一価の有機基であってもよい。これらの一価の有機基は、1〜20個の炭素原子、あるいは1〜10個の炭素原子を有していてよく、例としては、アルキル基(例えばメチル、エチル、プロピル、ペンチル、オクチル、ウンデシルおよびオクタデシル)、シクロアルキル基(例えばシクロヘキシル)、ならびに芳香族基(例えばフェニル、トリル、キシリル、ベンジルおよび2−フェニルエチル)が挙げられるが、これらに限定されない。成分(A”’)は、単一のポリオルガノシロキサンであってもよいし、または構造、粘度、平均分子量、シロキサン単位および配列から選択される少なくとも1つの特性が異なる2つ以上のポリオルガノシロキサンの組合せであってもよい。
【0105】
成分(C”’)(光重合開始剤)は、当該技術分野で公知の放射線硬化性シリコーン組成物のためのいかなる従来の光重合開始剤でもあってもよく、例えばCrivelloに対する米国特許第4,310,469号およびKosharらに対する同第4,313,988号、ならびに欧州特許出願番号EP0562922号に開示されているものが挙げられる。光重合開始剤は、カチオン性光重合開始剤を含むことができる。カチオン性光重合開始剤は、150〜800nmの範囲の波長を有する放射線への暴露によってポリマーの硬化(架橋)を開始することができるいかなるカチオン性光重合開始剤であってもよい。カチオン性光重合開始剤の例には、オニウム塩が含まれるが、これに限定されない。
【0106】
適切なオニウム塩としては、R332+MGddd-、R333+MGddd-、R333Se+MGddd-、R334+MGddd-およびR334+MGddd-から選択される式を有する塩(式中、各R33は独立に、1〜30個の炭素原子を有する置換または非置換の一価の炭化水素基であり、Mは、遷移金属、希土類金属、ランタニド金属、半金属、リンおよび硫黄から選択される元素であり、Gはハロ(例えば、クロロ、ブロモ、ヨード)であり、添え字dddは、積ddd(G上の電荷+Mの酸化数)=−1であるような値を有する)が挙げられる。置換された炭化水素基上の置換基の例としては、1〜8個の炭素原子のアルコキシ基、1〜16個の炭素原子のアルキル基、ニトロ、クロロ、ブロモ、シアノ、カルボキシル、メルカプト、ならびに複素環式芳香族基(例えばピリジル、チオフェニルおよびピラニル)が挙げられるが、これらに限定されない。Mにより表される金属の例としては、遷移金属(例えばFe、Ti、Zr、Sc、V、CrおよびMn)、ランタニド金属(例えばPrおよびNd)、他の金属(例えばCs、Sb、Sn、Bi、Al、Ga、およびIn)、半金属(例えばBおよびAs)、ならびにPが挙げられるが、これらに限定されない。式MGddd-は、非塩基性の、非求核性アニオンを表す。式MGddd-を有するアニオンの例には、BF4-、PF6-、AsF6-、SbF6=、SbCl6-およびSnCl6-が含まれるが、これらに限定されない。
【0107】
オニウム塩の例には、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム塩(例えば、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアルセネートおよびビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートが挙げられる)のようなビスジアリールヨードニウム塩、アルキルフェニルヨードニウム塩(例えばアルキルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート)、スルホン酸のジアリールヨードニウム塩、スルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、ボロン酸のジアリールヨードニウム塩およびボロン酸のトリアリールスルホニウム塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0108】
スルホン酸のジアリールヨードニウム塩の例には、ペルフルオロアルキルスルホン酸のジアリールヨードニウム塩(例えばペルフルオロブタンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩、ペルフルオロエタンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩、ペルフルオロオクタンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩およびトリフルオロメタンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩)、ならびにアリールスルホン酸のジアリールヨードニウム塩(例えばパラ−トルエンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩、ベンゼンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩および3−ニトロベンゼンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩)が含まれるが、これらに限定されない。
【0109】
