説明

汚泥性状診断装置

【課題】生物汚泥スラリーに含まれる生物汚泥の性状を自動計測可能な汚泥性状診断装置を提供する。
【解決手段】生物汚泥スラリーSを収容する容器1と、この容器1に収容された生物汚泥スラリーSを均一に撹拌した後、この容器1内に収容された生物汚泥スラリーSの水面直下に位置付けられて該スラリーの水面直下における生物汚泥を撮像するカメラ14と、このカメラが捉えた前記生物汚泥の粒子径および該生物汚泥の粒子径毎にその粒子数を計数する画像処理部15と、この前記画像処理部が計数した前記生物汚泥スラリーに含まれる前記生物汚泥の粒子径毎の粒子数の分布が(a)所定の粒子径以下の粒子のみまたは粒子がないときには正常汚泥と判定し、(b)撹拌直後における前記粒子数の分布と略等しいときには分散汚泥と判定し、(c)前記正常汚泥または前記分散汚泥でないときには解体汚泥であると判定する粒子径分布判定部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥性状診断装置に係り、特に排水等に含まれる有機物等の不純物の浄化処理を行う嫌気性生物処理プラントや活性汚泥処理プラントにおける生物汚泥の性状を自動検出するに好適な汚泥性状診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、排水等に含まれる有機物等の不純物を浄化処理すべく嫌気性生物処理や好気性生物処理(活性汚泥処理)を行う浄化処理プラントが知られている。この種の浄化処理プラントは、浄化処理を継続的に安定して行うため浄化槽内の生物汚泥に含まれる嫌気性生物や好気性生物等の微生物の状態監視を行い適切に管理する必要がある。ちなみにこれら微生物からなる生物汚泥の状態監視は、専ら顕微鏡を用いた汚泥フロックの観察によっている。これは、人間系により汚泥フロック粒径の大きさ、圧密性、色等の状態の他、共存する他の生物群(例えば、ワムシ等に代表される大型生物、糸状性細菌や放線菌等)の状態を顕微鏡を用いて観察するものである。
【0003】
またこのような人間系による観察に代えて、サンプリング装置と映像装置並びに画像処理装置等を用いて生物汚泥の状態を演算処理して自動監視する自動監視装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。これは、曝気槽内に設置した撮像装置によって曝気槽内の活性汚泥の状態を撮影して画像処理した後、所定の演算を施して活性汚泥の沈降性を予測するものである。
【0004】
一方、本発明者は、生物汚泥スラリー中に挿入した光散乱型センサを用いて活性汚泥の状態を監視する生物監視装置を提唱している(例えば、特許文献2を参照)。これは、均一に撹拌された生物汚泥スラリーの濃度に応じた検出信号を出力するセンサから得られた検出信号に所定の演算を施し、その演算結果から生物汚泥の状態を判定するものである。
他方、汚泥スラリーに含まれる汚泥の沈降性を測定する方法としては、汚泥スラリーをそのまま若しくは適当に希釈してメスシリンダ等の容器に流し込み、例えば30分経過した後、メスシリンダ内で沈降して堆積した汚泥がなす堆積層の容積を計測して、その容積量によって汚泥の沈降性を測定するSV30計測法が知られている。ちなみに、このSV30計測法を適用して汚泥沈降性指標を自動計測する計測器は、実用化され利用されている。この装置は、計測槽内に収容された生物汚泥スラリーに含まれる生物汚泥がメスシリンダ内を沈降して堆積してできた汚泥堆積層と、その上澄水からなる水層とがそれぞれなす境界面を例えば界面センサ等によって計測し、生物汚泥の沈降性指標を自動計測するものである。
【0005】
このような汚泥堆積層と水層とがそれぞれなす境界面を自動計測する計測器としては、例えば図1(a)に示すようにメスシリンダ等の容器1の側方面を視野する位置にカメラ14を設け、このカメラ14が撮像した画像に所定の演算を施して処理し、メスシリンダ内に収容された生物汚泥スラリーSによって形成される汚泥堆積層と水層とがそれぞれなす境界面の位置を検出する装置が考えられる。
【0006】
具体的にこの装置は、メスシリンダの側面部を視野する領域を撮像するカメラ14と、このカメラ14が撮像した画像からメスシリンダ内の生物汚泥スラリーSによって形成される汚泥堆積層と水層とがそれぞれなす境界面の位置を検出する画像処理部15とを備えて構成される。この装置は、生物汚泥スラリーSをそのまま若しくは適当に希釈してメスシリンダに収容した後、所定の撹拌手段(図示せず)によって汚泥がメスシリンダ内に均一になるように撹拌する。そして、カメラ14によって撮像された画像を画像処理部15によって処理し、この画像における汚泥堆積層と水層とがそれぞれなす境界面の経時変化を捉えるようにする。
【0007】
より具体的にメスシリンダに収容された生物汚泥スラリーSを均一に撹拌した直後は、図1(b)に示したように生物汚泥スラリーSがメスシリンダ内に均一に分布している。このため、カメラ14が撮像した画像は、メスシリンダ内においてほぼ一様な濃淡分布を示す。
次に一定時間経過後(例えば30分後)再び、上述したカメラ14によってメスシリンダの側方面から該メスシリンダを撮像した得られた画像情報を画像処理部15によって処理して濃淡分布を求めると、図1(c)または図1(d)、或いは図1(e)にそれぞれ示すような濃淡分布曲線が得られる。
【0008】
図1(c)は、メスシリンダの上方水面からある水深までの生物汚泥濃度が低い一方、ある水深より更に深い部位にあっては生物汚泥濃度が高い分布を示している。これは、生物汚泥スラリーSに含まれる生物汚泥がメスシリンダの下方に沈降して堆積する一方、メスシリンダの上方に上澄水の領域(水層)ができたことを表している。つまり、この生物汚泥スラリーSは、正常汚泥であると判定することができる。換言すればこの装置は、図1(c)に示されるように上澄水(水層)と汚泥層との境界面がカメラ14によって明確に捉えられたとき、その汚泥は、正常であると判定するものである。
【0009】
次に図1(d)は、時間が経過しているにもかかわらず、メスシリンダ内をカメラにより撮像して得られた画像の濃淡分布が、生物汚泥スラリーSを均一に撹拌した直後と略同一であり、余り変化していないことを示している。これは、生物汚泥スラリーSに含まれる汚泥の粒子径が小さくなった状態であり、それ故、汚泥がメスシリンダ内を沈降せず浮遊している状態、即ち分散汚泥であることを表している。ちなみに分散汚泥は、何らかの原因で汚泥のフロックの形成ができず、汚泥の沈降が進んでいない状態をいう。
【0010】
また図1(e)は、時間の経過によってメスシリンダ内に存在する大半の汚泥は、メスシリンダの底部に沈降して堆積するものの、一部の汚泥はメスシリンダの上方側にも存在している。これはメスシリンダ内に存在する汚泥の粒子径が小さいものから大きいものまで存在しており、かつ正常汚泥と比較して粒子径の小さいものが特異的に多い状態、即ち解体汚泥であることを表している。
【0011】
このように上述した装置は、所定時間経過後、カメラ14にてメスシリンダの側方面から生物汚泥スラリーSの堆積状態を捉えることで汚泥の性状を判定するものである。
