説明

水素製造装置

【課題】一酸化炭素を除去する触媒反応の反応効率を向上させて一酸化炭素の除去効率を向上させることができる水素製造装置を提供する。
【解決手段】改質器13からの改質ガスに含まれる一酸化炭素を除去するCO除去部15と、水蒸気改質のために改質器13に導入する改質用水によってCO除去部15を冷却する下部水路S4と、CO除去部15に設けられた熱電対61,62と、熱電対61,62によって検出された温度に基づいて、冷却ラインS4を流れる改質用水Wの流量を制御する改質用水制御部65と、を備える。熱電対61,62によって検出される温度に基づいて、改質用水Wの流量を制御するため、CO除去部15を最適な温度に維持し易く、一酸化炭素の除去効率を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素リッチな改質ガスを生成する水素製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、灯油やガソリンなどの水素製造用原料を水蒸気改質して改質ガスを生成し、生成した改質ガスを燃料電池スタックに供給する水素製造装置が開示されている。この種の水素製造装置は、改質触媒を収容する改質器を備えている。改質器内には、燃料ガスと水蒸気とが導入される。改質器内の改質触媒は、バーナなどによって所定の温度まで加熱される。燃料ガス及び水蒸気は、所定の温度まで加熱された改質触媒によって水蒸気改質が促進される。改質器で生成された改質ガス中には、被毒によって発電効率を低下させる一酸化炭素が含まれている。そのため、水素製造装置には、水性シフト反応によって一酸化炭素を低減する変成器と、選択酸化反応によって一酸化炭素を更に低減する選択酸化器とが設けられている。水性シフト反応や選択酸化反応は発熱反応であり、変成器や選択酸化器が高温に成りすぎると反応効率が低下する。そのため、変成器や選択酸化器は冷却水によって適宜冷却されている。
【特許文献1】特開2004−175621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の水素製造装置では、変成器や選択酸化器を最適な温度に保つための制御が不十分であり、水性シフト反応や選択酸化反応といった触媒反応の反応効率の低下につながり易く、一酸化炭素の除去が不十分になる虞があった。
【0004】
本発明は、以上の課題を解決することを目的としており、一酸化炭素を除去する触媒反応の反応効率を向上させて一酸化炭素の除去効率を向上させることができる水素製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る水素製造装置は、水素製造用原料を改質して水素リッチな改質ガスを生成する改質部と、改質部からの改質ガスに含まれる一酸化炭素を水性シフト反応により除去するシフト部と、シフト部からの改質ガスに含まれる一酸化炭素を選択酸化する選択酸化部と、改質のために改質部に導入する改質用水によってシフト部及び選択酸化部を冷却する冷却ラインと、シフト部の温度を検出する第1のセンサ部と、選択酸化部の温度を検出する第2のセンサ部と、第1のセンサ部及び第2のセンサ部によって検出された温度に基づいて、冷却ラインを流動する改質用水の流量を制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0006】
この水素製造装置では、冷却ラインを流動する改質用水によってシフト部及び選択酸化部を冷却し、シフト部及び選択酸化部との熱交換によって加熱された改質用水を改質部に導入できるために効率が良い。さらに、制御部は、第1のセンサ部及び第2のセンサ部によって検出される温度を介してシフト部及び選択酸化部の温度を監視しており、この温度に基づいて、改質用水の流量を制御するため、シフト部及び選択酸化部を最適な温度に維持し易い。その結果として、水性シフト反応や選択酸化反応の反応効率を向上させて一酸化炭素の除去効率を向上させることができる。
【0007】