スルホン酸のトリアリールスルホニウム塩の例には、ペルフルオロアルキルスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩(例えばペルフルオロブタンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、ペルフルオロエタンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、ペルフルオロオクタンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩およびトリフルオロメタンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩)、ならびにアリールスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩(例えばパラ−トルエンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、ベンゼンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩および3−ニトロベンゼンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩)が含まれるが、これらに限定されない。。
【0110】
ボロン酸のジアリールヨードニウム塩の例には、ペルハロアリールボロン酸のジアリールヨードニウム塩が含まれるが、これに限定されない。ボロン酸のトリアリールスルホニウム塩の例には、ペルハロアリールボロン酸のトリアリールスルホニウム塩が含まれるが、これに限定されない。
【0111】
カチオン性光重合開始剤は、単一のカチオン性光重合開始剤、または2つ以上の異なるカチオン性光重合開始剤(各々は上記のとおり)を含む組合せであってよい。カチオン性光重合開始剤の濃度は、組成物の重量に基づいて0.01%から15%の範囲であってよい。
【0112】
当業者なら、上記組成物が複数の硬化パッケージを含むことができることは分かるであろう。例えば、湿分硬化性でありかつヒドロシリル化硬化性である二重硬化パッケージを使用することができる。当業者なら、所望のコンシステンシーを有する硬化生成物(例えばゴムまたはゲル)を調製するように、上記の各硬化パッケージ中の成分およびその量を選択することができるであろう。
【0113】
(充填材)
上記組成物の成分(ii)は、無機充填材である。成分(ii)は、補強用充填材、増量用充填材、伝導性充填材またはこれらの組み合わせを含むことができる。あるいは成分(ii)は熱伝導性でかつ導電性である充填材を含むことができる。あるいは、成分(ii)は熱伝導性でかつ電気絶縁性であってもよい。
【0114】
好適な補強用充填材の例としては、マイカ、シリカ、二酸化チタンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。好適な補強用充填材の例としては、補強用シリカ充填材(例えばヒュームドシリカ(fume silica)、シリカエーロゲル、シリカゼロゲル(silica zerogel)および沈降シリカ)が挙げられる。フュームドシリカは、当該技術分野で公知であり、市販されている。フュームドシリカはマサチューセッツのカボート社(Cabot Corporation)によって名称CAB−O−SILの下で販売されている。
【0115】
増量用充填材の例としては、圧壊石英、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、タルク、珪藻土、酸化鉄、クレー、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、砂またはこれらの組み合わせが挙げられる。増量用充填材は、当該技術分野で公知であり、市販されており、例えば、粉状シリカはウエストバージニア州、バークレースプリングスのユーエスシリカ(U.S. Silica)によって、名称MIN−U−SILの下で販売されている。
【0116】
あるいは成分(ii)は、金属充填材、溶融性(meltable)充填材、またはこれらの組み合わせを含むことができる。金属充填材としては、金属の粒子、および粒子の表面上に層を有する金属の粒子を含む。これらの層は、例えば、粒子の表面上の金属窒化物層または金属酸化物層であってもよい。適切な金属充填材は、アルミニウム、銅、金、ニッケル、パラジウム、白金、銀およびそれらの合金からなる群から選択される金属の粒子が挙げられる。あるいは金属充填材は、アルミニウムであってもよい。適切な金属充填材としてはさらに、表面上に、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化ニッケル、酸化銀およびこれらの組み合わせからなる群から選択される層を有する上記の金属の粒子が挙げられる。例えば、金属充填材は、表面上に酸化アルミニウム層を有するアルミニウム粒子を含むことができる。
【0117】
あるいは充填材は、コアの上に、上記のものなどの金属の少なくとも1つの外面を有する粒子を含む導電性充填材であってもよい。かかる粒子のコアは、上述した金属からなる表面を支持して、組成物の、またはその硬化した生成物の電気特性に悪影響を与えない任意の材料、導体または電気絶縁体であってよい。かかる材料の例として、銅、中実ガラス、中空ガラス、マイカ、ニッケルおよびセラミック繊維が挙げられるが、これらには限定されない。
【0118】
無機充填材としては、酸化アルミニウム、酸化ベリリウム、窒化ホウ素、酸化マグネシウム、炭化ケイ素、炭化タングステン、酸化亜鉛およびこれらの組み合わせが挙げられる。あるいは無機充填材としては、酸化アルミニウム、酸化亜鉛およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0119】
