説明

汽力発電設備における通風系統

【課題】通風系統における設備配置を変えることで、通風の熱効率の向上を図ると共に、排ガス中の硫黄・窒素酸化物(SOx、NOx)、灰粒子等の除去効率を高める。
【解決手段】外気の空気aを取り入れ、火炉1に燃焼用空気として押し込むための押込通風機3と、押込通風機3で取り入れた空気aを、200℃程度に加熱するために、火炉1からの排ガス系統Eの余熱で熱交換する空気予熱器5と、空気予熱器5で熱交換した排ガスe中の灰粒子を煙突2へ送風する前で捕集する電気集塵機8と、を備えた空気系統Aと排ガス系統Eとから成る通風系統である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汽力発電設備に係り、特に火炉内の燃焼に必要な空気を、その火炉の燃焼によって生じた排ガスによって加温、加熱してから供給する汽力発電設備における通風系統に関する。
【背景技術】
【0002】
汽力発電設備は、ボイラで重油又は石炭等の燃料を燃焼し、その熱で高圧高温の蒸気を発生し、蒸気タービン、発電機を回転させて電力を発生させる設備である。汽力発電設備は、ボイラ、タービン、発電機などの主要機器の他に、種々の付属設備から構成される。これらの設備を機能別に分類すると、燃料受入・貯蔵設備、ボイラ設備、蒸気タービン設備、復水・給水系統設備、発電機および電気設備、及び計測制御装置及び諸設備から成る。ここで、燃料受入・貯蔵設備は、取引用計量装置、重原油、LNG、LPG等の燃料タンク、燃料油ポンプ、LNGポンプ、気化器などである。ボイラ設備はボイラ本体、重原油ポンプ、バーナ、通風機、空気予熱器、集じん器、灰処理装置、煙突などである。蒸気タービン設備はタービン本体、潤滑油装置、調速装置などである。復水・給水系統設備は復水器、循環水ポンプ、復水ポンプ、給水加熱器、
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、給水処理装置などである。発電機および電気設備は発電機、励磁機、変圧器、開閉装置、ケーブルなどである。計測制御装置は各種計測装置、監視装置、プラント総括制御装置、自動バーナ装置、計算機制御装置などである。諸設備には所内冷却水設備、所内空気設備、排水処理設備、保安防災設備などがある。
【0003】
この重油又は石炭等の燃料を火炉内に送って燃焼させるために、燃焼用空気を供給している。この火炉の燃焼によってボイラで発生した高圧・高温の過熱蒸気をタービンに送り、このタービンで蒸気の熱エネルギーを機械エネルギーに変換し、タービンに直結した発電機を運転して電気エネルギーに変換する。ボイラを出た排ガスは、硫黄・窒素酸化物(SOx、NOx等)、灰粒子等を除去してから、煙突へ送り、大気に放出するようになっている。
【0004】
そこで、NOxの低減、再熱蒸気温度制御性向上、炉壁の腐食低減、並びにクリンカ付着低減を図ることができるボイラ設備が提案されている。例えば、特許文献1の特開公報「ボイラ設備の排ガス再循環装置」に示すように、ボイラ本体の炉底部に、該ボイラ本体から排出される排ガスの一部を再循環させる再循環ガス系統と、燃焼用空気の一部を供給する空気系統とを、切換可能となるよう接続した装置が提案されている。
【特許文献1】特開2002−181307公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の「ボイラ設備の排ガス再循環装置」は、炭種に応じて最適な燃焼調整を行うことができ、NOx低減、再熱蒸気温度制御性向上、炉壁の腐食低減、並びにクリンカ付着低減を図るだけのものであり、通風系統全体を安全かつ正確に運転制御し、更に熱効率の向上を図るものではなかった。
【0006】
本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、通風系統における設備配置を変えることで、通風の熱効率の向上を図ると共に、排ガス中の硫黄・窒素酸化物(SOx、NOx)、灰粒子等の除去効率を高めることができる汽力発電設備における通風系統を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の通風系統によれば、火炉(1)内の燃焼に必要な空気(a)を、排ガス(e)によって加温、加熱してから供給するために、空気系統(A)と排ガス系統(E)とから成る汽力発電設備における通風系統であって、外気の空気(a)を取り入れ、前記火炉(1)に燃焼用空気として押し込むための押込通風機(3)と、前記押込通風機(3)で取り入れた空気(a)を、200℃程度に加熱するために、前記火炉(1)からの排ガス系統(E)の余熱で熱交換する空気予熱器(5)と、前記空気予熱器(5)で熱交換した排ガス(e)中の灰粒子を煙突(2)へ送風する前に捕集する電気集塵機(8)と、を備えた、ことを特徴とする汽力発電設備における通風系統が提供される。
