説明

汚泥処理システムおよび汚泥処理方法

【課題】汚泥に凝集剤を注入して脱水に適した状態に調質し、この調質された汚泥を遠心脱水機で脱水する汚泥処理おいて、汚泥調質工程と汚泥脱水工程を効率的に組み合せて一元化し、汚泥処理設備全体のコンパクト化を図ると共に、凝集剤の使用を抑えながら調質汚泥を確実に脱水処理し、より効率的に脱水汚泥を減容化できる汚泥処理システムおよび汚泥処理方法を提供することにある。
【解決手段】本発明に係る汚泥処理システムは、高分子凝集剤を注入した汚泥を調質する汚泥調質機1と、調質汚泥を脱水汚泥と脱水分離液に分離する遠心脱水機2と、調質汚泥を遠心脱水機2に供給する調質汚泥供給管3を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理施設で発生する汚泥(余剰汚泥や消化汚泥など)の処理システムおよびその方法に関し、汚泥を調質した後、調質汚泥を効率よく脱水するものである。
【背景技術】
【0002】
水処理施設では含水率99〜99.5%の汚泥が大量に発生するが、これを処理・処分するには莫大なエネルギーやコストがかかってしまう。そのため濃縮・脱水を主とする汚泥処理により減容化が行われ、減容化した汚泥は有効利用、搬出埋立、乾燥焼却される。
【0003】
汚泥の濃縮は、重力濃縮と機械濃縮に大別される。重力濃縮では汚泥をタンク内に一定時間滞留させることで水より比重の高い汚泥を沈降濃縮させるものであり、汚泥の沈降性が濃縮効率に影響を与える。機械濃縮は遠心濃縮、常圧浮上濃縮、ベルト式ろ過濃縮など機械的に濃縮する方法で、必要に応じて汚泥に凝集剤を混合して濃縮する。
濃縮された汚泥は、汚泥中の有機物の分解・安定化を目的として微生物による消化処理を経て、またはそのまま脱水処理される。汚泥の脱水は、ろ過式や遠心分離式等があり、汚泥脱水や機械濃縮では通常凝集剤が使用される。
【0004】
このように、通常汚泥は汚泥濃縮設備において濃縮処理を行った後、別途汚泥脱水設備で脱水処理を行うため、汚泥処理施設全体が大掛かりになっていた。また、濃縮された汚泥が脱水処理されるまで時間がかかったり、撹拌などが不十分だったりすると、変質してしまうことがあり、濃縮汚泥が変質(嫌気化、腐敗、汚泥フロックの解体など脱水に悪影響を与える)してしまうと、脱水処理では変質の度合いに応じて細やかに運転調整(汚泥供給量、凝集剤注入量など)して対応していた。
【0005】
また、スクリュウ式やベルト式等のろ過式の汚泥脱水機の場合は、処理する固形物量に応じて(つまり高濃度の汚泥なら少量だが、低濃度の汚泥なら多量に処理できる)、機械仕様が決まるが、遠心式の汚泥脱水機の場合は、処理する水量(汚泥供給量)に応じて(つまり汚泥濃度の高低にかかわらない)機械仕様が決まる。
【0006】
そこで遠心式の汚泥脱水機(遠心脱水機)を用いて脱水処理する場合、高濃度の汚泥を供給する方が効率的に運転でき省エネルギー化にも有効だが、供給する汚泥の性状は変動するので、常に高濃度の汚泥を遠心脱水機に供給するのは難しく、そのため低濃度で多量の汚泥を処理することを想定して、多めの水量(汚泥供給量)を処理できる機械仕様の遠心脱水機が選定されていた。
【0007】
一方、機械濃縮や脱水に用いられる凝集剤は一般に有機系の高分子凝集剤を使用する他、有機系凝集剤と無機系凝集剤を濃縮・脱水工程に応じて使い分けられている。これは原汚泥や濃縮汚泥の性状に適した凝集剤を選定し、その注入量を調整することで安定した濃縮・脱水がなされ、且つ使用する凝集剤の節約につながるためである。
【0008】
凝集剤の適正な注入方法について、例えば、特許文献1では有機系汚泥に無機系凝集剤と分子内両性高分子凝集剤(両性ポリマー)とを併用して注入し、これを造粒濃縮槽で濃縮した後に脱水処理する方法において、従来法での高分子凝集剤の注入量低減という課題に対し、両性高分子凝集剤の分注場所を造粒濃縮槽の中央部又は分離水を分離する部位とし、その注入量を総両性高分子凝集剤注入量に対して10〜20%分注することで、一度造粒した汚泥が造粒濃縮槽に長く滞留している間に崩壊した場合においても再造粒が起こり、分離水SSの低下と共に、脱水機の運転状況を改善させるという技術が開示されている。
【0009】
また、特許文献2では、汚泥に高分子凝集剤を注入して凝集処理した後に濃縮処理する凝集濃縮処理工程と、該凝集濃縮処理工程からの凝集濃縮汚泥を、脱水機により脱水処理して脱水汚泥と脱水分離液とに分離する脱水処理工程とを有する汚泥処理方法において、脱水分離液を凝集濃縮処理工程に返送することで、脱水分離液に残留する高分子凝集剤を凝集濃縮処理工程で再利用し、新たに注入する高分子凝集剤の使用量を低減させながらも濃縮処理工程を安定化させるという技術が開示されている。
【0010】
【特許文献1】特許第3509169号公報(段落〔0008〕)
【特許文献2】特開2006−35166号公報(段落〔0009〕)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来、汚泥濃縮設備および汚泥脱水設備は、別個独立して設けられることが多く、そのため汚泥処理施設全体が大掛かりなものになり、建設コストが高く、広い設置面積が必要であった。また、運転操作や維持管理が煩雑になり、人件費や凝集剤代など運転コストも上昇し、効率的な汚泥処理に支障を来たしていた。
【0012】
特に重力濃縮技術においては、近年の汚泥沈降性の悪化により、濃縮汚泥の低濃度化が進み、後段に続く脱水の効率を悪化させていた。
【0013】
さらに、汚泥濃縮設備と汚泥脱水設備とが別々に設けられることにより、濃縮された汚泥は一旦汚泥貯留槽等に貯留され、その後脱水処理されることになるが、貯留されることにより濃縮汚泥が変質(嫌気化、腐敗、汚泥フロック解体)してしまい、脱水処理に悪影響(脱水汚泥含水率の上昇、SS回収率の悪化、脱水分離液の水質悪化、脱水性能の悪化による運転管理作業や凝集剤使用量の増大など)を及ぼしていた。
【0014】
また、汚泥貯留槽等で貯留している濃縮汚泥(貯留汚泥)が腐敗しないように、さらには汚泥濃度が均一になるように、撹拌設備を設けて貯留汚泥を撹拌するが、長時間撹拌したり、過度に撹拌したりすると貯留汚泥に含まれる凝集フロックが細分化(解体)してしまい、脱水処理に際して再度凝集剤を十分に注入して凝集フロックを再形成させなければならず、凝集剤使用量(凝集剤代)の増大につながっていた。
【0015】
遠心脱水機を用いて脱水処理する場合、高濃度の汚泥を脱水する方が効率的であるが、汚泥の性状は諸要因により変動するため、施設計画においては低濃度で多量の汚泥を処理することを想定して、多めの水量(汚泥供給量)を処理できる機械仕様の遠心脱水機が選定する必要がある。そのため、設備コストの上昇を招くばかりか、予備機なども配備する場合には汚泥脱水設備がかなり大きくなってしまっていた。
【0016】
また、効率的で安定した脱水処理を行うために、汚泥を常に均質化できるよう大きな汚泥貯留槽を設けることも考えられるが、上述したように汚泥の腐敗や撹拌による凝集フロックの細分化など脱水処理に支障を来たす結果になってしまう。
【0017】
汚泥の脱水処理においては、遠心脱水機の脱水性能を十分に引き出し、効率的な脱水を行うため、汚泥へ凝集剤を適切に注入する必要があるが、適正な凝集剤注入量(注入率)は汚泥の性状により変化するので、経時的に変化する汚泥の性状に合わせて、適宜注入量を管理しなければならず、運転操作が非常に煩雑になってしまっていた。
【0018】
また、適切な凝集剤が選定されていても、凝集剤が汚泥等に対して常に適切に注入されていない場合もあり、凝集剤の注入量が不十分な場合には濃縮処理や脱水処理に支障を来たし、汚泥を十分に減容化できないばかりか、濃縮分離液や脱水分離液の水質が悪化し、後段の排水処理施設への汚濁負荷増大につながってしまう。逆に、凝集剤の注入量が過剰な場合には、濃縮処理や脱水処理に影響を及ぼすこともあり、また未反応の凝集剤成分が濃縮分離液や脱水分離液に残留したり、分離性能(SS回収率)自体が悪くなったりして、その結果分離液の水質を悪化させてしまう。
【0019】
さらに、汚泥への凝集剤注入量が適切であっても、汚泥と凝集剤とが十分に且つ確実に混合して反応(フロック化)しないと、濃縮性能や脱水性能が低下してしまう。とくに効率的に遠心脱水することができる高濃度汚泥は、凝集剤と速やかに混合することが難しく、汚泥と凝集剤とが速やかに且つ効率よく混合して凝集フロックを形成させないと、十分な脱水性能を得ることができない。
