説明

油層流体の性質を特定するための孔内流体の分析方法及び装置

地層流体試料が、堅牢に支持された、シリコンゴム等の半透膜に曝され、該地層流体からガスと蒸気とを真空チャンバへと分散させ、同時に液体が半透膜を通過するのを阻止する。膜を透過したガスは、残渣ガス分析機によって真空チャンバ内で分析される。イオンポンプ又は吸着剤が真空チャンバに接続されており、真空を維持するようになっている。イオンポンプ又は吸着剤は、前記半透膜の反対側にある油井試料から真空チャンバに分散して入ったガス及び蒸気を真空チャンバから除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概略的には孔内油層の性質を特定することに関し、特に、地層流体試料から放散されるガスのリアルタイム特定のための方法及び装置に関する。地層流体試料が採取されると、気体はこれらの流体試料から半透膜を通って真空チャンバ内に放散される。ガスは、質量分析計又は残留ガス分析機(RGA)と、孔内油層流体試料中に存在する複数種のC〜C、HS、CO、N及び他のガス等のガス又は蒸気を同定又は区別するプロセッサとによって、真空容器内で分析される。
【背景技術】
【0002】
油やガスなどの炭化水素を得るためには、ドリルストリングの端部に取り付けられたドリルビットを回転させることによって地面に採掘孔を掘削する。最近の傾斜掘りシステムは、通常、ボトムホール・アセンブリ(BHA)と、ドリルモータ(マッド・モータ)によって回転される及び/又はドリルストリングを回転させることによって回転される、アセンブリの先端に取り付けられたドリルビットとを有するドリルストリングを採用している。ドリルビットの近傍に配置される多数の孔内装置は、ドリルストリングに関連する、所定のダウンホール操作パラメータを測定する。このような装置は、通常、孔内の温度と圧力とを測定するセンサ、方位と傾斜とを測定する装置、及び炭化水素と水との存在を検出する比抵抗測定装置を含んでいる。掘削中検層具(logging-while-drilling = LWD)として知られている他の孔内器具がドリルストリングに取り付けられて、掘削操作中に、地層の地質及び地層流体の状態を測定することもよくある。
【0003】
炭化水素産出地帯の商用開発は多額の資本を必要とする。産出地帯の開発を始める前に、操業者は炭化水素層の商業的な可能性を評価するために、炭化水素地層の性質に関して可能な限り多くのデータを得ようとする。MWDシステムとワイヤライン分析装置を用いた掘削中のデータ取得が進歩しているにも関わらず、追加的なデータを得るために炭化水素層の更なる検査を行う必要が生じることがよくある。したがって、炭化水素井が掘削された後に、ワイヤラインツールズ等の、地層をさらに分析してモニターするのに使用される他の試験機器で炭化水素領域が調査されることが多い。
【0004】
ある種の掘削後試験は、炭化水素層から流体を得て、圧力−体積−温度(PVT)の分析と共に、密度、粘度及び組成等の流体の性質を測定する地上の試験設備に輸送するために孔内でこのような流体試料をタンクに集めるということを含む。また、孔内の流体圧力は複数の深さ位置で測定することができ、この圧力勾配から流体の密度を計算することができる。
【0005】
孔内で抜き取られた流体試料は、通常、数週間から数ヶ月の後に地上の研究設備で分析され、流体中に存在する複数のガスが同定・定量される。孔内で流体試料を回収してガス量の分析のために地上の研究設備に送るのは時間のかかることである。さらに、地上での分析は、試料を試験するために、追加的な探査及び/又は生産活動を行う前に流体試料と器具とを孔内から取り出す必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、炭化水素地層のガスの検出、区別及び定量を孔内でリアルタイムに行う方法及び装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、地層流体試料に存在する、C〜C、HS、CO、N及び他のガス等のガス及び蒸気の検出、区別及び定量を孔内でリアルタイムに行う方法及び装置を提供する。本発明は、油を基材とする掘削泥水に関連する蒸気を検出して分析することができ、したがって、掘削泥水濾液によって試料の汚染程度(パーセント)のリアルタイムの評価を提供することができる。
【0008】
