説明

油圧駆動装置

【課題】エネルギー効率の低下を抑えて複数の油圧アクチュエータに油を確実に分岐供給すること。
【解決手段】油圧ポンプ10からそれぞれ個別の方向切換弁20A,20Bを介して油圧シリンダアクチュエータAC,BCに油を分岐供給するようにした油圧駆動装置において、それぞれの油圧シリンダアクチュエータAC,BCに至る分岐油通路2,3において方向切換弁20A,20Bの上流側に油圧ポンプモータ30A,30Bを配設するとともに、油圧ポンプモータ30A,30Bに電動モータジェネレータ40A,40Bを接続し、さらに、電動モータジェネレータ40A,40Bのトルクを制御することにより、油圧シリンダアクチュエータAC,BCの負荷圧力に一致するように分岐油通路2,3を昇圧または減圧するコントローラ70を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧駆動装置に関するもので、詳しくは、共通の油圧ポンプから複数の油圧アクチュエータに油を分岐供給してそれぞれを駆動するようにした油圧駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の油圧アクチュエータに対して共通の油圧ポンプから油を分岐供給する場合には、それぞれの油圧アクチュエータに接続された分岐油通路に圧力補償弁を配設するようにしている。圧力補償弁は、それぞれの油圧アクチュエータの負荷圧力に応じて動作し、個々の油圧アクチュエータに至る分岐油通路を最高負荷圧力により絞るものである。
【0003】
従って、分岐油通路に圧力補償弁を設けた油圧駆動装置によれば、複数の油圧アクチュエータの負荷が互いに異なる場合にも低負荷圧力側の油圧アクチュエータにのみ油が供給される事態を防止してそれぞれに所望の圧力の油を供給することができ、複数の油圧アクチュエータを同時に動作させることが可能になる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平4−19409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のように圧力補償弁を適用した油圧駆動装置にあっては、低負荷圧力側の分岐油通路に配設した圧力補償弁において常に圧力損失が発生することになり、エネルギー効率を考慮した場合、必ずしも好ましいとはいえない。尚、油圧ポンプの供給エネルギーは、(油の吐出流量)×(油の吐出圧力)であり、上述の圧力損失をΔPとすると、エネルギーロスは、(油の通過流量)×ΔPで表されたものとなる。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みて、エネルギー効率の低下を抑えて複数の油圧アクチュエータに油を確実に分岐供給することのできる油圧駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に係る油圧駆動装置は、共通の油圧ポンプから個別の方向切換弁を介して複数の油圧アクチュエータに油を分岐供給するようにした油圧駆動装置において、それぞれの油圧アクチュエータに至る分岐油通路において方向切換弁の上流側に配置した油圧モータと、各油圧モータに接続した電動モータジェネレータと、前記電動モータジェネレータを制御することにより、油圧アクチュエータへの流量の制御を行うコントローラとを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2に係る油圧駆動装置は、上述した請求項1において、それぞれの方向切換弁の下流側となる部位に配設し、油圧アクチュエータの負荷圧力を検出する第1圧力センサと、それぞれの油圧モータの下流側となる部位に配設し、油圧モータの吐出圧力を検出する第2圧力センサとをさらに備え、前記コントローラは、それぞれの分岐油通路において第1圧力センサの検出した圧力と第2圧力センサの検出した圧力との差圧が互いに一致するように電動モータジェネレータの制御を行うことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項3に係る油圧駆動装置は、上述した請求項1において、それぞれの方向切換弁に対して個別に設けられ、レバー変位に応じて方向切換弁を動作させる操作レバーをさらに備え、前記コントローラは、操作レバーのレバー変位に応じて電動モータジェネレータを制御することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項4に係る油圧駆動装置は、上述した請求項1〜3のいずれか一つにおいて、電動モータジェネレータが発電動作した場合に蓄電を行う蓄電装置をさらに備え、前記コントローラは、蓄電装置の蓄電量に応じて油圧ポンプの吐出圧力を制御することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項5に係る油圧駆動装置は、上述した請求項1〜3のいずれか一つにおいて、複数の油圧アクチュエータに対してそれぞれの負荷圧力を個別に検出する第1圧力センサを備え、前記コントローラは、油圧ポンプの吐出圧力がこれら第1圧力センサの検出した負荷圧力の最大値と最小値との範囲内となるように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低負荷圧力側の分岐油通路に配設した電動モータジェネレータを制御することによって、複数の油圧アクチュエータに対して所望圧力の油を供給することができる。このことによって、すべての流量を昇圧するシステムに対してアクチュエータの必要流量分だけ昇圧するため、システムのエネルギー効率に優れている。しかも油圧モータにより電動モータジェネレータを駆動することによって電気エネルギーを回収することができるため、エネルギー効率が低下する事態を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る油圧駆動装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1である油圧駆動装置の油圧回路図を示したものである。ここで例示する油圧駆動装置は、例えばブーム用油圧シリンダアクチュエータ(油圧アクチュエータ)BC及びアーム用油圧シリンダアクチュエータ(油圧アクチュエータ)ACを備え、これらの油圧シリンダアクチュエータBC,ACに対して共通の油圧ポンプ10から油の供給制御を行うことにより所望の作業を行うようにした建設機械に適用されるものである。
【0015】
油圧ポンプ10は、建設機械に搭載されたエンジン11によって駆動される可変容量型のもので、容量制御ユニット12を備えている。容量制御ユニット12は、油圧ポンプ10の斜板を駆動するポンプ容量制御シリンダ12aと、ポンプ容量制御シリンダ12aに対する油の供給制御を行うポンプ容量制御バルブ12bとを備えて構成したものである。この容量制御ユニット12では、後述するコントローラ70から圧力指令信号が与えられると、ポンプ容量制御バルブ12bが適宜動作してポンプ容量制御シリンダ12aに油が供給されることになり、圧力指令信号に応じて油圧ポンプ10の容量を変更することで圧力を設定変更することが可能となる。
【0016】
油圧ポンプ10の吐出口に接続された主油通路1は、ブーム用油圧シリンダアクチュエータBC及びアーム用油圧シリンダアクチュエータACに油を分岐供給すべくブーム用分岐油通路2及びアーム用分岐油通路3に2分岐している。これら分岐油通路2,3には、それぞれ方向切換弁20B,20A及び油圧ポンプモータ(油圧モータ)30B,30Aが設けてある。
【0017】
ブーム用分岐油通路2に設けた方向切換弁(以下、「ブーム用切換弁20B」という)は、図示せぬブーム用操作レバーが操作された場合に2つのアクチュエータポートPa,Pbに対して供給ポートPcとドレンポートPdとを切換接続するものである。具体的に説明すると、ブーム用切換弁20Bは、中立位置にある場合、2つのアクチュエータポートPa,Pb、供給ポートPc、ドレンポートPdをそれぞれ閉鎖した状態に維持する。
【0018】
この状態からブーム用操作レバー(図示せず)を適宜操作して図1に示す第1位置となると、ブーム用切換弁20Bは、供給ポートPcとブーム用油圧シリンダアクチュエータBCのボトム側油室BCaに通じる第1アクチュエータポートPbとを接続する一方、ブーム用油圧シリンダアクチュエータBCのヘッド側油室BCbに通じる第2アクチュエータポートPaとドレンポートPdとを接続する。
【0019】
これに対してブーム用操作レバー(図示せず)を逆方向に操作して第2位置となると、ブーム用切換弁20Bは、供給ポートPcと第2アクチュエータポートPaとを接続する一方、第1アクチュエータポートPbとドレンポートPdとを接続する。ブーム用切換弁20Bの供給ポートPcにはブーム用分岐油通路2が接続してあり、ドレンポートPdには油タンクTに至るドレン通路4が接続してある。
【0020】
同様に、アーム用分岐油通路3に設けた方向切換弁(以下、「アーム用切換弁20A」という)は、図示せぬアーム用操作レバーが操作された場合に2つのアクチュエータポートPa,Pbに対して供給ポートPcとドレンポートPdとを切換接続するものである。具体的に説明すると、アーム用切換弁20Aは、中立位置にある場合、2つのアクチュエータポートPa,Pb、供給ポートPc、ドレンポートPdをそれぞれ閉鎖した状態に維持する。
