説明

水質改質システムおよび水質改質方法

【課題】 システムの性能を最適化し、各分離膜部の膜の詰りや劣化を均一化できる水質改質システムを提供すること。
【解決手段】 互いに並列接続された複数の分離膜部9,9,…,被処理水を前記各分離膜部9,9,…へ供給するポンプ10および分離膜部9,9,…の運転台数を制御する制御手段12,19とを備える水質改質システムであって、各分離膜部9,9,…の膜性能を検出する膜性能検出手段を備え、制御手段12,19は、運転台数増または減と判定したとき、膜性能が高い分離膜部9,9,…を優先して運転および/または運転中の膜性能が低い分離膜部を優先して停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラなどの機器に供給するための給水の水質を膜濾過装置などの分離膜装置を用いて改質する水質改質システムおよび水質改質方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被処理水中の不純物を除去して機器へ供給する互いに並列接続された複数の逆浸透膜部と、被処理水を前記逆浸透膜部へ供給するポンプと、逆浸透膜部の運転台数を制御する制御手段とを備える水質改質システムは、特許文献1および特許文献2にて公知である。
【0003】
本願の出願人は、特許文献1において、熱機器への給水ラインの上流側に逆浸透膜部を備え、その上流側には濾過膜部に給水を供給するポンプを備え、下流側には膜式脱気部を備え、被処理水を逆浸透膜部で腐食促進成分を濾過した後、膜式脱気部で溶存気体を脱気し、逆浸透膜部が給水ラインに並列に複数接続され、ポンプが各逆浸透膜部毎に配置され、更に各逆浸透膜部の下流側には、それぞれ逆流阻止可能な制御弁が配置された水質改質システムであって、給水ラインを流れる給水の温度を検知して、給水の温度に基づいて腐食促進成分残存許容値と溶存気体残存許容値をともに充足するように、逆浸透膜部毎に配置されているポンプの運転・停止を選択的に行うことにより、逆浸透膜部の運転台数を制御する水質改質システムを提案している。
【0004】
また、特許文献2において、被処理水を昇圧して並列に設けられた複数個の逆浸透膜部に供給し、その透過水である処理水を得る逆浸透処理装置を運転するに際し、被処理水の温度および/または処理水の水質に応じて逆浸透膜部の運転台数を制御する水質改質システムを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−279462号公報
【特許文献2】特開2001−239134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献1に示される水質改質システムにおいては、膜の劣化や膜の詰りの膜性能を考慮することなく、台数制御が行われているために、システムの性能を最適化できていない。
【0007】
この発明は、分離膜部の運転台数を制御する水質改質システムにおいて、システムの性能を最適化し、各分離膜部の膜の詰りや劣化を均一化できる水質改質システムを提供することを課題とする。ここで、最適化とは、要求水質を満足し、最大限の省エネ運転を行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、被処理水中の不純物を除去して処理水を機器へ供給する互いに並列接続された複数の分離膜部と、被処理水を前記各分離膜部へ供給するポンプと、前記分離膜部の運転台数を制御する制御手段とを備える水質改質システムであって、前記各分離膜部の膜性能を検出する膜性能検出手段を備え、前記制御手段は、前記分離膜部の運転台数の増減を判定し、運転台数増または減と判定したとき、膜性能が高い前記分離膜部を優先して運転および/または
膜性能が低い前記分離膜部を優先して停止することを特徴としている。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、システムの性能を最適化し、各分離膜部の膜の詰りや劣化を均一化することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記ポンプを回転数制御可能に構成し、前記分離膜部が逆浸透膜部であり、前記膜性能検出手段が透過流束を検出するものであり、前記制御手段は、透過流束が高い前記逆浸透膜部を優先して運転および/または透過流束が低い前記逆浸透膜部を優先して停止することを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明による効果に加えて、前記ポンプの回転数を低く制御でき、省エネを実現できるという効果を奏する。
【0012】
請求項3に記載の発明は、被処理水中の不純物を除去して機器へ供給する互いに並列接続された複数の濾過膜部と、前記各濾過膜部毎に設けられ被処理水を前記濾過膜部へ供給するポンプと、前記濾過膜部の下流側に接続される膜脱気装置と、前記ポンプを制御する制御手段とを備える水質改質システムであって、前記制御手段は、前記濾過膜部の運転台数の増減を判定し、運転台数増または減と判定したとき、膜性能が高い前記濾過膜部を優先して運転および/または膜性能が低い前記濾過膜部を優先して停止することを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、膜性能が高い濾過膜部を優先して運転するので、濾過水質に関してシステムの性能を化し、各濾過膜部の膜の詰りや劣化を均一化することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項3において、前記膜脱気装置が互いに並列に接続される複数の脱気膜部から構成され、前記各脱気膜部の給水ラインに処理水の流れを制御する弁を設け、前記制御手段は、前記脱気膜部の運転台数の増減を判定し、運転台数増または減と判定したとき、膜性能が高い前記脱気膜部を優先して運転および/または運転中の前記脱気膜部のうち前記膜性能検出手段により検出された膜性能が低いものを優先して停止することを特徴としている。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3に記載の発明による効果に加えて、膜性能が高い前記脱気膜部を優先して運転するので、脱気水質に関してシステムの性能を最適化し、各脱気膜部の膜の詰りや劣化を均一化することができるという効果を奏する。
【0016】
さらに、請求項5に記載の発明は、被処理水中の不純物を除去して処理水を機器へ供給する互いに並列接続された複数の分離膜部と、被処理水を前記各分離膜部へ供給するポンプとを備え、前記分離膜部の運転台数を制御する水質改質方法であって、前記各分離膜部の膜性能を検出する第一ステップと、前記分離膜部の運転台数の増減を判定する第二ステップと、前記第二ステップにおいて運転台数増または減と判定したとき、前記第一ステップにより検出された膜性能が高い前記分離膜部を優先して運転および/または膜性能が低い前記分離膜部を優先して停止する第三ステップとを行うことを特徴としている。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、膜性能が高い分離膜部を優先して運転するので、水質に関してシステムの性能を最適化し、各分離膜部の膜の詰りや劣化を均一化することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、水質に関してシステムの性能を最適化し、各分離膜部の膜の詰りや
劣化を均一化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を実施した水質改質システムの実施例1の概略構成図である。
【図2】同実施例1の膜濾過装置の概略構成図である。
【図3】同実施例1の制御手順の要部を示すフローチャート図である。
【図4】図3の要部の制御手順を説明するフローチャート図である。
【図5】同実施例1の処理水タンクの水位に対する運転台数,逆浸透膜部の処理水流量の設定値,優先順位および運転・停止の関係を説明する図である。
【図6】この発明の他の実施例2の制御手順を説明するフローチャート図である。
【図7】同実施例2の膜濾過装置の概略構成図である。
【図8】同実施例2における運転優先順位と要求水質Q1を満たす流量比率との設定関係を説明する図である。
【図9】同実施例2の処理水タンクの水位に対する運転パターンと供給水量との関係を説明する図である。
【図10】同実施例2の流量比率および水温をパラメータとした透過比率の特性図である。
【図11】同実施例2の流量比率および水温をパラメータとした水質特性図である。
