説明

治療および測定法

プラチナをベースとした化学療法薬によるin vivo治療に対する腫瘍細胞の応答を予測する方法であって、BCRP蛋白質をコードする1種または複数の遺伝子の発現の測定をベースとし、前記遺伝子の発現亢進が化学治療薬に対する耐性の増強と相関する方法を記載する。癌細胞、特に結腸直腸癌細胞を治療に対して感作する方法もまた記載する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は癌の治療に関する。特に、プラチナ抗悪性腫瘍薬などの抗癌剤、ならびに、癌治療のための方法および組成物に対する耐性の生じやすさを測定する測定法および方法に関する。
【発明の背景】
【0002】
結腸直腸癌(CRC)は、西洋では癌関連死の2番目に主要な原因である。全世界に広がる新たなCRC症例数は増加しており、CRC患者の約半分が転移性疾患を発症する。この悪性腫瘍に対して最も活性のある薬剤、代謝拮抗剤5−FUは、40年以上前に開発された。病期IIIのCRCを切除した患者では、5−FUをベースにしたアジュバント化学療法によって、健存期間(disease−free survival)が35%、全生存期間(overall survival)が22%改善されることが示された(1)。しかし、進行型CRCにおいては、5−FU単独治療では10から15%の応答率しか生じない(2)。応答率を高めるための努力によって、より新しい細胞毒CPT−11およびオキサリプラチンと5−FUとの併用が導かれた。これによって著しく応答率が改善し(40〜50%)、無増悪生存期間が延長した(3、4)。このような改善はなされたが、半数を上回る患者では、進行型CRCに対する化学療法を受けてもこれらの疾患の測定可能な縮小は何ら生じない。
【0003】
治療の選択肢が増加するつれ、(アジュバントセッティングおよび転移セッティング両方における)予測マーカー試験によって、腫瘍の分子表現型および患者によって化学療法計画を選択することが可能になった。これによって、応答率および生存率が改善され、患者を、有益とは言えない薬剤の毒性作用に対して不必要に曝露することが回避される。結腸直腸癌の治療では、5−FUをベースとした化学治療の使用が世界的に広まっているので、この薬剤について最も多くの予測的なデータが報告されている。チミジル酸合成酵素(TS)の発現は、5−FUに対する不十分な応答性を予測するために示された(5〜7)。さらに、ジヒドロピリミジン脱水素酵素(DPD)およびTP発現レベルの高さは、5−FUに対する転移性疾患の耐性と関連した(8、9)。
【0004】
しかし、オキサリプラチンもしくはCPT−11に最も応答しやすい患者の予測的同定を可能にする分子マーカーは現在のところほとんど入手不可能である。ERCC1およびTS遺伝子のmRNA高発現は、5−FUと併用してオキサリプラチンで処理した患者の不十分な応答性の予測となることが示され(10)、ERCC1がオキサリプラチン感受性の決定因子となり得ることを示唆している。CPT−11耐性細胞株では、減少したTOPO I発現が示された。しかし、治療前のTOPO I発現とCPT−11に対する腫瘍応答との間の一貫した関連は記載されていない(11)。
【0005】
化学療法に対する耐性の決定因子に関していくつかのデータが入手可能であるが、このような薬剤耐性をさらに調べるために、着実なモデル系が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、HCT116結腸直腸癌細胞から得られた、一群の5−FU、CPT−11およびオキサリプラチン耐性p53野生型細胞株およびヌル細胞株を開発して特徴付けた。これらの細胞株は、個別に、および集合的に、本発明の独立した態様を構成する。臨床の場で使用できる耐性もしくは感受性の鍵となる調節因子を同定するために、これらのモデル系は、これらの化学治療に対する応答のいくつかの潜在的に重要な媒介物のmRNA発現レベルを調べるために使用されてきており、かつ使用できる。
【0007】
該細胞株は、様々なスクリーニング法で個別に、もしくは一緒に使用することができる。たとえば、本発明の1細胞株は、薬剤耐性の1種または複数の決定因子を同定するためのスクリーニング法で使用することができる。
【0008】
実施例で説明するように、本発明者等は、本発明の細胞株を特徴付け、特定の化学療法薬に対する耐性のいくつかのマーカーを同定した。
【0009】
オキサリプラチン耐性細胞株に関して、本発明者等は、ABC半輸送体BCRP/ABCG2の過剰発現とプラチナをベースとした化学療法薬オキサリプラチンに対する耐性との間の関連を確認した。
【0010】
癌細胞におけるBCRPの高レベルの発現が、このような細胞のオキサリプラチン誘導性アポトーシスを阻害することを示すことは、プラチナをベースとした薬剤計画による治療が特定の患者に有効であるか否かを早期に決定することを可能とする。したがって、本発明は、プラチナをベースとした化学療法薬による治療が特定の患者において有効であるか否かを決定するための測定法で使用することができる。
【0011】
したがって、本発明の第1の態様では、プラチナをベースとした化学療法薬によるin vivo治療に対する腫瘍細胞の応答を予測する方法であって、
(a)対象から腫瘍細胞を含有するin vitro試料を提供するステップと、
(b)BCRP蛋白質をコードする1種または複数の遺伝子の基準発現を測定するステップとを含み、前記遺伝子の発現亢進が化学治療薬に対する耐性の増強と相関する方法を提供する。
【0012】
腫瘍細胞における基準発現は、1種または複数の対照試料における基準発現と比較することができる。対照試料は、対象の、好ましくは腫瘍細胞を含む試料と同じ対象の正常な(すなわち、非新生物形成)細胞であってよい。他の実施形態では、対照試料は、オキサリプラチン感受性癌細胞株であってよい。たとえば、対照試料は、HCT116オキサリプラチン感受性癌細胞株であってよい。
【0013】
本発明の好ましい実施形態では、前記化学療法薬に曝露された試料中のBCRP発現は、発現が対照試料中のBCRPの発現の少なくとも2倍、好ましくは少なくとも3倍、より好ましくは少なくとも4倍、さらにより好ましくは少なくとも5倍、さらにより好ましくは少なくとも10倍、最も好ましくは少なくとも12倍であるならば、増強されていると見なされる。
【0014】
化学療法薬は、腫瘍を治療するために適した任意のプラチナをベースとした化学療法薬であってよい。たとえば、薬剤はオキサリプラチン、シスプラチン、カルボプラチンであってよい。本発明の好ましい実施形態では、化学療法薬はオキサリプラチンである。
【0015】
本発明の方法は、プラチナをベースとした化学療法薬によるin vivo治療に対する任意の腫瘍細胞の応答を予測するために使用できる。しかし、本発明の特に好ましい実施形態では、腫瘍細胞は結腸直腸細胞である。
【0016】
腫瘍細胞中のBCRPの過剰発現がプラチナをベースとした化学療法に対する耐性の増強と関連していることを示すことは、プラチナをベースとした化学療法による治療に対して腫瘍細胞が感作される可能性を提供する。
【0017】
したがって、第2の態様では、本発明は、プラチナをベースとした化学療法に対して癌細胞を感作する方法であって、前記細胞BCRP阻害剤を投与するステップを含む方法を提供する。
【0018】
さらに、本発明の第3の態様では、治療有効量のBCRP阻害剤およびプラチナをベースとした化学療法薬の投与を含む、癌の治療方法を提供する。BCRP阻害剤およびプラチナをベースとした化学療法薬は、別々に、連続して、もしくは同時に投与できる。
【0019】
本発明の第4の態様では、癌治療用薬剤の調製における、BCRP阻害剤およびプラチナをベースとした化学療法薬の使用を提供する。
【0020】
第5の態様では、癌治療用の医薬組成物であって、BCRP阻害剤と、プラチナをベースとした化学療法薬と薬剤として許容される賦形剤、希釈剤または担体とを含む組成物を提供する。
【0021】
第6の態様では、癌の治療において同時に、別々に、もしくは連続して使用するための併用調製物として、
a)BCRP阻害剤と、
b)プラチナをベースとした化学療法薬とを含む製品を提供する。
【0022】
第7の態様では、癌治療用のキットであって、
a)BCRP阻害剤と、
b)プラチナをベースとした化学療法薬と、
c)(a)および(b)を別々に、連続して、もしくは同時に投与するための指示書とを含むキットを提供する。
【0023】
本発明の好ましい実施形態では、BCRP阻害剤は化学療法薬の前に投与される。
【0024】
任意の適切なBCRP阻害剤を本発明の方法で使用できる。阻害剤は、ペプチドもしくは非ペプチドであってよい。たとえば、適切なBCRP阻害剤は、GF120918であってよい(de Bruin M.、Miyake K.、Litman K.、Robey R.、Bates S.E.Cancer Lett.、146:117−126、1999;Kruijtzer CM J Clin Oncol.2002 Jul 1;20(13):2943〜50)。