【0021】
この状態からアーム用操作レバー(図示せず)を適宜操作して図1に示す第1位置となると、アーム用切換弁20Aは、供給ポートPcとアーム用油圧シリンダアクチュエータACのボトム側油室ACaに通じる第1アクチュエータポートPbとが接続される一方、アーム用油圧シリンダアクチュエータACのヘッド側油室ACbに通じる第2アクチュエータポートPaとドレンポートPdとが接続される。
【0022】
これに対してアーム用操作レバー(図示せず)を逆方向に操作して第2位置となると、アーム用切換弁20Aは、供給ポートPcと第2アクチュエータポートPaとが接続される一方、第1アクチュエータポートPbとドレンポートPdとが接続されることになる。アーム用切換弁20Aの供給ポートPcにはアーム用分岐油通路3が接続してあり、ドレンポートPdには油タンクTに至るドレン通路4が接続してある。
【0023】
油圧ポンプモータ30B,30Aは、個々の入出力軸30aに電動モータジェネレータ40B,40Aを連結したもので、それぞれの分岐油通路2,3において切換弁20B,20Aよりも上流側となる部位に配設してある。それぞれの油圧ポンプモータ30B,30Aは、分岐油通路2,3に油が供給された場合に油により駆動され、モータ動作することにより電動モータジェネレータ40B,40Aを発電動作させる。一方、電動モータジェネレータ40B,40Aが電動動作した場合、油圧ポンプモータ30B,30Aは、ポンプ動作して分岐油通路2,3からの油を供給ポートPcに流通させる機能を有している。尚、以下においては、ブーム用分岐油通路2に設けた油圧ポンプモータをブーム用油圧ポンプモータ30Bと称し、アーム用分岐油通路3に設けた油圧ポンプモータをアーム用油圧ポンプモータ30Aと称して両者を区別する場合がある。同様に、ブーム用油圧ポンプモータ30Bに連結した電動モータジェネレータをブーム用電動モータジェネレータ40Bと称し、アーム用油圧ポンプモータ30Aに連結した電動モータジェネレータをアーム用電動モータジェネレータ40Aと称して両者を区別する場合がある。
【0024】
個々の電動モータジェネレータ40B,40Aには、それぞれ個別のインバータ50を介して共通の蓄電装置60が接続してある。この蓄電装置60は、電動モータジェネレータ40B,40Aが発電動作した場合に蓄電を行う一方、電動モータジェネレータ40B,40Aを電動動作させる際には電源となるものである。
【0025】
尚、図1中の符号13は、主油通路1において油圧ポンプ10の吐出口と分岐油通路2,3の分岐点との間に接続したリリーフ弁である。このリリーフ弁13は、常時閉状態を維持する一方、主油通路1の油圧が後述するコントローラ70によって設定されたリリーフ圧力を超えた場合に主油通路1の油をリリーフするように構成してある。
【0026】
さらに、上記油圧駆動装置には、コントローラ70が設けてある。コントローラ70は、それぞれの油圧シリンダアクチュエータBC,ACの負荷圧力及び蓄電装置60の蓄電量を検出し、これらの検出結果に基づいて油圧ポンプ10の容量制御、リリーフ弁13のリリーフ圧制御、インバータ50を介した電動モータジェネレータ40B,40Aの動作制御を行うものである。
【0027】
以下、ブーム用油圧シリンダアクチュエータBC及びアーム用油圧シリンダアクチュエータACをそれぞれ伸張動作させる際の動作を例示しながら、上述したコントローラ70の具体的な制御内容について詳述する。尚、初期状態においては、ブーム用切換弁20B及びアーム用切換弁20Aのそれぞれが中立位置にあり、油圧ポンプモータ30B,30Aが停止した状態にあるものとする。この初期状態からブーム用切換弁20B及びアーム用切換弁20Aの少なくとも一方が第1位置もしくは第2位置となった場合には、ブーム用操作レバー(図示せず)もしくはアーム用操作レバー(図示せず)からのレバー信号を検出したコントローラ70によって対応する油圧ポンプモータ30B,30Aが駆動される。
【0028】
図1に示すように、ブーム用操作レバー(図示せず)の操作によってブーム用切換弁20Bが第1位置となり、かつアーム用操作レバー(図示せず)の操作によってアーム用切換弁20Aが第1位置となると、油圧ポンプ10から主油通路1に吐出された油がそれぞれの分岐油通路2,3に分岐され、それぞれの油圧ポンプモータ30B,30A及び切換弁20B,20Aを介して油圧シリンダアクチュエータBC,ACのボトム側油室BCa,ACaに供給されることになる。
【0029】