【0020】
高濃度の汚泥を無機凝集剤と高分子凝集剤を併用して脱水を行う脱水処理(2液法)において、汚泥と凝集剤とが確実に反応しないと強固な凝集フロックが形成されず、分離性能が悪くなって分離液のSS濃度が上昇(SS回収率が悪化)するばかりか、汚泥に高濃度に含まれるりんが、無機凝集剤と反応して不溶性塩になり脱水汚泥に取り込まれて除去されず、分離液に移行して排出されてしまい、その結果、水質性状の悪い分離液が排水処理設備に還流して汚濁負荷を増大させてしまうことになる。
【0021】
そこで、高濃度汚泥に対して無機凝集剤や高分子凝集剤の注入量を増やしたり、汚泥処理量を低減させたりして、分離液の水質を改善(SS回収率の向上やりん濃度の低減)することもできるが、これにより効率的で安定した汚泥処理(脱水汚泥含水率の低減、運転時間の短縮、凝集剤代や電気代など運転コストの低減)に支障を来す結果になってしまう。
【0022】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、汚泥に凝集剤を注入して遠心脱水に適した状態に調質(凝集フロック形成、水分排除、減容化、濃縮など)し、この調質汚泥を遠心脱水機で脱水する汚泥処理において、汚泥調質工程と汚泥脱水工程を効率的に組み合せて一元化し、汚泥処理設備全体のコンパクト化を図ると共に、凝集剤の使用を抑えながら調質汚泥を確実に脱水処理して脱水汚泥の減容化ができる汚泥処理システムおよび汚泥処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明に係る汚泥処理システムは、汚泥に高分子凝集剤を注入して調質する汚泥調質機と、調質汚泥を脱水汚泥と脱水分離液とに分離する遠心脱水機と、該遠心脱水機に前記調質汚泥を供給する調質汚泥供給管とからなるものである。
【0024】
本発明に係る汚泥処理システムは、調質汚泥に無機凝集剤を注入する無機凝集剤注入管を備えたものである。
【0025】
本発明に用いられる遠心脱水機は、外胴ボウルおよび内胴スクリュウを有すると共に、前記内胴スクリュウ内を延伸して、前記外胴ボウルのテーパ部に無機凝集剤を注入するテーパ注入管を備えたものである。
【0026】
本発明に用いられる無機凝集剤は、鉄含有率が高い高比重無機凝集剤であることを特徴とするものである。
【0027】
本発明に係る汚泥処理システムは、脱水分離液の酸化還元電位を測定する酸化還元電位計と該酸化還元電位計の計測値に基づき、無機凝集剤の注入、高分子凝集剤の注入および遠心脱水機の運転のうち、一つまたは二つ以上を制御する制御器を備えたものである。
【0028】
本発明に係る汚泥処理方法は、汚泥に高分子凝集剤を注入し、高分子凝集剤が注入された汚泥を汚泥調質機で調質し、調質された汚泥に無機凝集剤を注入し、無機凝集剤が注入された調質汚泥を遠心脱水機へ供給して脱水するものである。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る汚泥処理システムによれば、遠心脱水に適した汚泥の状態に調質する汚泥調質機、調質汚泥を遠心脱水する遠心脱水機、および遠心脱水機に調質汚泥を供給する汚泥供給管を備えることにより、次のような優れた作用効果を奏する。
(1)汚泥を調質した後ただちに脱水するため、調質での高分子凝集剤注入で脱水処理まで完了することができる。
(2)汚泥の調質により脱水する汚泥が減容化(高濃度化)されるため、遠心脱水機で効率的に脱水処理することができる。
(3)汚泥を調質した後ただちに脱水できることから、長時間の貯留によって生じる調質汚泥の変質(嫌気化、腐敗、凝集フロックの解体など)を防止でき、脱水処理における脱水汚泥含水率の上昇、SS回収率の悪化、脱水分離液の水質悪化等の悪影響を防止することができる。
(4)前記調質汚泥の変質を抑止できるため、従来変質への対応として行っていた凝集剤の過剰注入を回避でき、凝集剤の使用量を削減できる。
(5)施設計画時での機種選定においては、より小型機種の遠心脱水機を提案することができ、さらに汚泥調質機と遠心分離機とをパッケージ化することにより、一層汚泥処理施設全体をコンパクト化することができる。
【0030】
本発明に係る汚泥処理システムによれば、調質汚泥に無機凝集剤を注入・混合する手段を備えたことで、調質汚泥と無機凝集剤との混合が確実に行えるため、凝集剤が混合しにくい性状の汚泥が供給されても効率よく脱水に適した凝集フロックを得ることができる。これにより遠心脱水機での脱水汚泥や脱水分離液が良質となり、且つ安定化する。
【0031】
本発明に係る汚泥処理システムによれば、遠心脱水機の外胴ボウルのテーパ部に無機凝集剤を注入するテーパ注入管を備えたことにより、ある程度脱水の進んだ汚泥に直接無機凝集剤を注入し、且つ遠心脱水機内での汚泥を搬送する力と遠心力によって確実に混合することが可能となるため、比較的少量の無機凝集剤で効率よく良質の脱水汚泥を得ることができる。これにより無機凝集剤の過剰使用を抑制するのみならず、調質による汚泥の減容化およびこれに伴う遠心脱水機の小型化ができ、さらに遠心脱水機の外部に設置していた汚泥貯留槽や汚泥と凝集剤の混合設備などを省略することができ、汚泥処理施設の省スペース化も可能であり、運転コストや設備コストの削減、設備設置面積の縮小に有効である。
【0032】
本発明に係る汚泥処理システムによれば、遠心脱水機から排出される脱水分離液の酸化還元電位を測定する酸化還元電位計および酸化還元電位計の測定値に基づき調質汚泥への各種凝集剤の注入および/または遠心脱水機の運転を制御する制御器を備えたことにより、常時脱水分離液の変動状況を監視し、無機凝集剤の注入量や遠心脱水機の運転を変更する必要が生じた場合にも適切な制御を行うため、安定した汚泥脱水が図れる。
【0033】
本発明に係る汚泥処理システムでは、無機凝集剤に鉄含有率が高い高比重無機凝集剤を用いることにより、比較的少ない注入率で従来の無機凝集剤と同等以上の脱水性能が安定して得られるのみならず、汚泥処理システム全体における凝集剤使用量を削減することができる。
【0034】
本発明に係る汚泥処理方法によれば、汚泥に高分子凝集剤を注入して汚泥調質機で調質し、調質汚泥に無機凝集剤を注入して遠心脱水機で脱水するため、汚泥の処理全体として調和のとれた処理が可能となり、調質汚泥の貯留槽や貯留中の撹拌設備が不要となり設備の縮減やそれに伴う設備の一体化、運転管理の一元化が図れ、また、調質汚泥をただちに遠心脱水するために、調質汚泥の変質(嫌気化、腐敗、凝集フロックの解体など)による凝集剤の過剰注入(再注入)を回避できて凝集剤注入量も削減できる等、建設コストや運転コストを低減化できる優れた作用効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
<実施の形態1>
図1は本発明の実施の形態1による汚泥処理システムの概略的な構成図である。
本発明に係る汚泥処理システムは、高分子凝集剤を注入した汚泥を高濃度で安定した凝集フロックを含む汚泥(調質汚泥)に調質する汚泥調質機1Aと、調質汚泥を脱水汚泥と脱水分離液とに分離する遠心脱水機2と、調質汚泥を遠心脱水機2に供給する調質汚泥供給管3を備えた基本構造となっている。
【0036】
汚泥調質機1Aは、ベルト式ろ過であり、高分子凝集剤を注入した汚泥を調質して調質汚泥と調質分離液とに分離する無端ベルト1aと、この無端ベルト1aを回転させる一対の回転ローラ1b,1cと、これらの回転ローラ1b,1cを回転駆動させる駆動機構(図示せず)とから概略構成されている。この汚泥調質機1Aには、汚泥が汚泥供給管4を通じて供給されるように構成され、且つ、高分子凝集剤が高分子凝集剤注入管5を通じて汚泥供給管4内の汚泥に供給されるように構成されている。高分子凝集剤注入管5には、高分子凝集剤を汚泥供給管4内に注入する高分子凝集剤注入ポンプ6と、高分子凝集剤の注入を調節する開閉弁6aが設けられている。なお、汚泥調質機1Aは、高分子凝集剤を注入した汚泥を調質して調質汚泥と調質分離液とに分離できる機構であれば、例えば常圧浮上方式など、ろ過方式に限るものではない。
【0037】
汚泥調質機1Aに供給される汚泥は、水処理から発生する汚泥/消化汚泥であり、含水率が高く、そのまま脱水処理すると、汚泥処理全体としての効率が悪く、施設全体の規模が大きくなると同時にエネルギーや薬品使用量が過剰となるなどの不都合が生じやすい。
