説明

水質浄化装置及びそれを利用した水耕栽培装置

【課題】 本発明は,水質浄化材とファトレディメーションを組み合わせて貯水池等の汚濁水の水質浄化を図り,水質浄化作用を利用して植生植物を栽培する。
【解決手段】この水耕栽培装置は,水域20に浮遊する浮島1,浮島1に多孔部材13を介して取り付け且つ水質浄化材7を収容した容器6,容器6の下端部22から上端部23に空気を放出させる散気管5,散気管5に空気を送り込むポンプ3,浮島1から水中に垂下して水域20に区画領域24を形成するカーテン12,金網容器15に載置された植物を植えつける栽培床17から構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,例えば,汚濁水,汚水等の水が流れ込む貯水池,調整池,溜め池,湖等の水域における水質を浄化する水質浄化装置及びそれを利用して植物を栽培する水耕栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年,汚濁水等の汚水が流入する貯水池の底部には,上下間の水の移動が少なく淀んでしまうので,比較的に簡単に酸欠状態になりやすく,悪臭の発生や魚介類の生息が困難な環境に陥り易い。近年,富栄養化に伴う浄水場の貯水池やゴルフ場の調整池等の水質悪化が問題視されつつあり,今後益々重要な問題になってくるのは確実であり,これらの水域での水質を浄化することが社会問題になっている。
【0003】
従来,栄養塩類利用装置として,種々の領域から汚水等の流入が多い調整池等の閉鎖水域において,水域底部に堆積する栄養塩を利用することにより植物等を増殖すると共に水域の浄化を促進するものが知られている。上記栄養塩類利用装置は,例えば,底部と連通する縦樋を設けた有底容器,該容器の上部において容器全面を覆うように装着された栽培床,該栽培床上に植えつけられた水性植物又は付着された微生物,閉鎖水域の底部から栄養塩類を含む水を有底容器の底部に供給するホース及びポンプとから構成されている。上記栄養塩類利用装置は,容器上部に設けた栽培床を通過した水は,容器からオーバフローさせ,閉鎖水域に戻すようにしたものであり,栽培床が自然石,ゼオライト等の多孔質の素材又はポリウレタン,ポリエチレン等の水不溶性の素材を底部から上部に向けて粒径が次第に小さくなるように構成されている(例えば,特許文献1参照)。
【0004】
従来, 池水等の浄化装置として,濾材の浄水機能を十分に発揮させ,再生利用可能なものが知られている。該浄化装置は,フロートを用いて池等の水中に浮かべるようにしたケージ内に龍閃石等の濾材を装填し,池中の任意の場所に係留したものである。また,該浄化装置は,フロートを容器状に形成し,或いはフロートに容器を付設し,容器内部で花等の植物を栽培できるように構成されている(例えば,特許文献2参照)。
【0005】
また,従来知られている植栽基盤利用の水質浄化装置は,活着率が高く,高い浄化効率を安定的に維持できるものであり,植栽基盤となる細粒土を植物の根系が貫通可能な孔を持つ底壁に上記孔より大きな中粒土を介して載置し,植栽基盤を水面に底壁を浸水させて支持し,孔から水中に生長させた植物の根系に水中汚濁物質を吸着させ吸収させたものである。また,上記水質浄化装置は,植栽基盤の下方の水中に浄化用接触濾床を配置し,植栽基盤から水中に生長させた植物の根系を濾床に絡みつかせ,また,浄化用接触濾床を溝状水路内の水中に水路長さ方向と交差させて設け,植栽基盤を濾床上の水面に水路全幅にわたり設けたものである(例えば,特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平7−60286号公報
【特許文献2】特開平8−164379号公報
【特許文献3】特開2003−19494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,従来の水質浄化装置や水耕栽培装置は,貯水池等の水域に単に栽培床を浮遊させたものであり,水質の浄化には余りにも広い領域であり,その効力が効果的で無かったり,また,水浄化の効力が植物等の生育に作用しなかったり,或いは,汚濁水,汚水,廃水等の原水の水域での循環がなく,汚濁水等の水が浄化されたとしても,浄化水が周囲の原水と混合して淀んでしまうという問題があった。