この間、コントローラ70は、分岐油通路3,2において各油圧シリンダアクチュエータBC,ACのボトム側油室BCa,ACaと第1アクチュエータポートPbとの間の油路LBa,LAaに介在させた第1圧力センサS1の検出結果からそれぞれの油圧シリンダアクチュエータBC,ACの負荷圧力を検出する。これと同時にコントローラ70は、各分岐油通路2,3において切換弁20B,20Aと油圧ポンプモータ30B,30Aとの間の油通路に介在させた第2圧力センサS2の検出結果が、つまり油圧ポンプモータ30B,30Aの吐出圧力が、常に負荷圧力に対して予め設定した差圧値だけ高い圧力となるように電動モータジェネレータ40B,40Aの動作制御を行う。これにより、切換弁20B,20Aの前後差圧がすべての切換弁20B,20Aでほぼ一致することになり、切換弁20B,20Aの開口面積に比例した流量に制御される。さらにコントローラ70は、蓄電装置60の蓄電量に応じてポンプ目標吐出圧力及びリリーフ圧力を設定し、主油通路1に介在させた第3圧力センサS3の検出結果がこのポンプ目標吐出圧力となるように容量制御ユニット12のポンプ容量制御バルブ12bに圧力指令信号を与えるとともに、リリーフ弁13がリリーフ圧力となるように制御信号を出力する。コントローラ70が設定するリリーフ圧力は、ポンプ目標吐出圧力よりも高い圧力である。
【0030】
いま、ブーム用油圧シリンダアクチュエータBCの負荷圧力が100kg/cm、アーム用油圧シリンダアクチュエータACの負荷圧力が200kg/cmであり、かつ上述した差圧値として20kg/cmが設定されているものとすると、コントローラ70は、ブーム用分岐油通路2においては第2圧力センサS2の検出する油圧が120kg/cmとなるようにブーム用電動モータジェネレータ40Bの動作制御を行うとともに、アーム用分岐油通路3においては第2圧力センサS2の検出する油圧が220kg/cmとなるようにアーム用電動モータジェネレータ40Aの動作制御を行う。
【0031】
ここで、蓄電装置60の蓄電量が充分であったとすると、コントローラ70は、低負荷圧力側となるブーム用油圧シリンダアクチュエータBCの負荷圧力と最高負荷圧力側となるアーム用油圧シリンダアクチュエータACの負荷圧力との間の中間の負荷圧力、例えば170kg/cmを油圧ポンプ10のポンプ目標吐出圧力として設定し、これより高い圧力、例えば180kg/cmをリリーフ弁13のリリーフ圧力として設定する。
【0032】
この結果、ブーム用分岐油通路2においては、第2圧力センサS2での油圧が120kg/cmとなるまでブーム用油圧ポンプモータ30Bに油を通過させないようにブーム用電動モータジェネレータ40Bがトルク制御されることになり、低負荷圧力側となるブーム用油圧シリンダアクチュエータBCにのみ油が供給される事態を防止することができるようになる。しかも、ブーム用分岐油通路2においては、油圧が170kg/cmから120kg/cmに降下(減圧)するため、ブーム用油圧ポンプモータ30Bに油が供給された場合にこれがモータ動作し、ブーム用電動モータジェネレータ40Bが発電動作することになる。これにより、油圧ポンプ10の駆動エネルギーを電気エネルギーとして回収することができ、エネルギー効率が低下する事態を防止することができる。
【0033】
一方、アーム用分岐油通路3においては、アーム用油圧ポンプモータ30Aにおいて油圧を170kg/cmから220kg/cmに昇圧する必要があるため、アーム用電動モータジェネレータ40Aが電動動作するようにこれを動作制御し、アーム用油圧ポンプモータ30Aをポンプ動作させることになる。従って、ブーム用分岐油通路2におけるブーム用電動モータジェネレータ40Bの発電電力量に対して、アーム用分岐油通路3におけるアーム用電動モータジェネレータ40Aの消費電力量が大きい場合には、蓄電装置60の蓄電量が減少傾向となる。
【0034】
この場合、コントローラ70は、油圧ポンプ10のポンプ目標吐出圧力を現在の設定値よりも大きくなるように変更する。例えば、先と同様に、ブーム用油圧シリンダアクチュエータBCの負荷圧力が100kg/cm、アーム用油圧シリンダアクチュエータACの負荷圧力が200kg/cmであり、かつ差圧値として20kg/cmが設定されているものとすると、油圧ポンプ10のポンプ目標吐出圧力を170kg/cmから190kg/cmへ上昇させ、かつリリーフ圧力を200kg/cmへ上昇させれば、ブーム用油圧ポンプモータ30Bに連結したブーム用電動モータジェネレータ40Bの発電電力量が増大する一方、アーム用油圧ポンプモータ30Aに連結したアーム用電動モータジェネレータ40Aの消費電力量が減少する。この結果、蓄電装置60の蓄電量が増加傾向に転じ、蓄電装置60の蓄電量を維持することができるようになる。
【0035】
