説明

油圧作業機

【課題】 単純な操作により、油圧作業機の横方向の安定性を確保する。
【解決手段】昇降シリンダ140、170、拡縮シリンダ136、138、166、168の制御は、制御バルブ530、540、550、560によって行われる。制御バルブ530は、昇降シリンダ、拡縮シリンダの伸縮、停止を制御し得る。制御バルブ540は、後側の昇降シリンダ170、拡縮シリンダ166、168の制御の可否を設定し、制御バルブ550は、前側の拡縮シリンダ136、138の制御の可否を設定し、制御バルブ560は、後側の拡縮シリンダ166、168の制御の可否を設定し得る。すなわち、前方のブレード130のみを使用するか、前後のブレード130、160両者を使用するかを、制御バルブ540によって選択できる。制御バルブ550が開のときは、ブレード130の降下と同時に、拡幅部材132、134が拡幅し、制御バルブ560が開のときは、ブレード160の降下と同時に、拡幅部材162、164が拡幅する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレードを備えた油圧作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等、解体作業や建設作業を行う油圧作業機には、安定性確保のためにブレードが設けられることがある。しかし、標準仕様のブレードは、主に前方の作業を想定して設計されており、横方向や後方の作業においては安定性が不充分となる可能性がある。特に、屋内解体機等、アタッチメントが大重量となる油圧作業機では安定性への配慮が重要である。
【0003】
そこで、特許文献1記載の油圧ショベルでは、前後のブレードを設けて前方のみならず後方の安定性を確保している。
【0004】
一方、特許文献2記載の掘削作業機では、ブレードを拡幅して横方向の安定性を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−26579号公報
【特許文献2】特開平9−189046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の油圧ショベルは、横方向の安定性を高めることができず、特許文献2の掘削作業機は、ブレードに関して上下動の他に、拡幅、縮退の操作が必要になり、操作が煩雑である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る油圧作業機は、走行体上に旋回可能に搭載された旋回体と、前記走行体に設けられた昇降可能なブレードと、前記ブレードに拡幅可能に装着された拡幅部材と、前記ブレードを昇降させる昇降油圧シリンダと、前記拡幅部材を拡縮する拡縮油圧シリンダと、前記昇降油圧シリンダおよび前記拡縮油圧シリンダに同期して圧油を供給する制御回路とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、単純な操作により、ブレードの昇降と拡縮を同期して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による油圧作業機の第1の実施の形態のブレード縮退状態を示す側面図。
【図2】図1の平面図。
【図3】図1の油圧作業機がブレードの拡幅状態を示す平面図。
【図4】ブレード拡縮機構を示す平面図であり、(a)が拡張した状態を示し、(b)が縮退した状態を示す。
【図5】図1の油圧作業機の制御系を示す油圧回路図。
【図6】本発明による油圧作業機の第2の実施の形態における要部を示す斜視図。
【図7】図6のブレードを拡幅した状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明による油圧作業機の実施の形態を添付図面に従って詳細に説明する。
−第1の実施の形態−
図1〜図5は、本発明による油圧作業機の第1の実施の形態であるクロ−ラ式油圧ショベルを示す。
【0011】
図1〜図4に示すように、クロ−ラ式油圧ショベルは、走行体100と、走行体100に旋回可能に搭載された旋回体110とを有する。旋回体110には運転室112、作業用フロントアタッチメント120が設けられ、走行体100の前後には、それぞれ昇降シリンダ140で昇降されるブレード130と昇降シリンダ170で昇降されるブレード160が設けられている。
【0012】
図2に示すように、ブレード130の両端部には拡幅部材132、134が装着され、ブレード160の両端部には拡幅部材162、164が装着されている。拡幅部材132、134は、それぞれ、鉛直方向に延在する支軸150、152によって、水平揺動自在に支持され、拡幅部材162、164は、それぞれ、鉛直方向に延在する支軸180、182によって、水平揺動自在に支持されている。