【0038】
このため、汚泥は、汚泥調質機1Aに供給されて調質される。調質では当該汚泥に高分子凝集剤が注入され、この高分子凝集剤の凝集作用により、汚泥の固形物が確実に凝集し、より分離性の高い強固な凝集フロックが汚泥に生成する。この様な汚泥は汚泥調質機1Aによって効率よく確実に固液分離することが可能となる。高分子凝集剤としては、例えば、両性高分子凝集剤、カチオン系高分子凝集剤、アニオン系高分子凝集剤、ノニオン系高分子凝集剤等を用いることができる。
【0039】
供給される汚泥中の固形物量(SS含有量)は通常汚泥重量当たり0.5〜2.0%程度の範囲であり、汚泥濃縮が目的の場合、高分子凝集剤はこの固形物量に対して重量比で0.2〜0.4%程度の注入率となるように添加し、濃縮汚泥を得ることが可能である。通常の汚泥処理ではこの濃縮汚泥は一旦貯留され脱水処理されるが、貯留されている間に撹拌や腐敗によって凝集フロックの解体が生じたり、腐敗した汚泥から凝集阻害成分(有機酸ほか)が溶出したりするなど、脱水処理に対して悪影響を及ぼす状態となる。このため脱水の前に濃縮汚泥の固形物量当たり0.5〜2.0%、凝集阻害性成分の溶出状況によってはそれ以上の高分子凝集剤を注入して再度凝集フロックを形成させる必要があった。しかし、調質が目的である本発明においては、高分子凝集剤の注入率は固形物量に対して重量比で0.5〜2.0%程度と汚泥濃縮が目的である場合よりも高いが、このように凝集剤が注入されて調質され脱水に供される調質汚泥は、高濃度の凝集フロックは安定しており脱水に適した状態に保たれているため、新たな凝集剤の注入を必要とせず、そのまま遠心分離機によって脱水することができるため、汚泥処理全体としては高分子凝集剤の注入量を減少することができる。つまり、調質に用いる高分子凝集剤だけで脱水処理まで完了することができる。
【0040】
次に動作について説明する。
まず、汚泥に高分子凝集剤が注入(ライン注入)され、高分子凝集剤の凝集作用により凝集フロックが生成した汚泥(凝集汚泥)は、汚泥調質機1Aの無端ベルト1aに供給され、水分が排除され減容化した高濃度で安定した凝集フロックを含む調質汚泥が
次に、この調質汚泥は、調質汚泥供給管3を通じて、遠心脱水機2内に供給されて脱水処理され、含水率の低い脱水汚泥と脱水分離液とに分離され、それぞれ機外へ排出される。
【0041】
本発明の実施の形態1によれば、含水率の高い汚泥に高分子凝集剤を注入して混合し、汚泥中に凝集フロックが形成した後に、その汚泥を汚泥調質機1Aにおいて、遠心脱水に適した状態にある高濃度で安定した凝集フロックを含む調質汚泥と調質分離液とに分離し、その調質汚泥を、調質汚泥供給管3を経て遠心脱水機2に直接供給することにより、含水率の低い脱水汚泥と脱水分離液とに分離することができる。
【0042】
本発明の実施の形態1によれば、汚泥に注入される高分子凝集剤の注入率を汚泥中の固形物量に対して重量比で0.5〜2.0%程度に設定して汚泥中に凝集フロックを形成し、汚泥調質機1Aにおいて遠心脱水に適した高濃度で安定した凝集フロックを含む調質汚泥を得ることにより、濃縮工程を設けた場合に必要となる、濃縮に用いられる高分子凝集剤の使用量を削減することができる。また、調質による汚泥の減容化によって、既設遠心脱水機の処理性能が向上する。あるいは施設計画段階においてより小型の遠心脱水機の提案が可能となる。
【0043】
本発明の実施の形態1によれば、汚泥を汚泥調質機1Aによって遠心脱水に適した高濃度で安定した凝集フロックを含む調質汚泥とすることで、汚泥調質後ただちに遠心脱水機2によって脱水汚泥と脱水分離液とに分離することが可能となり、貯留施設を必要とせずに施設全体がコンパクトになるのみならず、貯留を行った場合に懸念される撹拌や汚泥の腐敗などに起因する凝集フロックの解体と凝集阻害性分(有機酸など)の溶出に起因する汚泥脱水への悪影響と、それに伴い必要となる通常の注入率よりも高い凝集剤の使用を行わなくて済む。
【0044】
本発明の実施の形態1によれば、調質汚泥を速やかに脱水に供するように構成したことにより、調質汚泥を貯留した場合に嫌気化して生じる調質汚泥自体の腐敗成分やりんの溶出による脱水分離液の品質低下(有機酸やりんを主とする汚濁物の増大)を防止できる。
【0045】
<実施の形態2>
図2は本発明の実施の形態2による汚泥処理システムの概略的な構成図であり、図1と同一の構成要素には同一符号を付して重複説明を省略する。
【0046】
実施の形態2による汚泥処理システムでは、汚泥調質機1Aと遠心脱水機2と調質汚泥供給管3とが一つのパッケージボックス7内に設置されることでパッケージ化されており、パッケージボックス内の汚泥調質機1に、汚泥の供給および高分子凝集剤の注入に加えて、無機凝集剤を注入でき、且つ、パッケージボックス7内の調質汚泥供給管3に無機凝集剤を注入できるように構成された点で、実施の形態1と異なる。
【0047】
パッケージボックス7は、その底部を、汚泥処理システムが一体化されて設置される機械基礎上に固定できるように構成されている。パッケージボックス7の外部には、汚泥供給タンク8が配設されている。汚泥供給タンク8内には、回転羽根9が設けられており、この回転羽根9により汚泥を撹拌し、汚泥のタンク内での局所的な堆積とそれに伴い生じる嫌気化を防止することが可能である。また、汚泥供給タンク8からパッケージボックス7内の汚泥調質機1Aへ延伸する汚泥供給管10が設けられ、この汚泥供給管10には、汚泥供給ポンプ11が設けられている。なお、汚泥供給管10を、例えば最終沈殿池からの余剰汚泥引抜管や汚泥返送管と接続して汚泥を供給してもよい。
【0048】
また、パッケージボックス7の外部には、高分子凝集剤を収容する高分子凝集剤タンク12が配設されて、この高分子凝集剤タンク12から汚泥供給管10に延伸する高分子凝集剤注入管5が設けられている。
【0049】
さらに、パッケージボックス7の外部には、無機凝集剤を収容する無機凝集剤タンク13が配設されている。無機凝集剤タンク13から無機凝集剤注入管14がパッケージボックス7内へ延伸し、この無機凝集剤注入管14には、無機凝集剤注入ポンプ15が設けられている。無機凝集剤注入管14は、パッケージボックス7内に配設されている調質汚泥供給管3に無機凝集剤を注入(ライン注入)するものであり、また汚泥調質機1A内に無機凝集剤を注入する機内注入管14aと、汚泥供給管10に無機凝集剤を注入する前注入管14bが分岐されている。無機凝集剤注入管14,機内注入管14a,前注入管14bには、無機凝集剤の注入を調節する開閉弁15a,開閉弁15b,開閉弁15cが配置されている。
【0050】
無機凝集剤タンク13に収容される無機凝集剤としては、例えば、ポリ硫酸第2鉄(ポリ鉄)、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、ポリ硫酸アルミニウム(硫酸バンド)等を用いることができる。このような無機凝集剤を汚泥に注入することにより、汚泥を確実に凝集させ、分離性の高い凝集フロックを生成することができると共に、汚泥に含まれる溶解性汚濁成分(りん等)と反応して不溶性塩にして除去することができる。
【0051】
また、凝集剤を用いる汚泥処理では適正な処理が行えるように、供給される汚泥の性状や処理の状況により凝集剤の種類、注入率および注入する場所や順番について試行錯誤によって設定する。この設定は、実施の形態2による汚泥処理システムの稼動前に、実験的に検証されることで行われる。このため、当該設定を実行できるように、図2に示す汚泥処理システムでは、上述のように、無機凝集剤を注入する無機凝集剤注入管14を設け、注入位置についても調質汚泥供給管3を注入位置とするほか、汚泥調質機1を注入位置とする機内注入管14a、および汚泥供給管10を注入位置とする前注入管14bを備えている。
【0052】
次に動作について説明する。
まず、汚泥供給タンク8内の汚泥の性状等に基づいて、高分子凝集剤や無機凝集剤の種類、注入率、注入場所、等の諸条件が設定される。この設定に基づいて、汚泥供給管10内の汚泥には、高分子凝集剤注入管5を通じて、高分子凝集剤が注入(ライン注入)され、混合される。この高分子凝集剤の注入前に、汚泥に無機凝集剤を注入することが汚泥調質にとって適正である場合には、無機凝集剤が無機凝集剤注入管14から分岐する前注入管14bを通じて注入される。このようにして凝集汚泥が形成される。
