説明

油圧ショベル

【課題】油圧ショベルの複数の冷却装置に対して、効率良くエアを供給する。
【解決手段】この油圧ショベルは、冷却ユニット20と、冷却ユニット20を覆う後外装ドア21及び前外装ドア22と、を備えている。冷却ユニット20はハイブリッドラジエータ28と空調用コンデンサ29とを含む。ハイブリッドラジエータ28は後外装ドア21に対向して配置されている。空調用コンデンサ29は、ハイブリッドラジエータ28の側部前方においてハイブリッドラジエータ28とほぼ直交する方向に、かつ前外装ドア22と冷却ファン17との間のエア流路の途中に配置されている。後外装ドア21はハイブリッドラジエータ28と高さ方向で重なる部分に後開口部21bを有し、前外装ドア22は後開口部21bと高さ方向でずれた位置でかつ空調用コンデンサ29と高さ方向で重なる部分に前開口部22b,22cを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル、特に、油圧ショベルに設けられた複数の冷却装置を冷却するための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルには、エンジンの冷却水を冷却するためのラジエータや、油圧機器の作動油を冷却するオイルクーラ、エンジンに供給される圧縮空気を冷却するアフタクーラ等を含む各種の冷却装置が搭載されている。
【0003】
これらの複数の冷却装置は、油圧ショベルにおいては車体の側面に配置されている場合が多い。例えば特許文献1に示された油圧ショベルでは、車体の側面に冷却装置が配置されるとともに、これらの冷却装置を覆うために、サイドドア及びエンジンフードが設けられ、さらにこれらとは別にスクリーンの上方を覆うリッドが設けられている。また、サイドドア等には、外気を取り込むための開口部が形成されている。
【0004】
また、特許文献2には、油圧ショベルの側部から後部にかけて2つのエア流路を設け、一方のエア流路にラジエータを配置し、他方のエア流路にオイルクーラを配置することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−3519号公報
【特許文献2】特開2002−30693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、油圧ショベルにおいてもハイブリッド化が進められている。このハイブリッド油圧ショベルでは、従来の複数の冷却装置に加えて、インバータ等の電動機システムを冷却するためのラジエータ(ここでは、このラジエータを「ハイブリッドラジエータ」と称す)が必要になる。したがって、これらの複数の冷却装置に対して効率的に冷却用のエアを供給し、ヒートバランスの悪化を防止する必要がある。
【0007】
そこで、特許文献2に示されるように、2つのエア流路を設けて、各エア流路に複数の冷却装置を配置することが考えられる。
【0008】
しかし、特許文献2に示された構成では、エアが取り込まれやすい一方のエア流路にほぼすべてのエアが取り込まれ、他方のエア流路からはエアがほとんど取り込まれないおそれがある。
【0009】
また、油圧ショベルでは3つ以上の冷却装置が必要になるために、1つのエア流路に重ねて複数の冷却装置を配置する必要がある。このような状況において特許文献2に示された冷却構造を適用した場合、2つのエア流路に配置された冷却装置を通過したエアが互いに干渉し、重ねて配置された複数の冷却装置のうち、エア流路の下流側の冷却装置に対して、効率よくエアを供給することができない場合がある。
【0010】