【図12】同実施例2の流量比率および水温をパラメータとした有効操作圧力特性図である。
【図13】同実施例2の流量比率および水温をパラメータとした省エネ比率特性図である。
【図14】この発明の他の実施例3の制御手順を説明するフローチャート図である。
【図15】図14の要部の制御手順を説明するフローチャート図である。
【図16】同実施例3の処理水タンクの水位に対する運転パターンと供給水量との関係を説明する図である。
【図17】同実施例3の変形例における処理水タンクの水位に対する運転パターンと供給水量との関係を説明する図である。
【図18】本発明の他の実施例4の概略構成図である。
【図19】本発明の他の実施例5の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の実施の形態を説明する。この発明の実施の形態は、ナノ濾過膜(NF膜、NF:Nanofiltration)を含む逆浸透膜による濾過処理部および脱気膜による脱気膜部を用いた水質改質システムに好適に実施することができる。
【0021】
(実施の形態1)
この発明の実施の形態1は、つぎの構成要素を含む水質改質システムである。すなわち、被処理水中の不純物を除去して処理水を機器へ供給する互いに並列接続された複数の分離膜部と、被処理水を前記各分離膜部へ供給するポンプと、前記分離膜部の運転台数を制御する制御手段とを備えている。前記制御手段は、運転台数増または減と判定したとき、膜性能が高い分離膜部を優先して使用することを特徴としている。ここで使用は、通水と言い換えることができる。
【0022】
ここで、被処理水,処理水とは、それぞれ前記各分離膜部にて処理される前の水,処理された後の水を意味する。分離膜部は、好ましくは、逆浸透膜とするが、逆浸透膜以外の限外濾過膜(UF膜)や精密濾過膜(MF膜)などの濾過膜を用いた濾過膜部と、被処理水の気体成分を脱気する脱気膜を用いた脱気膜部を含む。また、膜性能とは、前記各分離膜部の初期の膜性能(製品出荷前か改質システム設置時に測定された膜性能),前記各分離膜部の運転に伴い変化する膜性能であって膜の詰り度および膜の劣化度を含む。
【0023】
前記分離膜部を逆浸透膜部とする場合、膜の詰り度は、透過流束によって検出可能であり、膜の劣化度は、除去率(または透過率)によって検出可能である。除去率,透過率は、それぞれイオン除去率,イオン透過率と称することができる。
【0024】
この実施の形態1は、特許文献1の図1に示すような前記各分離膜部に対して個別にポンプを設けているシステムと、特許文献1の図2または特許文献2の図1に示すような前記各分離膜部に対して共通のポンプを設けているシステムのいずれにも適用できる。そして、前記分離膜部の運転と停止とは、前記各分離膜部に対して個別にポンプを設けているシステムにおいては、前記各ポンプの運転と停止により実現され、前記各分離膜部に対して共通のポンプを設けているシステムにおいては、前記各分離膜部と直列に設けた弁の開閉により実現される。
【0025】
この実施の形態1においては、好ましくは、前記各ポンプを回転数制御可能に構成する、そして、前記分離膜部の運転台数の制御は、好ましくは、被処理水の水温および/または処理水の水質に応じて前記分離膜部の運転台数の増減を行うものである。さらに好ましくは、前記分離膜部の運転台数の制御は、処理水の流量および水質が所定の範囲となるように、被処理水の温度変化に応じて前記ポンプの回転数を制御し、かつ、前記分離膜部の運転台数を増減することにより行われる。
【0026】
この実施の形態1においては、前記各分離膜部の膜の詰りや劣化を表す膜性能が前記膜性能検出手段により定期的に検出される。そして、前記制御手段は、前記分離膜部の運転台数の増減を判定すると、前記膜性能検出手段により検出された膜性能が高い分離膜部を優先して運転する。その結果、相対的に膜性能が高い分離膜部が運転される。前記分離膜部により処理された処理水は、ボイラなどの使用機器へ供給される。
【0027】
この実施の形態1によれば、前記膜性能検出手段により検出された膜性能が高い分離膜部を優先して使用するので、水質に関してシステムの性能を最適化し、各分離膜部の膜の詰りや劣化を均一化することができる。また、この膜の詰りや劣化の均一化によって、膜洗浄や膜交換を一斉に行う場合には、最も膜の能力を使いきった状態で行うことができ、膜洗浄や膜交換の間隔を長く取ることができる。
【0028】
前記分離膜部を濾過膜部とし、前記膜性能を膜の詰り度とした場合、膜性能が高い分離膜部を優先して運転することにより、同じ処理水流量を得るために前記ポンプの回転数を低くできるので、省エネが実現される。
【0029】
そして、この実施の形態1において、「前記膜性能検出手段により検出された膜性能が高い分離膜部を優先して使用する」態様として、つぎの三つの態様を含んでいる。
【0030】
第一の態様は、運転台数増と判定したとき、運転停止中の前記分離膜部のうち前記膜性能検出手段により検出された膜性能が高いものを優先して運転する態様である。この態様においては、運転停止中の分離膜部が複数台あるとき、前記膜性能が高い方の分離膜部を選んで順次運転を開始する。
【0031】
また、第二の態様は、運転台数減と判定したとき運転中の前記分離膜部のうち前記膜性能検出手段により検出された膜性能が低いものを優先して停止する態様である。この態様においては、運転中の分離膜部が複数台あるとき、前記膜性能が低い方の分離膜部を選んで順次停止する。
【0032】
さらに、第三の態様は、運転台数増と判定したとき、運転停止中の前記分離膜部のうち前記膜性能検出手段により検出された膜性能が高いものを優先して運転し、運転台数減と判定したとき、運転中の前記分離膜部のうち前記膜性能が低いものを優先して停止する態様である。この態様においては、運転停止中の分離膜部が複数台あるとき、前記膜性能が高い方の分離膜部を選んで運転を開始し、運転中の分離膜部が複数台あるとき、前記膜性能が低い方の分離膜部を選んで停止する。
【0033】
ここで、この実施の形態1の構成要素について説明する。前記機器は、前記分離膜部により処理された処理水が使用される機器であって、ボイラなどとされる。
【0034】
前記各分離膜部は、好ましくは、ナノ濾過膜等の逆浸透膜により濾過成分を除去する逆浸透膜部とするが、その他の濾過膜部を有する濾過装置であればよく、特定の構造の濾過装置に限定されるものではない。また、前記分離膜部は、不純物としての被処理水中の溶存酸素などの気体成分を脱気する脱気膜部とすることができる。
【0035】
前記ポンプは、好ましくは、回転数が制御可能なものとし、特定のポンプに限定されない。回転数の制御は、好ましくは、インバータにより制御するものとする。
【0036】
前記膜性能検出手段は、前記各分離膜部の膜性能を検出するものである。前記分離膜部(逆浸透膜部および脱気膜部)の処理水水質は、水温,運転圧力(流量),膜性能(個体差を含む)等により変化する。加えて、前記逆浸透膜の場合は、原水水質(イオンバランス)によっても変化し、前記脱気膜部の場合は、真空度によっても変化する。前記固体差は、製造により生ずる膜の初期性能の違いである。そして、膜性能は、個体差に加えて、経時的に低下し、水質が悪化する。この膜性能の低下は、濾過成分が詰まることによるものと、膜の劣化によるものとがある。詰りは、再生(薬品洗浄)によりある程度回復するが、膜の劣化は、塩素劣化や水温(高温)による化学的劣化、物理劣化、経年劣化であり、再生(薬品洗浄)では回復しない。
【0037】
前記膜性能検出手段は、前記個体差を含め、膜の詰りおよび膜の劣化による膜性能の状態を検出する。前記分離膜部を逆浸透膜部とした場合、膜性能は、処理水水質(電気伝導度)、除去率(濾過成分を除去した割合)または透過率、透過流束などにより検出可能である。処理水水質および透過率(または除去率)により膜の劣化度に関する膜性能が検出可能であり、透過流束により膜の詰り度に関する膜性能が検出可能である。この場合、前記膜性能を膜の劣化度とした場合、膜性能が高い分離膜部を優先して運転することにより、処理水水質の高い処理水を得ることができるとともに、前記膜性能を詰り度とした場合、膜性能が高い分離膜部を優先して運転することにより、省エネを実現できる。
【0038】
前記分離膜部を脱気膜部とした場合、膜性能は、処理水のDO値,流量、差圧(脱気膜部の入口側と出口側との水圧の差)などにより可能である。この場合、処理水のDO値の良い(高い)脱気膜部を優先的に運転することにより、処理水水質の高い処理水を得ることができるとともに、各膜脱気部を駆動する真空ポンプの運転台数を減らすことにより、省エネを実現できる。
【0039】
