説明

油状組成物

【課題】 低温から高温までの広い温度範囲に渡って十分に高いトラクション係数を維持できる、適度な粘度を有する油状組成物を提供する。
【解決手段】 トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンからなる水素化開環重合体を合成油であるα−メチルスチレン二量体水素化物、すなわち2−メチル−2,4−ジシクロヘキシルペンタンに溶解して油状組成物を得る。
得られた湯上訴組成物は、トラクションドライブ用オイルとして好適に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にトラクションドライブ用に好適な油状組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
トラクションドライブ用油状組成物は、トラクションドライブ装置、たとえば、自動車用無段変速機、産業用無段変速機、水圧機器などに用いられる油状物である。
トラクションドライブ装置は様々な場所で使用される。このため、トラクションドライブ装置に用いるトラクションドライブ用油は、日本だけでも−30℃(寒冷地での始動時の温度)〜+140℃(高温時の坂道運転時など)と幅広い油温条件で使用される。
しかしながら、一般に、トラクション係数が高い油ほど、粘度指数は低い傾向にある。粘度指数が小さい油は、低温で粘度上昇が大きくなる結果、油の撹拌抵抗が増大し、無段変速機の低温始動性が悪くなる。一方、高温では油状物の粘度低下が急激に起こる為、適正な油状物膜を保持できなくなり、疲労損傷を引き起こす原因にもなる。
従って、トラクションドライブ用油には、様々な温度条件で、高いトラクション係数(法線荷重に対する接線力の比)を安定して維持し、かつ、温度変化に対する粘度変化を抑えることが同時に要求される。
【0003】
このようなにトラクションドライブ用油には、相反する性能が求められているため、基油に、添加剤を配合することでこれを実現することが検討されている。
例えば、WO2004/026998号公報では、(A)分子中に第4級炭素及び/又は脂環構造を有するトラクションドライブ用基油に、(B)成分として、重量平均分子量が8000〜40000の所定のポリマーを配合することが提案されている。配合されるポリマーは、構成成分として環構造を有するモノマー10モル%以上を有する炭化水素ポリマー、主鎖に第4級炭素を25%以上含有する炭化水素ポリマー、又はこれらの水素化物である。
【0004】
【特許文献1】特開昭61−19698号公報
【特許文献2】WO2004/026998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者が検討した結果、上記特許文献3に具体的に開示された脂環構造としてノルボルナン構造を有するエチレン/ノルボルネンコポリマーを用いても、高温でのトラクション係数が十分高いとは言えないことが判った。
従って、本発明の目的は、低温から高温までの広い温度範囲に渡って十分に高いトラクション係数を維持できる、適度な粘度を有する油状組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、特定の脂環構造含有重合体を合成油及び/または鉱油からなる基油に溶解した油状組成物を、たとえばトラクションドライブ用油状物として用いた場合に目的とするトラクション性能を有し、合成が容易で、工業生産にも有利であることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明によれば、下記一般式[I]で表わされる脂環構造含有繰り返し単位を有する重合体を合成油及び/または鉱油からなる基油に0.1重量%〜20重量%溶解したことを特徴とする油状組成物が提供される。この油状組成物はトラクションドライブ用に好適に用いられる。
【0008】
【化1】

【0009】
(ただし、式中、R、R、RおよびRは、水素原子、炭化水素基、ハロゲン原子、水酸基、エステル基、アルコキシ基、シアノ基、イミド基、シリル基、又は官能基で置換された炭化水素基であり、それぞれ同一または異なっていてもよく、また、R、R、R及びおよびRは互いに環を形成していてもよい。nは正の整数である。qは0または正の整数である。)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低温流動性が良好で、粘度指数が高く、低温から高温までの広い温度範囲に渡って優れた性能(たとえば、トラクション係数が高く、適正な粘度を有し、熱及び酸化安定性に優れる)を有し、工業生産にも有利な油状組成物が提供される。特に、本発明に係る油状組成物は、低温から高温にわたってトラクション係数が高いので、トラクションドライブに用いた場合、各種トラクションドライブ装置の伝達効率を向上させることができる。その結果、トラクションドライブ装置の小型軽量化、出力増大などを図ることができ、各種機械、設備、機器などの運動部分などに幅広く利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係る油状組成物は、一般式[I]で表わされる脂環構造含有重合体を合成油及び/または鉱油からなる基油に0.1重量%〜20重量%溶解することにより提供される。
【0012】
【化2】

【0013】
(ただし、式中、R、R、RおよびRは、水素原子、炭化水素基、ハロゲン原子、水酸基、エステル基、アルコキシ基、シアノ基、イミド基、シリル基、又は官能基で置換された炭化水素基であり、それぞれ同一または異なっていてもよく、また、R、R、R及びおよびRは互いに環を形成していてもよい。nは正の整数である。qは0または正の整数である。)
【0014】
ここで炭化水素基は、炭素数1〜6の直鎖、分岐又は環状のアルキル基又はアルケニル基であり、好ましくは炭素数1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基又はアルケニル基である。
ここで官能基は、ヘテロ原子を含むものであり、具体的には、ハロゲン原子、水酸基、エステル基、アルコキシ基、シアノ基、イミド基、シリル基が挙げられる。
【0015】