本発明は、液体は遮断するがある種のガスや蒸気は透過する半透膜に、孔内の高温高圧地層流体を曝す。この膜は、燒結金属フィルタなどの、堅牢であるが多孔質で透過性を有する構造体によって機械的に支持されており、この構造体は、いくつかの孔を有する金属板によってさらに支持されており、膜が真空と孔内圧力との圧力差に耐えられるようになっている。半透膜は、地層流体試料からのガスとある種の蒸気とを膜を介してこの半透膜に近接する真空チャンバへと分散させることのできる、シリコンゴム等の材料で作られている。
【0009】
この真空チャンバは、残渣ガス分析機(RGA)を有する気体分析室をなしている。RGAは、高真空システムで使用されることの多い機器のような、比較的解像度の低い質量分析計である。地層流体試料を孔内器具中で採取し、シリコンゴムのような半透膜で濾過し、該地層流体からのガスを真空チャンバ、即ち気体分析へと分散させる。ガスは地層流体から拡散して出て、気体分析室の真空部分に配置された残渣ガス分析機(RGA)で分析される。
【0010】
真空のガス分析室にはイオンポンプが接続されており、チャンバ内の真空状態を維持する。このイオンポンプは、半透膜フィルタの反対側の地層流体試料から真空チャンバへと拡散してきたガスを除去する。あるいは、イオンポンプの代わりに活性炭又は他の吸着剤を用いて、真空チャンバに拡散してきたガスが長時間に亘って残留し、次の試料から発生・拡散してきた次のガスの測定を妨害するのを防ぐこともできる。
【0011】
本発明の一面において、流体を質量分析計に曝し、該質量分析計からの反応を観察し、その反応から孔内流体の性質を評価する段階を有する、孔内で流体の性質を評価する方法が提供される。本発明の別の面において、前記反応は電荷対質量比の強度である。本発明のまた別の面において、前記反応はフラグメント化のパターンの一部分である。本発明の別の面において、前記方法は前記流体からガスを分離する段階をさらに有する。本発明のまた別の態様において、前記分離段階は、前記流体からガスを分散させる段階をさらに含む。本発明のさらに別の態様において、前記分散段階はガスの一部を透過させる半透膜を使用する。本発明のさらにまた別の態様において、前記分散は、ガスの分散のために、複数の膜から1つを選択する段階をさらに有する。本発明の別の態様において、前記複数の膜の各々は異なる厚さを有している。本発明のまた別の態様において、前記複数の膜は、異なるガスへの親和性を有する、異なる組成物である。
【0012】
本発明のまた別の態様において、前記流体と流体流通状態にある質量分析計と、前記質量分析計と通信状態にあると共に流体の性質を評価するプロセッサを有する、孔内で流体の性質を評価する装置が提供される。本発明の別の態様において、前記プロセッサは、流体のフラグメント化のパターンから流体の性質を評価する。本発明のまた別の態様において、プロセッサは、流体の原子量単位(AMU)から流体の性質を評価する。本発明のさらに別の態様において、前記装置は、前記流体に曝される分離器をさらに有する。本発明のさらにまた別の態様において、前記分離器は毛細管である。本発明の別の態様において、前記装置は、前記分離器内に配された膜と、該分離器及び前記質量分析計と通信状態にあるガス室とをさらに有する。本発明のまた別の態様において、前記膜は複数の膜を有している。本発明のさらに別の態様において、前記装置は、ガスの分散のために、前記複数の膜から少なくとも1つの膜を選択するための弁をさらに有している。本発明のさらにまた別の態様において、前記複数の膜の各々は、該複数の膜の他のものとは異なる厚さを有している。本発明の別の態様によると、前記複数の膜の各々は、該複数の膜の他のものとは、異なるガスに対する透過性を有する、異なる組成を有している。本発明のまた別の態様によると、前記ガスは蒸気を含む。
【0013】
本発明とその新規な特徴は、以下の記載と共に添付の図面から最もよく理解されるであろう。添付の図面において、同様の参照符号は同様の部品を意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、代表的な地層流体試料中に捕らえられている複数のガスの検出、分類、及び定量を、孔内で、リアルタイムに行う方法及び装置を提供する。地層流体試料に存在する、C〜C、HS、CO、N及び他のガス等のガス及び蒸気は、本発明によって定量される。本発明は、孔内の高温高圧地層流体をシリコンゴム等の半透膜に曝して、地層流体試料からのガスを、残渣ガス分析機(RGA)を含む真空チャンバへと分散させる。RGAは高真空システムと共に使用するために設計された、比較的低解像度の質量分析計である。これよりも解像度の高い質量分析計を使用することも可能である。RGAを選択したのは、その大きさが小さく、また、通常250〜300℃で「焼き上げられる」高真空システムで使用するように設計されているからである。したがって、多くのRGAセンサは、150℃迄は(非動作状態で)耐え、また、動作するように設計されており、さらに、RGA制御電子部品及びプロセッサが室温にあるという条件で、「焼き上げ」温度でも動作するように設計されていることも多い。本発明は、孔内温度にも耐えることのできる高温RGA電子制御回路を提供する。吸着剤冷却ユニットを、任意にRGA電子部品の近くに配して、RGA電子制御回路が高い孔内温度で耐えて動作することができるようにすることもできる。
