説明

汚泥処理装置、有機性廃水処理装置、リンの生産方法及び汚泥の生産方法

【課題】有機性廃水から効率よくリン成分を回収することが可能な汚泥処理装置及び有機性廃水処理装置を提供すること。
【解決手段】原廃水Aが嫌気処理及び好気処理に付された後、第1の固液分離槽3で分離された一次汚泥xは、加熱ユニット4に付される。加熱ユニット4では、処理前貯留槽41から熱交換器44を経て、加温槽45に設置された加熱配管46に導入される。導入された一次汚泥xは、加温槽45内の加熱媒体45aを介して60℃〜90℃加熱され、導入から10分〜120分経過後に排出される。一次汚泥xを加熱配管45に導入する際の流速を制御しながら当該加熱配管45内で加熱することで、一次汚泥xを加温槽45内に直接導入する場合に比べて、加熱時間が長すぎたり短すぎたりといった加熱時間のばらつきが生じることがなくなり、一次汚泥x中のポリリン酸を高濃度で放出させることができ、リン成分を効率よく回収することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥を含む有機性廃水を加熱処理することが可能な汚泥処理装置、有機性廃水処理装置、前記有機性廃水からリンを生産する方法及び汚泥を生産する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、下水等の有機性廃水に含まれるリン(正リン酸、ポリリン酸、リン酸塩、リン酸エステル等)の除去方法としては、凝集剤添加法、晶析脱リン法、嫌気―好気活性汚泥法などが知られている。
【0003】
凝集剤添加法は、アルミニウムイオンや鉄イオンなどの三価金属陽イオンが正リン酸イオンと反応して難水溶性のリン酸塩を生成することを利用し、硫酸アルミニウム等の凝集剤を廃水に混和して、難溶性のリン酸塩から形成されるフロックが沈殿分離されるものである。
【0004】
晶析脱リン法とは、正リン酸イオンとカルシウムイオンとの搬送による難溶性のヒドロキシアパタイトの精製に基づくものであり、余剰汚泥の増加を伴わない点では好ましいものではあるが、前処理により晶析妨害物質を除去したり、pHや温度を調整したりする等、アパタイト晶析のために必要な条件を厳密にコントロールする必要があるので、適用が限定され、またコスト増大の可能性もあり、好ましい方法とはいえない。
【0005】
嫌気―好気活性汚泥法は、嫌気条件でエネルギー獲得のためにポリリン酸を正リン酸として放出した微生物が、好気状態で正リン酸を過剰摂取・代謝後にポリリン酸として蓄積することを利用した方法であり、廃水を嫌気処理槽、好気処理槽及び沈殿池における反復処理に付して、余剰汚泥にリン成分を内包させ、処理水中のリン成分を除去するものである。
【0006】
これらの方法のうち、嫌気―好気活性汚泥法を応用した技術として、有機性廃水に対して嫌気処理及び好気処理を実施した後、廃水を一次処理水と一次汚泥とに固液分離し、分離された一次汚泥からリン成分を液相に放出させるために60℃〜90℃で10分〜120分間加熱処理を行い、放出されたリン成分を含有する二次処理水と、リン成分が除去された二次汚泥とに固液分離し、分離された二次処理水に対して凝集剤を添加することで前記液相からリン成分を沈殿させる、という処理方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3499151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ポリリン酸は、リン酸が直鎖状に数個〜数千個重合したポリマーである。したがって、上記リン成分は、リン酸よりもポリリン酸として放出される方が、後で添加する凝集剤の量も少なくて済み、かつ沈殿として回収されるリン成分の量も多いため効率がよい。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術においては、加温槽に直接汚泥を導入して加熱処理するため、加熱された一次汚泥は、加温槽から短時間で排出される場合と加温槽内に長時間滞留した後に排出される場合とがあり、汚泥の加温時間にばらつきが出る。よって、短時間(例えば10分未満)で排出された場合には、加温時間が短すぎるためにポリリン酸が液相に放出されず、長時間(例えば120分以上)滞留後に排出された場合には、加温時間が長すぎるために液相に放出されたポリリン酸がリン酸に加水分解してしまい、ポリリン酸として沈殿させることができない。リン酸として沈殿された場合には、添加する凝集剤の量も多くなり、pH調節(アルカリ処理)等余計な作業も必要となる。
【0009】
また、加温時間にばらつきがあるために、汚泥中に存在するノロウィルスやクリプトスポリジウム等の病原性微生物の殺滅効果が不完全となり、回収されたリン成分を再利用する際に問題となる。更に、加温槽は密閉されていないため、汚泥の加熱により悪臭が発生してしまうという問題もある。
【0010】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、有機性廃水から効率よくリン成分を回収することが可能な汚泥処理装置、有機性廃水処理装置、リンの生産方法及び汚泥の生産方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するため、本発明の主たる観点に係る汚泥処理装置は、加熱媒体を収容可能な容器と、前記加熱媒体中に配置され、前記容器の外部から汚泥を導入し、前記外部へ前記汚泥を排出することが可能な配管と、前記汚泥の液相中にリン成分を放出させるために、前記配管に導入された汚泥を前記加熱媒体を介して60℃〜90℃で加熱する加熱手段と、前記配管へ導入された前記汚泥が3分〜120分間加熱された後に排出されるように前記汚泥の流速を制御する制御手段とを具備する。
【0012】
ここで上記リン成分とは、ポリリン酸やリン酸である。上記液相中にリン成分を放出させて配管から汚泥を排出させた後に、凝集剤を添加して固形のリンとして回収するためには、リン酸よりはポリマーとしてのポリリン酸の方が好ましい。また加熱温度を60℃〜90℃としたのは、60℃未満だと、放出されるリン成分が少なく、かつポリリン酸よりもリン酸として放出される量の方が多いため、最終的に固形のリン成分として十分な量を回収できないためであり、また90℃より温度が高いと、リン成分は放出されるものの、90度以下の場合に比べてその放出量がとりたてて増加するわけではないため、エネルギーが無駄になってしまい加熱コストが増す一方、放出されたポリリン酸が速やかにリン酸へ分解してしまうためにリン成分回収のための凝集剤の必要量も増し、効率よくリン成分を回収できないからである。また、汚泥の加熱時間を3分〜120分としたのは、3分未満だとリン成分が液相中にほとんど放出されず、120分より長い時間加熱すると放出されたポリリン酸の多くがリン酸へ分解されてしまい、いずれの場合も効率よくリン成分を回収できなくなるためである。加熱手段としては例えばスチーム発生装置やヒータが用いられ、例えば水等の加熱媒体の温度が60℃〜90℃となるように調整される。当該加熱媒体の熱が配管内の汚泥へ伝えられることで汚泥が加熱されるため、「3分〜120分間加熱」とは、汚泥の温度が60℃〜90℃まで実際に上昇してから3分〜120分加熱することをいう。
【0013】
この構成によれば、汚泥を配管に導入して加熱するため、先に導入された汚泥は後に導入された汚泥よりも常に先に排出されることになる。従って、汚泥の流速を制御することで、導入された汚泥は常に3分〜120分加熱された後に排出されることとなる。これにより、上記容器に直接汚泥を導入して加熱する場合に比べて、汚泥の加熱時間にばらつきが生じることがなくなるため、汚泥からリン成分をより効率よく高濃度で放出させることができ、当該放出されたリン成分を凝集させることで、固形のリン成分を効率よく回収することができる。また、汚泥が十分に加熱されることで、汚泥中に含まれる病原性微生物を確実に殺滅させることができる。更に、配管という密閉空間で加熱するため、悪臭が発生することもなくなる。
