説明

油中水型乳化化粧料

【課題】凹凸補正効果と使用感触に優れた油中水型乳化化粧料を提供する。
【解決手段】下記成分(A)〜(C)を含有する油中水型乳化化粧料。(A)球状シリコーン粉末例えばメチルシロキサン網状重合体や架橋型シリコーン末等の配合量は5〜20質量%、(B)不定形シリコーン架橋型重合体、例えば架橋型メチルポリシロキサン等の配合量は0.5〜5質量%、(C)水の配合量は40〜70質量%である。水の配合量は比較的多量であり、みずみずしい使用感触を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油中水型乳化化粧料に関し、詳しくは、キメ、毛穴、小じわ等を目立たせなくする凹凸補正効果と、油性感を抑えたみずみずしい使用感触に優れた油中水型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キメ、毛穴、小じわ等を目立たせなくするために、球状シリコーン粉末や不定形シリコーン架橋型重合体が用いられてきた。皮膚上の凹部分を埋めたこれらのシリコーン素材が、光を散乱させることによって凹凸を目立たせなくする。この凹凸補正効果を長時間持続させるために、油中水型乳化化粧料あるいは油性化粧料が用いられることも一般的である。水中油型乳化化粧料に比べて、汗や水に対する化粧持ちが優れているからである。
【0003】
球状シリコーン粉末としては、メチルシロキサン網状重合体や架橋型シリコーン末などがある。これの油中水型乳化化粧料および油性化粧料への配合が示されている(特許文献1参照)。しかし、球状シリコーン粉末は塗布時の滑りに優れる反面、皮膚への付着性が劣るという欠点を持っている。そのため、凹凸補正効果を高めるために、球状シリコーン粉末の配合量を多くすることには限度がある。これを克服するために、油性化粧料に球状シリコーン粉末を配合する際に、固形のポリエチレンワックスとトリグリセリドを用いる方法が提案されている(特許文献2参照)。しかし、皮膚への付着性が完全には改善されておらず、また固形油分により油性感触が強くなってしまうことも避けられない。
【0004】
不定形シリコーン架橋型重合体としては架橋型メチルポリシロキサンなどがある。これを油中水型乳化化粧料に配合し、凹凸補正効果を持たせるものが示されている(特許文献3、4参照)。不定形シリコーン架橋型重合体は、球状シリコーン粉末に比較して皮膚への付着性に優れている。しかし配合量が多くなると、塗布時に消しゴムのカス様の凝集物を生じることがあり、またのびも重くなってしまう。そのため、凹凸補正効果を高めるには限度がある。上述の特許文献3、4においてもこれらの欠点を完全に解消しているとは言えない。
【0005】
球状シリコーン粉末と不定形シリコーン架橋型重合体の両方を油中水型乳化化粧料に配合したシワ・毛穴隠し化粧料も示されている(特許文献5参照)。しかしながら、水の配合量が少なく油性感の強いものであり、優れた使用感触とは言い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−148120号公報
【特許文献2】特開2002−241215号公報
【特許文献3】特開2002−322030号公報
【特許文献4】特開2008−201701号公報
【特許文献5】特開平11−349442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の状況に鑑み、本発明は、キメ、毛穴、小じわ等を目立たせなくする凹凸補正効果に優れ、油性感を抑えたみずみずしい使用感触を持つ油中水型乳化化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、球状シリコーン粉末、不定形シリコーン架橋型重合体、水を必須成分とし、それぞれの成分を特定量含有した油中水型乳化化粧料によって上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の油中水型乳化化粧料は、下記成分(A)〜(C)を含有することを特徴とするものである。
(A)球状シリコーン粉末 5〜20質量%
(B)不定形シリコーン架橋型重合体 0.5〜5質量%
(C)水 40〜70質量%
【発明の効果】
【0010】