【0015】
本発明は、地層流体試料のガス分を抽出して残渣ガス分析機(RGA)及びプロセッサにかけることによって、高温高圧炭化水素層流体を分析する。地層流体試料を採取して、シリコンゴム等の半透膜によって濾過し、地層流体試料からのガスを真空ガス分析チャンバに分散させる。分散したガスは、半透膜の反対側にある地層流体チャンバに対向する位置にある、真空のガス分析チャンバ中に配されている残渣ガス分析機(RGA)によって分析される。ガス分析チャンバ内を真空にしてそれを維持するのを助けるためにチャンバを最初に減圧して(粗排気)した後に、イオンポンプ(又は、別の態様としては、昇華若しくは他のポンプ)を真空のガス分析チャンバに接続する。イオンポンプは、粗排気されたチャンバから、半透膜フィルタの反対側にある地層流体試料から真空チャンバに分散した気体を除去する。
【0016】
AMUが近接する複数種のガスを区別するためには、本発明の現実施例において以下の処理を行う。第一の処理は、ガスを分析するRGAとプロセッサとが配置されている真空チャンバを排気することである。真空チャンバには、真空を維持するためのイオンポンプも設けられている。半透膜(シリコンゴム等)は真空チャンバへの入口に配置されており、液体が排気されたチャンバに入るのを防ぐのと同時にガスを真空チャンバ内に分散させる。次いで、その温度及び圧力で膜を通過する選択されたガスの分散速度、選択されたガスのフラグメント化パターン、及び選択されたガスに対するRGAの感度に対して、気体分析システムを較正する。
【0017】
ここで図1を参照すると、図1は地層100に掘削された採掘孔104内のワイヤライン102から展開された本発明の例を示している。伸長可能なプローブ101が地層100から流体を抜き取る。抜き取られた地層流体はフローライン105を通って流れ、そこで、本発明の気体分析チャンバ300が地層流体試料のガス含有量を測定する。地層流体試料を抜き出している間、安定脚103が器具50と伸長可能なプローブ103を所定の位置に保持する。RGAとプロセッサ102とによって行われる気体分析の結果はプロセッサ102が活用することもできるし、又はRGA分析の結果を地上51に送って地上のプロセッサ及び制御ユニット1000によって活用することもできる。
【0018】
次に図2を参照すると、ドリルストリング201から展開した場合の、本発明の他の例が示されている。フローパス105を通って本発明の気体分析チャンバ300に流体が入る間、複数のストラッドルパッカー203が器具50を所定の位置に保持する。この流体は、器具50と試錐孔104との間の環状部分105、又は地層100から得られる。流体は、本発明300によってなされる濃度測定の結果に基づいて、所望に従って、試料タンク111に廻すこともできるし、試錐孔の環状部分105に戻すこともできる。RGAガス分析の結果は、プロセッサ102によって活用することもできるし、該結果を地上51に送って地上のプロセッサ及び制御ユニット1000によって活用することもできる。
【0019】
図3を参照すると、同図には本発明のより詳細な構成が示されている。図3には、RGA質量分析計317、イオンポンプ319、半透膜300、流体収容チャンバ307、及びプロセッサ315が概略的な形態で示されている。プロセッサとRGA制御電子回路とをその動作及び/又は耐続温度範囲内に維持するために、吸着・冷却ユニット321が配設されている。前記地層流体収容チャンバ307は、半透膜309によって真空のガス分析チャンバ311から分離されている。このように、地層流体収容チャンバ307は半透膜309の一方の側に位置しており、真空のガス分析チャンバ311は半透膜309のもう一方の側に位置している。採取された地層流体試料に捕らわれている複数種のガスは半透膜を通って真空のガス分析チャンバ内に分散して行き、分析に供せられる。
【0020】
