説明

汚泥の脱水処理方法及び装置

【課題】 植物廃棄物の有効利用法及びフィルタープレス型脱水機による汚泥の脱水処理におけるフィルターケーキの剥離性を向上し、且つ、フィルターケーキ内部への伝熱性を低下させる薄膜の形成を抑制し、これによってフィルタープレス型脱水機による汚泥の脱水乾燥処理の処理効率を大幅に向上する方法を提供する。
【解決手段】 本発明の一態様は、フィルタープレスと、フィルタープレス内を減圧状態にするための減圧装置と、フィルタープレス内の汚泥を加熱する手段とを有するフィルタープレス型脱水機によって汚泥を脱水処理する方法において、汚泥に、植物を膨張粉砕処理して得られた膨張粉砕物を添加混合して調質した後に上記フィルタープレス型脱水機で脱水処理することを特徴とする方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水、し尿、家畜糞尿、生ごみ等の有機性廃棄物及び各種産業排水の処理によって発生する有機性汚泥を、フィルタープレス型の脱水機によって脱水処理する方法に関する。本発明によれば、かかる方法において、脱水機でのフィルターケーキの剥離性の改善及び乾燥効率の向上を達成することができる。
【背景技術】
【0002】
従来より、下水処理場、し尿処理場、産業廃棄物廃水処理施設などから発生する汚泥は、高分子凝集剤や無機凝集剤の添加などの調質を行った後に脱水機で脱水し、埋立処分や焼却処分されている。この目的で使用される脱水機として、濾布を備えたフィルタープレスと、フィルタープレス内の圧力を減圧する装置とを備え、フィルタープレス内の汚泥を加熱する手段を備えた装置があり、濾布上に汚泥のフィルターケーキを形成し、これを剥離して回収する。
【0003】
このようなフィルタープレス型の脱水機においては、濾布からの乾燥ケーキの剥離性が悪く、剥離が不完全の状態で剥離作業を終了してフィルタープレスを閉枠せざるをえない状況になったり、あるいはフィルターケーキの表面に、フィルターケーキ内部への伝熱を阻害する薄膜が形成されてフィルターケーキ内部の水分の蒸発効率が低下するという問題があった。
【0004】
フィルタープレス型脱水機におけるフィルターケーキの剥離性を改善する方法の一例としては、フィルタープレス内の圧力を上限200mbarとすると共に、フィルタープレス内のフィルタープレートの温度を下限40℃に制御することによって、フィルターケーキの熱可塑相を回避するというものがある。
【0005】
しかしながら、この方法では、処理対象の汚泥の性状によって効果はまちまちであり、特に余剰汚泥のようにバイオポリマーを多く含む汚泥や、腐敗の進んだ汚泥などの場合には、圧力と温度の制御だけではフィルターケーキの剥離性が全く改善されず、脱水乾燥処理に支障をきたしていた。特にフィルターケーキの表面に薄膜が形成されることでフィルターケーキ内部への伝熱が阻害されるという問題に対する解決策としては、これまで提案されたものはない。
【0006】
ところで、近年、水処理の高度化、水処理対象排水の性状の変化・多様化などにより、汚泥の脱水性(脱水のし易さ)は悪化している。そこで、汚泥の脱水性を改善するために種々の調質方法が検討或いは提案されている。その中で、籾殻や大鋸屑、コーヒー糟等を脱水助剤として汚泥に添加して脱水を行う方法が提案されている(特許文献1、2)。
【0007】
一方、ダイオキシン発生を抑制するために、近年、剪定枝や枯草等の植物廃棄物のオンサイトでの焼却処分が禁止されるようになっており、これら植物廃棄物の処分方法が大きな問題となっている。したがって、これらの植物廃棄物を汚泥の脱水助剤として使用することは、植物廃棄物の処分も兼ねることになり有用である。しかしながら、これらの植物廃棄物を脱水助剤として使用するには植物廃棄物を粉砕又は破砕して使用する必要があるが、通常のせん断破砕や切断破砕では、破砕物が水に馴染みにくく、汚泥との混合が不十分で、脱水助剤としての効果が十分ではなかった。
