説明

油圧モータユニット及び塵芥収集車

【課題】簡素な構成で逆転方向の制動機能を油圧モータに付加する。
【解決手段】モータ部Mと、モータ部に駆動圧油を供給するためにモータ部を途上に有し両端に外部との接続口11a,11bがそれぞれ形成された駆動油路12a,12bとを備え、前記接続口のうちいずれか一方を上位側として、駆動油路に上位への圧油を止める(パイロット)チェック弁13を備える油圧モータユニットである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧モータユニットの逆転方向の制動に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧モータは広範な用途に用いられている。例えば図5に示すように、回転式のコンベアパネル2及び揺動式のラムパネル3を有した塵芥収集車1にあっては、このコンベアパネル2を回転駆動するために、油圧モータ4が用いられている。特許文献1〜4には、ブレーキが設けられた油圧モータが適用された塵芥収集車が記載されている。
油圧モータにブレーキ機構を設けた従来の技術では、塵芥の押返し等によりコンベアパネル2に負荷がかかったとき、ブレーキ機構でモータを制動すると、制動力が強く油圧モータ4とコンベアパネル2との間を伝動するチェーン5に負担が掛かり、まれにチェーン5が損傷を受けることがある。
ブレーキ機構を油圧モータに一体に組み込む場合には、油圧モータユニットの重量及び駆動軸方向の寸法が増大する。そのため、塵芥投入箱6の内壁7からの油圧モータユニットが大きく突出するとともに油圧モータユニットの重量が増しているがため、ブレーキ機構を持たない油圧駆動モータと比べた場合に、取付強度、取付部分の耐久性などを高レベルに確保する必要がある。さらにカウンターバランス弁も油圧モータユニットに付随させる必要がある。
【特許文献1】特開2001−247204号公報
【特許文献2】特開2002−128206号公報
【特許文献3】特開2003−63606号公報
【特許文献4】特開2004−107037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以上のように従来の油圧モータ及びブレーキ機構を含めた回転駆動機構にあっては、部品点数増等により複雑化し、整備性が良好でなく、大型化、重量増が招かれ、制動力が強く伝動部材に高い機械的強度が求められるという問題がある。
【0004】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、簡素な構成で逆転方向の制動機能を油圧モータに付加することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するための請求項1記載の発明は、モータ部と、
前記モータ部に駆動圧油を供給するために前記モータ部を途上に有し両端に外部との接続口がそれぞれ形成された駆動油路とを備え、
前記接続口のうちいずれか一方を上位側として、
駆動油路に上位への圧油を止めるチェック弁を備える油圧モータユニットである。
【0006】
請求項2記載の発明は、前記チェック弁は、パイロット式チェック弁であり、該パイロット式チェック弁を解除操作するパイロット油路が前記モータ部より下位の前記駆動油路に接続されてなる請求項1記載の油圧モータユニットである。
【0007】
請求項3記載の発明は、前記モータ部を跳び越して前記モータ部より上位の前記駆動油路と前記モータ部より下位の前記駆動油路とを繋ぐ短絡油路と、
前記短絡油路に設けられ、下位への圧油を止めるカウンターチェック弁と、
前記短絡油路に設けられ、前記カウンターチェック弁より下位に設けられた絞りと、
一端が前記カウンターチェック弁と前記絞りとの間の前記短絡油路に接続され、他端にドレンとの接続口が形成されたドレン接続用油路とを備える請求項1又は請求項2に記載の油圧モータユニットである。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項1、請求項2又は請求項3に記載の油圧モータユニットと、
回転により塵芥を掻き込むラムパネルとを備え、
上位からの圧油による前記モータ部の回転により塵芥を掻き込む方向に前記ラムパネルを駆動するように構成された塵芥収集車である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来の基本的な油圧モータに対して、駆動油路に上位への圧油を止めるチェック弁を備えるという簡素な構成により逆転方向の制動機能が付加するされる。外力によりモータが逆回転するときに生じる駆動油路中の上位への圧油をこのチェック弁により止めるとともに油によるダンパー効果によって逆転を緩やかに制動することができる。
したがって本発明によれば、ディスクブレーキ等のブレーキ機構による場合に比較して、油圧モータユニットが小型、簡素、軽量で、伝動部材に高い機械的強度が求められない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明の一実施形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。
【0011】
図1は、本実施形態に係る油圧モータユニットの油圧回路図(a)及び右側面図(b)である。図2は、本実施形態に係る油圧モータユニットの正面図(a)、平面図(b)及び左側面図(c)である。
【0012】
本実施形態の油圧モータユニット10は、モータ部Mとマニブロック11とを一体に構成したユニットである。
油圧モータユニット10は、モータ部Mに駆動圧油を供給するためにモータ部Mを途上に有し両端に外部との接続口11a,11bがそれぞれ形成された駆動油路12a,12bを備える。モータ部Mより上位の駆動油路を12bとし、モータ部Mより下位の駆動油路を12aとする。また、油圧モータユニット10は、駆動油路12bに上位への圧油を止めるパイロットチェック弁13を備える。
パイロット式チェック弁13を解除操作するパイロット油路14がモータ部Mより下位の駆動油路12aに接続されている。
さらに、油圧モータユニット10は、モータ部Mを跳び越してモータ部Mより上位の駆動油路12bとモータ部Mより下位の駆動油路12bとを繋ぐ短絡油路15を備える。