溶融性充填材は、Ga、In、Snまたはその合金を含むことができる。溶融性充填材は、Ag、Bi、Cd、Cu、Pb、Znまたはこれらの組み合わせを任意にさらに含むことができる。好適な溶融性充填材の例としては、Ga、In−Bi−Sn合金、Zn−In−Sn合金、Sn−In−Ag合金、Sn−Ag−Bi合金、Sn−Bi−Cu−Ag合金、Sn−Ag−Cu−Sb合金、Sn−Ag−Cu合金、Sn−Ag合金、Sn−Ag−Cu−Zn合金およびこれらの組み合わせが挙げられる。この溶融性充填材は、250℃まで、あるいは225℃までの融点を有することができる。この溶融性充填材は、少なくとも50℃、あるいは少なくとも150℃の融点を有することができる。この溶融性充填材は、共晶合金、非共晶合金または純粋な金属であってもよい。溶融性充填材は、市販されている。
【0120】
アルミニウム充填材は、例えば、米国、イリノイ州、ネーパービルのトーヤルアメリカ社(Toyal America,Inc.)、および米国、カリフォルニア州、ストックトンのヴァリメト社(Valimet Inc.)から市販されている。銀の充填材は、米国、マサチューセッツ州、アトルバラのメタラーテクノロジーズユーエスエー社(Metalor Technologies USA,Corp.)から市販されている。
【0121】
伝導性充填材は当該技術分野で公知であり、市販されており、例えば、米国特許第6,169,142号(第4列、第7−33行)を参照。例えば、CB−A20SおよびAl−43−Meは、昭和電工から市販されている様々な粒径の酸化アルミニウム充填材であり、AA−04、AA−2およびAA18は住友化学工業株式会社から市販されている酸化アルミニウム充填材である。酸化亜鉛(例えば商標KADOX(登録商標)およびXX(登録商標)を有する酸化亜鉛)は、米国、ペンシルバニア、モナカ(Monaca)のジンクコーポレーションオブアメリカ社(Zinc Corporation of America)から市販されている。
【0122】
充填材粒子の形状は特に限定されないが、しかしながら、丸いまたは球状の粒子は、組成物中の伝導性充填材の高い充填量の際にも望ましくないレベルまで粘度が上昇することを防止できる。
【0123】
成分(ii)は、単一の充填材であってもよいし、または少なくとも1つの特性(例えば、粒子形状、平均粒径、粒径分布および充填材の種類)が異なる2つ以上の充填材の組合せであってもよい。例えば、無機充填材(例えば、より大きい平均粒径を有する第1の酸化アルミニウムおよびより小さい平均粒径を有する第2の酸化アルミニウム)の組合せを使用することが望ましいこともある。あるいは、例えば、より大きい平均粒径を有する酸化アルミニウムと、より小さい平均粒径を有する酸化亜鉛との組合せを使用することが望ましいこともある。あるいは、金属充填材(例えば、より大きい平均粒径を有する第1のアルミニウムおよびより小さい平均粒径を有する第2のアルミニウム)の組合せを使用することが望ましいこともある。あるいは、金属充填材および無機充填材の組合せ(例えば、アルミニウムおよび酸化アルミニウム充填材の組合せ、アルミニウムおよび酸化亜鉛充填材の組合せ、またはアルミニウム、酸化アルミニウムおよび酸化亜鉛充填材の組合せを使用することが望ましいこともある。より大きい平均粒径を有する第1の充填材およびこの第1の充填材より小さい平均粒径を有する第2の充填材の使用は、充填効率を改善することができ、粘度を低下させることができ、熱伝導性の充填材については、伝熱を強化できる。
【0124】
充填材の平均粒径は、成分(ii)について選択される充填材の種類および組成物に加えられる正確な量を含むさまざまな要因に依存する。しかしながら、伝導性充填材は、0.1〜80マイクロメートル、あるいは0.1〜50マイクロメートルおよびあるいは0.1〜10マイクロメートルの平均粒径を有することができる。
【0125】
組成物中の充填材の量は、選択されるマトリクスの種類および充填材の種類、充填材処理剤の量および組成物、ならびに最終用途を含むさまざまな要因に依存する。しかしながら、組成物は、組成物の重量に基づいて、充填機の1%〜98%の部数を含むことができる。
【0126】
当業者なら、ある種の充填材が互いと重複すると認識するであろう。例えば、酸化亜鉛は、伝導性かつ増量用充填材であってよい。当業者なら、所望の組成物を処方するように充填材の適切な種類および量を選択することができるであろう。
【0127】
(充填材処理剤)
充填材処理剤は、上記の水素結合できるポリオルガノシロキサンを含む。この水素結合できるポリオルガノシロキサンは、1分子あたり平均少なくとも1つの水素結合できるケイ素に結合した基を有し、この基は、少なくとも1つの糖類官能基を有する有機基または少なくとも1つのアミノ官能基を有する有機基から選択することができる。この水素結合できるポリオルガノシロキサンは、糖類−シロキサンポリマー、アミノ官能性ポリオルガノシロキサンおよびこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。あるいは充填材処理剤は、糖類−シロキサンポリマーであってもよい。組成物中の充填材処理剤の量は、組成物の最終用途、選択される充填材の種類および量、ならびに使用する充填材の処理方法を含むさまざまな要因に依存する。しかしながら、充填材処理剤の量は、充填材の重量に基づいて、0.1%〜10%、あるいは0.1%〜5%の範囲であってよい。
【0128】
あるいは成分(i)および(iii)は、同じであってもよい。例えば、組成物がグリース組成物である場合、(iii)充填材処理剤は(i)マトリクスとして使用してもよい。例えば、上記の糖類−シロキサンポリマーは、熱伝導性充填材のためのマトリクスとして用いることができる。
【0129】
(付加的な成分)