【0025】
好ましい一実施形態では、前記BCRP阻害剤は、BCRPをコードする遺伝子の発現を調節するアンチセンス分子である。
【0026】
より好ましい一実施形態では、前記BCRP阻害剤は、BCRP遺伝子の発現を調節するRNAi剤である。剤は、siRNA、shRNA、ddRNAi、それらの構築物もしくは転写鋳型、たとえば、shRNAをコードするDNAであってよい。好ましい実施形態では、RNAi剤は、BCRPをコードする遺伝子のmRNA配列の一部と相同なsiRNAである。
【0027】
本発明の、および本発明で使用するための好ましいRNAi剤の長さは、ヌクレオチド15個と25個の間、好ましくはヌクレオチド19個と22個の間、最も好ましくはヌクレオチド21個である。
【0028】
さらに、本発明はまた、本発明で使用でき、化学療法および計画で有用であり得る新規BCRP阻害剤を同定するために使用できる。このような剤は、BCRPの効果を直接的もしくは間接的に減少させるか、または阻害することができる。
【0029】
したがって、本発明の第8の態様では、癌、好ましくは結腸癌の治療で使用するための化学療法薬を同定するための測定方法であって、
(a)腫瘍細胞の試料を提供するステップと、
(b)前記試料の一部を化学療法薬候補に曝露するステップと、
(c)前記試料中のBCRPの発現を測定するステップとを含み、
対照試料中の発現と比較してBCRPの発現が減少していることが化学療法活性の指標となる方法を提供する。
【0030】
対照試料中の発現は、前記候補薬剤に曝露していない前記腫瘍細胞の異なる試料を参照にして、あるいは化学療法薬候補の適用前の同試料中の発現を参照にして、測定できる。
【0031】
本発明の各態様の好ましい特徴は、特に要求がなければ、必要に応じて変更を加えて、その他各態様と同様である。
【詳細な説明】
【0032】
前述したように、本発明は、様々な化学療法薬に対する耐性の決定因子の調査のための実験手段として、ならびに、化学療法薬を使用した治療および癌の治療方法の安定性を測定するために特定の遺伝子の発現について腫瘍細胞を含む試料をスクリーニングする方法として使用できる、新規細胞株を提供する。
【0033】
本発明の方法は、BCRPなどの蛋白質の発現の測定法に関係する。
【0034】
蛋白質の発現は、当業界で公知の任意の技術を使用して測定できる。mRNAもしくは蛋白質のいずれかは、遺伝子発現の上方もしくは下方制御を測定する手段として測定できる。定量技術が好ましい。しかし、半定量もしくは定性技術もまた使用できる。遺伝子産物測定に適した技術には、SAGE分析、DNAマイクロアレイ分析、ノーザンブロット、ウェスタンブロット、免疫細胞化学分析およびELISAが含まれるが、それだけには限定しない。
【0035】
本発明の方法では、RNAは、当業界で公知の技術のいずれかを使用して検出できる。試料のRNA量は非常に少ない可能性があるので、増幅段階を使用することが好ましい。適切な技術は、RT−PCR、核酸プローブのアレイへの複製mRNA(cRNA)のハイブリダイゼーションおよびノーザンブロットを含むことができる。
【0036】
たとえば、mRNA検出を使用するとき、該方法は、標準的方法に従って単離したmRNAをcDNAに変換して、変換したcDNAを容器内において核酸プライマーの適切な混合物を加えて増幅反応試薬(たとえば、cDNA PCR反応試薬)で処理して、増幅産物を生成するために容器の内容物を反応させて、蛋白質をコードする1個もしくは複数の遺伝子の遺伝子発現産物の存在を検出するために増幅産物を分析することによって実施することができる。分析は、増幅産物中の遺伝子産物の存在を検出するためにノーザンブロットを使用して実施できる。ノーザンブロット分析は当業界で公知である。分析段階は、増幅産物中のこのような遺伝子産物の存在を定量的に検出し、かつ検出された産物の量を、同様のプライマーを使用して得られた正常組織および悪性腫瘍組織中の有無が知られている一群の期待値に対して比較することによってさらに実施できる。
【0037】
たとえば、本発明の方法の実施において遺伝子発現を測定する場合、当業界で公知の従来の分子生物学的技術、微生物学的技術および組換えDNA技術を使用できる。このような技術の詳細は、たとえば、Sambrook、Fritsch and Maniatis、「Molecular Cloning,A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989、およびAusubel他、Short Protocols in Molecular Biology、John Wiley and Sons、1992)に記載されている。
【0038】
本発明の方法は、化学療法計画に適した任意の癌の治療の適合性を測定するために使用することができる。たとえば、本発明の方法は、限定はしないが、胃腸癌、たとえば、結腸直腸癌、乳癌、前立腺癌、頭部癌および頸部癌を含めた癌の治療に対する感受性もしくは耐性を測定するために使用できる。
【0039】
腫瘍もしくは癌の性質は、本発明の方法で使用する試料の性質を決定するだろう。たとえば、試料は、腫瘍組織生検、骨髄生検、もしくは、たとえば、血中の循環腫瘍細胞の試料であってよい。あるいは、たとえば、腫瘍が胃腸腫瘍である場合、腫瘍細胞は糞便試料から単離できる。腫瘍細胞のその他の供給源には、血漿、血清、脳脊髄液、尿、間質液、腹水などが含まれる。
【0040】
たとえば、固形腫瘍は抗生物質を含む完全組織培養培地中に収集することができる。必要であれば、腫瘍標本から手作業で細断してよく、もしくはコラゲナーゼ/DNA分解酵素と共にインキュベートすることによって酵素的に消化して、たとえば、ヒトもしくは動物の血清を含有する適切な培地に懸濁してもよい。
【0041】
その他の実施形態では、生検試料は単離して、凍結するか、もしくはホルマリンなどの固定液で固定できる。次に、試料は、その後の段階で、遺伝子の発現濃度を試験することができる。
【0042】
結合要素(binding member)
本明細書で説明したように、本発明で使用するためのBCRP阻害剤はペプチドもしくは非ヘプチドであってよい。これらは結合要素であってよい。本発明の、および本発明で使用するための本発明の結合要素は、好ましくはBCRPに結合できる任意の部分、たとえば、抗体もしくはリガンドであってよい。
【0043】
本発明の場合では、「結合要素」は、他の分子に、好ましくはBCRPに結合特異性を有する分子であり、この分子類は一組の特異的結合要素を構成する。この一組の分子類の1要素は、この一組の分子類のもう1つの要素の一部もしくは全部に特異的に結合するか、または相補的な領域を有することができる。
【0044】
本発明の場合では、「抗体」は、イムノグロブリンもしくはその一部、または抗体結合ドメインもしくは抗体結合ドメインに相補的な結合ドメインを含む任意のポリペプチドを意味するものと考えられる。抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単一特異性抗体、多特異性抗体およびそれらの断片ならびに他のポリペプチドに融合したイムノグロブリン結合ドメインを含むキメラ抗体が含まれるが、それらだけには限定しない。
【0045】
完全な抗体は、それぞれが、それぞれVHおよびVLと称する可変領域を備えた、重鎖および軽鎖から成るイムノグロブリン分子を含む。可変領域は、3種類の相補性決定領域(超可変領域としても知られるCDR)および4種類の枠組み領域(FR)もしくは骨格から構成される。CDRは、抗原分子と共に相補的な立体構造を形成し、抗体の特異性を決定する。
【0046】
抗体の断片は、完全な抗体の結合能力を維持でき、完全な抗体の代わりに使用できる。したがって、本発明において、特に要求がなければ、「抗体」という用語は、抗体断片ならびに抗体の誘導体およびそれらの断片を包含するものと考えられる。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、dAbおよびFv断片、scFvs、2重特異的scFvs、2重特異性抗体(diabody)、直鎖抗体(米国特許第5641870号、実施例2、Zapata他、Protein Eng 8(10):1057〜1062(1995))を参照のこと)、1本鎖抗体分子、および抗体断片から形成された多特異性抗体が含まれる。
【0047】
Fab断片は、VHおよびCH1と共に完全なL鎖(VLおよびCL)から成る。Fab’断片は、CH1ドメインのカルボキシ末端に、抗体のヒンジ領域の1個もしくは複数のシステインを含む数個の残基が付け加えられていることがFab断片とは異なる。F(ab’)2断片は、ジスルフィド結合により結合された2個のFab断片を含む。