前記透過率について説明する。前記各濾過膜部の膜は、固体差による初期基準性能を有している。この初期基準性能は、初期基準透過率で表すことができる。この初期基準透過率は、システムの使用開始時に通水して前記制御部により求めることもできるが、システムの出荷前に、前記各濾過膜部毎に初期基準透過率を求めてインプットしておくことができる。
透過率(%)=100−除去率(%)とする。透過率および除去率は、水質を表し、膜の固体差および劣化による膜性能を表す数値である。
【0040】
透過率は水温、圧力(流量)により影響を受ける。よって、実際の運転条件下での基準
透過率は、次式で求めることができる。
実際の運転条件下での基準透過率=基準透過率(25℃、基準定格流量)×水温補正係数X×圧力(流量)補正係数
【0041】
実際に前記各濾過膜部を使用していくと除去率は、膜の劣化等によって悪くなる可能性もあるため、基準透過率は経時的に変化する。よって、劣化を考慮した実際の運転条件下での基準透過率は、次式となる。
実際の運転条件下での基準透過率=基準透過率(25℃、基準定格流量)×水温補正係数×圧力(流量)補正係数×劣化補正係数Y
この劣化補正係数Yは、次式によって求めることができる。
劣化補正係数Y=現在の基準透過率/初期基準透過率
この劣化補正係数Yは、リアルタイムで求めてもよいし、通水時間によってあらかじめ一定の係数としてもよい。例えば、1000h通水で劣化補正係数1.1とする。
前記除去率は、前記各膜濾過部の入口側と出口側の電気伝導度の差を入口側の電気伝導度で除すことで求める。
【0042】
前記透過流束は、膜の水透過性能,すなわち前記膜の詰まり状態を示す指標で、特開2008−55336号公報に記載の方法により求めることができる。すなわち、単位時間当たり、単位膜面積を透過する水の量を単位膜差圧当たりとして標準温度条件下に換算したものである。これを数式にて表現すると、次式1にて表現できる。
【0043】
透過流束(L/m2・h・MPa)=処理水瞬間流量/[{入口運転圧力−(装置差圧÷2)−出口背圧−浸透圧}×温度補正係数×膜面積]………………式1
【0044】
ここで、処理水瞬間流量:処理水流量計での検出値(単位:L/h),入口運転圧力:入口運転圧力センサでの検出値(単位:MPa),装置差圧:設定値(単位:MPa),出口背圧:設定値(単位:MPa),浸透圧:設定値(単位:MPa),温度補正係数:A(給水水温センサで検出される給水温度の関数),膜面積:設定値(単位:m2)である。
【0045】
この透過流束を演算するためのデータ(処理水瞬間流量,入口運転圧力および給水温度)は、各データの測定(検出)手段により検出される。これらのデータのサンプリングは、前記制御手段により前記逆浸透膜部の濾過性能が安定するタイミングで行われる。前記の装置差圧、浸透圧、出口背圧は、必ずしも設定値でなくてもよく、センサでリアルタイムに検出して求めてもよい。前記透過流束は、前記サンプリングを複数回行うことにより得た複数の透過流束の平均値とすることが望ましい。
【0046】
また、前記透過流束(L/m2・h・MPa)を表現する式は、前記式1に限定されず、次の式2にても表現可能である。
処理水瞬間流量/[{(入口圧力−出口圧力)÷2−出口背圧−浸透圧}×温度補正係数×膜面積]……式2
また、前記式1または前記式2において、膜面積を削除したり、出口背圧や浸透圧の影響が無視できる(一定)の場合は、これらを削除することができる。
【0047】
前記制御手段は、運転台数増または減と判定したとき、判定時の膜性能が高い分離膜部を優先して使用する機能を有する。前記膜性能は、好ましくは、膜性能検出手段によりシステムを運転しながら定期的または連続的に検出する。しかしながら、前記初期の膜性能のみ検出して、この初期の膜性能の高い分離膜部を優先して使用するように構成することもできる。この場合、膜性能検出手段は、この実施の形態1の改質システムに常時備える必要はなく、初期の膜性能を検出するときだけ使用できるものであればよい。また、前記制御手段は、前記各分離膜部毎に設けるが、前記各分離膜部に共通の制御器で制御するよ
うに構成できる。
【0048】
(実施の形態2)
この発明は、上述の実施の形態1に限定されるものではなく、例えば、特許文献1(特開2005−279462号公報)の図1に示す水質改質システムと類似のシステムに適用した実施の形態2とすることができる。
【0049】
この実施の形態2は、被処理水中の不純物を除去して機器へ供給する互いに並列接続された複数の濾過膜部と、前記各濾過膜部毎に設けられ被処理水を前記濾過膜部へ供給するポンプと、前記濾過膜部の下流側に接続される膜脱気装置と、前記ポンプを制御する制御手段とを備える水質改質システムであって、前記制御手段は、前記濾過膜部の運転台数の増減を判定し、運転台数増または減と判定したとき、膜性能が高い前記濾過膜部を優先して使用することを特徴とする水質改質システムである。
【0050】
この実施の形態2の前記各ポンプは、好ましくは、回転数が制御可能に構成される。また、前記制御手段は、濾過膜部毎に配置されているポンプの運転・停止を選択的に行うことにより前記濾過膜部の運転台数の制御を行うとともに、前記各ポンプの回転数を制御する。そして、この実施の形態2においても、前記実施の形態1と同様に、前記制御手段は、運転台数増または減と判定したとき、膜性能が高い濾過膜部を優先して運転する。
【0051】
この実施の形態2の流量制御をより具体的に説明するに、給水の流量と給水の温度と、前記濾過膜部で腐食促進成分を濾過した後の濾過水中の腐食促進成分残存値及び前記脱気膜部で溶存気体を脱気した後の透過水中の溶存気体残存値との関係を予め求めておくとともに、腐食促進成分残存許容値と溶存気体残存許容値を定めておき、前記給水ラインを流れる給水の温度を検知して、給水の温度に基づいて前記腐食促進成分残存許容値と溶存気体残存許容値をともに充足するように、濾過膜部毎に配置されているポンプの運転・停止を選択的に行うとともに前記各ポンプの回転数を制御することにより給水の流量を制御するように構成される。
【0052】
前記実施の形態1,2は、つぎの水質改質方法を含んでいる。この水質改質方法は、被処理水中の不純物を除去して処理水を機器へ供給する互いに並列接続された複数の濾過膜部と、被処理水を前記各濾過膜部へ供給するポンプとを備え、前記濾過膜部の運転台数を制御する水質改質方法であって、前記各濾過膜部の膜性能を検出する第一ステップと、前記濾過膜部の運転台数の増減を判定する第二ステップと、前記第二ステップにおいて運転台数増または減と判定したとき、前記第一ステップにより検出された膜性能が高い前記濾過膜部を優先して使用する第三ステップとを行うことを特徴とするものである。
【0053】
この水質改質方法においては、前記第一ステップは、好ましくは、この水質改質方法を実施する水質改質システムの運転中常時行うが、前記水質改質システムの使用開始時のみ行うように構成することができる。
【0054】
この水質改質方法によれば、水質に関してシステムの性能を最適化し、各濾過膜部の膜の詰りや劣化を均一化することができる。また、前記各ポンプを回転数制御可能なものとした場合、性能が高い濾過膜部を優先して運転および/または膜性能が低い前記分離膜部を優先して停止するので、運転対象の前記各濾過膜部において所定の処理水流量および/または処理水水質を得る際に前記ポンプの回転数を低くすることができ、前記ポンプの消費電力を低減できる。
【0055】
また、この実施の形態2において、好ましくは、前記膜脱気装置が互いに並列に接続される複数の脱気膜部から構成され、前記各脱気膜部の給水ラインに処理水の流れを制御す
る弁を設け、前記制御手段は、前記脱気膜部の運転台数の増減を判定し、運転台数増または減と判定したとき、膜性能が高い前記脱気膜部を優先して使用,すなわち膜性能が高い前記脱気膜部を優先して運転および/または膜性能が低い前記脱気膜部を優先して停止する。
【0056】
この実施の形態2において、前記逆浸透膜部の膜性能を透過流束で検出し、透過流束の高い逆浸透膜部を優先的に通水することにより、前記ポンプの回転数を低減でき、省エネを実現できる。また、前記逆浸透膜部の膜性能を前記処理水質または前記除去率で検出し、前記処理水質または前記除去率の高い逆浸透膜部を優先的に通水状態とすることにより、高い濾過水質を実現できる。
【0057】
また、前記脱気膜部を真空ポンプにより脱気するものとした場合、前記脱気膜部の運転台数減少により前記真空ポンプの台数を減らすことにより、省エネを実現でき、前記脱気膜部の膜性能を前記処理水質で検出し、前記処理水質の高い脱気膜部を優先的に通水状態とすることにより、高い脱気水質を実現できる。