本発明の組成物は、成分(i)(ii)および(iii)に加えて1つ以上の付加的な成分をさらに含むことができる。組成物は、(iv)安定剤(例えばヒドロシリル化硬化安定剤、熱安定剤またはUV安定剤)、(v)可塑剤、(vi)増量剤(第2の可塑剤または加工助剤と呼ばれることがある)、(vii)接着促進剤、(viii)殺菌剤、(ix)レオロジー添加剤、(x)難燃剤、(xi)色素およびこれらの組み合わせからなる群から選択される付加的な成分をさらに含むことができる。
【0130】
成分(iv)は、安定剤である。ヒドロシリル化硬化パッケージ用の安定剤としては、アセチレンアルコール(例えば、メチルブチノール、エチニルシクロヘキサノール、ジメチルヘキシノール、1,1−ジメチル−2−プロピニル)オキシ)トリメチルシラン、メチル(トリス(1,1−ジメチル−2−プロピニルオキシシランおよびこれらの組み合わせ、メチルビニルシクロシロキサン(例えば、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラヘキセニルシクロテトラシロキサンおよびこれらの組み合わせが挙げられる)などのシクロアルケニルシロキサン、エン−イン化合物(例えば、3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン)、トリアゾール(例えば、ベンゾトリアゾール)、ホスフィン、メルカプタン、ヒドラジン、アミン(例えば、テトラメチルエチレンジアミン)、フマル酸ジアルキル、フマル酸ジアルケニル、フマル酸ジアルコキシアルキル、マレイン酸エステル(例えば、マレイン酸ジアリル)、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。あるいは安定剤は、フェニルブチノールを含むことができる。適切なヒドロシリル化硬化パッケージ安定剤は、例えば、米国特許第3,445,420号、同第3,989,667号、同第4,584,361号、および同第5,036,117号に開示されている。
【0131】
硬化性シリコーン組成物に加えられる安定剤の量は、使用する特定の安定剤および組成物および触媒の量に依存する。しかしながら、ヒドロシリル化硬化パッケージ安定剤の量は、硬化性シリコーン組成物の重量に基づいて、0.0025%〜0.025%の範囲であってよい。
【0132】
(組成物の調製方法)
上記組成物は、任意の簡便な手段によって調製することができる。例えば、上記組成物を調製するための方法は、(1)(i)マトリクス、(ii)伝導性充填材および(iii)上で記載した充填材処理剤を含む成分を合わせ、それによって充填材をそれがある位置でこの充填材処理剤で処理する工程と、任意に(2)硬化性マトリクスが用いられる場合、組成物を硬化させる工程とを含む。1つ以上の付加的な成分は、工程(1)において、任意に加えることができる。
【0133】
あるいは上記組成物は、(ii)充填材を(iii)充填材処理剤で前処理し、その後で得られる前処理された充填材を(i)マトリクスおよび1つ以上の付加的な成分(加える場合)と合わせることにより調製することができる。例えば、上記組成物を調製する方法は、(1)(ii)充填材を(iii)充填材処理剤の溶媒溶液と混合する工程と、(2)工程(1)の生成物を(i)マトリクスと混合する工程と、任意に(3)溶媒を除去する工程とを含む。上記の付加的な成分の1つ以上は、工程(1)または工程(2)の間に加えることができる。この方法は、任意に(3)硬化性マトリクスが用いられる場合、その組成物を硬化させる工程をさらに含むことができる。
【0134】
あるいは上記組成物を調製する方法は、(1)(ii)充填材を(iii)充填材処理剤の溶媒溶液と混合する工程と、(2)この溶媒を除去する工程と、(3)工程(2)の生成物を(i)マトリクスと混合する工程とを含む。1つ以上の付加的な成分は、工程(1)または工程(3)の間に、加えることができる。上記方法は、任意に(4)硬化性マトリクスが用いられる場合、その組成物を硬化させる工程を、さらに含むことができる。当業者なら、処理した充填材を調製する工程が非水溶媒を使用して実行することができることは分かるであろう。理論に束縛されることは望まないが、水の存在が充填材を処理する方法にとって有害である可能性があると考えられる。
【0135】
(組成物の使用)
上記組成物は、さまざまな用途において使用することができる。この組成物またはその硬化した生成物が熱伝導性の場合、その組成物は電子デバイスのTIM用途において使用することができる。図6は、上記のとおりに充填材処理剤で処理された熱伝導性の充填材を含む組成物から製造されるTIM(602、606)を含むデバイス600を示す。デバイス600には、ダイ接着接着剤609を介して基板604に載置された電子構成部品(集積回路(IC)チップとして示されている)603を含む。基板604は、パッド610を介して基板604に対して取り付けられるはんだ球605を有する。第1の放熱材料(TIM1)606は、ICチップ603と金属カバー607との間に挟まれている。金属カバー607は、第1の熱分散部材として作用する。第2の放熱材料(TIM2)602は、金属カバー607とヒートシンク(第2の熱分散部材)301との間に挟まれている。デバイスが作動する場合、熱は矢印608により表される熱通路に沿って移動する。様々なTIM製品形態が、本願明細書に記載されている組成物を使用して調製することができ、その例としては、接着剤、グリース、相変化組成物、ポッティング剤、前硬化エラストマーパッドおよびシーラントが挙げられる。
【実施例】
【0136】
以下の実施例は、当業者に本発明を例示するために含まれる。しかしながら、当業者は、本開示を考慮して多くの変更を開示される特定の実施形態においてなすことができるということが分かるはずであり、特許請求の範囲に示される本発明の精神と範囲から逸脱することなく、依然として同様または類似の結果を得るはずである。表1のアミノ官能性ポリジメチルシロキサンを、以下の実施例で使用した。