【0048】
Fd断片はVHおよびCH1ドメインから成る。
【0049】
Fv断片は単一抗体のVLおよびVHドメインから成る。
【0050】
1本鎖Fv断片は、scFvが抗原結合部位を形成するのを可能にするリンカーによって結合されたVHおよびVLドメインを含む抗体断片である(Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、vol.113、Rosenburg and Moore編、Springer−Verlag、New York、pp.269〜315(1994)を参照のこと)。
【0051】
2重特異性抗体(diabody)は、Vドメインの鎖間の組合せを実現するが、鎖内の組合せを実現せず、多価断片、すなわち、2個の抗原結合部位を有する断片を生じるように、VHドメインとVLドメインの間に短い(約5〜10残基の)リンカーを有するscFv断片(前段落を参照)を構築することによって調製された小抗体断片である(たとえば、EP 404097;国際公開第93/11161号パンフレット;およびHollinger他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:6444〜6448(1993)を参照のこと)。
【0052】
さらに、断片に包含されるのは個々のCDRである。
好ましい実施形態では、結合要素は、少なくとも1個のヒト定常領域を含む。
【0053】
抗体はまた、天然であるか、または、完全にもしくは部分的に合成されるイムノグロブリン結合ドメインを含む任意のポリペプチドを含む抗体誘導体、機能的な同等物および抗体の相同体を包含する。「キメラ」抗体には、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定種から得られた抗体、または特定の抗体種もしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか、もしくは相同で、鎖の残部が他の種から得られた抗体、または他の抗体種もしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか、もしくは相同であるキメラ抗体、ならびに、所望する生物学的活性を示す限りこのような抗体の断片が包含される(米国特許第4816567号およびMorrison他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、81:6851〜6855(1984)を参照のこと)。本明細書で関心のあるキメラ抗体には、非ヒト霊長類(たとえば、旧世界ザル、類人猿など)から得られた可変ドメイン抗原結合配列およびヒト定常領域配列を含む「霊長類化」抗体が含まれる。
【0054】
本発明で使用するための抗体の断片もしくはポリペプチドの断片は一般的に、少なくとも5個から7個の隣接したアミノ酸、しばしば少なくとも約7個から9個の隣接したアミノ酸、一般的に少なくとも約9個から13個の隣接したアミノ酸、より好ましくは少なくとも約20個から30個以上の隣接したアミノ酸、最も好ましくは少なくとも約30個から40個以上の連続したアミノ酸残基の鎖を意味する。
【0055】
このような抗体もしくはポリペプチドの、あるいは断片抗体の「誘導体」は、たとえば、蛋白質をコードする核酸の操作によって、もしくは蛋白質自体を改変することによって、蛋白質のアミノ酸配列を変化させて改変した抗体もしくはポリペプチドを意味する。天然のアミノ酸配列のこのような誘導体は、1個もしくは複数のアミノ酸の挿入、添加、欠失および/または置換を含むことができ、好ましくは、一方で、細胞死受容体を有するペプチド、たとえばBCRPの中和活性および/または結合活性を提供する。このような誘導体は、25個以下のアミノ酸、より好ましくは15個以下、さらにより好ましくは10個以下、さらにより好ましくは4個以下、最も好ましくは1個もしくは2個のみのアミノ酸の挿入、添加、欠失および/または置換を含む。
【0056】
結合要素もしくは抗体は、ヒト化することが可能である。ヒト化抗体は、モノクローナル抗体の超可変領域およびヒト抗体の定常領域を有する改変抗体であってよい。超可変領域以外の可変領域はまた、ヒト抗体の可変領域から得ることが可能で、および/またはモノクローナル抗体から得ることが可能である。ヒト化抗体の作製方法は周知で、たとえば、米国特許第5225539号を参照のこと。
【0057】
モノクローナル抗体およびその他の抗体を入手して、組換えDNA技術の技法を使用して、元の抗体の特異性を保持したその他の抗体もしくはキメラ分子を製造することが可能である。このような技法は、1抗体のイムノグロブリンの可変領域、もしくは相補性決定領域(CDR)をコード化するDNAを、異なるイムノグロブリンの定常領域、もしくは定常領域および枠組み領域に導入することが関与することが可能である。たとえば、EP−A−184187、GB2188638AもしくはEP−A−239400を参照のこと。抗体を産生するハイブリドーマもしくはその他の細胞に、産生される抗体の結合特異性を変化させるか、もしくは変化させない遺伝子的変異もしくはその他の変更を与えることができる。
【0058】
RNA剤
本明細書で説明したように、本発明で使用するためのBCRP阻害剤は、RNAi剤であってよい。
【0059】
RNA干渉(RNAi)もしくは転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)は、2本鎖RNAが潜在的および特異的遺伝子のサイレンシングを誘導する方法である。RNAiは、サイレンシングトリガーと相同なメッセンジャーRNAを破壊するRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)、配列特異的な多成分性ヌクレアーゼによって媒介される。RISCは、2本酸RNAトリガーから得られた短いRNA(ヌクレオチド約22個)を含有することが知られている。
【0060】
一態様では、本発明は、哺乳類、好ましくはヒトの腫瘍細胞、好ましくは結腸直腸腫瘍細胞における標的遺伝子、BCRPの発現を調節する、好ましくは発現を減少させるRNAi剤を使用する方法を提供する。発現の減少とは、標的遺伝子もしくはコーディング配列の発現レベルが、対照と比較して、少なくとも約2倍、通常は少なくとも約5倍、たとえば、10倍、15倍、20倍、50倍、または100倍以上減少するか、もしくは阻害されることを意味する。ある実施形態では、標的遺伝子の発現は、BCRP遺伝子/コーディング配列の発現が効果的に阻害されるような範囲まで減少する。標的遺伝子の発現の調節とは、コーディング配列、たとえば、ゲノムDNA、mRNAなどのポリペプチド、たとえば、蛋白質、生成物への転写/翻訳の変化、たとえば、減少を意味する。
【0061】
本発明の好ましい実施形態で使用できるRNAi剤は、2本鎖構造、たとえば、互いにハイブリダイズする2種の異なるオリゴヌクレオチド、または2本鎖構造を生じるために小ヘアピンを形成すると考えられる1本のリボオリゴヌクレオチドの中に存在する小リボ核酸分子(本明細書では、干渉リボ核酸とも称する)である。好ましいオリゴヌクレオチドは、長さが100nt以下、一般的には長さが75nt以下のリボ核酸である。RNA剤がsiRNAである場合、2本鎖構造の長さは一般的に、約15から30bpの範囲で、通常は約20から29bp、最も好ましくは21bpである。RNA剤は、ヘアピン構造中に存在する単一のリボ核酸の2本鎖構造、すなわち、shRNAの場合、ヘアピンのハイブリダイズされた部分の長さは一般的に、siRNA型の薬剤のために前記で示したものと同様であるか、もしくはヌクレオチド4〜8個長い。
【0062】
ある実施形態では、干渉リボ核酸、たとえば、前述したようなsiRNAもしくはshRNAであるRNAi剤の代わりに、RNAi剤は、干渉リボ核酸をコードすることができる。これらの実施形態では、RNAi剤は、一般的に干渉リボ核酸をコードするDNAである。DNAは、ベクター中に存在することができる。
【0063】
RNAiは、当業界で公知の任意の適切な方法を使用して宿主に投与できる。たとえば、核酸は、ウイルス感染、微量注入、小胞の融合、微粒子銃、もしくは水力学的核酸投与によって組織もしくは宿主細胞に導入できる。
【0064】
DNA特異的(directed)RNA干渉(ddRNAi)は、本発明の方法で使用することができるRNAi技術である。ddRNAiは、米国特許第6573099号およびGB2353282に記載されている。ddRNAiは、RNAiを誘発するための一方法であり、この方法は、細胞中にDNA構築物を導入して2本鎖(dsRNA)の産生を誘発し、次いで2本鎖をRNAiプロセスの一部として低分子干渉RNA(siRNA)に切断するものである。ddRNAi発現ベクターは一般的に、siRNA標的配列を発現させるために、RNAポリメラーゼIIIプロモーター(たとえば、U6もしくはH1)を使用し、哺乳類細胞にトランスフェクトされる。ddRNAi発現カセット系から作成されたsiRNA標的配列は、U6プロモーターを含有しないベクター中に直接クローニングできる。あるいは、ヘアピンsiRNA標的配列を含有する短い1本鎖DNAオリゴをベクターのpolIIIプロモーターの下流にアニーリングして、クローニングできる。ddRNAi発現ベクターの主要な利点は、長期間の干渉効果を可能にし、細胞中の天然のインターフェロン応答を最小限に抑えることである。