本発明の課題は、油圧ショベルに設けられた複数の冷却装置のそれぞれに対して、効率良くエアを供給できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明に係る油圧ショベルは、下部走行体と、上部旋回体と、冷却ユニットと、第1外装部材及び第2外装部材と、を備えている。上部旋回体は、下部走行体に旋回自在に支持され、駆動源、作業機、及び冷却ファンを有している。冷却ユニットは冷却ファンによって形成されるエア流路の途中に配置されている。第1外装部材及び第2外装部材は、前後方向に配置されるとともに上部旋回体に支持され、冷却ユニットを覆う。また、冷却ユニットは第1冷却装置と第2冷却装置とを含む。第1冷却装置は第1外装部材に対向して配置されている。第2冷却装置は、第1冷却装置の第2外装部材側の側方において第1冷却装置の配置された方向と交差する方向に、かつ第2外装部材と冷却ファンとの間のエア流路の途中に配置されている。また、第1外装部材は第1冷却装置と高さ方向で重なる部分に第1開口部を有し、第2外装部材は第2冷却装置と高さ方向で重なる部分に第2開口部を有している。そして、第1開口部及び第2開口部は、一方の開口部の上縁が他方の開口部の上縁より高く、一方の開口部の下縁が他方の開口部の下縁より高く形成されている。
【0012】
ここでは、冷却ファンが駆動されることによって、第1外装部材の第1開口部を介してエアが内部に取り込まれ、取り込まれたエアは第1冷却装置を通過する。これにより、第1冷却装置内の冷媒が冷却される。また、同様に、第2外装部材の第2開口部を介して内部に取り込まれたエアが第2冷却装置を通過し、これにより、第2冷却装置内の冷媒が冷却される。
【0013】
ここで、第2冷却装置は、第1冷却装置の側方に第1冷却装置に対して交差する方向に配置されているので、スペースを有効に活用して複数の冷却装置を配置することができる。また、第1冷却装置及び第2冷却装置には、それぞれ別の開口部を介して取り込まれたエアが供給されるので、各冷却装置に効率良くエアが供給される。このため、ヒートバランスの悪化を避けることができる。
【0014】
また、第1開口部と第2開口部とは高さ方向でずれた位置に設けられているので、2つの開口部から取り込まれたエアが内部で互いに干渉するのを抑えることができ、各冷却装置に対して効率よくエアを供給することができる。
【0015】
第2発明に係る油圧ショベルは、第1発明の油圧ショベルにおいて、第1冷却装置は、エア流入面が第1外装部材の第1開口部と対向するように配置されている。また、第2冷却装置は、エア流入面が第2外装部材の第2開口部と実質的に直交するように配置されている。
【0016】
ここでは、第1開口部から取り込まれたエアは、第1冷却装置に対して効率よく供給される。また、第2冷却装置はエア流入面が第2開口部と実質的に直交するように配置されているので、第1開口部と第2開口部とが高さ方向にずれて設けられていることと併せて、2つの開口部から取り込まれたエアが互いに干渉するのを抑えることができる。
【0017】
第3発明に係る油圧ショベルは、第1又は第2発明の油圧ショベルにおいて、第1冷却装置と冷却ファンとの間に、第1冷却装置と平行に配置された第3冷却装置をさらに備えている。
【0018】
ここでは、第1冷却装置を通過したエアが第3冷却装置に供給される。また、前述のように、第3冷却装置のエア流路の上流側で2つの開口部から取り込まれたエアが互いに干渉するのが抑えられており、このため第3冷却装置に対して効率よく冷却用のエアが供給される。
【0019】
第4発明の油圧ショベルは、第1から第3発明のいずれかの油圧ショベルにおいて、第1外装部材の第1開口部と第2外装部材の第2開口部のうちの上方に配置された一方の開口部の下縁は、下方に配置された他方の開口部の上縁よりも上方に位置している。
【0020】
ここでは、一方の開口部から多量のエアが取り込まれ、他方の開口部から取り込まれるエアが少量になるという不具合を抑えることができる。また、第1開口部から取り込まれたエアと、第2開口部から取り込まれたエアとが内部で互いに干渉するのを、より抑えることができる。
【0021】
第5発明に係る油圧ショベルは、第1から第4発明の油圧ショベルにおいて、第1冷却装置と第2冷却装置は高さ方向でずれた位置に配置されている。また、第2冷却装置は、上部が下部に比べて前方に位置するように傾斜して配置されている。
【0022】