【0013】
拡幅部材132、134には、ブレード130の排土面130Fに対応した排土面132F、134Fが形成されており、拡幅部材132、134は、排土面130F、132F、134Fが面一となる拡幅状態と、拡幅部材132、134がブレード130の裏側に収納される縮退状態とになるように、揺動可能である。
【0014】
拡幅部材162、164には、ブレード160の排土面160Fに対応した排土面162F、164Fが形成されており、拡幅部材162、164は、排土面160F、162F、164Fが面一となる拡幅状態と、拡幅部材162、164がブレード160の裏側に収納される縮退状態とになるように、揺動可能である。
【0015】
図2、図4では、拡幅部材132、134、162、164が縮退状態から拡幅状態に移行する揺動を矢印Aで示し、図2では拡幅状態を破線で示す。
【0016】
図2に示すように、ブレード130の裏側には、拡縮シリンダ136、138が設けられ、拡縮シリンダ136、138は、それぞれ拡幅部材132、134に連結されている。
図2および図4を参照すると、拡縮シリンダ136は、一端部が、ピン146によって拡幅部材132に枢着され、他端部が、ピン142によって、ブレード130裏側のブラケット154に枢着されている。一方、図2を参照すると、拡縮シリンダ138は、一端部が、ピン148によって拡幅部材134に枢着され、他端部が、ピン144によって、ブラケット154に枢着されている。
【0017】
図2に示すように、ブレード160の裏側には、拡縮シリンダ166、168が設けられ、拡縮シリンダ166、168は、それぞれ拡幅部材162、164に連結されている。拡縮シリンダ166は、一端部が、ピン176によって拡幅部材162に枢着され、他端部が、ピン172によって、ブレード160裏側のブラケット184に枢着されている。拡縮シリンダ168は、一端部が、ピン178によって拡幅部材164に枢着され、他端部が、ピン174によって、ブラケット184に枢着されている。
【0018】
拡縮シリンダ136、138を伸長することによって、拡幅部材132、134は、それぞれ拡幅状態となり、ブレード130を拡幅することによって、ブレード130が接地したときに走行体100前部における横方向の安定性を確保し得る。拡縮シリンダ166、168を伸長することによって、拡幅部材162、164は、それぞれ拡幅状態となり、ブレード160を拡幅することによって、ブレード130が接地したときには走行体100後部における横方向の安定性を確保し得る。さらに、拡幅によって排土作業等における排土面を拡張し、作業効率を高めることができる。
【0019】
拡縮シリンダ136、138を縮退することによって、拡幅部材132、134は、それぞれ縮退状態となり、ブレード130を通常サイズに戻す。拡縮シリンダ166、168を縮退することによって、拡幅部材162、164は、それぞれ縮退状態となり、ブレード160を通常サイズに戻す。
【0020】
図5に示す制御系において、昇降シリンダ140、170、拡縮シリンダ136、138、166、168には、エンジン510によって駆動される可変容量ポンプ520から圧油が送給され、その制御は、運転室112または運転室112の外部において、制御バルブ530、540、550、560を切替操作することによって行われる。
【0021】
可変容量ポンプ520は制御バルブ530の入力側に接続され、制御バルブ530の出力側には、昇降シリンダ140が接続されるとともに、制御バルブ540、550の入力側が接続されている。制御バルブ550の出力側には、拡縮シリンダ136、138が並列接続されている。制御バルブ540の出力側には、昇降シリンダ170が接続されるとともに、制御バルブ560の入力側が接続されている。制御バルブ560の出力側には、拡縮シリンダ166、168が並列接続されている。
【0022】
制御バルブ530は手動操作可能であり、昇降シリンダ140、170、拡縮シリンダ136、138、166、168の伸縮、停止を制御し得る。制御バルブ540は手動操作可能であり、後側の昇降シリンダ170、拡縮シリンダ166、168の制御の可否を設定し得る。制御バルブ550は手動操作可能であり、前側の拡縮シリンダ136、138の制御の可否を設定し得る。制御バルブ560は手動操作可能であり、後側の拡縮シリンダ166、168の制御の可否を設定し得る。
【0023】