【0014】
本発明の一の形態によれば、上記汚泥処理装置において、前記配管はコイル状又はスパイラル状又はコルゲート状に形成される。この場合、例えば長尺の一本の配管をコイル状又はスパイラル状又はコルゲート上に屈曲形成する。配管をこのような形状とすることで、容器内のスペースを有効活用して、上記3分〜120分の加熱を行なうのに十分な長さをとることができ、汚泥の液相中へリン成分を確実に放出させることができる。当該配管の材質は例えば鉄等の金属であるが、樹脂等であってもよい。
【0015】
本発明の一の形態によれば、上記汚泥処理装置は、前記配管から排出された汚泥を冷却する手段を更に具備していてもよい。上述のように、放出されたリン成分に凝集剤を添加して固形のリンとして回収するには、リン酸よりはポリリン酸の方が好ましいが、上記汚泥を加熱した場合に放出されるポリリン酸は、そのまま加熱を続けるとリン酸等に分解されてしまうおそれがある。そこで、加熱してリン成分を放出させた汚泥を冷却することで、ポリリン酸のリン酸等への分解を防いで効率よくリン成分を回収することが可能となる。
【0016】
本発明の一の形態によれば、上記汚泥処理装置は、前記配管への汚泥の導入を停止するとともに、当該配管へ浄水を導入する手段と、前記配管への浄水の導入を停止するとともに、当該配管への汚泥の導入を再開する手段とを具備する。これにより、上記配管へ汚泥の導入を長時間停止した場合に、浄水を導入しておくことで、汚泥がスケールとして配管内に沈着して配管に詰まりが生じることを未然に防止することができる。
【0017】
本発明の一の形態によれば、上記汚泥処理装置において、前記配管は前記容器に着脱可能に設けられてもよい。これにより、例えば前記配管内に詰まりが生じたり、配管が破損または劣化したりする等のトラブルが生じた場合でも、配管自体を例えば着脱可能にカセット化しておき、トラブル時に当該配管を問題の無い配管に交換することで、トラブルを早期に解決して汚泥処理装置の稼動を再開させることができる。
【0018】
本発明の他の観点に係る有機性廃水処理装置は、有機性廃水を導入して嫌気処理するための嫌気処理槽と、前記嫌気処理後の有機性廃水を導入して好気処理するための好気処理槽と、前記嫌気処理及び好気処理後の有機性廃水を一次処理水と一次汚泥とに固液分離するための第1の固液分離槽と、加熱媒体を収容可能な容器と、前記加熱媒体中に配置され、前記容器の外部から前記分離された一次汚泥を導入し、前記外部へ当該一次汚泥を排出することが可能な配管と、前記一次汚泥の液相中にリン成分を放出させるために、前記配管に導入された一次汚泥を前記加熱媒体を介して60℃〜90℃で加熱する加熱手段と、前記配管へ導入された前記一次汚泥が3分〜120分間加熱された後に排出されるように前記一次汚泥の流速を制御する制御手段と、前記配管から排出された一次汚泥を二次処理水と二次汚泥とに固液分離するための第2の固液分離槽と、前記分離された二次処理水に凝集剤を添加してリン成分を沈殿させるための凝集槽とを具備する。
【0019】
上記嫌気処理槽及び好気処理槽においては、いわゆる嫌気好気活性汚泥法により有機性廃水が嫌気条件及び好気条件に繰り返し晒されることによって、有機性廃水の水分側(上記一次処理水側)へ含まれていたリン成分が汚泥側(一次汚泥側)へ濃縮される。そして上記第1の固液分離槽において分離された一次汚泥が、上記容器内の配管に導入されて3分〜120分加熱された後に排出される。当該排出された一次汚泥は、第2の固液分離槽でリン成分を含む二次処理水とリン成分を除去された二次汚泥とに分離され、凝集槽で二次処理水に凝集剤を添加することで固形のリン成分を回収可能となる。これにより、上記容器に直接汚泥を導入して加熱する場合に比べて、上記3分〜120分の加熱時間を確保することができ、汚泥の加熱時間にばらつきが生じることがなくなるため、汚泥からリン成分をより効率よく高濃度で放出させ、第2の固液分離槽を経て凝集槽にて固形のリン成分を効率よく回収することができる。なお、上記凝集剤とは例えば塩化カルシウムである。
【0020】
本発明の他の観点に係る汚泥処理装置は、加熱媒体を収容可能な容器と、前記加熱媒体中に配置され、前記容器の外部から汚泥を導入し、前記外部へ汚泥を排出することが可能な配管と、前記汚泥の液相中にリン成分を放出させるために、前記配管に導入された汚泥を前記加熱媒体を介して常温以上60℃未満の温度で加熱する加熱手段と、前記加熱中の汚泥に超音波を照射する超音波照射手段と、前記配管へ導入された前記汚泥が3分〜120分間加熱された後に排出されるように前記汚泥の流速を制御する制御手段とを具備する。
【0021】
これにより、上記配管に導入された汚泥に超音波を照射することで、超音波振動により汚泥とリン成分との分子間結合の開裂が引き起こされ、60℃未満の温度で加熱しても、60℃〜90℃で加熱した場合と同様に効率よく汚泥の液相中にリン成分を放出させることが可能となる。
【0022】
本発明の他の観点に係る有機性廃水処理装置は、有機性廃水を導入して嫌気処理するための嫌気処理槽と、前記嫌気処理後の有機性廃水を導入して好気処理するための好気処理槽と、前記嫌気処理及び好気処理後の有機性廃水を一次処理水と一次汚泥とに固液分離するための第1の固液分離槽と、加熱媒体を収容可能な容器と、前記加熱媒体中に配置され、前記容器の外部から前記分離された一次汚泥を導入し、前記外部へ当該一次汚泥を排出することが可能な配管と、前記汚泥の液相中にリン成分を放出させるために、前記配管に導入された一次汚泥を前記加熱媒体を介して常温以上60℃未満の温度で加熱する加熱手段と、前記加熱中の一次汚泥に超音波を照射する超音波照射手段と、前記配管へ導入された前記一次汚泥が3分〜120分間加熱された後に排出されるように前記一次汚泥の流速を制御する制御手段と、前記配管から排出された一次汚泥を二次処理水と二次汚泥とに固液分離するための第2の固液分離槽と、前記分離された二次処理水に凝集剤を添加してリン成分を沈殿させるための凝集槽とを具備する。
【0023】
これにより、上記配管に導入された一次汚泥に超音波を照射することで、60℃未満の温度で加熱しても、60℃〜90℃で加熱した場合と同様に効率よく汚泥の液相中にリン成分を放出させ、上記凝集槽にて効率よくリン成分を回収することが可能となる。
【0024】
本発明のまた別の観点に係る汚泥処理装置は、加熱媒体を収容可能な容器と、前記加熱媒体中に配置され、前記容器の外部から汚泥を導入し、前記外部へ汚泥を排出することが可能な配管と、前記汚泥の液相中にリン成分を放出させるために、前記配管に導入された汚泥を前記加熱媒体を介して60℃〜90℃で加熱する加熱手段と、前記配管へ導入された前記汚泥が3分以上10分未満の間加熱された後に排出されるように前記汚泥の流速を制御する制御手段とを具備する。
【0025】
この構成により、上記容器に直接汚泥を導入して加熱する場合に比べて、3分以上10分未満というわずかな時間でリン成分を上記汚泥の液相中に放出させ、当該リン成分を効率よく回収することが可能となる。
【0026】
本発明のまた別の観点に係る有機性廃水処理装置は、有機性廃水を導入して嫌気処理するための嫌気処理槽と、前記嫌気処理後の有機性廃水を導入して好気処理するための好気処理槽と、前記嫌気処理及び好気処理後の有機性廃水を一次処理水と一次汚泥とに固液分離するための第1の固液分離槽と、加熱媒体を収容可能な容器と、前記加熱媒体中に配置され、前記容器の外部から前記分離された一次汚泥を導入し、前記外部へ当該一次汚泥を排出することが可能な配管と、前記一次汚泥の液相中にリン成分を放出させるために、前記配管に導入された一次汚泥を前記加熱媒体を介して60℃〜90℃で加熱する加熱手段と、前記配管へ導入された前記一次汚泥が3分以上10分未満の間加熱された後に排出されるように前記一次汚泥の流速を制御する制御手段と、前記配管から排出された一次汚泥を二次処理水と二次汚泥とに固液分離するための第2の固液分離槽と、前記分離された二次処理水に凝集剤を添加してリン成分を沈殿させるための凝集槽とを具備する。