尚、上述した不純物の処理を担う微生物は、嫌気性生物処理装置や好気性生物処理装置のいずれの装置であっても通常、フロックを形成して反応槽中に存在している。この微生物は、水と略等しい比重であるためある程度の大きさをもつ粒子として存在しないと、反応槽から系外へ流出してしまうという特性がある。このような微生物の粒子化(フロック形成)は、微生物の自然な働きによってなされるが、さらに効率よく粒子化を行わせるため造粒装置を設置して小さいペレット状へと人工的に粒子を形成させることも行われている。
【0012】
ちなみに本発明が対象とする分散汚泥は、フロックを形成していない生物汚泥であり、解体汚泥は、フロック形成力を逸失したまさしく解体した汚泥の状態のことである。具体的に分散汚泥は、専ら有機物負荷の著しく高い処理系や、塩類濃度が常時高い処理系、或いは汚泥が発生してから処理系外に引き抜かれる時間、または可溶化分解を受けて汚泥が消滅するまでの時間、所謂汚泥齢(SRT)が著しく短い場合に発生する。
【0013】
一方、解体汚泥は、正常な汚泥フロックが存在する処理系において有機物負荷が突然低くなり汚泥が貧困状態に陥って自己消化が激しくなった場合や、高塩類や毒物、酸やアルカリまたは強い酸化力をもつような物質が処理系に突発的に流入した場合、つまりフロックを形成する物質の分泌が少なくなったり消滅したり、また生物汚泥が浸透圧や化学的な反応によって破壊を受け流出したりする等の原因によって発生する。
【0014】
このため、分散汚泥は、全体の汚泥粒子の粒子径が小さくなる一方、解体汚泥は、元々あったフロックから解体された小さな粒子まで存在している。ちなみに分散汚泥と解体汚泥とは、一般に混同されて扱われることが多い。しかしこれらの汚泥は、上述したように粒子の状態がまったく異なるのみならず、その発生原因からして異なるので区別して扱う必要がある。なぜなら前述のような汚泥性状が検出された場合には、浄化処理プラントに異常が発生したとして、直ちに原因を調査し、回復措置を施さなければならないが、誤った判別(性状検出)をしてしまうと、調査に必要以上の時間を要してしまったり、異なる措置を講じてしまったりするという虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特公平7−90234号公報
【特許文献2】特願2003−112782号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら上述した分散汚泥か解体汚泥かの判別は、生物処理に精通している者か、或いは普段から汚泥の状態を注視しているオペレータであれば可能であるものの、これらの汚泥を混同している者や、現物を見たことがないオペレータ等の場合、汚泥の性状を判別することが極めて困難である。
一方、汚泥の状態を検出する方法を整理すれば前述したように、
(a)顕微鏡による観測法
(b)画像処理を利用した映像法
(c)光散乱式センサを利用した汚泥性状検出法
(d)メスシリンダを用いたSV30測定法
がある。しかしながら(a)の方法では、顕微鏡で観測可能な視野範囲が狭いほか、特に粒子径分布が広範囲に亘る解体汚泥の場合、顕微鏡で汚泥の状態を観測すべく採取した汚泥のプレパラートを作成するとき、汚泥粒子の粒子径が小さく、汚泥が流出しやすいという欠点がある。このため解体汚泥の場合は、均一の試料が作り難い。このため観測者は、正常汚泥と解体汚泥との判別を誤る懸念がある。一方、上澄水を採取して観測した場合、上述したように分散汚泥と解体汚泥との違いは微生物に熟練したオペレータ等でないと判別しにくいという問題もある。このため分散汚泥か解体汚泥かを判断するには、堆積している汚泥と上澄水中に存在している汚泥の両方を顕微鏡等で観察しなければならず、極めて面倒であるという問題もあった。
【0017】
次に(b)の方法は、(a)の方法と同様な問題を抱えている。つまり自動計測を行う場合であっても、サンプリングの方法を工夫しなければ均一の観察サンプルを得られず、また測定視野や測定深度を適切に調整しなければ分散汚泥か解体汚泥かの判別ができないという問題がある。
さらにメスシリンダ様の容器の側方から撮像する場合には、上下左右の歪みはレンズという構造上避けられない。また撮像法は、光を容器に照射したときに生ずる反射光の影響や外光の影響、写り込み、濃淡の発生等に対する対策を施す必要が多々ある。ちなみに均一サンプルを得るため容器内面は、円筒形が好ましい。一方、撮像のためには容器内面が平滑かつ透明であることが好ましい。そこで、仮に撮像のため容器に平面を設けるものとすれば、容器は、かなりの大きさにしなければならず実用的ではない。したがって(b)の方法を実施するには、困難な課題が多い。
【0018】
また(c)の方法でも、特許文献2に示す計測方法等では、その計測原理から正常汚泥と解体汚泥との判別が困難である。
一方、(d)の方法は、あくまで汚泥の沈降性測定という概念に基づく計測法であってSV30値の変化や異常値により生物汚泥に何らかの異常が発生していることが推測できるものの、汚泥の分散や解体という現象を検出することができないという問題がある。この種の問題は、SV30法を用いた自動計測器の場合であっても同様に起こりうる。更にSV30法を用いた自動計測器の場合は、汚泥堆積層の形成が悪く、界面がわかりにくくなり、それ故、計測エラーを引き起こすという懸念があった。このため例えば汚泥の状態を遠隔監視しているような場合、計測器の故障なのか、センサの汚れによるエラーなのか、汚泥の状態が悪いのかといった判別ができないという問題があった。
【0019】
その他、粒子分布計を用いて生物汚泥スラリーに含まれる汚泥粒子径の分布を計測し、汚泥の状態を判定することも考えられる。しかしながら、この方法を用いたとしても他の自動計測法と同様に均一な汚泥のサンプリングや、計測サンプルに対する適確な濃度調整など工夫が必要であり、自動計測が難しいという問題を抱えている。
一方、前述したように分散汚泥や解体汚泥は、プラントが異常状態にあるときに発生する。したがって汚泥の異常状態を早期に検出するには、連続的な監視が必要である。特に解体汚泥は、毒物混入などの原因によって重大な問題を引き起こす懸念があり、速やかに汚泥の異常状態を検出する必要がある。このため汚泥の状態を連続的に監視できる汚泥性状診断装置が望まれているが、上述のような既存の検出方法では、いずれも実現が困難である。
【0020】
本発明は、このような従来の事情を考慮してなされたもので、その目的は、生物汚泥スラリーに含まれる生物汚泥の性状を連続的に自動計測可能な汚泥性状診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
ここで汚泥の性状を整理すれば分散汚泥は、前述したように全体の粒子径が小さいという特徴がある。したがって生物汚泥スラリーが分散汚泥の状態にあるかどうかは、粒子径が小さいため汚泥堆積層を形成せず、堆積層と水層との境界面が現れないことをもって判別することができる。
他方、解体汚泥には、生物汚泥スラリーに含まれるフロック形成力を有する大きな粒子径の汚泥群が存在する。このため解体汚泥を含む生物汚泥スラリーを容器内で均一に撹拌した後、静置すると時間の経過と共に容器の底部に汚泥が沈降して堆積し、汚泥堆積層を形成する。一方、フロックが解体して発生した小さな粒子は沈降することができず、このため上澄水となるべき水層には濁りが発生する。したがってこのような汚泥堆積層と濁った水層とが形成された場合、解体汚泥と判別することができる。