地層流体は地層100から抜き出され、フローライン107と弁301を介して流体収容チャンバ307に入る。半透膜の流体側にある地層流体から、ガスは、半透膜を通って真空チャンバ311へと分散する。気体分析モジュール装置、RGA317、及びプロセッサ/制御電子回路315が、真空のガス分析チャンバ311に配置されている。ガスは質量分析計(RGA)317とプロセッサ102とに供され、これらによって分析される。プロセッサ102とRGA電子回路とがRGA分析を制御して行う。プロセッサ102は、孔内通信の他の手段のワイヤラインを介して地上に分析結果を報告する。プロセッサ102は地上への報告を行うことなく、分析結果を活用することもできる。図4は、半透膜309、焼結金属フィルタ313、及び小さな孔を有すると共に孔の間の板面に溝を有する金属板314を示している。
【0021】
図5を見ると、同図には、本発明によって行われる処理の内のいくつかを説明する例が示されている。ブロック401に示されているように、本発明は地層から地層流体試料を採取する。地層流体は、地層と流体流通状態にあるフローラインを介して器具50に入る。ブロック403において、ガス分析モジュールチャンバが真空化される。ガス分析モジュールを真空化することによって、地層流体試料に捕らえられているガスが、半透膜を通って真空チャンバ内に分散することができる。ブロック405において、流体と真空チャンバとの間の半透膜によって、流体からのガスが半透膜を通って真空ガス分析チャンバ内へと分散する。ブロック407において、本発明の質量分析計(RGA)とプロセッサとが複数種のガスをモニターして、該複数種のガスを同定・定量してこれらを区別する。ブロック409において、イオンポンプがチャンバの真空側から分散したガスを除去して真空を維持する。
【0022】
ガスの分子はそれらの質量の相違、又はイオン化されたときに分子が分解したフラグメントの質量によって相互に区別することができる。原子量単位(AMU)で表現された、いくつかの一般的なガスのフラグメント化されていない質量は次の通り。H2(水素)AMU=2.02、He(ヘリウム_3)AMU=3.00、He4(ヘリウム_4)AMU=40.00、Ne(ネオン)20.18、Ar(アルゴン)AMU=39.95、Kr(クリプトン)AMU=83.80、Xe(キセノン)AMU=131.30、O2(酸素)AMU=32.00、N2(窒素)AMU=28.01、CO2(二酸化炭素)AMU=44.01、H2S(硫化水素)AMU=34.08、SO2(二酸化硫黄)AMU=64.06、CH4(メタン)AMU=16.04、C2H6(エタン)AMU=30.07、C3H8(プロパン)AMU=44.10、C4H10(ブタン)AMU=58.12、C5H12(ペンタン)AMU=72.15。質量分析計におけるイオン化の最中にこれら別個のガスから作られたフラグメントの質量間で干渉が起こることはあり得る。このような干渉は、マトリックス反転技法、化学測定法を用いるか、対応する質量フラグメントが一種のみのガス種又は蒸気種に由来することがわかっている質量チャンネルをモニターすることによって解消することができる。
【0023】
通常、残渣ガス分析機は最小1AMUの質量の相違しか分解することができない。結果として、RGAがプロパン(44.10)から二酸化炭素(44.01)を区別するのは困難である。本発明の現実施例においてこれら2種のガスを区別するために、本発明の方法及び装置はその「フラグメント化」(又は分解)パターンの相違を調べる。フラグメント化パターンとは、質量分析計内でのイオン化中に大きい分子がしばしば小さな分子へと分解する、そのパターンのことを意味する。このように、RGAとプロセッサとによって認識されるフラグメント化パターンに応じて、地層流体試料から分散するガスが検出されて定量される。
【0024】
適切な半透膜、残渣ガス分析機、及び真空ポンプは市販されており、本発明で使用するのに適したものについてここで検討する。さらに、シリコーン膜がそうであるように、多くの種類のガスを透過する代わりに、一種のガスを選択的に透過するように特に設計することができる。南ミシシッピ大学、ポリマー専門学部のサンドラ=ヤングは、彼女の研究内容説明書(http://www.psrc.usm.edu/mauritz/diffuse.html)において、次のように述べている。
