説明

油中水型分散液の希釈液、その調製方法及びその使用方法

【課題】 溶解に優れた油中水型分散液、特に油中水型エマルジョンを用いることでライン溶解時に配管部品中に未溶解粒子が残るなどのトラブル発生がなく、また水溶性高分子の組成に制限のない、効率良くライン溶解が可能な油中水型分散液を得ること。
【解決手段】油中水型分散液と水とを混合する手段を配管途中に連結し連続溶解した油中水型分散液の希釈液であって、該油中水型分散液が水非混和性有機液体、水溶性高分子を含む水相、酸及び特定の構造単位を有するカチオン性油溶性高分子を必須として含有する油中水型分散液を使用することにより達成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油中水型分散液と水とを混合する手段を配管途中に連結し油中水型分散液を連続溶解した希釈液であって、該油中水型分散液が水非混和性有機液体、水溶性高分子を含む水相、酸及びカチオン性油溶性高分子を必須として含有する溶解に優れたものであることを特徴とする油中水型分散液の希釈液、その調製方法およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水相に水溶性高分子を含む油中水型分散液は粉末品や高粘ちょう液品に比べ計量・溶解とその自動化が容易である。特に油中水型エマルジョンは取扱い性に優れ、凝集処理剤や増粘剤などとして、広く用いられている。通常、水溶性高分子の溶解は攪拌機を備えた希釈槽を設置し、バッチ式で行われる。ただし、油中水型エマルジョンに関しては設備規模、設置面積の縮小のためにライン中で連続溶解する方法が提案されている。しかしながら、特許文献1では使用するエマルジョン高分子凝集剤が一般に市販されるものでは溶解速度が遅く、ライン溶解時に完全溶解したように見えても実際には未溶解部分が多く存在し、バッチ溶解に対して大量の薬品添加量を必要とする問題があった。特許文献2は水溶性高分子の組成に関し、イオン性モノマー単位の量が多い場合には有効であるが、イオン性モノマー単位の量が少ない場合、十分な溶解速度が得られない、油中水型分散重合時に異物が発生する等の問題があった。
【特許文献1】特開平7−328319号公報
【特許文献2】特開2004−202400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、溶解に優れた油中水型分散液、特に油中水型エマルジョンを用いることでライン溶解時に配管部品中に未溶解粒子が残るなどのトラブル発生がなく、また水溶性高分子の組成に制限のない、効率良くライン溶解が可能な溶解方法を開発することである。ここで油中水型分散液と記載した場合は、水相粒子径が0.5〜500μmの分散液を指し、油中水型エマルジョンと記載した場合は、水相粒子径が0.1〜5μmの分散液を指す。また両方をまとめて以下油中水型分散液と記載する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、以下のような発明に達した。すなわち請求項1の発明は、油中水型分散液と水とを混合する手段を配管途中に連結し油中水型分散液を連続溶解した希釈液であって、該油中水型分散液が水非混和性有機液体、水溶性高分子を含む水相、酸及び下記一般式(1)及び(2)の構造単位を有するカチオン性油溶性高分子を必須として含有する溶解に優れたものであることを特徴とする油中水型分散液の希釈液である。
【化1】

一般式(1)
ここでR1は水素またはメチル基、Qはフェニル基、炭素数7〜18のアリール基、アルキル基、COOR3あるいはCONHR4である。ここでR3、R4は炭素数4〜18のアルキル基。R2は水素または炭素数1〜3のアルキル基。
【化2】

一般式(2)
R5は水素又はメチル基、R6、R7は炭素数1〜3のアルキルあるいはアルコキシル基、R8は水素、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシル基あるいはベンジル基であり同種でも異種でも良い。Aは酸素原子またはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基またはアルコキシレン基を表わす。X1は陰イオンを表わす。
【0005】
請求項2の発明は、前記カチオン性油溶性高分子が炭素数4〜18のアルキル基を持つアルキル(メタ)アクリレート50〜95モル%とジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート5〜50モル%との共重合物であることを特徴とする請求項1に記載の油中水型分散液の希釈液である。
【0006】
請求項3の発明は、前記カチオン性油溶性高分子の分子中アミノ基に対し、重合前の油中水型単量体分散液あるいは重合後の油中水型高分子分散液に前記酸を30モル%以上、1000モル%以下添加することを特徴とする請求項1あるいは2に記載の油中水型分散液の希釈液である。
【0007】
請求項4の発明は、前記混合する手段が、ラインミキサーであることを特徴とする請求項1に記載の油中水型分散液の希釈液である。
【0008】
請求項5の発明は、油中水型分散液と水とを混合する手段を配管途中に連結し連続溶解する油中水型分散液の希釈液の調製する場合、該油中水型分散液が水非混和性有機液体、水溶性高分子を含む水相、酸及び下記一般式(1)及び(2)の構造単位を有するカチオン性油溶性高分子を必須として含有する溶解に優れたものであることを特徴とする油中水型分散液の希釈液を調製する方法である。
【化1】