本発明で使用される一般式[I]で表わされる脂環構造含有繰り返し単位を有する重合体は、単量体として、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(慣用名ノルボルネン)、5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5,5−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]−ヘプタ−2−エン、5−ヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−オクチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−オクタデシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−プロペニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シアノ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン;5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−エトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エニル−2−メチルプロピオネイト、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エニル−2−メチルオクタネイト、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物、5−ヒドロキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(ヒドロキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシ−I−プロピルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジカルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸イミド、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名ジシクロペンタジエン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、トリシクロ[4.3.0.12,5]ウンデカ−3,7−ジエン若しくはトリシクロ[4.3.0.12,5]ウンデカ−3,8−ジエンまたはこれらの部分水素添加物(またはシクロペンタジエンとシクロヘキセンの付加物)であるトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン、5−シクロペンチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シクロヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シクロヘキセニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン(単にテトラシクロドデセンともいう)、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−メチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−ビニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−プロペニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−ヒドロキシメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−カルボキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン;8−シクロペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−シクロヘキシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−シクロヘキセニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−フェニル−シクロペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン;テトラシクロ[7.4.0.110,13.02,7]トリデカ−2,4,6,11−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)、テトラシクロ[8.4.0
.111,14.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセンともいう)、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカ−3,10−ジエン、ペンタシクロ[7.4.0.13,6.110,13.02,7]ペンタデカ−4,11−ジエン及びシクロペンタジエンの4量体等を1種または2種以上使用し、公知の方法により開環重合して得られる開環重合体を、公知の水素化方法により水素化して製造される飽和ポリマーである。
開環重合は、通常−20〜+100℃、好ましくは10〜80℃下でメタセシス重合触媒を用いて行う。
水素化反応は、開環重合体を単離後に行っても良いし、水素化触媒を添加して、脂環構造含有開環重合体を単離することなく、連続的に水素化反応を行っても良い。水素化触媒としては、オレフィン化合物の水素化に際して一般に使用されているものであれば、均一系触媒、不均一系触媒のいずれも使用することができる。得られる重合体中の残留金属の除去等を考慮すると、不均一系触媒が好ましい。
【0016】
本発明に使用する脂環構造含有重合体は脂環構造としてノルボルナン構造を有するものが好ましく、一般式[I]で表わされる脂環構造含有繰り返し単位でノルボルナン構造を導入するには、ノルボルネン系モノマーの中でも4環体または5環体のものを使用するか、これらを主成分とし、2環体や3環体のモノマーと併用することが好ましい。ノルボルナン構造を有する脂環構造含有重合体は、それを溶解した油状組成物の粘度指数が高くなり易いため好ましい。
【0017】