ここでは、第2冷却装置を通過したエアは、高さ方向において第1冷却装置とは逆側に導かれる。このため、2つの冷却装置が高さ方向でずれた位置に配置されていることと併せて、内部でエアが互いに干渉するのをより抑えることができる。このため、第1冷却装置に重ねて他の冷却装置を配置した場合でも、この他の冷却装置に対して効率良くエアを供給することができる。
【0023】
第6発明に係る油圧ショベルは、第1から第6発明の油圧ショベルにおいて、上部旋回体は、車両側方に縦方向に配置された第1縦フレームと、第1縦フレームの車両前方側に配置された第2縦フレームと、第2縦フレームの車両前方側に配置された第3縦フレームと、を含んでいる。そして、第1外装部材は第1縦フレームと第2縦フレームとの間に配置され、第2外装部材は第2縦フレームと第3縦フレームとの間に配置されている。また、第2冷却装置は、一方の側部が第2縦フレームに支持されている。
【0024】
ここでは、第2外装部材が第2冷却装置に近接して配置されるので、第2外装部材の第2開口部から取り込まれたエアは第2冷却装置に効率良く供給される。
【0025】
第7発明に係る油圧ショベルは、第6発明の油圧ショベルにおいて、第2縦フレームと第3縦フレームとの間の第2外装部材によって覆われた内部空間に配置され、駆動源に連結されたエアクリーナをさらに備えている。そして、第2外装部材の第2開口部からのエアが、エアクリーナに吸入される。
【0026】
ここでは、第2開口部を介して取り込まれたエアのうち、エアクリーナに取り込まれるエア以外のエアを、効率良く第2冷却装置に供給することができる。
【0027】
第8発明に係る油圧ショベルは、第1から第7発明のいずれかの油圧ショベルにおいて、第1冷却装置は電装品を冷却するためのハイブリッドラジエータであり、第2冷却装置は空調機用のコンデンサである。
【発明の効果】
【0028】
以上のような本発明では、油圧ショベルにおいて、複数の冷却装置を効率よく冷却することができる。特に、多数の冷却装置が必要になるハイブリッド油圧ショベルに本発明を適用して有効である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態によるハイブリッド油圧ショベルの外観斜視図。
【図2】2つのエア流路を示す平面図。
【図3】冷却ユニット及び冷却ファンの配置を示す平面図。
【図4】前記油圧ショベルの後部右側面図。
【図5】冷却ユニットを構成する複数の冷却装置の配置図。
【図6】2つのエア流路を示す油圧ショベルの部分外観斜視図。
【図7】上部旋回体の各フレームと冷却ユニットとの位置関係を示す部分外観斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[全体構成]
本発明の一実施形態による油圧ショベル1を図1に示す。油圧ショベル1は、ハイブリッド型の油圧ショベルであり、旋回電気モータ、発電機モータ、変換器としてのインバータ、蓄電器としてのキャパシタ、ディーゼルエンジン等を備えている。そして、このハイブリッド油圧ショベル1では、車体旋回の減速時に発生するエネルギが電気エネルギに変換され、エンジンと直結した発電機モータのエネルギと併せて得られた電気エネルギはキャパシタに蓄えられる。また、蓄えられた電気エネルギは、発電機モータを通じてエンジン加速時の補助エネルギとして利用される。なお、以下の説明において、「前」「後」「左」「右」とは、運転席に着座したオペレータを基準として決められる方向である。
【0031】
図1に示す油圧ショベル1は、下部走行体2と、上部旋回体3と、作業機4と、キャブ5とを備えている。
【0032】
下部走行体2は左右両側部に1対の履帯Cを有し、この履帯Cを駆動することで走行が可能である。上部旋回体3は、下部走行体2に旋回自在に支持されており、図示しない旋回電気モータによって任意の方向に旋回が可能である。作業機4及びキャブ5は、上部旋回体3に搭載されている。作業機4は、ブーム10、アーム11及びバケット12を有している。また、作業機4は、これらの構成部材10〜12を駆動するための複数の油圧シリンダを有している。