「-C(CF3)2-基を含有する芳香族ポリイミドは、CH4と比べてCO2に高い嗜好性を持つ傾向にある。-C(CF3)2-基を導入することによって、鎖の堅さを増し、それによってセグメント間の可動性を低減させ、自由体積を増加させることによって鎖の密集(Chain packing)の程度を低減して制限し、ポリマーにおける分子スペーサ及び鎖硬化剤として機能する(Stern, S. A.によるJ. Membrane Sci., 1994, 94, 1-65、並びにKim, T. H.、Koros, W. J.、Husk, G. R.、及びO'Brien, K. C. によるJ. Membrane Sci., 1988, 37, 45-62)。
モンサント(Monsanto)がシリコンゴムの薄層で被覆された非対称の中空繊維をH分離に使用した1977年に始まり、長いこと、ポリスルホンは透過選択膜として使用されてきた。非対称酢酸セルロース膜は天然ガスからCO2とH2Sとを除去するのに使用される。CO2とH2Sとは酢酸セルロースへの高い溶解性を有し、これによって擬可塑化が誘発され、ポリマーが膨潤すると共にポリマーマトリックスが破裂し、これによってポリマー鎖の可動性が増加する。ゴム性のポリマーの分野において、現在研究されている唯一の系はポリ(オルガノシロキサン)である。ガス又は液体分離工程において、IPN形成のテンプレートとして使用することのできる予備形成膜としてポリジメチルシロキサン(PDMS)が莫大な実用性を有しているので、ポリ(オルガノシロキサン)は詳細に研究されてきた。PDMSは、その大きな自由体積故に、あらゆるポリマーの内で最も大きな透過係数を有しているものの1つであり、一方、その選択性は低くなっている。共重合によって、特定の分離の必要に適するように膜の性質を合わせられる可能性もある。膜を通過する気体や液体が変わりやすいので、分離工程に使用される材料の多孔率を制御することは必須である。ゾル−ゲル重合は多孔度が制御された無機材料開発用のネットワークの縮小を調節するために操作することができる。」
【0025】
国立標準技術研究所のジョン J.ペレグリノは、http://membranes.nist.gov/publication_abstracts/Pell Ko Nass_Eine.htmlにて次のように述べている。
「膜相に固定された化学的に反応性のあるキャリアを用いて、CO2とH2Sとは、相互に、また、H2、CO及びCH4などの非極性ガスから選択的に分離することができる。ポリペルフルオロスルホン酸(PFSA)から作られたイオン交換膜が、溶液とキャリアとの支持体として使用されるゲルを形成するように変性されてきた。この膜は、所望の化学的錯生成剤を含有する溶剤をその中へと吸収することのできる親水性の領域を有している。周囲条件下で行われた実験では、CO2対H2の選択率は、CO2の透過性が1000〜2000 barrerであるときに、20〜30である。H2SとH2との分離には、より高い選択性とH2S透過性とが得られる。我々の研究は、様々なアミンキャリアと極性溶媒とを用いた、周囲温度・周囲圧力でのこの膜の特徴付けを含む。この論文は、酸性ガス対H2及びCOに対する、酸性ガスの透過速度と選択性の要約を提示する。予備的な経済的評価によると、5〜1μmの厚さのPFSA塗膜を有する複合膜であれば、標準的なアミン吸着剤技術よりも資本経費が低くなる。」
【0026】
図6は、本発明で使用するのに適した代表的な半透膜を通過する何種類かのガスに対する表形式の一覧と仕様である。何種類かの市販の小型残渣ガス分析機と小型イオンポンプとの仕様については以下で議論する。図7は、フィルタ316と毛細管318とが真空チャンバ311に挿入されているまた別の態様を示している。流体におけるガスへの反応の速度と半透膜の厚さとの間には、通常、ある種の取引がある。図8は、各々が異なる組成(例えば、ジメチルシリコーン膜、又はシリコーンポリカーボネート膜)及び/又は異なる厚さである半透膜330, 331, 及び332を備えた複数の入口にそれぞれ通じる弁340, 341, 及び342を有する、さらに別の態様のシステムを示している。例えば、膜330は厚さ10ミクロンであり、膜331は20ミクロンであり、膜332は30ミクロンである。各膜は、別個のガスに対して親和性を有する、異なる組成のものであってもよい。このように、各弁340, 341, 及び342を一度に1つずつ開け、各膜を通って異なるガスが分散するようにすることができる。イオンポンプ319は分散したガスを除去し、開いた弁を閉じた後に別の弁を開けて最初のとは異なるガスを真空チャンバ311内に分散させる。
【0027】