【0027】
本発明のリンの生産方法は、リン成分を含有する汚泥を含有する有機性廃水からリンを生産する方法であって、前記有機性廃水を嫌気処理する工程と、前記嫌気処理後の有機性廃水を好気処理する工程と、前記好気処理後の有機性廃水を一次処理水と一次汚泥とに固液分離する工程と、前記分離された一次汚泥を、加熱媒体を収容した容器の前記加熱媒体中に配置された配管へ導入する工程と、前記一次汚泥の液相中にリン成分を放出させるために、前記配管に導入された一次汚泥を前記加熱媒体を介して60℃〜90℃で加熱する工程と、前記配管へ導入された前記一次汚泥が3分〜120分間加熱された後に排出されるように前記一次汚泥の流速を制御する工程と、前記配管から排出された一次汚泥を二次処理水と二次汚泥とに固液分離する工程と、前記分離された二次処理水に凝集剤を添加して前記二次処理水中のリン成分を凝集させる工程とを具備する。
【0028】
上記凝集されたリン成分は上記有機性排水中の汚泥から完全に分離され、また上記有機性排水中に含まれているリン以外の成分を除去されているため、いわば人工的なリン鉱石として、例えば、肥料、合成洗剤、洗浄剤、金属イオン封鎖剤、食品添加剤の原料や、製紙、染色、写真技術等に用いる試薬原料、リン化合物、薬剤製造のための原料等として利用することができる。
【0029】
本発明の他の観点に係るリンの生産方法は、リン成分を含有する汚泥を含有する有機性廃水からリンを生産する方法であって、前記有機性廃水を嫌気処理する工程と、前記嫌気処理後の有機性廃水を好気処理する工程と、前記好気処理後の有機性廃水を一次処理水と一次汚泥とに固液分離する工程と、前記分離された一次汚泥を、加熱媒体を収容した容器の前記加熱媒体中に配置された配管へ導入する工程と、前記一次汚泥の液相中にリン成分を放出させるために、前記配管に導入された一次汚泥を前記加熱媒体を介して常温以上60℃未満の温度で加熱する工程と、前記加熱中の一次汚泥に前記加熱媒体を介して超音波を照射する工程と、前記配管へ導入された前記一次汚泥が3分〜120分間加熱された後に排出されるように前記一次汚泥の流速を制御する工程と、前記配管から排出された一次汚泥を二次処理水と二次汚泥とに固液分離する工程と、前記分離された二次処理水に凝集剤を添加して前記二次処理水中のリン成分を凝集させる工程とを具備する。
【0030】
これにより、60℃未満という比較的低い温度でも上記一次汚泥から効率よくリン成分を放出させることで、リンを生産することが可能となる。
【0031】
本発明の更に別の観点に係るリンの生産方法は、リン成分を含有する汚泥を含有する有機性廃水からリンを生産する方法であって、前記有機性廃水を嫌気処理する工程と、前記嫌気処理後の有機性廃水を好気処理する工程と、前記好気処理後の有機性廃水を一次処理水と一次汚泥とに固液分離する工程と、前記分離された一次汚泥を、加熱媒体を収容した容器の前記加熱媒体中に配置された配管へ導入する工程と、前記一次汚泥の液相中にリン成分を放出させるために、前記配管に導入された一次汚泥を前記加熱媒体を介して60℃〜90℃で加熱する工程と、前記配管へ導入された前記一次汚泥が3分〜10分未満の間加熱された後に排出されるように前記一次汚泥の流速を制御する工程と、前記配管から排出された一次汚泥を二次処理水と二次汚泥とに固液分離する工程と、前記分離された二次処理水に凝集剤を添加して前記二次処理水中のリン成分を凝集させる工程とを具備する。
【0032】
これにより、3分から10分未満というわずかな時間でも上記有機性廃水からリンを生産することが可能となる。
【0033】
本発明の汚泥の生産方法は、リン成分を第1の濃度で含有する第1の汚泥から、前記リン成分を第1の濃度より低い第2の濃度で含有する第2の汚泥を生産する汚泥の生産方法において、前記第1の汚泥を、加熱媒体を収容した容器の前記加熱媒体中に配置された配管へ導入する工程と、前記第1の汚泥の液相中にリン成分を放出させるために、前記配管に導入された第1の汚泥を前記加熱媒体を介して60℃〜90℃で加熱する工程と、前記配管へ導入された前記第1の汚泥が3分〜120分間加熱された後に排出されるように前記第1の汚泥の流速を制御する工程と、前記配管から排出された第1の汚泥を処理水と前記第2の汚泥とに固液分離する工程とを具備する。
【0034】
これにより、上記第2の汚泥は脱リン汚泥として再利用することが可能となる。例えば、そのままセメント原料として利用することも可能である。また、脱リン汚泥はすなわち微生物であることから、メタン発酵させてメタンガスを生成することで、再生可能エネルギーの一種であるバイオマスエネルギーとして、発電等の燃料に用いることができる。また、当該メタンガスを燃料として発電するとともに、その排熱を有効利用した、いわゆるコ・ジェネレーションシステムに適用することも可能である。更に、上記発電燃料として利用した後の残渣には炭素等が含まれているため、それらを乾燥させたり炭化させたりすることで、例えば石炭火力の発電所の燃料や製鉄所における微粉炭吹き込み等に利用することもできる。
【0035】
本発明の他の観点に係る汚泥の生産方法は、リン成分を第1の濃度で含有する第1の汚泥から、前記リン成分を第1の濃度より低い第2の濃度で含有する第2の汚泥を生産する汚泥の生産方法において、前記第1の汚泥を、加熱媒体を収容した容器の前記加熱媒体中に配置された配管へ導入する工程と、前記第1の汚泥の液相中にリン成分を放出させるために、前記配管に導入された第1の汚泥を前記加熱媒体を介して常温以上60℃未満の温度で加熱する工程と、前記加熱中の第1の汚泥に前記加熱媒体を介して超音波を照射する工程と、前記配管へ導入された前記第1の汚泥が3分〜120分間加熱された後に排出されるように前記第1の汚泥の流速を制御する工程と、前記配管から排出された第1の汚泥を処理水と前記第2の汚泥とに固液分離する工程とを具備する。
【0036】
これにより、60℃未満という比較的低い温度でも上記第2の汚泥を生産することが可能となる。
【0037】
本発明の他の観点に係る汚泥の生産方法は、リン成分を第1の濃度で含有する第1の汚泥から、前記リン成分を第1の濃度より低い第2の濃度で含有する第2の汚泥を生産する汚泥の生産方法において、前記第1の汚泥を、加熱媒体を収容した容器の前記加熱媒体中に配置された配管へ導入する工程と、前記第1の汚泥の液相中にリン成分を放出させるために、前記配管に導入された第1の汚泥を前記加熱媒体を介して60℃〜90℃で加熱する工程と、前記配管へ導入された前記第1の汚泥が3分〜10分未満の間加熱された後に排出されるように前記第1の汚泥の流速を制御する工程と、前記配管から排出された第1の汚泥を処理水と前記第2の汚泥とに固液分離する工程とを具備する。
【0038】
これにより、3分〜10分未満というわずかな時間で上記第2の汚泥を生産することが可能となる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、有機性廃水から効率よくリン成分を回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づき説明する。
【0041】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る有機性廃水処理装置の構成を示した図である。
【0042】
同図に示すように、有機性廃水処理装置100は、嫌気処理槽1、好気処理槽2、第1の固液分離槽3、加熱処理ユニット4、第2の固液分離槽5、凝集槽6、第3の固液分離槽7で構成される。嫌気処理槽1には、有機性廃水を攪拌するための攪拌装置11が設けられ、また好気処理槽2には、例えばエアポンプ、ブロア等の曝気装置21と、当該曝気手段から送られる空気を好気処理槽2内に行き渡らせるための散気装置22が設けられる。また凝集槽6にも攪拌装置61が設けられる。以下、当該有機性廃水処理装置100における処理の流れについて説明する。
【0043】