さらに、改質部に供給される水素製造用原料の供給量は、改質ガスの所望の生成量に応じて決定され、改質部に供給される改質用水の基準供給量は、水素製造用原料の供給量に応じて決定され、制御部は、第1のセンサ部によって検出された温度が第1の閾値以上のとき、または第2のセンサ部によって検出された温度が第2の閾値以上のときには、改質用水の基準供給量に加えて余剰分の改質用水を供給するように、改質用水の流量を制御すると好適である。余剰分の改質用水は改質部で反応せずに通過してしまうため、改質部での反応に対する影響は少なく、さらに、改質用水の基準供給量を安定して維持できるため、改質ガスの生成効率を低下させることなくシフト部及び選択酸化部を効果的に冷却できる。
【0008】
さらに、シフト部は、高温シフト部と、高温シフト部よりも低温での水性シフト反応に適していると共に、高温シフト部よりも改質ガスの流れの下流側に配置された低温シフト部とを有し、第1のセンサ部は、低温シフト部の入口に配置されていると好適である。改質部からの改質ガスは高温状態でシフト部に導入され、シフト部を通過する過程で徐々に温度が下がる。したがって、高温シフト部を改質ガスの流れの上流側に配置し、低温シフト部を下流側に配置することで、水性シフト反応を効率良く行うことができる。さらに、低温シフト部では、入口の温度が最も高くなり、第1のセンサ部を低温シフト部の入口に配置することで、低温シフト部全体の温度を最適な温度に維持し易くなる。その結果として、低温シフト部での水性シフト反応の反応効率を向上できる。
【0009】
さらに、冷却ラインは、選択酸化部に伝熱可能に接続された第1のラインと、シフト部に伝熱可能に接続された第2のラインと、を有し、第1のラインは、第2のラインよりも改質用水の流れの上流側に配置されていると好適である。第1のラインを流れる改質用水は、主として選択酸化部との間で熱交換され、その改質用水の一部は水蒸気になって第2のラインに導入される。したがって、低温の水のみでシフト部を急激に冷却する場合に比べてシフト部での温度分布のばらつきは抑制される。
【0010】
さらに、冷却ラインに設けられた水温検出センサを備え、制御部は、第1のセンサ部及び第2のセンサ部によって検出された温度に加え、水温検出センサによって検出された温度に基づいて、冷却ラインを流動する改質用水の流量を制御すると好適である。水温検出センサによって、冷却ラインを流れる改質用水の温度を監視できる。そして、制御部は、改質用水の温度に基づいて、改質用水の流量を制御するため、シフト部や選択酸化部の温度上昇をより確実に抑えることができる。その結果として、一酸化炭素の除去効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、一酸化炭素を除去するための反応効率を向上させて一酸化炭素の除去効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
図1は本発明に係る水素製造装置を適用した燃料電池システムの概略を示す図である。燃料電池システム1は、水素製造用原料として液体原料を用いて発電を行うものであり、例えば家庭用の電力供給源として採用される。ここでは、液体原料としては、入手が容易であり且つ独立して貯蔵可能であるという観点から灯油を用いている。
【0014】
図1に示されるように、燃料電池システム1は、脱硫器2、第1実施形態に係る水素製造装置(以下、「FPS」という)3A、固体高分子形燃料電池(以下、「PEFC」という)スタック4、インバータ5、及びこれらを収容する筐体6を備えている。
【0015】
脱硫器2は、外部から導入された液体原料を脱硫するものである。この脱硫器2には、ヒータ(不図示)が設けられており、これにより、脱硫器2は、例えば130℃〜140℃まで加熱されるようになっている。
【0016】
FPS3Aは、熱源としてのバーナ9を備える燃焼筒11と、燃焼筒11を囲むように配置され(図2参照)、液体原料を水蒸気改質して水素リッチな改質ガスを生成する改質器(改質部)13と、改質器13から流出する改質ガス中の一酸化炭素を除去する変成器41と選択酸化器44とを備えている。変成器41は上流側に配置され、選択酸化器44は下流側に配置されており、変成器41及び選択酸化器44によってCO除去部15が構成される。
【0017】