表1:アミノ官能性ポリオルガノシロキサンの特性

【表1】

【0137】
糖類−シロキサンポリマー処理剤を、表1のアミノ官能性ポリジメチルシロキサンを、1:1 一級アミン:ラクトンモル比でグルコノラクトン(GL)またはラクトビオノラクトン(LBL)と反応させて、糖類−シロキサンポリマーを形成することにより調製した。アミノ官能性ポリジメチルシロキサンおよびグルコノラクトンの反応生成物を、(どのアミノ官能性ポリジメチルシロキサンを使用したかに応じて)A1−GL、A2−GL、A3−GLまたはA4−GLと指定した。アミノ官能性ポリジメチルシロキサンおよびラクトビオノラクトンの反応生成物を、(どのアミノ官能性ポリジメチルシロキサンを使用したかに応じて)A1−LBL、A2−LBL、A3−LBLまたはA4−LBLと指定した。
【0138】
以下の実施例で使用した充填材は、酸化アルミニウムであった。70部の10マイクロメートル(μm)の直径(D50)を有するDAM10、および30部の0.4μmの直径(D50)を有する昭和電工から入手したAA−04の混合物を使用した。
【0139】
(参照実施例1)
溶液を、処理剤をイソプロパノール(IPA)中に1%のレベルで分散させることにより調製した。1%の前処理された充填材を得るために、32gの溶液および32gの充填材を合わせ、30秒間混合した。その後で、IPAを除去した。0.3%の前処理された充填材を得るために、9.6gの1%の溶液、22.4gのIPAおよび32gの充填材を合わせ、その後でIPAを除去した。
【0140】
比較例として、同じ手順を、処理剤を含んでいないIPAを用いて、または式MViMe25Si(OMe)3のポリオルガノシロキサンを処理剤として用いて完了した。
【0141】
(分散液試料の調製および評価)
前処理した充填材を、30秒のミキサー剪断を用いて、1オンス(約30ml)のハウシルト(Hauschild)の混合カップ中で、90重量%の充填材(69体積%)の酸化アルミニウム固形含量で、20cStポリジメチルシロキサン流体中に分散した。レオロジーを、分散の直後、および常温で12〜13日のエージング後に、0.1%および1%のひずみ、25mmの平行プレート、25℃で、周波数掃引によってモニターした。また、前処理された充填材、トルエンで抽出された前処理した充填材、最初の分散液からトルエン抽出された充填材、およびエージングした分散液からトルエン抽出された充填材を、結合したポリマー/処理剤含量についてDRIFTSにより分析した。
【0142】
(DRIFT結果)
分散液をエージングした後に、0.08%の結合含量を含む未処理の対照を除いてすべての試料について0.2%〜0.4%の結合含量が充填材面に存在したため、充填材処理剤が表面から離れていないと結論した。表2を参照。この技術を使用して区別する簡単な方法がないため、結合含量は結合したポリマーおよび結合した処理剤の組合せとして定義する。抽出された充填材は、20gのトルエンを用いて1gの分散液を抽出し、充填材を遠心分離し、トルエンをデカンテーションし、次いでこの手順を繰り返すことによって、DRIFTS分析のために調製した。最後の抽出の後、充填材を、常温で一晩真空デシケータ中で乾燥し、その後に分析した。
【0143】
(レオロジーの結果)
一般に、より低い粘度(η*)は、より高い酸化アルミニウム充填量を許容し、これは熱性能を高める。上で調製した試料において、η*については相当な範囲が存在した。しかしながら、これらの試料では、充填材処理剤としての水素結合できるポリオルガノシロキサン(例えばアミノ官能性ポリオルガノシロキサンまたは炭水化物官能性ポリオルガノシロキサン)の使用は、ある公知の処理剤(例えば、MViMe25Si(OMe)3)よりレオロジーを制御するのに効果的であり得る。理論に束縛されることは望まないが、これらの実施例は、水素結合が表層処理剤に対する十分な結合力(attachment)であることを示すと考えられる。表2および図1〜図4を参照。
【0144】
さらに、糖類−シロキサンポリマーの水素結合が付加的な剪断の際にさらなる利点を提供すると考えられる。分散液を常温で4週間エージングした後、η*を測定し、この分散液をハウシルト中で合計5分間(60秒間を5回)遠心混合して再混合し、その後に再びη*を測定した。0.1% ひずみでの周波数掃引の重ね合わせを、図5に示す。理論に束縛されることは望まないが、充填材処理剤として処理BおよびFを用いた場合は見かけの増加なしで、処理Dを用いた場合はごくわずかな増加を伴って、充填剤処理剤としてMViMe25Si(OMe)3を用いる比較用試料を用いた場合にははるかに大きい(ほぼ2桁の)増加を伴って示されるとおり、糖類−シロキサンポリマーが、分散液を、剪断による増粘を受けにくくすると考えられる。充填材充填量を増加させても、この糖類−シロキサンポリマーは、η*を低下させることにまだ効果的であった。表2を参照。
表2:酸化アルミニウム表面処理剤として評価した糖類−シロキサンポリマー、アミノ官能性ポリオルガノシロキサンおよび比較材料、ならびに初期および12〜13日間の常温でのエージング後の分散液の粘度

【表2】

*は比較例を意味する。η*は0.1% ひずみおよび0.1ラジアン/秒で測定した。
【産業上の利用可能性】
【0145】