有機性廃水である原廃水Aはまず上記嫌気処理槽1及び好気処理槽2においていわゆる嫌気―好気活性汚泥法による処理に付される。まず原廃水Aは上記嫌気処理槽1に導入され、嫌気的条件下にて微生物体内に有機物を摂取せしめると共に、微生物体内にポリリン酸の顆粒として貯留されているリン成分を放出させる。この際、攪拌装置11によって原廃水を攪拌することで、微生物と被処理水中の有機物とが効率よく接触してリン成分の放出が促進される。当該リン成分は概ね加水分解されて正リン酸として液相へ放出される。
【0044】
次いで、この処理液は嫌気処理槽1へ移され、エアポンプ等の曝気装置21及び散気装置22によって、好気的な微生物による有機物の分解及び微生物によるリン成分の摂取(体内貯留)が行なわれる。上記嫌気処理によって放出されたリン成分が、当該好気処理によって微生物体内に濃縮される。当該好気処理後の廃水は再び嫌気処理槽1へ戻され、上記処理が繰り返されることで、上記リン成分の濃縮が進む。
【0045】
上記嫌気処理及び好気処理を複数回繰り返した後、好気処理後の廃水は第1の固液分離槽3に付され、リン成分が濃縮された上記一次汚泥xと、一次処理水aとに分離され、一次処理水aは放流される。固液分離手段としては、従来から知られている沈殿、膜分離を含めた濾過等を適宜採用することができる。なお、この一次汚泥xの一部は、適宜嫌気処理槽1へ返送されて、その後の処理に付される汚泥の量を調整すると共に、嫌気及び好気処理での有機物の分解及び微生物によるリン成分の摂取を十分に行なわせるようにしてもよい。
【0046】
次に、固液分離槽3から得られた一次汚泥xは、加熱処理ユニット4へ移される。ここで当該加熱処理ユニット4の詳細について説明する。図2は当該加熱処理ユニット4の構成を示した図である。
【0047】
同図に示すように、加熱処理ユニット4は、処理前貯留槽41、浄水貯留槽42、熱交換器44、加温槽45、スチーム発生装置47、処理後貯留槽49で構成される。処理前貯留槽41には、上記第1の固液分離槽3において分離された一次汚泥xが導入される。また処理前貯留槽41はポンプ41aを有し、導入された一次汚泥xを槽外へ送り出す。
【0048】
処理前貯留槽41から送り出された一次汚泥xは、熱交換器44を経て加温槽45へ導入される。加温槽45には例えば水等の加熱媒体45aが収容され、当該加熱媒体45aに浸されるように例えばコイル状に屈曲形成された加熱配管46が設けられている。加温槽45は例えば円筒状に形成され、その直径が例えば1m、高さが2mである。
【0049】
加熱配管46は、一次汚泥xを導入するための導入口46aと、当該導入された一次汚泥xを排出するための排出口46bを有し、例えば内径が30mm〜50mm、上記導入口46aから排出口46bまでの長さが例えば360mであるが、当該内径及び長さはこれに限られるものではない。また加熱配管46の材質は例えば鉄等の金属であるが、樹脂等であっても構わない。
【0050】
加熱媒体45aには上記スチーム発生装置47からスチームsが導入され、当該スチームsによって加熱媒体45aの温度が例えば60℃〜90℃となるように調整される。なお、スチーム発生装置47以外にも、例えばコンロやヒータ等により加熱媒体45aの加熱を行なっても勿論構わない。
【0051】
上記導入口46aから加熱配管46に導入された一次汚泥は、当該加熱配管46内で上記加熱媒体45aにより60℃から90℃で加熱され、例えば10分〜120分経過後に上記排出口46bから排出される。温度が70℃〜80℃の場合は、排出までの時間は20分〜60分となる。この排出までの時間は、上記処理前貯留槽41のポンプ41aにより一次汚泥xの流速(流量)を制御することで調整される。すなわち、加熱配管46に導入された一次汚泥xは、上記スチーム発生装置47及び加熱媒体45aによる温度制御と、上記ポンプ41aによる一次汚泥xの流速制御により、加温槽45内で60℃〜90℃で10分〜120分、好ましくは70℃〜80℃で20分〜60分加熱されることとなる。
【0052】
この場合の一次汚泥の流速は、加熱配管46の内径を40mm、導入口46aから排出口46bまでの長さを360mとすると、加熱時間が120分の場合には流速0.05m/s、加熱時間が10分の場合には流速0.6m/sとなる。すなわち、10分〜120分加熱する場合の一次汚泥xの流速の範囲は0.05m/s〜0.6m/s程度となる。なお、このとき、一次汚泥xの粘性係数を水と同一と仮定すると、レイノルズ数は約5,000〜60,000程度となるので、一次汚泥xの流れは乱流となる。
【0053】
当該加熱により、一次汚泥xの微生物中(汚泥中)から液相中にリン成分が主にポリリン酸として放出される。ポリリン酸としてリン成分が放出されると、液相から沈殿として上記凝集槽6にてリン成分を回収するために必要な金属塩(カルシウム)等の凝集剤の必要量が、上述した嫌気処理及び好気処理後に加熱せずに凝集剤を加える場合に比べて格段に低減する。
【0054】
本発明者らは、上記加熱条件を定めるにあたり、上述のように一次汚泥xを加熱処理した場合のリン成分(ポリリン酸及びリン酸)の放出量について事前実験を行なった。以下、当該実験結果について説明する。
【0055】
実験室内回分式嫌気好気活性汚泥プロセスにて、1L容量の三角フラスコ中に、下水処理場由来の活性汚泥500mlを入れ、次いで図3に示す組成を有する有機性廃水500mlを投入した。
【0056】
この原廃水1Lに対して、嫌気処理を20℃、pH7にて滞留時間2時間に亘って行い、続いて20℃、曝気量20vvm(エアレーションポンプを使用)、pH7にて滞留時間5時間に亘って好気処理を実施した。この処理の間、液体をスターラーで攪拌し続け、液量は1Lに維持するようにした。
【0057】
好気処理終了後に、汚泥を1mlずつエッペンドルチューブ25本に分取し、それぞれ5本ずつを50℃、60℃、70℃、80℃及び90℃に設定した恒温槽に静置した。20分毎に1チューブずつサンプリングし、各試料を8,000×gにて5分間遠心分離してから、上清に含まれる全リン量、ポリリン酸量及びリン酸量を以下の方法に従って定量した。
全リン量:過硫酸アンモニウム存在下に熱水分解(121℃、30分間)した後、下記方法によりリン酸として定量
ポリリン酸量:1N塩酸の存在下に加熱分解(100℃、7分間)した後、下記方法によりリン酸として定量
リン酸量:JISK0102によるモリブデン青(アスコルビン酸還元)吸光光度法に基づくリン酸イオン量測定
次いで、これらの上清中のリン成分が凝集沈殿によって分離できるか否かを調べるため、塩化カルシウム(CaCl)を最終濃度が50mMとなるように添加し、8,000×gにて5分間遠心分離することによって得られる沈殿物の全リン量を上記全リン定量法により測定した。
【0058】
こうして得られた結果を図4に示す。同図において、(a)は50℃、(b)は60℃、(c)は70℃、(d)は80℃、(e)は90℃での加熱処理による各定量値の経時変化を示し、(f)には、上記加熱処理前の活性汚泥中のリン組成((1):リン酸、(2):ポリリン酸、(3):その他リン酸化合物量)を示す。
【0059】
同図に示すように、活性汚泥試料の加熱処理を50℃で行った場合には、汚泥から放出されるリン成分の量は全て少なく、しかもポリリン酸よりもリン酸として放出される量が多いことが分かる(図4(a))。この温度では、汚泥中のポリリン酸顆粒はほとんど遊離して来ないようであった。処理温度70℃では(図4(c))、加熱開始後1時間で活性汚泥中に存在していたポリリン酸量(図4(f)(2))の約90%が遊離、放出されていた。そしてこの時点では、ポリリン酸の約20%に該当する量が、リン酸にまで分解されている。加熱開始2時間後に塩化カルシウムを添加して遠心分離を行なうと、遊離していた全リン量のほとんどが、沈殿物として回収できた。処理温度を90℃とすると(図4(e))、ポリリン酸の放出は急速に進行し、この条件下では約10分で終了してしまう。この時点でリン酸に分解していた量は約10%であった。ポリリン酸の放出が終了すると、このポリリン酸は急速にリン酸へと分解され、加熱開始2時間後には遊離したポリリン酸の約60%がリン酸になっていた。この時点で塩化カルシウムによる凝集沈殿を行なっても、回収できるリン成分の量は放出された量の約20%程度に過ぎなかった。従って、本発明を90℃の温度で実施する場合には、放出されたポリリン酸を速やかに凝集沈殿に付すことが好ましいことが分かる。