【0008】
前記火炉(1)の排ガス系統(E)下流と、前記空気予熱器(5)と該火炉(1)の空気系統(A)との間に、ガス再循環量を調整すると共に、該火炉(1)の熱吸収割合を可変させるガス再循環通風機(6)を配置することが好ましい。
前記ガス再循環通風機(6)の下流と、前記空気予熱器(5)と該火炉(1)の空気系統(A)との間に、排ガス(e)中の窒素酸化物(NOx)を減少させると共に、前記空気予熱器(5)からの空気(a)を加熱するガス再循環ブースターファン(7)を配置することが好ましい。
【0009】
前記押込通風機(3)と前記空気予熱器(5)の空気系統(A)との間に、該押込通風機(3)から取り入れた空気(a)を、ボイラの補助蒸気又はタ−ビンからの蒸気の熱交換で常温から100℃程度に加温する水蒸気式空気加熱器(4)を配置することが好ましい。
前記火炉(1)と前記空気予熱器(5)の排ガス系統(E)との間に、排ガス(e)中の窒素酸化物(NOx)を除去する脱硝反応器(10)を配置することが好ましい。
前記空気予熱器(5)の排ガス系統(E)の下流に脱硝通風機(DNF)(11)を配置することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
上記構成の発明では、火炉(1)における燃焼に必要な空気(a)を、重油等の燃料に供給して完全燃焼を図り、燃焼生成ガス(排ガス(e))を火炉(1)の伝熱面に接触させながら流通させ、その余熱を有効利用して煙突(2)から大気に放出させることにより熱効率を高めることができる。
また、ガス再循環通風機(6)により、火炉(1)における燃焼温度を調節することで窒素酸化物(NOx)の低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の汽力発電設備における通風系統は、燃焼に必要な空気を燃料に供給して完全燃焼を図り、燃焼生成ガス(排ガス)をボイラ伝熱面に接触させながら煙道を通して流し、その保有する熱をできるだけ有効に利用して,煙突から大気に放出させる一連の空気、ガスの流動系統である。
【実施例1】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は実施例1の汽力発電設備における通風系統を示す系統図である。
実施例1の汽力発電設備における通風系統は、火炉1内の燃焼に必要な空気aを、排ガスeによって加温、加熱してから供給し、その後の排ガスeを煙突2から放出するために、空気系統Aと排ガス系統Eとから成る系統である。
【0013】
空気系統Aにおける主要な設備としては、押込通風機(FDF)3、水蒸気式空気加熱器(SAH)4及び空気予熱器(AH)5等がある。また、排ガス系統Eにおける主要な設備としては、ガス再循環通風機(GRF)6、ガス再循環ブースターファン(GRBF)7、空気予熱器5及び電気集塵機8等がある。
【0014】
押込通風機(FDF)3は、外気の空気aを取り入れ、火炉1に燃焼用空気として押し込むための通風機である。押込通風機3は、燃焼に必要な空気量を広い範囲の流量域で調整が必要であり安定した状態で運転する必要がある。その構造としては、遠心式ターボファンが多く使われている。また、軸流式は低負荷域での効率が遠心式より優れているという特徴がある。軸流式の押込通風機3は、例えば16枚の羽根が回転軸に連結されており、1分間約2000回転で回り、軸方向に空気を押し出す動翼と、この動翼によって送られる気流の乱れを整える働きをする静翼とから成る。
【0015】
この押込通風機3、後述する空気予熱器5等の機器には、仕切りを目的としたダンパ装置9をそれぞれに設けている。これらのダンパ装置9は、数枚のダンパを組み合わせて風(煙)を遮断するようになっている。例えば、通常運転中は、90°開き風圧の損失を少なくしている。このダンパの開閉は、モ−タと減速機・リンク機構から成る駆動装置により行う。ダンパ装置9は、ボイラの運転中も風煙道系統から一部切離し、機器の点検も可能になっている。
【0016】