理論に束縛されることは望まないが、このポリオルガノシロキサンは1つ以上の利点、例えば異なる充填材処理剤を有する以外は同じマトリクスおよび充填材充填量を有する組成物と比較して)より低い組成物粘度を提供し得るため、本願明細書に記載する水素結合できるポリオルガノシロキサンは充填材処理剤として有効であると考えられる。これは、より高い充填材充填量を可能にする改良された表層被覆率、または小さい粒子がより高い含量となるように多峰性粒子粒径分布の比率を歪めて、低い界面抵抗およびより少ない剪断による増粘を利用することに起因している可能性がある。なぜなら、このテザー部分はエージングの際に消費されず、従って組成物を作製するための剪断が関与するプロセスにおいて新しく生成した高いエネルギー表面を不活性化するためにマトリクス中でまだ利用できるためである。この糖類−シロキサンポリマーは、糖類−シロキサンポリマーで処理された充填材を含む組成物の剪断による増粘に対する感受性を低下させるという付加的な利点を提供できる。糖類−シロキサンポリマーは、硬化性マトリクスおよび糖類−シロキサンポリマーで処理された充填材を含む未硬化の組成物が使用の前にしばらくの間保存される場合、経時的に硬化系とともに架橋しないという利点を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本質的に、
(i)シリコーン含有マトリクスと、
(ii)充填材と、
(iii)充填材処理剤であって、前記充填材処理剤は水素結合できるポリオルガノシロキサンを含み、前記ポリオルガノシロキサンは縮合可能なシリル基を含まない充填材処理剤と
からなる組成物。
【請求項2】
前記充填材処理剤が糖類−シロキサンポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記充填材処理剤が単位式(I):
(R1(3-a)2aSiO1/2b(R1(2-c)2cSiO2/2d(R2SiO3/2e(R13SiO1/2f(R12SiO2/2g(R1SiO3/2h(SiO4/2i
(式中、
各添え字aは、独立に0、1、2、または3であり、
添え字bは、0以上の値を有し、
各添え字cは、独立に0、1または2であり、
添え字dは、0以上の値を有し、
添え字eは、0以上の値を有し、
量(a+c)が0である場合、添え字eは1以上の値を有し、
量(b+d+e)は、1以上であり、
添え字fは、0以上の値を有し、
添え字gは、0以上の値を有し、
添え字hは、0以上の値を有し、
添え字iは、0以上の値を有し、
各R1は、同じであってもよいし、または異なっていてもよく、水素、1〜12個の炭素原子のアルキル基、有機基または式R3−Qの基を含み、
Qは、エポキシ、シクロエポキシ、一級または二級のアミノ、エチレンジアミン、カルボキシ、ハロゲン、ビニル、アリル、無水物またはメルカプト官能基を含み、
各R2は式Z−(G1n−(G2oを有し、ポリマー1分子あたり平均少なくとも1つのR2が存在し、
1は、5〜12個の炭素原子を含む糖類成分であり、
量(n+o)は、1〜10であり、かつ
添え字nまたは添え字oは、0であってよく、
2は5〜12個の炭素原子を含む糖類成分であり、かつG2はさらに有機基または有機ケイ素基で置換されており、
各Zは、独立に、
−R3−NHC(O)−R4−、
−R3−NHC(O)O−R4−、
−R3−NH−C(O)−NH−R4−、
−R3−C(O)−O−R4−、
−R3−O−R4−、
−R3−CH(OH)−CH2−O−R4−、
−R3−S−R4−、
−R3−CH(OH)−CH2−NH−R4−、
−R3−N(R1)−R4−、
−NHC(O)−R4−、
−NHC(O)O−R4−、
−NH−C(O)−NH−R4−、
−C(O)−O−R4−、
−O−R4−、
−CH(OH)−CH2−O−R4−、
−S−R4−、
−CH(OH)−CH2−NH−R4−、
−N(R1)−R4−、
−R3−NHC(O)−、
−R3−NHC(O)O−、
−R3−NH−C(O)−NH−、
−R3−C(O)−O−、
−R3−O−、
−R3−CH(OH)−CH2−O−、
−R3−S−、
−R3−CH(OH)−CH2−NH−、および
−R3−N(R1)−
(式中、各R3および各R4は独立に式(R5r(R6s(R7tの基を含む二価のスペーサであり、
添え字r、sおよびtのうちの少なくとも1つは1であり、
各R5および各R7は独立に1〜12個の炭素原子のアルキル基、または式(R9O)pの基(式中、R9は1〜12個の炭素原子の炭化水素基であり、添え字pは1〜50の範囲の整数であり、各R9Oは同じであってもよいし、または異なっていてもよい)であり、
6は、−N(R8)−(式中、R8は水素、1〜12個の炭素原子のアルキル基、式Z−Xの基またはR3であり、かつ
各Xは、独立にカルボン酸、リン酸エステル、硫酸エステル、スルホン酸エステルまたは第四級アンモニウム基である)である)からなる群から選択される連結基である)
を有する糖類シロキサンポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記糖類−シロキサンポリマーが式(II):
2a1(3-a)SiO−[(R21SiO)j(R12SiO)km−SiR1(3-a)2a
(式中、
添え字jは、0〜10,000の範囲の値を有する整数であり、
添え字kは、0〜10,000の範囲の値を有する整数であり、
添え字mは、前記ポリマーが100万未満の分子量を有するような整数である)
を有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記充填材処理剤が、式(III):
【化1】

(式中、
各添え字uは独立に5〜12であり、
各添え字vは、0〜10,000の範囲の値を有し、
各R10は、水素原子または一価の炭化水素基であり、
各R11は、独立に水素原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基または糖類基であり、
各R12は、独立に一価の炭化水素基であり、
各R13は、独立に二価有機基であり、