【0065】
アンチセンス核酸
本明細書で説明したように、本発明で使用するためのBCRP阻害剤は、アンチセンス分子、またはRNAのようなアンチセンス分子を発現する核酸コンストラクトであってよい。アンチセンス分子は、天然もしくは合成であってよい。合成アンチセンス分子は、天然の核酸から化学的に修飾されてよい。アンチセンス配列は、標的BCRP遺伝子のmRNAに相補的で、標的遺伝子産物の発現を阻害する。アンチセンス分子は、様々な機構、たとえば、翻訳に使用可能なmRNAの量を減少させることによって、RNアーゼHの活性化によって、または立体妨害によって遺伝子発現を阻害する。アンチセンス分子1個もしくは組合せを投与することができ、組合せは複数の異なる配列を含むことができる。
【0066】
アンチセンス分子は、適切なベクター中においてBCRP配列の全部もしくは一部の発現によって作製でき、アンチセンス鎖がRNA分子として産生されるように、転写開始を調整する。あるいは、アンチセンス分子は、合成オリゴヌクレオチドであってよい。アンチセンスオリゴヌクレオチドの長さは、一般的に少なくとも約7個、通常は少なくとも約12個、より通常は少なくとも約16個、通常は約50個以下、好ましくは約35個以下のヌクレオチドである。
【0067】
内在性BCRPセンス鎖mRNA配列に特異的な領域もしくは領域類は、アンチセンス配列に相補的であるように選択される。オリゴヌクレオチドに特異的な配列の選択は、in vitroもしくは動物モデルにおいて標的遺伝子の発現を阻害するためのいくつかの候補配列を測定する実験方法を使用できる。mRNA配列のいくつかの領域をアンチセンス相補性のために選択し、配列を組合せることもまた、使用できる。
【0068】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、当業界で公知の方法によって化学的に合成できる(Wagner他、(1993)、前述、およびMilligan他、前述)。好ましいオリゴヌクレオチドは、細胞内での安定性および結合親和性を増加させるために、天然のホスホジエステル構造から化学的に修飾される。骨格、糖もしくは複素環ベースの化学構造を変化させるいくつかのこのような修飾は、文献に記載されている。骨格化学構造の有用な変化の中には、ホスホロジアミデート結合、メチルホスホン酸ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート(いずれも架橋してない酸素が硫黄で置換されている)、ホスホロアミダイト、アルキルホスホロトリエステルおよびボラノホスフェートがある。アキラルホスフェート誘導体には、3’−O−5’−S−ホスホロチオエート、3’−S−5’−O−ホスホロチオエート、3’−CH2−5’−O−ホスホネートおよび3’−NH−5’−O−ホスホロアミデートが含まれる。ペプチド核酸は、ペプチド結合を有する完全なリボースホスホジエステル骨格と置換できる。糖の修飾はまた、安定性および親和性を高めるために使用できる。
【0069】
治療
治療」には、ヒトもしくは非ヒト動物に有益であり得るいかなる計画も含める。治療は、既存の状態に関係してよく、もしくは予防的(予防的治療)であってもよい。治療には、治癒、緩和もしくは予防的効果が含まれる。
【0070】
「癌の治療」には、癌性増殖によって引き起こされる状態の治療が含まれ、新生物増殖もしくは腫瘍の治療が含まれる。本発明を使用して治療することができる腫瘍の例には、たとえば、骨肉腫および軟骨肉腫を含む肉腫、癌、たとえば、乳癌、肺癌、膀胱癌、甲状腺癌、前立腺癌、結腸癌、直腸癌、膵癌、胃癌、肝癌、子宮癌、子宮頸癌および卵巣癌、ホジキンおよび非ホジキンリンパ腫を含めたリンパ腫、神経芽細胞種、黒色腫、骨髄腫、ウィルムス腫瘍ならびに急性リンパ芽球性白血病および急性骨髄芽球性白血病を含めた白血病、神経膠腫および網膜芽細胞腫がある。
【0071】
本発明の好ましい実施形態では、癌は結腸直腸癌である。
【0072】
投与
本明細書で説明したように、本発明で使用するためのBCRP阻害剤は任意の適切な方法で投与することができる。さらに、その他の治療、たとえば、その他の化学療法薬もしくは結合要素との併用療法で使用することができる。このような実施形態では、本発明のBCRP阻害剤もしくは組成物は、他の化学療法薬と同時に、別々に、もしくは連続して投与できる。
【0073】
別々に、もしくは連続して投与する場合、互いに任意の適切な期間以内で、たとえば、1、2、3、6、12、24、48もしくは72時間以内で投与することができる。好ましい実施形態では、互いに6以内、好ましくは2以内、より好ましくは1以内、最も好ましくは20分以内に投与される。
【0074】
好ましい実施形態では、本発明のBCRP阻害剤および/または組成物は、企図する投与経路に応じて選択された適切な賦形剤、希釈剤もしくは担体を一般的に含む医薬組成物として投与できる。
【0075】
本発明のBCRP阻害剤および/または組成物は、任意の適切な経路を介して治療を必要とする患者に投与できる。
【0076】
いくつかの適切な投与経路には、(限定はしないが)経口、直腸、経鼻、局所(口腔および舌下を含む)、膣内もしくは非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、クモ膜下腔内および硬膜外を含む)投与が含まれる。静脈内投与が好ましい。
【0077】
BCRP阻害剤、製品もしくは組成物は、局所的方法で、腫瘍部位もしくはその他の所望する部位に投与することが可能であり、または腫瘍もしくはその他の細胞を標的とする方法で送達することが可能である。標的指向化治療は、抗体もしくは細胞特異的リガンドなどの標的指向化系を使用することによって、ある種の細胞により特異的に活性剤を送達するために使用できる。様々な理由で、たとえば、その薬剤が許容できないほど毒性である場合、もしくは通常必要とされる投与量が多すぎる場合、もしくは通常では標的細胞に入ることができない場合のために、標的指向化が望ましい。
【0078】
静脈内注射もしくは疾患部位への注射の場合、活性成分は病原体を含まず、適切なpH、等張性および安定性を有する非経口的に許容される水性溶液の形態に入れる。当業者であれば、たとえば、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、乳酸リンゲル注射液などの等張溶媒を使用して、適切な溶液を調製できる。必要であれば、保存剤、安定化剤、緩衝剤、抗酸化剤および/またはその他の添加物を含めることができる。
【0079】
経口投与用医薬組成物は、錠剤、カプセル、散剤もしくは液剤の形態であってよい。錠剤は、ゼラチンなどの固形担体もしくは補助剤を含むことができる。液体医薬組成物は一般的に、水、石油、動物油もしくは植物油、鉱油もしくは合成油などの液体担体を含む。生理食塩水、デキストロースまたはその他の糖溶液、またはエチレングリコール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールなどのグリコールを含めることができる。
【0080】
本発明で使用するBCRP阻害剤および/または組成物はまた、小球体、リポソーム、その他の微粒子送達系または血液を含むある種の組織に置いた徐放製剤を介して投与できる。徐放担体の適切な例には、共用物質、たとえば、座剤もしくはミクロカプセルの形態の半透性ポリマー基質が含まれる。埋め込み可能な、もしくはミクロカプセル徐放基質には、ポリラクチド(米国特許第3773919号;EP−A−0058481)L−グルタミン酸およびガンマエチル−L−グルタミン酸のコポリマー(Sidman他、Biopolymers 22(1):547〜556、1985)、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)もしくは酢酸エチレンビニル(Langer他、J.Biomed.Mater.Res.15:167〜277、1981およびLanger、Chem.Tech.12:98〜105、1982)が含まれる。ポリペプチド含有リポソームは、周知の方法によって調製される:DE3218121A;Epstein他、PNAS USA、82:3688〜3692、1985;Hwang他、PNAS USA;77:4030〜4034、1980;EP−A−0052522;E−A−0036676;EP−A−0088046;EP−A−0143949;EP−A−0142541;JP−A−83−11808;米国特許第4485045号および第4544545号。通常、リポソームは、液体含量が約30mol%コレステロールを上回り、コレステロールは、最適なポリペプチド漏出速度に調節されるように選択された割合である小(約200〜800オングストローム)単層型である。