本発明における脂環構造含有重合体は、シクロヘキサンを溶剤とする高速液体クロマトグラフィー(HLC)分析により、ポリイソプレン換算値として測定した数平均分子量(Mn)が2,000〜100,000、好ましくは、3,000〜50,000、より好ましくは、4,000〜20,000、重量平均分子量(Mw)が3,000〜300,000、好ましくは、4,500〜150,000、より好ましくは、6,000〜60,000である。シクロヘキサンに溶解し難い脂環構造含有重合体は、テトラヒドロフランを溶剤とする高速液体クロマトグラフィー(HLC)分析により、ポリスチレン換算値として測定した数平均分子量(Mn)が2,000〜100,000、好ましくは、3,000〜50,000、より好ましくは、4,000〜20,000、重量平均分子量(Mw)が3,000〜300,000、好ましくは、4,500〜150,000、より好ましくは、6,000〜60,000である。
【0018】
MnおよびMwが上記範囲より小さいと、油状組成物に添加した場合の粘度調整の効果が小さい。逆に、この範囲よりも大きいと合成油及び/または鉱油に対する溶解性が悪くなり、均一に溶解しなくなる。
【0019】
合成したポリマーの分子鎖中に残留する不飽和結合を水素化反応により飽和させる場合には、耐熱劣化や耐酸化劣化性を高める観点から、水素化率を90%以上、好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上とする。
【0020】
本発明では、上述した脂環構造含有重合体を、合成油及び/または鉱油からなる基油に0.1重量%〜20重量%、好ましくは1重量%〜15重量%、より好ましくは1重量%〜10重量%添加して均一に溶解して油状組成物とする。添加量が上記範囲より少ないと粘度指数を高める効果が小さい。逆に、この範囲より多いと粘度が高くなり過ぎ、流動性が劣るため好ましくない。
【0021】
本発明で使用する合成油及び/または鉱油は、合成油としては、具体的には、1,3−ジシクロヘキシルブタン、1,3−ジシクロヘキシル−3−メチルブタン、2,4−ジシクロヘキシルペンタン、2,4−ジシクロヘキシル−2−メチルペンタン等のスチレン及び/またはα−メチルスチレンの二量体水素化物;ポリブテン又はその水素化物;1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー等のポリ−α−オレフィン又はその水素化物;ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、及びジ−2−エチルヘキシルセバケート等のジエステル;ネオペンチルグリコールエステル、トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート、及びペンタエリスリトールペラルゴネート等のポリオールエステル;アルキルナフタレン、アルキルベンゼン、及び芳香族エステル等の芳香族系合成油;シクロヘキサン環を2個または3個以上有するアルカン誘導体、デカリン環とシクロヘキサン環をそれぞれ1個以上有するアルカン誘導体、デカリン環を2個以上有するアルカン誘導体、シクロヘキサン環またはデカリン環が2個以上直接結合している構造を有する化合物などがある。このような合成ナフテンの具体例としては、1−シクロヘキシル−1−デカリルエタン、1,3−ジシクロヘキシル−3−メチルブタン、2,4−ジシクロヘキシルペンタン、1,2−ビス(メチルシクロヘキシル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(メチルシクロヘキシル)−2−メチルプロパン、2,4−ジシクロヘキシル−2−メチルペンタン等の合成ナフテン系合成油;エチリデンノルボルナン二量化物の水素化物、1,4−(ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルオキシ)ブタン等の縮合多環化合物等が挙げられる。
鉱油としては、具体的には、原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、水素化精製等の処理を1つ以上行って精製したもの、あるいはワックス異性化鉱油等が例示できる。より具体的には、例えば、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油、中間系鉱油等の鉱油を挙げることができる。
その中でも、スチレン及び/またはα−メチルスチレンの二量体水素化物や合成ナフテンや縮合多環化合物が本願の脂環構造含有重合体の溶解性に優れ、高いトラクション係数が得られ易いことから好ましい。
【0022】
本発明では、上記合成油又は鉱油のうちの1種を単独で用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
本発明の油状組成物には、さらに必要に応じて酸化防止剤、防錆剤、清浄分散剤、流動点降下剤、粘度指数向上剤、極圧剤、耐摩耗添加剤、疲労防止剤、消泡剤、油性向上剤、着色剤などの各種添加剤を適量配合することができる。各種添加剤の配合割合は、特に制限はなく、通常は油状組成物全体の0〜50重量%、好ましくは0.1〜20重量%程度とすればよい。
【0024】
本発明に係る油状組成物は、−30〜140℃程度に渡るトラクション係数が、通常0.07以上、好ましくは0.08以上、より好ましくは0.09以上であり、低温から高温にわたってトラクション係数が高い。
【0025】
本発明の油状組成物は、トラクションドライブ用油、変速機油、エンジン油、ギヤ油、油圧作動油、コンプレッサー油、電気絶縁油などに用いることができるが、中でも、各種機械、設備、機器などに用いられ得るトラクションドライブ装置のトラクションドライブ用に好適である。
【実施例】
【0026】
次に、本発明をさらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。以下の例では、特に断りのない限り、部は重量基準である。
実施例及び比較例における測定値は、以下の方法により測定されたものである。
(1)重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)
シクロヘキサン(実施例2と比較例2はテトラヒドロフラン)を溶離液とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による標準ポリイソプレン(実施例2と比較例2は標準ポリスチレン)換算値として40℃において測定した。
測定装置としては、東ソー社製HLC8120GPCを用いた。