【0060】
以上の実験結果により、汚泥を60℃〜90℃で10分〜120分間加熱処理することで汚泥の液相中に多くのポリリン酸を放出させ、少ない凝集剤で効率よくリン成分を回収できることが分かった。しかしながら、当該加熱の際に、例えば従来のように加温槽45内に直接一次汚泥xを導入した場合(混合型の加温槽)、当該一次汚泥xは、攪拌装置で攪拌をしたとしても、全ての一次汚泥xが加温槽内に10分〜120分滞留して排出されるわけではなく、導入されてから10分に満たない間に排出されたり、逆に120分以上経過後も加温槽内に留まって排出されなかったりする場合がある。すなわち、従来のような混合型加温槽の場合には、加熱時間にばらつきが生じ、10分〜120分という最適加熱時間を確実に設定することができなくなる。よって、加熱時間が10分に満たない場合には、一次汚泥xの液相中にリン成分が放出されず、また加熱時間が長すぎる場合には、液相中に放出されたポリリン酸がリン酸へと加水分解してしまうため、上記実験結果のように効率よくリン成分を回収することが困難になる。
【0061】
そこで本実施形態においては、上記加熱媒体45aを収容した加温槽45内に上記加熱配管46を設け、加熱配管46に導入された一次汚泥xを加熱媒体45aを介して加熱することで、加熱配管46内を流れている間は確実に加熱を行ない、上記加熱時間のばらつきを防ぐこととしている。
【0062】
加温槽45において加熱処理され、排出口46bから排出された加熱処理液hは、熱交換器44において、上記処理前貯留槽41から加温槽45へ導入される一次汚泥xとの間で熱交換される。加熱槽45で放出させたポリリン酸は、更に引き続いて高温下に晒されるとリン酸等へ分解されてしまうため、当該熱交換により加熱処理液hの温度を70℃以下、好ましくは50℃以下、更に好ましくは40℃以下に調整する。このように熱交換によって液温を調整することで、ヒートロスが少なくなるためランニングコストを削減することができる。また加熱処理液hが冷却された後に図1に示す次なる第2の固液分離槽5に供されることとなるため、当該固液分離槽5の耐熱性があまり要求されなくて済むこととなる。なお熱交換器44を用いずに水冷、通風等によって加熱処理液hの冷却を行なっても構わない。そして、熱交換器44にて冷却された加熱処理液hは、処理後貯留槽49に貯留された後、図1に示す第2の固液分離槽5に付されることとなる。
【0063】
なお、本実施形態における有機性廃水処理装置100は例えば下水処理場等において24時間稼動させることも可能であるが、例えば夜間中等、一時的に比較的長期間稼動を停止することも考えられる。その場合、上記加熱配管46に導入された一次汚泥xの流れが停止して時間が経過すると、当該一次汚泥xが加熱配管46内でスケールとして沈着して、稼動を再開した場合に加熱配管46が詰まってしまう可能性がある。そこで、本実施形態においては、有機性廃水処理装置100の稼動停止時に、加熱配管46内を例えば浄水で置換して、詰まりを未然に防止することとしている。
【0064】
具体的には、加熱処理ユニット4内に上記浄水42aを貯留しておくための浄水貯留槽42を設け、有機性廃水処理装置100の稼動が停止されたのを検知すると、処理前貯留槽41と熱交換器44との間に設けた第1の切替バルブ43を切り替えて、加熱配管46へ、一次汚泥xに換わってポンプ42bにより浄水42aを導入する。また有機性廃水処理装置100の稼動停止後に加熱配管46に残留している一次汚泥xを全て処理後貯留槽49へ移動させると同時に、熱交換器44と処理後貯留槽49との間に設けた第2の切替バルブ48により流路を切り替えて、上記導入した浄水42aを加熱処理ユニット4外へ排出する。有機性廃水処理装置100の稼動が再開されると、上記第1の切替バルブ43及び第2の切替バルブ48をそれぞれ切り替えて、加熱配管46への浄水42aの導入を停止して一次汚泥xを導入する。これにより、有機性廃水処理装置100の稼動停止時には加熱配管46内には一次汚泥xの代わりに常に浄水42aが満たされているため、一次汚泥x内の固形物がスケールとして沈着して加熱配管46を詰まらせるのを未然に防止することができる。なお上記有機性廃水処理装置100の稼動停止は、例えば嫌気処理槽1や好気処理槽2等の前段階のいずれかの装置のスイッチのOFFを検出することで検知してもよいし、例えば処理前貯留槽41から第1の切替バルブ43までの間に流量計又は圧力計を設置して一次汚泥xの流速の変化を検出することで検知するようにしてもよい。
【0065】
次に、上記図1を再び参照して、上記加熱処理ユニット4における処理以降の処理について説明する。当該加熱処理ユニット4から排出された一次汚泥は、第2の固液分離槽5に付され、比較的小容量のリン成分高含有処理水(二次処理水)bと、二次汚泥yとに分離される。上述の通り、第2の固液分離槽5に高い耐熱性が要求されることはないので、例えば汎用されている浮上分離機のほか、遠心分離器、膜分離器、ベルトプレス、フィルタープレス等の脱水機等を広く利用することができる。
【0066】
こうして得られる二次処理水bは、従来の加熱を伴わない廃水処理装置において生じる、リン成分を含む処理水よりもその容量が格段に低減されているので、引き続き行なわれるリン凝集沈殿のための凝集槽6や第3の固液分離槽7等の設備が非常に小規模なもので十分となる。なお、上記第2の固液分離槽5によって分離された二次汚泥yは、脱リン汚泥として、再利用することが可能である。
【0067】
例えば、そのままセメント原料として利用することも可能である。リン成分が除去されていないと、セメントが乾燥時に凝固しないおそれがあるが、本実施形態の二次汚泥yならばそのような問題も除去される。
【0068】
また、脱リン汚泥はすなわち微生物であることから、メタン発酵させてメタンガスを生成することで、再生可能エネルギーの一種であるバイオマスエネルギーとして、発電等の燃料に用いることができる。また、当該メタンガスを燃料として発電するとともに、その排熱を有効利用した、いわゆるコ・ジェネレーションシステムに適用することも可能である。更に、上記発電燃料として利用した後の残渣には炭素等が含まれているため、それらを乾燥させたり炭化させたりすることで、例えば石炭火力の発電所の燃料や製鉄所における微粉炭吹き込み等に利用することもできる。
【0069】
続いて、上記第2の固液分離槽5から排出された二次処理水bは、凝集槽6に導入され、例えば塩化カルシウム等の凝集剤Bを添加して攪拌装置61で攪拌させることで、リン成分を固形成分として凝集させる。上述したように二次処理水bに含まれるリン成分は主としてポリリン酸として得られているため、少量の凝集剤Bを用いるだけで回収の容易な顆粒状の固形成分に凝集させることができる。なお、凝集剤Bの添加量は、二次処理水bに含まれる全リン成分及びポリリン酸の量から遊離リン酸残基数を割り出して、これに足るモル数の量だけ用いればよい。
【0070】
そして、凝集槽6における処理液を第3の固液分離槽7に導入して、リン成分を実質的に含まない三次処理水cと固形リン成分pを得る。この固形のリン成分pは、汚泥から分離されており、原廃水Aに含まれていたその他の成分もほとんど含んでおらず、そして減容化されているので、肥料、合成洗剤、洗浄剤、金属イオン封鎖剤、食品添加剤の原料として、また、製紙、染色、写真技術等に用いる試薬原料、リン化合物、薬剤製造のための原料等として利用しやすいものとなっている。なお、上記三次処理水cは上記嫌気処理槽1に返送されて再度嫌気処理に付される。
【0071】