【0033】
また、上部旋回体3の後部には、エンジン15が横置きで配置されている。すなわち、エンジン15のクランク軸(図示せず)は油圧ショベル1の前後方向に対してほぼ直交するように配置されている。このエンジン15は、エンジンカバーやその上方に設置された外装カバー16によって覆われている。エンジン15の先端部(右端部)には、エンジン15によって回転される冷却ファン17が設けられている。
【0034】
[冷却ユニット及び外装ドア]
上部旋回体3の後部において、右側端部には、図2〜図4に示すように、冷却ユニット20が配置されている。この冷却ユニット20は、後に詳細に説明するように、複数の冷却装置から構成されている。また、冷却ユニット20を覆うように、外装部材としての後外装ドア21及び前外装ドア22が前後方向に並べて配置されている。なお、図2及び図3は外装カバーと取り外して冷却ユニット20を上方から見た平面図であり、図4は油圧ショベル1の後部の右側面図である。図3では、冷却ユニット20に関する構成のみを示し、他の構成部材は省略している。また、図2では、冷却ユニット20の各冷却装置を模式的に示している。
【0035】
冷却ユニット20は、冷却ファン17によって形成されるエア流路の上流側、すなわち冷却ファン17と、後外装ドア21及び前外装ドア22との間に配置されている。図5に、冷却ユニット20の構成を抽出して示している。この図5から明らかなように、冷却ユニット20は、エンジン冷却水を冷却するためのラジエータ25、潤滑油を冷却するためのオイルクーラ26、エンジンに供給される圧縮空気を冷却するためのアフタクーラ27、インバータ等の電動機システムを冷却するためのハイブリッドラジエータ28、及び空調装置のコンデンサ29を有している。
【0036】
ラジエータ25及びオイルクーラ26は後外装ドア21に対向して、車両の前後方向に並べて配置されている。より詳細には、ラジエータ25及びオイルクーラ26は、ともに車両の側方から視て縦長の長方形状であり、エア流入面25a,26aが後外装ドア21の主面21a(図4参照)とほぼ平行になるように配置されている。また、ラジエータ25とオイルクーラ26のエア流入面25a,26aはほぼ同じ面上に位置している。
【0037】
アフタクーラ27は、ラジエータ25及びオイルクーラ26を挟んで冷却ファン17の逆側に配置されている。アフタクーラ27は、車両の側面視で、ラジエータ25及びオイルクーラ26の高さ方向の上方半分程度の領域と重なるように配置されている。アフタクーラ27のエア流入面27aはラジエータ25及びオイルクーラ26のエア流入面25a,26aと平行である。
【0038】
ハイブリッドラジエータ28は、アフタクーラ27と同じ側で、アフタクーラ27の下方に配置されている。そして、ハイブリッドラジエータ28は、車両の側面視で、ラジエータ25及びオイルクーラ26の高さ方向の下側部分の領域と重なるように配置されている。また、ハイブリッドラジエータ28は平面視で、アフタクーラ27と重なるように配置されている。また、このハイブリッドラジエータ28のエア流入面28aは、アフタクーラ27と同様に、ラジエータ25及びオイルクーラ26のエア流入面25a,26aと平行である。
【0039】
コンデンサ29は、ラジエータ25、オイルクーラ26、アフタクーラ27、及びハイブリッドラジエータ28の側方、すなわちこれらの前方側に配置されている。コンデンサ29は車両前方から視て縦長の長方形状であり、他の冷却装置とはほぼ直交するように配置されている。より詳細には、コンデンサ29のエア流入面29aは、ラジエータ25等の他の冷却装置のエア流入面25a,26a,27a,28aとはほぼ直交している。また、コンデンサ29は、上部が下部に比べて前方に位置するように傾斜して配置されている。
【0040】