次に、汚泥供給管10を通じて汚泥調質機1A内に供給される凝集汚泥は、その汚泥調質機1Aにより調質されて、調質汚泥と調質分離液とに分離される。調質中の汚泥に無機凝集剤を注入することが汚泥処理にとって適正である場合には、無機凝集剤が無機凝集剤注入管14から分岐する機内注入管14aを通じて注入される。
次に、調質汚泥供給管3を通じて遠心脱水機2内に供給されるこの調質汚泥は、その遠心脱水機2によって脱水処理されて、含水率の低い脱水汚泥と、脱水分離液とに分離される。脱水処理前の調質汚泥に無機凝集剤を注入することが汚泥処理にとって適正である場合には、無機凝集剤が無機凝集剤注入管14を通じてから注入される。
【0053】
なお、無機凝集剤の注入は、上記設定に基づいて、あるいは、その後の汚泥処理の状況に基づいて、無機凝集剤注入管14、機内注入管14aおよび前注入管14bの一つまたは二つ以上を適宜選択して利用してもよい。
【0054】
本発明の実施の形態2によれば、実施の形態1と同様に、含水率の高い汚泥に高分子凝集剤を注入して混合し、凝集汚泥を形成した後に、この凝集汚泥を汚泥調質機1Aにおいて、脱水に適した調質汚泥と調質分離液とに分離し、その調質汚泥を、調質汚泥供給管3を経て遠心脱水機2に供給することにより、含水率の低い脱水汚泥と脱水分離液とに効率よく分離することができる。
【0055】
本発明の実施の形態2によれば、無機凝集剤注入管14、機内注入管14aおよび前注入管14bを配設したことにより、供給される汚泥の性状が変動し、無機凝集剤の注入が汚泥調質に必要となった場合においても、適切な注入位置で無機凝集剤を注入することができる。
【0056】
本発明の実施の形態2によれば、前注入管14bを通じて無機凝集剤を注入して汚泥中の溶解性汚濁成分(りん等)を凝集し、比較的微細な凝集フロックを生成させた後に、高分子凝集剤注入管5を通じて高分子凝集剤を注入することにより、比較的微細な凝集フロックを汚泥中の固形物分と共に、更に凝集させて安定した凝集フロックとすることができる。これにより、溶解性汚濁成分は脱水分離液と共に流出・還流することなく、脱水汚泥に取り込まれて排出・処分され、調質分離液や脱水分離液の水質低下防止という効果が得られる。
【0057】
<実施の形態3>
図3(A)は本発明の実施の形態3による汚泥処理システムの概略的な構成図であり、図3(B)は図3(A)に示されたテーパ注入管先端の開口およびその周囲を拡大して示す断面図である。図1と同一の構成要素には同一符号を付して重複説明を省略する。
【0058】
実施の形態3による汚泥処理システムは、無機凝集剤注入管として、無機凝集剤を遠心脱水機2内の後述の外胴ボウルのテーパ部に注入(テーパ注入)するテーパ注入管16を配設した点と、テーパ注入管16に給水管17を接続し、給水管17に、給水ポンプ18と、給水を調節する開閉弁18aを設けた点で、実施の形態1と異なる。
【0059】
実施の形態3における遠心脱水機2は、一端側に脱水分離液排出口2aが、他端側に脱水汚泥排出口2bが設けられたケーシング20と、このケーシング20内に回転可能に配設された外胴ボウル21と、この外胴ボウル21内に回転可能に配設された内胴スクリュウ22と、外胴ボウル21および内胴スクリュウ22を回転駆動する回転駆動機23と、外胴ボウル21と内胴スクリュウ22とに回転差を与えるバックドライブモータ24とを備えており、外胴ボウル21と内胴スクリュウ22との間にプール(濃縮・脱水ゾーン)25が形成される構造となっている。
【0060】
調質汚泥供給管3は、内胴スクリュウ22内の汚泥供給室26の内側まで延伸しており、その先端は吐出孔3aとなっている。調質汚泥供給管3内には、テーパ注入管16が配設されており、その先端の吐出孔16aは、上記吐出孔3aよりも僅かに上流側の調質汚泥供給管3の周壁部から内胴スクリュウ22の内胴テーパ部22aに向けて開口している。内胴テーパ部22aの外側には、外胴ボウル21の2段テーパ部21aが形成されている。なお、実施の形態3では、外胴ボウルのテーパ部を2段テーパ部としたが、本発明はこれに限定されず、1段テーパ部としてもよい。
【0061】
また、汚泥供給室26には、調質汚泥供給管3の吐出孔3aから供給される調質汚泥をプール25へ供給する汚泥供給口26aと、内胴テーパ部22aに設けられ、且つ、テーパ注入管16の吐出孔16aから注入される無機凝集剤をプール25へ流出させる凝集剤流出口26bと、この凝集剤流出口26b近傍の内胴テーパ部22aに設けられ、且つ、汚泥供給口26aと凝集剤流出口26bとを仕切る仕切板26cが設けられている。
【0062】
無機凝集剤としては、高い鉄含有率で、高比重の無機凝集剤(以下、「高比重無機凝集剤」という)の水溶液であることが好ましい。この高比重無機凝集剤としては、その比重が1.45〜1.75で、かつ、鉄含有率(T-Fe(トータルFe)換算での鉄の濃度)が12.0%〜16.0%のものが好適であり、成分としてはポリ硫酸第二鉄(〔Fe2(OH)n(SO4)3-n/2〕m)が特に有効であるが、鉄系の高比重無機凝集剤で上記性状であり、ポリ硫酸第二鉄と同等の効果が得られるものであれば、これに限るものではない。このような比重および鉄含有率の高比重無機凝集剤は、通常の無機凝集剤に比べ、特に遠心脱水機の遠心効果などにより、汚泥に効率よく混合(浸透)させることができる。
【0063】
高比重無機凝集剤は、遠心脱水機2の遠心効果による混合(浸透)以外の混合方法でも汚泥に効率よく混合(浸透)させることができる。なお、図2に示された実施の形態2に係る汚泥処理システムにおいても、無機凝集剤注入管14、機内注入管14aおよび前注入管14bから高比重無機凝集剤を注入することにより、汚泥や調質汚泥と効率よく混合(浸透)させることができるため、供給される汚泥の性状によって高比重無機凝集剤を適宜注入することで汚泥処理システムを良好な状態に維持することが可能である。
【0064】
給水管17および給水ポンプ18による給水は、上記のような高比重無機凝集剤をテーパ注入管16内で効率よく確実に希釈し、大きい遠心力が及ぶ2段テーパ部21aで、調質汚泥へ希釈により増量した高比重無機凝集剤を速やかに且つ広範囲に注入できるようにし、且つ、遠心脱水機2を稼動停止する際に、テーパ注入管16へ給水することにより、テーパ注入管16、吐出孔16a、凝集剤流出口26bなど、付着固化しやすい高比重無機凝集剤が接触する部位を確実に洗浄でき、高比重無機凝集剤による目詰まりや閉塞を防止することができるようにすることを目的とするものである。
【0065】
次に動作について説明する。
まず、汚泥に高分子凝集剤が注入され、高分子凝集剤の凝集作用により凝集フロックが生成した汚泥(凝集汚泥)は、汚泥調質機1Aの無端ベルト1aに供給され、水分が排除され減容化した高濃度で安定した凝集フロックを含む汚泥(調質汚泥)が
次に、この調質汚泥は、調質汚泥供給管3の開口3aから汚泥供給室26内に供給されると共に、無機凝集剤は、テーパ注入管16から内胴テーパ部22aの凝集剤流出口26bを介して、大きな遠心力のかかる外胴ボウル21のテーパ部に流れ出し、スクリュウ羽根22bにより外胴ボウル21のテーパ部を掻き上げられ脱水汚泥排出側へ移行中の固液分離がある程度進んだ調質汚泥(分離汚泥)へ、速やかに注入(テーパ注入)される。なお、テーパ注入管16には給水管17が接続されており、必要に応じて、給水管17からテーパ注入管16へ給水して、無機凝集剤を希釈し、希釈された無機凝集剤(希釈液)を分離汚泥へ速やかに且つ広範囲にテーパ注入することができる。
【0066】
このように無機凝集剤または希釈液が注入された調質汚泥が遠心脱水機2により、脱水処理され、含水率の低い脱水汚泥と、脱水分離液とに分離され、それぞれ機外へ排出される。
なお、遠心脱水機2を稼動停止する際には、テーパ注入管16へ給水することにより、テーパ注入管16の吐出孔16aなど、付着固化しやすい無機凝集剤が接触する部位が確実に洗浄される。
【0067】
本発明の実施の形態3によれば、含水率の高い汚泥に高分子凝集剤を注入して混合した後に、その汚泥を汚泥調質機1Aに供給することにより、脱水に適した状態にある高濃度で安定した凝集フロックを含む調質汚泥と調質分離液とに分離することができる。
【0068】