制御バルブ530の入力側には、送給ポート530Sにチェック弁532が設けられ、送給された圧油を保持する。可変容量ポンプ520にはリリーフ弁534が接続され、リリーフ弁534は、制御バルブ530入力側の戻りポート530Rとタンク536とを接続する管路に接続されている。リリーフ弁534は、所定圧以上の圧油をタンク536に排出することによって、管路の上限圧力を規制し、サーボ系の損傷を防止している。
【0024】
このように構成されたブレード装置の動作について説明する。
制御バルブ540を閉とすると、前方のブレード130のみの操作が可能となる。すなわち、制御バルブ530により、前方の昇降シリンダ140、拡縮シリンダ136、138のみを制御し得る。操作部材により制御バルブ550を開位置に切換えた状態で制御バルブ530をD位置に操作すると、前方の昇降シリンダ140が伸長して前側ブレード130が下降して作業姿勢となる。制御バルブ530をU位置に操作すると、前方の昇降シリンダ140が縮退して前側ブレード130が収納姿勢となる。
【0025】
前側ブレード130を降下する際、制御バルブ550が開であれば、拡縮シリンダ136、138も同時に拡幅する。前側ブレード130を上昇する際、制御バルブ550が開であれば、拡縮シリンダ136、138も同時に収縮する。すなわち、制御バルブ550が開であれば、拡幅部材132、134の拡縮操作が前側ブレード130の昇降と同期して行われる。制御バルブ550が閉であれば、拡幅部材132、134は拡縮操作することができない。
このように、制御バルブ550が開であれば、排土作業やジャッキアップのためにブレード130を降下すると、同時にブレード130が拡幅される。
【0026】
制御バルブ540を開とすると、前方のブレード130の操作とともに、後方のブレード160の操作も可能となる。すなわち、制御バルブ550と560が閉の状態で制御バルブ530をD位置に操作すると、前方の昇降シリンダ140と後方の昇降シリンダ170が伸長して前側ブレード130と後側ブレード160が作業姿勢となる。制御バルブ530をU位置に操作すると、前方の昇降シリンダ140と後方の昇降シリンダ170が縮退して前側ブレード130と後側ブレード160が収納姿勢となる。
【0027】
前側ブレード130と後側ブレード160を降下する際、制御バルブ550,560が開であれば、拡縮部材132および134も同時に拡幅する。前側ブレード130と後側ブレード160を上昇する際、制御バルブ560が開であれば、拡縮部材132、134および162、164も同時に縮退する。すなわち、制御バルブ550と560が開であれば拡幅部材132,134および162、164の拡縮操作が可能であり、制御バルブ560が閉であれば拡幅部材132,134および162、164は拡縮操作することができない。このように、制御バルブ550と560が開であれば、排土作業やジャッキアップのためにブレード130と160を降下すると、同時にブレード130と160が拡幅される。
【0028】
第1の実施の形態による油圧作業機によれば次のような効果を奏することができる。
(1)制御バルブ550を開としておけば、ブレード130の降下と同時に、拡幅部材132、134による拡幅が行われるので、拡幅のための別段の操作は不要である。
すなわち、単純な操作により、ブレード130を拡縮することができ、クローラ式油圧ショベルの横方向の安定性を確保し得る。
【0029】
(2)制御バルブ540,550を開としておけば、ブレード130の降下と同時に、ブレード160が降下し、かつ、拡幅部材162、164による拡幅が行われるので、後側ブレード160のための別段の操作は不要であり、さらに、その拡幅のための別段の操作も不要である。すなわち、単純な操作により、前後のブレード130と160の昇降と拡縮を行うことができ、クローラ式油圧ショベル前後の横方向の安定性を確保し得る。
【0030】
(3)制御弁540により、後側ブレード160を前側ブレード130に同期して昇降するか、前側ブレード130のみを単独で昇降するかを切り替えることができるので、作業に応じて適切に前側ブレード130のみ、前後のブレード130、160の双方を操作するかを簡単に使い分けることができる。
【0031】
(4)拡幅部材132,134および162、164が枢支されているので、摺動部分が存在せず、耐久性に優れ、動作は円滑である。
−第2の実施の形態−
【0032】
次に、本発明の第2の実施の形態を図6、図7を参照して詳細に説明する。図中、第1の実施の形態と同一もしくは相当部分には同一符号を付し、説明を省略する。第2の実施の形態は、拡幅部材600をブレード130、160に沿って摺動可能としたものである。
【0033】
図6、図7は前方のブレード130における、一方の拡幅部材600を代表的に示す。ブレード130の他端部の拡幅部材、後方のブレード160の両端部の拡幅部材は、拡幅部材600と同様に構成されているので、説明を省略する。