後外装ドア21は車両の後端部でカウンタウェイト32の前方に配置されている。図4及び図6に示すように、後外装ドア21において、高さ方向の中央部より下方には、高さ方向に所定の幅を有する後開口部21bが形成されている。後開口部21bには土埃等の異物の侵入を抑え、風の流れの方向を決めるため、ルーバが設けられている。後開口部21bはハイブリッドラジエータ28と対向する位置に形成されている。したがって後開口部21bのほぼ全体が、車両側面視でハイブリッドラジエータ28と重なっている。
【0041】
前外装ドア22は後外装ドア21の前方に並べて配置されている。前外装ドア22の高さ方向中央部より上方には、高さ方向に所定の幅を有する下・前開口部22b及び上・前開口部22cが形成されている。これらの前開口部22b,22cは、高さ方向において後開口部21bと重ならないように配置されている。より詳細には、前開口部22b,22cのうちの下方に形成されている下・前開口部22bの下縁は、後開口部21bの上縁よりも上方に位置している。2つの前開口部22b,22cには土埃等の異物の侵入を抑え、風の流れの方向を決めるため、ルーバが設けられている。また、2つの前開口部22b,22cは、それらのほぼ全体が、高さ方向においてコンデンサ29と重なっている。
【0042】
なお、図2及び図3に示すように、前外装ドア22の内部には、上部旋回体3を構成する車体フレームの一部や他の構成部材で仕切られた空間Rが形成されている。この空間Rには、配管を介してエンジン15に連結されたエアクリーナ33が配置されている。
【0043】
以上のような外装ドア21,22の各開口部21b,22b,22cと冷却ファン17によって、図2及び図6に示すように、2つのエア流路A1,A2が形成されている。第1エア流路A1は、後外装ドア21の後開口部21bからハイブリッドラジエータ28を通過し、さらにラジエータ25及びオイルクーラ26のほぼ下半分の領域を通過して冷却ファン17に至る流路である。また、第2エア流路A2は、前外装ドア22の2つの前開口部22b,22cからエアクリーナ33以外の領域を介してコンデンサ29を通過し、さらにラジエータ25及びオイルクーラ26のほぼ上半分の領域を通過して冷却ファン17に至る流路である。
【0044】
[外装ドア及びコンデンサの取付構造]
図7に示すように、上部旋回体3を構成する旋回フレーム35は、ベースフレーム36と、ベースフレーム36から上方に延びる第1〜第3縦フレーム37,38,39と、を有している。3つの縦フレーム37,38,39の下端はベースフレーム36に固定されている。
【0045】
後外装ドア21はもっとも後方に配置された第1縦フレーム37に支持され、前外装ドア22はもっとも前方に配置された第3縦フレーム39に支持されている。より詳細には、後外装ドア21の後方側部がヒンジを介して第1縦フレーム37に開閉自在に取り付けられている。また、後外装ドア21の前方側部に設けられたフック(図示せず)が第2縦フレーム38に設けられた係止部に係止可能になっている。前外装ドア22は、前方側部がヒンジを介して第3縦フレーム39に開閉自在に取り付けられている。また、前外装ドア22の後方側部に設けられたフック(図示せず)が第2縦フレーム38に設けられた係止部に係止可能になっている。
【0046】
また、コンデンサ29は、右側の側部が第2縦フレーム38の内側に固定されている。
【0047】
[エアの流れ]
冷却ファン17の回転によって、車両外部のエアは後外装ドア21及び前外装ドア22のそれぞれの開口部21b,22b,22cを介して車両内部に取り込まれる。
【0048】
後外装ドア21の後開口部21bを通過したエアは、図2及び図6の矢印A1で示すように、車両内部に取り込まれる。この第1エア流路A1を流れるエアによって、主にハイブリッドラジエータ28の冷媒が冷却される。そして、ハイブリッドラジエータ28を通過したエアによって、ラジエータ25及びオイルクーラ26のほぼ下半分を流れる冷媒が冷却される。
【0049】
