説明

水薬調剤装置

【課題】水薬調剤装置において、各段階における液面レベルの推移を容易に把握できるようにする。
【解決手段】水薬を投薬瓶へ注入した後に、投薬瓶を撮像し画像が取得されるようにする。段階的に取得された複数の容器画像を水平方向に並べることにより、監査用画像64が生成される。監査用画像64によれば液面レベルの推移を容易に認識することができ、調剤エラーが発生してもそれがどの段階でどのように発生したのかを容易に認識できる。監査用画像64上にはスケール68がグラフィックとして表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水薬調剤装置に関し、特に、調剤結果を監査するための画像処理に関する。
【背景技術】
【0002】
水薬調剤装置は、病院の薬剤部、処方箋薬局等において、薬剤師による水薬の調剤を支援するための装置である。具体的には、例えば特許文献1に記載されているように、処方箋の内容に従って水薬を順番に選定し、それらを投薬瓶(投薬容器であり、処方瓶、調剤瓶とも称される)に順次注入する自動調剤装置である。本願明細書において、水薬は、液状の薬あるいはそれに相当するものを意味し、例えばシロップのような粘性の高い液体が含まれる。
【0003】
【特許文献1】特開2007−244632号公報
【特許文献2】特開2006−187406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
調剤結果の監査は、薬剤師又は医師によってなされなければならないところ、従来の水薬調剤装置において調剤の各段階を確認しつつ最終的な調剤結果を簡便に監査することは困難であった。なお、特許文献2には、処方された薬(錠剤)をカメラで撮影し、それを調剤履歴として残すことが記載されているが、水薬液面レベルの監視に関わる事項については記載されていない。
【0005】
本発明の目的は、水薬の調剤結果の監査を支援できるようにすることにある。
【0006】
本発明の他の目的は、複数の水薬を段階的に投薬瓶に注入する場合に、各注入段階ごとに注入結果を評価できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数の水薬容器から透明性を有する投薬容器へ複数の水薬を段階的に注入する調剤機構と、前記複数の水薬の段階的な注入に際して前記投薬容器を段階的に撮像し、これにより複数の容器画像を取得する撮像手段と、前記段階的に撮像された複数の容器画像を並べて合成することにより監査用画像を生成する画像処理手段と、を含むことを特徴とする水薬調剤装置に関する。
【0008】
上記構成によれば、投薬容器に対して複数の水薬を段階的に注入して調剤が行われる過程で、各水薬の注入後に投薬容器が撮像され、容器画像が取得される。容器画像は投薬容器における液面レベルを特定可能なものである。このため投薬容器は透明性を有するものとして構成されるのが望ましい。容器画像は望ましくは投薬容器を水平方向から撮像することによって取得され、液面レベルを特定可能であれば、投薬容器の全体画像ではなく部分画像であってもよい。全体画像を後処理によって切り出して部分画像を生成するようにしてもよい。段階的に撮像された複数の容器画像を並べれば、液面レベルの推移(階段状の変化)を容易に認識可能である。すなわち、そのような画像配列を有する監査用画像を観察することによって、各注入段階において水薬の注入が適切に行われたことを確認でき、万が一、注入不良が生じた場合にも、どの段階でどのような現象が生じたのかを容易に特定可能である。最終的な監査用画像だけを表示するようにしてもよいし、複数の容器画像の合成を繰り返しながら各合成結果をその都度表示するようにしてもよい(表示される監査用画像が段階的に成長することになる)。後者によれば調剤の進行過程において段階的に確認を行える。各容器画像は白黒画像として構成されてもよいし、カラー画像として構成されてもよい。カラー画像とすれば、注入された水薬の色を確認できるという利点がある。監査用画像によれば、液面レベルの推移を確認できる他、泡立ちの有無や程度も確認できる。投薬容器に目盛りが設けられている場合にその目盛りも含めて画像化されるようにしてもよい。液面レベルを明瞭に表示するには、撮像手段から見て撮像対象としての投薬容器の反対側に光源を設けるようにするのが望ましい。あるいは、撮像側に光源を設けることもできる。