図2に示されるように、改質器13は、燃焼筒11の外側で、燃焼筒11と同心に配置された筒状の内胴部17と、内胴部17の外側で、内胴部17と同心に配置された筒状の外胴部19と、を備え、内胴部17及び外胴部19の上部には、液体原料が気化した原料ガスと蒸気化した改質用水とが導入される導入部21が設けられている。なお、燃焼筒11と内胴部17との間には、燃焼筒11からの排ガスG2が上昇する排ガス流路S1が形成されている。排ガスG2は、内胴部17の下部近傍で最も高温であり、排ガス流路S1を上昇する際に改質器13と熱交換されて徐々に冷却される。
【0018】
外胴部19の下部には、上部よりも径が小さくなっている縮径筒部19aが形成されている。内胴部17と外胴部19との間には、原料ガスと水蒸気との水蒸気改質反応を促進して改質ガスG1を生成する改質触媒C1が収容され、縮径筒部19aの下端には、改質触媒C1を支持する環状の多孔板19bが設けられている。改質触媒C1は、貴金属系水蒸気改質触媒であり、ルテニウムを用いている。改質触媒C1の触媒反応に適した温度は550°C〜800°Cである。
【0019】
改質器13内で生成された改質ガスG1は、多孔板19bを抜けて下方に流出する。縮径筒部19a、縮径筒部19aに対面する内筒部17の下部筒部17a及び多孔板19bによって改質ガスの流出部23が形成されている。
【0020】
流出部23の縮径筒部19aの外側には、筒状の仕切壁27が配置されている。仕切壁27は、流出部23の下方に配置された円形のガイド板28の縁に固定されており、ガイド板28は内胴部17の下端に固定されている。仕切壁27の外側には、円筒状の伝熱壁部29が配置され、伝熱壁部29は、改質器13の外胴部19に固定されている。
【0021】
ガイド板28及び仕切壁27によって改質ガスG1の迂回路S2が形成される。すなわち、流出部23から流出した改質ガスG1は、ガイド板28に衝突して流れる方向が変わり、仕切壁27に案内されながら縮径筒部19aの外周面19cに沿って上昇する。その後、改質ガスG1は、仕切壁27の上端を抜けて折り返し、伝熱壁部29の内周面29aに沿って下降する。迂回路S2を流動する改質ガスG1は、仕切壁27に沿って上昇する際に、外胴部19を介して改質触媒C1と熱交換し、改質触媒C1の温度低下を防止する。
【0022】
伝熱壁部29の外側には、伝熱壁部29と同心に配置された筒状の上部水路壁35が設けられている。伝熱壁部29と上部水路壁35との間には、水蒸気改質のための改質用水が流動する上部水路S3が形成される。上部水路S3は、伝熱壁部29を介して改質器13に熱交換(伝熱)可能に接続されている。改質用水Wは、上部水路S3を上昇し、改質器13を介してバーナ9の熱によって加熱され、高温の水蒸気として改質器13の導入部21に供給される。なお、改質器13から流出して迂回路S2を流れる改質ガスG1は、伝熱壁部29を介して改質用水Wとの間で熱交換され、冷却される。
【0023】
また、FPS3Aは、改質器13の下方に隣接して配置されると共に、改質器13からの改質ガスG1に含まれている一酸化炭素を除去するCO除去部15を備えている。CO除去部15は、水性シフト反応によって改質ガスG1から一酸化炭素を低減する変成器(シフト部)41と、変成器41からの改質ガスG1と酸素含有ガスとを混合する混合チャンバ42と、混合チャンバ42からの改質ガスG1(混合ガス)を冷却する冷却チャンバ部43と、冷却チャンバ部43で冷却された改質ガスG1(混合ガス)中の一酸化炭素を選択酸化する選択酸化器(選択酸化部)44とを備えている。CO除去部15について、更に詳しく説明する。
【0024】
CO除去部15は、略円柱状の第1領域A1と、第1領域A1の外周側に位置し、第1領域A1と同心の環状領域である第2領域A2と、第2領域A2の外周側に位置し、第1領域A1と同心の環状領域である第3領域A3を備える。第3領域A3は、有底円筒状の伝熱筒54によって囲まれている。
【0025】