【0008】
【特許文献1】特開昭60−225699号公報
【特許文献2】特開昭60−222118号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、植物廃棄物の有効利用法及びフィルタープレス型脱水機による汚泥の脱水処理におけるフィルターケーキの剥離性を向上し、且つ、フィルターケーキ内部への伝熱性を低下させる薄膜の形成を抑制し、これによってフィルタープレス型脱水機による汚泥の脱水乾燥処理の処理効率を大幅に向上する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための手段として、本発明の一態様は、フィルタープレスと、フィルタープレス内を減圧状態にするための減圧装置と、フィルタープレス内の汚泥を加熱する手段とを有するフィルタープレス型脱水機によって汚泥を脱水処理する方法において、汚泥に、植物を膨張粉砕処理して得られた膨張粉砕物を添加混合して調質した後に上記フィルタープレス型脱水機で脱水処理することを特徴とする方法を提供する。
【0011】
本発明において汚泥への添加物として使用する膨張粉砕物を調製するのに用いる植物としては、繊維質を有する植物であれば任意のものを使用することができる。現状で処分に困っている植物廃棄物の有効利用という点からは、剪定枝、枯草などを好ましく用いることができ、また、わら、バガス、コーヒー糟,竹,笹等を用いることもできる。更に、間伐材、建築廃材、農業廃棄物、籾殻、麦稈、茶粕などを使用することもできる。
【0012】
本発明方法においては、これらの植物を膨張粉砕処理法で破砕する。本発明において、膨張粉砕処理とは、適当量の水分が存在する状態で破砕対象物を高温高圧状態にした後、一気に大気圧に開放する方法を指す。このような方法並びにそれに用いる装置自体は公知技術である。これにより、破砕対象物中の水分が一気に蒸発するため、その体積膨張によって対象物が破砕される。このようにして得られる膨張粉砕物は、細胞自体も破壊されているために非常に親水性に富み、分散性に優れ、汚泥との混合が極めて容易である。
【0013】
本発明では、膨張粉砕処理には、連続処理が可能なスクリュー式の膨張粉砕機を使用することができる。本発明において使用することのできるスクリュー式の膨張粉砕機の一例の概念を図1に示す。
【0014】
図1に示すスクリュー式膨張粉砕機は、本体(バレル)101の内部に押出スクリュー102が挿入配置されており、スクリュー2に回転機(モーター)103が接続されている。スクリュー軸は1本であっても、複数本(例えば、図1に示すような2軸押出式)であってもよい。押出スクリュー102を回転させた状態で、原材料の植物、例えば間伐材チップを投入ホッパ104から投入する。原材料は押出スクリュー102によって粉砕されながら前方(図1の左側)に搬送(押出)される。滞留部(バレル内部)は、圧縮熱によってある程度の熱が発生するが、必要に応じて加熱装置(図示せず)を設けて内部温度を調整することが好ましい。バレルの出口(排出口)105は、口径が絞られた状態になっており(例えば、バレル径が15cmで出口口径が30mm程度)、更に出口口径を調整するカバー106が、上下に移動自在に取り付けられている。粉砕されながら出口105に向かって搬送された植物粉砕物は、出口105が絞られた状態になっているので出口付近で圧密滞留される。この際、植物から発生する水蒸気によって、植物粉砕物は、上記に説明した「水分が存在する状態で高温高圧」に保持される。この段階で、温度が120〜150℃になるようにすることが好ましい。また、圧力は、通常、0.3〜0.7MPaに達する。
【0015】