【0081】
前述の技術および方法ならびに本発明に従って使用できるその他の技術および方法の例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、16版、Oslo、A.(編)、1980に見いだすことができる。
【0082】
医薬組成物
前述のように、本発明は、癌の治療のための医薬組成物であって、a)プラチナ化学療法薬と、b)BCRP阻害剤と、c)薬剤として許容される賦形剤、希釈剤もしくは担体とを含む組成物に適用される。プラチナ化学療法薬およびBCRP阻害剤は、同時に、別々に、もしくは連続的に投与できる。
【0083】
本発明による、および本発明によって使用するための医薬組成物は、活性成分に加えて、薬剤として許容される賦形剤、担体、緩衝安定化剤もしくは当業者に周知のその他の材料を含むことができる。
【0084】
このような材料は、非毒性でなければならず、活性成分の効果を妨害してもならない。担体もしくはその他の材料の厳密な性質は、経口であることが可能な、もしくは注射、たとえば静脈内注射による投与経路に左右されよう。
【0085】
製剤は、液体、たとえば、pH6.8〜7.6の非リン酸緩衝液を含有する生理学的塩溶液、もしくは凍結乾燥粉末であってよい。
【0086】
投与量
本発明のBCRP阻害剤もしくは組成物は、「治療有効量」で個体に投与することが好ましく、これは個体に利点を示すために十分である。投与する実際の量ならびに投与の速度および時間経過は、治療するものの性質および重症度に左右される。治療の処方、たとえば、投与量などの決定は、最終的には一般医およびその他の医師の責任の範囲内で、自由裁量で行い、一般的に、治療する疾患、個々の患者の健康状態、送達する部位、投与方法および医師に公知のその他の要素を考慮する。
【0087】
さて、本発明はさらに、以下の非限定的実施例で説明する。添付図面について記載する。
【0088】
結果
材料および方法
材料。5−FUは、Sigma Chemical Co(St.Louis、MO)から購入した。CPT−11はPharmacia and Upjohn(Kalamazoo、MI)から、オキサリプラチンはSanofi−Synthelabo(Malvern、PA)から入手した。1mM保存溶液は、滅菌1×PBS中で調製し、ただし、オキサリプラチンは滅菌注射水で調製して、使用するまで4℃で保存した。β−チューブリン抗体はSigma Chemical Co.(St.Louis、MO)から、PARP抗体はPharMingen(San Diego、CA)から購入した。
【0089】
組織培養。HCT116p53+/+およびp53−/−同質遺伝子ヒト結腸癌細胞は、Bert Vogelstein教授(John Hopkins大学、Baltimore、MD)から恵与された。薬剤耐性HCT116亜細胞株は、本発明者の研究室で、約10ヶ月間、5−FU、CPT−11もしくはオキサリプラチンの濃度を段階的に増加させて繰り返し曝露することによって開発した。親HCT116細胞株および薬剤耐性HCT116細胞株は、透析牛胎児血清(FCS)10%、ペニシリン−ストレプトマイシン50μg/ml、L−グルタミン2mMおよびピルビン酸ナトリウム1mMを補給したMcCoy’s 5A培地(いずれもGIBCO Invitrogen Corporation、Paisley、Scotland)で増殖させ、5% COを含有する湿潤雰囲気下で37℃で維持した。5−FU耐性p53+/+およびp53−/−HCT116細胞は、それぞれ5−FU 2μMおよび4μMの存在下で維持した。CPT−11耐性p53+/+およびp53−/−HCT116細胞は、それぞれCPT−11 1μMおよび3μMの存在下で維持した。オキサリプラチン耐性p53+/+およびp53−/−HCT116細胞は、安定して耐性であることが発見され、したがって、オキサリプラチンを含まない培地で維持して、4週間毎にそれぞれオキサリプラチン8μMおよび9μMを加えた。各実験の前に、耐性亜細胞株を薬剤非存在下で48時間培養した。
【0090】
細胞毒性研究。96ウェルマイクロタイタープレートにウェル当たり2000個の細胞を接種した。48時間後、細胞を様々な濃度の5−FU、CPT−11もしくはオキサリプラチンで処理した。72時間後、MMT色素(5mg/ml)25μlを各ウェルに添加し、プレートを37℃で3時間インキュベートした。生細胞によって形成された青紫色ホルマザン結晶をDMSO200μlに溶解し、個々のウェルの吸収は、Emax精密マイクロタイターリーダー(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)を使用して570nmで測定した。結果は、未処理細胞に対して50%の細胞増殖阻害に必要な濃度で表した(IC50(72h))。
【0091】
フローサイトメトリー。6ウェルプレートにウェル当たり5×10個の細胞を接種した。48時間後、細胞を様々な濃度の5−FU、CPT−11もしくはオキサリプラチンで処理した。処理72時間後、細胞を1×PBS/EDTA 0.5mM 5mlに収集し、1000rpm/4℃で5分間遠心することによってペレット状にした。細胞ペレットは、1×PBS/1% FCSで1回洗浄して、70%エタノールで固定して、ヨウ化プロピジウムで染色した。分析は、Beckman Coulter Epics XLフローサイトメーター(Miami、FL)で実施した。
【0092】
イムノブロッティング。90mm組織培養皿にプレート当たり1×10個の細胞を接種した。薬剤処理48時間後、細胞を、記載した濃度の5−FU、CPT−11もしくはオキサリプラチンで処理した。48時間後、細胞を収集し、1×RIPA緩衝液(20mM TRIS pH7.4、NaCl 150mM、EDTA 1mM、pH8.0、0.1% Triton X−100、0.1% SDS)200μlに再懸濁した。細胞を溶解して、13200rpm/4℃で15分間遠心して、細胞残渣を除去した。蛋白質濃度は、BCA蛋白質測定試薬(Pierce、Rockford、IL)を使用して測定した。各蛋白質試料20マイクログラムをSDS−PAGEによって分離して、電気ブロッティングによってPVDF膜に移した。免疫検出は、抗PARPもしくは抗βチューブリンマウスモノクローナル抗体および1/2000に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ヒツジ抗マウス2次抗体(Amersham、Buckinghamshire、England)を使用して実施した。蛍光信号は、Super Signal化学ルミネセンス検出系(Pierce)を使用して、製造元の指示に従って検出した。
【0093】
逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)分析。全RNAは、RNA STAT−60試薬(Biogenesis、Poole、England)を使用して、製造元の指示に従って検出した。逆転写は、RT緩衝液(5×)4μl、dNTP(10mM)1μl、DDT(0.1M)2μl、オリゴ(dT)12〜18プライマー(500μg/ml)1μl、RNase OUT(40単位/μl)1μl、およびモロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素(200単位/μl)1μl(いずれもInvitrogen Life Technologies製、Paisley、Scotland)を含有する全反応量10μl中で、RNA1μgによって実施した。混合物を37℃で50分間インキュベートして、70℃で10分間加熱して、次にすぐ氷上で冷却した。PCR増幅は、PCR緩衝液(10×)5μl、dNTP(10mM)1.0μl、Taq DNAポリメラーゼ(5U/μl)0.5μlおよびMgSO(50mM)1.5μl(いずれもInvitrogen Life Technologies)、プライマー(10μM)2.5μlおよびDNA2μlを含有する最終量50μl中で実施した。PCR増幅に使用したプライマー配列を表1に挙げた。
【0094】
結果