【0007】
この発明の目的は,上記の課題を解決することであり,貯水池,調整池,溜め池,湖等の水域においてカーテンによって所定の領域に限定する区画領域を形成し,該区画領域に形成された水循環系に水質浄化材を配設し,ファトレディメーションという植生の栄養塩吸収による水質浄化作用を組み合わせ,所定の水域に水の循環を盛んにして活性化させた流動床を形成し,併せて原水に含まれる栄養塩を植物に取り入れさせて植物栽培を行って水を浄化する水質浄化装置を提供すると共に,該水質浄化装置を用いて栽培床を作製し,水に含まれる栄養塩を植物に取り入れて花,野菜等の植生植物の栽培を行うものであって,植生による良好な水環境の創生を目指すと共に,装置自体を安価に作る水耕栽培装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は,貯水池等の水域における水面から浮き上がっている浮島,前記浮島に金網等の多孔部材を介して水中に延びた状態に取り付けられた少なくとも上端を開放したゼオライト等の水質浄化材を収容した容器,前記容器の下端部に開口する噴出口から前記容器内に空気を噴き出させる散気管,前記散気管に前記空気を送り込むため駆動するポンプ,及び前記浮島から前記水中に垂下して前記水域に前記容器の周りに区画領域を形成するカーテンから構成されていることから成る水質浄化装置に関する。
【0009】
また,前記カーテンは,前記容器の周りの前記区画領域内の水と前記区画領域外の原水とを前記容器の下方側を除く周りを遮蔽するものである。
【0010】
また,前記容器は,上端部と下端部とが前記空気と前記水とを通過させる網状に形成され,周囲部が前記空気と前記水とを下方から上方へ流動させる壁面に形成されている。
【0011】
この水質浄化装置は,前記浮島には,前記ポンプ,電気引込み線用支柱,前記支柱を支える支柱受け金具,前記浮島を前記水域の所定の場所に繋留するアンカー,及び前記浮島に取付け取外し可能なフロー材が設けられているものである。
【0012】
また,前記容器及び前記カーテンは,合成樹脂材から作製されている。
【0013】
この水質浄化装置は,前記散気管から噴出される前記空気の流れによって前記区画領域内に前記水が循環する流動床が形成されるものである。
【0014】
また,この発明は,前記水質浄化装置において,前記浮島に取り付けられ且つ前記容器が接続した前記多孔部材には植生植物を植えつけるポット等で形成された栽培床が搭載されていることから成る水耕栽培装置に関する。
【発明の効果】
【0015】
この水質浄化装置及び水耕栽培装置は,上記のように構成されているので,限られた所定の水域における汚濁水,汚水,廃水等の水をポンプのエアレーションによって水循環させて水に酸素を溶け込ませると共にゼオライト,酸化チタン,自然石,触媒等の水質浄化材の助けによって迅速に良好に浄化し,しかも所定の水域において低エネルギで水を循環させて良好な流動床を作り,水域での酸欠状態を防止して植生植物の生育に好ましい環境を作り出し,しかも簡単に良好な栽培床を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下,図面を参照して,この発明による水質浄化装置及びそれを利用した水耕栽培装置を説明する。この水質浄化装置は,ファトレディメーションという植生の栄養塩吸収による水質浄化作用を利用し,貯水池,溜め池,湖等の水域20に浮遊させた合成樹脂,パイプ材,竹材等のフロー材から成る浮島1を浮かべたフロータイプのものである。また,この水耕栽培装置は,水質浄化装置を利用することによって原水を浄化すると共に,その時における水に含まれる栄養塩を有効に野菜,花等の植生植物に吸収させて植物を栽培するものである。
【0017】