【0022】
このようなことから生物汚泥スラリーを適当な容器に入れて均一に撹拌した後、所定時間経過後における汚泥層の状態を観測することで正常汚泥、分散汚泥或いは解体汚泥を判別することができる。具体的には、所定の容器に入れた生物汚泥スラリーを均一に撹拌した後、所定時間放置する。そして容器中の生物汚泥スラリーが堆積層と上澄水とに分離すれば、正常汚泥であると判別できる。
【0023】
ちなみにこの計測方法は、一定時間経過後の汚泥の沈降状態を観測するという概念をもつためSV30計測法のように考えることもできる。しかし、SV30計測法は、あくまで一定時間経過後の汚泥堆積層と水層との境界面を検知し、生物汚泥がなす堆積層の変化率を計測するものである。
本発明の汚泥性状診断装置は、上述した知見に基づいてなされたものであって、生物汚泥スラリーを収容する容器と、この容器内に収容された前記生物汚泥スラリーの水面直下に位置付けられて該スラリーの水面直下における生物汚泥を撮像するカメラと、このカメラにより撮像された画像を解析して前記生物汚泥の粒子径および該生物汚泥の粒子径毎に粒子数を計数する画像処理部を備え、
前記容器に収容された前記生物汚泥スラリーを均一に撹拌して所定の時間経過後、前記画像処理部が計数した前記生物汚泥スラリーに含まれる前記生物汚泥の粒子径毎の粒子数の分布が
(a)所定の粒子径以下の粒子のみまたは粒子がないとき正常汚泥と判定し、
(b)撹拌直後における前記粒子数の分布と略等しいとき分散汚泥と判定し、
(c)前記正常汚泥または前記分散汚泥でないとき解体汚泥であると判定する粒子径分布判定部を備えて構成されることを特徴としている。
【0024】
好ましくは、上記カメラは、前記容器に収容された上記生物汚泥スラリーを均一に撹拌した後、該生物汚泥スラリーに含まれる生物汚泥が前記容器内を沈降して堆積する際、該生物汚泥スラリーの上澄水となりうる該容器内の所定の部位を撮像するように設けることが望ましい。
上述の汚泥性状診断装置は、例えば円筒状もしくは円筒の下部が円錐状の容器に生物汚泥スラリーを収容して均一に撹拌した後、センサにより該容器中を沈降して堆積する生物汚泥の経時変化を検出する。そして粒子径分布判定部は、検出した粒子径分布の経時変化から生物汚泥スラリーに含まれる生物汚泥の性状を判定する。
【0025】
尚、生物汚泥スラリーに含まれる前記生物汚泥の粒子径毎の粒子数の分布は、該生物汚泥スラリーの濃度に密接に関係するので、例えば前記容器に収容された生物汚泥スラリーを均一に撹拌して所定の時間経過後、該生物汚泥スラリーの濃度が、
(a)所定の濃度値以下になったとき正常汚泥と判定し、
(b)撹拌直後と略等しい濃度値のとき分散汚泥と判定し、
(c)前記正常汚泥以上、かつ前記分散汚泥以下の濃度値範囲内にあるとき解体汚泥であると判定することも可能である。
【0026】
この場合には、前記容器に収容された生物汚泥スラリーを均一に撹拌して所定時間経過後、生物汚泥が容器内を沈降して堆積して上澄水となりうる所定の部位に位置付けられたセンサにより検出された生物汚泥スラリーの濃度が、生物汚泥の沈降により所定濃度値以下になったとき正常汚泥と判定する。これは、正常汚泥における汚泥フロックの粒径がある程度の大きさを持ち、それ故、所定の時間経過した後に生物汚泥が容器の底に沈降して堆積するので容器の上部に上澄水の水層ができることによる。
【0027】
また経時変化によりセンサが検出した汚泥物質の濃度が変化しないとき、分散汚泥と判定する。つまり分散汚泥は、汚泥フロックが形成されていない汚泥、即ち粒子径の小さな汚泥しか存在していない状態であって、それ故、時間経過後も汚泥の沈降が極めて鈍い状態にあるためである。
或いは、前記容器に収容された生物汚泥スラリーを均一に撹拌して所定の時間経過後、センサが検出した生物汚泥の濃度が上述した正常汚泥より高い濃度値、かつ分散汚泥よりも低い濃度値の範囲にあるとき解体汚泥と判定する。即ち、解体汚泥は、元々あったフロックのほかに解体された粒子径の小さな汚泥まで存在するため、汚泥の一部は容器の底に沈降して堆積するものの、小さな粒子径の汚泥は沈降せず、正常汚泥の場合に上澄水となるべき部位にも粒子径の小さな汚泥が浮遊した状態にある。それ故、所定時間経過後にセンサが検出する汚泥物質の濃度は、上述した正常汚泥より高い濃度値、かつ分散汚泥よりも低い濃度値の範囲にあることになる。
【0028】
この場合、好ましくは前記センサとしては、前記容器内に収容された前記生物汚泥スラリーに光を照射したとき、
(a)上記光が上記生物汚泥スラリーに含まれる生物汚泥粒子への衝突によって発生する散乱光を検出してその受光レベルに応じた検出信号を出力する散乱光センサ、
(b)上記光が上記生物汚泥スラリーに含まれる生物汚泥粒子間を透過した透過光を検出してその受光レベルに応じた検出信号を出力する透過光センサ、
(c)上記光が上記生物汚泥スラリーに含まれる生物汚泥粒子への衝突によって発生する反射光を検出してその受光レベルに応じた検出信号を出力する反射光センサ
の少なくとも一つを備える光学センサを用いることができる。
【0029】
つまり正常汚泥の場合は、上述したように汚泥フロックの粒径がある程度の大きさを持ち、それ故、所定の時間経過後、生物汚泥が容器の底に沈降して堆積する一方、容器の上部に上澄水の水層ができる。このため、例えば散乱光センサを用いて計測したとき、時間の経過に従って該散乱光センサから出力される信号の強度は徐々に弱くなる。
次に分散汚泥の場合、汚泥フロックが形成されず粒子径の小さな汚泥しか存在していない状態にあるので、汚泥の沈降が極めて鈍く、それ故、散乱光センサから出力される信号の強度は、時間的にほとんど変化しない。
【0030】
また解体汚泥の場合、上述したように生物汚泥スラリーには元々あったフロックから解体された粒子径の小さな汚泥まで存在している。このため、汚泥の一部は容器の底に沈降するものの、小さな粒子径の汚泥は沈降せず上澄水となるべき部位にも浮遊している。それ故、所定時間を経過した後、散乱光センサから出力される信号強度は、上述した正常汚泥より高い信号強度であり、かつ分散汚泥よりも低い信号強度の範囲になる。
【0031】
また、この方法で特に上述した散乱光センサを用いた場合、特許文献2に記載された方法を利用すれば、図8に示す検出信号の「信号レベル」から生物汚泥スラリー濃度情報Sを、「振幅」から計測スラリーの粒径情報Nを、それぞれ得ることができる。この散乱光センサを用いて図9に示すアルゴリズム(汚泥性状判定手段)に従いながら汚泥性状を判定すれば、生物汚泥スラリーの性状(正常汚泥または分散汚泥、或いは解体汚泥)をより正確に判別することができる。
【0032】
図9のフローチャートに示す汚泥性状判定手段は、まず容器1に収容された生物汚泥スラリーを所定の手段により均一になるように撹拌したとき、または撹拌直後、例えば散乱光センサから出力される検出信号を用いて該生物汚泥スラリーの初期濃度情報Sおよび初期粒子径情報Nを検出する[ステップS1]。次いで、これらの情報を受けて汚泥の性状を判定する判定部(図示せず)が、初期濃度情報Sが所定の濃度レベルC未満かどうかを判定する[ステップS2]。このとき判定部は、[C>S]であると判定したとき濃度が計測範囲外にあると判定する[ステップS3]。すなわち希釈不良であると判定部が判定する。
【0033】
一方、ステップS2で判定部は、[C≧S]であると判定したとき、更に所定時間経過後、散乱光センサから出力される検出信号から容器内における生物汚泥スラリーの濃度情報Sおよび粒子径情報Nを検出する[ステップS4]。次いで判定部は、初期濃度情報Sから所定時間経過後の濃度情報Sとの差[S−S]を求め、この値が所定の濃度レベルCより大きいかどうかを調べる[ステップS5]。
【0034】
ステップS5で判定部は、所定の濃度レベルCより大きいと判定したとき、更に初期濃度情報Sから所定時間経過後の濃度情報Sとの差[S−S]が所定の濃度レベルC(ただし、C>C)以上あるかどうかを調べる[ステップS6]。ステップS6で所定濃度レベルC3以上あると判定したとき判定部は、生物汚泥スラリーの性状が正常であると判定する[ステップS7]。
【0035】
一方、ステップS5で判定部は、初期濃度情報Sから所定時間経過後の濃度情報Sとの差[S−S]が所定の濃度レベルC以下であると判定したとき、更にステップS1で検出した初期粒子径情報Nと、ステップS4で検出した粒子径情報Nとの差[N−N]を求め、求めた値が0以上であるかどうかを調べる[ステップS8]。次いで判定部は、ステップS8で[N−N]が0以上であると判定したとき、更に初期粒子径情報Nが所定の粒子径C以下であるかを判定し[ステップS9]、[N≦C]と判定したとき分散汚泥であると判定する[ステップS10]。
【0036】
他方、判定部はステップS8で、ステップS4で検出した粒子径情報Nとの差[N−N]が0未満であるとき散乱光センサに汚れ、藻、汚泥の固まり、その他固形物等の異物が付着したと判定する[ステップS11]。
また、ステップS9で判定部は、初期粒子径情報Nが所定の粒子径C4未満であると判定したとき、生物汚泥スラリーに糸状性バルキングまたは粘質性バルキングの発生、その他の異常が発生したものと判定する[ステップS12]。
【0037】
一方、判定部は、ステップS6で、期濃度情報Sから所定時間経過後の濃度情報Sとの差[S−S]が所定の濃度レベルC以下であると判定したとき、更にステップS1で検出した初期粒子径情報Nと、ステップS4で検出した粒子径情報Nとの差[N−N]を求め、求めた値が0以上であるかどうかを調べる[ステップS13]。判定部は、このステップS13で[N−N]が0以上であると判定したとき、生物汚泥スラリーが解体汚泥であると判定する[ステップS14]一方、[N−N]が0未満であると判定したとき散乱光センサに気泡等の異物が付着して計測不能状態にあると判定する[ステップS15]。
【0038】
さて本発明は、上述したセンサに代えて前述したようにスラリーの水面直下における生物汚泥を撮像するカメラを用い、このカメラが捉えた画像から画像処理部が求める、前記生物汚泥の粒子径および該生物汚泥の粒子径毎に計数される粒子数を判定して、汚泥性状を診断することを特徴としている。
即ち、この発明は、上述した如く生物汚泥スラリーの濃度が汚泥の性状に関係すること、また汚泥フロックを形成する粒子の粒子径の分布が生物汚泥スラリーの濃度に密接に関係する点に着目してなされたものである。具体的には、正常汚泥の場合、容器に収容された生物汚泥スラリーを均一に撹拌した直後は、粒子径が小さな生物汚泥から粒子径が大きな生物汚泥まで広範囲に分布するものの、やや粒子径の大きな生物汚泥が多く存在している。そして所定時間経過後、大きな粒子径の生物汚泥は、容器の底に沈降して堆積するのでカメラ近傍には粒子径が小さい生物汚泥のみが僅かに存在する状態になる。
【0039】
また分散汚泥の場合、容器内において上澄水となりうる所定の部位には、汚泥フロックが形成されず粒子径の小さな生物汚泥しか存在していない状態にある。このため生物汚泥スラリーを均一に撹拌した直後は、粒子径の小さな粒子がカメラ近傍に多数存在する一方、粒子径の大きな生物汚泥は、ほとんど存在しない。つまり分散汚泥は、生物汚泥の沈降が極めて鈍い状態にあり、それ故、カメラが検出した汚泥フロックの粒子径分布は、時間が経過したとしてもほとんど変化しない。
【0040】
一方、解体汚泥の場合、上述したように生物汚泥スラリー中には元々あったフロックのほか、解体された粒子径の小さな生物汚泥まで存在するため、生物汚泥スラリーを均一に撹拌した直後、カメラが撮像した画像に含まれる粒子径は、広範囲に亘って分布している。このため解体汚泥は、時間の経過に伴って粒子径の大きな汚泥フロックが容器の底に沈降して堆積するものの、粒子径の小さな生物汚泥は、生物汚泥スラリーの上方(上澄水になるべき部位)に浮遊して存在している。したがって生物汚泥スラリーにおける生物汚泥の粒径分布は、粒子径の小さな汚泥フロックが正常汚泥よりもやや多く観測される。
【0041】
尚、前記センサとしては、前記容器に収容された生物汚泥スラリーに超音波を送出する超音波送信部と、この超音波送信部が送出した超音波が該生物汚泥スラリーに含まれる生物汚泥によって反射される反射音を検出する超音波受信部とを備える超音波センサを用いることもできる。
超音波センサを用いた場合、生物汚泥スラリーが収容される容器の水面付近に浸された超音波センサから生物汚泥スラリーが収容される容器の水底に向かって超音波を放射して容器の水深方向に超音波を走査したとき、生物汚泥スラリーに含まれる生物汚泥の粒子によって反射されて超音波センサに戻ってきた超音波(反射波)の強度分布を調べるのに有用である。
【0042】
また生物汚泥スラリーが収容された容器の底部に浸される超音波センサから生物汚泥スラリーが収容された容器の上方側(水面側)に向かって超音波を放射して容器の水深方向に超音波を走査したとき、生物汚泥スラリーに含まれる生物汚泥の粒子によって反射されて超音波センサに戻ってきた超音波(反射波)の強度分布を調べることも可能である。
このように構成された上述の汚泥性状診断装置において正常汚泥の場合は、前述したように均一に撹拌して所定時間経過した後、大部分の生物汚泥が容器の底に沈降して堆積した状態にある。このため、超音波を容器内に収容された汚泥スラリーの水深方向に走査したとき、水深の浅い部位については、反射波の強度が弱い一方、ある水深より深い部位については、堆積した汚泥によって反射波の強度が強くなる。
【0043】
また分散汚泥の場合、上述したように汚泥フロックが形成されず粒子径の小さな汚泥しか存在しない状態であるので水深によらず一様に反射波の強度は弱い。
一方、解体汚泥は、上述したように生物汚泥スラリーには元々あったフロックから解体された粒子径の小さな生物汚泥まで存在している。このため、生物汚泥の一部は容器の底に沈降して堆積するものの、粒子径の小さな生物汚泥は沈降せず上澄水となるべき部位にも浮遊している。それ故、容器の底に堆積した生物汚泥によって反射される強い反射波を検出することができると共に、正常汚泥の場合に上澄水となる部位に存在する粒子径の小さな生物汚泥からの反射される反射波をも検出することができる。
【0044】
より好ましくは、上述した汚泥性状診断装置は、更に前記容器に収容された上記生物汚泥スラリーに希釈水を流入させて適当な懸濁物濃度に希釈する希釈手段と、上記容器に収容された前記生物汚泥スラリーおよび希釈水を均一に撹拌する撹拌手段とを備えることが望ましい。