改質器13からの改質ガスG1は、まず、第2領域A2を通って下降した後、内側の第1領域A1を上昇する。第1領域A1の上部には、第2領域A2を跨ぐようにして第1領域A1と第3領域A3とを連絡する連絡流路Rが形成されており、第1領域A1の上部に達した改質ガスG1は、連絡流路Rを通って第3領域A3に達する。その後、改質ガスG1は、第3領域A3を下降する。以下、改質ガスG1の流れに沿って第2領域A2、第1領域A1及び第3領域A3の順番で説明する。
【0026】
第2領域A2において、改質ガスG1の流れを基準にした場合の上流側には、環状の高温シフト部47が配置され、下流側には、環状の低温シフト部49が配置されている。改質器13からの改質ガスG1は、600°C以上の非常に高い温度状態であり、高温シフト部47には、高温での水性シフト反応の促進に有利な高温シフト触媒(「HTS」ともいう)C2が収容されている。高温シフト触媒C2としては、Fe−Crの混合酸化物を用いる。高温シフト触媒C2の触媒反応の好適温度は、300°C〜500°Cである。
【0027】
低温シフト部49には、第1シフト触媒よりも低い温度での水性シフト反応の促進に適した低温シフト触媒(「LTS」ともいう)C3が収容されている。低温シフト触媒C3としては、Zn−Cuの混合酸化物を用いる。低温シフト触媒C3の触媒反応の好適温度は、200°C程度である。
【0028】
高温シフト部47及び低温シフト部49によって変成器41が構成される。変成器41による水性シフト反応により、改質ガスG1中に含まれる一酸化炭素濃度は1%程度にまで低減される。特に、改質器13からの改質ガスG1は高温状態で変成器41に導入され、変成器41を通過する過程で徐々に温度が下がる。したがって、高温シフト部47を改質ガスG1の流れの上流側に配置し、低温シフト部49を下流側に配置することで、水性シフト反応を効率良く行うことができる。
【0029】
変成器41を下方に抜けた改質ガスG1は、内側の第1領域A1に流入する。第1領域A1には、改質ガスG1が上昇する中央流路51と、中央流路51の上端に接続された混合チャンバ42とが設けられている。混合チャンバ42は、改質ガスG1と酸素含有ガスとを混合する。混合チャンバ42には、第2領域A2の高温シフト部47を貫通する連絡管52が接続されており、連絡管52によって、第1領域A1と第3領域A3とを連絡する連絡流路Rが形成されている。
【0030】
第3領域A3には、連絡管52に接続された環状の冷却チャンバ部43と、冷却チャンバ部43の下方に配置された環状の選択酸化器44とが設けられている。選択酸化器44には、選択酸化反応を促進する選択酸化触媒C4が収容されている。選択酸化触媒C4としては、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、銅、銀、金などを含有する触媒を用いる。選択酸化触媒C4の触媒反応の好適温度は、150°C〜160°Cである。選択酸化器44では、改質ガスG1(混合ガス)中の一酸化炭素濃度は、10ppm以下にまで低減される。選択酸化器44の下部には、一酸化炭素が低減された後の改質ガスG1が流出する改質ガス流出部53が設けられている。改質ガス流出部53は、PEFCスタック4に連絡する改質ガス供給ラインL3(図1参照)に接続されている。
【0031】
CO除去部15は、第3領域A3を囲む円筒状の伝熱筒54を有し、伝熱筒54の外側には、伝熱筒54と同心の筒状の下部水路壁55が配置されている。伝熱筒54と下部水路壁55との間には、水蒸気改質に用いられる改質用水Wが流動する下部水路(冷却ライン)S4が形成されている。下部水路S4は、選択酸化器44と伝熱可能に接続された第1のラインS4aと、冷却チャンバ部43を介して高温シフト部47に伝熱可能に接続された第2のラインS4bとを有する。改質用水Wの流れを基準にした場合に第1のラインS4aは上流側に配置されており、第2のラインS4bは下流側に配置されている。第2のラインS4bの下部には、改質用水導入部55aが設けられている。
【0032】
常温で改質用水導入部55aに導入された改質用水は、第1のラインS4aを流れる際に選択酸化器44と熱交換される(図4参照)。選択酸化器44では発熱反応が生じるが、選択酸化器44は、改質用水Wによって冷却されることで好適な温度に維持される。一方で、第1のラインS4aを流れる改質用水Wは、選択酸化器44で加熱されることで一部が蒸気化して第2のラインS4bに流入する。
