説明

河水浄化装置

【課題】汚濁水中の懸濁物を濾過体で除去し、残余の懸濁物は速やかに沈降させることにより、河水を効率よく浄化し、また濾過体が目詰まりせずに長期間濾過作用を発揮できる河水浄化装置を提供する。
【解決手段】河水の流れ方向に交差する状態で、かつ流れ方向に離間して上側支持体1と下側支持体2を地盤に立設し、各支持体の外側に濾過体3、3を配置することにより一対の支持体1、2間に沈降領域10が画成してある。沈降領域10に位置して支持体1、2間に河水中の懸濁物の沈降を促進させる沈降誘引体11が配設してある。沈降誘引体11は、斜め上向きに傾斜した複数の沈降誘引面11Bを縦方向に、かつ略蛇行状に配列した構成からなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川工事の際に土砂や雑物等の懸濁物により汚濁した河水を浄化するために、河川や沈砂池に設置して使用する河水浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
河川の護岸工事やダム工事等の際には、河水に土砂、草木の腐食物といった懸濁物が混入して河水が汚濁するが、下流側である河川、湖、海岸等の環境を維持するために、河水を一定の基準以下に浄化して放流することが求められている。この河水を浄化する手段として、乾燥植物体を圧縮形成して長尺状の成形体とし、この外面を乾燥植物体により形成したロープ又はネットで包囲することにより構成した濾過材料を、濾過処理池の流出口に段違いに複数段積み重ねて使用するようにした技術がある。
【特許文献1】特許第3679968号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来技術は、乾燥植物体を圧縮成形した濾過材料であるため、濁水の浸透性が低く、高い水圧が掛からないと浄化能力が十分に発揮できないという欠点がある。また、濾過材料を濁水処理池に段違いに複数段積み重ねて使用するものであるため、流入水側の濾過材料が土砂等によって目詰まりしてしまうと放流水側の濾過材料に濁水が浸透しなくなり、浄化能力が早期に低下してしまうという欠点がある。更に、濾過材料のみによって河水を浄化することから早期に濾過材料が目詰まりして濾過能力が低下してしまうという欠点がある。
【0004】
本発明は上述した従来技術の諸欠点に鑑みなされたもので、流動する汚濁水中の懸濁物を濾過体で除去し、除去されなかった残余の懸濁物は速やかに沈降させることにより、河水を効率よく浄化すると共に、懸濁物は濾過体のみによるのでなく濾過と沈降の2つの作用によって浄化することにより、濾過体が目詰まりすることなく長期間濾過作用を発揮できるようにした河水浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために構成した本発明の手段は、河水の流れ方向に交差する状態で、かつ流れ方向に離間して上側支持体と下側支持体を地盤に立設し、該各支持体の外側に濾過体を配置することにより該一対の支持体間に沈降領域を画成し、該沈降領域に位置して前記支持体間に河水中の懸濁物の沈降を促進させる沈降誘引体を配設したことにある。
【0006】
そして、前記沈降誘引体は、斜め上向きに傾斜した複数の沈降誘引面を縦方向に、かつ略蛇行状に配列した構成からなり、前記上側支持体と下側支持体の間に河水の流れ方向に沿って配設してある。
【0007】
また、前記濾過体は、草木植物の茎、植物繊維又は構成繊維の1種以上により形成したシートを巻回してロール状に形成したものにするとよい。
【0008】
また、前記濾過体は、内部に芯材を巻き込んで形成したものにするとよい。
【0009】
また、前記濾過体は、前記シートに種子を係着したものにするとよい。
【0010】
また、前記濾過体は下部側を地盤に埋設させて設置するとよい。
【0011】
更に、前記芯材は、中空部を有し、該中空部内に多孔質吸着材を充填したものにするとよい。
【0012】
更にまた、通水性収容材に多孔質吸着材を充填した吸着体を前記芯材に支持させた構成にするとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上述の如く構成したから、下記の諸効果を奏する。
(1)濾過体によって水中に画成した沈降領域に沈降誘引体を設置したから、流動する汚濁水中の懸濁物を濾過体で除去し、除去されなかった残余の懸濁物は速やかに沈降させることにより、河水を効率よく速やかに浄化することができる。
(2)懸濁物は濾過体のみで除去するのではなく、沈降させることによって除去するようにしたから、下流側の濾過体は目詰まりすることなく長期間濾過作用を発揮できる。