この水質浄化装置は,主として,汚濁水,汚水,廃水等の水が溜まっている調整池,貯水池,溜め池,湖等の水域20に浮遊して水面21から浮き上がっている浮島1,浮島1に取り付けられた金網等の多孔部材13を介して水中に延びるように取り付けられ且つ少なくとも上端部23が開放された水質浄化材7を収容する容器6,容器6の下端部22に開口する噴出口16から噴出する空気を容器6内を上昇させて多孔部材13から区画領域24内に放出させる散気管5,散気管5に空気を送り込むポンプ3,及び浮島1の周囲から水中に垂下して区画領域を形成して原水18と浄化水19とを遮断するカーテン12から構成されている。容器6は,水域20の水や空気が下端から上端へ流動でき,水質浄化材7が水中に落下しないように下端部22が網状形状に形成され,また,容器6は,上端部23が水や空気が流動できるように開口したり,又は多孔蓋が設けられた状態に形成されている。水質浄化材7は,例えば,ゼオライト,酸化チタン,自然石,触媒,石灰等の材料であって,水質を浄化する作用を有している。ポンプ3は,水中へのエアレーションのためであり,容器6へのエアレーションに伴って区画領域24内に水と空気との流動床が形成され,水が空気(酸素)と水質浄化材7の作用によって浄化される。
【0018】
この水質浄化装置では,浮島1は,種々の貯水池,調整池,溜め池,湖等の水域20に設置でき,また,サイズ,形状等も水域20に合わせて変更できるものである。また,この水質浄化装置では,容器6内に入れる水質浄化材7は,設置する水域の水質に応じて種々のものを選択して決定されている。また,浮島1には,電気引込み線用支柱2,支柱2を支える支柱受け金具9及び浮島1を水域20に繋留するアンカー11が設けられている。浮島1は,風,波,流れ等で所定の場所から移動したり,転倒しないようにアンカー11で係留されている。また,浮島1は,水域20の所望の場所へ移動させる場合には,アンカー11を引き上げたり,取り外して移動させればよいものである。
【0019】
また,支柱2には,電線14の端子が接続する防水コンセント10が取り付けられている。また,浮島1は,それ自体,合成樹脂等のフロー材8で作製されているが,所望に応じて浮力を増すために,別途の種々の浮き材即ちフロー材8を浮島1の下面,側面等に取付け取外し可能に取り付けてもよいものである。
【0020】
容器6及び散気管5は,耐腐食性である程度の強度がある材料であれば作製できるが,特に,合成樹脂材で作製することが耐腐食性,軽量化,耐久性の点から好ましい。水質浄化材7は,ゼオライト,酸化チタン,自然石,触媒,石灰等の材料,微生物を担持させる多孔質構造を持つ担体を構成するポリウレタン等の水不溶性の材料,消化剤等から成り,容器6に充填されている。容器6は,下方から上方へ空気を通過させ,それに伴って区画領域24に流動床が形成されることになる。また,カーテン12は,水域20の原水18と浄化水等の区画領域24内の水19とを容器6の下方を除く周りを区画或いは遮蔽する機能を果たすものであり,例えば,合成樹脂材等の材料から作製されている。
【0021】
更に,ポンプ3は,浮島1に搭載されおり,空気を容器6中に通して水域20における区画領域24の水をエアレーションし,水を流動させる流動床を形成させるため駆動される。ポンプ3は,駆動のため種々の電源を利用することができ,例えば,商用電源,山間地では太陽電池,発電機等を利用することができる。図1では,ポンプ3は,商用電源から電線14を通じて送られた電力を,防水コンセント10に接続することによって電力が与えられる。
【0022】
ポンプ3は,電源からの電力によって駆動され,空気をパイプから成る散気管5を通じて噴出口16から容器6内へ噴出する。そこで,容器6へ送り込まれた空気は,下端部22から上端部23へ泡となって浮力で上昇流として移動し,それと共に容器6内の水は酸素が供給されると共に水質浄化材7に接して浄化されて上昇流となって区画領域24で循環し,金網等の多孔部材13の通路を通って容器6外へ流出し,カーテン12内の区画領域内に水が循環流動する矢視のように流動床が形成される。空気は,容器6内に水の流動を発生させ,水は水質浄化材7に触れて活性化して浄化され,容器6の上端23から排水され,栄養塩を植物に吸収された浄化水19が生成される。
【0023】