【0033】
変成器41でも発熱反応が生じる。変成器41の高温シフト部47は、第2のラインS4bを流れる改質用水Wとの間で熱交換され、好適な温度に維持される。第1のラインS4aから第2のラインS4bに流入した改質用水Wの一部は水蒸気になっている。したがって、低温の水のみで高温シフト部47を急激に冷却する場合に比べて高温シフト部47での温度分布のばらつきは抑制される。なお、低温シフト部49は、選択酸化器44を介して間接的に改質用水Wで冷却され、好適な温度に維持される。
【0034】
下部水路S4は、連絡水路S5を介して下流側に配置された上部水路S3に接続されている。連絡水路S5は、改質器13とCO除去部15とを連絡する改質ガス連絡路S6に熱交換可能に接触している。改質ガス連絡路S6を流下する改質ガスG1は、600°C以上にもなっている。連絡水路S5を流動する改質用水は、高温シフト部47の高温シフト触媒C2に適した温度にまで改質ガスG1を冷却する。連絡水路S5を通過した改質用水Wは、上部水路S3で更に加熱され、高温状態のまま改質器13の導入部21に導入される。
【0035】
改質用水Wは、CO除去部15及び改質器13によって加熱され、高温の水蒸気として改質器13の導入部21に導入されるので、改質用水Wを加熱するための他の熱源、例えばヒータは不要である。さらに、下部水路S4を流れる改質用水WによってCO除去部15を冷却できるので、CO除去部15を冷却するための他の手段が不要であり、エネルギー効率が高い。
【0036】
下部水路S4には、改質用水導入部55aを介して改質用水供給ラインL21が接続されており、改質用水供給ラインL21には水タンク20(図1参照)が接続され、水タンク20には改質用水補充ラインL22が接続されている。改質用水供給ラインL21上には、改質器13に改質用水Wを送り込む移送ポンプ43が設けられている。
【0037】
変成器41には温度を検出するための第1の熱電対(第1のセンサ部)61が設けられている。また、選択酸化器44には温度を検出するための第2の熱電対(第2のセンサ部)62が設けられている。また、下部水路S4には温度を検出するための第3の熱電対(水温検出センサ)63が設けられている。第1の熱電対61、第2の熱電対62及び第3の熱電対63は、改質用水制御部(制御部)65に電気信号を入力可能に接続されている。改質用水制御部65は、改質用水供給手段である移送ポンプ43に信号送受信可能に接続されており、移送ポンプ43を駆動制御する。
【0038】
改質用水制御部65は、第1の熱電対61、第2の熱電対62及び第3の熱電対63によって検出された温度によって、移送ポンプ43による改質用水Wの流量を制御し、変成器41、選択酸化器44の温度を各触媒反応に適した温度になるように制御している。その結果として、一酸化炭素の除去を促進する触媒反応の反応効率を向上させて一酸化炭素の除去効率を向上させることができる。
【0039】
特に、改質用水制御部65は、第1の熱電対61によって変成器41の温度を監視でき、第2の熱電対62によって選択酸化器44の温度を監視できるので、変成器41や選択酸化器44を最適な温度に維持し易い。その結果として、水性シフト反応や選択酸化反応の反応効率を向上させて一酸化炭素の除去効率を向上させることができる。
【0040】
また、図2に示されるように、第1の熱電対61は、低温シフト部49の入口に配置されている。低温シフト部49の温度は入口で最も高くなるため、低温シフト部49全体の温度を高温シフト部47よりも低い最適な温度に維持し易くなる。その結果として、低温シフト部49での水性シフト反応の反応効率を向上でき、一酸化炭素の除去効率を向上させることができる。また、第2の熱電対62は、選択酸化器44の入口に配置されている。選択酸化器44の温度は、選択酸化器44の入口で最も高くなる。選択酸化器44の入口に第2の熱電対62を配置することで、選択酸化器44での選択酸化反応の反応効率を向上でき、一酸化炭素の除去効率を向上させることができる。
【0041】