【0058】
(実施の形態3)
この発明は、前記実施の形態1に限定されるものではなく、前記分離膜を前記脱気膜とした実施の形態3を含むものである。
【0059】
この実施の形態3は、被処理水中の不純物としての気体成分を除去して処理水を機器へ供給する互いに並列接続された複数の脱気膜部と、被処理水を前記各脱気膜部へ供給するポンプと、前記脱気膜部の運転台数を制御する制御手段とを備えている。前記制御手段は、運転台数増または減と判定したとき、膜性能が高い脱気膜部を優先して使用することを特徴とする水質改質システムである。前記「使用」の意味するところは、前記実施の形態1と同様である。
【0060】
この実施の形態3においては、膜性能が高い,すなわち処理水の脱気度が高い(DO値が低い)脱気膜部を優先して使用することで、脱気度の高い処理水を供給できる。
【実施例1】
【0061】
以下、この発明の水質改質システムの実施例1を図面に基づき説明する。この実施例1は、処理水タンクの水位に応じて、この発明の分離膜部としての逆浸透膜部の運転台数を各逆浸透膜部の処理水流量が所定流量となるように制御するシステムである。図1は、同実施例1の概略構成図である。図2は、同実施例1の各膜濾過装置の概略構成図である。図3は、同実施例1の制御手順を説明するフローチャート図である。図4は、図3の要部の制御手順を説明するフローチャート図である。図5は、処理水タンクの水位に対する運転台数,逆浸透膜部の処理水流量の設定値,運転の優先順位および運転・停止の関係を説明する図である。
【0062】
図1において、実施例1の水質改質システム1は、熱機器2へ供給する給水の水質を改質するための水質改質システムであって、前記熱機器2へ給水を供給する給水ライン3と、この給水ライン3に接続される活性炭濾過装置4と、軟水装置5と、プレフィルタ6と、互いに並列に接続される3台以上(この実施例1では3台)の膜濾過装置7(7−1,7−2,7−3)と、前記熱機器2へ供給する処理水を貯留する処理水タンク8とを備えて構成されている。前記給水は、前記逆浸透膜部9の上流側を被処理水と称し、前記逆浸透膜部9の下流側を処理水と称する。また、前記給水ライン3は、前記各膜濾過装置7に含まれる後記各逆浸透膜部9上流側を被処理水ライン3−1と称し、前記各逆浸透膜部9の下流側を処理水ライン3−2と称する。
【0063】
前記熱機器2は、蒸気ボイラ、温水ボイラ、クーリングタワー、給湯器等である。前記活性炭濾過装置4は、給水中に溶存する次亜塩素酸ソーダ等の酸化剤を吸着除去するための装置として構成されている。前記軟水装置5は、前記残留塩素が除去された給水中に含まれるカルシウム、マグネシウム等の硬度成分をイオン交換樹脂(図示省略)により除去する装置として構成されている。前記プレフィルタ6は、給水中のゴミ等を除去するためのものである。
【0064】
図2を参照して、前記各膜濾過装置7は、それぞれ逆浸透膜部9と、この逆浸透膜部9の上流側に接続されるポンプ10と、前記各逆浸透膜部9の上流側および下流側に接続される各種検出器11(11a〜11e)と、前記ポンプ10に接続されるインバータ(図示省略)と、前記ポンプ10の制御と、前記各逆浸透膜部9の濾過部材の詰まりおよび/または劣化の判断、および装置全体の制御と、前記詰まりおよび/または劣化の警報を表示にて行う通報手段(図示省略)の制御とを行う第一制御器12とを備えて構成されている。以下、前記各構成要素について説明する。
【0065】
前記各逆浸透膜部9は、濾過部材としてナノ濾過膜(NF膜、NF:Nanofiltration)を備えて構成されている。
【0066】
前記各逆浸透膜部9の一端には、前記ポンプ10から送り出された給水が流入するようになっている。流入した給水は、前記各逆浸透膜部9の内部において、ナノ濾過膜により、濾過成分としての腐食促進成分が捕捉されるとともに腐食抑制成分が透過されるようになっている。前記各逆浸透膜部9の他端からは、透過水と濃縮水とが流出するようになっている。その透過水は、処理水として前記処理水ライン3−2を流れて前記処理水タンク8に貯留されるようになっている。一方、濃縮水は、その一部が排水ライン13側へ流れるとともに、残りが循環水ライン14を流れて前記ポンプ10の上流側に供給されるようになっている。
【0067】
前記ポンプ10は、前記プレフィルタ6の下流側の被処理水ライン3−1を流れる、ゴミ等が除去された給水を前記各逆浸透膜部9に供給するためのものであって、その回転数は、前記インバータから出力される出力周波数に応じて可変するように構成されている。
【0068】
前記各種検出器11としては、流量センサ11a、水温センサ11b、入口圧力センサ11c、出口圧力センサ11d、電気伝導センサ11eを含む。前記流量センサ11aは、前記各逆浸透膜部9を通過した透過水の水量を検知して流量検知信号を前記第一制御器12に出力するものであって、前記各逆浸透膜部9の下流側の処理水ライン3−2に接続されている。
【0069】
前記水温センサ11bは、この発明の水温検出手段として機能するもので、前記各逆浸透膜部9の上流側の被処理水ライン3−1、前記各逆浸透膜部9の下流側の処理水ライン3−2、前記排水ライン13のいずれかに接続され、この実施例1では、前記各逆浸透膜部9の上流側であって、前記ポンプ10の上流側の被処理水ライン3−1に接続されている。この水温センサ11bは、給水の温度を検知して温度検知信号を前記第一制御器12に出力するように構成されている。
【0070】
前記入口運転圧力センサ11c,前記出口背圧センサ11dは、それぞれ前記各逆浸透膜部9の上流側,下流側の被処理水ライン3−1,処理水ライン3−2に接続され、給水の圧力を検知して圧力検知信号を前記第一制御器12に出力するように構成されている。
【0071】
前記電気伝導センサ11eは、前記各逆浸透膜部9の下流側の処理水ライン3−2に接続され前記各逆浸透膜部9を通過した透過水の電気伝導度を検知してその検知信号を前記
第一制御器12に出力するように構成されている。
【0072】
前記流量センサ11a,前記入口運転力センサ11c,前記水温センサ11bは、透過流束を検出するこの発明の膜性能検出手段として機能する。
【0073】
前記第一制御器12は、第一CPU,第一記憶手段(ROM,RAM)およびインタフェースを備え、前記各種検出器11a〜11eからの信号と後記第二制御器19からの信号を入力する。
【0074】
前記第一記憶手段には、膜性能の検出手順,前記逆浸透膜部9,9,・・・の運転台数を制御する制御手順などを記憶している。
【0075】
図1を再び参照して、前記各膜濾過装置7の下流側には、それぞれ電磁弁16(16−1,16−2,16−3)を設けるとともに、前記処理水タンク8の上流側であって、前記各膜濾過装置7の処理水が合流して流れる前記処理水ライン3−2には、水質確認用の第二の電気伝導度センサ17および流量確認用の第二の流量センサ18を設けており、その検出信号は、第二制御器19へ入力される。
【0076】
前記第二制御器19は、第二CPU,第二記憶手段(ROM,RAM)およびインタフェースを備え、前記各第一制御器12と接続され、前記各膜濾過装置7を制御するとともに、前記各電磁弁16を制御する。前記各電磁弁16は、前記各逆浸透膜部9の洗浄が必要となったとき,運転停止時や運転待機時に閉じられる。
【0077】
この第二制御器19は、前記第一制御器12との連携により、前記第二記憶手段に記憶している図3に示す流量制御手順と図4に示す優先運転制御手順などを実行する。
【0078】
前記流量制御手順は、前記各逆浸透膜部9の透過流束を検出して、前記逆浸透膜部9の運転優先順位を設定するとともに、前記処理水タンク8の水位に応じて前記逆浸透膜部9の運転台数および処理水流量を設定し、前記各逆浸透膜部9の処理水流量が設定流量となるようにする制御手順である。
【0079】
より具体的には、透過流束が大きい(高い)前記逆浸透膜部9の優先順位を高く設定し、図5に示すように、前記処理水タンク8の水位がH以上,H〜M,M〜L,L以下に対して、前記逆浸透膜部9の運転台数を、それぞれ0台,1台,2台,3台に設定し、前記各逆浸透膜部9の設定流量を定格流量4t/hに設定している。図5の総処理水流量とは、定格流量と運転台数の積である。ここで、H,MおよびLの関係は、H>M,M>Lである。
【0080】
前記優先運転の制御手順は、逆浸透膜部9の運転台数の増減を判定し、運転台数増または減と判定したとき、膜性能が高い前記逆浸透膜部9を優先して使用する手順であり、より具体的には、運転台数増と判定したとき、運転停止中の前記逆浸透膜部9のうち前記膜性能検出手段により検出された膜性能が高いものを優先して運転し、運転台数減と判定したとき、運転中の前記逆浸透膜部9のうち前記膜性能が低いものを優先して停止する制御手順である。具体的には、図5に示すように優先順位が高い(数字が小さいものほど優先順位が高い)前記逆浸透膜部9を運転するように構成されている。
