説明

永久磁石形電動機の回転子

【課題】
低コギングに設計された永久磁石形電動機をケーシングに組み込んだ後にコギング性能を悪化させない永久磁石形電動機の回転子を提供する。
【解決手段】
固定子と回転子を有し、回転子は回転軸に固定し、前記固定子の内径中心で回転自在に軸支持された回転子であって、前記回転子には永久磁石が配置され回転子表面上の磁極は連続的もしくは階段状にずれて斜めに磁化されたスキュー構造であり、前記回転子を固定した回転軸が回転軸方向に移動可能とした永久磁石形電動機の回転子において、前記回転子の回転軸方向に移動する移動量(L)が、磁極がスキューして隣接している磁極間の非磁極幅(D)以下とした永久磁石形電動機の回転子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低コギングトルクに設計された永久磁石形電動機のコギングトルク性能を悪化させないようにした永久磁石形電動機の回転子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電動機は小型化され、高出力、高トルクの電動機が求められている。特に、電気自動車等の車両用途に用いられる電動機等は車両搭載スペースから小型、軽量化が求められている。一方、この様な電動機においては高出力、高トルクが故に固定子と回転子との間に発生する磁気吸引力によりコギングトルクや、それに起因する音、振動等が発生している。これらの対策は従来より種々検討されてきており、例えば、円筒状の永久磁石を回転子の表面に貼り付けた永久磁石形回転子では回転軸に対して、捻って着磁をするスキュー着磁を施しコギングトルクを低減する方法が用いられている。しかしながら、このスキュー着磁を施した永久磁石形回転子は電動機の駆動時に、このスキュー着磁があるが故に回転軸方向にスラスト力が働き軸受け側の一方に回転子が押し付けられ、本来得られるべきコギングトルクの低減や、それを起因する音、振動等の低減が確実に行うことができなかった。
【0003】
このような問題を解決するために、特許文献1の特開平8−298735に開示されているように、円筒状の永久磁石を貼り付けた回転子の軸方向中央で2分割しV字型にスキュー着磁した永久磁石形回転子が想起されている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−298735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、回転子自身の可動と、負荷との接続によって負荷側からの応力を受けると固定子と回転子との磁気中心がずれてしまい想定していたコギングトルクの低減や、コギングトルクに起因する音、振動等を低減することができない場合があった。特に、電動パワーステアリング等に用いる車両用途の電動機に用いる場合は問題である。このように回転子に働く力を嫌う電動機においては、例えば回転子の軸受けの一方にベアリングの軸方向の動きを押さえるベアリング押さえ等を設けて強制的に動かないようにしているが、ケースや軸受け等の組み付け誤差により磁気中心がずれたまま固定されてしまう。また、回転軸方向にスラスト力が働き軸受け側の一方に回転子を押し付ける力が働くためベアリングや軸受けの耐久性も低下してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
固定子と回転子を有し、回転子は回転軸に固定し、固定子の内径中心で回転自在に軸支持された回転子であって、回転子には永久磁石が配置され回転子表面上の磁極は連続的もしくは階段状にずれて斜めに磁化されたスキュー構造であり、回転子を固定した回転軸が回転軸方向に移動可能とした永久磁石形電動機の回転子において、
回転軸に固定した回転子の回転軸方向に移動する移動量(L)が、磁極がスキューして隣接している磁極間の非磁極幅(D)以下とした永久磁石形電動機の回転子。
【0007】
尚、回転子は、回転子の軸方向の移動量(L)とし、磁極がスキューして隣接している磁極間の非磁極幅(D)とし、磁極間の変位量(d)、スキュー角(θ)とした場合、
d=L×tan(θ)
D≧d
である。
【0008】