本発明で使用するのに適した質量分析計は、ホリバ機器株式会社(Horiba Instruments Ltd.)ラボラトリ、ユニット1、ラスキン・レジャー・センター、ラスキン・ドライブ、セント・ヘレンズ、UK WA 10 6RP、電話:44(0)1744 454 598、FAX:44(0)1744 454 599、又はエクストール株式会社(Extorr, Inc.)307コロンビア・ロード、ニュー・ケンジントン、PA 15068, USA、電話:1-724-337 3000、又はインフィニコン株式会社(INFINICON, INC)トゥー・テクノロジー・プレイス、イースト・シラキュース、NY 13057, USA、電話:1-315-434-1100から入手することができる。好適なイオンポンプは、ヴァリアン株式会社(Varian, Inc.)3120ハンセン・ウェイ、パロ・アルト、CA 94304-1030, USA、電話:1-650-213-8000から入手することができる。
【0028】
本発明のまた別の態様において、本発明の方法は、ROM、RAM、CD ROM、Flash、又はコンピュータが読むことのできる他の、現在公知又は非公知のあらゆる媒体を含む、コンピュータが読むことのできる媒体に書き込まれた、実行されたときに本発明の方法をコンピュータに実行させる、コンピュータによって実施可能な1セットの指示として、実施することもできる。
【0029】
以上の開示は本発明の好適な態様に関し、様々な変更を行うことができることが、当業者には明らかである。添付の請求項の範囲内でなされる全ての変更が以上の開示によって包含されることが意図されている。本発明のより重要な特徴の例は、続くその詳細な記述がよりよく理解され、また、技術への貢献が適切に認識されるように、かなり広くまとめられている。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、ワイヤラインから孔内に展開された、本発明の好適な態様の説明図である。
【図2】図2は、ドリルストリングから孔内に展開された、本発明の好適な態様の説明図である。
【図3】図3は、本発明の現在の実施例を構成する部品の説明図である。
【図4】図4は、半透膜、燒結金属フィルタ、及び小さな孔を有すると共に孔の間の板面に溝を有する金属板を示している。
【図5】図5は、本発明の一実施例において行われる機能のフローチャートである。
【図6】図6は、本発明で使用するのに適した半透膜を通過するガスの分散速度のいくつかの例を示す表である。
【図7】図7は、フィルタと毛細管挿入口を有する代替例を示している。
【図8】図8は、また別の態様において、それぞれが異なる厚さを有する膜につながる多数の導入口に至る弁を有するシステムを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を質量分析計に曝し、
該質量分析計からの反応を観察し、及び
該反応から孔内流体の性質を評価する
ことを特徴とする、孔内で流体の性質を評価する方法。
【請求項2】
前記反応が、電荷対質量比の強度であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応が、フラグメント化のパターンの一部であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記流体からガスを分離する段階をさらに有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記分離が、前記流体からガスを分散させる段階をさらに有することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記分散が半透膜を使用し、該半透膜が1サブセットのガスを通過させることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記分散が、ガスを分散させるのに、複数の膜から1つの膜を選択する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の膜の各々が異なる厚さを有していることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の膜の各々が別個のガスに対する親和性を有する、異なる組成物であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
流体と流体流通状態にある質量分析計と、
前記質量分析計と通信状態にあり、流体の性質を評価するプロセッサと
を有する、孔内で流体の性質を評価する装置。
【請求項11】