細胞毒性分析。10ヶ月にわたって薬剤の濃度を段階的に増加させて繰り返し曝露することによって、本発明者等は、5−FU、オキサリプラチンおよびCPT−11に耐性の一群の同質遺伝子p53+/+およびp53−/−HCT116結腸癌細胞株を作製した。p53野生型の場合、本発明者等は、感受性親細胞と比較して、それぞれの耐性細胞株の5−FU、オキサリプラチンおよびCPT−11に対するIC50(72時間)値が、3.0倍、31.0倍および10.0倍に増加したことを示した(表2A)。興味深いことに、MTT分析を使用すると、p53+/+5−FU耐性細胞株では、親細胞よりも、CPT−11に対して約2倍を上回る耐性が示された。しかし、この交差耐性は、さらにフローサイトメトリーを使用して調べたときは明らかではなかった(データは示さず)。p53ヌルの場合、親細胞と比較してそれぞれの耐性細胞株の5−FU、オキサリプラチンおよびCPT−11に対するIC50(72時間)値は9.0倍、10.5倍および65.0倍に増加した(表2B)。さらに、IC50(72時間)の約2倍の増加は、5−FU処理後のp53−/−CPT−11耐性細胞では示されなかった。しかし、細胞周期分析を使用してさらに調べると、CPT−11耐性細胞株における5−FUに対する交差耐性の証拠は明らかではなかった(データは示さず)。
【0095】
本発明者等はまた、p53+/+およびp53−/−CPT−11耐性細胞株はいずれも、CPT−11活性代謝物SN−38に対して同様に耐性であり、IC50(72時間)用量はそれぞれ約10倍および約100倍に増加することを見出した(表3)。
【0096】
オキサリプラチンは、シスプラチンおよびカルボプラチンに耐性を示すいくつかの細胞株で活性を示した(12)。これによって、本発明者等はp53+/+およびp53−/−いずれのオキサリプラチン耐性細胞株もシスプラチンに対して交差耐性であることを発見した(表4)。カルボプラチンのIC50(72時間)用量の少量の増加(約2倍)がオキサリプラチン耐性細胞株で観察されたが、これはオキサリプラチンに対する耐性の増強よりも著しく少なかった。これらの結果は、オキサリプラチンがシスプラチンおよびカルボプラチンとは異なる作用機構および/または耐性機構を有することを示唆している。
【0097】
細胞周期分析。各薬剤の様々な濃度で処理した後の親細胞および耐性細胞の細胞周期分布を調べるために、フローサイトメトリーを使用した。p53野生型の場合、S期停止および倍数性(DNA含量>4N)の証拠は、親細胞を5−FU 1μMで72時間処理した後で観察された(図1A)。5−FU 5μMおよび10μMに曝露した後で、p53+/+親細胞の大部分がG2/M期で停止して、sub−G0/G1含量(対照試料の約4%に対して約30〜35%)が著しく増加した。対照的に、p53+/+5−FU耐性細胞は、5−FU 1μMに曝露した後の細胞周期プロフィールに変化を示さなかったが、5−FU 5μMおよび10μMに対しては細胞の大部分がG1/S境界で停止した。さらに、5−FU 5μMおよび10μMに応じたアポトーシスの誘導は、5−FU耐性亜細胞株において著しく減少した。p53+/+親細胞をオキサリプラチン0.5μMで72時間処理したとき、細胞の大部分は細胞周期のG2/M期で停止した。これに伴って小倍数体ピークが出現した(図1B)。本発明者等は、親細胞株をオキサリプラチン1μMおよび5μMで処理した後、アポトーシス細胞の割合(対照試料の約2%と比較して約40〜50%)およびDNA含量が>4Nである細胞数の著しい増加を認めた。対照的に、p53+/+オキサリプラチン耐性細胞の細胞周期プロフィールは、オキサリプラチン0.5μMおよび1μMで処理することによって影響を受けなかった。p53+/+オキサリプラチン耐性細胞をオキサリプラチン5μMに曝露した後、細胞の大部分はS期で停止した。さらに、オキサリプラチン耐性亜細胞株におけるアポトーシスの誘導は、親細胞と比較して劇的に弱くなった。p53+/+親細胞をCPT−11 0.5μMで処理すると、S期の細胞の蓄積が生じ、DNA含量>4Nの細胞が認められた(図1C)。倍数性のさらなる証拠は、p53+/+親細胞株におけるCPT−11 1μMで示されたが、細胞の大部分が今度はG2/Mで停止した。CPT−11 5μMで処理すると、sub−G0/G1アポトーシス期の細胞の約40%の蓄積が引き起こされた。p53+/+CPT−11耐性細胞株は、CPT−11 0.5μMおよび1μMにほとんど完全に非感受性であった。しかし、CPT−11 5μMで処理すると、著しいG2/M停止および倍数体細胞の蓄積が生じた。程度の著しいアポトーシスがまた示された(約14%)が、親細胞株で認められ程度(約40%)より少なかった。
【0098】
p53−/−の場合、5−FU 1μMで72時間処理した親細胞はS期で停止し、倍数体ピークの出現が認められた(図2A)。5−FU 5μMおよび10μMに曝露した後、p53−/−親細胞株の大部分のDNA含量は>4Nで、倍数体細胞であることが示された。対照的に、p53−/−5−FU耐性細胞は、5−FU 1μM、5μMおよび10μMに曝露した後、未処理対照細胞と比較して、細胞周期プロフィールの変化を示さなかった。p53−/−親細胞をオキサリプラチン1μMで処理したとき、本発明者等はS期遮断および倍数体画分の中等度の増加を観察した(図2B)。オキサリプラチン 5μMに応じて、細胞の大部分はG2/M期で停止し、かなりの割合のDNA含量は>4Nであった。対照的に、p53−/−オキサリプラチン耐性細胞は、同濃度のオキサリプラチンによって処理した後、細胞周期分布に何ら変化を示さなかった。p53−/−親細胞株をCPT−11 0.5μMおよび1μMで処理すると、劇的なG2/M期細胞周期停止が引き起こされた(図2C)。本発明者等は、p53+/+細胞株で観察されたのと同様に、CPT−11 5μMで処理した後でアポトーシス細胞数が増加すること(対照試料の約2%と比較して約35%)を認めた。対照的に、53−/−CPT−11耐性細胞株では、CPT−11 5μMに応じたアポトーシスは全く観察されなかった。さらに、耐性亜細胞株では、CPT−11 0.5μMおよび1μMに応じたG2/M停止は全く観察されなかった。総合すると、これらの特性は、増殖阻害分析において認められた耐性表現型の基礎となる細胞周期進行の違いを特徴付けている。
【0099】
薬剤耐性におけるp53の役割。様々な濃度の5−FU、オキサリプラチンもしくはCPT−11で処理した後のp53+/+およびp53−/−親HCT116細胞における薬剤誘導性アポトーシスを比較するために、フローサイトメトリーを使用した。本発明者等の結果は、5−FUで処理したp53−/−細胞ではp53+/+細胞と比較するとアポトーシスが著しく少ないことを示唆している(図3A)。同様に、オキサリプラチン誘導性アポトーシスは、p53−/−細胞ではp53+/+細胞と比較して著しく弱くなった(図3B)。対照的に、CPT−11は、p53+/+細胞株およびp53−/−細胞株でほとんど同一レベルのアポトーシスを誘導した(図3C)。これらのデータは、CPT−11で処理した親p53+/+細胞およびp53−/−細胞ではほとんど同一のIC50(72時間)値がもたらされるという細胞毒性分析と一致している(表2Aおよび2B)。さらに、p53+/+細胞株およびp53−/−細胞株におけるSN−38のIC50(72時間)用量は類似していた(表3)。対照的に、5−FUおよびオキサリプラチンのIC50(72時間)は、5−FUおよびオキサリプラチンそれぞれで処理した後で、p53−/−細胞においてはp53+/+細胞と比較してそれぞれ4.6倍および5.7倍増加した。さらに、PARP切断(アポトーシスの特徴)は、5−FU 5μMおよびオキサリプラチン 1μMで48時間処理した後、p53+/+細胞では認められたが、p53−/−細胞では認められなかった(図3D)。対照的に、PARP切断は、CPT−11 5μMで処理した53+/+細胞およびp53−/−細胞の両方で明らかであった(図3D)。これらの結果は、p53は、5−FUおよびオキサリプラチンに応じたアポトーシス応答の重要な決定因子であり得るが、CPT−11に応じたアポトーシスの決定因子ではないことを示唆している。
【0100】
薬剤耐性に関与する遺伝子のmRNA発現。5−FU、オキサリプラチンおよびCPT−11をベースとした化学療法に対する感受性の決定に関与したいくつかの遺伝子の発現濃度を分析するために、半定量的RT−PCR分析を使用した。
【0101】
5−FU耐性細胞
p53+/+およびp53−/−5−FU耐性細胞の両方において、本発明者等は、親細胞と比較して5−FU同化酵素TPのレベルが著しく減少していることを観察した(図4A)。さらに、本発明者等は、外因性チミジンからチミジル酸を再利用するチミジンキナーゼ(TK)がp53+/+5−FU耐性細胞では非常に過剰発現していることを認めた。注目すべきことに、5−FU標的酵素TSは、親細胞および耐性細胞で変化しないままであった(図4A)。本発明者等はまた、5−FU異化酵素DPDおよび5−FU同化酵素ウリジンホスホリラーゼ(UP)およびウリジンキナーゼ(UK)のmRNAレベルは、5−FU耐性細胞株および親細胞株で同等であることを認めた。興味深いことに、オロチン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ(OPRT)発現は、p53−/−5−FU耐性細胞では低く、p53野生型の場合では逆になることは事実であった。これらの結果は、これらの細胞株における5−FUの基礎となる機構は、少なくとも部分的に、p53+/+およびp53−/−細胞の両方において、TPによって活性型5−FU代謝物の合成が減少し、p53−/−細胞ではOPRTが下方制御され、p53+/+細胞ではTKが過剰発現していることによって説明できることを示唆している。これらのデータはまた、TS阻害はこれらの細胞株における5−FUの作用の重要な機構ではないことを示しており、その他の結果と一致している(13)。