本発明者らは、上記加熱ユニット4を用いて、加熱配管46の管径、管長、加熱配管46に導入される一次汚泥xの流量、流速及び加熱時間を変更しながら、一次汚泥xを加熱配管46に導入して加熱した場合のリンの放出量について実験を行った。以下、当該実験結果について述べる。
【0072】
図5は、本実験の実験条件を示した図である。同図(a)〜(d)に示すように、本実験においては、加熱温度は何れも90℃として、加熱時間、流量、流速、管長及び管径をそれぞれ4つの条件で変更して実験を行った。一時汚泥xの加熱にはコンロ(図示せず)を用い、加熱後の一次汚泥xは、例えば冷水を充填させた冷却槽(図示せず)に導入して冷却してから処理後貯留槽49へ貯留した。
【0073】
なお、同図(a)の実験条件(1)による実験(以下、実験1という)と、同図(b)の実験条件(2)による実験(以下、実験2という)を同日に、また、同図(c)の実験条件(3)による実験(以下、実験3という)と、同図(d)の実験条件4による実験(以下、実験(4)という)を他の同日にそれぞれ行った。
【0074】
実験1(同図(a))においては、管長を725cm、管径を0.4cmとし(この場合の管内体積は、約364cm(364ml))、加熱温度を90℃、加熱時間を6分33秒、7分8秒、12分34秒及び13分26秒の4段階に設定して実験した。この場合の一次汚泥xの流速は52.0cm/分〜102.8cm/分となり、流量は26.13ml/分〜51.65ml/分となる。
【0075】
実験2(同図(b))においては、管長を1507cm、管径を0.4cmとし(この場合の管内体積は、約757cm(757ml))、加熱温度は90℃、加熱時間は23分43秒と設定した。この場合の一次汚泥xの流速は62.2cm/分、流量は31.27ml/分となる。
【0076】
実験3(同図(c))においては、管長を116cm、管径を0.4cmとし(この場合の管内体積は、約58.3cm(58.3ml))、加熱温度は90℃。加熱時間は31秒、58秒及び3分8秒の3段階に設定した。この場合の一次汚泥xの流速は31.9cm/分〜114.2cm/分となり、流量は16.04ml/分〜57.37ml/分となる。
【0077】
実験4(同図(d))においては、管長を725cm、管径を0.4cmとし(この場合の管内体積は、約364cm(364ml))、加熱温度を90℃、加熱時間は5分18秒と9分1秒の2段階に設定した。この場合の一次汚泥xの流速は125cm/分及び76.1cm/分となり、流量は62.82ml/分及び38.25ml/分となる。
【0078】
なお、一次汚泥xの加熱時間としては、一次汚泥xが加熱されてからその温度が実際に90℃まで上がるまでの昇温時間も考慮に入れる必要がある。本実験及び以下の実験においては、昇温時間は30秒とし、図5においては加熱時間から当該昇温時間である30秒を差し引いた時間を実質的な加熱時間(実加熱時間)とする。
【0079】
また、一次汚泥xの粘性係数を水と同一と仮定すると、上記実験1〜実験4の何れの場合も一次汚泥xの流れは乱流となる。
【0080】
図6〜図8は、上記実験1〜4の実験結果を示した図である。図6は、上記実験1及び実験2の実験結果として、一次汚泥x中に放出されるリン酸、ポリリン酸の濃度(mg/l)を表及びグラフで示した図であり、図7は、上記実験3及び実験4の実験結果として、一次汚泥x中に放出されるリン酸、ポリリン酸の濃度(mg/l)を表及びグラフで示した図であり、図8は、上記実験1〜実験4の実験結果として、一次汚泥x中にもともと含まれる全リン量を100とした場合のリン酸及びポリリン酸の割合を表及びグラフで示した図である。なお、図中のMLSS(Mixed Liquor Suspended Solids)(混合液懸濁物質)はすなわち加熱配管46に導入された一次汚泥xの量を示している。
【0081】
これらの図に示すように、実験1及び実験2においては、一次汚泥xの加熱開始から約6.5分で、一次汚泥x中に含まれる全リン量の約45%のポリリン酸が放出され、そこから加熱時間が長くなるにつれてポリリン酸の放出量も増え、約24分加熱後には約70%のポリリン酸が放出されている。
【0082】
また実験3及び実験4においては、一次汚泥xの加熱開始から1分間程度でリンの放出が始まり、3分程度加熱した場合には、一次汚泥x中に含まれる全リン量の50%以上のポリリン酸が放出され、そこから加熱時間が長くなるにつれてポリリン酸の放出量も増えている。9分間加熱した場合には75%以上が放出されており、上記実験1及び実験2において約24分間加熱した場合に比べても放出量に大した差はないことが分かる。
【0083】
すなわち、上記図4で示した事前実験においては、ポリリン酸の放出には少なくとも10分間の加熱が必要とされたが、当該実験1〜4の結果により、加熱ユニット4により、一次汚泥xを加熱配管46に導入して加熱を行う場合には、少なくとも3分間の加熱により十分な量のポリリン酸が一次汚泥の液相中に放出されることが分かった。また、実験1〜4においては、ポリリン酸からリン酸への分解もほとんど見られないようであった。したがって、少なくとも3分間の加熱により、一次汚泥xからポリリン酸を固形成分として効率よく回収することが可能となる。
【0084】
また、実験1から実験4においては加熱温度は90℃においてしか実験を行っていないが、上記実験1から実験4の結果及び上記事前実験の結果から、60℃〜90℃未満の温度においても十分な量のポリリン酸の放出が期待できる。
【0085】
以上説明したように、本実施形態によれば、上記一次汚泥xを加温槽45内の加熱配管46に導入して加熱媒体45aを介して間接的に加熱することで、加温槽45内に一次汚泥xを直接導入する混合型の加温槽で加熱する場合に比べて、加熱時間のばらつきを防ぐことができ、一次汚泥xの液相中にポリリン酸を確実に高濃度で放出させることが可能となる。また、これにより、その後の凝集処理によって得られる固形のリン成分pのリン含有量も高くなり、当該リン成分pを再利用するにあたっての品質を向上させることができる。
【0086】
また、上述の混合型の加温槽のように加熱時間のばらつきが生じる可能性がある場合には、長時間の加熱によってpHが低下して、ポリリン酸の分解が進むのを防ぐために、例えばNaOHやHSO等、pHを中性付近に保つための試薬を投入しなければならないが、本実施形態のように、加熱しすぎることがない場合にはそのような試薬も使用しなくて済むこととなる。
【0087】
また、本実施形態によれば、加熱時間が十分でない間に一次汚泥xが加温槽45から排出されることもないため、一次汚泥x中に含まれるノロウィルスやクリプトスポリジウム等の病原性微生物を殺滅するのに十分な加熱時間をとることができ、回収したリン成分を再利用する際の安全性も高めることができる。
【0088】
更に、加温槽45のような上方が開放された容器に一次汚泥xを直接導入するのではなく、加熱配管46へ導入して間接的に加熱するため、異臭が発生することもなくなる。
【0089】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、本実施形態において上記第1の実施形態と同様の構成となる部分については同一の符号を付し、説明を省略又は簡略化する。
【0090】
図5は、本実施形態における有機性廃水処理装置100の加熱処理ユニット4を示した図である。同図に示すように、本実施形態においては、上述の第1実施形態と同様の加熱槽45に、新たに超音波発生装置50を設けている。当該超音波発生装置50は、超音波発振器51、超音波振動子52、ホーン53、チップ54等からなり、例えばチップ54がコイル状の加熱配管46に囲まれながら加熱媒体45aに浸されるように設けられている。超音波発振器51から発振された超音波(交流電圧)は、超音波振動子52へ伝えられ、それにより超音波振動子52は機械的な超音波振動を発生する。当該超音波振動はホーン53に伝達されて増幅された上で、ホーン53の先端に設けられたチップ54から照射される。当該超音波振動は加熱媒体45aを介して加熱配管46内の一次汚泥xへ伝えられる。