【0081】
また、前記第二制御器19は、前記第二電気伝導度センサ17の検出信号により、要求水質Q1が満たされているかどうかを判定し、前記流量センサ18の検出信号により、設定流量が満たされているかどうかを判定し、満たされていない場合には、前記通報手段に
より使用者に通報する制御も行う。この通報は、ブザーや表示パネル(図示省略)により、使用者に知らせる通報および通信による管理装置(図示省略)への通報を含む。また、要求水質Q1が満たされていない場合、要求水質Q1を満たすように設定された流量比率を大きくする制御を行うことが望ましい。
【0082】
この第二制御器19の制御機能は、前記各第一制御器12に持たせることができる。この場合、前記第二制御器19を省略することができる。また、前記各第一制御器12の制御機能を前記第二制御器19に統合して持たせることができる。この場合、前記第一制御器12を省略することができる。
【0083】
つぎに、この実施例1の動作を以下に説明する。
(全体的な動作)
図示しない被処理水タンクから流出した給水は、先ず、前記活性炭濾過装置4を通過し、残留塩素が除去された状態の給水となる。次に、その給水は、前記軟水装置5を通過して軟水となる。続いて、その軟水である給水(被処理水)は、前記プレフィルタ6を通過後前記各膜濾過装置7において濾過処理がなされて処理水となり前記熱機器2へ供給可能な給水となる。具体的には、軟水である被処理水が前記膜濾過装置7の各逆浸透膜部9において、ナノ濾過膜を通過する際に、硫酸イオン、塩化物イオン等の腐食促進成分がナノ濾過膜により捕捉される。すなわち、腐食促進成分が軟水から除去される。一方、軟水に含まれるシリカ、すなわち腐食抑制成分は、軟水と共にナノ濾過膜を透過する。濾過処理後の腐食抑制成分を含む軟水となる処理水は、前記熱機器2へ供給可能な給水として前記処理水タンク8に貯留される。
【0084】
(各膜濾過装置7の流量・台数制御動作)
つぎに、図3および図4の制御手順に基づく、この実施例1の動作を説明する。
【0085】
処理ステップS1(以下、処理ステップSNは、単にSNと称する。)において、膜性能の検出,すなわち透過流束を演算する。この透過流束の演算は、前記式1を用いて行うものであり、公知の方法により行うことができる。この実施例1においては、透過流束を複数回測定し、その平均値を平均透過流束として、保持するように構成している。
【0086】
ついで、S2において、前記逆浸透膜部9の優先順位を設定する。すなわち,平均透過流束が高いものほど優先順位を、優先順位1,優先順位2,優先順位3のように設定する。この優先順位の設定は、定期的に、例えば、1回/日行う。透過流束が取得できない前記逆浸透膜部9は、優先順位を最下位とする。
【0087】
S3では、図5に示すように、前記処理水タンク8の水位に応じて、運転台数を設定する。水位がH以上のときは、運転台数を0台に設定し、水位がH〜Mのときは、運転台数を1台に設定し、水位がM〜Lのときは、運転台数を2台に設定し、水位がL以下のときは、運転台数を3台に設定する。なお、運転台数を変更する値をH,M,Lとしているが、水位上昇時と下降時とで、ディファレンシャルを持たせて、台数制御を行う。S3では、前記各逆浸透膜部9の設定流量を定格流量に設定する。
【0088】
ついで、S4において、優先運転制御を行う。この制御は、図4を参照して、S41において、前記逆浸透膜部9を優先順位の高いものからS3で設定された運転台数だけ運転する。運転開始当初は、S42では増減無しが判定され、その後は、S42において、S3での運転台数が変更されたかどうかを判定する。運転台数増が判定されると、S44にて運転停止中の優先順位の高い,すなわち前記逆浸透膜部9の平均透過流束の高いものを運転する。運転台数減が判定されると、S43にて運転中の優先順位の低い,すなわち前記逆浸透膜部9の平均透過流束の低いものを運転停止する。前記逆浸透膜部9の運転/停
止は、当該逆浸透膜部9に接続した前記ポンプ10を運転/停止と、電磁弁16を開/閉により行われる。
【0089】
ついで、図3に戻って、S5において、前記流量センサ11aによる検出流量が前記設定流量となるように運転対象のポンプ9の回転数を制御する。すなわち,膜性能が低い前記各逆浸透膜部9にあっては、前記ポンプ9の回転数が高く制御され、膜性能が高い前記各逆浸透膜部9にあっては、前記ポンプ9の回転数が低く制御されることになる。
【0090】
以上説明したように、この実施例1では、前記処理水タンク8の水位に応じて、前記逆浸透膜部9の運転台数を制御する際に膜性能が高い前記逆浸透膜部9を優先して運転するようにしているので、前記各逆浸透膜部9のポンプ9の回転数が全体的に低く制御される。その結果、前記ポンプ10の消費電力を低減でき、省エネを実現できる。
【0091】
また、この実施例1によれば、膜性能が高い前記逆浸透膜部9を優先して運転するようにしているので、前記各逆浸透膜部9の膜性能の劣化を均一化できるという効果を奏する。その結果、この実施例1において、全ての前記逆浸透膜部9の膜洗浄や膜交換を一斉に行うように構成した場合には、最も膜の能力を使いきった状態で膜洗浄や膜交換を行うことができ、膜洗浄や膜交換の間隔を長く取ることができるという効果を奏する。
【0092】
この実施例1において、処理ステップS1〜S3を処理ステップS4に含ませることができる。
【実施例2】
【0093】
この発明は、前記実施例1に限定されるものではなく、図6〜図13に示す実施例2とすることができる。この実施例2について、以下に、前記実施例1と異なる部分を中心に説明する。前記実施例1と同じ構成要素および制御手順の処理ステップは、同じ符号を付して説明を省略する。図6は、実施例2の制御手順を説明するフローチャート図である。図7は、同実施例2の各膜濾過装置の概略構成図であり、図8は、運転優先順位に対する要求維持流量の関係を説明する図であり、図9は、処理水タンクの水位に対する運転パターンの関係を説明する図である。図10は、同実施例2の流量比率および水温をパラメータとした透過比率の特性図であり、図11は、同実施例2の流量比率および水温をパラメータとした水質特性図であり、図12は、同実施例2の流量比率および水温をパラメータとした有効操作圧力特性図であり、図13は、同実施例2の流量比率および水温をパラメータとした省エネ比率特性図である。
【0094】
この実施例2は、前記実施例1のように、前記各逆浸透膜部9の処理水流量の設定値を定格流量とするのではなく、前記熱機器2の要求水質Q1を維持する最低流量である要求水質維持流量R1に設定する点で前記実施例1と異なる。
【0095】
前記第一記憶手段には、膜性能の検出手順,要求水質維持流量R1を求める制御手順などを記憶している。
【0096】
また、前記第一記憶手段には、前記各逆浸透膜部9の処理水流量比率,水温および前記各逆浸透膜部の処理水水質の相互の関係特性を予め記憶している、前記関係特性は、前記各逆浸透膜部の流量比率と水温をパラメータとした処理水の水質特性である。この水質特性は、処理水に対する前記熱機器2の要求水質Q1を維持する下限の処理水流量である要求水質維持流量R1を求めるためのものである。
【0097】
前記水質特性は、この実施例2では、図11で示すようなテーブル形式で記憶している。そして、この水質特性は、つぎのようにして求めている。まず、図10に示すように、
流量比率および水温をパラメータとしてイオン透過比率を求める。このイオン透過比率の流量比率−水温特性は、補正係数K(K11〜K65,ただしK63=1.000)で表現される。そして、一例として、水温25℃,流量比率100%の水質(mg/L)の値を10.9(被処理水水質および回収率が一定の場合)として、この値に前記補正係数Kを乗じることにより、図11のように、水質の流量比率および水温をパラメータとした水質(mg/L)を求める。これを水質特性として前記記憶手段に記憶している。
【0098】
以下に、この水質特性について説明する。処理水水質をイオン除去率%(被処理水のイオン量で前記逆浸透膜部で除去されたイオン量を除した値)で表現すると、イオン除去率は、水温を一定とした場合、流量比率が増大するにつれて増大(水質が向上)し、流量比率を一定とした場合、水温が上昇するにつれて減少(水質が低下)する傾向を示す。
【0099】