上述の汚泥性状診断装置は、計測対象の生物汚泥スラリーの濃度が、MLSSとして6000mg/Lを超えるような高い濃度である場合、計測に適した適当な濃度、例えば1000〜6000mg/L程度になるよう容器中に希釈水を流入させて調整する。また、測定に先立って容器に収容した生物汚泥スラリーおよび希釈水とを撹拌手段により均一になるよう撹拌する。
【発明の効果】
【0045】
本発明の請求項1〜3に記載の汚泥性状診断装置によれば、分散汚泥や解体汚泥の発生を確実に、しかも自動的に検出することができ、生物汚泥を用いた水質浄化プラントの監視・管理が効率的にできる。さらに、この汚泥の性状情報から、生物汚泥の異常をいち早く検出することができ、例えば水質浄化装置の運転条件を迅速に調整/制御することも可能になるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】従来の汚泥性状診断装置の一例を示す概略構成図および異なる汚泥性状毎の画像データの例を示すグラフ。
【図2】光センサを用いて生物汚泥スラリーの濃度を検出する汚泥性状診断装置の概略構成を示す図。
【図3】図2に示す汚泥性状診断装置に用いられる散乱光センサが出力した汚泥性状に違いによる信号強度の経時変化の一例を示す図。
【図4】本発明の一実施形態に係る汚泥性状診断装置を示す概略構成図および異なる汚泥性状毎の粒子径分布の経時変化を示すグラフ。
【図5】超音波センサ用いて生物汚泥スラリーの濃度を検出する汚泥性状診断装置を示す概略構成図および異なる汚泥性状毎の反射波強度の経時変化を示すグラフ。
【図6】超音波センサ用いて生物汚泥スラリーの濃度を検出する別の汚泥性状診断装置を示す概略構成図および異なる汚泥性状毎の反射波強度の経時変化を示すグラフ。
【図7】本発明の別の実施形態に係る汚泥性状診断装置を示す概略構成図および異なる汚泥性状毎の生物汚泥の沈降状態を示す概略図。
【図8】散乱光センサが出力する検出信号の一例を示すグラフ。
【図9】散乱光センサが出力する検出信号の信号レベルおよび振幅から生物汚泥の性状を判定するアルゴリズムを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の汚泥性状診断装置について添付図面を参照しながら説明する。図2は本発明の実施形態に係る汚泥性状診断装置の概略構成を示す図である。尚、ここでは本発明の理解を容易にするべく、先ず生物汚泥の濃度に着目して汚泥の性状を判定する実施形態について例示する。図2において1は、生物汚泥を含む例えば図示しない曝気槽内の生物汚泥スラリーSが収容される容器である。
【0048】
この容器1は、収容した生物汚泥スラリーSを均一に撹拌することができると共に、生物汚泥スラリーSに含まれる汚泥が時間の経過によって均一に沈降して該容器1の底部に堆積できるような円柱部をもつことが望ましい。また容器1は、該容器1の下部(底部)に行くに従ってその内径が小さくなる円錐形状(擂り鉢状)とし、その頂部(下端部)に汚泥排出口(ドレン)1cおよびドレン弁1dを設けて計測後の生物汚泥を排出しやすくすることが望ましい。ちなみにドレン弁1dの開閉は、後述する制御ユニット13の制御を受けてなされる。
【0049】
尚、容器1は、円錐部1aの内部容積がその上部に位置付けられた円柱部1bの内部容積を超えず、かつ円柱部1bにおける垂直部の長さLが少なくとも15cm以上とれるようにするとよい。また、容器1の大きさについては、特に制限がないものの円柱部1bにおける垂直部の長さLを15cm以上とし、また収容した生物汚泥スラリーSを均一に撹拌することができるように内径Dが5cm以上あることが望ましい。
【0050】
また本発明の汚泥性状診断装置は、容器1内部に生物汚泥スラリーSを収容したとき生物汚泥スラリーS内に浸り、かつ上澄水となる所定の部位に散乱光センサ2が設けられている。この散乱光センサ2は、容器1の垂直部の長さLより例えばL/2以上高い部位に位置付けられる。この散乱光センサ2が取り付けられる位置は、診断対象となる生物汚泥スラリーSに含まれる生物汚泥が正常汚泥であるとき、容器1内に収容した生物汚泥スラリーSを撹拌して所定時間経過後、上澄水となる部位(水位)に相当する。
【0051】
ちなみに散乱光センサ2は、特に図示しないが前述した特許文献2等に記載されるように容器1内に収容された生物汚泥スラリーSに光を照射する投光部と、この投光部が照射した光が生物汚泥スラリーS中に含まれる生物汚泥の粒子によって反射・散乱された光を受光する部位に設けられた受光部とを備えて構成される。この散乱光センサ2は、受光部が受光した光のレベルに応じた検出信号を出力するようになっている。
【0052】
そして散乱光センサ2が出力した検出信号は、その検出信号の時間的な信号変化(経時変化)を捉える経時変化検出手段11と、この経時変化検出手段が捉えた前記生物汚泥スラリー濃度の経時変化から生物汚泥スラリーSに含まれる生物汚泥の性状を判定する汚泥性状判定手段12と、を有する汚泥性状判定部10へ与えられる。
また汚泥性状診断装置は、図示しない曝気槽等から生物汚泥スラリーSを汲み上げるポンプ3、このポンプ3によって汲み上げられた生物汚泥スラリーSを搬送する汚泥配管4、容器1搬送される生物汚泥スラリーSを所定の濃度に希釈する希釈水を搬送する希釈水配管5、汚泥配管4および希釈水配管5がそれぞれ接続されて汚泥配管4により搬送される生物汚泥スラリーSと、希釈水配管5により搬送される希釈水とを混合して容器1に送り込む混合配管6を備える。これらの配管には、それぞれ電磁弁4a,5a,6aが備えられて、後述する制御ユニット13の指令を受けて各配管内を流れる流体(生物汚泥スラリーS、希釈水)の流量を調節することができるようになっている。
【0053】
一方、容器1には、前記混合配管6によって送り込まれる生物汚泥スラリーSおよび希釈水の流入レベルを検出する水位計7が設けられている。この水位計7は、容器1内に送り込まれる生物汚泥スラリーSおよび希釈水によって、前述した散乱光センサ2が確実に浸されることを検出する役割を担う。
また容器1には、該容器1内に送り込まれた生物汚泥スラリーSを均一に撹拌する撹拌翼8と、この撹拌翼8を駆動するモータ9が取り付けられている。この撹拌翼8は、円筒形状をなす容器1の中心軸方向に延伸されて設けられる回転軸8aに取り付けられて、この回転軸8aの容器1の上方側端部に接続されたモータ9により駆動され、容器1内に送り込まれた生物汚泥スラリーSを均一に撹拌するようになっている。ちなみにモータ9は、後述する制御ユニット13により駆動制御される。
【0054】
概略的には上述したように構成された汚泥性状診断装置が特徴とするところは、汚泥性状判定部10に、散乱光センサ2が出力する検出信号の時間的な信号変化(経時変化)を捉える経時変化検出手段11を備える点、およびこの経時変化検出手段が捉えた生物汚泥スラリー濃度の経時変化から該生物汚泥スラリーSに含まれる生物汚泥の性状を判定する汚泥性状判定手段12を備える点にある。
【0055】
このような構成の汚泥性状診断装置において、汚泥性状を判定する判定手法について説明する。