溶離液は、東ソー社製標準ポリイソプレンのMw=602、1390、3920、8050、13800、22700、58800、71300、109000、280000の計10点又は東ソー社製標準ポリスチレンMw=520、1040、2630、5970、10200、18100、37900、96400、190000、427000、706000の計11点を用いた。
サンプルは、サンプル濃度4mg/mlになるように、40℃にて測定試料をシクロヘキサン又はテトラヒドロフランに加熱溶解させて調製した。
測定は、カラムとして東ソー社製TSKgel G5000HXL、TSKgel G4000HXL、TSKgel G2000HXL計3本直列に繋いで用い、流速1.0ml/分、サンプル注入量100μml、カラム温度40℃の条件で行った。
【0027】
(2)トラクション係数
二円筒摩擦試験機にて行った。すなわち、接している同じサイズの円筒(直径52mm、厚さ6mmで被駆動側は曲率半径10mmのタイコ型、駆動側はクラウニングなしのフラット型)の一方を一定速度で、他方の回転速度を連続的に変化させ、両円筒の接触部分に錘により98.0Nの荷重を与えて、両円筒間に発生する接線力、即ちトラクション力を測定し、トラクション係数を求めた。この円筒は軸受鋼SUJ−2鏡面仕上げでできており、平均周速6.8m/秒、最大ヘルツ接触圧は1.23GPaであった。また、40℃、100℃でのトラクション係数を測定するにあたっては、油タンクをヒーターで加熱することにより、油温を40℃から100℃まで昇温させ、すべり率5%におけるトラクション係数を求めた。
(3)粘度
東機産業社製のB型粘度計(型番:BH型)を用いて測定した。
【0028】
実施例1
トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン40部、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン30部、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン30部からなる水素化開環重合体(数平均分子量Mn=5,500、重量平均分子量Mw=9,500;ノルボルナン構造を有する脂環構造含有重合体)5部を合成油であるα−メチルスチレン二量体水素化物、すなわち2−メチル−2,4−ジシクロヘキシルペンタン95部に溶解して油状組成物を作成した。
【0029】
作成した油状組成物のトラクション係数を、油温40℃および100℃で計測した結果、40℃では0.120、100℃では0.105であった。また、−30℃での粘度は240,000mPa・sであった。
【0030】
実施例2
実施例1の水素化開環重合体に代えてビシクロロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン60部、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン40部の水素化開環重合体(数平均分子量Mn=8,400、重量平均分子量Mw=16,100;ノルボルナン構造を有する脂環構造含有重合体)を使用する以外は実施例1と同様にして油状組成物を作成した。
【0031】
作成した油状組成物のトラクション係数を、実施例1と同様にして測定した結果、40℃では0.122、100℃では0.110であった。また、−30℃での粘度は290,000mPa・sであった。
【0032】
実施例3
実施例1の水素化開環重合体に代えてビシクロロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン60部、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン40部の水素化開環重合体(数平均分子量Mn=4,000、重量平均分子量Mw=7,300;ノルボルナン構造を有さない脂環構造含有重合体)を使用する以外は実施例1と同様にして油状組成物を作成した。
【0033】
作成した油状組成物のトラクション係数を、実施例1と同様にして測定した結果、40℃では0.108、100℃では0.090であった。また、−30℃での粘度は204,000mPa・sであった。
【0034】
比較例1
実施例1の水素化開環重合体に代えて水素化ポリイソプレン(数平均分子量Mn=13,000、重量平均分子量Mw=14,100;脂環構造を有さない重合体)を使用する以外は実施例1と同様にして油状組成物を作成した。
【0035】
作成した油状組成物のトラクション係数を、実施例1と同様にして測定した結果、40℃では0.099、100℃では0.069であった。また、−30℃での粘度は204,000mPa・sであった。
【0036】
比較例2
実施例1の水素化開環重合体に代えてビシクロロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン69部、エチレン31部からなる付加共重合体(数平均分子量Mn=5,900、重量平均分子量Mw=23,000;ノルボルナン構造を有する脂環構造含有重合体)を使用する以外は実施例1と同様にして油状組成物を作成した。
【0037】
作成した油状組成物のトラクション係数を、実施例1と同様にして測定した結果、40℃では0.107、100℃では0.086であった。また、−30℃での粘度は260,000mPa・sであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[I]で表わされる脂環構造含有繰り返し単位を有する重合体を合成油及び/または鉱油からなる基油に0.1重量%〜20重量%溶解したことを特徴とする油状組成物。
【化1】

(ただし、式中、R、R、RおよびRは、水素原子、炭化水素基、ハロゲン原子、水酸基、エステル基、アルコキシ基、シアノ基、イミド基、シリル基、又は官能基で置換された炭化水素基であり、それぞれ同一または異なっていてもよく、また、R、R、R及びおよびRは互いに環を形成していてもよい。nは正の整数である。qは0または正の整数である。)
【請求項2】
トラクションドライブ用である請求項1に記載の油状組成物。

【公開番号】特開2009−67961(P2009−67961A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240626(P2007−240626)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】