一方、前外装ドア22の上下の前開口部22b,22cを通過したエアは、図2及ぶ図6の矢印A2で示すように、一部はエアクリーナ33に取り込まれ、それ以外のエアはコンデンサ29に供給される。この第2エア流路A2を流れるエアによって、まずコンデンサ29の冷媒が冷却される。コンデンサ29を通過したエアは、コンデンサ29が傾斜して配置されていることにより、後方に流れるとともに、斜め上方に向かってアフタクーラ27側に流れる。このエアによって、アフタクーラ27の冷媒が冷却される。また、同様に、コンデンサ29を通過したエア及びアフタクーラ27を通過したエアによって、ラジエータ25及びオイルクーラ26のほぼ上半分を流れる冷媒が冷却される。
【0050】
ここで、後開口部21bと上下の前開口部22b,22cとは、高さ方向で重ならない位置に形成されているので、第1エア流路A1を流れるエアと第2エア流路A2を流れるエアとが干渉しにくい。このため、コンデンサ29を流れるエアの量が相対的に減ってしまうのを抑えることができる。また、アフタクーラ27、ラジエータ25及びオイルクーラ26をエアがスムーズに流れることになり、効率良く冷却を行うことができる。
【0051】
[特徴]
(1)後外装ドア21の後開口部21bから取り込まれたエアが、ハイブリッドラジエータ28を通過し、その後ラジエータ25及びオイルクーラ26の下半分を通過するように流れる。また、前外装ドア22の上下の前開口部22b,22cから取り込まれたエアが、コンデンサ29及びアフタクーラ27を通過し、ラジエータ25及びオイルクーラ26の上半分を通過するように流れる。すなわち、後外装ドア21及び前外装ドア22のそれぞれの開口部21b,22b,22cから取り込まれたエアは、互いに干渉することなく、それぞれ別の冷却装置あるいは同じ冷却装置の別の領域を冷却する。このため、良好な冷却効率で各冷却装置の冷媒が冷却される。
【0052】
特に、後開口部21bと上下の前開口部22b,22cとは高さ方向で重ならないように配置されているので、各開口部21b,22b,22cから取り込まれたエアの干渉をより少なくすることができる。
【0053】
(2)後開口部21bのほぼ全体が、高さ方向でハイブリッドラジエータ28と重なるように配置され、また上下の前開口部22b,22cの全体が、高さ方向でコンデンサ29と重なるように配置されている。このため、ハイブリッドラジエータ28及びコンデンサ29に効率良くエアを導くことができる。
【0054】
(3)コンデンサ29は上部が下部に比べて前方に位置するように配置され、コンデンサ29を通過したエアは後方斜め上方に導かれる。このため、コンデンサ29を通過したエアは効率良くアフタクーラ27に導かれる。また、コンデンサ29を通過したエアとハイブリッドラジエータ28を通過したエアとが互いに干渉するのを、より抑えることができる。
【0055】
(4)コンデンサ29は、前外装ドア22を挟む2つの縦フレーム38,39の一方に支持されている。このため、コンデンサ29を前外装ドア22に形成された開口部22b,22cに近接させることができ、コンデンサ29に対して効率良くエアが供給される。
【0056】
(5)前外装ドア22の内部に空間が形成され、この内部空間にエアクリーナ33が配置されるとともに、コンデンサ29が配置されている。このため、エアクリーナ33に取り込まれるエア以外のエアを、コンデンサ29に確実に供給できる。
【0057】
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0058】
(a)前記実施形態では、冷却ユニットを車両の右側部に配置したが、冷却ユニットの配置は前記実施形態に限定されない。
【0059】
(b)後開口部及び前開口部の位置は前記実施形態に限定されない。例えば、ハイブリッドラジエータを上部に配置し、コンデンサを下部に配置して、後開口部を上方に形成し、前開口部を下方に形成しても良い。
【0060】
(c)前記実施形態では、後開口部と上下の前開口部とが高さ方向で重ならないように配置したが、一部が重なるように配置しても良い。
【0061】
(d)前記実施形態では、外装部材として外装ドアを例にとって説明したが、他の外装部材においても、本発明を同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 油圧ショベル