本発明の油中水型乳化化粧料は、キメ、毛穴、小じわ等を目立たせなくする凹凸補正効果と、油性感を抑えたみずみずしい使用感触に特に優れているが、化粧持ち、べたつきのなさ、塗布時ののびの滑らかさ、保存安定性、刺激の少なさという利点も備えている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に用いられる(A)球状シリコーン粉末は、メチルシロキサン網状重合体や架橋型シリコーン末などである。メチルシロキサン網状重合体としては、例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のトスパール120A、トスパール145A、トスパール2000B、トスパール1110A、信越化学工業株式会社製のKMP−590などが挙げられる。架橋型シリコーン末としては、例えば、東レ・ダウコーニング株式会社製のトレフィルE−506S、トレフィルE−508などが挙げられる。これらは単独または組合せて使用することができる。
【0012】
本発明に用いられる(A)球状シリコーン粉末の配合量は、これを含有する油中水型乳化化粧料全体を100質量%として、5〜20質量%である。5質量%未満では凹凸補正効果で満足の得られる結果とはならない。20質量%を越えると皮膚から落ち易くなってしまう場合があり好ましくない。
【0013】
本発明に用いられる(B)不定形シリコーン架橋型重合体は、架橋型メチルポリシロキサンなどである。例えば、信越化学工業株式会社製のKSG−15(架橋型メチルポリシロキサン5質量%、デカメチルシクロペンタシロキサン95質量%含有)、KSG−16(架橋型メチルポリシロキサン25質量%、メチルポリシロキサン6cs75質量%含有)などが挙げられる。これらは単独または組合せて使用することができる。
【0014】
本発明に用いられる(B)不定形シリコーン架橋型重合体の配合量は、0.5〜5質量%である。0.5質量%未満では凹凸補正効果で満足の得られる結果とはならない。5質量%を越えると、塗布時に消しゴムのカス様の凝集物を生じたり、またのびも重くなってしまう場合があり好ましくない。
【0015】
本発明に用いられる(A)球状シリコーン粉末と(B)不定形シリコーン架橋型重合体は共にシリコーン素材であり、親和性が高い。そのため化粧料中や、塗布後の化粧塗膜中では混じりあった状態でいると考えられる。塗布時には、(A)の滑りの良さが(B)ののびの重さを抑制し、適度なのびとなっている。また化粧塗膜中では、(A)同士の間隙などに(B)が入り、(A)同士や(A)と皮膚を結び付け、化粧塗膜の付着性を向上させていると考えられる。(B)が作る消しゴムのカス様凝集物については、(A)が中に入ることで抑制していると思われる。このような相乗効果により、(A)、(B)それぞれを単独で配合するよりも、併用する場合のほうが、それぞれの配合量を多くできる。
【0016】
本発明に用いられる(C)水の配合量は、40〜70質量%である。40質量%未満では、油性感を抑えたみずみずしい使用感触とはならない。70質量%を越えると、保存安定性の点で満足の得られる結果とはならない。
【0017】
本発明の油中水型乳化化粧料は、(C)水の配合量が40〜70質量%と比較的多量である。これは上述の通り、みずみずしい使用感触を得るためである。しかし、通常は分散相が50質量%程度を超えると、乳化が不安定となり、保存安定性で問題となることがある。この場合、(B)不定形シリコーン架橋型重合体が連続相である油相中で緩いネットワークを形成し、油相の動きを抑制することで乳化を安定化させていると考えられる。
【0018】
本発明の油中水型乳化化粧料には、上記必須成分の他、一般に化粧料に適用される各種の原料や成分を、本発明の効果を損ねない範囲で適宜配合することができる。このような原料・成分としては、油性成分、保湿剤、乳化剤、顔料、紫外線吸収剤、香料、防腐剤、殺菌剤、酸化防止剤、キレート剤、薬剤、植物エキス等が挙げられる。
【0019】
本発明の油中水型乳化化粧料としては、しわ隠し、美容液、乳液、スキンケアクリーム、化粧下地、ファンデーション、しみ隠し、日焼け止め、ハンドクリーム、リップエッセンス等が挙げられる。
【実施例】
【0020】
以下、実施例と比較例をもって本発明をさらに詳しく説明する。本発明は、以下の実施例や比較例によって何ら限定されるものではない。