一般式(1)
ここでR1は水素またはメチル基、Qはフェニル基、炭素数7〜18のアリール基、アルキル基、COOR3あるいはCONHR4である。ここでR3、R4は炭素数4〜18のアルキル基。R2は水素または炭素数1〜3のアルキル基。
【化2】

一般式(2)
R5は水素又はメチル基、R6、R7は炭素数1〜3のアルキルあるいはアルコキシル基、R8は水素、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシル基あるいはベンジル基であり同種でも異種でも良い。Aは酸素原子またはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基またはアルコキシレン基を表わす。X1は陰イオンを表わす。
【0009】
請求項6の発明は、前記カチオン性油溶性高分子が炭素数4〜18のアルキル基を持つアルキル(メタ)アクリレート50〜95モル%とジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート5〜50モル%との共重合物であることを特徴とする請求項5に記載の油中水型分散液の希釈液を調製する方法である。
【0010】
請求項7の発明は、前記カチオン性油溶性高分子の分子中アミノ基に対し、重合前の油中水型単量体分散液あるいは重合後の油中水型高分子分散液に前記酸を30モル%以上、1000モル%以下添加することを特徴とする請求項5あるいは6に記載の油中水型分散液の希釈液を調製する方法である。
【0011】
請求項8の発明は、前記混合する手段が、ラインミキサーであることを特徴とする請求項5に記載の油中水型分散液の希釈液を調整する方法である。
【0012】
請求項9の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の油中水型分散液の希釈液を、有機汚泥に添加し、脱水機により脱水することを特徴とする油中水型分散液の希釈液の使用方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、効率よくライン溶解可能な溶解方法を実現するため、溶解性に優れた水非混和性有機液体、水溶性高分子を含む水相、酸及び特定のカチオン性基と疎水性基との構造単位を有するカチオン性油溶性高分子を必須として含有する油中水方分散液を用いることを特徴とする。また前記カチオン性油溶性高分子は、炭素数4〜18のアルキル基を持つアルキル(メタ)アクリレートとジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートとの共重合物であることが好ましい。また前記カチオン性油溶性高分子の分子中アミノ基に対し、重合前の油中水型単量体分散液あるいは重合後の油中水型高分子分散液に前記酸を30モル%以上添加することが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
初めにカチオン性油溶性高分子に関して説明する。本発明のカチオン性油溶性高分子は、疎水性単量体とカチオン性基を有する単量体との共重合によって製造することができる。疎水性単量体は、スチレンやα−メチルスチレンなど芳香環やアルキル基の付加した芳香環を有する単量体やα−オレフィンなど炭素数6〜20の芳香環あるいは脂肪族ビニル化合物である。また炭素数4〜18のアルキル基を持つアルキル(メタ)アクリレートも使用することができる。アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては以下のものがある。すなわちアクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリルなどである。これら疎水性単量体のうちアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましく、アクリル酸2−エチルヘキシルやメタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリルであることが更に好ましい。
【0015】
カチオン性基を有する単量体は、ジアルキルアミノアルキルアクリルアミドあるいはジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートなどである。ジアルキルアミノアルキルアクリルアミドの具体例としては、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジエチルアミノプロピルアクリルアミドなどである。またジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレートなどがあげられる。
【0016】
これら疎水性単量体とカチオン性基を有する単量体との共重合の組み合わせのうち、最も好ましいのはアクリル酸2−エチルヘキシルあるいはアクリル酸ラウリルとジメチルアミノエチルメタクリレートである。
【0017】
カチオン性油溶性高分子中の疎水性単量体のモル比は、好ましくは50〜95モル%であり、更に好ましくは50〜80モル%である。一方カチオン性基を有する単量体のモル比は、好ましくは5〜50モル%であり、更に好ましくは20〜50モル%である。
【0018】
カチオン性油溶性高分子は前記単量体混合物を調整後、通常の重合法によって行なうことが出来る。重合法としては溶液重合、塊状重合、懸濁重合などがあげられる。好ましい方法は重合操作、取り扱いが容易な溶液重合である。溶液重合の場合、単量体濃度は20〜80%、好ましくは40〜60%で重合する。その場合の重合溶媒は非極性の有機溶媒が好ましい。すなわち芳香族や脂肪族炭化水素であり、特に好ましいのは油中水型エマルジョン重合に分散媒として使用する沸点190°Cないし230°Cのパラフィンあるいはイソパラフィンが好ましい。
【0019】
本発明のカチオン性油溶性高分子の使用方法は、任意に使用することができる。すなわちカチオン性油溶性高分子を重合後、油中水型エマルジョンに適切な量を加え分散し、その後カチオン性油溶性高分子中のアミノ基に比例した量の酸を加え安定化する。あるいは単量体油中水型分散液に予めカチオン性油溶性高分子中のアミノ基に比例した量の酸を添加しておき、重合後カチオン性油溶性高分子を添加することもできる。好ましくは予め酸を添加しておき、重合後カチオン性油溶性高分子を添加する。
【0020】
上記のように添加する酸は、カチオン性油溶性高分子のアミノ基を中和、解離させカチオン性油溶性高分子の分散性を増強させ、分散安定剤としての機能を向上させるためである。またもう一つの目的としては重合後の油中水型分散液pHを調整し水溶性高分子の劣化防止などである。このような目的で使用する酸は、水相内水溶性高分子や分散液形態保持に悪影響を及ぼすことがなければどのようなものを用いても良い。具体的には、こはく酸、酢酸、クエン酸、アジピン酸などがあげられる。
【0021】