その後、植物粉砕物は、口径が絞られた出口から外に排出されると同時に大気圧に一気に開放される。これによって、植物が膨張粉砕される。
なお、上記では、植物自体から発生する水蒸気によって系の水分が供給される形態を説明したが、この発生水分だけでは膨張粉砕に必要な水分には足りない場合には、膨張粉砕機の本体に水蒸気(若しくは水)供給装置(図示せず)を配して、必要な水分を供給することができる。
【0016】
本発明においては、上記の膨張粉砕処理によって得られた植物の膨張粉砕物を汚泥に添加混合する。汚泥への膨張粉砕物の添加量は、汚泥の含水率即ち固形分含量や、汚泥の性状(例えば、バイオポリマーを含むか否か、腐敗の度合いなど)などによって変動するが、一般に汚泥の固形分に対して10〜100重量%添加混合することが好ましく、10〜40重量%添加混合することがより好ましい。
【0017】
また、本発明においては、汚泥に対して植物の膨張粉砕物を添加するのに加えて、更に、当該技術で公知の有機高分子凝集剤及び/又は無機凝集剤を添加して汚泥固形分を凝集させた後に、フィルタープレス型脱水機で脱水処理することもできる。この目的で使用することのできる有機高分子凝集剤としては、例えば、カチオンポリマー、アニオンポリマー、両性ポリマーなどを用いることができる。また、無機凝集剤としては、例えば、ポリ硫酸第二鉄、塩化第二鉄、PAC、硫酸バンドなどを用いることができる。これら凝集剤の添加量は、有機高分子凝集剤の場合には汚泥の固形分に対して0.5重量%〜5重量%、好ましくは0.5重量%〜2重量%、無機凝集剤の場合には汚泥の固形分に対して5重量%〜50重量%、好ましくは10重量%〜20重量%とすることが好ましい。有機高分子凝集剤又は無機凝集剤のいずれか一方を汚泥に添加してもよく、また有機高分子凝集剤及び無機凝集剤の両方を汚泥に添加してもよい。なお、膨張粉砕物の添加と、凝集剤の添加とは、順番はどちらが先でもよく、汚泥に膨張粉砕物を添加した後に凝集剤を添加して凝集処理を行っても、又は汚泥に凝集剤を添加して凝集処理を行った後に膨張粉砕物を添加してもよく、或いは汚泥に膨張粉砕物と凝集剤とを一緒に添加してもよい。
【0018】
本発明では、上記のように植物の膨張粉砕物を添加し、場合によっては更に凝集剤を添加して凝集処理をした汚泥を、フィルタープレス型脱水機で脱水処理する。本発明で用いるフィルタープレス型脱水機は、フィルタープレスと、フィルタープレス内を減圧状態にするための減圧装置と、フィルタープレス内の汚泥を加熱する手段とを有している。
【0019】
本発明において用いることのできるフィルタープレス型脱水機としては、例えば、特開2001−232109号公報で開示されているようなものを用いることができる。以下、特許文献4で開示されているフィルタープレス型脱水機の構成を説明する。当該脱水機のフロー図を図2に、脱水機の構成を図3に、脱水機の濾枠の概要を図4に、脱水機内部の構造を図5に、それぞれ示す。
【0020】
本発明において用いることのできるフィルタープレス型脱水機は、脱水乾燥装置1、温水ボイラ2及び真空ポンプ3とを備えることができる。汚泥は汚泥供給ライン4に設けられた汚泥供給ポンプ5によって脱水乾燥装置1に供給される。汚泥供給ライン4には開閉弁V1が設置されている。また汚泥供給ライン4は開閉弁V4を具備したセンターブローライン6に接続されている。
【0021】
前記脱水乾燥装置1と温水ボイラ2とは、温水循環ライン7によって相互に接続されている。温水循環ライン7には温水循環ポンプ8及び背圧弁9が設置されている。温水ボイラ2は、加圧媒体としての熱保有流体を供給するための熱保有流体供給装置を構成している。また脱水乾燥装置1には、開閉弁V2を具備した濾液排出ライン10が接続されている。そして、濾液排出ライン10には真空排気ライン11が接続されている。真空排気ライン11には、開閉弁V3、ドレンポット12及び真空ポンプ3が設置されている。さらに脱水乾燥装置1には、開閉弁V5を具備した排泥ライン14が接続されている。