各R14は、独立に水素原子または1〜4個の炭素原子の一価の炭化水素基である)
の糖類−シロキサンポリマーを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記充填材処理剤が、式(XIX):
35eee34(3-eee)SiO−[(R3534SiO)ooo(R342SiO)pppqqq−SiR34(3-eee)35eee
(式中、
各R34は、同じであってもよいし、または異なっていてもよく、水素原子または有機基を含み、
各R35は、同じであってもよいし、または異なっていてもよく、かつアミノ官能基を含み、各添え字eeeは、独立に0、1、2、または3であり、
添え字oooは、0〜10,000の範囲の値を有する整数であり、
添え字pppは、0〜10,000の範囲の値を有する整数であり、
添え字qqqは、前記アミノ官能性ポリオルガノシロキサンが100万未満の分子量を有するような整数である)
のアミノ官能性ポリオルガノシロキサンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記アミノ官能性ポリオルガノシロキサンが、
トリメチルシロキシ末端の(ジメチル、メチル(アミノエチルアミノイソブチル)シロキサン;
トリメチルシロキシ末端の(ジメチル、メチル(アミノエチルアミノプロピル)シロキサン;
ジメチル、メチル(アミノエチルアミノイソブチル)シロキシ末端のポリジメチルシロキサン;
ジメチル、メチル(アミノエチルアミノプロピル)シロキシ末端のポリジメチルシロキサン、および
これらの組み合わせ
からなる群から選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記マトリクスが非硬化性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記マトリクスが硬化性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記充填材がマイカ、シリカ、二酸化チタンおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
(i)熱伝導性の充填材と
(ii)マトリクスであって、前記マトリクスは水素結合ができるポリオルガノシロキサンを含み、前記ポリオルガノシロキサンは縮合可能なシリル基を含まないマトリクスと
を含む、グリース組成物。
【請求項12】
前記充填材がアルミニウム、銅、金、ニッケル、パラジウム、白金、銀およびこれらの合金からなる群から選択される、請求項1または請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記充填材が、粒子の表面上に層を有する粒子を含み、前記粒子がアルミニウム、銅、金、ニッケル、パラジウム、白金、銀およびそれらの合金からなる群から選択され、かつ前記層は、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化ニッケル、酸化銀およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1または請求項11の組成物。
【請求項14】
前記充填材が、コアおよび前記コアを囲む外面を含む粒子を含み、前記外面が金属であり、前記コアが銅、中実ガラス、中空ガラス、マイカ、ニッケルおよびセラミック繊維からなる群から選択される、請求項1または請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
前記充填材が、酸化アルミニウム、酸化ベリリウム、窒化ホウ素、酸化マグネシウム、炭化ケイ素、炭化タングステン、酸化亜鉛およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1または請求項11に記載の組成物。
【請求項16】
前記マトリクスが糖類−シロキサンポリマーを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項17】
前記マトリクスが、単位式(I):
(R1a2(3-a)SiO1/2b(R1c2(2-c)SiO2/2d(R2SiO3/2e(R13SiO1/2f(R12SiO2/2g(R1SiO3/2h(SiO4/2i
(式中、
各添え字aは、独立に0、1、2、または3であり、
添え字bは、0以上の値を有し、
各添え字cは、独立に0、1または2であり、
添え字dは、0以上の値を有し、
添え字eは、0以上の値を有し、
量(a+c)が0である場合、添え字eは1以上の値を有し、
量(b+d+e)は、1以上であり、
添え字fは、0以上の値を有し、
添え字gは、0以上の値を有し、
添え字hは、0以上の値を有し、
添え字iは、0以上の値を有し、
各R1は、同じであってもよいし、または異なっていてもよく、水素、1〜12個の炭素原子のアルキル基、有機基または式R3−Qの基を含み、
Qは、エポキシ、シクロエポキシ、一級または二級のアミノ、エチレンジアミン、カルボキシ、ハロゲン、ビニル、アリル、無水物またはメルカプト官能基を含み、
各R2は式Z−(G1n−(G2oを有し、ポリマー1分子あたり平均少なくとも1つのR2が存在し、
1は、5〜12個の炭素原子を含む糖類成分であり、
量(n+o)は、1〜10であり、かつ
添え字nまたは添え字oは、0であってよく、
2は5〜12個の炭素原子を含む糖類成分であり、G2はさらに有機基または有機ケイ素基で置換されており、
各Zは、独立に、
−R3−NHC(O)−R4−、
−R3−NHC(O)O−R4−、
−R3−NH−C(O)−NH−R4−、
−R3−C(O)−O−R4−、
−R3−O−R4−、
−R3−CH(OH)−CH2−O−R4−、