撮像手段は撮像ポジションに固定的に設置するようにしてもよいし、撮像手段が投薬容器と共にあるいはそれとは別に移動するように構成してもよい。複数の分注ポジションが設定されている場合、各分注ポジションに個別的に撮像手段を設けることもできる。監査用画像において最初の容器画像は分注前の空容器の画像であってもよい。この構成によれば初期状態が適正なものであることを確認できる。監査用画像は、ユーザーの目視観察のために表示されるが、それとは別に記録されてもよい。これは監査用画像を分注履歴データとして保存しておくものである。また、監査用画像(あるいはそれを構成する部分画像としての容器画像)を自動的な画像解析の対象とし、液面レベルが適正か否かを自動的に評価、判定するするようにしてもよい。
【0009】
望ましくは、前記画像処理手段は、前記複数の容器画像の高さを揃えつつ前記複数の容器画像を投薬順に従って水平方向に並べることにより前記監査用画像を生成する。この構成によれば、それぞれの容器画像における縦軸の位置が一致するので各液面レベルを直接比較することが容易となる。容器画像間での縮尺の一致を前提として、容器画像間において容器像の高さ関係を一致させるのが望ましい。
【0010】
望ましくは、前記監査用画像を構成する各容器画像にはそれに対応する水薬注入工程で注入された水薬に関する情報が付加される。望ましくは、前記水薬に関する情報には、水薬名、注入量、積算注入量の少なくとも1つが含まれる。この構成によれば、調剤の各段階における液面レベルの推移の他、各段階における調剤条件、分注条件を確認できるので監査を支援できる。
【0011】
望ましくは、前記監査用画像には液面レベルの高さを評価するためのスケールが含まれる。望ましくは、前記スケールは前記複数の容器画像を横断する複数のラインを含む。望ましくは、前記スケールの目盛りが前記投薬容器の種類に応じて変更される。使用する投薬容器ごとにサイズや形状が異なることになるので、画像処理条件をそれに応じて変更するものである。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、水薬の調剤結果の監査を支援できる。あるいは、本発明によれば、複数の水薬を段階的に投薬瓶に注入する場合に、各注入段階ごとに注入結果を評価できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1には、本発明に係る水薬調剤装置の好適な実施形態が示されており、図1はその全体構成を示す概念図である。この水薬調剤装置は病院や処方箋薬局等の施設に設置されるものであり、調剤を行う薬剤師や医師の支援を行う装置である。
【0015】
図1において、水薬調剤装置は、機構部10及び演算処理部12を有している。機構部10には複数の分注ユニット14,16,18が設けられている。各分注ユニット14,16,18はそれぞれ基本的に同一の構成を有している。ただし、それぞれの分注ユニット14,16,18はこの例では互いに異なる水薬を分注するものである。複数の分注ユニット14,16,18は直線状に配列され、あるいは二次元的に配列される。本実施形態においては、複数の分注ユニット14,16,18が固定配置されており、一方において、後に詳述する投薬瓶24が搬送されているが、投薬瓶24を固定状態にして、分注ユニットあるいはそれが有するノズルを可動させるようにしてもよい。
【0016】
分注ユニット14を代表させてその構成を説明すると、分注ユニット14は試薬瓶(元瓶)、分注ポンプ、分注ノズル20、電磁弁、等の構成を有している。さらに、必要に応じて試薬瓶を揺動させてその内部の試薬を攪拌する機構を設けるようにしてもよい。各分注ユニット14,16,18ごとに分注ポジションが定められ、それとは別に、本実施形態においては後に説明する撮像ポジションが定められている。
【0017】
投薬瓶24は、可動ステージ22上に配置、保持されており、可動ステージ22は搬送機構26によって搬送台28上において搬送される。後に説明する制御部46の制御の下、あらかじめ設定された調剤条件に従って投薬瓶24の位置決め、投薬(つまり分注)の実行、撮像、といった一連の工程が繰り返し実行される。ちなみに、投薬瓶24が空の状態で初期撮像状態が実行されるようにしてもよい。
【0018】