添加する酸の量は、カチオン性油溶性高分子の分子中アミノ基に対し、重合前の油中水型単量体分散液あるいは重合後の油中水型高分子分散液に30モル%以上添加する。また好ましくは30モル%以上、1000モル%以下であり、更に好ましくは50モル%以上、500モル%以下である。
【0022】
また上記酸は、アニオン性基を有する単量体で一部を代替することができるすなわち両性水溶性高分子を製造する場合は、カルボキシル基あるいはスルホン基を含有する単量体を中和することなしに原料として使用する。その添加量は、カチオン性油溶性高分子の分子中アミノ基に対し、5〜100モル%であり、好ましくは5〜50モル%である。あまり多く添加するとカチオン性油溶性高分子の性能に悪影響を与える。このアニオン性基を有する単量体により酸の量で不足する場合は、追加の酸として上記こはく酸、酢酸、クエン酸、アジピン酸などを追加する。
【0023】
本発明における水溶性高分子は油中水型分散重合法あるいは油中水型エマルジョン重合法を用い重合する。水溶性高分子はカチオン性、両性、非イオン性及びアニオン性何れでも製造することができる。油中水型分散重合法は単量体、あるいは共重合可能な二種以上の単量体からなる単量体混合物を水、少なくとも水と非混和性の炭化水素からなる油状物質、油中水型エマルジョンを形成するに有効な量とHLBを有する少なくとも一種類の界面活性剤を混合し、強攪拌し油中水型分散液を形成させた後、重合することにより合成する方法である。
【0024】
分散媒として使用する炭化水素からなる油状物質の例としては、パラフィン類あるいは灯油、軽油、中油などの鉱油、あるいはこれらと実質的に同じ範囲の沸点や粘度などの特性を有する炭化水素系合成油、あるいはこれらの混合物があげられる。含有量としては、油中水型分散液全量に対して20重量%〜50重量%の範囲であり、好ましくは20重量%〜35重量%の範囲である。
【0025】
油中水型分散液を形成するに有効な量とHLBを有する少なくとも一種類の界面活性剤の例としては、HLB3〜13のノニオン性界面活性剤であり、その具体例としては、油溶性界面活性剤のソルビタンモノオレ−ト、ソルビタンモノステアレ−ト、ソルビタンモノパルミテ−トなどがあげられる。またノニオン性水溶性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエ−テル系、ポリオキシエチレンアルコールエ−テル系、ポリオキシエチレンアルキルエステル系などである。具体的には、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(5)ソルビタンモノオレートなどである。これら界面活性剤の添加量としては、油中水型エマルジョン全量に対して0.5〜10重量%であり、好ましくは1〜5重量%の範囲である。
【0026】
重合後は、転相剤と呼ばれる親水性界面化成剤を添加して油の膜で被われた分散粒子が水になじみ易くし、中の水溶性高分子が溶解しやすくする処理を必要に応じて行い、水で希釈しそれぞれの用途に用いる。親水性界面化成剤の例としては、カチオン性界面化成剤やHLB9〜15のノニオン性界面化成剤であり、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエ−テル系、ポリオキシエチレンアルコールエ−テル系などである。
【0027】
本発明の水溶性高分子高濃度液の希釈方法は、以下のように行なう。すなわち、高濃度液と水とを混合する手段としては、一般的なラインミキサーを使用することができる。またラインミキサーの代わりにポンプを用いても良い。溶解が一基では不足する場合は、二基直列に連結することもできる。前記ラインミキサーは、ポンプに較べ比較的低価格であり、構造が単純で重量も軽く取り扱いも良く使い勝手が非常によく好適である。具体的な例としては冷化工業株式会社製、カルマンミキサーシリーズ−F1,F2,F3,KS2,KT2などである。
【0028】
本発明における水溶性高分子は、カチオン性、両性、非イオン性及びアニオン性のいずれでも製造することが可能であり、油中水型分散重合法に製造することができる。カチオン性水溶性高分子は、カチオン性単量体あるいはカチオン性単量体と非イオン性単量体を用い重合することにより製造できる。また両性水溶性高分子は、カチオン性単量体、アニオン性単量体及び非イオン性単量体を用い重合することにより製造できる。またアニオン性水溶性高分子は、アニオン性単量体あるいはアニオン性単量体と非イオン性単量体を用い重合することにより製造できる。
【0029】
カチオン性単量体の例としては、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルやジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどが上げられ、四級アンモニウム基含重合体の例は、前記三級アミノ含有単量体の塩化メチルや塩化ベンジルによる四級化物である(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物などである。
【0030】
アニオン性単量体の例としては、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、ビニルスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸あるいは2−アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸およびこれらの塩があげられる。これらは一種でも、二種以上を混合して用いても良い。
【0031】
使用する水溶性非イオン性単量体の例としては、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、酢酸ビニル、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ジアセトンアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、アクリロイルモルホリン、アクリロイルピペラジンなどがあげられる。
【0032】
本発明の水溶性高分子に対し、複数のビニル基を有する多官能性単量体として、メチレンビスアクリルアミドやエチレングルコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、架橋性単量体として、N、N−ジメチルアクリルアミドなどを適用することができる。
【0033】
重合条件は通常、使用する単量体や共重合モル%によって適宜決めていき、温度としては20〜80℃、好ましくは20〜60℃の範囲で行なう。重合開始はラジカル重合開始剤を使用する。これら開始剤は油溶性あるいは水溶性のどちらでも良く、アゾ系、過酸化物系、レドックス系いずれでも重合することが可能である。油溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’−アゾビスイソブチロニトリル、1、1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2、2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2、2’−アゾビス(2−メチルプロピオネ−ト)、4、4−アゾビス(4−メトキシ−2、4ジメチル)バレロニトリルなどがあげられる。