【0022】
図3は、脱水乾燥装置の構成を示す概略正面図である。図3に示すように、脱水乾燥装置1は、複数の濾枠15と、両端部に設置され濾枠15を締め付けるための濾枠締め付け装置16とを備えている。濾枠締め付け装置16により濾枠15を締め付けることにより、隣接する濾枠15間に汚泥を脱水するための濾布により囲まれた(後述する)濾室を形成するようになっている。脱水乾燥装置1は、温水の供給側及び戻り側にそれぞれ温水ヘッダ17A,17Bを備えている。温水ヘッダ17Aは温水循環ポンプ8に接続され、温水ヘッダ17Bは背圧弁9に接続されている(図2参照)。また脱水乾燥装置1は、上述したように、汚泥供給ライン4、センターブローライン6、温水循環ライン7、濾液排出ライン10及び真空排気ライン11に接続されている。
【0023】
図4は、脱水乾燥装置における濾枠の斜視図である。図4に示すように、プレート15はその前後面に張設されたダイヤフラム(弾性膜)18を備えている。プレート15とダイヤフラム18は一体に構成され、プレート自体がダイヤフラムの機能を有していてもかまわない。なお図4においては、プレート15の前面に張設されたダイヤフラム18のみを示す。ダイヤフラム18には濾液をその排出ラインに流すための複数の排水溝18aが形成されている。濾枠15は汚泥が注入される汚泥注入孔19と、プレート15の四隅に形成された濾液排出孔20と、プレート15の上下端部に形成された温水循環孔21とを備えている。
【0024】
図5は、脱水乾燥装置の内部構造を示す図であり、(a)は汚泥の濾過工程を示し、(b)は汚泥の加圧脱水工程を示す。相隣接して設置された複数の濾枠15等によってその間に濾室22が形成され、各濾室22は対向する1対のダイヤフラム18(18a)に支持された濾布23の内部空間として配置されている。なお、濾布23は汚泥注入孔19に対応した箇所に孔が形成されており、この孔によって汚泥が通過でき、各濾室22に汚泥が供給できるようになっている。
【0025】
各ダイヤフラム18は排水溝18aを有して(図4参照)濾布23に当接しており、図5に示すように、隣接する濾枠15の濾液排出孔20は、この排水溝18a内を流下する濾過水を排出するようになっている。即ち、排水溝18aは各ダイヤフラム18と濾布23との間の濾液排出ラインを構成し、濾液排出口20に接続され、更に図示しない外部の真空ポンプに接続されている。これにより、濾布23で濾過された濾液が濾液排出孔20により脱水乾燥装置1の外部に吸引排出されるようになっている。更に、真空ポンプを動作させることで、濾布23の外側のダイヤフラム18の溝18a内は、例えば−0.08MPa程度の減圧雰囲気下に保たれる。
【0026】
次に、図2乃至図5に示すように構成されたフィルタープレス型脱水機を使用した汚泥の脱水乾燥方法について説明する。
まず、濾枠締め付け装置16で濾枠15を所定位置に調整し、濾布23,23間に汚泥を注入して濾室22を形成する。汚泥貯槽(図示せず)に貯留されている調質された汚泥を汚泥供給ライン4に設けられた汚泥供給ポンプ5により、最大濾過圧0.5MPa程度にて開閉弁V1を経由して脱水乾燥装置1の中央部から濾室22に、薬注することなく所定時間(例えば60分)打ち込み、濾過工程を行なう。この状態を図5(a)に示す。この汚泥供給位置は上部あるいは下部から打ち込んでもよく、特に限定するものではない。濾布23で固液分離された濾過水はダイヤフラム18に刻まれた溝18a及び濾液排出孔20により濾液排出ライン10に導かれ、開閉バルブV2を経由して系外に排出される。
【0027】