実施の形態3によれば、テーパ注入管16により、外胴ボウル21のテーパ部21a付近に掻き寄せられてきたある程度脱水がなされ固形物濃度が高くなったため薬剤を混合しにくい状態にある調質汚泥(分離汚泥)に対して直接無機凝集剤を添加することができるため、テーパ部付近の汚泥の搬送力と遠心力によって少量の無機凝集剤であっても確実に混合することが可能となる。分離汚泥と無機凝集剤とが速やかに混合・反応して、効率よく安定して分離汚泥の固液分離(分離液の分離)が促進され、従来に比べ低い含水率の脱水汚泥を得ることができる。
【0069】
本発明の実施の形態3によれば、遠心脱水機2の外胴ボウル21のテーパ部21aに無機凝集剤を注入するテーパ注入管16を備えたことにより、ある程度脱水の進んだ汚泥に直接無機凝集剤を注入し、且つ、遠心脱水機2内での汚泥を搬送する力と遠心力によって確実に混合することが可能となるため、比較的少量の無機凝集剤で効率よく良質の脱水汚泥を得ることができる。よって無機凝集剤の過剰使用を抑制するのみならず、遠心脱水機の外部に設置していた汚泥と凝集剤の混合器の設置スペースも無くなることから施設の省スペース化も可能であり、運転コストや設備コストの削減、設備設置面積の縮小に有効である。
【0070】
本発明の実施の形態3によれば、無機凝集剤として、鉄含有率が高い高比重無機凝集剤を用いることにより、比較的少ない注入率で従来の無機凝集剤と同等以上の脱水性能が安定して得られるのみならず、汚泥処理システム全体における凝集剤使用量を削減することができる。
【0071】
本発明の実施の形態3によれば、テーパ注入管16に給水する給水管17を備えたことにより、高比重無機凝集剤を効率よく確実にテーパ注入管16内で希釈でき、大きい遠心効果のかかる2段テーパ部21aで、分離汚泥へ希釈により増量した高比重無機凝集剤を速やかに且つ広範囲に注入できる。これにより分離汚泥の固液分離が一層進み、脱水工程の終盤での操作(高比重無機凝集剤注入)であるにもかかわらず、分離汚泥から効率的に且つ確実に脱水分離液を分離して、より低い含水率の脱水汚泥を得ることができ、加えて無機凝集剤を効率的に注入できるので、その使用量を抑えることもできる。
また、給水により高比重無機凝集剤を予め希釈して増量させることにより、高比重無機凝集剤を、凝集剤流出口26bを介して分離汚泥へスムーズに、満遍なく注入することができ、短時間で速やかに分離汚泥と高比重無機凝集剤とを反応させることができ、より一層効率的に且つ確実に脱水汚泥の含水率を低下させることができる。
さらに、給水により高比重無機凝集剤を希釈できるため、高濃度の高比重無機凝集剤原液を用いることができ、高比重無機凝集剤タンクや高比重無機凝集剤注入ポンプの小型化が可能であり、設備コストや設置面積の削減に有効である。
【0072】
実施例1.
表1は、鉄含有率が高い高比重の無機凝集剤(鉄系の高比重無機凝集剤)の物性について、他の無機凝集剤(4種類)と比較したものである。
【0073】
【表1】

【0074】
表1から理解されるように、鉄系の高比重無機凝集剤は、比重が1.45以上と高く、鉄含有率(T-Fe換算での鉄の濃度)も12.0%以上と高い値である。
【0075】
後述する脱水性能の比較実験では、鉄系の高比重無機凝集剤として、比重が1.50〜1.60、鉄含有率(T-Fe換算での鉄の濃度)が12.5%〜14.5%のポリ硫酸第二鉄(〔Fe2(OH)n(SO4)3-n/2〕m)を使用した。
【0076】
上記実施の形態3による汚泥処理システムにおいて比較実験を行った。結果を表2に示す。
【0077】
この比較実験では下水処理場の消化汚泥(汚泥濃度:1.52〜1.70%)を用いて、高分子凝集剤(汚泥調質で注入)と異なる種類の無機凝集剤(5種:通常の鉄系、低比重の鉄系、高比重の鉄系、塩化アルミニウム系および硫酸アルミニウム系の無機凝集剤のテーパ注入)を併用した場合の脱水性能を調べた。
【0078】
無機凝集剤の種類および添加率以外の、汚泥調質機および遠心脱水機の運転条件は、ほぼ一定(高分子凝集剤の注入率:1.41〜1.58%TS、遠心効果:2000G、差速:1.2〜2.0min-1)とした。
【0079】
表2から理解されるように、高比重の鉄系無機凝集剤(ポリ硫酸第二鉄)をテーパ注入することにより、分離液のSS濃度が安定して低い値を示しており、つまり十分に固形物を回収できた(固形物回収率:99.7%以上)。さらに、消費電力も1.12〜1.16kWh/m3であり、他の無機凝集剤と同等以上の省エネルギー効果および温室効果ガスの排出低減効果が得られた。
【0080】
特に、脱水性能で重要な脱水汚泥の含水率については、表2のデータに基づき図7に実験結果を示した。なお、図7(無機凝集剤注入率に対する脱水汚泥含水率の比較図)において、通常の鉄系無機凝集剤の結果を■(黒四角)で、本発明に用いられる高比重の鉄系無機凝集剤の結果を●(黒丸)で、低比重の鉄系無機凝集剤の結果を▲(黒三角)で、ポリ塩化アルミニウム系(PAC)無機凝集剤の結果を○(白丸)で、ポリ硫酸アルミニウム系(硫酸バンド)無機凝集剤の結果を△(白三角)で示した。
【0081】
図7から理解されるように、高比重の鉄系無機凝集剤をテーパ注入した場合には、脱水汚泥の含水率は、他の無機凝集剤に比べて明らかに低い値を示しており、通常の運転条件である無機凝集剤の注入率(35%/TS)では、脱水汚泥の含水率が66%台を示しており、昨今の目標である含水率70%以下を容易に達成することができ、とても優れた脱水性能を得ることができた。
【0082】
さらに、通常の運転条件より高い無機凝集剤の注入率(47.5%/TS)にした場合には、脱水汚泥の含水率はなんと61%台にすることができ、他の凝集剤や他の汚泥処理機器の追随を許さない非常に優れた脱水性能を発揮させることができた。
【0083】
このように、汚泥に高分子凝集剤を注入して汚泥調質し、高比重の鉄系無機凝集剤をテーパ注入して遠心分離することにより、凝集剤の過剰注入を行わずに効率よく安定して脱水汚泥の含水率を低減化することができるので、汚泥の減容化に大変有効であると共に、その後の脱水汚泥の処理処分も容易になり、SS回収率や消費電力の良好な結果と合わせ、非常に高効率・省エネルギーであり、温室効果ガスの削減に十分寄与することができる。
【0084】
【表2】

【0085】
<実施の形態4>
図4は本発明の実施の形態4による汚泥処理システムの概略構成図であり、図3(A)と同一の構成要素には同一符号を付して重複説明を省略する。
【0086】
実施の形態4による汚泥処理システムは、脱水分離液の酸化還元電位(ORP)を測定するORP計27と、ORP値に基づき各凝集剤の注入等を制御する制御器28を設けた点で、実施の形態3と異なる。
【0087】
詳述すると、実施の形態4では、ORP計27により測定された脱水分離液のORP値に基づいて脱水分離液の水質の悪化を検知でき、悪化を検知した場合には遠心脱水機2の処理状況(運転状態)が悪いと判断でき、遠心脱水機2の処理状況(運転状態)の改善のため、制御器28により、無機凝集剤の注入、高分子凝集剤の注入、遠心脱水機2の運転のうち、一つまたは二つ以上を制御するように構成されている。
【0088】
ORP計27は、脱水分離液排出口2aから排出される脱水分離液を収容するORP計測槽27aと、このORP計測槽27a内に設けられた撹拌羽根27bと、ORP計測槽27a内の脱水分離液のORPを測定するための測定電極27cを備えている。ORP計27と制御器28とは電気的に接続されており、ORP計27により測定された脱水分離液のORP値の計測信号が制御器28に送られるように構成されている。なお、ORP計27から制御器28へ入力される計測信号の流れは、図4の一点鎖線で示されている。
【0089】
脱水分離液のORP値は、脱水分離液排出口2aから排出される脱水分離液を、測定電極27cを備えるORP計測槽27aで受けて測定している。ORP計測槽27aで脱水分離液を一端貯留、混合することにより緩衝作用が働き、ORP値の変動が緩やかとなるため制御が安定する。さらに、遠心脱水機2が長時間休止する場合においても、測定電極27cはORP計測槽27a内の脱水分離液に浸された状態となるため、測定電極27cの乾燥による劣化を防止できる。脱水分離液のORP値を緩衝作用によって安定化できる場合や測定電極27cの乾燥による劣化を懸念する必要がない場合には、ORP計測槽27aを設けなくてもよい。
【0090】