【0102】
オキサリプラチン耐性細胞
p53+/+およびp53−/−オキサリプラチン耐性細胞において、本発明者等は、ヌクレオチド除去修復遺伝子ERCC1のmRNAレベルが親細胞と比較して著しく増加していることを発見した(図4B)。さらに、本発明者等は、オキサリプラチン耐性細胞ではいくつかのERCC1スプライシングバリアントの上方制御を認めた。対照的に、本発明者等は、DNA損傷結合因子XPAもしくはグルタチオン代謝酵素γGCSの変化を認めなかった。しかし、ABC輸送体BCRPは、p53+/+およびp53−/−オキサリプラチン耐性細胞株の両方において、それぞれの親細胞株と比較して劇的に上方制御されていた。これらのデータは、p53+/+およびp53−/−の両方の場合において、オキサリプラチン耐性表現型は、プラチナDNA付加物のヌクレオチド除去修復の増加によって少なくとも部分的に説明され得ることを示唆している。さらに、多薬剤耐性蛋白質BCRPによるオキサリプラチンの細胞輸出の増加は、この化学療法に対する感受性を減少させることができる。
【0103】
CPT−11耐性細胞
p53+/+およびp53−/−CPT−11耐性細胞の両方において、本発明者等は、親細胞と比較して、CPT−11をSN−38に変換する酵素であるCEのレベルが著しく減少していることを認めた(図4C)。SN−38標的酵素TOPO Iは、p53+/+およびp53−/−CPT−11耐性細胞株の両方において劇的に下方制御された。対照的に、本発明者等は、TOPO IIα mRNA発現の変更は認めなかった。さらに、p53+/+およびp53−/−CPT−11耐性細胞株の両方において、BCRP発現はそれぞれの親細胞株と比較すると増加した。総合すると、これらのデータは、CPT−11のSN−38への変換の阻害、SN−38標的酵素TOPO Iの下方制御およびSN−38の細胞輸出の増加は、これらの細胞における耐性表現型に関与できることを示唆している。しかし、本発明者等は、p53+/+およびp53−/−CPT−11耐性細胞株の両方ではSN−38に対する交差耐性が強いことを認め(表3)、CE下方制御はこれらの細胞におけるCPT−11に対する耐性の主要な機構ではないことを示唆した。
【0104】
考察
本発明者等は、結腸直腸癌の治療で通常使用する化学療法に対する耐性機構を研究するためのモデルとして、5−FU、オキサリプラチンもしくはCPT−11に対して耐性の一群のp53+/+およびp53−/−結腸癌細胞株を開発した。さらに、本発明者等はまた、p53発現と5−FU、オキサリプラチンおよびCPT−11に対する応答との間の関係を調べるために、これらのモデル系を使用した。
【0105】
薬剤の濃度を段階的に増加させて細胞を増殖させることによって、本発明者等は、MTT分析で測定して、それぞれの化学療法に対する耐性が、感受性のある親細胞の3倍と65倍の間である細胞を単離することができた。さらに、本発明者等は、フローサイトメトリー分析を使用して、薬剤処理後の親細胞株と比較したこれらの耐性細胞株の細胞周期停止障害およびアポトーシス障害を示した。これらのデータは、細胞周期チェックポイントの活性化障害および細胞死経路障害が新たに生じた薬剤耐性細胞株それぞれにおいて認められた耐性表現型の根源となることを示している。
【0106】
p53腫瘍抑制蛋白質は、DNA損傷後の、協調性細胞周期停止、DNA修復およびプログラムされた細胞死において重要な役割を果たす。p53の変異は、結腸直腸癌の40〜50%に見られ、いくつかのin vitroの研究は、機能的p53の損失は5−FUに対する細胞感受性を減少させることを報告している(14、15)。この研究で示された結果は、これらのデータと一致する。本発明者等は、5−FU処理後のp53−/−HCT116細胞では、p53+/+細胞と比較して5−FU IC50(72時間)用量の4.6倍の増加およびアポトーシスの著しい減少を示した。いくつかの臨床研究はまた、p53変異の代理マーカーとしてしばしば使用されるp53の過剰発現は5−FUに対する耐性と相関することを報告している(16〜18)が、いくつかの研究は、p53発現濃度と5−FU応答との間に相関はないと報告している(19、20)。現在、in vitroにおけるデータは明らかであるが、5−FUをベースとした化学療法のための予測マーカーとしてのp53の臨床的有用性については、議論の余地が残されている。オキサリプラチンに関しては、本発明者等は、IC50(72時間)用量の5.7倍の増加および細胞周期停止障害およびアポトーシス障害によって示されるように、p53−/−細胞では、p53+/+細胞と比較してこの薬剤に対する感受性が減少していることを認めた。p53の状態およびプラチナ化合物に対する感受性に関する大半の臨床データは、第1世代化合物シスプラチンに焦点を当ててきた。Houldworthおよび共同研究者等による研究は、ヒト男性生殖細胞腫瘍におけるシスプラチンに対する耐性は、p53の変異と関連があり得ることを示した(21)。さらに、Relesおよび共同研究者等は、p53変更は、卵巣癌患者におけるプラチナをベースとした化学療法に対する耐性、早期再発および全生存期間の短縮と相関したことを報告した(22)。オキサリプラチンは、シスプラチンに対して様々な範囲の活性を有するようだが、この研究を含めたいくつかのin vitro研究では、p53機能の損失によってオキサリプラチンに対する耐性が増加することが発見された(23、24)。現在のところ、オキサリプラチン耐性に対するp53の状態の臨床的な重要性はこれから確立しなければならないことである。野生型p53は、in vitroにおいてトポイソメラーゼI阻害剤に対する感受性増加に関連したが、機能的p53を欠如した細胞は、カンプトテシンに曝露した後、アポトーシスを受けることができることも示された(25、26)。本研究では、本発明者等は、HCT116p53+/+およびp53−/−細胞において、細胞毒性分析、フローサイトメトリー分析およびPARP切断測定によって測定したところ、CPT−11に対する同等の感受性を認めた。Jacob他はまた、いくつかの結腸直腸癌細胞株において、p53の状態はCPT−11に対する感受性と相関しなかったことを発見した(27)。臨床の場では、Lansiauxおよび共同研究者等は、DNA−トポイソメラーゼI複合体のレベルは、それらのMSIおよびp53表現型には関わりなく、CPT−11に対する感受性と相関することを示した(28)。こうして、本研究およびいくつかのその他の研究は、p53の状態はCPT−11に対する化学感受性に影響を及ぼすことができないことを示唆している。
【0107】
代謝拮抗物質に対する耐性の機構は、薬剤代謝もしくは標的蛋白質の発現における変更が関与していることが多い。5−FUについては多くこのことが分かっているが、その代謝活性化に関与するいくつかの酵素の作用機序は複雑である。TSおよびDPDの活性化の増強は、in vitroおよびいくつかの臨床研究の両方において、5−FUに対する耐性と関連があった(6、8、29〜31)。TSは、5−FUの主要な細胞標的であり、DPDは5−FUの異化作用における律速段階を触媒する(32)。この研究において、本発明者等は、p53+/+およびp53−/−5−FU耐性細胞のいずれにおいても、TSおよびDPD mRNA発現の変更を認めなかった。これらの分子に加えて、OPRT、TP、UPおよびUKなどの5−FU同化酵素の活性減少は、in vitroにおける5−FUに対する感受性の調節に関与することが示唆された(33)。本発明者等は、親細胞と比較して5−FU耐性細胞におけるTP mRNAの下方制御を示した。細胞培養および異種移植モデル系は、癌細胞にTPを形質移入すると、おそらく5−FUのFdUMPへの代謝活性化の増加によって、5−FUに対する感受性が増加することを示した(34)。対照的に、TPの強い過剰発現が結腸直腸癌患者の予後不良の指標であることが発見された(9)。これらの矛盾した所見は、血管新生因子としてのTPの役割による可能性があり、したがって、in vivoにおいては、TP発現は、化学療法に対する応答が不十分な、より侵襲的で悪性度の高い腫瘍表現型のマーカーとなる可能がある(35)。