次に、背圧弁9で圧搾圧力を設定した後、温水循環ポンプ8を稼働して濾枠15とダイヤフラム18で仕切られた部屋に、温水ボイラ2で80℃に加温された温水を15分間圧送し、ダイヤフラム18を膨張させて汚泥の圧搾工程を行なう。この圧搾工程は、汚泥の予備加熱と濾室内汚泥をセンターブロー可能な状態、即ち、センターブロー時に各濾室内の汚泥が系外にでないような状態にすることを目的にしている。従って、圧搾時間は汚泥の種類によって変化させることができ、場合によっては省略してもよい。この時、温水温度は70〜90℃であればよいが、この工程では温水の代わりに水を使用してもよく、又、温水の戻りにバルブを設け、このバルブを閉にすることで循環を停止してもよい。
【0028】
次に、開閉弁V1を閉じ、開閉弁V4,V5を開け、圧力0.5MPaの圧搾空気を汚泥注入孔19に吹き込み、センターブロー工程を行ない、各室の汚泥注入孔19に残留する軟弱な汚泥を排出する。排出された汚泥は汚泥貯槽に回収する。
【0029】
センターブロー工程終了後、再び温水循環ポンプ8を稼働し、背圧弁9の設定圧力を好ましくは0.5MPa〜1.5MPaとして濾室内の汚泥を加圧及び加温する。脱水乾燥工程では、上記圧搾工程やセンターブロー工程の加圧圧力よりも更に圧力を高めることが好ましい。この時の温水温度も上記と同様に70〜90℃であることが好ましい。一方、開閉弁V2を閉じ、開閉弁V3を開け、真空排気ライン11を開いて、真空ポンプ3を稼働し、図5(b)に示すように、脱水乾燥工程を行なう。即ち、真空ポンプ3を稼働し、濾液排出ライン10を経由して、濾布外面(濃縮汚泥と非接触側)を減圧雰囲気下におくと、濾室内では圧搾脱水が進行し、同時に濾布内面(汚泥と接触側)に接触する汚泥の乾燥が加圧及び加温により進むことになる。この時の濾室外の減圧圧力は低ければ低いほどよく、−0.08MPa以下が好ましい。
【0030】
即ち、この脱水乾燥工程に到り濃縮汚泥中の水分は力学的な圧搾力による脱水と、加熱による蒸発と、濾布の外側を減圧雰囲気とすることによる脱水との三重の水分除去機能により、濾室22内から除去される。除去された水はドレンポット12で冷却水と熱交換して凝縮する。圧搾・乾燥時間は、汚泥の種類、目標含水率によって異なり、打ち込み汚泥量と各工程で排出される排水量とから演算して決定される。
【0031】
次に、濾枠締め付け装置16を弛め、開枠してケーキ排出工程を行ないケーキを排出する。本発明においては、処理対象の汚泥に対して植物の膨張粉砕物を加えることにより、ケーキの剥離性が向上しているので、濾布に残留するケーキは殆どなく、清掃工程は全く不要である。
【0032】
本発明方法によって汚泥の脱水処理を行うことによって汚泥脱水ケーキが得られる。得られた汚泥脱水ケーキは、焼却処理、炭化処理、コンポスト処理などにかけることができる。本発明によれば、フィルタープレス型脱水機におけるケーキの剥離性が向上するのに加えて、脱水処理によって形成される汚泥脱水ケーキの含水量を低下させることができる。これは、植物の膨張粉砕処理によって得られる膨張粉砕物が高い親水性を有するために汚泥との混合が改善されたことにより、汚泥の脱水性、乾燥速度が向上したことによるものであると考えられる。この結果、例えば汚泥脱水ケーキを炭化処理する場合の燃料消費量を削減することができ、また、汚泥脱水ケーキをコンポスト処理する場合の水分調整材の使用量や、原料・コンポスト製品の乾燥に必要なエネルギー量を削減することができる。更に、汚泥脱水ケーキを焼却処理する場合においても、助燃剤の使用量を削減することができる。
【0033】
本発明は、更に上記の汚泥脱水方法を実施するための装置にも関する。本発明の一態様に係る汚泥脱水処理装置の概念図を図6に示す。