短絡油路15にカウンターチェック弁16が設けられる。カウンターチェック弁16は、下位への圧油を止める。
また、短絡油路15に絞り17が設けられる。絞り17は、カウンターチェック弁16より下位に設けられている。
ドレン接続用油路18は、一端がカウンターチェック弁16と絞り17との間の短絡油路15に接続され、他端にドレンとのドレン接続口19が形成されている。
図2に示すように、マニブロック11に、2つの接続口11a,11bと、パイロットチェック弁13が設けられている。
【0013】
本油圧モータユニット10が、図5に示した塵芥収集車の油圧モータ4に代えて適用される。接続口11a,11bが周知のようにソレノイド弁(図示せず)を介して切り替え可能にポンプ(図示せず)に接続される。ドレン接続口19は油タンクに管路を介して接続される。
【0014】
〔正転駆動〕ソレノイド弁により上位接続口11bにポンプが接続され、矢印F1で示すように圧油が上位接続口11bからモータ部Mに入力され、矢印F2で示すように圧油がモータ部Mから下位接続口11aに出力されるとき、モータ部Mは矢印F3で示すように正転する。このとき、パイロットチェック弁13では上位接続口11bからモータ部M側への圧油は通過し、短絡路15ではカウンターチェック弁16により下位への圧油は止められる。
【0015】
〔逆転駆動〕ソレノイド弁により下位接続口11aにポンプが接続され、矢印R2で示すように一定圧以上の圧油が下位接続口11aからモータ部Mに入力されると、パイロット油路14を介してパイロットチェック弁13に解除圧が入力され、パイロットチェック弁13が解除される。したがって、矢印R1で示すように圧油がモータ部Mから上位接続口11bに出力される。このとき、パイロットチェック弁13ではモータ部Mから上位接続口11b側への圧油は通過し、短絡路15では絞り17により下位への圧油は絞られ、モータ部Mへの負荷が一定以下の場合にモータ部Mが逆転する。
【0016】
〔正転負荷時〕モータ部Mの駆動軸20に正転方向に一定以上の外力を負荷すると、絞り17での油の通過量に応じてモータ部Mは正転する。
【0017】
〔逆転負荷時〕モータ部Mの駆動軸20に逆転方向に外力を負荷すると、モータ部Mから上位の駆動油路12bに圧油が生じるが、この圧油はパイロットチェック弁13及びカウンターチェック弁16により止められるので、わずかな回転を許して駆動軸20の逆転は阻止される。
【0018】
以下に、本油圧モータユニット10を塵芥収集車のラムパネル駆動用に使用する形態につき説明する。図5に示した従来の油圧モータ4に替えて油圧モータユニット10を装備する。図3に動作図を示す。
【0019】
図3(a1)に示すように、本油圧モータユニット10が正転駆動されるとき、ラムパネル2は、図3(a2)に示すように塵芥を掻き込む方向A、すなわちラムパネルにとっての正転方向Aに回転駆動される。
【0020】
図3(b1)に示すように、本油圧モータユニット10が逆転駆動されるとき、ラムパネル2は、図3(b2)に示すように塵芥を逆転方向Bに回転駆動される。
【0021】
図3(c1) (c2)に示すように、塵芥収容箱8に収容された塵芥9の反発力によりラムパネル2が逆転方向Bに押されると、上記逆転負荷時の作用によって、わずかな回転Cを許してラムパネル2の逆転は阻止される。
【0022】
以上の実施形態に拘わらず、パイロットチェック弁13は図4(a)や(b)に示す位置でも同様に動作できる。
また、逆転駆動しない場合は、パイロットチェック弁13を解除操作不能なチェック弁としてよい。
また、正転方向の外力負荷に対し従動回転させない場合は、短絡油路15、カウンターチェック弁16、絞り17、ドレン接続用油路18及びドレン接続口19は不要である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る油圧モータユニットの油圧回路図(a)及び右側面図(b)である。
【図2】本発明の一実施形態に係る油圧モータユニットの正面図(a)、平面図(b)及び左側面図(c)である。
【図3】本発明の一実施形態に係る油圧モータユニット及び塵芥収集車の動作図である。
【図4】他の形態に係る油圧モータユニットの油圧回路図である。
【図5】従来例の塵芥収集車の斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
2 ラムパネル
10 油圧モータユニット
M モータ部
13 パイロットチェック弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ部と、
前記モータ部に駆動圧油を供給するために前記モータ部を途上に有し両端に外部との接続口がそれぞれ形成された駆動油路とを備え、
前記接続口のうちいずれか一方を上位側として、
駆動油路に上位への圧油を止めるチェック弁を備える油圧モータユニット。
【請求項2】
前記チェック弁は、パイロット式チェック弁であり、該パイロット式チェック弁を解除操作するパイロット油路が前記モータ部より下位の前記駆動油路に接続されてなる請求項1記載の油圧モータユニット。
【請求項3】
前記モータ部を跳び越して前記モータ部より上位の前記駆動油路と前記モータ部より下位の前記駆動油路とを繋ぐ短絡油路と、
前記短絡油路に設けられ、下位への圧油を止めるカウンターチェック弁と、
前記短絡油路に設けられ、前記カウンターチェック弁より下位に設けられた絞りと、
一端が前記カウンターチェック弁と前記絞りとの間の前記短絡油路に接続され、他端にドレンとの接続口が形成されたドレン接続用油路とを備える請求項1又は請求項2に記載の油圧モータユニット。
【請求項4】
請求項1、請求項2又は請求項3に記載の油圧モータユニットと、
回転により塵芥を掻き込むラムパネルとを備え、
上位からの圧油による前記モータ部の回転により塵芥を掻き込む方向に前記ラムパネルを駆動するように構成された塵芥収集車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−285314(P2008−285314A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−134387(P2007−134387)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】