【0091】
また、本実施形態における加熱温度は、例えば常温〜60℃未満の温度に設定される。すなわち、超音波を照射することで、一次汚泥x中のリン成分と汚泥との分子間結合が弱くなり、上記第1の実施形態のように60℃〜90℃よりも低い温度でリン成分を液相中に放出させることが可能となる。従って、エネルギー消費を抑えながらも一次汚泥xからポリリン酸を高濃度で放出させ、効率よくリン成分を回収することができる。
【0092】
また、本実施形態によれば、ポリリン酸を高濃度で放出させることができるため、固形のリン成分としてのみでなく、ポリリン酸を生産するためのプロセスとして本実施形態を利用することも可能である。
【0093】
なお、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0094】
上述の第1及び第2の実施形態においては、加熱配管46の形状はコイル状であったが、この他にも種々の形状を採用することができる。以下、その形状の例について説明する。
【0095】
図6は、加温槽45が円筒形状の場合に加熱配管46が採ることの可能な形状の例を示した図である。同図(a)、(b)及び(c)は、それぞれ加熱配管46がスパイラル状、縦のコルゲート状、横のコルゲート状の場合の各正面斜視図(上)及び平面図(下)を示している。いずれの形状も、加温槽45の円筒形状に合わせてスペースを効率よく使うように成形され、上記10分〜120分の加熱時間を取るのに十分な長さとなっている。
【0096】
図7は、加温槽45が直方体形状の場合に加熱配管46が採ることの可能な形状の例を示した図である。同図(a)及び(b)は、加熱配管46が横のコルゲート状及び縦のコルゲート状の場合の各正面斜視図(上)及び平面図(下)を示している。いずれの形状も、上記円筒形状の場合と同様、加温槽45の直方体形状に合わせてスペースを効率よく使うように形成され、上記加熱時間を取るのに十分な長さとなっている。
【0097】
これらの形状以外にも、加温槽45及び加熱配管46の形状は上記加熱配管46の加熱を行なうことができる形状ならばどのような形状でも採ることができる。
【0098】
また、上記加温槽45及びそれに設けられた加熱配管46等は、加熱処理ユニット4内に複数設けて、複数台をパラレルで稼動させるようにしてもよい。これにより加熱処理ユニット4に発生する危険やトラブルを回避し、また生じてもすぐに回復させて有機性廃水処理装置100の稼動停止を極力防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】第1の実施形態における有機性廃水処理装置100の構成を示した図である。
【図2】第1の実施形態における加熱処理ユニット4の構成を示した図である。
【図3】第1の実施形態において実験に用いた有機性廃水の組成を示す図である。
【図4】活性汚泥を50℃〜90℃で加熱処理実験した場合のリン成分の放出量の経時的変化を示すグラフである。
【図5】第1の実施形態における加熱ユニット4を用いてリンの放出量について行った実験の条件を示した図である。
【図6】図5の実験1及び2の結果を示した図である。
【図7】図5の実験3及び4の結果を示した図である。
【図8】図5の実験1〜実験4の結果を示した図である。
【図9】第2の実施形態における加熱処理ユニット4の構成を示した図である。
【図10】加温槽45が円筒形状の場合に加熱配管46が採ることの可能な形状の例を示した図である。
【図11】加温槽45が直方体形状の場合に加熱配管46が採ることの可能な形状の例を示した図である。
【符号の説明】
【0100】
1…嫌気処理槽
2…好気処理槽
3…第1の固液分離槽
4…加熱処理ユニット
5…第2の固液分離槽
6…凝集槽
7…第3の固液分離槽
41…処理前貯留槽
42…浄水貯留槽
42a…浄水
43…第1の切替バルブ
44…熱交換器
45…加温槽
45a…加熱媒体
45…加熱槽
46…加熱配管
46a…導入口
46b…排出口
47…スチーム発生装置
48…第2の切替バルブ
49…処理後貯留槽
50…超音波発生装置
100…有機性廃水処理装置
A…原廃水
B…凝集剤
a…一次処理水
b…二次処理水
c…三次処理水
x…一次汚泥
y…二次汚泥
s…スチーム
h…加熱処理液
p…リン成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱媒体を収容可能な容器と、
前記加熱媒体中に配置され、前記容器の外部から汚泥を導入し、前記外部へ前記汚泥を排出することが可能な配管と、
前記汚泥の液相中にリン成分を放出させるために、前記配管に導入された汚泥を前記加熱媒体を介して60℃〜90℃で加熱する加熱手段と、
前記配管へ導入された前記汚泥が3分〜120分間加熱された後に排出されるように前記汚泥の流速を制御する制御手段と
を具備することを特徴とする汚泥処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の汚泥処理装置であって、
前記配管はコイル状又はスパイラル状又はコルゲート状に形成されることを特徴とする汚泥処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の汚泥処理装置であって、
前記配管から排出された汚泥を冷却する手段を更に具備することを特徴とする汚泥処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の処理装置であって、
前記配管への汚泥の導入を停止するとともに、当該配管へ浄水を導入する手段と、
前記配管への浄水の導入を停止するとともに、当該配管への汚泥の導入を再開する手段と
を更に具備することを特徴とする汚泥処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の処理装置において、
前記配管は前記容器に着脱可能に設けられることを特徴とする汚泥処理装置。
【請求項6】
有機性廃水を導入して嫌気処理するための嫌気処理槽と、
前記嫌気処理後の有機性廃水を導入して好気処理するための好気処理槽と、
前記嫌気処理及び好気処理後の有機性廃水を一次処理水と一次汚泥とに固液分離するための第1の固液分離槽と、
加熱媒体を収容可能な容器と、
前記加熱媒体中に配置され、前記容器の外部から前記分離された一次汚泥を導入し、前記外部へ当該一次汚泥を排出することが可能な配管と、
前記一次汚泥の液相中にリン成分を放出させるために、前記配管に導入された一次汚泥を前記加熱媒体を介して60℃〜90℃で加熱する加熱手段と、
前記配管へ導入された前記一次汚泥が3分〜120分間加熱された後に排出されるように前記一次汚泥の流速を制御する制御手段と、
前記配管から排出された一次汚泥を二次処理水と二次汚泥とに固液分離するための第2の固液分離槽と、
前記分離された二次処理水に凝集剤を添加してリン成分を沈殿させるための凝集槽と
を具備することを特徴とする有機性廃水処理装置。
【請求項7】
加熱媒体を収容可能な容器と、
前記加熱媒体中に配置され、前記容器の外部から汚泥を導入し、前記外部へ汚泥を排出することが可能な配管と、
前記汚泥の液相中にリン成分を放出させるために、前記配管に導入された汚泥を前記加熱媒体を介して常温以上60℃未満の温度で加熱する加熱手段と、
前記加熱中の汚泥に超音波を照射する超音波照射手段と、
前記配管へ導入された前記汚泥が3分〜120分間加熱された後に排出されるように前記汚泥の流速を制御する制御手段と
を具備することを特徴とする汚泥処理装置。
【請求項8】
有機性廃水を導入して嫌気処理するための嫌気処理槽と、
前記嫌気処理後の有機性廃水を導入して好気処理するための好気処理槽と、
前記嫌気処理及び好気処理後の有機性廃水を一次処理水と一次汚泥とに固液分離するための第1の固液分離槽と、
加熱媒体を収容可能な容器と、