また、第3の熱電対63によって下部水路S4を流れる改質用水の温度を監視できる。したがって、改質用水制御部65は、改質用水Wの温度に基づいて、改質用水Wの流量を制御でき、変成器41や選択酸化器44の温度上昇をより確実に抑えることができる。その結果として、一酸化炭素の除去効率を向上させることができる。特に、第3の熱電対63は下部水路S4の第2のラインS4bに配置されており、選択酸化器44に加熱された後の改質用水Wの温度を監視できる。その結果として、選択酸化器44に対する冷却効果が十分であったか否かを精度良く監視でき、選択酸化の反応効率を向上でき、一酸化炭素の除去効率を向上させることができる。
【0042】
図1に示されるように、PEFCスタック4は、複数の電池セル(不図示)が積み重ねられて構成されており、FPS3Aで得られた改質ガスG1を用いて発電してDC電流を出力する。電池セルは、アノードと、カソードと、アノード及びカソード間に配置された電解質である高分子のイオン交換膜とを有しており、アノードに改質ガスG1を導入させると共に、カソードに空気を導入させることで、各電池セルにおいて電気化学的な発電反応が行われることになる。
【0043】
インバータ5は、出力されたDC電流をAC電流に変換する。筐体6は、その内部に脱硫器2、FPS3A、PEFCスタック4及びインバータ5をモジュール化して収容する。
【0044】
また、燃料電池システム1は、液体原料を筐体6の外部からFPS3Aに導入するための液体原料ラインL1を備えている。液体原料ラインL1上には、脱硫器2が設けられている。液体原料ラインL1の脱硫器2よりも下流側は分岐しており、一方は、液体原料を改質器13に導入する液体原料ラインL11となり、他方は、液体原料をバーナ9に供給する液体原料ラインL12となっている。
【0045】
次に、CO除去部15を冷却するための改質用水の流量制御について図3を参照して説明する。図3は、改質用水の流量制御を行う動作手順を示すフローチャートである。なお、図3では、ステップをSとして略記している。
【0046】
改質用水制御部65は、第1の熱電対61によって検出された変成器41の温度Ts、第2の熱電対62によって検出された選択酸化器44の温度Tp、第3の熱電対63によって検出された改質用水Wの温度Twをそれぞれ取得する(ステップS1)。
【0047】
改質用水制御部65は、改質用水Wの温度Twが所定の閾値(第3の閾値)TW0未満であるか否か(ステップS2)、選択酸化器44の温度Tpが所定の閾値(第2の閾値)TP0未満であるか否か(ステップS3)、変成器41の温度Tsが所定の閾値(第1の閾値)TS0未満であるか否か(ステップS4)を判断し、総ての温度Tw,Tp,Tsがそれぞれ閾値TW0,TP0,TS0未満の場合には、ステップS1に戻って各温度Tw,Tp,Tsを再度取得する。
【0048】
一方で、改質用水制御部65は、各温度Tw,Tp,Tsのうち、いずれか一つでも閾値TW0,TP0,TS0以上のときには、移送ポンプ43の駆動を制御し、改質用水Wの流量を基準供給量に加えて例えばP%だけ余剰分の改質用水Wが改質器13に供給されるようにして、その状態をT秒だけ維持する(ステップS5)。改質用水Wの基準供給量は、液体原料の供給量に応じて決定され、液体原料の供給量は、FPS3Aでの改質ガスG1の所望の生成量に応じて決定される。T秒の経過後、改質用水制御部65は、移送ポンプ43の駆動を制御し、改質用水Wの流量を規定量に戻し、その状態でT秒だけ維持し(ステップS6)、その後にステップS1に戻って各温度Ts,Tp,Twを取得して後続の各処理を繰り返し実行する。
【0049】
以上のFPS3Aによれば、下部水路S4を流れる改質用水Wによって変成器41及び選択酸化器44を冷却し、変成器41及び選択酸化器44との熱交換によって加熱された改質用水Wを改質器13に導入できるために効率が良い。さらに、改質用水制御部65は、第1の熱電対61及び第2の熱電対62によって検出される温度Ts,Tpを介して変成器41及び選択酸化器44の温度を監視しており、この温度Ts,Tpに基づいて、改質用水Wの流量を制御するため、変成器41及び選択酸化器44を最適な温度に維持し易い。その結果として、一酸化炭素を除去する触媒反応の反応効率を向上させて一酸化炭素の除去効率を向上させることができる。