水蒸気式空気加熱器(SAH)4は、押込通風機3から取り入れた空気aを、ボイラの補助蒸気又はタ−ビンからの蒸気の熱交換で常温から100℃程度に加温する装置である。この水蒸気式空気加熱器4は、押込通風機3と空気予熱器5の空気系統Aとの間に配置する。この蒸気式空気予熱器5の構造は、例えばチューブの中を蒸気、外を空気が通るようになっている。チューブは伝熱面積を大きくするために、フィン付チューブを使用している。水蒸気空気予熱器5のエレメントの温度を、ガス露点以上に保つように蒸気量を温度調節弁で調節する。エレメント温度の指標としての平均温度を用いている。また、水蒸気式空気加熱器4は、ドレンタンク蒸気式空気予熱器で熱交換し、熱水となったドレンを貯めるタンクを備え、ドレンタンクに貯った熱水を送るポンプで、純水と熱の回収を行うドレンポンプとから成り、ドレンタンクの水位は、これを一定に保つように、ドレンタンク水位調節弁でポンプの出口流量を調節するようになっている。
【0017】
空気予熱器(AH)5は、押込通風機3で取り入れた空気aを、200℃程度に加熱するために、火炉1からの排ガス系統Eの余熱で熱交換する装置である。この空気予熱器5は、水蒸気式空気加熱器4と火炉1との間に設置する。
【0018】
この空気予熱器(AH)5は、排ガスeの熱損失を減少し、ボイラ効率を高め、燃焼用空気温度を高めるため、燃焼効率を増加させ、過剰空気量を少なくする。また、点火条件を改善し、使用燃料に対する適応性を増すようになっている。この空気予熱器5の種類は、その伝熱過程により伝熱式と再生式に大別される。
【0019】
例えば、再生式の空気予熱器(AH)5は、エレメントは厚さ0.6〜1.2mmくらいの波鋼板を組み合せて、円筒容器中に収めて伝熱体とし、その中心軸の周りを2〜3rpmで回転させるようにしたもので、煙道部で排ガスeの温度を蓄熱し空気側で放熱することにより、燃焼用空気を効率よく予熱することができる。伝熱体はガス流れに沿って2分割あるいは3分割され、それぞれ高温部、中温部、低温部と呼ばれ、必要に応じて軟鋼板、耐食合金鋼板、エナメルコ−ティング板が使用されており、低温部での低温腐食に対する配慮がされている。セクタクタープレートにより、空気側とガス側の分離を行っている。また、ロ−タとハウジングやロ−タとセクタープレートの隙間からガス側への漏洩空気を少なくするため、ロータにシールプレートを取付けている。
【0020】
火炉1には、燃料(図示していない)と空気系統Aの高温になった空気aとを混合して供給する。この火炉1での燃焼によってボイラで発生した高圧・高温の過熱蒸気をタービンに送り、このタービンで蒸気の熱エネルギーを機械エネルギーに変換する。このタービンに直結した発電機を運転し電気エネルギーに変換する。
【0021】
一方、火炉1では1500℃程度の高温の排ガスeは、排ガス系統Eに流通させる。このとき、余熱を有効に利用すると共に、この排ガスe中の硫黄・窒素酸化物(SOx、NOx等)、灰粒子を除去してから煙突2へ送る。
【0022】
火炉1の排ガス系統E下流には、空気予熱器5を配置する。この空気予熱器5では排ガスeの余熱で熱交換して空気aを高温にする。
【0023】
空気予熱器5の下流に電気集塵機8を配置する。この電気集塵機8は、空気予熱器5で熱交換した排ガスe中の灰粒子を煙突2へ送風する前で捕集する。
【0024】
更に、火炉1の排ガス系統Eの下流に、ガス再循環通風機(GRF)6及びガス再循環ブースターファン(GRBF)7を配置している。
ガス再循環通風機(GRF)6は、火炉1の排ガス系統Eの下流と、空気予熱器5と火炉1との空気系統Aとの間に、ガス再循環量を調整し、火炉1の熱吸収割合を変化させる通風機である。このガス再循環通風機6は、ボイラ出口の排ガスeを吸引し、再度火炉1の底部から供給する通風機で、ガス再循環量を調整し、火炉1の熱吸収割合を変化させる。過熱器及び再熱器を通過するガスの量と温度を変化させ、再熱器出口蒸気温度を調整する機能を有する。排ガス温度は350〜450℃と高温であり、遠心式ターボファンが用いられている。
【0025】
ガス再循環ブースターファン7は、ガス再循環通風機6の下流と、空気予熱器5と火炉1との空気系統Aとの間に配置した通風機である。このガス再循環ブースターファン7は、窒素酸化物(NOx)を減少させると共に、加熱するようになっている。
【0026】
本発明では、火炉1における燃焼に必要な空気aを、重油等の燃料に供給して完全燃焼を図り、燃焼生成ガスを火炉1の伝熱面に接触させながら流通させ、その余熱を有効利用して煙突2から大気に放出させることにより、熱効率を高めることができる。
【実施例2】
【0027】
図2は実施例2の汽力発電設備における通風系統を示す系統図である。