【0034】
水溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’−アゾビス(アミジノプロパン)二塩化水素化物、2、2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物、4、4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)などがあげられる。またレドックス系の例としては、ペルオクソ二硫酸アンモニウムと亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、トリメチルアミン、テトラメチルエチレンジアミンなどとの組み合わせがあげられる。さらに過酸化物の例としては、ペルオクソ二硫酸アンモニウムあるいはカリウム、過酸化水素、ベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、オクタノイルペルオキサイド、サクシニックペルオキサイド、t-ブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエ−トなどをあげることができる。
【0035】
本発明のカチオン性油溶性高分子により溶解に優れた油中水型分散液を得ることが可能である。本発明により溶解に優れた油中水型分散液が得られる理由については、pH調整にて水分散性となる、カチオン性油溶性高分子が酸によってpH調整された水相に接触した際に、接触部分が塩を形成して水分散性(水溶性)となり水相に強く吸着するためと考えられる。
【0036】
(実施例)以下実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0037】
(合成例1)攪拌機および温度制御装置を備えた反応槽に沸点190°Cないし230°Cのイソパラフィン24.75gにジメチルアミノエチルメタクリレート(以下DMMと略記)5.48g(30モル%)、ラウリルアクリレート(炭素数12、以下LAと略記)19.52g(70モル%)、3−メルカプト1,2−プロパンジオール0.25g、ジメチル−2,2−アゾビスイソブチレート(和光純薬製V−601)0.5g(対単量体2重量%)を仕込み溶解させた。単量体溶液の温度を70〜73℃に保ち、窒素置換を30分行い、重合反応を開始させた。反応温度を71±2℃で5時間重合させ反応を完結させた。
【0038】
(合成例2)攪拌機および温度制御装置を備えた反応槽に沸点190°Cないし230°Cのイソパラフィン127gにソルビタンモノオレート5.50gを仕込み溶解させた。別にアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物(以下DMQと略記)80%水溶液137.53g、アクリルアミド(AAMと略記)50%水溶液149.95g、メチレンビスアクリルアミド0.2%水溶液0.32g、イソプロピルアルコール0.37g(対単量体0.2重量%)、酢酸80%水溶液5.63g、イオン交換水73.70gを各々採取し、混合し完全に溶解させた。その後油と水溶液を混合し、ホモジナイザーにて1000rpmで15分間攪拌乳化した。この時の単量体組成は、DMQ/AAM=35/65(モル%)である。得られたエマルジョンを単量体溶液の温度を40〜43℃に保ち、窒素置換を30分行なった後、ジメチル−2,2−アゾビスイソブチレート(和光純薬製V−601)0.04g(対単量体0.02重量%)を加え、重合反応を開始させた。反応温度を42±2℃で12時間重合させ反応を完結させた。重合後、生成した油中水型エマルジョンに転相剤としてポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエ−テル10.0g(体液2重両%)を添加混合した。重合後の油中水型エマルジョン粘度は、360mPa・sであり、動的光散乱法による重量平均分子量は、770万であった。
【0039】
合成例2の油中水型エマルジョン重合物に合成例1の油溶性高分子1%(液総量に対し油溶性高分子の純分換算で)を添加したものをそれぞれ試料−1とし、油溶性高分子無添加のものを試料−2とした。
【実施例1】
【0040】
以下、合成例で製造した油中水型エマルジョンを用い、ライン溶解法の試験を行なった。図1のフローシートに示したように、本発明の溶解システム試験を行なう装置を組み立てた。希釈水供給ポンプを稼働し、水槽より20L/min の速度で希釈水を供給し、原液供給ポンプを稼働し、原液タンクより合成例で製造した油中水型エマルジョンからなる水溶性高分子を100mL/minの速度で供給した。この場合の希釈倍率は200倍である。供給された溶解液を用いて汚泥脱水試験を行い、溶解の度合いを確認した。溶解液の配管内での滞留時間は約1分である。
【実施例2】
【0041】
し尿余剰汚泥を上記溶解液により造粒凝集させ、得られた凝集フロックの重力濾過及び圧搾脱水試験を行なった。供試汚泥の性状は以下の通りである。TS:12,000mg/L、VTS:58.3%/TS、SS:10,500mg/L(200メッシュ濾過)pH7.05。上記下水消化汚泥200mLを300mLビーカーに採取し、前記イオン性水溶性高分子からなる油中水系エマルジョン、試料−1、試作−2の200倍溶解液を添加後、高速撹拌機を用いて1000rpmで30秒間撹拌して汚泥凝集フロックを生成させ、フロックの粒径を測定した。その後、40メッシュ濾布をフィルターとして用いて、前記汚泥凝集フロックの生成した分散液を重力濾過した。5及び10秒後の各濾液量を測定した。また、得られた濾液の外観を目視にて下記5段階で評価した。
【0042】
濾液の外観の評価基準
○:濾液の清澄性良い、濾液中にSS(懸濁粒子)が見られない
○−:濾液の清澄性良い、濾液中にSSが見られる
△:濾液に濁りあり、濾液中にSSが見られない
△−:濾液に濁りあり、濾液中にSSが見られる
×:濾液の濁りがひどく、濾液中にSSが見られる
【0043】
得られた汚泥ケーキを汚泥脱水試験装置によって、ナイロン#202を濾布として用い3.0Kg/cm2、30秒間の条件にて圧搾脱水し、汚泥ケーキ含水率を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0044】
(比較例)比較例1−1は油溶性高分子無添加である試料−2をライン溶解し用いた場合、比較例1−2、比較例1−3は試料−1、試料−2をライン溶解ではなくビーカー中でのマグネチックスターラー攪拌にて800rpm、200倍、30分で溶解し、用いた場合である。