まず制御ユニット13は、汚泥配管4に設けられた電磁弁4aおよび混合配管6に設けられた電磁弁6aをそれぞれ開き、容器1内に生物汚泥スラリーSを送り込む。そして水位計7が容器1内に送り込まれる生物汚泥スラリーSの水位が、容器1の上澄水となる所定の部位に位置付けられた散乱光センサ2が浸される水位になったことを検出したことを受けて制御ユニット13は、汚泥配管4に設けられた電磁弁4aおよび混合配管6に設けられた電磁弁6aをそれぞれ閉じる。
【0056】
ちなみにこの実施形態においては、汚泥の性状診断を行うに先立ち、診断をし易くするために生物汚泥スラリーSの濃度をMLSSとして1000〜6000mg/L程度に調整することが望ましい。つまり生物汚泥スラリーSの濃度が高すぎる場合(おおむね6000mg/Lを超える濃度の場合)は、正常な汚泥であっても容積1の底に汚泥が堆積しない。このため、生物汚泥スラリーSに含まれる生物汚泥の状態が正常汚泥であるのか、分散汚泥であるのか、或いは解体汚泥であるかの判定が困難になる。例え生物汚泥が沈降できる濃度であったとしても、生物汚泥スラリーSに含まれる生物汚泥の状態が解体汚泥の場合、フロック形成力が残っている汚泥によってケーキ層が形成され、これが濾過槽となって沈降して堆積する。この場合、水層は上澄水となり、それ故、汚泥の性状判定が困難である。したがって生物汚泥スラリーSは、上部の汚泥が濾過槽を形成することなく、自由沈降できるような濃度にする必要がある。
【0057】
逆に生物汚泥スラリーSの濃度が低すぎる場合(おおむね1000mg/L未満の濃度の場合)は、存在する粒子が著しく少ないので正常汚泥、分散汚泥または分解汚泥との差異が検出しにくくなる。
このようなことから生物汚泥スラリーSの濃度は、1000〜6000mg/L程度に調整することが望ましい。したがって、生物汚泥スラリーSの濃度が1000〜6000mg/L程度になるように、希釈水配管5に設けられた電磁弁5aを開き、混合配管6内の生物汚泥スラリーSの濃度を調整して容器1に送り込む。
【0058】
このようにして汚泥の性状判定にふさわしい濃度に調整された生物汚泥スラリーSが容器1に収容されると制御ユニット13は、モータ9を駆動して容器1内の生物汚泥スラリーSを容器1内の濃度が均一になるよう撹拌翼8により撹拌する。このとき経時変化検出手段11は、散乱光センサ2が検出した検出信号(濃度値)を初期濃度値として保持する。そして制御ユニット13は、モータ9の駆動を停止して撹拌翼8の回転を停止させる、若しくは撹拌速度を著しく落としてその状態を維持する。一方、経時変化検出手段11は、撹拌翼8の停止後、若しくは撹拌速度を著しく落とした状態において、容器1内の生物汚泥スラリー濃度の経時変化を計測する。
【0059】
また、生物汚泥スラリーSの連続監視については、計測周期が短いほど望ましい。しかしながら生物処理の時間的要素を加味すれば、長期的な変動を捉えるには数時間乃至数日を周期として計測を行えばよい。一方、毒物や強い酸化物が混入されたことを検出する場合、計測周期は、数時間に1回程度に定めることが望ましい。このようなことから、実運用上では、30分乃至3時間程度の計測周期とすればよい。
【0060】
このようにして経時変化検出手段11が捉えた生物汚泥スラリー濃度の経時変化から汚泥性状判定手段12は、生物汚泥スラリーSに含まれる生物汚泥の性状を判定する。つまり汚泥性状判定手段12は、容器1に収容された生物汚泥スラリーSを均一に撹拌して所定の時間経過後、上澄水となるべき領域における生物汚泥スラリーSの濃度が所定の濃度値以下になったと正常汚泥と判定し、撹拌直後と略等しい濃度値のとき分散汚泥と判定し、或いは前記正常汚泥以上、かつ前記分散汚泥以下の濃度値範囲内にあるとき解体汚泥であると判定する。
【0061】
つまり正常汚泥の場合は、前述したように汚泥フロックの粒径がある程度の大きさを持ち、それ故、所定の時間経過後、生物汚泥が容器1の底に沈降して堆積する一方、容器1の上部に上澄水の水層ができる。このため、時間の経過に従って散乱光センサ2から出力される検出信号の強度は、図3(a)に示すように徐々に弱くなる。
一方、分散汚泥の場合、汚泥フロックが形成されず粒子径の小さな汚泥しか存在していない状態にあるので、汚泥の沈降が極めて鈍い状態にあり、それ故、散乱光センサ2から出力される検出信号の強度は、図3(b)に示すように時間的にほとんど変化しない。
【0062】
或いは解体汚泥の場合、上述したように生物汚泥スラリーSには、元々あったフロックから解体された粒子径の小さな汚泥まで存在している。このため、汚泥一部は容器1の底に沈降して堆積するものの、小さな粒子径の汚泥は沈降せず容器1内において上澄水となるべき部位にも浮遊している。それ故、散乱光センサ2から出力される検出信号の強度は、図3(c)に示すように上述した正常汚泥より高い信号強度であり、かつ分散汚泥よりも低い信号強度の範囲になる。
【0063】
尚、生物汚泥の性状判定は、時間の経過に伴う検出信号の変化を図3(a)〜(c)に示したように連続的に記録し、これらの検出信号の変化パターンから生物汚泥の性状を判断してもよいし、1点乃至数点の値を記録し、これらの数値と初期値とを比べることで行ってもよい[図3(d)]。
かくして上述したように構成された汚泥性状診断装置によれば、容器1内に送り込まれた生物汚泥スラリーSを均一に撹拌した後、上澄水となるべき所定の部位に設けられた散乱光センサ2が検出した汚泥濃度の経時変化を経時変化検出手段11が捉えると共に、汚泥性状判定手段12が検出された汚泥濃度の経時変化が汚泥の性状によって異なることに基づいて生物汚泥の状態を判定している。このため、生物汚泥の性状を確実に、しかも自動的に検出することができる。
【0064】
ちなみに上述した構成の汚泥性状診断装置は、散乱光センサが出力する検出信号を用いた汚泥性状診断装置を例示したが、センサとして透過光センサまたは反射光センサであっても、或いはこれらのセンサを組み合わせても上述した実施形態を準用すれば生物汚泥の性状を判定することが可能である。
尚、経時変化検出手段11が検出した汚泥の経時変化の変化量から汚泥性状判定手段12が生物汚泥の性状を判定してもよい。具体的には図3(a),(b),(c)に示すように信号強度の変化量(グラフにおける傾き)の違いを検出することで、より早い時間で生物汚泥の性状を判定することも可能である。
【0065】
また測定対象となる生物汚泥スラリーの採取場所は、反応槽内に毒物や強い酸化物が混入されたことを検出して警報を発するには、反応槽の上流側、特に原水と接触する付近で採取することが望ましい。他方、沈殿池の監視・管理の観点から測定対象となる生物汚泥スラリーの採取場所は、沈殿池に近い反応槽の下流の出口付近で採取し、上述した測定を行うことが望ましい。
【0066】
ここで本発明の一実施形態に係る汚泥性状診断装置について図4を参照しながら説明する。この実施形態に係る装置が前述した汚泥性状診断装置と異なるところは、散乱光センサ2に代えて、センサが位置付けられた近傍の生物汚泥スラリーSを撮像するカメラ14を用いる点、カメラ14が捉えた生物汚泥の粒子をその粒子径毎に計数して積算する画像処理部15を設けた点にある。
【0067】