このような回転子は、永久磁石を表面に配置した表面貼り付け形や、永久磁石を回転子内部に配置した永久磁石埋め込み形の永久磁石形電動機の回転子に用いることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、永久磁石形回転子の回転子表面上の磁極を連続的もしくは階段状にずれて斜めに磁化されたスキュー構造の永久磁石形回転子を、永久磁石形回転子を固定した回転軸が回転軸方向に予め移動可能となるようにし、前記回転子の回転軸方向の移動可能とする移動量(L)を磁極がスキューして隣接している磁極間の非磁極幅(D)以下とすることにより、回転子自身の可動や負荷との接続によって負荷側からの応力を受けて固定子と回転子との磁気中心のずれや、永久磁石形回転子をケースや軸受け等に組み付ける際に発生する組み付け誤差等の磁気中心のずれによるコギングトルクや、コギングトルクに起因する音、振動等を低減することができる。また、永久磁石形回転子の非磁極幅(D)以下とし移動量(L)を規定しているので軸受け側の一方に回転軸が押し付けられる力が緩和されベアリングや軸受けの耐久性を上げることもできる。
【0010】
尚、永久磁石形回転子の回転軸方向の移動量(L)とし、磁極がスキューして非磁極幅(D)とし、磁極間の変位量(d)とし、スキュー角(θ)とした場合の関係は、
d=L×tan(θ)
D≧d
である。
【0011】
そして、このような回転子は永久磁石を表面に配置した表面貼り付け形や、永久磁石を回転子内部に配置した永久磁石埋め込み形の永久磁石形電動機の回転子に用いることにより効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を図面を用いて説明する。図1には固定子2の歯部にコイル3が施され、この固定子2の内径中心で軸受けに支持されて回転自在に回転する永久磁石形回転子1を備えている。固定子2はケース5等に焼き嵌め、圧入、隙間嵌め等により固定されている。永久磁石形回転子1は回転軸8に固定子2と同様に焼き嵌め、圧入、隙間嵌め等により固定されている。この回転軸8を両側で支持する場合は、両側のブラッケト4に回転軸8を支持する軸受け部6a、6bが設けられベアリング7a、7bを介して回転軸8を支持している。また、片方で支持する場合は、どちらか一方のブラッケト4の軸受け部6a、6bにベアリング7a、7bを介して回転軸8が支持されている。
【0013】
また、このような電動機では、先に述べたように、固定子2をケース5等に焼き嵌め、圧入、隙間嵌め等により固定し、同様に永久磁石形回転子1も回転軸8に焼き嵌め、圧入、隙間嵌め等により固定している関係上其々の部材との間に組み付け誤差を生じる。また、図1で示しているようにブラケット4の両側に設けた軸受け部6a、6bには、回転軸8の両サイドに取り付けたベアリング7a、7bが挿入されている。ベアリング7a、7bと軸受け部6a、6bとの間はある程度の組み付け誤差を考慮して移動可能な移動量Lが設けられている。この移動可能な移動量Lには波ワッシャー9等が挿入され軸受け部6a、6bとベアリング7a、7bとの間の緩衝材となっている。
【0014】
図1中の永久磁石形回転子1は、回転子鉄心100の表面に円筒形状のリング磁石10を貼り付けた表面貼付タイプの永久磁石形回転子1である。円筒形状のリング磁石10は、外部の着磁装置などによってスキュー角(θ)を持たせて着磁されている。この場合の磁石は、フェライト磁石、希土類磁石のどちらでも構わない。
【0015】
図1に示した永久磁石電動機の永久磁石形回転子1を図2で説明する。この永久磁石形回転子1を回転駆動する方向を図中の矢印で示している。この場合、永久磁石形回転子1は回転子外周表面に交互に磁極が形成できるように着磁されているので隣り合う磁極は異極となり極と極との極間、及びその近傍は、磁気的に見て中性極となり非磁極部Dとなっている。
【0016】
この中性極、即ち非磁極部Dは永久磁石10を着磁する際に着磁ヨーク20によって意識的に調整することができる。この非磁極部Dを構成する着磁を図3で示す。図3の着磁ヨーク20と対向している円筒状のリング磁石10bを備えた永久磁石回転子1bを着磁する際、図示しているように着磁ヨーク20と対向するように円筒状のリング磁石10bを備えた永久磁石回転子1bの表面に着磁ヨークの歯部が伸びている。この着磁ヨーク20の着磁用コイル30を巻き付けた歯部先端間の開口部の幅が非磁極部Dとなることにより非磁極部Dの幅を調整することができる。着磁用ヨーク20の隣り合う歯部が異極となるように着磁用ヨーク20の歯部に巻き付けた着磁用コイル30に着磁電流を流すことによりこの歯部と対向している円筒状のリング磁石10bを着磁することができる。一方この着磁用ヨーク20と対向していない円筒状のリング磁石10bの部分は磁力が弱く隣り合う極が異極性となるため磁力がキャンセルされ非磁極部Dとなる。これによりこの非磁極部Dを意識的に作り出すことが可能となる。
【0017】