前記プロセッサが、流体のフラグメント化のパターンから流体の性質を評価することを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記プロセッサが、前記流体の原子量単位(AMU)から流体の性質を評価することを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記流体に曝される分離器をさらに有することを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項14】
前記分離器が毛細管であることを特徴とする、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記分離器内に配された膜と、
該分離器及び前記質量分析計と通信状態にあるガス室と
をさらに有することを特徴とする、請求項13に記載の装置。
【請求項16】
前記膜は複数の膜を有していることを特徴とする、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
ガスの分散のために、前記複数の膜から少なくとも1つの膜を選択する弁をさらに有していることを特徴とする、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記複数の膜の各々が、該複数の膜の他のものとは異なる厚さを有していることを特徴とする、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
前記複数の膜の各々が、該複数の膜の他のものとは異なるガスに対する透過性を有する、異なる組成を有していることを特徴とする、請求項16に記載の装置。
【請求項20】
前記ガスが蒸気を含むことを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項21】
流体と流体流通状態にある質量分析計を有する孔内器具と、
前記質量分析計と通信状態にあり、流体の性質を評価するプロセッサと
を有する、孔内で流体の性質を評価するシステム装置。
【請求項22】
前記プロセッサが、流体のフラグメント化のパターンから流体の性質を評価することを特徴とする、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記プロセッサが、前記流体の原子量単位(AMU)から流体の性質を評価することを特徴とする、請求項21に記載のシステム。
【請求項24】
前記流体に曝される分離器をさらに有することを特徴とする、請求項21に記載のシステム。
【請求項25】
前記分離器が毛細管であることを特徴とする、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記分離器内に配された膜と、
該分離器及び前記質量分析計と通信状態にあるガス室と
をさらに有することを特徴とする、請求項24に記載のシステム。
【請求項27】
前記膜は複数の膜を有していることを特徴とする、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
ガスの分散のために、前記複数の膜から少なくとも1つの膜を選択する弁をさらに有していることを特徴とする、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記複数の膜の各々が、該複数の膜の他のものとは異なる厚さを有していることを特徴とする、請求項27に記載のシステム。
【請求項30】
前記複数の膜の各々が、該複数の膜の他のものとは異なるガスに対する透過性を有する、異なる組成を有していることを特徴とする、請求項27に記載のシステム。
【請求項31】
前記ガスが蒸気を含むことを特徴とする、請求項21に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−529745(P2007−529745A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504077(P2007−504077)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/008803
【国際公開番号】WO2005/089399
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(301008534)ベイカー ヒューズ インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】