【0045】
(表1)

薬注量;対汚泥重量ppm、フロック径;mm、
濾液量;mL、濾液状態;試験条件に記載、含水率;重量%
【0046】
実施例1と比較例1−2を比較すると試料−1はライン溶解でもビーカー溶解同等に溶解し、効果を発揮していることが分かる。比較例1−1と比較例1−3から試料−2ではライン溶解では十分な溶解状態が得られないことが分かる。比較例1−3から試料−2でも十分な溶解状態であれば効果を発揮することが分かる。つまり、油溶性高分子の添加が油中水型エマルジョンの溶解を優れたものとしていることが確認できる。
以上試験を行なった結果のように本発明は効率良くライン溶解が可能な溶解方法可能とすることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施例におけるライン溶解法の試験フローシートを表す図。
【符号の説明】
【0048】
a)溶解液貯蔵タンクへ移送
b)ラインミキサー
c)製品原液タンク
d)希釈水タンク
e)、f)ポンプ
g)、h)、i)、j)バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油中水型分散液と水とを混合する手段を配管途中に連結し連続溶解した油中水型分散液の希釈液であって、該油中水型分散液が水非混和性有機液体、水溶性高分子を含む水相、酸及び下記一般式(1)及び(2)の構造単位を有するカチオン性油溶性高分子を必須として含有する溶解に優れたものであることを特徴とする油中水型分散液の希釈液。
【化1】