図2は、こうしたコントローラ70による電動モータジェネレータ40B,40Aの動作を示すブロック線図である。すなわち、コントローラ70は、油圧ポンプ10の吐出圧力に対して分岐油通路2,3における第2圧力センサS2での目標圧力が小さい場合、油圧ポンプモータ30B,30Aにより電動モータジェネレータ40B,40Aを発電機として駆動する一方、油圧ポンプ10の吐出圧力に対して分岐油通路2,3における第2圧力センサS2での目標圧力が大きい場合、電動モータジェネレータ40B,40Aを電動機として駆動することにより油圧ポンプモータ30B,30Aを駆動する。
【0036】
従って、例えば、油圧ポンプ10のポンプ目標吐出圧力を、最高負荷圧力となるアーム用油圧シリンダアクチュエータACの負荷圧力+予め設定した差圧値だけ高い圧力に一致させると、アーム用油圧ポンプモータ30Aに連結したアーム用電動モータジェネレータ40Aでの消費電力量がゼロとなり、蓄電装置60を常に蓄電状態とすることもできる。尚、油圧駆動装置においてアーム用油圧シリンダアクチュエータACの負荷圧力が最高負荷圧力となった場合に油圧ポンプ10のポンプ目標吐出圧力をアーム用油圧シリンダアクチュエータACの負荷圧力+予め設定した差圧値だけ高い圧力に一致させるように制御を行う場合には、アーム用油圧ポンプモータ30Aを省略することが可能である。
【0037】
尚、上述した実施の形態1では、容量制御ユニット12を備えた可変容量型の油圧ポンプ10を適用しているが、固定容量型の油圧ポンプを適用することも可能である。この場合、上述したリリーフ弁13によって油圧ポンプの吐出圧力を調整することができる。
【0038】
また、上述した実施の形態1では、主油通路1に第3圧力センサS3を配設しているため、油圧駆動装置の制御を精度良く行うことが可能となるが、第3圧力センサS3は必ずしも設ける必要はなく、油圧ポンプ10の斜板もしくはリリーフ弁13がコントローラ70からの制御信号に応じて動作すれば良い。
【0039】
さらに、上述した実施の形態1では、ポンプ目標吐出圧力として、最高負荷圧力と最低負荷圧力との間に設定しているため、分岐油通路2,3を効率良く昇圧させたり減圧させたりできるが、必ずしもこれらの設定に限定されない。例えば、蓄電装置60の蓄電量を勘案して全ての油圧ポンプモータ30B,30Aが昇圧、もしくは減圧するようにポンプ目標吐出圧力を設定しても良いのはもちろんである。
【0040】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2である油圧駆動装置の油圧回路図を示したものである。ここで例示する油圧駆動装置は、例えばブーム用油圧シリンダアクチュエータ(油圧アクチュエータ)BC及びアーム用油圧シリンダアクチュエータ(油圧アクチュエータ)ACを備え、これらの油圧シリンダアクチュエータBC,ACに対して共通の油圧ポンプ10から油の供給制御を行うことにより所望の作業を行うようにした建設機械に適用されるものである。
【0041】
油圧ポンプ10は、建設機械に搭載されたエンジン11によって駆動される可変容量型のもので、容量制御ユニット12を備えている。容量制御ユニット12は、油圧ポンプ10の斜板を駆動するポンプ容量制御シリンダ12aと、ポンプ容量制御シリンダ12aに対する油の供給制御を行うポンプ容量制御バルブ12bとを備えて構成したものである。この容量制御ユニット12では、後述するコントローラ80から圧力指令信号が与えられると、ポンプ容量制御バルブ12bが適宜動作してポンプ容量制御シリンダ12aに油が供給されることになり、圧力指令信号に応じて油圧ポンプ10の容量を変更することで圧力を設定変更することが可能となる。
【0042】
油圧ポンプ10の吐出口に接続された主油通路1は、ブーム用油圧シリンダアクチュエータBC及びアーム用油圧シリンダアクチュエータACに油を分岐供給すべくブーム用分岐油通路2及びアーム用分岐油通路3に2分岐している。これら分岐油通路2,3には、それぞれ方向切換弁20B,20A及び油圧ポンプモータ(油圧モータ)30B,30Aが設けてある。
【0043】
ブーム用分岐油通路2に設けた方向切換弁(以下、「ブーム用切換弁20B」という)は、ブーム用操作レバーBSが操作された場合にブーム用操作弁BSVから出力される操作パイロット圧によって動作し、2つのアクチュエータポートPa,Pbに対して供給ポートPcとドレンポートPdとを切換接続するものである。具体的に説明すると、ブーム用切換弁20Bは、中立位置にある場合、2つのアクチュエータポートPa,Pb、供給ポートPc、ドレンポートPdをそれぞれ閉鎖した状態に維持する。
【0044】