前記加熱媒体中に配置され、前記容器の外部から前記分離された一次汚泥を導入し、前記外部へ当該一次汚泥を排出することが可能な配管と、
前記汚泥の液相中にリン成分を放出させるために、前記配管に導入された一次汚泥を前記加熱媒体を介して常温以上60℃未満の温度で加熱する加熱手段と、
前記加熱中の一次汚泥に超音波を照射する超音波照射手段と、
前記配管へ導入された前記一次汚泥が3分〜120分間加熱された後に排出されるように前記一次汚泥の流速を制御する制御手段と、
前記配管から排出された一次汚泥を二次処理水と二次汚泥とに固液分離するための第2の固液分離槽と、
前記分離された二次処理水に凝集剤を添加してリン成分を沈殿させるための凝集槽と
を具備することを特徴とする有機性廃水処理装置。
【請求項9】
加熱媒体を収容可能な容器と、
前記加熱媒体中に配置され、前記容器の外部から汚泥を導入し、前記外部へ汚泥を排出することが可能な配管と、
前記汚泥の液相中にリン成分を放出させるために、前記配管に導入された汚泥を前記加熱媒体を介して60℃〜90℃で加熱する加熱手段と、
前記配管へ導入された前記汚泥が3分以上10分未満の間加熱された後に排出されるように前記汚泥の流速を制御する制御手段と
を具備することを特徴とする汚泥処理装置。
【請求項10】
有機性廃水を導入して嫌気処理するための嫌気処理槽と、
前記嫌気処理後の有機性廃水を導入して好気処理するための好気処理槽と、
前記嫌気処理及び好気処理後の有機性廃水を一次処理水と一次汚泥とに固液分離するための第1の固液分離槽と、
加熱媒体を収容可能な容器と、
前記加熱媒体中に配置され、前記容器の外部から前記分離された一次汚泥を導入し、前記外部へ当該一次汚泥を排出することが可能な配管と、
前記一次汚泥の液相中にリン成分を放出させるために、前記配管に導入された一次汚泥を前記加熱媒体を介して60℃〜90℃で加熱する加熱手段と、
前記配管へ導入された前記一次汚泥が3分以上10分未満の間加熱された後に排出されるように前記一次汚泥の流速を制御する制御手段と、
前記配管から排出された一次汚泥を二次処理水と二次汚泥とに固液分離するための第2の固液分離槽と、
前記分離された二次処理水に凝集剤を添加してリン成分を沈殿させるための凝集槽と
を具備することを特徴とする有機性廃水処理装置。
【請求項11】
リン成分を含有する汚泥を含有する有機性廃水からリンを生産する方法であって、
前記有機性廃水を嫌気処理する工程と、
前記嫌気処理後の有機性廃水を好気処理する工程と、
前記好気処理後の有機性廃水を一次処理水と一次汚泥とに固液分離する工程と、
前記分離された一次汚泥を、加熱媒体を収容した容器の前記加熱媒体中に配置された配管へ導入する工程と、
前記一次汚泥の液相中にリン成分を放出させるために、前記配管に導入された一次汚泥を前記加熱媒体を介して60℃〜90℃で加熱する工程と、
前記配管へ導入された前記一次汚泥が3分〜120分間加熱された後に排出されるように前記一次汚泥の流速を制御する工程と、
前記配管から排出された一次汚泥を二次処理水と二次汚泥とに固液分離する工程と、
前記分離された二次処理水に凝集剤を添加して前記二次処理水中のリン成分を凝集させる工程と
を具備することを特徴とするリンの生産方法。
【請求項12】
リン成分を含有する汚泥を含有する有機性廃水からリンを生産する方法であって、
前記有機性廃水を嫌気処理する工程と、
前記嫌気処理後の有機性廃水を好気処理する工程と、
前記好気処理後の有機性廃水を一次処理水と一次汚泥とに固液分離する工程と、
前記分離された一次汚泥を、加熱媒体を収容した容器の前記加熱媒体中に配置された配管へ導入する工程と、
前記一次汚泥の液相中にリン成分を放出させるために、前記配管に導入された一次汚泥を前記加熱媒体を介して常温以上60℃未満の温度で加熱する工程と、
前記加熱中の一次汚泥に前記加熱媒体を介して超音波を照射する工程と、
前記配管へ導入された前記一次汚泥が3分〜120分間加熱された後に排出されるように前記一次汚泥の流速を制御する工程と、
前記配管から排出された一次汚泥を二次処理水と二次汚泥とに固液分離する工程と、
前記分離された二次処理水に凝集剤を添加して前記二次処理水中のリン成分を凝集させる工程と
を具備することを特徴とするリンの生産方法。
【請求項13】
リン成分を含有する汚泥を含有する有機性廃水からリンを生産する方法であって、
前記有機性廃水を嫌気処理する工程と、
前記嫌気処理後の有機性廃水を好気処理する工程と、
前記好気処理後の有機性廃水を一次処理水と一次汚泥とに固液分離する工程と、
前記分離された一次汚泥を、加熱媒体を収容した容器の前記加熱媒体中に配置された配管へ導入する工程と、
前記一次汚泥の液相中にリン成分を放出させるために、前記配管に導入された一次汚泥を前記加熱媒体を介して60℃〜90℃で加熱する工程と、
前記配管へ導入された前記一次汚泥が3分〜10分未満の間加熱された後に排出されるように前記一次汚泥の流速を制御する工程と、
前記配管から排出された一次汚泥を二次処理水と二次汚泥とに固液分離する工程と、
前記分離された二次処理水に凝集剤を添加して前記二次処理水中のリン成分を凝集させる工程と
を具備することを特徴とするリンの生産方法。
【請求項14】
リン成分を第1の濃度で含有する第1の汚泥から、前記リン成分を第1の濃度より低い第2の濃度で含有する第2の汚泥を生産する汚泥の生産方法において、
前記第1の汚泥を、加熱媒体を収容した容器の前記加熱媒体中に配置された配管へ導入する工程と、
前記第1の汚泥の液相中にリン成分を放出させるために、前記配管に導入された第1の汚泥を前記加熱媒体を介して60℃〜90℃で加熱する工程と、
前記配管へ導入された前記第1の汚泥が3分〜120分間加熱された後に排出されるように前記第1の汚泥の流速を制御する工程と、
前記配管から排出された第1の汚泥を処理水と前記第2の汚泥とに固液分離する工程と
を具備することを特徴とする汚泥の生産方法。
【請求項15】
リン成分を第1の濃度で含有する第1の汚泥から、前記リン成分を第1の濃度より低い第2の濃度で含有する第2の汚泥を生産する汚泥の生産方法において、
前記第1の汚泥を、加熱媒体を収容した容器の前記加熱媒体中に配置された配管へ導入する工程と、
前記第1の汚泥の液相中にリン成分を放出させるために、前記配管に導入された第1の汚泥を前記加熱媒体を介して常温以上60℃未満の温度で加熱する工程と、
前記加熱中の第1の汚泥に前記加熱媒体を介して超音波を照射する工程と、
前記配管へ導入された前記第1の汚泥が3分〜120分間加熱された後に排出されるように前記第1の汚泥の流速を制御する工程と、
前記配管から排出された第1の汚泥を処理水と前記第2の汚泥とに固液分離する工程と
を具備することを特徴とする汚泥の生産方法。
【請求項16】
リン成分を第1の濃度で含有する第1の汚泥から、前記リン成分を第1の濃度より低い第2の濃度で含有する第2の汚泥を生産する汚泥の生産方法において、
前記第1の汚泥を、加熱媒体を収容した容器の前記加熱媒体中に配置された配管へ導入する工程と、
前記第1の汚泥の液相中にリン成分を放出させるために、前記配管に導入された第1の汚泥を前記加熱媒体を介して60℃〜90℃で加熱する工程と、
前記配管へ導入された前記第1の汚泥が3分〜10分未満の間加熱された後に排出されるように前記第1の汚泥の流速を制御する工程と、
前記配管から排出された第1の汚泥を処理水と前記第2の汚泥とに固液分離する工程と
を具備することを特徴とする汚泥の生産方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−167762(P2007−167762A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−368860(P2005−368860)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(000223104)東和科学株式会社 (9)
【出願人】(599054097)
【Fターム(参考)】