(3)沈降誘引体は斜め上向きに傾斜した複数の沈降誘引面を縦方向に、かつ略蛇行状に配列した構成にしてあり、河水中を浮遊する懸濁物をいずれかの沈降誘引面に沈積させて互いに結合させることにより、懸濁物が粒子状になって速やかに落下するようにしたから、河水中の懸濁物を地盤上に確実に沈積させて除去することができるし、河水の速やかな浄化ができる。
(4)沈降誘引体は河水の流れ方向に沿って配設したから、沈降領域内で河水を円滑に流動させるばかりでなく、河水の不規則な動きを抑制することにより、水の動きに影響されることなく懸濁物を沈降させることができる。
(5)濾過体は下端側を地盤に埋設した状態で設置したから、地盤が豪雨、浸食等によって抉られた場合でも直ちに濾過機能を喪失することなく河水を浄化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づき詳述する。図において、1は上側支持体、2は下側支持体で、該両支持体1、2は長方形の平板からなる2枚の縦板1A、1A(2A、2A)と、該縦板1A、1A(2A、2A)を横方向に離間した状態に支持する上、下端の横板1B、1B(2B、2B)とによって四角形の枠状に構成してある。そして、該上側支持体1及び下側支持体2は、河水の流れ方向イに交差する状態で、かつ流れ方向に離間して河床Aに立設してある。
【0015】
3、3は上側支持体1の前側と下側支持体2の後側に夫々配置した一対の濾過体を示す。該各濾過体3は、例えば葦、萱等の植物性茎を面状に束ねて形成し、或いは椰子、麻等の植物繊維や合成繊維の1種以上で編成することにより形成した長方形のシート4を芯材5の外側に張力及び圧縮力を加えずに巻回し、外面を植物製又は金属製のネット6で被包したものからなる。
【0016】
ここで、前記芯材5は、3枚の横板5A、5A、5Aと、該3枚の横板5A、5A、5Aを高さ方向に離間して支持する前側の中央縦板5Bと、2枚の後側の端縦板5C、5Cとから四角形に構成してあり、4個の開口5D、5D、・・が形成されている。そして、平型の芯材5を用いることによって、濾過体3は扁平楕円状のロール体に形成してある。
【0017】
7、7、・・は、前記芯材5に支持させた状態で濾過体3に内装した多孔質吸着体を示す。該吸着体7は例えば織布や不織布のように透水性を有する材料により形成した収容袋に、多孔質吸着材である木炭を収納したものからなり、芯材5の開口5Dに嵌合した状態で配設してある。
【0018】
このように、濾過体3に多孔質吸着体7を設けることにより、濾過体3に浸透した河水中に混入しているシルト等の微細な土壌を吸着除去して河水を浄化することができる。
【0019】
本実施の形態に係る濾過体3は上述の構成からなり、各濾過体3は上端側3Aを水面Bと略同じ高さにし、下端側3Bを河床Aに埋設した状態にして上側支持体1と下側支持体2の外面に当接させ、地盤Aに立設した支柱8、8、・・によって上側支持体1及び下側支持体2との間に挟持してある。そして、上下方向に対向する一対の支柱8、8は、上端側8Aに係合して8の字状に掛架したワイヤ9によって結合することにより、水圧に対する強度性を高めると共に、耐久性を持たせてある。このように流れ方向イに離間して濾過体3、3を配設することにより、上側支持体1と下側支持体2との間は沈降領域10に画成してある。
【0020】
11、11は前記沈降領域10内で支持体1、2間に横方向に離間して架設した一対の沈降誘引体を示す。該各沈降誘引体11は、河水中の砂、土粒等の懸濁物を速やかに沈降させるためのもので、長方形の平板からなる5枚の傾斜誘引板11A、11A、・・・(以下、場合により傾斜誘引板11と総称する。)の各々を45度傾斜させて略90度の角度αで「く」字状と逆向き「く」字状をなすように縦方向に連続させて配設することにより、斜め上向きに傾斜した沈降誘引面11B、11B、・・・を縦方向に略蛇行状に配列した構成からなっている。そして、各沈降誘引体11は、上側支持体1と下側支持体2の間に河水の流れ方向イに沿って配設してある。なお、沈降誘引面11Bの数は、河川や沈砂池の水深に応じて適宜決めることができる。
【0021】
本実施の形態に係る河水浄化装置は上述の構成からなるが、次にその設置方法と浄化作用について説明する。河水浄化装置は、図3に示すように、例えば沈砂池の下流側に形成した流出部に河水の流れを妨げるように、上側支持体1と下側支持体2を河水の流れ方向イに交差する状態で、かつ流れ方向イに離間して設置し、該一対の支持体1、2の外側に濾過体3、3を配置して支柱8、8、・・とワイヤ9、9により組み付ける。これにより、上下の支持体1、2間は沈降領域10に画成される。そして、該沈降領域10に位置して上側支持体1と下側支持体2との間に沈降誘引体11、11を架設する。
【0022】