前記水質特性において、処理水水質は、イオン透過率%(被処理水のイオン量で前記逆浸透膜部を透過したイオン量を除した値)で表現することができる。このイオン透過率は、水温を一定とした場合、流量比率が増大するにつれて減少(水質が向上)し、流量比率を一定とした場合、水温が上昇するにつれて増大(水質が低下)する傾向を示す。
【0100】
また、処理水水質は、イオン透過比率で表現することができる。このイオン透過比率は、特定の流量比率および特定の水温でのイオン透過率で、流量比率および水温を変化させたときのイオン透過率を除した値である。イオン透過比率は、流量比率および水温の増減に対する値の変化は、イオン透過率と同様の傾向で変化する。
【0101】
さらに、処理水水質は、水質(mg/L)で直接的に表現することができ、電気伝導度(mS/m)にて検出することができる。水質(mg/L)は、イオン透過率およびイオン透過比率と同様の傾向を示す。すなわち、水質(mg/L)は、水温を一定とした場合、流量比率が増大するにつれて減少(水質が向上)し、流量比率を一定とした場合、水温が上昇するにつれて増大(水質が低下)する傾向を示す。
【0102】
前記イオン除去率,イオン透過率は、望ましくは、リアルタイムで求めるが、この実施例1では、試運転時等のデータからイオン透過率を計算して前記第一記憶手段に入力してこれを一定条件(たとえば、水温25℃等)下における初期のイオン透過率としている。こうして求めたイオン透過率からイオン透過比率を求めておき、このイオン透過比率と、特定の流量比率および特定の水温で実測した水質(mg/L)とから処理水の水質(mg/L)特性を求める。
【0103】
この水質特性における「流量比率」は、処理流量と等価であり、操作圧とも所定の関係を有するので、「流量比率」を処理水流量または操作圧に置き換えて表現することができる。また、「水質(mg/L)」は、イオン除去率,イオン透過率,イオン透過比率と所定の関係を有するので、「水質(mg/L)」をイオン除去率,イオン透過率,イオン透過比率のいずれかで表現することができる。よって、この発明において「流量比率」は、処理水流量,操作圧を含み、「水質(mg/L)」は、電気伝導度(電気伝導率),イオン除去率,イオン透過率,イオン透過比率を含む概念とする。要するに、前記水質特性は、所定の処理水水質から処理水流量を直接的または間接的に求めることができるものであればよい。
【0104】
前記第二制御器19は、前記第一制御器12との連携により、前記第二記憶手段に記憶している図6に示す流量および水質を制御する流量・水質制御手順などを実行する。
【0105】
前記流量・水質制御手順は、前記処理水タンク8の水位に応じて前記逆浸透膜部9の運転台数を制御するとともに、処理水水質が要求水質維持流量R1となるように前記各ポン
プの回転数を制御する手順である。より具体的には、透過流束が大きい前記逆浸透膜部9の優先順位を高く設定し、図9に示すように、前記処理水タンク8の水位がH以上,H〜M2,M2〜M1,M1〜L,L以下に対して、前記逆浸透膜部9の運転台数を、それぞれ0台,1台,2台,3台,3台に設定する。そして、水位がH〜M2,M2〜M1,M1〜Lの場合、前記各逆浸透膜部9の設定流量を前記要求水質維持流量R1となるように、またL以下の場合、定格流量となるように制御する。
【0106】
つぎに、この実施例2の動作を以下に説明する。
(各膜濾過装置7の流量制御動作)
図6の制御手順に基づく、この実施例2の動作を説明する。以下の説明では、被処理水の水質が一定であると仮定して説明する。
【0107】
まず、S21において、膜性能として、透過流束に加えて、イオン透過率を検出する。イオン透過率は、図7に示すように、前記各逆浸透膜部9の入口側に設けた電気伝導度センサ11fの検出値から出口側の電気伝導度センサ11eの検出値を引いた値を電気伝導度センサ11fの検出値で割ることにより、イオン除去率を求め、(100−イオン除去率)により、イオン透過率を演算する。処理ステップS2は、前記実施例1と同様であるので、その説明を省略する。
【0108】
S6では、事前に前記第二記憶手段に記憶した前記熱機器2の要求水質Q1を読み出す(判定する)。S7において、前記水温センサ11aにより水温T0を検出する。
【0109】
ついで、S81において、被処理水の水温および膜性能から図8に示すような運転優先順位と要求水質維持流量との関係を設定する。すなわち、まず、前記各逆浸透膜部9の前記要求水質維持流量R1をつぎのようにして求める。前記第一記憶手段に記憶している図11に示すような水質特性を読み出し、この水質特性について、S1で検出したイオン透過率を前記各逆浸透膜部9の初期イオン透過率(製品出荷時のイオン透過率)の値で除した膜の劣化に基づく補正係数Yにより補正する。具体的には、図11の水質値にYを乗じて前記水質特性を補正する。すなわち、補正された水質特性は、10.9×K(イオン透過比率)×Yにて求められる。
【0110】
ついで、S6にて判定された要求水質Q1と、S7による検出水温T0とに基づき、前記各逆浸透膜部9毎に検出したイオン透過率に基づき補正した前記各水質特性から前記要求水質Q1を満たす最小流量である前記要求水質維持流量R1を演算する。具体的には、今、濾過膜装置7−1の水質特性が図11で表現されたとし、Y=1とし、要求水質Q1がQ23であり、検出水温が25℃であると仮定する。すると、図11のテーブルにて、25℃の列から、水質がQ23となる流量比率を求められる。すなわち、要求水質がQ23の場合は、流量比率は、60%となる。要求水質Q1の値がテーブルに無い場合、例えばQ23とQ33との間である場合は、流量比率60%と70%との間で比例配分して求める。すなわち、60%+10%×(Q23−Q1)/(Q23−Q33)で求めることができる。
【0111】
また、前記濾過膜装置7−2,7−3の膜性能(透過流束)が低下して、それぞれ流量比率70%,80%で要求水質Q1を満たすような水質特性になったとすると、図8に示すように、前記各濾過膜装置7−1,7−2,7−3の運転優先順位をそれぞれ優先順位1,2,3に設定し、流量比率を60%,70%,80%に設定する。
【0112】
そして、S8において、図9に示すように、前記処理水タンク8の水位と運転優先順位とに応じて、前記濾過膜装置7−1を停止,流量制御運転(流量比率60%),定格運転のいずれかの運転パターンに設定し、前記濾過膜装置7−2を停止,流量制御運転(流量
比率70%),定格運転のいずれかの運転パターンに設定し、前記濾過膜装置7−3を停止,流量制御運転(流量比率80%),定格運転のいずれかの運転パターンに設定する。S3の処理は、前記実施例1と同様であるので、その説明を省略する。また、S4の処理も前記実施例1と同様であるので、その説明を省略する。
【0113】
ついで、S5において、前記各逆浸透膜部9において前記各流量センサ11aによる検出流量がS8で設定された運転パターンの設定流量(流量比率60%,流量比率70%,流量比率80%,定格流量のいずれか)となるように当該前記各逆浸透膜部9に接続のポンプ9の回転数を制御する。
【0114】
以上説明したように、この実施例2では、前記実施例1と同様に、前記処理水タンク8の水位に応じて、前記逆浸透膜部9の運転台数を制御する際に膜性能が高い前記逆浸透膜部9を優先して運転するようにしているので、前記各逆浸透膜部9のポンプ9の回転数が全体的に低く制御される。また、前記各逆浸透膜部9の設定処理水流量を前記水位がH〜M2,M2〜M1,M1〜Lの場合において、各逆浸透膜部の膜性能変化に応じた前記要求水質維持流量R1としているので、処理水水質が過剰水質とならないように、前記各逆浸透膜部9のポンプ9の回転数が全体的に低く制御される。その結果、前記ポンプ10の消費電力を低減でき、省エネを実現できる。
【0115】
ここで、処理水流量が低くなるように前記各ポンプ10を低回転数で運転することにより、省エネが実現される理由について説明する。今、前記透過流束を40(L/m2・h・MPa),定格流量を4000(L/h)とした場合、前記逆浸透膜部9の流量比率(処理水流量)と水温とをパラメータとした操作圧特性は、例えば、図12で示すような特性となる。この特性は、水温を一定とした場合、流量比率が増大するにつれて当該処理水流量とするために必要とする操作圧が増大する傾向を示している。
【0116】
一方、前記ポンプの消費電力は、操作圧力の1.5乗に比例する。すなわち、省エネ比率=(W2/W1)∝(P2/P1)1.5で表される。操作圧力特性が図12であるとすると、省エネ比率は、図13のようになる。したがって、要求水質Q1=Q33を満たす最小流量とする流量比率が70%運転の場合、ポンプ消費電力比は、100/70(時間比)×0.586(ポンプ消費電力比)=0.837となり、16.3%の省電力となる。同様に60%運転なら22.5%の省電力,50%運転なら29.2%の省電力となる。