図6に示す装置においては、剪定枝や枯草などの植物(好ましくは植物廃棄物)を蒸煮膨張粉砕装置に供給して膨張粉砕処理を行う。この目的で用いることのできる膨張粉砕装置としては、前述の2軸スクリュー式の膨張粉砕機を挙げることができる。次に、汚泥に凝集剤添加装置から有機高分子凝集剤及び/又は無機凝集剤を添加して凝集処理を行う。これらの処理が行われた汚泥は、フィルタープレス型脱水機に供給されて脱水処理され、得られた脱水ケーキは、次の処理(コンポスト処理、汚泥炭化処理、汚泥焼却処理など)にかけられる。
【0034】
図6では、汚泥にまず膨張粉砕物を添加し、次に凝集剤を添加し、その後フィルタープレス型脱水機にかける態様が示されているが、汚泥への膨張粉砕物の添加と凝集剤の添加とは、順序が逆になってもよく、或いは同時に行うように構成してもよい。
【0035】
本発明の各種態様は以下の通りである。
1.フィルタープレスと、フィルタープレス内を減圧状態にするための減圧装置と、フィルタープレス内の汚泥を加熱する手段とを有するフィルタープレス型脱水機によって汚泥を脱水処理する方法において、汚泥に、植物を膨張粉砕処理して得られた膨張粉砕物を添加混合して調質した後に上記フィルタープレス型脱水機で脱水処理することを特徴とする方法。
【0036】
2.植物の膨張粉砕物を、汚泥の固形分に対して5〜100重量%添加混合する上記第1項に記載の方法。
3.脱水処理装置でのフィルタープレス内の圧力を0.02MPa以下とする上記第1項又は第2項に記載の方法。
【0037】
4.汚泥に植物の膨張粉砕物を添加混合すると共に、汚泥に有機高分子凝集剤及び/又は無機凝集剤を添加混合する上記第1項〜第3項のいずれかに記載の方法。
5.膨張粉砕処理する植物として、剪定枝、枯草、わら、、バガス、コーヒー糟、竹、笹、間伐材、建築廃材、農業廃棄物、籾殻、麦稈、又は茶粕を用いる上記第1項〜第4項のいずれかに記載の方法。
【0038】
6.植物材料を膨張粉砕処理するための膨張粉砕装置と、膨張粉砕処理した植物膨張粉砕物を汚泥に添加するための膨張粉砕物添加装置と、膨張粉砕物を添加した汚泥を受容して脱水処理するための脱水機とを具備する汚泥の脱水処理装置であって、脱水機が、フィルタープレスと、フィルタープレス内を減圧状態にするための減圧装置と、フィルタープレス内の汚泥を加熱する手段とを有するフィルタープレス型脱水機である装置。
7.汚泥に有機高分子凝集剤及び/又は無機凝集剤を添加する凝集剤添加装置を具備する上記第6項に記載の装置。
【0039】
実施例
以下の実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではない。
破砕対象物として枯草を使用し、前述の2軸スクリュー押出式の膨張粉砕機を用いて、粒径が0.5〜2mmの破砕物(膨張粉砕物)を得た。
【0040】
し尿処理余剰汚泥(固形分濃度15.8g/L)に、上記膨張粉砕物を汚泥の固形分に対して0重量%(比較例)、10重量%又は30重量%添加混合し、更に、ポリ硫酸第二鉄を1.5%asFe添加混合し、続いてポリマー凝集剤(荏原製作所社製、商品名エバクロースB034)を汚泥の固形分に対して0.7重量%添加して凝集処理を行った後、フィルタープレス型脱水機による脱水処理にかけた。
【0041】
脱水処理は、上記に説明した図2〜図5に示すフィルタープレス型脱水機を用いて行った。まず、膨張破砕物を添加して調質した汚泥を汚泥供給ポンプでフィルタープレスの濾室内に圧入した(濾過工程)。濾過工程でのポンプ圧力を濾過圧力という。濾過工程終了後、温水循環ポンプを起動し、濾枠とダイヤフラムの空間に温水を供給した。このとき、背圧弁で温水圧力を1.5MPaに調整した。温水を供給することでダイヤフラムが変形して濾室内の汚泥が圧搾脱水される(圧搾工程)。圧搾工程での温水圧力を圧搾圧力という。次に、汚泥供給間に残留する未脱水汚泥を圧搾空気でフィルタープレス外に吹き飛ばした(ブロー工程)。温水循環ポンプを再起動し、真空ポンプを駆動させた。真空ポンプは濾液排出ラインに連結されているので、濾液排出ライン、ダイヤフラムに切られた溝を減圧する(脱水乾燥工程)。脱水乾燥工程での濾液ライン及びダイヤフラムに切られた溝の圧力をフィルタープレス圧力といい、真空ポンプの圧力を意味する。この工程の初期には、圧搾力による脱水が主として生じるが、時間経過と共に乾燥による脱水が主として生じるようになる。このとき、水は濾室内圧力に対応する温度で沸騰蒸発するので、圧力が低いほど沸点が低下し、温水温度(80〜90℃)との温度差が大きくなるので熱の移動量が増大し乾燥速度が大きくなる。