つまり上述した特徴ある構成の本発明の一実施形態に係る汚泥性状診断装置は、生物汚泥の性状によって生物汚泥の粒子径分布が異なる点に着目してなされたもので、画像処理部15は、容器1に収容された生物汚泥スラリーSを均一に撹拌して所定の時間経過後、前記画像処理部15が計数した前記生物汚泥スラリーSに含まれる前記生物汚泥の粒子径毎の粒子数の分布が、所定の粒子径以下の粒子のみまたは粒子がないとき正常汚泥と判定する一方、撹拌直後における前記粒子数の分布と略等しいとき分散汚泥と判定し、或いはまた前記正常汚泥または前記分散汚泥でないとき解体汚泥であると判定する。
【0068】
ちなみに図4(a)は、図2に示した汚泥性状診断装置を簡略化して描いたものであって、散乱光センサ2以外は、基本的に図2に示す装置と同様の構成をとっている。
まず正常汚泥の場合は、容器1に収容された生物汚泥スラリーSを均一に撹拌した直後は、図4(b)に示すように容器1内には粒子径の小さな生物汚泥から粒子径の大きな生物汚泥まで広範囲に分布するものの、やや粒子径の大きな生物汚泥が多く存在している。そして所定時間経過後、生物汚泥の粒子径分布は、粒子径が小さい生物汚泥のみが僅かに存在した状態になるという性質がある。このような粒子径の変化を画像処理部15が捉えることで生物汚泥スラリーSに含まれる汚泥が正常汚泥であると判定できる。
【0069】
次に分散汚泥の場合、汚泥フロックが形成されず粒子径の小さな生物汚泥しか存在していない。このため生物汚泥スラリーSを均一に撹拌した直後は、図4(c)に示すように粒子径の小さな粒子が多数存在する一方、粒子径の大きな汚泥は、ほとんど検出することができない。つまり分散汚泥は、汚泥の沈降が極めて鈍い状態にあり、それ故、汚泥フロックの粒子径分布は、時間が経過したとしてもほとんど変化しない。このように所定時間経過したとしても、粒子径の分布に変化が見られない場合、生物汚泥スラリーSに含まれる汚泥は、分散汚泥であると判定できる。
【0070】
一方、解体汚泥の場合は、上述したように生物汚泥スラリーS中に元々あったフロックのほか、解体された粒子径の小さな生物汚泥まで存在するため、生物汚泥スラリーSを均一に撹拌した直後は図4(d)に示すように生物汚泥の粒子径分布が広範囲に亘る。このため解体汚泥は、時間を経過に伴って粒子径の大きな汚泥フロックが容器の底に沈降して堆積するものの、粒子径の小さな汚泥は、生物汚泥スラリーSの上方(上澄水になるべき部位)に浮遊して存在している。つまり生物汚泥スラリーSにおける生物汚泥の粒径分布は、画像処理部15によって粒子径の小さな汚泥フロックが正常汚泥よりもやや多く検出される。したがってこの場合、生物汚泥は、解体汚泥であると判別できる。
【0071】
尚、ここでは、粒子径と粒子数をそれぞれ数値化して扱う方法を示したが、粒子径と粒子数および粒子密度の積[(π/6)×(粒子径)×粒子数×粒子密度]から導かれる濃度に換算して、前述したセンサを用いて濃度を検出する場合と同様に扱ってもよい。
かくして本発明の一実施形態に係る汚泥性状診断装置は、カメラ14近傍における粒子径分布の経時変化を画像処理部15によって検出しているので、汚泥の性状を確実に判別することができる。
【0072】
次に本発明に関連する別の汚泥性状診断装置について図5を参照しながら説明する。この汚泥性状診断装置が上述した汚泥性状診断装置と異なるところは、上述した各センサに代えて、容器1に収容された生物汚泥スラリーSに超音波を送出する超音波送信部16aと、この超音波送信部16aによって生物汚泥スラリーS中に送出された超音波が該生物汚泥スラリーSに含まれる生物汚泥によって反射される反射音を検出する超音波受信部16bとからなる超音波センサ16を備える点にある。そして、超音波受信部16bが受信した超音波(反射波)の強度は、解析部17によって解析される。詳しくはこの解析部17は、例えば図5(a)に示されるように容器1内に収容された生物汚泥スラリーSの上部に浸される超音波センサ16の超音波送信部16aから生物汚泥スラリーSの水底に向かって超音波を放射して、その水深方向に向かって超音波を走査したとき、この超音波が生物汚泥スラリーSに含まれる生物汚泥の粒子によって反射されて超音波センサ16の超音波受信部16bに到達する超音波強度から生物汚泥の状態を判定するものである。
【0073】
ちなみに図5(a)は、図2に示した汚泥性状診断装置を簡略化して描いたものであって、散乱光センサ2以外は、基本的に図2に示す装置と同様の構成をとっている。
このような構成を採用した汚泥性状診断装置について、汚泥性状を判定する解析部17が行う解析手法について説明する。
正常汚泥の場合、容器1に収容された生物汚泥スラリーSを均一に撹拌した後、所定時間経過すると大部分の汚泥は、容器1内を沈降して該容器1の底に堆積した状態にある。このため超音波を水深方向に走査すると図5(b)に示すように水深の浅い部位については、弱い超音波の反射波が検出される一方、ある水深より深い部位については、堆積した汚泥によって強い超音波の反射波が超音波受信部16bによって検出される。ちなみに生物汚泥が沈降して堆積した汚泥堆積層において、水深が深くなるほど超音波の反射波強度が弱くなるのは、超音波センサ16の超音波送信部16aから送出された超音波が汚泥堆積層によって吸収されて反射波の強度が弱くなるためである。
【0074】
次に分散汚泥の場合、上述したように汚泥フロックが形成されず粒子径の小さな汚泥しか存在しない状態にある。このため超音波センサ16の超音波送信部16aから送出される超音波のほとんどは、粒子径の小さな生物汚泥により反射されることがない。このため超音波受信部16bは、容器1に収納された生物汚泥スラリーSの水深によらず一様に弱い反射波しか検出することができない。
【0075】
一方、解体汚泥は、生物汚泥スラリーSには元々あったフロックのほか解体された粒子径の小さな汚泥まで存在している。このため、生物汚泥一部は容器1の底に沈降して堆積するものの、小さな粒子径の生物汚泥は沈降せず上澄水となるべき部位にも浮遊している状態にある。それ故、超音波センサ16の超音波受信部16bは、この容器1の底部に堆積した生物汚泥によって反射される強い反射波を検出することができる。また超音波受信部16bは、正常汚泥の場合に上澄水となる部位に存在する粒子径の小さな汚泥からの反射される反射波をも検出する。これは解体汚泥の場合、容器1の底部に堆積した生物汚泥の密度がそれほど高くなくないため汚泥堆積層の反射波強度は、略一定の強度を示すことによる。
【0076】
このように構成された汚泥性状診断装置によれば、容器1に収容された生物汚泥スラリーSに送出した超音波を、その水深方向に走査したときの反射波強度を検出し、その反射波強度の水深分布から汚泥の性状を判定している。つまりこの汚泥性状診断装置は、汚泥の性状によって反射波の分布特性が異なることを利用しているので確実に生物汚泥の性状を判定することができる。
【0077】
尚、上述した構成の汚泥性状診断装置は、図6(a)に示すように容器1の底部に上述した超音波センサ16を配置し、生物汚泥スラリーSの上方側(水面側)に向けて超音波を送出し、生物汚泥スラリーSに含まれる生物汚泥によって反射される反射音を検出するように変形した構成としても良い。このような汚泥性状診断装置は、解析部17によって超音波送信部16aから送出される超音波の出力タイミングおよび超音波受信部16bにより受信された超音波の受信強度から生物汚泥スラリーSに含まれる汚泥の性状を判定するよう構成される。