制御器28は、高分子凝集剤注入ポンプ6、無機凝集剤注入ポンプ15、回転駆動機23およびバックドライブモータ24にそれぞれ電気的に接続されており、ORP計27からのORP値に基づいて、高分子凝集剤注入管5からの高分子凝集剤の注入、テーパ注入管16からの無機凝集剤の注入、回転駆動機23の駆動、バックドライブモータ24の駆動(差速)を適切に制御するように構成されている。制御器28から高分子凝集剤注入ポンプ6、無機凝集剤注入ポンプ15、回転駆動機23、バックドライブモータ24へ、それぞれ出力される制御指令の流れは、図4の二点鎖線で示されている。なお、この制御器28は、機器類を直接制御してもよく、またインバータ制御としてもよい。また、制御器28により高分子凝集剤、無機凝集剤の注入を制御する場合には、各凝集剤注入ポンプ6,15を制御する他に、開閉弁6a,15aを制御してもよい。
【0091】
ここで、酸化還元電位(ORP)について説明する。
ORPは、水中の酸化還元状態を表す数値(単位:mV)である。酸化状態ではプラスの値になり、還元状態ではマイナスの値になる。
【0092】
水中に存在する酸化性物質には溶存酸素や3価の鉄イオンなどがあり、一方、水中に存在する還元性物質には2価の鉄イオン、硫化物、有機物などがあり、水中のORPはこれら物質の量のバランスによりプラス数値になったり、マイナス数値になったりする。
【0093】
遠心脱水機2から流出する脱水分離液のORP値がマイナスの数値である場合には、脱水分離液中に還元性物質が酸化性物質より多く含まれていること(還元状態)を表し、つまり脱水分離液の水質が悪化(有機物であるSSの濃度が上昇)していることを意味している。
【0094】
逆に、脱水分離液のORP値がプラスの数値である場合には、脱水分離液中に酸化性物質が還元性物質より多く含まれていること(酸化状態)を表し、つまり脱水分離液中に還元性物質であるSSが少なく、脱水分離液の水質が良好である(有機物であるSSの濃度が低下している=SS回収率が良い)ことを意味している。
【0095】
この作用に基づき、ORP値がマイナス側にあるときは脱水分離液の水質が悪く、遠心脱水機2の処理状況(運転状態)が適正でない判断でき、逆に、ORP値がプラス側にあるときは脱水分離液の水質が良好であり、遠心脱水機2の処理状況(運転状態)が適正である判断できるわけである。
【0096】
ORPの測定は、酸化還元物質を含む溶液に、不活性な金属電極である測定電極27c(予め酸化還元電位の決まった参照電極であり、例えば、標準水素電極や銀−塩化銀電極などがある)を入れることにより生じる電位差を基に、その溶液のORPを決定する一般的なORP計を用いるが、これに限るものではなく、安定して確実に脱水分離液のORP値を測定できるORP計であれば使用してもよい。
【0097】
次に動作について説明する。
まず、実施の形態3と同様に、遠心脱水機2により、無機凝集剤またはその希釈液が注入された調質汚泥が脱水処理され、脱水汚泥と脱水分離液とに分離される。
次に、ORP計27により脱水分離液のORPが測定され、そのORP値は制御器28に送られる。ORP値がプラス側にあれば(ただし凝集剤等が過剰に注入され脱水汚泥の含水率があまり低下せず、ORP値がとても高い状態は除く:例えば+80mV以上)、脱水分離液の水質が良好であり、調質汚泥の固液分離(汚泥脱水処理)が効率よく良好に行われていると判断される。
【0098】
このように調質汚泥の固液分離が良好に行われ、脱水汚泥の含水率が低く、SS回収率が高い(=脱水分離液SS濃度が低い)場合には、高分子凝集剤注入ポンプ6、無機凝集剤注入ポンプ15、回転駆動機23やバックドライブモータ24の駆動はその状態を維持するよう制御器28により制御される。
【0099】
しかし、ORP値がマイナス側にあれば、脱水分離液の水質が悪化しており、調質汚泥の固液分離(汚泥脱水処理)が適正に行われていないと判断される。このような状況では、脱水汚泥の含水率が低くならず、SS回収率が低い(=脱水分離液SS濃度が高い)ので、調質汚泥の固液分離(汚泥脱水処理)が効率よく良好に行われるよう、制御器28は、高分子凝集剤注入ポンプ6、無機凝集剤注入ポンプ15、回転駆動機23やバックドライブモータ24の駆動を制御し、遠心脱水機2の運転状態を適正にする。
【0100】
特に、高分子凝集剤注入ポンプ6を制御することにより、調質汚泥の固液分離性能は速やかに変化し、調質汚泥の固液分離(汚泥脱水処理)が改善される。例えば、ORP値がマイナス側(−40mV〜−10mV)にある場合には、制御器28は、高分子凝集剤注入ポンプ6の駆動を促進させ、高分子凝集剤の注入量を増加させる。また、無機凝集剤注入ポンプ15の駆動を促進させ、無機凝集剤の注入量を増加させる制御も即効性が得られる。
【0101】
このような制御により、汚泥処理システム(調質ならびに固液分離)を適正に管理することができ、脱水分離液のORP値を測定して、このORP値に基づき遠心脱水機2の運転要素を制御することは、汚泥処理システム(調質ならびに固液分離)の状態(調質・分離状況、運転状態)を判定・把握する上で簡便且つ有効な手段であると共に、効率的で安定した汚泥処理システムの運転に資するものである。
【0102】
遠心脱水機2から流出する脱水分離液のORP値は、概ね±100mVの範囲である。SS回収率が高く、脱水分離液のSS濃度が低い場合には、脱水分離液のORP値は、概ね−5 mV〜+40 mVであり、SS回収率が低く、脱水分離液のSS濃度が高い場合には、脱水分離液のORP値は、概ね−70 mV〜±0 mVである。
【0103】
なお、ORP値は、汚泥や分離液の性状、ORP計27の特性、環境、測定条件などにより、一定でなく変動する。そのため、ORP値に基づき遠心脱水機2の運転諸要素を制御する場合には、予めORP値の好適制御範囲を設定する必要がある(マイナスだから不良、プラスだから良とは断定できない)。
【0104】
また、ORP値がプラス(例えば+65mV)で、SS回収率が良好であっても、必要以上に高分子凝集剤等が注入されている過剰注入状態だったり、外胴ボウル21と内胴スクリュウ22との回転差(差速)が必要以上に大きかったりすると、脱水汚泥の含水率が高くなってしまい、遠心脱水機2が適正な運転状態となっていない場合もあり、ORP値には上限から下限にわたる好適制御範囲が存在するため、上記同様に予め設定する必要がある。
【0105】
実施の形態4による汚泥処理システムにおいて、ORP計27により測定された脱水分離液のORP値がマイナス側(例えば−20mV)であった場合、遠心脱水機2の回転数(回転駆動機23)や外胴ボウル21と内胴スクリュウ23との回転差(バックドライブモータ24)を制御したりして、安定して効率的な汚泥脱水処理(脱水汚泥の低含水率化や高いSS回収率)を行うことができる(図8参照)。また、上記遠心脱水機2の制御の他に、脱水分離液のORP値に基づき、制御器28により、高分子凝集剤注入ポンプ6や無機凝集剤注入ポンプ15の駆動を制御し、また必要に応じて調質汚泥供給ポンプ(図示せず)の駆動も制御して、各種凝集剤の注入量を増加させたり、調質汚泥の供給量を低減させたりしてもよい(図9参照)。
【0106】
各種凝集剤注入ポンプの制御が有効であるが、差速(同じ方向に回転する外胴ボウル21と内胴スクリュウ22との回転数の差で、バックドライブモータ24で内胴スクリュウ22の回転を調整する)の制御も有効であり、ORP値が低い(例えば−15mVで、脱水分離液のSS濃度が高い)ときは、差速を大きくしてSS回収率の向上を図り、ORP値が高い(例えば+50mVで、脱水分離液のSS濃度が低いが脱水汚泥の含水率が低くない)ときは、差速を小さくして汚泥含水率の低減を図るなど、容易に運転制御でき、高い固液分離性能を発揮(維持)することができる。
【0107】
本発明の実施の形態4によれば、含水率の高い汚泥に高分子凝集剤を注入して混合した後に、その汚泥を汚泥調質機1Aに供給することにより、脱水に適した状態にある調質汚泥と調質分離液とに分離することができる。
【0108】
本発明の実施の形態4によれば、遠心脱水機2からの脱水分離液のORPをORP計27により測定し、そのORP値から遠心脱水機2における運転状況の良否を判定(推測)し、その判定結果から、凝集剤の注入、汚泥の供給量、遠心脱水機2の運転を適切に調整することにより、安定して適正に汚泥処理(固液分離)を行うことができる。
【0109】
実施例2.