また,この水質浄化装置は,そのままの状態で水耕栽培装置に利用でき,その場合には,水質浄化装置において,金網容器等から成る多孔部材15に載置され且つ植物を植えつけるポット等に入れられた栽培床17が設けられている。栽培床17は,植生植物4が浄化水19に含まれている栄養塩が直接吸収できるように,多孔部材15に入れられて作られている。容器6の上方には,多孔部材15が浮島1に配設されており,多孔部材15内には植物4の栽培床17が作られているので,植物4は.浄化水19に含まれる栄養塩を吸収して取り入れ,生長することになり,水耕栽培を可能にする。
【産業上の利用可能性】
【0024】
この発明は,及びそれを利用した水耕栽培装置は,貯水池,調整池,溜め池,湖等の水域における汚濁水,汚水,廃水等の水を浄化する水質浄化装置に適用して好ましく,また,水質浄化装置で浄化された浄化水を用いて水に含まれる栄養塩を植物に吸収させて育成する花,野菜等の植物を栽培する水耕栽培装置に適用して好ましいものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明による水質浄化装置を利用した水耕栽培装置の一実施例を示す概略断面図である。
【図2】図1の水耕栽培装置を示す平面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 浮島
2 支柱
3 ポンプ
4 植生植物
5 散気管
6 容器
7 水質浄化材
8 フロー材
9 支柱受け金物
10 防水コンセント
11 アンカー
12 カーテン
13,15 多孔部材
14 電線
16 噴出口
17 栽培床
18 原水
19 区画領域内の水
20 水域
21 水面
22 下端部
23 上端部
24 区画領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯水池等の水域における水面から浮き上がっている浮島,前記浮島に金網等の多孔部材を介して水中に延びた状態に取り付けられた少なくとも上端を開放したゼオライト等の水質浄化材を収容した容器,前記容器の下端部に開口する噴出口から前記容器内に空気を噴き出させる散気管,前記散気管に前記空気を送り込むため駆動するポンプ,及び前記浮島から前記水中に垂下して前記水域に前記容器の周りに区画領域を形成するカーテンから構成されていることから成る水質浄化装置。
【請求項2】
前記カーテンは,前記容器の周りの前記区画領域内の水と前記区画領域外の原水とを前記容器の下方側を除く周りを遮蔽することから成る請求項1に記載の水質浄化装置。
【請求項3】
前記容器は,上端部と下端部とが前記空気と前記水とを通過させる網状に形成され,周囲部が前記空気と前記水とを下方から上方へ流動させる壁面に形成されていることから成る請求項1又は2に記載の水質浄化装置。
【請求項4】
前記浮島には,前記ポンプ,電気引込み線用支柱,前記支柱を支える支柱受け金具,前記浮島を前記水域の所定の場所に繋留するアンカー,及び前記浮島に取付け取外し可能なフロー材が設けられていることから成る請求項1〜3のいずれか1項に記載の水質浄化装置。
【請求項5】
前記容器及び前記カーテンは,合成樹脂材から作製されていることから成る請求項1〜4のいずれか1項に記載の水質浄化装置。
【請求項6】
前記散気管から噴出される前記空気の流れによって前記区画領域内に前記水が循環する流動床が形成されることから成る請求項1〜5のいずれか1項に記載の水質浄化装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載されている前記水質浄化装置において,前記浮島に取り付けられ且つ前記容器が接続した前記多孔部材には植生植物を植えつけるポット等で形成された栽培床が搭載されていることから成る水耕栽培装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−289275(P2006−289275A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−114496(P2005−114496)
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【出願人】(505134741)松村産業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】