【0042】
なお、用いたフィルタープレスは濾過面積4m2の両面加圧方式で、濾室の厚みは30mmであった。フィルタープレスの熱源は85℃の温水とし、温水循環ポンプでダイヤフラムの裏面に循環供給した。真空発生装置は真空ポンプを使用し、フィルタープレス内の圧力を0.01MPaとした。濾過時間は60分、濾過圧力は0.5MPa、圧搾時間は30分、圧搾圧力は1.5MPa、乾燥時間は90分とし、到達ケーキ含水率の測定、及びケーキの剥離性の観察を行った。ケーキの剥離性に関しては、フィルタープレスの開枠及び濾布振盪後に濾布に付着しているケーキの面積割合(ケーキ付着面積/ろ過面積×100%)で評価した。結果を表1にまとめる。
【0043】
【表1】

【0044】
なお、脱水ケーキの見かけの含水率とは、添加物(本実験の場合にはポリ硫酸第二鉄及びポリマー及び膨張粉砕物)の重量を含めた実測値であり、真の含水率とは、この実測値から、添加物の乾燥重量分を除いた汚泥重量に対する含水率を算出した値である。
【0045】
植物の膨張粉砕物を添加しない比較例では、真のケーキ含水率が56.8%であったが、ケーキの剥離性が悪く、振盪機での振動による剥離を試みたが、ケーキの厚みが15mm程度あるにもかかわらず、濾布面のおよそ90%にケーキが付着した。その付着具合も、濾布面にしっかりとケーキが食い込んだ状態であり、スクレーパを用いて人力による剥離を試みたが完全には剥離できなかった。
【0046】
一方、本発明方法では、ケーキの剥離性は良好で、100%ケーキ剥離した。特に膨張粉砕物を30重量%添加した場合には、フィルタープレスの開枠と同時にケーキの剥離が起こった。これは、膨張粉砕物が混入することによって、ケーキ自体の粘着性が低下し、濾布への付着力が減衰したためであると考えられる。
【0047】
また、同一の条件での脱水乾燥によって、比較例ではケーキ含水率が56.8%であったのに対して、本発明では真のケーキ含水率が比較例よりも8ポイント(膨張粉砕物10重量%添加)及び12ポイント(膨張粉砕物30重量%添加添加)低下した。これは、膨張粉砕物の添加によって、ケーキの剥離性が向上したのに加えて、更に、脱水性が向上した上、ケーキ層に乾燥を阻害する薄膜が形成することが抑制されて、加えて、膨張粉砕物の添加によってケーキ層に空隙部分が形成されることにより、ケーキ層内に真空部分が発生して乾燥が促進されたためであると考えられる。
【0048】
以上の実験結果から、本発明にしたがって、汚泥に植物膨張粉砕物を加え、好ましくは更に凝集剤を添加して凝集処理を行った後に、フィルタープレス型脱水機による脱水処理にかけることによって、フィルタープレスでのケーキの剥離性を向上させることができると共に、脱水ケーキの含水量を低減させることができ、その後の焼却処理、炭化処理、コンポスト処理などを極めて良好に実施することができることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、植物を膨張粉砕処理して得られる膨張粉砕物を汚泥に加えて、汚泥をフィルタープレス型脱水機によって脱水処理にかけることにより、脱水ケーキの含水量を低減させることができると共に、フィルタープレスにおけるケーキの剥離性を向上させることができる。