実施の形態4に係る汚泥処理システムにおいて、脱水分離液のORP値が−25 mVのときに、制御器28により高分子凝集剤注入ポンプ6を制御して高分子凝集剤の注入量を10%程度増加させた(1.0%/対汚泥SS→1.1%/対汚泥SS)。
これにより、ORP値は+10mVとなり、脱水汚泥の含水率は75%から72%に3ポイント低下すると共に、SS回収率は92%から97%に5ポイントも改善し、脱水性能が明らかに改善(含水率および脱水分離液SS濃度の低下)された。
【0110】
<実施の形態5>
図5は本発明の実施の形態5による汚泥処理システムの概略構成図であり、図1および図2と同一の構成要素には同一符号を付して重複説明を省略する。
【0111】
実施の形態5による汚泥処理システムは、汚泥調質機と高分子凝集剤混合器と無機凝集剤混合器を組み合わせた点で、実施の形態1および2と異なる。
【0112】
より具体的には、実施の形態5では、汚泥に高分子凝集剤を混合する高分子凝集剤混合器29が汚泥供給管4に設けられ、汚泥調質機1に代えて、汚泥調質機30が設けられ、この汚泥調質機30からの調質汚泥に無機凝集剤を混合する無機凝集剤混合器31が設けられている。
【0113】
汚泥調質機1Bは、水槽1dと、この水槽1d内に鉛直方向に配設され、周面に複数の短冊状の分離羽根1eが間隙をもって配設された筒状回転体1fと、この筒状回転体1fの上部中央に設けられ、且つ、高分子凝集剤が混合された汚泥を受け入れるセンターウェル1gと、前記筒状回転体1fを低速で回転させる駆動機(図示せず)とを備えている。図5において、筒状回転体1fは複数の短冊状の分離羽根1eが間隙をもって配設されているが、例えば、間隔をもって開けられた複数の穴を有するパンチングメタルで構成された筒状回転体など、周面に複数の間隙を有する構造の筒状の回転体であれば、これらに限るものではない。
【0114】
無機凝集剤混合器31は、調質汚泥に無機凝集剤を収容する混合器本体31aと、この混合器本体31a内の調質汚泥及び無機凝集剤を撹拌して混合する撹拌羽根31bを備えている。また、調質汚泥供給管3には、調質汚泥供給ポンプ32が設けられている。
【0115】
次に動作について説明する。
まず、汚泥は、高分子凝集剤混合器29内で、高分子凝集剤と混合されて凝集フロックを形成し、この凝集フロックの形成した汚泥が汚泥調質機1Bのセンターウェル1gから筒状回転体1fの内部に供給されて、調質汚泥と調質分離液とに分離される。すなわち、筒状回転体1fで凝集フロックを回転させても、筒状回転体1fの分離羽根1e間に設けられた間隔(スリット)は筒状回転体1f内の凝集フロックを流出し難い形状もしくは寸法に設定されており、凝集フロックは筒状回転体1eの外に出ないため筒状回転体1eの内部に大量に保持され、調質汚泥として下部から排出され、無機凝集剤混合器31に供給される。高分子凝集剤混合器29は汚泥と高分子凝集剤が確実に安定して混合できる機構であれば良く、例えば、後述する無機凝集剤混合器31,34,35,および36などがある。
次に、調質汚泥は、無機凝集剤混合器31内で、撹拌羽根31bにより無機凝集剤と混合された後に、調質汚泥供給管3を通じて遠心脱水機2内に供給され、その遠心脱水機2によって脱水処理されて、含水率の低い脱水汚泥と、脱水分離液とに分離される。
【0116】
本発明の実施の形態5によれば、高分子凝集剤混合器29を設けることにより、供給される汚泥が消化槽汚泥の混合率が高く、固形物分が高濃度で、汚泥供給管4に高分子凝集剤を注入しても汚泥と高分子凝集剤が容易に混合しない状況においても確実に混合することが可能であり、汚泥調質機1Bでの汚泥調質を安定して行うことができる。
【0117】
本発明の実施の形態5によれば、汚泥調質機1Bを設けることにより、汚泥を、凝集フロックとして円筒回転体1fの内部に大量に保持できるため、効率よく調質汚泥と調質分離液とに分離することができる。
【0118】
本発明の実施の形態5によれば、無機凝集剤混合器31を設けることにより、調質汚泥供給管3に無機凝集剤を注入しても調質汚泥と無機凝集剤が容易に混合しない状況においても、調質汚泥と無機凝集剤を確実に混合できるので、その調質汚泥を脱水に適した状態とすることができる。
【0119】
<実施の形態6>
図6(A)は本発明の実施の形態6による汚泥処理システムの概略構成図であり、図6(B)および図6(C)は、それぞれ、図6(A)に示す無機凝集剤混合器の他の例を示す断面図である。図5と同一の構成要素には同一符号を付して重複説明を省略する。
【0120】
実施の形態6による汚泥処理システムは、実施の形態5の汚泥調質機と高分子凝集剤混合器の各機能を併せ持つ汚泥調質機と無機凝集剤混合器を組み合わせた点で、実施の形態5と異なる。
【0121】
より具体的には、図6(A)に示すように、実施の形態6では、実施の形態5の高分子凝集剤混合器29および汚泥調質機1Bに代えて、汚泥に高分子凝集剤を直接注入し、且つ、該汚泥を調質する汚泥調質機1Cが配設されており、この汚泥調質機1Cの下流側には、実施の形態5の無機凝集剤混合器31に代えて、汚泥調質機1Cからの調質汚泥に無機凝集剤を混合し、且つ、その混合を継続しながら遠心脱水機2まで搬送する搬送混合器タイプの無機凝集剤混合器34が設けられている。
【0122】
汚泥調質機1Cは、実施の形態1等の汚泥調質機1と異なり、水平方向に対して傾斜して設置された円筒状の調質機本体1hと、この調質機本体1h内に配設された中心軸1iに固定され、且つ、固形成分を通過させず水分を通過させる円盤状のスクリーン1jと、このスクリーン1jの上面を摺動するように中心軸1i回りに回転する回転羽根1kを備えている。また、汚泥調質機1Cには、調質機本体1h内のスクリーン1j上に汚泥を供給する汚泥供給管4が接続されると共に、該汚泥に高分子凝集剤を注入して凝集フロックを生成する高分子凝集剤注入管5が接続されている。
【0123】
無機凝集剤混合器34は、調質汚泥供給管3と、この調質汚泥供給管3内に配設されたスクリュウコンベア34aとから構成されている。調質汚泥供給管3の上流側には、調質汚泥に無機凝集剤を注入する無機凝集剤注入管14が接続されている。
【0124】
なお、実施の形態6では、図6(A)に示す無機凝集剤混合器34に代えて、例えば図6(B)に示す無機凝集剤混合器35、または、図6(C)に示す無機凝集剤混合器36など、他の方式による無機凝集剤混合器も同様に使用可能である。
【0125】
無機凝集剤混合器35は、図6(B)に示すように、調質汚泥供給管3と、この調質汚泥供給管3の内壁に形成された一つ以上の突起部35aとから構成されている。調質汚泥供給管3の上流側には、調質汚泥に無機凝集剤を注入する無機凝集剤注入管14が接続されている。
【0126】
無機凝集剤混合器36は、図6(C)に示すように、調質汚泥供給管3と、この調質汚泥供給管3を折り返して形成された一つ以上の屈曲部36aとから構成されている。調質汚泥供給管3の上流側には、調質汚泥に無機凝集剤を注入する無機凝集剤注入管14が接続されている。
【0127】
図6(A)〜図6(C)に示した無機凝集剤混合器34,35,36は、それぞれ単独で使用できるが、これに限定されず、互いに組み合わせて使用されてもよい。例えば、スクリュウコンベア34aを配設した調質汚泥供給管3の内壁に、あるいは、屈曲部36aを形成した調質汚泥供給管3の内壁に、それぞれ、無機凝集剤混合器35の突起部35aを設けてもよい。また、無機凝集剤混合器34,35,36は、必要に応じて、実施の形態5の無機凝集剤混合器31あるいは他の機構を備えた混合器と組み合わせて使用されてもよい。
【0128】
次に動作について説明する。
まず、汚泥調質機1C内に汚泥が供給されると、スクリーン1j上で汚泥に高分子凝集剤が注入され、回転羽根1kの回転により、汚泥と高分子凝集剤が混合され、汚泥の中に凝集フロックが形成される。この凝集フロックが回転羽根1kの回転により、傾斜したスクリーン1j上で斜め上方に掻き上げられると共に、凝集フロックを含む汚泥中の水分は、スクリーン1jを通過して除去されて、調質分離液として排出される。汚泥中の凝集フロックは、スクリーン1j上に残留しており、回転羽根1kの回転により、さらに掻き上げられ、調質汚泥として、無機凝集剤混合器34に供給される。