この状態からブーム用操作レバーBSを操作して図3に示す第1位置となると、ブーム用切換弁20Bは、供給ポートPcとブーム用油圧シリンダアクチュエータBCのボトム側油室BCaに通じる第1アクチュエータポートPbとを接続する一方、ブーム用油圧シリンダアクチュエータBCのヘッド側油室BCbに通じる第2アクチュエータポートPaとドレンポートPdとを接続する。
【0045】
これに対してブーム用操作レバーBSを逆方向に操作して第2位置となると、ブーム用切換弁20Bは、供給ポートPcと第2アクチュエータポートPaとを接続する一方、第1アクチュエータポートPbとドレンポートPdとを接続する。ブーム用切換弁20Bの供給ポートPcにはブーム用分岐油通路2が接続してあり、ドレンポートPdには油タンクTに至るドレン通路4が接続してある。
【0046】
同様に、アーム用分岐油通路3に設けた方向切換弁(以下、「アーム用切換弁20A」という)は、アーム用操作レバーASが操作された場合にアーム用操作弁ASVから出力される操作パイロット圧によって動作し、2つのアクチュエータポートPa,Pbに対して供給ポートPcとドレンポートPdとを切換接続するものである。具体的に説明すると、アーム用切換弁20Aは、中立位置にある場合、2つのアクチュエータポートPa,Pb、供給ポートPc、ドレンポートPdをそれぞれ閉鎖した状態に維持する。
【0047】
この状態からアーム用操作レバーASを操作して図3に示す第1位置となると、アーム用切換弁20Aは、供給ポートPcとアーム用油圧シリンダアクチュエータACのボトム側油室ACaに通じる第1アクチュエータポートPbとが接続される一方、アーム用油圧シリンダアクチュエータACのヘッド側油室ACbに通じる第2アクチュエータポートPaとドレンポートPdとが接続される。
【0048】
これに対してアーム用操作レバーASを逆方向に操作して第2位置となると、アーム用切換弁20Aは、供給ポートPcと第2アクチュエータポートPaとが接続される一方、第1アクチュエータポートPbとドレンポートPdとが接続されることになる。アーム用切換弁20Aの供給ポートPcにはアーム用分岐油通路3が接続してあり、ドレンポートPdには油タンクTに至るドレン通路4が接続してある。
【0049】
油圧ポンプモータ30B,30Aは、個々の入出力軸30aに電動モータジェネレータ40B,40Aを連結したもので、それぞれの分岐油通路2,3において切換弁20B,20Aよりも上流側となる部位に配設してある。それぞれの油圧ポンプモータ30B,30Aは、分岐油通路2,3に油が供給された場合に油により駆動され、モータ動作することにより電動モータジェネレータ40B,40Aを発電動作させる。一方、電動モータジェネレータ40B,40Aが電動動作した場合、油圧ポンプモータ30B,30Aは、ポンプ動作して分岐油通路2,3からの油を供給ポートPcに流通させる機能を有している。尚、以下においては、ブーム用分岐油通路2に設けた油圧ポンプモータをブーム用油圧ポンプモータ30Bと称し、アーム用分岐油通路3に設けた油圧ポンプモータをアーム用油圧ポンプモータ30Aと称して両者を区別する場合がある。同様に、ブーム用油圧ポンプモータ30Bに連結した電動モータジェネレータをブーム用電動モータジェネレータ40Bと称し、アーム用油圧ポンプモータ30Aに連結した電動モータジェネレータをアーム用電動モータジェネレータ40Aと称して両者を区別する場合がある。
【0050】
個々の電動モータジェネレータ40B,40Aには、それぞれ個別のインバータ50を介して共通の蓄電装置60が接続してある。この蓄電装置60は、電動モータジェネレータ40B,40Aが発電動作した場合に蓄電を行う一方、電動モータジェネレータ40B,40Aを電動動作させる際には電源となるものである。
【0051】
尚、図3中の符号13は、主油通路1において油圧ポンプ10の吐出口と分岐油通路2,3の分岐点との間に接続したリリーフ弁である。このリリーフ弁13は、常時閉状態を維持する一方、主油通路1の油圧が後述するコントローラ80によって設定されたリリーフ圧力を超えた場合に主油通路1の油をリリーフするように構成してある。
【0052】
さらに、上記油圧駆動装置には、コントローラ80が設けてある。コントローラ80は、それぞれの油圧シリンダアクチュエータBC,ACの負荷圧力及び蓄電装置60の蓄電量を検出し、これらの検出結果並びにブーム用操作レバーBS及びアーム用操作レバーASのレバー変位に基づいて油圧ポンプ10の容量制御、リリーフ弁13のリリーフ圧制御、インバータ50を介した電動モータジェネレータ40B,40Aの動作制御を行うものである。
【0053】