【0034】
拡幅部材600は、ブレード130の側方外形形状と同一の側方外形形状を有し、ブレード130の排土面130F(図2、図3参照)と同一平面上の排土面600Fが形成されている。ブレード130の両端部には、その側面外形形状よりも小さい矩形筒状のガイド部610が形成され、拡幅部材600は、ガイド部610に、摺動可能かつ回転不能に嵌装されている。
【0035】
ブレード130の裏側には、拡縮シリンダ136が設けられ、拡縮シリンダ136は拡幅部材600に連結されている。拡縮シリンダ136は、一端部が、ピン614によって拡幅部材600に枢着され、他端部が、ピン616によってブラケット154に枢着されている。
【0036】
第2の実施の形態において、昇降シリンダおよび拡縮シリンダの制御のための制御回路は第1の実施の形態と同様である。
【0037】
拡縮シリンダ136、138を伸長することによって、拡幅部材600および反対側の拡幅部材は拡幅状態となり、ブレード130を拡幅することによって、走行体100前部における横方向の安定性を確保し得る。同様に、ブレード160側の同様の拡幅部材を拡幅状態とすると、ブレード160を拡幅でき、走行体100後部における横方向の安定性を確保し得る。
【0038】
第2の実施の形態による油圧作業機によれば、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができるととともに、拡幅部材600が水平方向に摺動するので、ブレード130裏側等の、拡幅部材600の収容スペースが不要となる。
【0039】
以上説明した油圧作業機は次のように変形して実施することができる。
(1)油圧作業機の前後にブレード130,160を設けたが、前側あるいは後側の一方側だけに拡縮式ブレードを設けてもよい。
(2)前側ブレードあるいは後側ブレードのみ拡縮式にしてもよい。
【0040】
(3)制御バルブ550,560を設け、前側ブレード130と後側ブレード160の昇降動作時にブレード拡縮を連動させる操作と、連動させない操作を選択可能としたが、制御バルブ550,560を省略して、ブレーキ昇降動作に常に連動してブレードが拡縮するように構成しても良い。
【0041】
(4)前側ブレード130を優先して駆動するようにしたが、後側ブレード160を優先して駆動するようにしてもよい。
(5)拡幅部材の構成は以上説明した実施の形態や変形例に限定されるものではなく、拡縮動作が可能な任意の構成を採用し得る。
(6)以上では、クロ−ラ式油圧ショベルを例に挙げて説明したが、ホイール式油圧ショベルにも本発明を適用でき、またホイールローダ、トラッククレーン等の種々の油圧作業機、その他の産業車両に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
100 走行体
110 旋回体
130、160 ブレード
132、134、162、164、600 拡幅部材
140、170 昇降シリンダ
136、138、166、168 拡縮シリンダ
530、540、550、560 制御バルブ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体と、
走行体上に旋回可能に搭載された旋回体と、
前記走行体に設けられた昇降可能なブレードと、
前記ブレードに拡幅可能に装着された拡幅部材と、
前記ブレードを昇降させる昇降油圧シリンダと、
前記拡幅部材を拡縮する拡縮油圧シリンダと、
前記昇降油圧シリンダおよび前記拡縮油圧シリンダに同期して圧油を供給する制御回路と、
を備えることを特徴とする油圧作業機。
【請求項2】
請求項1記載の油圧作業機において、
前記制御回路は、前記拡縮油圧シリンダへの圧油供給を阻止する制御弁を備えることを特徴とする油圧作業機。
【請求項3】
請求項1または2記載の油圧作業機において、
前記ブレードは、前記走行体の前後に、それぞれ設けられていることを特徴とする油圧作業機。
【請求項4】
請求項3記載の油圧作業機において、
前記制御回路は、前記走行体の前後にそれぞれ設けた前側ブレードおよび後側ブレードを同期して昇降するか、それぞれ単独で昇降するかを切り替える制御弁を備えることを特徴とする油圧作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−38263(P2011−38263A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184261(P2009−184261)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】