【0078】
このように構成された汚泥性状診断装置においては、生物汚泥スラリーSを収容した容器1の底部から生物汚泥スラリーSの上方側(水面側)に向かって超音波を放射して、その水深方向に超音波を走査したとき、この超音波が生物汚泥スラリーS中に含まれる汚泥の粒子によって反射される超音波の強度を超音波受信部16bが捉え、生物汚泥スラリーSの水深と生物汚泥から反射される反射波強度との関係を超音波解析部17が解析すればよい。
【0079】
上述した汚泥性状診断装置は、生物汚泥が正常の場合、前述したように生物汚泥スラリーSを均一に撹拌して所定時間経過すると大部分の生物汚泥が容器1の底に沈降して堆積する。このため超音波を水深方向に走査すると、図6(b)に示すように水深の浅い部位については、超音波の進行を妨げる汚泥が少ないため超音波送信部16aから送出された超音波(反射波)がほとんど減衰せず超音波受信部16bに到達する。そして水深がある一定以上になると容器1の底部に生物汚泥が沈降して堆積する汚泥堆積層ができるため、反射波の減衰量は増加する。
【0080】
また分散汚泥の場合、上述したように生物汚泥スラリーSには、汚泥フロックが形成されず粒子径の小さな汚泥しか存在しない。このため分散汚泥の場合は、超音波(反射波)の減衰量が少なく、かつ水深によらず一様な減衰量を示す分布特性が得られる。
一方、解体汚泥の場合は、上述したように生物汚泥スラリーS中には元々あったフロックのほか、解体された粒子径の小さな生物汚泥までが存在する。このため、生物汚泥の一部は容器の底に沈降して堆積するものの、小さな粒子径の汚泥は、沈降せず上澄水となるべき部位にも浮遊している。それ故、沈降して堆積した汚泥堆積層における反射波の減衰量が多くなると共に、正常汚泥の場合に上澄水となる部位に存在する粒子径の小さな生物汚泥による反射波の減衰が検出される。
【0081】
従って上述したように構成された汚泥性状診断装置によれば、容器1に収容された生物汚泥スラリーSに送出した超音波を、その水深方向に走査したとき、超音波が生物汚泥スラリーS中に含まれる汚泥粒子によって反射される反射波の強度を検出し、その反射波の水深方向における強度分布から汚泥の性状を判定している。つまり超音波センサを用いた汚泥性状診断装置は、汚泥の性状による反射波の分布特性が異なることを利用しているので、確実に、しかも自動的に生物汚泥の性状を判別することができる。
【0082】
尚、本発明の汚泥性状診断装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
例えば、図7に示すように容器1に収容される生物汚泥スラリーSの水面付近に、該生物汚泥スラリーSを均一に撹拌した後、時間経過と共に形成される生物汚泥層と水層との境界面を検出する界面レベル計18を設けて構成してもよい。このように構成した汚泥性状診断装置は、モータ9を駆動して撹拌翼8を回転させ、生物汚泥スラリーSを容器1内で均一になるように撹拌する。このとき、容器1内の生物汚泥の状態は、図7(b)に示すように生物汚泥が容器1内に均一に分布した状態にある。
【0083】
次いで解析部17は、所定時間が経過した後、生物汚泥スラリーSの水面から生物汚泥層と水層との境界面までの距離(レベル)を界面レベル計18からから受け取る。生物汚泥スラリーSが正常汚泥あるいは解体汚泥である場合、生物汚泥は、図7(c)に示すように容器1内に沈降して堆積する。このため、容器1内には、生物汚泥層と水層との境界面が現われる。それ故、解析部17は、界面レベル計18が出力するレベルから正常汚泥または解体汚泥であるかを判定することができる。
【0084】
ちなみに解体汚泥は、上述したように元々あったフロックのほか解体された粒子径の小さな汚泥までが生物汚泥スラリーSに存在している。このため、生物汚泥一部は容器1の底に沈降して堆積するものの、小さな粒子径の汚泥は沈降せず上澄水となるべき部位にも浮遊している状態にある。このため生物汚泥層と水層との境界面は、正常汚泥に比べてやや低い位置(レベル大)として検出される。
【0085】
一方、分散汚泥は、上述したように汚泥フロックが形成されず粒子径の小さな汚泥しか生物汚泥スラリーSに存在していない。このため分散汚泥の場合、図7(d)に示すように生物汚泥層と水層との境界面が検出できず、それ故、解析部17は、分散汚泥であると判別することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 容器
2 散乱光センサ
3 ポンプ
4 汚泥配管
5 希釈水配管
6 混合配管
7 水位計
8a 回転軸
8 撹拌翼
9 モータ
10 汚泥性状判定部
11 経時変化検出手段
12 汚泥性状判定手段
13 制御ユニット
14 カメラ
15 画像処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物汚泥スラリーを収容する容器と、
この容器内に収容された前記生物汚泥スラリーの水面直下に位置付けられて該スラリーの水面直下における生物汚泥を撮像するカメラと、
このカメラが捉えた前記生物汚泥の粒子径および該生物汚泥の粒子径毎にその粒子数を計数する画像処理部と、
前記容器に収容された前記生物汚泥スラリーを均一に撹拌して所定の時間経過後、前記画像処理部が計数した前記生物汚泥スラリーに含まれる前記生物汚泥の粒子径毎の粒子数の分布が
(a)所定の粒子径以下の粒子のみまたは粒子がないとき正常汚泥と判定し、
(b)撹拌直後における前記粒子数の分布と略等しいとき分散汚泥と判定し、
(c)前記正常汚泥または前記分散汚泥でないとき解体汚泥であると判定する
粒子径分布判定部と、
を備えることを特徴とする汚泥性状診断装置。
【請求項2】
前記カメラは、前記容器に収容された上記生物汚泥スラリーを均一に撹拌した後、該生物汚泥スラリーに含まれる生物汚泥が前記容器内を沈降して堆積する際、該生物汚泥スラリーの上澄水となりうる該容器内の所定の部位を撮像するように設けられるものである請求項1に記載の汚泥性状診断装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の汚泥性状診断装置であって、
更に前記容器に収容された上記生物汚泥スラリーに希釈水を流入させて適当な懸濁物濃度に希釈する希釈手段と、
上記容器に収容された前記生物汚泥スラリーおよび希釈水を均一に撹拌する撹拌手段と
を備えることを特徴とする汚泥性状診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−190912(P2010−190912A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121655(P2010−121655)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【分割の表示】特願2005−23091(P2005−23091)の分割
【原出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】