実施例2の通風系統では、特に火炉1の排ガス系統E下流に、脱硝反応器10及び脱硝通風機(DNF)11を配置している。
脱硝反応器10は、火炉1と空気予熱器5との間に配置した反応器である。この脱硝反応器10は、排ガス系統E中の窒素酸化物(NOx)を除去する反応器である。
【0028】
また、この脱硝反応器10と火炉1の間の排ガス系統Eの排ガスeについては、アンモニアにより脱硝することも可能である。
【0029】
空気予熱器5の下流に脱硝通風機(DNF)11を配置する。この脱硝通風機(DNF)11は排ガス系統E中の風損を補填するものである。
【0030】
更に、排ガス系統E中には、硫黄酸化物(SOx)を除去するために、脱硫反応器(図示していない)とその下流に脱硫通風機(図示していない)を配置することが好ましい。
【0031】
なお、本発明は、通風系統における設備配置を変えることで、通風の熱効率の向上を図ると共に、排ガス中の硫黄・窒素酸化物(SOx、NOx)、灰粒子等の除去効率を高めることができれば、上述した発明の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の汽力発電設備における通風系統は、汽力発電設備の他にコンバインサイクル発電設備などに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施例1の汽力発電設備における通風系統を示す系統図である。
【図2】実施例2の汽力発電設備における通風系統を示す系統図である。
【符号の説明】
【0034】
1 火炉
2 煙突
3 押込通風機
4 水蒸気式空気加熱器
5 空気予熱器
6 ガス再循環通風機
7 ガス再循環ブースターファン
8 電気集塵機
9 ダンパ装置
10 脱硝反応器
11 脱硝通風機
a 空気
e 排ガス
A 空気系統
E 排ガス系統

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火炉(1)内の燃焼に必要な空気(a)を、排ガス(e)によって加温、加熱してから供給するために、空気系統(A)と排ガス系統(E)とから成る汽力発電設備における通風系統であって、
外気の空気(a)を取り入れ、前記火炉(1)に燃焼用空気として押し込むための押込通風機(3)と、
前記押込通風機(3)で取り入れた空気(a)を、200℃程度に加熱するために、前記火炉(1)からの排ガス系統(E)の余熱で熱交換する空気予熱器(5)と、
前記空気予熱器(5)で熱交換した排ガス(e)中の灰粒子を煙突(2)へ送風する前に捕集する電気集塵機(8)と、を備えた、ことを特徴とする汽力発電設備における通風系統。
【請求項2】
前記火炉(1)の排ガス系統(E)下流と、前記空気予熱器(5)と該火炉(1)の空気系統(A)との間に、
ガス再循環量を調整すると共に、該火炉(1)の熱吸収割合を可変させるガス再循環通風機(6)を配置した、ことを特徴とする請求項1の汽力発電設備における通風系統。
【請求項3】
前記ガス再循環通風機(6)の下流と、前記空気予熱器(5)と該火炉(1)の空気系統(A)との間に、
排ガス(e)中の窒素酸化物(NOx)を減少させると共に、前記空気予熱器(5)からの空気(a)を加熱するガス再循環ブースターファン(7)を配置した、ことを特徴とする請求項2の汽力発電設備における通風系統。
【請求項4】
前記押込通風機(3)と前記空気予熱器(5)の空気系統(A)との間に、
該押込通風機(3)から取り入れた空気(a)を、ボイラの補助蒸気又はタ−ビンからの蒸気の熱交換で常温から100℃程度に加温する水蒸気式空気加熱器(4)を配置した、ことを特徴とする請求項1の汽力発電設備における通風系統。
【請求項5】
前記火炉(1)と前記空気予熱器(5)の排ガス系統(E)との間に、
排ガス(e)中の窒素酸化物(NOx)を除去する脱硝反応器(10)を配置した、ことを特徴とする請求項1の汽力発電設備における通風系統。
【請求項6】
前記空気予熱器(5)の排ガス系統(E)の下流に脱硝通風機(DNF)(11)を配置した、ことを特徴とする請求項1の汽力発電設備における通風系統。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−174745(P2009−174745A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−12076(P2008−12076)
【出願日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】