このような永久磁石回転子1bを用いた永久磁石形電動機では円筒状のリング磁石10bの磁力に伴う突極性によりコギングトルクが発生し、また、このコギングトルクに起因する音、振動等も発生している。この問題に対して図4に示すように回転子鉄心100aに貼り付けた円筒状のリング磁石10aに適切な角度でスキュー着磁を施して斜めに磁化した磁極としている。これによりコギングトルクを低減することができ、そして、コギングトルクに起因する音、振動等も低減できる。
【0018】
しかしながら、永久磁石形回転子1を図1及び図2に図示している矢印の方向へ回転駆動する場合、永久磁石形回転子1は軸方向へ磁気推力が働き(図1(及び図2)では波ワッシャー9を入れた軸受け部6b側に回転子が移動する)、スキュー着磁を施した位置がずれてしまい本来得られるはずであるコギングトルクの低減や、そのコギングトルクに起因した音、振動等の低減を達成することができない。
【0019】
これは固定子2で構成されている電機子と、界磁を構成する永久磁石形回転子1との位置関係が軸方向にずれることにより固定子2と永久磁石形回転子1の斜めにスキュー着磁を施して磁化した磁極との位置関係が崩れコギングトルクが悪化するためである。このことからもわかるようにコギングトルク低減のために施される永久磁石形回転子1のスキューは軸方向に必要な移動可能な移動量(L)と非磁極部幅(D)との関係より成り立つことが解る。
【0020】
尚、移動量(L)と非磁極部幅(D)との関係を固定子側の電機子の構造において適用した場合、スキュー幅は励磁極間(歯部間)の等価な非磁路幅(非磁極部(D))でスキューを設けることにより成立する。この場合、固定子側の電機子でスキューを施しているので、回転子側でスキューを取る必要がなく永久磁石の着磁は軸方向と平行な非磁極部を形成すれば良いことになる。一方、固定子の励磁極間(歯部間)に等価な非磁路幅(非磁極部D)を設け、想定しているスキュー角度が取り切れない場合は、回転子側で、固定子で取り切ることのできなかったスキュー角度分を取ることもできる。
【0021】
このように設計された図1〜図4で説明した永久磁石形電動機のコギングトルクは図5に示すような結果を得る。図5は永久磁石形回転子1の回転軸方向のずれに対してコギングトルクが変動している状態を示している。図5からもわかるように回転軸方向への回転子の移動可能な移動量(L)を非磁極部幅(D)以下の場合、コギングトルクの変動が極めて僅かな変動で安定していることが解る。逆に、非磁極幅(D)以上に広くなるとコギングトルクは急激に増加している。つまり、回転子の回転軸方向の移動可能な移動量(L)が回転子の磁極面上において磁極のスキューの成す回転方向の距離において非磁極幅(D)以下とすればよいことになる。
従って、回転子の磁化されたスキューの非磁極幅(D)以下となるようにベアリング7bと軸受け部6bとの間の組み付け誤差を考慮した移動可能な移動量(L)とすることによりコギングトルクを低減することができ、またコギングトルクに起因する音、振動を低減することができる。
【0022】
また、逆に磁極がスキューして隣接している磁極間の非磁極幅(D)を回転子の軸方向の移動可能な移動量(L)以上とする、つまり、回転子の非磁極幅(D)が回転軸方向に設定した移動量(L)の可動に応じて磁極のスキューの成す回転方向の距離以上にすることによっても同様の効果がある。但し、必要以上に広くすることは非磁極幅(D)が増えることになり、磁束量が減少することになるため永久磁石形電動機の性能上許される範囲とすることは言うまでもない。
【0023】
前記で述べた内容を図2に示した記号を用いて数式で説明する。
非磁極幅(D)は先に説明したように磁極と磁極との間の非磁極部もしくは非着磁部である。回転子に磁極を形成し、コギングトルクを低減するためのスキュー角(θ)、回転子が回転軸方向に動く移動可能な移動量(L)、この回転子が回転軸方向に動く移動可能な移動量(L)動いた場合の極間の変位量(d)とした場合、式(1)、(2)のようになる。
d=L×tan(θ)・・・・・(1)
D≧d ・・・・・・・・・・・(2)
【0024】
以上図1〜図5については回転子鉄心100の表面に円筒状のリング磁石1を貼り付けた表面貼付タイプの回転子で説明してきたが他の実施形態について図を用いて説明する。
図6には、図1〜図5で説明した表面貼付タイプと同様の永久磁石形回転子であるが複数の永久磁石10f〜10kを多段積みにした永久磁石表面貼付タイプの回転子である。詳細図で示す様に回転子鉄心表面の円周方向に複数に分割した永久磁石10fa、10fb・・及び10ga、10gb・・の隣同士の極が異極となるように貼り付けられている。極と極との間は永久磁石が存在せず非磁極部(D1)となっている。回転子の回転軸方向には隣同士が同極である永久磁石10faと10ga、10fbと10gbが極力隙間がないように貼り付けられている。軸方向の隣同士の永久磁石10faと10ga、10fbと10gbがスキュー角(θ)になるように階段状に積まれている。磁極間のスキュー角(θ)は等価極間となっている。