本発明により得られる脱水ケーキをコンポスト処理する場合、有機物減量が大きいので、従来よりも短期間でコンポスト化することができる。また、脱水ケーキの低含水率化によって、脱水ケーキをコンポスト処理する場合の水分調整材使用量の削減、脱水汚泥や製品コンポストを乾燥する場合のエネルギー使用量の削減を図ることができる。また、脱水ケーキを炭化処理や焼却処理する場合にも、エネルギー使用量の削減を図ることができると共に、二酸化炭素発生量も削減することができ、地球温暖化対策の一助ともなる。更に、本発明によれば、現状で処分に困っている剪定枝、枯草、間伐材、建築廃材などの植物廃棄物を有効利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明において使用することのできる膨張粉砕機の一具体例の概念を示す図である。
【図2】本発明において使用することのできるフィルタープレス型脱水機のシステムを示すフロー図である。
【図3】本発明において使用することのできるフィルタープレス型脱水機の構成を示す概略正面図である。
【図4】本発明において使用することのできるフィルタープレス型脱水機における濾枠の斜視図である。
【図5】本発明において使用することのできるフィルタープレス型脱水機の内部構造を示す図である。(a)は濾過工程を示し、(b)は加圧脱水乾燥工程を示す。
【図6】本発明の一態様に係る汚泥の脱水装置の構成を示す概念図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタープレスと、フィルタープレス内を減圧状態にするための減圧装置と、フィルタープレス内の汚泥を加熱する手段とを有するフィルタープレス型脱水機によって汚泥を脱水処理する方法において、汚泥に、植物を膨張粉砕処理して得られた膨張粉砕物を添加混合して調質した後に上記フィルタープレス型脱水機で脱水処理することを特徴とする方法。
【請求項2】
植物の膨張粉砕物を、汚泥の固形分に対して5〜100重量%添加混合する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
脱水処理装置でのフィルタープレス内の圧力を0.02MPa以下として減圧乾燥する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
汚泥に植物の膨張粉砕物を添加混合すると共に、汚泥に有機高分子凝集剤及び/又は無機凝集剤を添加混合する請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
膨張粉砕処理する植物として、剪定枝、枯草、わら、、バガス、コーヒー糟、竹、笹、間伐材、建築廃材、農業廃棄物、籾殻、麦稈、又は茶粕を用いる請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
植物材料を膨張粉砕処理するための膨張粉砕装置と、膨張粉砕処理した植物膨張粉砕物を汚泥に添加するための膨張粉砕物添加装置と、膨張粉砕物を添加した汚泥を受容して脱水処理するための脱水機とを具備する汚泥の脱水処理装置であって、脱水機が、フィルタープレスと、フィルタープレス内を減圧状態にするための減圧装置と、フィルタープレス内の汚泥を加熱する手段とを有するフィルタープレス型脱水機である装置。
【請求項7】
汚泥に有機高分子凝集剤及び/又は無機凝集剤を添加する凝集剤添加装置を具備する請求項6に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−26604(P2006−26604A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−213086(P2004−213086)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】