説明

水蒸気による燃焼排ガス改質化小型焼却炉

【課題】 焼却によって大気中に排出される煤塵や塩化水素ガス・亜硫酸ガス、ダイオキシン類その他の有害物質の量を削減するため、従来の乾式捕集方式をアルカリ性水蒸気による湿式捕集方式とし、加えて酸性ガスを中和反応により無害化塩生成物とした消煙・消臭・省エネルギー小型焼却炉である。
【解決手段】 小型焼却炉の再燃焼室2内あるいは煙道内に水冷式焼却炉の缶体冷却水より発生する水蒸気をアルカリ反応材19を介して送り込むことにより高温加熱された状況下において、燃焼排ガスを水蒸気の微粒子と再燃焼室2内を800℃以上の高温に保持することによる改質化により洗煙・混合反応させ、煤塵や付着した有害物を湿式に取り除くことで消煙・消臭性能が高まり、再燃焼バーナー11自体の着火頻度を下げることができ省エネルギーにも役立つものである。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【産業上の利用分野】
【0001】
本発明は、高温加熱された、再燃焼室あるいは煙道内において燃焼排ガスと水蒸気を混合反応させる改質化により、大気中に排出される煤塵や塩化水素ガス・亜硫酸ガス、ダイオキシン類その他の有害物質の量をアルカリ性水蒸気により湿式洗煙での削減と酸性ガスとの中和反応においての無害化塩生成物とするための抑制装置すなわち消煙・消臭・省エネルギー小型焼却炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の小型焼却炉では、塩化ビニールやゴム・シリコンなどは、煙や臭い・酸性ガスの発生から焼却不適物として焼却しないことが通例となっていた。しかしながら多くの焼却作業現場では、分別する手間を惜しむためこのような焼却不適物が混入焼却されているのが現状である。小型焼却炉に排ガスの洗煙設備などを付加した場合、設備コストが著しく高価なものとなり、市場の形成が成り立たないものになるばかりか、不法投棄や不法焼却が益々拡大することが懸念される。
小型焼却炉の予算の内で、これらの焼却不適物を焼却可能とするため、再燃焼室内あるいは煙道内に水蒸気を送り込むことにより、焼却ガスの洗煙を行ない排ガス中の煤塵や付着した有害物を取り除くことに着目した。
これまでの水冷式小型焼却炉では、焼却物燃焼時に炉体を冷やすための冷却水の沸騰により発生する水蒸気を排出させるにすぎなかった。そのため、煙突とは別の蒸気抜筒より排出される水蒸気が白煙のように見えるため、近隣の住民より誤解され焼却炉の印象を悪くさせていた。また、燃焼排ガス中の煤塵やダイオキシン類その他の有害物質は、乾式の集塵方式では、捕集効率に限界があり、捕集した飛灰等も掻き出す際に風により大気中に散乱してしまうため結局は、環境に与える影響も大きいものであった。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明では、焼却物燃焼時に缶体を冷やすための冷却水の沸騰により発生する水蒸気を小型焼却炉本体背面煙道口に接続された再燃焼室2に小型焼却炉本体上部の水蒸気溜室13よりの水蒸気ダクト6を通じ、再燃焼室2内に付き出した水蒸気分散ノズル12により燃焼排ガスと均一に混合反応させるものである。
【0004】
この場合、再燃焼室に取り付けられた再燃焼バーナー11及び温度センサー8により800℃以上の高温を常に維持するよう温度調節制御を行い燃焼排ガスとともに排出される煤塵、塩化水素ガス・亜硫酸ガス、ダイオキシン類その他の有害物質を取り除く改質効果を高めている。
【0005】
この水蒸気ダクト6には、アルカリ反応材19が取付けられており、水蒸気は、アルカリ性を帯びて、再燃焼室2あるいは煙道に送り込まれ燃焼排ガス中の塩化水素ガスや亜硫酸ガスなどの酸性ガスを中和反応させている。
アルカリ反応材は、取替式となっており、定期的に取り替えることにより、アルカリ反応性を維持するものである。
【0006】
加え再燃焼室2では、燃焼排ガス中の煤塵・ダイオキシン付着物などが、水蒸気による湿式捕集されており、乾式の集塵方式では、得られなかった捕集が可能となった。また、改質化された改質ガス中の煤塵・ダイオキシン付着物については、再燃焼室2の後方に接続されたサイクロン式集塵により乾式捕集されるという二重の集塵方式を有するものである。
【0007】
燃焼排ガスと水蒸気の洗煙・混合反応により捕集された煤塵や、塩化水素ガス・亜硫酸ガス、ダイオキシン類その他有害物質あるいは中和反応による例えば塩化カルシウムや硫化カルシウムなどの無害化された塩生成物は、再燃焼室2下部に堆積される。この堆積物は、水蒸気により湿潤しており、取り出す際に、風で大気に排出される恐れはない。取り出しについては、湿潤飛灰取出口16より行なう。
【0008】
また、再燃焼室2の後方には、アルカリ反応材成形品が設置されており、再燃焼室2前方でのアルカリ水蒸気による湿式中和反応で反応しきれなかった酸性ガスを更に中和反応させるものとしている。
【0009】
さらに、水蒸気による洗煙・混合反応効果は、ダイオキシン類の再合成温度である350℃前後をそれ以下に急速冷却にするため、ダイオキシン類の再合成を抑制することができる。
【0010】