以下、ブーム用油圧シリンダアクチュエータBC及びアーム用油圧シリンダアクチュエータACをそれぞれ伸張動作させる際の動作を例示しながら、上述したコントローラ80の具体的な制御内容について詳述する。尚、初期状態においては、ブーム用切換弁20B及びアーム用切換弁20Aのそれぞれが中立位置にあり、油圧ポンプモータ30B,30Aが停止した状態にあるものとする。
【0054】
図3に示すように、ブーム用操作レバーBSの操作によってブーム用切換弁20Bが第1位置となり、かつアーム用操作レバーASの操作によってアーム用切換弁20Aが第1位置となると、油圧ポンプ10から主油通路1に吐出された油がそれぞれの分岐油通路2,3に分岐され、それぞれの油圧ポンプモータ30B,30A及び切換弁20B,20Aを介して油圧シリンダアクチュエータBC,ACのボトム側油室BCa,ACaに供給されることになる。
【0055】
この間、コントローラ80は、図4に示すように、ブーム用操作レバーBSのレバー変位及びアーム用操作レバーASのレバー変位を読み取り、それぞれのレバー変位からブーム用油圧シリンダアクチュエータBCの目標流量及びアーム用油圧シリンダアクチュエータACの目標流量を算出する。次いで、コントローラ80は、算出した目標流量から油圧ポンプモータ30B,30Aの目標回転数を設定し、油圧ポンプモータ30B,30Aの回転数がこの目標回転数となるように電動モータジェネレータ40B,40Aの動作制御を行う。
【0056】
この間、コントローラ80は、分岐油通路3,2において各油圧シリンダアクチュエータBC,ACのボトム側油室BCa,ACaと第1アクチュエータポートPbとの間の油路LBa,LAaに介在させた第1圧力センサS1の検出結果からそれぞれの油圧シリンダアクチュエータBC,ACの負荷圧力を検出する。これと同時にコントローラ80は、蓄電装置60の蓄電量に応じてポンプ目標吐出圧力及びリリーフ圧力を設定し、主油通路1に介在させた第3圧力センサS3の検出結果がこのポンプ目標吐出圧力となるように容量制御ユニット12のポンプ容量制御バルブ12bに圧力指令信号を与えるとともに、リリーフ弁13がリリーフ圧力となるように制御信号を出力する。コントローラ80が設定するリリーフ圧力は、ポンプ目標吐出圧力よりも高い圧力である。
【0057】
いま、ブーム用油圧シリンダアクチュエータBCの負荷圧力が100kg/cm、アーム用油圧シリンダアクチュエータACの負荷圧力が200kg/cmであるものとする。ここで、蓄電装置60の蓄電量が充分であったとすると、コントローラ80は、例えば、ポンプ目標吐出圧力を170kg/cm、リリーフ圧力を180kg/cmに設定する。
【0058】
この結果、それぞれの油圧シリンダアクチュエータBC,ACに対しては、電動モータジェネレータ40B,40Aによって回転数が設定された油圧ポンプモータ30B,30Aの駆動によって油が供給されることになり、低負荷圧力側となるブーム用油圧シリンダアクチュエータBCにのみ油が供給される事態を防止することができるようになる。
【0059】
しかも、ブーム用分岐油通路2においては、油圧が170kg/cmから100kg/cmに降下(減圧)するため、ブーム用油圧ポンプモータ30Bに油が供給された場合にこれがモータ動作し、ブーム用電動モータジェネレータ40Bが油圧ポンプモータ30Bにより駆動されて発電動作することになる。これにより、油圧ポンプ10の駆動エネルギーを電気エネルギーとして回収することができ、エネルギー効率が低下する事態を防止することができる。
【0060】
一方、アーム用分岐油通路3においては、アーム用油圧ポンプモータ30Aにおいて油圧を170kg/cmから200kg/cmに昇圧する必要があるため、アーム用電動モータジェネレータ40Aが電動動作するようにこれを動作制御し、アーム用油圧ポンプモータ30Aをポンプ動作させることになる。従って、ブーム用分岐油通路2におけるブーム用電動モータジェネレータ40Bの発電電力量に対して、アーム用分岐油通路3におけるアーム用電動モータジェネレータ40Aの消費電力量が大きい場合には、蓄電装置60の蓄電量が減少傾向となる。
【0061】
この場合、コントローラ80は、ポンプ目標吐出圧力を高く設定し、エンジン11による投入馬力を増加させる。例えば、先と同様に、ブーム用油圧シリンダアクチュエータBCの負荷圧力が100kg/cm、アーム用油圧シリンダアクチュエータACの負荷圧力が200kg/cmであるものとすると、ポンプ目標吐出圧力を170kg/cmから190kg/cmへ上昇させ、かつリリーフ圧力を200kg/cmへ上昇させる。これにより、ブーム用油圧ポンプモータ30Bに連結したブーム用電動モータジェネレータ40Bの発電電力量が増大する一方、アーム用油圧ポンプモータ30Aに連結したアーム用電動モータジェネレータ40Aの消費電力量が減少する。この結果、蓄電装置60の蓄電量が増加傾向に転じ、蓄電装置60の蓄電量を維持することができるようになる。