【0025】
図7は、永久磁石10c(10ca、10cb)を回転子内部に配置した永久磁石埋め込み形回転子である。回転子内部には平板永久磁石10c(10ca、10cb)を埋め込むための磁石収容孔40c(40ca、40cb)が各極に設けられ4極を形成している。各極同じ構成であるので1極のみ説明して他の極に付いては説明を省略する。磁石収容孔40caは回転子外周と磁石収容孔40caとの間に外側鉄心部分100eが設けられ、磁石収容孔40caと回転子内径との間には内側鉄心部分100fが設けられている。また、磁石収容孔40caの両端部は回転子外周に面しており平板永久磁石10caと回転子外周との間には空隙50caが設けられている。この空隙50caと回転子外周との間には磁束が漏れない程度に回転子鉄心の幅を狭くしたブリッジ部60caが設けられた構造となっている。ブリッジ部60caは磁石収容孔40caの外側鉄心部分100eと、磁石収容孔40caの空隙50caと隣り合う磁石収容孔40cbの空隙50cbで挟まれるように設けられたリブ70cで繋がれている。永久磁石10caの埋め込みは磁石収容孔40caの回転子外周と磁石収容孔40caとの間の外側鉄心部分100eと、磁石収容孔40caの端部のブリッジ部60caとの境目まで挿入されている。
【0026】
この永久磁石埋め込み形回転子1cの非磁極部D2は、回転子外周と磁石収容孔40caとの間の外側鉄心部分100eと、磁石収容孔40caの端部のブリッジ部60caとの境目からリブ70cを挟んで隣の磁極の磁石収容孔40cbの端部のブリッジ部60cbと、回転子外周と磁石収容孔40cbとの間の外側鉄心部分100eとの境目までが非磁極部(D2)である。この非磁極部(D2)を表面貼付タイプの永久磁石形回転子と同様に、回転軸方向の隣同士の永久磁石がスキュー角(θ)になるように階段状に積まれている。磁極間のスキュー角(θ)は等価極間となっている。
【0027】
図8は、図7と同様の永久磁石埋め込み形回転子である。永久磁石10d(10da、10db)を挿入する磁石収容孔40d(40da、40db)は各極に設けられ4極を形成している。各極同じ構成であるので1極のみ説明して他の極の磁石収容孔40d(40dc、40dd)に付いては説明を省略する。この場合は、磁石収容孔40daへの永久磁石10daの埋め込みは回転子外周と磁石収容孔40daとの間の外側鉄心部分100gと、磁石収容孔40daの端部のブリッジ部60daとの境目までには達していない。
この場合でも非磁極部(D3)の等価極間は、回転子外周と磁石収容孔40daとの間の外側鉄心部分100gと、磁石収容孔40daの端部のブリッジ部60daとの境目からリブ70dを挟んで隣の磁極の磁石収容孔40dbの端部のブリッジ部60dbと、回転子外周と磁石収容孔40dbとの間の外側鉄心部分100gとの境目までが非磁極部(D3)である。このように構成された永久磁石形回転子1dは軸方向の隣同士の永久磁石がスキュー角(θ)になるように階段状に積まれている。磁極間のスキュー角(θ)は等価極間となっている。
【0028】
また図9は、図8〜図7と同様の永久磁石埋め込み形回転子である。回転子内部に回転子外周に沿うように永久磁石10e(10ea、10eb)を挿入する磁石収容孔40e(40ea、40eb)が円弧状に設けられている。図9は、回転子内部に円弧状の永久磁石10e(10ea、10eb)を埋め込むための磁石収容孔40e(40ea、40eb)が各極に設けられ4極を形成している。各極同じ構成であるので1極のみ説明して他の極の磁石収容孔40e(40ec、40ed)に付いては説明を省略する。円弧状の磁石収容孔40eaの回転子外周は、回転子外周に沿うように設けられブリッジ部60eaで構成されている。円弧状の磁石収容孔40eaと回転子内径との間には内側鉄心部分100iが設けられている。また、円弧状の磁石収容孔40eaに埋め込まれた永久磁石10eaの端部には空隙50eaが設けられている。この空隙50eaと隣り合う磁極の円弧状の磁石収容孔40ebに埋め込まれた永久磁石10ebの端部の空隙50ebとの間に、回転子内径から磁極間に回転子外周方向へ伸びているリブ70eが設けられている。このリブ70eとブリッジ部60eaとが繋がっている。
【0029】