【0117】
また、この実施例2においても、前記実施例1と同様に、膜性能が高い前記逆浸透膜部9を優先して運転するようにしているので、前記各逆浸透膜部9の膜性能の劣化を均一化できるという効果を奏する。
【実施例3】
【0118】
また、この発明は、図14,図15の処理手順を実行する実施例3とすることができる。この実施例3について、以下に、前記実施例1,2と異なる部分を中心に説明する。前記実施例1,2と同じ構成要素および制御手順の処理ステップは、同じ符号を付して説明を省略する。図14,図15は、実施例3の制御手順を説明するフローチャート図であり、図16は、処理水タンクの水位に対する運転パターンの関係を説明する図である。

【0119】
この実施例3は、前記実施例2のように、前記逆浸透膜部9の運転台数を前記処理水タンク8の水位だけで決めるのではなく、また前記各逆浸透膜部9の処理水流量の設定値を定格流量または前記要求水質維持流量R1とするのではない。この実施例3は、処理水流量および処理水水質を所定範囲とするように前記逆浸透膜部9の運転台数と前記各ポンプ
の回転数制御する点で、前記実施例1,2と異なる。
【0120】
前記第二制御器19は、前記第一制御器12との連携により、前記第二記憶手段に記憶している図14,図15に示す流量および水質を制御する流量・水質制御手順などを実行する。
【0121】
前記流量・水質制御手順は、前記逆浸透膜部9の運転台数と前記各ポンプの回転数を制御することにより処理水流量および処理水水質を所定範囲となるようにする制御手順である。より具体的には、前記流量・水質制御手順は、処理水流量については、その値を前記熱機器2からの総要求水量R0以上とし、前記各逆浸透膜部9による処理水水質については、その値を要求水質Q1以上で、過剰水質とならないようにできるだけ要求水質Q1に近くなるようする制御である。
【0122】
今、前記各濾過膜装置7−1,7−2,7−3の運転優先順位と要求水質Q1を満たす流量比率との関係は、図8と同じとし、前記処理水タンク8の水位と総要求水量との関係を図16に示すものとする。
【0123】
(各膜濾過装置7の流量制御動作)
つぎに、図14,図15の制御手順に基づく、この実施例3の動作を説明する。以下の説明では、被処理水の水質が一定であると仮定して説明する。
【0124】
図14を参照して、S21,S2,S6,S7,S81は、前記実施例2と同様であるのでその説明を省略する。
【0125】
S9において、前記処理水タンク8の水位に応じて、前記総要求水量R0を設定し、図15に示すS10の優先制御運転の処理を行う。
【0126】
図15を参照して、S11において、供給水量(前記各濾過膜装置7を流れる処理水流量の合計)≧総要求水量を判定する。今、初期の前記処理水タンク8の水位がL以下であり、前記各濾過膜装置7を定格運転していると仮定する。前記処理水タンク8の水位が上昇し、水位がLを超えると、総要求水量が8t/hとなるので、S12へ移行する。S12では、定格運転中の逆浸透膜部9の有無が判定される。今の場合、YESが判定され、S13にて定格運転中の優先度の一番低い逆浸透膜部9−3を図8の流量制御運転としたときの供給流量≧総要求水量が判定される。今の場合、11.2t/h≧10t/hでYESが判定され、S14へ移行して、先ず運転優先順位最下記の前記逆浸透膜部9−3を流量制御運転(流量比率80%)とする。
【0127】
ついで、S11,S12,S13,S14の処理により、運転優先順位2の前記逆浸透膜部9−2を流量制御運転(流量比率70%)とし、運転優先順位1の前記逆浸透膜部9−1を流量制御運転(流量比率60%)とする。こうして、前記処理水タンク8の水位がM(>L)〜Lの間は、図16に示すように、前記各逆浸透膜部9の3台とも流量制御運転とされる。
【0128】
ついで、前記処理水タンク8の水位が上昇し、水位がMを超えると、総要求水量が4t/hとなるので、S12の処理において、NOが判定され、S15において、流量制御運転中の優先度の一番低い逆浸透膜部9−3を運転停止したとき、供給流量≧総要求水量が判定される。今の場合、5.2t/h≧4t/hでYESが判定され、S16へ移行して図16に示すように前記逆浸透膜部9−3を停止する。こうして、前記処理水タンク8の水位がH(>M)〜Mの間は、図16に示すように、前記各逆浸透膜部9−1,9−2が流量制御運転とされる。
【0129】
さらに、前記処理水タンク8の水位が上昇し、水位がHを超えると、総要求水量が0t/hとなるので、S12,S15,S16の処理により、運転優先順位2の前記逆浸透膜部9−2が運転停止され、ついで運転優先順位1の前記逆浸透膜部9−1が運転停止される。こうして、前記処理水タンク8の水位がH以上の間は、図16に示すように、前記各逆浸透膜部9−1,9−2,9−3の運転が停止される。
【0130】
逆に、前記処理水タンク8の水位がH以下に下降すると、S11にてNOが判定され、S17にてYESが判定される。そして、S18にて運転停止中で運転優先順位1の前記逆浸透膜部9−1が流量制御運転(流量比率60%)で運転され、S11,S17,S18の処理により、運転優先順位2の前記逆浸透膜部9−2が流量制御運転(流量比率60%)で運転される。こうして、前記処理水タンク8の水位がH〜Mの間は、図16に示すように、前記各逆浸透膜部9−1,9−2が流量制御運転とされる。
【0131】
同様に、水位が下降し、M〜Lの間は、図16に示すように、前記各逆浸透膜部9の3台とも流量制御運転とされる。さらに、水位が、L以下となると、S17にてNOが判定され、S19にて、流量制御運転中で、運転優先順位1の前記逆浸透膜部9−運転される。そして、S11,S17,S19の処理により、前記逆浸透膜部9−2,9−3が順次定格運転される。こうして、水位がL以下では、全ての逆浸透膜部9が定格運転される。
【0132】
以上説明したように、この実施例3では、前記各逆浸透膜部9が前記要求水質Q1を満たす要求水質維持流量で運転され、かつ前記供給水量が要求水量以上となるように、前記逆浸透膜部9の運転台数の制御と前記ポンプ10の回転数制御が行われる。そして、運転台数制御を行う際には、膜性能が高い前記逆浸透膜部9を優先して運転するようにしているので、濾過水質に関してシステムの性能を最適化し、各逆浸透膜部の膜の詰りや劣化を均一化することができる。また、前記ポンプ10を小流量,低回転数で運転することができる。その結果、システム全体の前記ポンプ10の消費電力を低減でき、省エネを実現できる。
【0133】
なお、この実施例3の変形例として、図17に示すように、前記処理水タンクの水位をさらに細分化して、タンク水位に対する総要求水量を設定することができる。この場合、前記各逆浸透膜部9−1,9−2,9−3をそれぞれ、運転優先順位1,2,3とし、要求維持水量を流量比率60%,70%,80%とした場合、各水位における運転パターンと供給水量とは、図14、図15の制御手順により、図17に示されるように制御される。なお、図17において、α=(H−L)/5である。
【実施例4】
【0134】
この発明は、前記実施例1〜3に限定されるものではなく、図18に示す実施例4を含むものである。この実施例4は、互いに並列接続され、同じ定格容量の複数の逆浸透膜部9(9−1,9−2,9−3)と、前記各逆浸透膜部9に共通に設けられ被処理水を前記各逆浸透膜部へ供給する回転数制御可能なポンプ10とから構成されることを特徴とする水質改質システムである。以下、この実施例4において、前記実施例1〜3と異なる部分を中心に説明し、同じ部分は同じ符号を付して説明を省略する。
【0135】
前記実施例1〜3と異なるのは、各膜濾過装置7(7−1,7−2,7−3)に、ポンプを備えず、各膜濾過装置7(7−1,7−2,7−3)に共通のポンプ10を設けている点である。
【0136】
この実施例4においても、前記実施例3と同様に、所定範囲の処理水流量と処理水水質となるように、運転台数を制御するとともに、前記ポンプ10の回転数を制御する。そし
て、台数制御を行う際には、膜性能が高い前記逆浸透膜部9を優先して使用(膜性能がたかいものを運転、または膜性能が低いものを停止)するように構成している。前記要求水質維持流量R1は、前記逆浸透膜部9の中でもっとも多い値が採用される。
【実施例5】
【0137】
この発明は、前記実施例1〜4に限定されるものではなく、図19に示す実施例5を含むものである。以下、この実施例5において、前記実施例1〜4と異なる部分を中心に説明し、同じ部分は同じ符号を付して説明を省略する。図19において、後記各脱気膜部22,各溶存酸素濃度センサ24の制御器19への信号線は図示省略している。