【0050】
さらに、本実施形態では、各温度Tw,Tp,Tsのうち、いずれか一つでも閾値TW0,TP0,TS0以上のときには、改質用水Wの流量を基準供給量に加えて例えばP%だけ余剰分の改質用水Wが改質器13に供給されるようにして、CO除去部15を冷却する。この余剰分の改質用水Wは改質器13で反応せずに通過してしまうため、改質器13での反応に対する影響は少なく、さらに、改質用水Wの基準供給量を安定して維持できるため、CO除去部15を効率的に冷却できる。
【0051】
(第2実施形態)
次に、図5を参照して、第2実施形態に係る水素製造装置(FPS)3Bについて説明する。なお、FPS3Bは、第1実施形態に係るFPS3Aに比べて第1の熱電対(第1のセンサ部)71及び第2の熱電対(第2のセンサ部)72の配置が異なる。従って、FPS3Bに関して、FPS3Aとの相違点を中心に説明し、同様の要素や構造については、同一の符号を記して説明を省略する。
【0052】
低温シフト部49の温度を検出するための第1の熱電対71は、低温シフト部49の入口ではなく、低温シフト部49の上下方向の中央付近に配置されている。また、選択酸化器44の温度を検出するための第2の熱電対72は、選択酸化器44の入口ではなく、入口よりも僅かに下がった位置に設けられている。
【0053】
以上の、FPS3Bの改質用水制御部65は、第1の熱電対71、第2の熱電対72及び第1実施形態と同様の第3の熱電対63によって検出される温度を介してCO除去部15の温度を監視しており、この温度に基づいて、改質用水Wの流量を制御するため、CO除去部15を好適な温度に維持し易く、一酸化炭素を除去する触媒反応の反応効率を向上させて一酸化炭素の除去効率を向上させることができる。
【0054】
(第3実施形態)
次に、図7を参照して、第3実施形態に係る水素製造装置(FPS)3Cについて説明する。なお、FPS3Cは、第1実施形態に係るFPS3Aに比べて第2の熱電対(第2のセンサ部)81及び第3の熱電対(水温検出センサ)82の配置が異なる。従って、FPS3Cに関して、FPS3Aとの相違点を中心に説明し、同様の要素や構造については、同一の符号を記して説明を省略する。
【0055】
選択酸化器44の温度を検出するための第2の熱電対81は、選択酸化器44の入口ではなく、選択酸化器44の出口に配置されている。また、改質用水Wの温度を検出するための第3の熱電対(水温検出センサ)82は、下部水路S4の第1のラインS4aに設けられている。
【0056】
以上の、FPS3Cの改質用水制御部65は、第1実施形態と同様の第1の熱電対61、及び第2の熱電対81と第3の熱電対82とによって検出される温度を介してCO除去部15の温度を監視しており、この温度に基づいて、改質用水Wの流量を制御するため、CO除去部15を好適な温度に維持し易く、一酸化炭素を除去する触媒反応の反応効率を向上させて一酸化炭素の除去効率を向上させることができる。
【0057】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0058】
例えば、上記実施形態では、液体原料として灯油を用いたが、ガソリン、ナフサ、軽油、メタノール、エタノール、DME(ジメチルエーテル)、バイオマスを利用したバイオ燃料を用いてもよい。なお、この場合には、脱硫器(脱硫方法)及び改質器(改質方法)は、用いる液体原料の特性に応じたものとされる。
【0059】
改質触媒に用いられる貴金属系水蒸気改質触媒としては、ニッケル、コバルト、鉄、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、白金などのVII属金属を用いることもできる。また、高温シフト触媒としては、Zn−Cuの混合酸化物を用いたり、白金、ルテニウム、イリジウムなどの貴金属を含有する触媒を用いたりしても良い。また、低温シフト触媒としては、Fe−Crの混合酸化物を用いたり、白金、ルテニウム、イリジウムなどの貴金属を含有する触媒を用いたりしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1実施形態に係る水素製造装置を適用した燃料電池システムの概略を示す図である。