分注ポジションには撮像手段としての撮像装置30が設けられている。この撮像装置30はCCDカメラ等によって構成され、撮像対象となった投薬瓶を水平方向から撮像し、その全体画像を容器像として取得するものである。対象となる投薬瓶をはさんで撮像装置30とは反対側に光源32が設けられている。この光源32は平板状の発光体として構成されてもよいし、一次元あるいは二次元の白色LEDアレイとして構成されてもよい。このような配置関係により、対象となる投薬瓶の背景を明るくしてそこから生じた光を投薬瓶に透過させ、投薬瓶における液面レベルを明瞭に撮像することが可能となる。もちろん、光源を撮像装置30側に設ける等の他の構成を採用するようにしてもよい。本実施形態においては、撮像ポジションが固定的に定められており、各分注工程の実行後に投薬瓶24が撮像ポジションに位置決められ、その状態で投薬瓶の撮像が行われている。もちろん、投薬瓶24と共に撮像手段を搬送するようにしてもよいし、各分注ポジションごとに撮像手段を設けるようにしてもよい。いずれにしても、分注後の状態において投薬瓶が撮像されるように構成するのが望ましい。
【0019】
ちなみに、図示されていない出入りステーション上において空の投薬瓶が可動ステージ22にセットされ、調剤完了後においては当該ポジションにおいて調剤後の投薬瓶が取り出される。投薬瓶がセットされた時点においてキャップが取り外されていることを確認する手段を設けるのが望ましい。そのために、例えば、機械的なセンサあるいは光学的な観察手段などを採用することができる。
【0020】
次に、演算処理部12について説明する。演算処理部12は情報処理装置として構成される。記憶部34は撮像装置30によって取得された各容器画像のデータを一時的に記憶する画像メモリである。もちろん、取得された容器画像を直ちに処理して、後に説明する監査用画像を成長表示させるようにしてもよい。
【0021】
加工部36は、記憶部34において時系列順で格納された各容器画像を取り出して、それぞれの容器画像に対してトリミング処理を適用し、合成対象となる画像部分を切り出すモジュールである。合成部38は、以上のようにして加工された複数の容器画像すなわち部分画像を水平方向に高さを揃えつつ並べて合成し、これによって監査用画像を生成するモジュールである。合成部38はそのような合成処理の他、生成された監査用画像を表示フレーム生成部40によって生成された表示フレームへ埋め込んで合成する処理も実行している。これによって生じた表示画像は表示部42に表示される。その例については後に図3を用いて説明する。
【0022】
制御部46は調剤データに従って機構部10の動作制御を行うものである。また、制御部46によって上述した表示フレーム生成部40に対して必要な情報が渡される。制御部46には入力部44が接続されており、この入力部44をタッチスクリーンとして構成することも可能である。
【0023】
次に、図2を用いて監査用画像の生成処理について説明する。(A),(B),(C)には調剤過程において段階的に取得された容器画像52,54,56が示されている。それらの容器画像は容器画像列50を構成するものである。例えば4つの水薬が調剤される場合、4つの容器画像が取得されることになる。さらに、調剤前の空の容器を撮像した画像が取得されてもよい。上述したトリミング処理では、符号58,60,62に示されるように、各容器画像52,54,56から、合成処理で必要となる画像部分が切り出される。本実施形態においては、各容器画像52,54,56において容器イメージにおける側部がたて長のエリアとして切り出されており、少なくとも容器の液面レベルが明瞭に現れるような画像部分が切り出される。そして、(D)に示されるように、分注の順序すなわち調剤順に従って切り出された複数の部分画像58,60,62が水平方向に並べられて、それらの合成によりひとつの監査用画像64が生成される。その場合において、各部分画像の高さは揃えられており、その結果監査用画像64においては段階的に上昇する液面レベルが明瞭に現れる。
【0024】
以上のように構成された監査用画像64は上述した表示フレーム66内に埋め込まれ、これによって表示画像が構成される。この他、監査用画像64あるいはそれを構成する各部分画像58,60,62に対して自動的な画像解析を行って、液面レベル等の評価を行うようにしてもよい。それが符号100で表わされている。
【0025】