−R3−S−R4−、
−R3−CH(OH)−CH2−NH−R4−、
−R3−N(R1)−R4−、
−NHC(O)−R4−、
−NHC(O)O−R4−、
−NH−C(O)−NH−R4−、
−C(O)−O−R4−、
−O−R4−、
−CH(OH)−CH2−O−R4−、
−S−R4−、
−CH(OH)−CH2−NH−R4−、
−N(R1)−R4−、
−R3−NHC(O)−、
−R3−NHC(O)O−、
−R3−NH−C(O)−NH−、
−R3−C(O)−O−、
−R3−O−、
−R3−CH(OH)−CH2−O−、
−R3−S−、
−R3−CH(OH)−CH2−NH−、および
−R3−N(R1)−、
(式中、
各R3および各R4は独立に式(R5r(R6s(R7tの基を含む二価のスペーサであり、
添え字r、sおよびtのうちの少なくとも1つは1であり、
各R5および各R7は独立に1〜12個の炭素原子のアルキル基、または式(R9O)pの基(式中、R9は1〜12個の炭素原子の炭化水素基であり、添え字pは1〜50の範囲の整数であり、各R9Oは同じであってもよいし、または異なっていてもよい)であり、
6は、−N(R8)−(式中、R8は水素、1〜12個の炭素原子のアルキル基、式Z−Xの基またはR3であり、かつ
各Xは、独立にカルボン酸、リン酸エステル、硫酸エステル、スルホン酸エステルまたは第四級アンモニウム基である)である)からなる群から選択される連結基である)
を有する糖類−シロキサンポリマーを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項18】
前記マトリクスが、式(II):
2a1(3-a)SiO−[(R21SiO)j(R12SiO)km−SiR1(3-a)2a
(式中、
添え字jは、0〜10,000の範囲の値を有する整数であり、
添え字kは、0〜10,000の範囲の値を有する整数であり、
添え字mは、前記ポリマーが100万未満の分子量を有するような整数である)
を有する糖類−シロキサンポリマーを含む、請求項11の組成物。
【請求項19】
前記マトリクスが、式(III):
【化2】

(式中、
各添え字uは独立に5〜12であり、
各添え字vは、0〜10,000の範囲の値を有し、
各R10は、水素原子または一価の炭化水素基であり、
各R11は、独立に水素原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基または糖類基であり、
各R12は、独立に一価の炭化水素基であり、
各R13は、独立に二価有機基であり、かつ
各R14は、独立に水素原子または1〜4個の炭素原子の一価の炭化水素基である)
の糖類−シロキサンポリマーを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項20】
さらに、(iv)安定剤、(v)可塑剤、(vi)増量剤、(vii)接着促進剤、(viii)殺菌剤、(ix)レオロジー添加剤、(x)難燃剤、(xi)色素およびこれらの組み合わせからなる群から選択される付加的な成分をさらに含む、請求項1から請求項7、または請求項11から請求項19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
(1)(i)、(ii)および(iii)を含む成分を合わせ、請求項1に記載の組成物を形成する工程と、
任意に(2)硬化性マトリクスが使用される場合、前記組成物を硬化させる工程と
を含む方法。
【請求項22】
請求項1に記載の組成物を調製する方法であって、
(1)(i)、(ii)および(iii)を含む成分を混合し、これによって前記充填材をそれがある位置で前記充填材処理剤で処理する工程と、
任意に(2)硬化性マトリクスが使用される場合、前記組成物を硬化させる工程と
を含む方法。
【請求項23】
請求項1に記載の組成物を調製する方法であって、
(1)前記充填材を前記充填材処理剤の溶媒溶液と混合する工程と、
(2)前記工程(1)の生成物を前記マトリクスを含む成分と混合する工程と、
任意に(3)前記溶媒を除去する工程と
を含む、方法。
【請求項24】
請求項1に記載の組成物を調製する方法であって、
(1)前記充填材を前記充填材処理剤の溶媒溶液と混合する工程と、
(2)前記溶媒を除去する工程と、
(3)前記工程(2)の生成物を前記マトリクスを含む成分と混合する工程と
を含む、方法。
【請求項25】
放熱材料としての、請求項1から請求項9および請求項11から請求項20のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項26】
デバイスであって、
a)電子構成部品と、
b)放熱材料と、
c)熱分散部材と
を含み、前記放熱材料は、前記電子構成部品の表面から前記熱分散部材の表面まで延在する熱通路に沿って、前記電子構成部品と前記熱分散部材との間に挟まれており、前記放熱材料は請求項1〜9および11〜20のいずれか1項に記載の組成物を含む、デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−519344(P2010−519344A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549582(P2009−549582)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/000777
【国際公開番号】WO2008/103219
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(506143975)ダウ コーニング コーポレーション (19)
【Fターム(参考)】