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 作業機
15 エンジン
17 冷却ファン
20 冷却ユニット
21 後外装ドア
22 前外装ドア
25 ラジエータ
26 オイルクーラ
27 アフタクーラ
28 ハイブリッドラジエータ
29 コンデンサ
37〜39 第1〜第3縦フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回自在に支持され、駆動源、作業機、及び冷却ファンを有する上部旋回体と、
前記冷却ファンによって形成されるエア流路の途中に配置された冷却ユニットと、
車体前後方向に配置されるとともに前記上部旋回体に支持され、前記冷却ユニットを覆う第1外装部材及び第2外装部材と、
を備え、
前記冷却ユニットは、
前記第1外装部材に対向して配置された第1冷却装置と、
前記第1冷却装置の前記第2外装部材側の側方において前記第1冷却装置の配置された方向と交差する方向に、かつ前記第2外装部材と前記冷却ファンとの間のエア流路の途中に配置された第2冷却装置と、を含み、
前記第1外装部材は前記第1冷却装置と高さ方向で重なる部分に第1開口部を有し、
前記第2外装部材は前記第2冷却装置と高さ方向で重なる部分に第2開口部を有し、
前記第1開口部及び前記第2開口部は、一方の開口部の上縁が他方の開口部の上縁より高く、前記一方の開口部の下縁が前記他方の開口部の下縁より高く形成されている、
油圧ショベル。
【請求項2】
前記第1冷却装置は、エア流入面が前記第1外装部材の第1開口部と対向するように配置され、
前記第2冷却装置は、エア流入面が前記第2外装部材の第2開口部と実質的に直交するように配置されている、
請求項1に記載の油圧ショベル。
【請求項3】
前記第1冷却装置と前記冷却ファンとの間に、前記第1冷却装置と平行に配置された第3冷却装置をさらに備えた、請求項1又は2に記載の油圧ショベル。
【請求項4】
前記第1外装部材の第1開口部と前記第2外装部材の第2開口部のうちの上方に配置された一方の開口部の下縁は、下方に配置された他方の開口部の上縁よりも上方に位置している、請求項1から3のいずれかに記載の油圧ショベル。
【請求項5】
前記第1冷却装置と前記第2冷却装置は高さ方向でずれた位置に配置されており、
前記第2冷却装置は、上部が下部に比べて前方に位置するように傾斜して配置されている、
請求項1から4のいずれかに記載の油圧ショベル。
【請求項6】
前記上部旋回体は、車両側方に縦方向に配置された第1縦フレームと、前記第1縦フレームの車両前方側に配置された第2縦フレームと、前記第2縦フレームの車両前方側に配置された第3縦フレームと、を含み、
前記第1外装部材は前記第1縦フレームと前記第2縦フレームとの間に配置され、
前記第2外装部材は前記第2縦フレームと前記第3縦フレームとの間に配置され、
前記第2冷却装置は、一方の側部が前記第2縦フレームに支持されている、
請求項1から5のいずれかに記載の油圧ショベル。
【請求項7】
前記第2縦フレームと前記第3縦フレームとの間の前記第2外装部材によって覆われた内部空間に配置され、前記駆動源に連結されたエアクリーナをさらに備え、
前記第2外装部材の第2開口部からのエアが、前記エアクリーナに吸入される、
請求項6に記載の油圧ショベル。
【請求項8】
前記第1冷却装置は電装品を冷却するためのラジエータであり、
前記第2冷却装置は空調機用のコンデンサである、
請求項1から7のいずれかに記載の油圧ショベル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−2170(P2013−2170A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135231(P2011−135231)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】