図3には、表示画像の一例が示されている。この例において、表示画像67には監査用画像64が含まれている。監査用画像64は、1番から9番までの9個の部分画像を水平方向に並べて構成されたものである。この監査用画像64上にはグラフィックとしてのスケール68が表示されており、そのスケール68は目盛りに相当する複数のラインによって構成される。また、各部分画像にはそれぞれの段階において注入された水薬の量が数値によって表されており、それに伴い積算量すなわち累計量も数値として表示されている。また各段階における水薬の名称は符号74に示されるように、文字情報として表示されている。その他、患者の氏名、性別、生年月日、年齢、体重、身長、処方箋に記載された各種の事項、投薬瓶サイズといった様々な情報が表示されている。
【0026】
このような監査用画像64によれば、薬剤師または医師が当該画像を観察することにより、各調剤行為においてどのような水薬がどの程度注入されたのかを一目瞭然に認識することができる。従って、各調剤過程が適正に行われたことを容易に確認でき、万が一、誤った調剤が行われたとしてもそれを画像上で容易に認識することが可能である。しかも、最終的な結果物のエラーとしてではなく、どの段階においてエラーが生じたのかを具体的な画像として把握することが可能である。監査用画像64によれば、液面レベルの推移の他、どの段階において気泡が生じたのか等の情報も得られるので、調剤過程を総合的に評価できるという利点もある。
【0027】
ちなみに、投薬瓶にバーコードラベル等のラベルが貼付されるような場合には、そのようなラベルを撮像部分あるいは切り出し部分から除外し、少なくとも液面が明瞭に写るようにトリミングを行うのが望ましい。監査用画像64を構成する各部分画像に投薬瓶に含まれる目盛りが写るようにトリミング処理を行なうようにしてもよい。スケール68及びそれを構成する各ラインに伴う数値については、対象となる投薬瓶の種類に応じて切り替えるのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態の水薬調剤装置を表す概念図である。
【図2】監査用画像のプロセスを説明するための概念図である。
【図3】表示画像の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
10 機構部、12 演算処理部、22 可動ステージ、24 投薬瓶、14,16,18 分注ユニット、30 撮像装置、32 光源、36 加工部、38 合成部、40 表示フレーム生成部、42 表示部、46 制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の水薬容器から透明性を有する投薬容器へ複数の水薬を段階的に注入する調剤機構と、
前記複数の水薬の段階的な注入に際して前記投薬容器を段階的に撮像し、これにより複数の容器画像を取得する撮像手段と、
前記段階的に撮像された複数の容器画像を並べて合成することにより監査用画像を生成する画像処理手段と、
を含むことを特徴とする水薬調剤装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記画像処理手段は、前記複数の容器画像の高さを揃えつつ前記複数の容器画像を投薬順に従って水平方向に並べることにより前記監査用画像を生成する、ことを特徴とする水薬調剤装置。
【請求項3】
請求項2記載の装置において、
前記監査用画像を構成する各容器画像にはそれに対応する水薬注入工程で注入された水薬に関する情報が付加される、ことを特徴とする水薬調剤装置。
【請求項4】
請求項3記載の装置において、
前記水薬に関する情報には、水薬名、注入量、積算注入量の少なくとも1つが含まれる、ことを特徴とする水薬調剤装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の装置において、
前記監査用画像には液面レベルの高さを評価するためのスケールが含まれる、ことを特徴とする水薬調剤装置。
【請求項6】
請求項5記載の装置において、
前記スケールは前記複数の容器画像を横断する複数のラインを含む、ことを特徴とする水薬調剤装置。
【請求項7】
請求項5記載の装置において、
前記スケールの目盛りが前記投薬容器の種類に応じて変更される、ことを特徴とする水薬調剤装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−112636(P2009−112636A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−290929(P2007−290929)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】