炉体を冷やすための冷却水すなわち水蒸気分を補う機能としては小型焼却炉上部にある給水口5に水道ホースを取付け、シスタンク内18に設けたボールタップ栓により、常に一定量の水量が確保できるようになっている。更に、このシスタンク内18には、水位センサーがあり、規定の水量以下となった場合、制御盤に電気信号を送り、主燃焼室用送風機9、再燃焼バーナー11、排気用送風機15を強制的に停止させそれ以上の炉温の上昇を防ぐ安全装置を備えている。
【0011】
また、主燃焼室1では、小型焼却炉背面部下部に取付けられたエアーチャンバー10及び主燃焼室用送風機9により燃焼用空気を炉内に設けられた多数のエアーノズル20を介して供給させ過酸化状態での燃焼を行うことにより再燃焼室2内での燃焼排ガスと水蒸気との混合反応を促進させている。なおエアーチャンバー10には、風量を調節可能な風量ダンパーが備わっている。
【0012】
ダイオキシン類の発生の原因のひとつとされている焼却物燃焼時の投入扉の開閉による炉内の温度の低下については、二重扉方式の外気遮断投入装置3の使用により温度低下することなく焼却物の追加投入が可能であるので、主燃焼室1内の温度は、常に高温に維持されている。
【0013】
燃焼排ガスと水蒸気の混合反応については、再燃焼室2の後方に接続されたサイクロン方式集塵室3上部に取付けられた排気用送風機15による誘引力により、混合反応排ガスが主燃焼室1に逆流することなく安定した混合反応が得られる。なお、水蒸気量が多い場合には、水蒸気溜室13に設けられた水蒸気調節バルブ17を開放することにより余剰の水蒸気を送り込み過ぎないようにされている。
【発明の効果】
【0014】
現状の廃棄物の焼却においては、種々雑多な焼却物が混ざり合い、例えば塩化ビニールだけを取り出して分別することは不可能なことである。また、焼却不適物の分別にかける手間を惜しみ、種々雑多を一束に焼却することが行われている。
本発明は、この現状を踏まえ、分別することなく種々雑多な焼却物を燃焼できることを可能にしたものである。複雑な機構・装置では、小型焼却炉の価格帯が著しく高価となるため、水冷式小型焼却炉のただ大気中に排出されていた水蒸気を利用するという簡便な原理で、広く一般に普及されるものとできた。
本発明によれば、焼却物燃焼時に缶体を冷やすための冷却水の沸騰により発生する水蒸気を再燃焼室内あるいは煙道内に送気し、燃焼排ガスの洗煙・混合反応をさせ燃焼排ガスとともに排出される煤塵や塩化水素ガス・亜硫酸ガス、ダイオキシン類その他の有害物質を取り除くものである。これらの酸性ガスは、アルカリ反応材を通過させた、アルカリ性を帯びた水蒸気と中和反応をして無害なものとしている。その洗煙捕集された堆積物は、水蒸気により湿潤しており、取り出す際に、大気中に排出される恐れはない。更に、燃焼排ガスを水蒸気により急速に冷却するためダイオキシン類の再合成を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】水冷式燃焼排ガス改質化小型焼却炉の外観及び構造を示した側面図である。
【図2】水冷式燃焼排ガス改質化小型焼却炉の外観及び構造を示した背面図である。
【符号の説明】
【0016】
1 主燃焼室
2 再燃焼室
3 サイクロン式集塵室
4 外気遮断投入装置
5 給水口
6 水蒸気ダクト
7 水冷層
8 温度センサー
9 主燃焼室用送風機
10 エアーチャンバー
11 再燃焼バーナー
12 水蒸気分散ノズル
13 水蒸気溜室
14 煙突
15 排気用送風機
16 湿潤飛灰取出口
17 水蒸気調整用バルブ
18 シスタンク
19 アルカリ反応材
20 エアーノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小型焼却炉の再燃焼室内あるいは煙道内に水冷式焼却炉の缶体冷却水より発生する水蒸気を送り込むことにより燃焼排ガスの洗煙を行ない、排ガス中の煤塵や付着した有害物を湿式に取り除くと同時に、バーナーで高温加熱された再燃焼室中で熱分解させ、無害化するものである。すなわち燃焼排ガスの改質化であり、従来の小型焼却炉では成し得なかった消煙・消臭を可能とした発明である。また、800℃を超える燃焼排ガスと水蒸気との混合反応は、排ガスそのものの性質を変えるものでもあり、これまで困難とされてきた塩化ビニールやゴム・シリコンなどの混ざり込む廃棄物の焼却を可能とした原理でもある。この水蒸気は、アルカリ反応材を通過させることによりアルカリ性を帯びており、再燃焼室あるいは煙道内において燃焼排ガス中の塩化水素ガスや亜硫酸ガスなどの酸性ガスを中和させるものである。更に、消煙・消臭性能が高まったことにより、再燃焼バーナー自体の着火頻度を下げることができ、燃料油の高騰が続く中、従来の直接加熱式の熱分解型に比べ省エネルギー型の小型焼却炉の発明といえる。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−139002(P2008−139002A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−357014(P2006−357014)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(592114068)株式会社大東 (1)
【Fターム(参考)】