一般式(1)
ここでR1は水素またはメチル基、Qはフェニル基、炭素数7〜18のアリール基、アルキル基、COOR3あるいはCONHR4である。ここでR3、R4は炭素数4〜18のアルキル基。R2は水素または炭素数1〜3のアルキル基。
【化2】

一般式(2)
R5は水素又はメチル基、R6、R7は炭素数1〜3のアルキルあるいはアルコキシル基、R8は水素、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシル基あるいはベンジル基であり同種でも異種でも良い。Aは酸素原子またはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基またはアルコキシレン基を表わす。X1は陰イオンを表わす。
【請求項2】
前記カチオン性油溶性高分子が炭素数4〜18のアルキル基を持つアルキル(メタ)アクリレート50〜95モル%とジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート5〜50モル%との共重合物であることを特徴とする請求項1に記載の油中水型分散液の希釈液。
【請求項3】
前記カチオン性油溶性高分子の分子中アミノ基に対し、重合前の油中水型単量体分散液あるいは重合後の油中水型高分子分散液に前記酸を30モル%以上、1000モル%以下添加することを特徴とする請求項1あるいは2に記載の油中水型分散液の希釈液。
【請求項4】
前記混合する手段が、ラインミキサーであることを特徴とする請求項1に記載の油中水型分散液の希釈液。
【請求項5】
油中水型分散液と水とを混合する手段を配管途中に連結し連続溶解する油中水型分散液の希釈液の調製する場合、該油中水型分散液が水非混和性有機液体、水溶性高分子を含む水相、酸及び下記一般式(1)及び(2)の構造単位を有するカチオン性油溶性高分子を必須として含有する溶解に優れたものであることを特徴とする油中水型分散液の希釈液を調製する方法。
【化1】

一般式(1)
ここでR1は水素またはメチル基、Qはフェニル基、炭素数7〜18のアリール基、アルキル基、COOR3あるいはCONHR4である。ここでR3、R4は炭素数4〜18のアルキル基。R2は水素または炭素数1〜3のアルキル基。
【化2】

一般式(2)
R5は水素又はメチル基、R6、R7は炭素数1〜3のアルキルあるいはアルコキシル基、R8は水素、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシル基あるいはベンジル基であり同種でも異種でも良い。Aは酸素原子またはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基またはアルコキシレン基を表わす。X1は陰イオンを表わす。
【請求項6】
前記カチオン性油溶性高分子が炭素数4〜18のアルキル基を持つアルキル(メタ)アクリレート50〜95モル%とジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート5〜50モル%との共重合物であることを特徴とする請求項5に記載の油中水型分散液の希釈液を調製する方法。
【請求項7】
前記カチオン性油溶性高分子の分子中アミノ基に対し、重合前の油中水型単量体分散液あるいは重合後の油中水型高分子分散液に前記酸を30モル%以上、1000モル%以下添加することを特徴とする請求項5あるいは6に記載の油中水型分散液の希釈液を調製する方法。
【請求項8】
前記混合する手段が、ラインミキサーであることを特徴とする請求項5に記載の油中水型分散液の希釈液を調整する方法。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれかに記載の油中水型分散液の希釈液を、有機汚泥に添加し、脱水機により脱水することを特徴とする油中水型分散液の希釈液の使用方法。




















【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−173543(P2008−173543A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−7608(P2007−7608)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【出願人】(000142148)ハイモ株式会社 (151)
【Fターム(参考)】