次に、調質汚泥は、無機凝集剤混合器34の調質汚泥供給管3内で、スクリュウコンベア34aにより無機凝集剤と混合されながら、遠心脱水機2内に供給され、その遠心脱水機2によって脱水処理されて、含水率の低い脱水汚泥と、脱水分離液とに分離される。
【0129】
なお、調質汚泥を無機凝集剤混合器35に供給する場合、調質汚泥は、無機凝集剤混合器35の調質汚泥供給管3内で、突起部35aにより物理的に迂回を繰り返し流れに乱れが生じ、無機凝集剤と混合する機会が増加することから、無機凝集剤と混合しやすくなる。このような混合状態の調質汚泥は、遠心脱水機2内に供給され、その遠心脱水機2によって脱水処理されて、含水率の低い脱水汚泥と、脱水分離液とに分離される。
【0130】
また、調質汚泥を無機凝集剤混合器36に供給する場合、調質汚泥は、無機凝集剤混合器36の調質汚泥供給管3内で、屈曲部36aにより物理的に迂回を繰り返し流れに乱れが生じ、無機凝集剤と混合する機会が増加することから、無機凝集剤と混合しやすくなる。このような混合状態の調質汚泥は、遠心脱水機2内に供給され、その遠心脱水機2によって脱水処理されて、含水率の低い脱水汚泥と、脱水分離液とに分離される。なお、図6(C)では屈曲部36a間に直胴部36bが図示されているが、屈曲部36aがつづら折り状あるいはコイル状に連なっても良い。
【0131】
本発明の実施の形態6によれば、汚泥調質機1Cを設けることにより、汚泥調質機1Cに供給された汚泥と高分子凝集剤が汚泥調質機1C内において、スクリーン1jの上部の回転羽根1kの回転により確実に混合されるため、質の高い調質汚泥(固形物濃度が高い、凝集が安定している、など)が得られる。また、このような質の高い調質汚泥は粘性が高く、無機凝集剤の混合や遠心脱水機までの搬送が困難となるため、無機凝集剤混合器34を設けることにより、調質汚泥供給管3による調質汚泥の搬送中に無機凝集剤との混合を行い、上記のような困難を確実に克服することができる。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】本発明の実施の形態1による汚泥処理システムの概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態2による汚泥処理システムの概略構成図である。
【図3(A)】本発明の実施の形態3による汚泥処理システムの概略構成図である。
【図3(B)】図3(A)のテーパ注入管部分の拡大断面図である。
【図4】本発明の実施の形態4による汚泥処理システムの概略構成図である。
【図5】本発明の実施の形態5による汚泥処理システムの概略構成図である。
【図6(A)】本発明の実施の形態6による汚泥処理システムの概略構成図である。
【図6(B)】本発明の実施の形態6による汚泥処理システムに用いられる無機凝集剤混合器とは他の無機凝集剤混合器の断面図である。
【図6(C)】本発明の実施の形態6による汚泥処理システムに用いられる無機凝集剤混合器とはさらに他の無機凝集剤混合器の断面図である。
【図7】本発明の実施例1での比較実験結果である。
【図8】遠心脱水機を用いた場合において、ORP値に基づいて、遠心脱水機の外胴ボウルと内胴スクリュウとの差速を制御したときの脱水汚泥含水率(%)およびSS回収率(%)の各変化を示す説明図である。
【図9】遠心脱水機を用いた場合において、ORP値に基づいて、高分子凝集剤の注入量(率)を制御したときの脱水汚泥含水率(%)およびSS回収率(%)の各変化を示す説明図である。
【符号の説明】
【0133】
1A 汚泥調質機
1B 汚泥調質機
1C 汚泥調質機
1a 無端ベルト
1b,1c 回転ローラ
1d 水槽
1e 分離羽根
1f 筒状回転体
1g センターウェル
1h 調質機本体
1i 中心軸
1j スクリーン
1k 回転羽根
2 遠心脱水機
2a 脱水分離液排出口
2b 脱水汚泥排出口
3 調質汚泥供給管
3a 開口
4 汚泥供給管
5 高分子凝集剤注入管
6 高分子凝集剤注入ポンプ
6a 開閉弁
7 パッケージボックス
8 汚泥供給タンク
9 回転羽根
10 汚泥供給管
11 汚泥供給ポンプ
12 高分子凝集剤タンク
13 無機凝集剤タンク
14 無機凝集剤注入管
14a 機内注入管
14b 前注入管
15 無機凝集剤注入ポンプ
15a,15b,15c 開閉弁
16 テーパ注入管
16a 吐出孔
17 給水管
18 給水ポンプ
18a 開閉弁
20 ケーシング
21 外胴ボウル
21a 2段テーパ部
22 内胴スクリュウ
22a 内胴テーパ部
22b スクリュウ羽根
23 回転駆動機
24 バックドライブモータ
25 プール
26 汚泥供給室
26a 汚泥供給口
26b 凝集剤流出口
26c 仕切板
27 ORP計
27a ORP計測槽
27b 撹拌羽根
27c 測定電極
28 制御器
29 高分子凝集剤混合器
31 無機凝集剤混合器
31a 混合器本体
31b 撹拌羽根
32 調質汚泥供給ポンプ
34 無機凝集剤混合器
34a スクリュウコンベア
35 無機凝集剤混合器
35a 突起部
36 無機凝集剤混合器
36a 屈曲部
36b 直胴部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥に高分子凝集剤を注入して調質する汚泥調質機と、
調質汚泥を脱水汚泥と脱水分離液に分離する遠心脱水機と、
該遠心脱水機に前記調質汚泥を供給する調質汚泥供給管と
を備えたことを特徴とする汚泥処理システム。
【請求項2】
前記調質汚泥に無機凝集剤を注入する無機凝集剤注入管
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の汚泥処理システム。
【請求項3】
前記遠心脱水機は、
外胴ボウルおよび内胴スクリュウを有すると共に、
前記内胴スクリュウ内を延伸して、
前記外胴ボウルのテーパー部に無機凝集剤を注入するテーパー注入管
を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の汚泥処理システム。
【請求項4】
前記無機凝集剤は、
鉄含有率が高い高比重無機凝集剤である
ことを特徴とする請求項1から3いずれかに記載の汚泥処理システム。
【請求項5】
前記脱水分離液の酸化還元電位を測定する酸化還元電位計と
該酸化還元電位計の計測値に基づき、
無機凝集剤の注入、高分子凝集剤の注入および遠心脱水機の運転のうち、
一つまたは二つ以上を制御する制御器と
を備えたことを特徴とする請求項1から4いずれかに記載の汚泥処理システム。
【請求項6】
汚泥に高分子凝集剤を注入し、
高分子凝集剤が注入された汚泥を汚泥調質機で調質し、
調質された汚泥に無機凝集剤を注入し、
無機凝集剤が注入された調質汚泥を遠心脱水機へ供給して脱水する
ことを特徴とする汚泥処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3(A)】
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【図3(B)】
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【図4】
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【図5】
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【図6(A)】
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【図6(B)】
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【図6(C)】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−139628(P2012−139628A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293133(P2010−293133)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(391022418)株式会社西原環境 (21)
【Fターム(参考)】