【0062】
逆に、蓄電装置60の蓄電量が増えた場合にはポンプ目標吐出圧力を低く設定し、エンジン11の負荷を下げる。
【0063】
尚、上述した実施の形態2では、容量制御ユニット12を備えた可変容量型の油圧ポンプ10を適用しているが、固定容量型の油圧ポンプを適用することも可能である。この場合、上述したリリーフ弁13によって油圧ポンプの吐出圧力を調整することができる。
【0064】
また、上述した実施の形態2では、主油通路1に第3圧力センサS3を配設しているため、油圧駆動装置の制御を精度良く行うことが可能となるが、第3圧力センサS3は必ずしも設ける必要はなく、油圧ポンプ10の斜板もしくはリリーフ弁13がコントローラ80からの制御信号に応じて動作すれば良い。
【0065】
さらに、上述した実施の形態2では、ポンプ目標吐出圧力として、最高負荷圧力と最低負荷圧力との間に設定しているため、分岐油通路2,3を効率良く昇圧させたり減圧させたりできるが、必ずしもこれらの設定に限定されない。例えば、蓄電装置60の蓄電量を勘案して全ての油圧ポンプモータ30B,30Aが昇圧、もしくは減圧するようにポンプ目標吐出圧力を設定しても良いのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施の形態1である油圧駆動装置の油圧回路図である。
【図2】図1に示した油圧駆動装置のコントローラが実施する処理のブロック線図である。
【図3】本発明の実施の形態2である油圧駆動装置の油圧回路図である。
【図4】図3に示した油圧駆動装置のコントローラが実施する処理のブロック線図である。
【符号の説明】
【0067】
1 主油通路
2,3 分岐油通路
10 油圧ポンプ
20A,20B 方向切換弁
30A,30B 油圧ポンプモータ
40A,40B 電動モータジェネレータ
60 蓄電装置
70 コントローラ
80 コントローラ
AC,BC 油圧シリンダアクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通の油圧ポンプから個別の方向切換弁を介して複数の油圧アクチュエータに油を分岐供給するようにした油圧駆動装置において、
それぞれの油圧アクチュエータに至る分岐油通路において方向切換弁の上流側に配置した油圧モータと、
各油圧モータに接続した電動モータジェネレータと、
前記電動モータジェネレータを制御することにより、油圧アクチュエータへの流量の制御を行うコントローラと
を備えたことを特徴とする油圧駆動装置。
【請求項2】
それぞれの方向切換弁の下流側となる部位に配設し、油圧アクチュエータの負荷圧力を検出する第1圧力センサと、
それぞれの油圧モータの下流側となる部位に配設し、油圧モータの吐出圧力を検出する第2圧力センサと
をさらに備え、前記コントローラは、それぞれの分岐油通路において第1圧力センサの検出した圧力と第2圧力センサの検出した圧力との差圧が互いに一致するように電動モータジェネレータの制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の油圧駆動装置。
【請求項3】
それぞれの方向切換弁に対して個別に設けられ、レバー変位に応じて方向切換弁を動作させる操作レバーをさらに備え、
前記コントローラは、操作レバーのレバー変位に応じて電動モータジェネレータを制御することを特徴とする請求項1に記載の油圧駆動装置。
【請求項4】
電動モータジェネレータが発電動作した場合に蓄電を行う蓄電装置をさらに備え、
前記コントローラは、蓄電装置の蓄電量に応じて油圧ポンプの吐出圧力を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の油圧駆動装置。
【請求項5】
複数の油圧アクチュエータに対してそれぞれの負荷圧力を個別に検出する第1圧力センサを備え、
前記コントローラは、油圧ポンプの吐出圧力がこれら第1圧力センサの検出した負荷圧力の最大値と最小値との範囲内となるように制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の油圧駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−223371(P2010−223371A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72689(P2009−72689)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】