【図2】第1実施形態に係る水素製造装置の概略を示す図である。
【図3】改質用水の流量制御の動作手順を示すフローチャートである。
【図4】改質用水とCO除去部との間の熱交換の流れを模式的に示す図である。
【図5】第2実施形態に係る水素製造装置の概略を示す図である。
【図6】第3実施形態に係る水素製造装置の概略を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
3A,3B,3C…水素製造装置、13…改質器(改質部)、41…変成器(シフト部)、44…選択酸化器(選択酸化部)、47…高温シフト部、49…低温シフト部、61,71…第1の熱電対(第1のセンサ部)、62,72,81…第2の熱電対(第2のセンサ部)、63,82…第3の熱電対(水温検出センサ)、65…改質用水制御部(制御部)、G1…改質ガス、W…改質用水、S4…下部水路(冷却ライン)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素製造用原料を改質して水素リッチな改質ガスを生成する改質部と、
前記改質部からの前記改質ガスに含まれる一酸化炭素を水性シフト反応により除去するシフト部と、
前記シフト部からの前記改質ガスに含まれる一酸化炭素を選択酸化する選択酸化部と、
前記改質のために前記改質部に導入する改質用水によって前記シフト部及び前記選択酸化部を冷却する冷却ラインと、
前記シフト部の温度を検出する第1のセンサ部と、
前記選択酸化部の温度を検出する第2のセンサ部と、
前記第1のセンサ部及び前記第2のセンサ部によって検出された温度に基づいて、前記冷却ラインを流動する前記改質用水の流量を制御する制御部と、を備えることを特徴とする水素製造装置。
【請求項2】
前記改質部に供給される前記水素製造用原料の供給量は、前記改質ガスの所望の生成量に応じて決定され、
前記改質部に供給される前記改質用水の基準供給量は、前記水素製造用原料の供給量に応じて決定され、
前記制御部は、前記第1のセンサ部によって検出された温度が第1の閾値以上のとき、または第2のセンサ部によって検出された温度が第2の閾値以上のときには、前記改質用水の基準供給量に加えて余剰分の前記改質用水を供給するように、前記改質用水の流量を制御することを特徴とする請求項1記載の水素製造装置。
【請求項3】
前記シフト部は、高温シフト部と、前記高温シフト部よりも低温での水性シフト反応に適していると共に、前記高温シフト部よりも前記改質ガスの流れの下流側に配置された低温シフト部とを有し、
前記第1のセンサ部は、前記低温シフト部の入口に配置されていることを特徴とする請求項1または2記載の水素製造装置。
【請求項4】
前記冷却ラインは、前記選択酸化部に伝熱可能に接続された第1のラインと、前記シフト部に伝熱可能に接続された第2のラインと、を有し、
前記第1のラインは、前記第2のラインよりも前記改質用水の流れの上流側に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の水素製造装置。
【請求項5】
前記冷却ラインに設けられた水温検出センサを更に備え、
前記制御部は、前記第1のセンサ部及び前記第2のセンサ部によって検出された温度に加え、前記水温検出センサによって検出された温度に基づいて、前記冷却ラインを流動する改質用水の流量を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の水素製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−91187(P2009−91187A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−262495(P2007−262495)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【出願人】(500561595)荏原バラード株式会社 (68)
【Fターム(参考)】