懸濁物によって汚濁した状態で流動する河水は、上流側の濾過体3に浸透することにより懸濁物が除去されて沈降領域10に流入する。濾過体3によって濾過されなかった懸濁物は、沈降誘引体11によってその沈降が促進され、河床Aに沈殿する。更に、沈降しなかった懸濁物は下流側の濾過体3によって除去される。また、濾過体3を溢流して沈降領域10に流入した河水中の懸濁物は、沈降誘引体11、11によってその沈降が促進され、早々に地盤A上に沈積する。
【0023】
ここで、沈降領域10に沈降誘引体11を設置しない場合は、河水中の懸濁物は水中を浮遊している時間が長く、容易に沈降しないために河水の浄化に時間を要する。しかし、沈降領域10に沈降誘引体11を配置することにより、上向きに傾斜した沈降誘引面11B、11B、・・・に水中を浮遊しつつ沈降する懸濁物が次第に沈積し、沈積した微細な懸濁物同士は付着して粒子状になり、その体積と重量が増大することによって沈降誘引面11B上を転動して転落する。そして、懸濁物の付着粒子は重量があるから、単体の懸濁物の沈降速度より約3倍の速さ(実験値)で沈降して早期に地盤A上に沈積すると共に、河水も速やかに浄化される。
【0024】
また、沈降誘引体10は河水の流れ方向イに沿って配設してあるから、沈降領域10内で河水を円滑に流動させるばかりでなく、沈降領域10内での河水の不規則な動きを抑制することにより、懸濁物を水の動きに影響されることなく沈降させることができる。
【0025】
そして、本実施の形態に係る河水浄化装置は、河川の幅や沈砂池の流出口の幅に応じて河水浄化装置を横方向に複数列設してもよい。
【0026】
また、本実施の形態では各濾過体3は1本のロール状に形成したものであるが、濾過体の大きさ及び設置する数は実施の形態に限定されるものではなく、例えば小サイズの濾過体を上下に2本積重して配設してもよい。
【0027】
図6は変形例に係る濾過体21を示す。該濾過体21の特徴は、シート5の芯材22として複数の開口22A、22A、・・・を形成した木製の平板を用いたことにある。また、芯材として紙管を用い、紙管内に多孔吸着体を充填した構成にすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態に係る河水浄化装置を一部を破断にして示す斜視図である。
【図2】河水浄化装置の平面図である。
【図3】河水浄化装置の側面図である。
【図4】図2中のIV−IV矢示方向断面図である。
【図5】濾過体の展開図である。
【図6】変形例に係る濾過体の展開図である。
【符号の説明】
【0029】
1 上側支持体
2 下側支持体
3 濾過体
4 シート
5 芯材
7 吸着体
8 支柱
10 沈降領域
11 沈降誘引体
11A 傾斜誘引板
11B 沈降誘引面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
河水の流れ方向に交差する状態で、かつ流れ方向に離間して上側支持体と下側支持体を地盤に立設し、該各支持体の外側に濾過体を配置することにより該一対の支持体間に沈降領域を画成し、該沈降領域に位置して前記支持体間に河水中の懸濁物の沈降を促進させる沈降誘引体を配設してなる河水浄化装置。
【請求項2】
前記沈降誘引体は、斜め上向きに傾斜した複数の沈降誘引面を縦方向に、かつ略蛇行状に配列した構成からなり、前記上側支持体と下側支持体の間に河水の流れ方向に沿って配設してあることを特徴とする請求項1記載の河水浄化装置。
【請求項3】
前記濾過体は、草木植物の茎、植物繊維又は構成繊維の1種以上により形成したシートを巻回してロール状に形成したものである請求項1記載の河水浄化装置。
【請求項4】
前記濾過体は、内部に芯材を巻き込んで形成してあることを特徴とする請求項3記載の河水浄化装置。
【請求項5】
前記濾過体は、前記シートに種子を係着してあることを特徴とする請求項3記載の河水浄化装置。
【請求項6】
前記濾過体は、下部側を地盤に埋設させてあることを特徴とする請求項1記載の河水浄化装置。
【請求項7】
前記芯材は、中空部を有し、該中空部内に多孔質吸着材を充填してあることを特徴とする請求項4記載の河水浄化装置。
【請求項8】
通水性収容材に多孔質吸着材を充填した吸着体を前記芯材に支持させてあることを特徴とする請求項4記載の河水浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−332560(P2007−332560A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−162515(P2006−162515)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(594127433)株式会社サングリーン (8)
【Fターム(参考)】