この場合の非磁極部(D4)は、回転子外周部と回転子外周部に沿うように設けられた円弧状の磁石収容孔40eaとの間の幅が狭いブリッジ部60eaでは磁束が殆ど流れないため回転子の外側鉄心部分は磁束の流れに影響されることがないので円弧状の磁石収容孔40eaに埋め込まれている永久磁石10eaの端部からリブ70eを挟んで隣の磁極の円弧状の磁石収容孔40ebに埋め込まれた永久磁石10ebの端部までが非磁極部(D4)である。この非磁極部(D4)は図6〜図8の永久磁石形回転子と同様に、軸方向の隣同士の永久磁石10eがスキュー角(θ)になるように階段状に積まれている。磁極間のスキュー角(θ)は等価極間となっている。
【0030】
前記した永久磁石形回転子では、軸方向の隣同士の永久磁石がスキュー角(θ)になるように階段状に積みスキュー角(θ)の等価極間としているが、軸方向に連続的に構成してもよい。
例えば、永久磁石を軸方向に分割することなく1枚の永久磁石でスキュー角(θ)となるように構成することができる。また、永久磁石形回転子の永久磁石の磁気配向はラジアル配向やパラレル(平行)配向でもよく、特に円筒状の永久磁石では極異方性のリング磁石を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施形態における永久磁石形電動機の回転子をケースに組み付けた図。
【図2】図1で説明した永久磁石形電動機の回転子。
【図3】永久磁石形電動機の回転子の着磁の様子。
【図4】スキュー着磁をした円筒状のリング磁石を用いた永久磁石形電動機の回転子。
【図5】図4のようなスキュー着磁を施した永久磁石形回転子の回転軸方向のずれに対するコギングトルクの変動を示したグラフ。
【図6】別の実施形態を示した永久磁石形電動機の回転子。
【図7】別の実施形態を示した永久磁石形電動機の回転子。
【図8】別の実施形態を示した永久磁石形電動機の回転子。
【図9】別の実施形態を示した永久磁石形電動機の回転子。
【符号の説明】
【0032】
1、1a、1b、1c、1d、1e・・・永久磁石形回転子
2・・・固定子
3・・・コイル
4・・・ブラケット
5・・・ケース
6a、6b・・・軸受け部
7a、7b・・・ベアリング
8・・・回転軸
9・・・波ワッシャー
10、10a〜10k、10ca〜10ea、10cb〜10eb、10fa、10fb、10ga、10gb・・・永久磁石
20・・・着磁用ヨーク
30・・・着磁用コイル
40、40a〜40e、40ca〜40ea、40cb〜40eb・・・磁石収容孔
50ca〜50ea、50cb〜50eb・・・空隙
60ca〜60ea、60cb〜60eb・・・ブリッジ部
70c〜70e・・・リブ部
100、100a、100b・・・回転子鉄心
100e、100g・・・外側鉄心部分
100f、100h、100i・・・内側鉄心部分
D、D1〜D4・・・非磁極部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子と回転子を有し、前記回転子は回転軸に固定し、前記固定子の内径中心で回転自在に軸支持された回転子であって、前記回転子には永久磁石が配置され回転子表面上の磁極は連続的もしくは階段状にずれて斜めに磁化されたスキュー構造であり、
前記回転子を固定した回転軸が回転軸方向に移動可能とした永久磁石形電動機の回転子において、
前記回転子の回転軸方向に移動する移動量(L)が、磁極がスキューして隣接している磁極間の非磁極幅(D)以下としたことを特徴とする永久磁石形電動機の回転子。
【請求項2】
前記回転子は、回転子の軸方向の移動量(L)とし、磁極がスキューして隣接している磁極間の非磁極幅(D)とし、磁極間の変位量(d)、スキュー角(θ)とした場合、
d=L×tan(θ)
D≧d
であることを特徴とする請求項1項に記載の永久磁石形電動機の回転子。
【請求項3】
前記回転子は、永久磁石を表面に配置した表面貼り付け形であることを特徴とする請求項1項または請求項2項に記載の永久磁石形電動機の回転子。
【請求項4】
前記回転子は、永久磁石を回転子内部に配置した永久磁石埋め込み形であることを特徴とする請求項1項または請求項2項に記載の永久磁石形電動機の回転子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−55698(P2009−55698A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−219434(P2007−219434)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(000100872)アイチエレック株式会社 (58)
【Fターム(参考)】