【0138】
この実施例5は、被処理水中の不純物を除去して機器へ供給する互いに並列接続された複数の逆浸透膜部9(9−1,9−2,9−3)と、前記各逆浸透膜部9毎に設けられ被処理水を前記逆浸透膜部9へ供給するポンプ10(10−1,10−2,10−3)と、前記逆浸透膜部9の下流側に接続される膜脱気装置20と、第三制御器21とを備えている。前記膜脱気装置20は、複数の脱気膜部22(22−1,22−2,22−3)が並列に接続されて構成される。前記各脱気膜部22は、周知の構成のもので、中空糸膜などで形成される脱気膜(図示省略)の一方側に被処理水を流し、他方側を真空ポンプ(図示省略)で真空引きすることにより被処理水中の溶存気体を除去するものである。前記給水ライン3の各脱気膜部22の上流側には、前記各脱気膜部22への給水の流れを制御する電磁弁23(23−1,23−2,23−3)を設けている。
【0139】
そして、前記各脱気膜部22の下流側の溶存酸素濃度を検出する溶存酸濃度センサ24(24−1,24−2,24−3)により前記各脱気膜部22の膜性能を検出する膜性能検出手段を備えている。前記第三制御器21は、前記第二制御器19の機能に加えて、前記膜性能検出手段からの信号に基づき、前記各脱気膜部22の膜性能を判定するとともに、前記脱気膜部22の運転台数増または減と判定したとき、膜性能が高い前記脱気膜部22を優先して使用(膜性能がたかいものを運転、または膜性能が低いものを停止)するように構成している。前記脱気膜部22の運転台数は、前記膜脱気装置20を流れる処理水量に応じて制御され、運転台数は、前記電磁弁23の開閉により制御される。前記電磁弁23を閉じる際には、前記真空ポンプを停止する。
【0140】
この実施例5のその他の構成は、前記実施例1と同様とするが、前記実施例2〜4と同様とすることができる。
【0141】
この実施例5によれば、水質に関してシステムの性能を最適化し、前記各逆浸透膜部9の膜の詰りや劣化を均一化することができる。また、膜性能が高い逆浸透膜部9を優先して運転するので、運転対象の前記各逆浸透膜部9において所定の処理水流量および/または処理水水質を得る際に前記ポンプの回転数を低くすることができ、前記ポンプ10の消費電力を低減できる。
【0142】
また、膜性能が高い前記脱気膜部22を優先して運転するので、脱気水質に関してシステムの性能を最適化し、各脱気膜部22の膜の詰りや劣化を均一化することができるという効果を奏する。
【0143】
本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。すなわち、処理水供給水量および処理水水質の制御は、図14,15に限定されるものではなく、種々変更可能である。例えば、特許文献2(特開2001−239134号公報)に記載のように、被処理水を昇圧して並列に接続した複数個の逆浸透膜部に供給し、被処理水を得る逆浸透処理装置を運転するに際し、前記被処理水の温度および/または前記被処理水の水質に応じて前記逆浸透膜部の運転本数を制御する制御とすることができる。この制
御は、具体的には、前記処理水の流量および水質が所定の範囲内となるように、被処理水の温度変化に応じて被処理水の供給圧力を制御し、かつ、逆浸透膜部の運転台数を制御するものである。
【0144】
また、前記実施例1〜4において、特開2008−658号公報に記載のように、つぎの構成を付加することができる。その構成は、給水中の不純物を除去する逆浸透膜部を備え、この逆浸透膜部からの濃縮水の一部を排水するとともに、残部を前記逆浸透膜部の上流側へ還流させる水質改質システムであって、濃縮水の還流量調節手段と、前記逆浸透膜部からの濃縮水の排水量または前記逆浸透膜部からの透過水量に応じて、前記還流量調節手段を制御する制御手段とを備えるものである。
【0145】
こうした構成を付加することにより、前記所定流量で前記ポンプを制御する際に、透過水量に対する濃縮水量の割合を維持することができる。これにより、前記逆浸透膜部へ給水を供給するためのポンプにおいて無駄な電力を消費することを防止することができるとともに、前記逆浸透膜部の濾過膜の表面での流速が維持されてファウリングによる前記濾過膜の詰まりを防止することができるという効果を奏する。
【0146】
また、前記実施例2〜4においても、前記実施例1と同様に、前記第二制御器19は、前記第二電気伝導度センサ17の検出信号により、要求水質Q1が満たされているかどうかを判定し、前記流量センサ18の検出信号により、設定流量が満たされているかどうかを判定し、満たされていない場合には、前記通報手段により使用者に通報する制御も行う。この通報は、ブザーや表示パネル(図示省略)により、使用者に知らせる通報および通信による管理装置(図示省略)への通報を含む。また、要求水質Q1が満たされていない場合、要求水質Q1を満たすように設定された流量比率を大きくする制御を行うことが望ましい。
【0147】
さらに、この発明は、前記実施例5において、前記濾過膜装置7を備えず、前記膜脱気装置20のみを備える水質改質システムにもて起用可能である。
【符号の説明】
【0148】
1 水質改質システム
2 熱機器
3 給水ライン
7 膜濾過装置
8 処理水タンク
9 逆浸透膜部
10 ポンプ
11a 流量センサ
11b 水温センサ
11c 入口圧力センサ
11d 出口背圧センサ
11e 電気伝導センサ
11f 電気伝導センサ
12 第一制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水中の不純物を除去して処理水を機器へ供給する互いに並列接続された複数の分離膜部と、被処理水を前記各分離膜部へ供給するポンプと、前記分離膜部の運転台数を制御する制御手段とを備える水質改質システムであって、
前記各分離膜部の膜性能を検出する膜性能検出手段を備え、
前記制御手段は、前記分離膜部の運転台数の増減を判定し、運転台数増または減と判定したとき、膜性能が高い前記分離膜部を優先して運転および/または運転中の膜性能が低い前記分離膜部を優先して停止することを特徴とする水質改質システム。
【請求項2】
前記分離膜部が逆浸透膜部であり、
前記ポンプを回転数制御可能に構成し、
前記膜性能検出手段が透過流束を検出するものであり、
前記制御手段は、透過流束が高い前記逆浸透膜部を優先して運転および/または透過流束が低い前記逆浸透膜部を優先して停止することを特徴とする請求項1に記載の水質改質システム。
【請求項3】
被処理水中の不純物を除去して機器へ供給する互いに並列接続された複数の濾過膜部と、前記各濾過膜部毎に設けられ被処理水を前記濾過膜部へ供給するポンプと、前記濾過膜部の下流側に接続される膜脱気装置と、前記ポンプを制御する制御手段とを備える水質改質システムであって、
前記制御手段は、前記濾過膜部の運転台数の増減を判定し、運転台数増または減と判定したとき、膜性能が高い前記濾過膜部を優先して運転および/または膜性能が低い前記濾過膜部を優先して停止することを特徴とする水質改質システム。
【請求項4】
前記膜脱気装置が互いに並列に接続される複数の脱気膜部から構成され、
前記各脱気膜部の給水ラインに処理水の流れを制御する弁を設け、
前記制御手段は、前記脱気膜部の運転台数の増減を判定し、運転台数増または減と判定したとき、膜性能が高い前記脱気膜部を優先して運転および/または膜性能が低い前記脱気膜部を優先して停止することを特徴とする請求項3に記載の水質改質システム。
【請求項5】
被処理水中の不純物を除去して処理水を機器へ供給する互いに並列接続された複数の分離膜部と、被処理水を前記各分離膜部へ供給するポンプとを備え、前記分離膜部の運転台数を制御する水質改質方法であって、
前記各分離膜部の膜性能を検出する第一ステップと、
前記分離膜部の運転台数の増減を判定する第二ステップと、
前記第二ステップにおいて運転台数増または減と判定したとき、前記第一ステップにより検出された膜性能が高い前記分離膜部を優先して運転および/または膜性能が低い前記分離膜部を優先して停止する第三ステップとを行うことを特徴とする水質改質方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−162501(P2010−162501A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7914(P2009−7914)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】