【0021】
実施例1(しわ隠し)
(質量%)
1.球状シリコーン粉末 *1 18.0
2.不定形シリコーン架橋型重合体混合物 *2 20.0
3.デカメチルシクロペンタシロキサン 6.0
4.α−オレフィンオリゴマー 5.0
5.ダイマージリノール酸エステル *3 2.0
6.モノイソステアリン酸ソルビタン 2.0
7.トリベヘン酸グリセリル 1.5
8.ジプロピレングリコール 3.0
9.ソルビトール 2.0
10.水 40.0
11.フェノキシエタノール 0.3
12.鮫由来加水分解コラーゲン 0.1
13.ザクロ花エキス 0.1
*1;トスパール145A(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)
*2;KSG−16(架橋型メチルポリシロキサン25質量%、メチルポリシロキサン75質量%含有、信越化学工業株式会社製)
*3;Plandool−H(日本精化株式会社製)
【0022】
製造方法
成分1〜7を80℃で加温分散し、それに成分8〜10を80℃で加温溶解したものを加え分散、50℃まで冷却し、成分11〜13を加え分散、室温まで冷却した。
【0023】
比較例1
実施例1の水のうち10.0質量%をデカメチルシクロペンタシロキサンに代えた他は実
施例1と同様にしてしわ隠しを調製した。
【0024】
実施例2(乳液)
(質量%)
1.球状シリコーン粉末 *4 6.0
2.不定形シリコーン架橋型重合体混合物 *5 10.0
3.デカメチルシクロペンタシロキサン 3.0
4.植物性スクワラン 4.0
5.ジカプリル酸プロピレングリコール 2.0
6.モノオレイン酸ソルビタン 2.0
7.トリベヘン酸グリセリル 0.5
8.ジプロピレングリコール 2.0
9.グリコシルトレハロース 1.0
10.加水分解水添デンプン 0.5
11.デヒドロ酢酸ナトリウム 0.05
12.水 68.45
13.フェノキシエタノール 0.2
14.バラエキス 0.1
15.ベニバナエキス 0.1
16.ローヤルゼリーエキス 0.1
*4;トレフィルE−506S(東レ・ダウコーニング株式会社製)
*5;KSG−15(架橋型メチルポリシロキサン5質量%、デカメチルシクロペンタシロキサン95質量%含有、信越化学工業株式会社製)
【0025】
製造方法
成分1〜7を80℃で加温分散し、それに成分8〜12を80℃で加温溶解したものを加え分散、50℃まで冷却し、成分13〜16を加え分散、室温まで冷却した。
【0026】
比較例2
実施例2の不定形シリコーン架橋型重合体混合物10.0質量%をデカメチルシクロペンタシロキサンに代えた他は実施例2と同様にして乳液を調製した。
【0027】
比較例3
実施例2の球状シリコーン粉末のうち3.0質量%と、不定形シリコーン架橋型重合体混合物のうち4.0質量%をデカメチルシクロペンタシロキサンに代えた他は実施例2と同様にして乳液を調製した。
【0028】
実施例3(日焼け止め)
(質量%)
1.球状シリコーン粉末 *6 20.0
2.不定形シリコーン架橋型重合体混合物 *2 4.0
3.デカメチルシクロペンタシロキサン 1.0
4.パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 6.0
5.ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル
安息香酸ヘキシル 1.0
6.シリコーン処理微粒子酸化チタン 2.0
7.モノイソステアリン酸ジグリセリル 2.5
8.トリベヘン酸グリセリル 2.0
9.1,3−ブチレングリコール 1.0
10.グリコシルトレハロース 1.0
11.加水分解水添デンプン 0.5
12.デヒドロ酢酸ナトリウム 0.05
13.水 58.45
14.フェノキシエタノール 0.2
15.鮫由来加水分解コラーゲン 0.1
16.ラベンダーエキス 0.1
17.ハチミツ 0.1
*6;トスパール2000B(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)
【0029】
製造方法
成分1〜8を80℃で加温分散し、それに成分9〜13を80℃で加温溶解したものを加え分散、50℃まで冷却し、成分14〜17を加え分散、室温まで冷却した。
【0030】
比較例4
実施例3の不定形シリコーン架橋型重合体混合物のうち3.0質量%をデカメチルシクロペンタシロキサンに代えた他は実施例3と同様にして日焼け止めを調製した。
【0031】
実施例4(ファンデーション)
(質量%)
1.球状シリコーン粉末 *7 5.0
2.不定形シリコーン架橋型重合体混合物 *2 16.0
3.デカメチルシクロペンタシロキサン 2.0
4.α−オレフィンオリゴマー 2.0
5.ジカプリル酸プロピレングリコール 2.0
6.ポリエーテル変性シリコーン混合物 *8 5.0
7.モノイソステアリン酸ソルビタン 1.0
8.トリベヘン酸グリセリル 1.0
9.マルチトール 1.0
10.グリセリン 1.0
11.水 54.8
12.フェノキシエタノール 0.4
13.ザクロエキス 0.1
14.トウキ根エキス 0.1
15.モモ葉エキス 0.1
16.酸化チタン 7.0
17.ベンガラ 0.2
18.黄酸化鉄 0.8
19.黒酸化鉄 0.1
20.タルク 0.4
*7;トレフィルE−508(東レ・ダウコーニング株式会社製)
*8;BY22−008M(ポリエーテル変性シリコーン10質量%、デカメチルシクロペンタシロキサン88質量%、水2質量%含有、東レ・ダウコーニング株式会社製)
【0032】
製造方法
成分16〜20を混合粉砕し、成分1〜8を80℃で加温分散したものに加え分散させた。これに成分9〜11を80℃で加温溶解したものを加え分散、50℃まで冷却し、成分12〜15を加え分散、室温まで冷却した。
【0033】
比較例5
実施例4の球状シリコーン粉末5.0質量%をデカメチルシクロペンタシロキサンに代えた他は実施例4と同様にしてファンデーションを調製した。
【0034】
熟練した女性パネルメンバー20名が、実施例1〜4、比較例1、3〜5の化粧料を使用し、下記の官能評価を実施した。なお比較例2については、製造直後から乳化不良が明らかであったため、評価を行わなかった。
【0035】
(1)凹凸補正効果(キメ、毛穴、小じわが目立たない) ※
(2)使用感触(油性感触が抑えられている)
(3)使用性(塗布時に消しゴムのカス様の凝集物を感じない)
※;(1)凹凸補正効果については、塗布直後と3時間後に行い、効果の持続性も調べた。
【0036】
評価基準を下記に示す。
20名中「良い」と答えた人数 評 価
15人以上 ◎
10〜14人 ○
5〜9人 △
0〜4人 ×
【0037】
評価結果を下記に示す。
実施例 比較例
1 2 3 4 1 3 4 5
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(1)凹凸補正効果
(直後) ◎ ○ ◎ ○ ◎ △ ◎ △
(3時間後) ◎ ○ ○ ○ ◎ × × △
(2)使用感触 ○ ◎ ◎ ○ × ◎ ◎ ○
(3)使用性 ○ ○ ◎ ○ ○ ○ ◎ ×
【0038】
本発明の実施例1〜4の化粧料は全ての項目において○以上であり、比較例1、3〜5の化粧料はいずれかの項目で×があり、実施例が比較例より優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の油中水型乳化化粧料は、キメ、毛穴、小じわ等を目立たせなくする凹凸補正効果と、油性感を抑えたみずみずしい使用感触に特に優れているが、化粧持ち、べたつきのなさ、塗布時ののびの滑らかさ、保存安定性、刺激の少なさという利点も備えている。そのため整肌および美容の為に用いる医薬品、医薬部外品または化粧品分野での応用が可能であり、産業上極めて有用なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)〜(C)を含有する油中水型乳化化粧料。
(A)球状シリコーン粉末 5〜20質量%
(B)不定形シリコーン架橋型重合体 0.5〜5質量%
(C)水 40〜70質量%

【公開番号】特開2011−32194(P2011−32194A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178769(P2009−178769)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(306018365)クラシエホームプロダクツ株式会社 (188)
【Fターム(参考)】