さらに、本発明者等は、p53−/−5−FU耐性細胞におけるOPRT mRNA発現の下方制御を示した。これは、OPRTレベルと5−FU薬剤感受性との間の相関を示したいくつかのin vitro研究と一致した(33、36)。最近の臨床データはまた、OPRT活性によって、結腸直腸癌患者における5−FUに対する感受性を予測でき、レベルの高さが感受性の増加と関係があることを示唆している(37、38)。興味深いことに、OPRTレベルは、親細胞株と比較してp53+/+5−FU耐性細胞では僅かに上昇しているようである。HCT116細胞の5−FUに対する応答を媒介するOPRTの役割を決定するには、さらに研究することが必要である。本発明者等はまた、p53+/+5−FU耐性細胞におけるTK mRNAの過剰発現を示した。これは、5−FU耐性胃癌細胞におけるTKの発現増加を報告した、Chung他(36)と一致した。さらに、Oliverおよび共同研究者等は、異種TK遺伝子の過剰発現はメソトレキセートもしくはフルオロデオキシウリジンなどのヌクレオチド合成阻害剤によって誘導されるアポトーシスからマウスBAF3細胞を防御することを示した(39)。この著者等は、TKによるチミジンの再利用は、チミジル酸デノボ合成の阻害を補い、それによってチミン欠乏死を阻止できることを示唆している。臨床の場合では、TSおよびTK活性の増加は、結腸直腸癌患者の全生存期間のための重要な予後因子であることが報告された(40)。これらのデータとは対照的に、本発明者等は、親細胞株と比較してp53−/−5−FU耐性細胞におけるTK mRNAレベルの中等度の下方制御を示した。これらの細胞における5−FUに対する応答を媒介するTKの役割を明確にするには、さらに研究することが必要である。
【0108】
オキサリプラチンに最も応答しやすい患者の同定に現在使用可能な予測的バイオマーカーは比較的少ない。この研究では、本発明者等は、オキサリプラチン耐性細胞においてヌクレオチド除去修復蛋白質ERCC1をコードするmRNAレベルの上昇を示した。同様に、Hector他は、ERCC1 mRNAレベルは、感受性親細胞に対してオキサリプラチン耐性卵巣癌細胞株では約2倍高いことを示した(41)。Arnouldおよび共同研究者等はまた、ERCC1 mRNAレベルはオキサリプラチン感受性を予測することを示した(42)。高いERCC1遺伝子発現は、5−FU/オキサリプラチンで治療後の転移性結腸直腸癌の患者の生存率の低さと相関することが示された(10)。この研究から、ERCC1は、5−FU/オキサリプラチンをベースとした化学療法に対する応答の独立した予測マーカーであることは明らかであろう。この研究では、本発明者等は、オキサリプラチン耐性細胞における完全長ERCC1およびいくつかのスプライシングバリアントの両方の上方制御を示した。他のスプライシング変種は、DNA損傷認識/除去複合体の形成中に完全長ERCC1と競合することが可能で、DNA除去修復の阻害をもたらすことが想定された(43)。明らかに、プラチナ化学療法に対する感受性の決定における完全長および他のスプライシングERCC1蛋白質の両方の生物学的役割を完全に評価するためには、さらなる研究が必要である。
【0109】
オキサリプラチン耐性細胞におけるDNA修復の補因子XPAもしくはグルタチオン(GSH)代謝酵素γGCSの発現の変化は、プラチナをベースとした化学療法に対する感受性の減少と関連することがいくつかの臨床研究および非臨床研究で記載されている(42、44〜46)が、本発明者等は、その証拠は見いださなかった。しかし、本発明者等は、親細胞に対してp53+/+およびp53−/−オキサリプラチン耐性細胞株の両方でABC半輸送体BCRP/ABCG2が過剰発現していることを示した。BCRPの高い発現は、いくつかの薬剤耐性細胞株および腫瘍試料において示された(47〜49)。いくつかの化学療法薬は、アントラセンジオンミトキサントロン、ダウノルビシンおよびドキソルビシンなどのアントラサイクリン、トポテカン、ビサントラン(bisantrane)および活性型イリノテカン、SN−38を含めたBCRPの基質であることが示された(50)。本発明者の知る限りでは、これはBCRP過剰発現とプラチナ化学療法に対する耐性との間の関係の最初の報告である。何人かの著者は、シスプラチンはBCRPの基質ではないことを報告しているが(51、52)、これら2種類の分子の間の構造の違いおよび交差耐性の欠如を考えれば、様々な細胞輸送機構を利用できる可能性がある。さらに、その他の多剤耐性蛋白質とは異なり、GSHはBCRP媒介輸送の必須の補因子ではないことが示唆された。これらのデータは、オキサリプラチン耐性細胞におけるγGCS発現の調節の欠如に関する本発明者等の以前の観察を支持する。オキサリプラチン耐性におけるBCRPの生物学的役割を完全に解明するために、さらに研究が行われるだろう。
【0110】
CPT−11に対する耐性の様々な機構がin vivoでは特徴付けられてきたが、臨床の場におけるそれらの重要性については比較的少ししか知られていない。CE活性が欠如した細胞は、CPT−11を活性代謝物SN−38に変換することができず、in vitroにおいてプロドラッグに対する感受性の減少を示す(53)。本発明者等は、野生型p53の存在下および非存在下の両方において、CPT−11耐性細胞におけるCE mRNAレベルの減少を示した。しかし、in vivoでは肝臓変換が最も優勢と思われるので、腫瘍細胞内のCE活性はこの薬剤に対する感受性を決定するのに主要な役割を果たさないだろう。実際に、本発明者等は、これらのCPT−11耐性細胞はまた、SN−38に耐性であることを示し、耐性表現型は、CE発現レベルの低さに左右されないことを示した。既に述べたように、BCRP輸送体は、SN−38の胆汁中排泄に関与することが示唆された(54)。本研究では、本発明者等は、p53+/+およびp53−/−CPT−11耐性細胞両方において、BCRP mRNAの著しい上方制御を示した。現在では、SN−38のBCRP媒介輸送とCPT−11耐性との臨床的関連に関する情報はほとんど入手できない。TOPO Iは、SN−38の細胞標的であるので、TOPO Iの細胞レベルはCPT−11感受性に比例すると考えられる。この見解は、細胞中のTOPO I発現の減少が、感受性親細胞と比較して、CPT−11に対して耐性にさせることを報告した何人かの研究者による実験証拠によって支持される(11、55、56)。本研究では、本発明者等は、p53+/+およびp53−/−の両方の場合において、CPT−11耐性細胞中のTOPO I mRNAの劇的な下方制御を示した。CPT−11耐性細胞におけるTOPO I発現の減少がこのII型トポイソメラーゼの過剰発現によって補われるという報告に続いて、本発明者等はさらに、TOPO IIαのmRNAレベルを調べたが、本発明者等は、本発明者のモデル系におけるTOPO IIα mRNA発現の変化の証拠を発見しなかった。今までに、トポイソメラーゼ発現とCPT−11に対する反応性との間の一貫した関連は示されていない。
【0111】
結論として、本発明者等は、5−FU、オキサリプラチンおよびCPT−11に対して耐性の一群のp53+/+およびp53−/−同質遺伝子的結腸癌細胞株の作製に成功した。本発明者等は、進行型CRCの治療で使用する化学療法に対する応答の予測に関与するいくつかのマーカーの発現レベルを確立するために、これらの細胞株を使用した。さらに、本発明者等は、p53の潜在的役として、5−FUおよびオキサリプラチンに対する応答の重要な決定因子であるが、CPT−11に対する決定因子ではないことを示した。結腸直腸癌においてp53変異の発生率が高いことを考慮すると、これは興味深い所見であり、CPT−11は、p53野生型および変異腫瘍の治療に同等に有効であり得ることを示唆している。さらに研究するために、本発明者等は、DNAマイクロアレイおよびプロテオミクス技術と一緒にこのモデル系を使用して、野生型p53の存在下および非存在下における化学感受性の新規決定因子を同定し、臨床の場における有用性を評価することを企図する。
【0112】
本明細書で言及した文書は全て、本明細書に参考として援用する。本発明の範囲および精神を逸脱しない本発明で記載した実施形態の様々な改変および変更は、当業者には明らかであろう。本発明は特定の好ましい実施形態に関連して説明したが、請求された本発明はこのような特定の実施形態に不当に制限されないことを理解されたい。実際に、記載された当業者に明らかな本発明実施様式の様々な変更は、本発明の対照として含まれるものとする。
【0113】
【表1】

【0114】
表2A 5−FU、オキサリプラチン、およびCPT−11処理p53+/+HCT116親細胞および薬剤耐性細胞のMTT測定から得られたIC50(72時間)値。値は、Graphpad Prismソフトウェア(Graphpad Software Inc.、San Diego、CA)を使用して算出した。
【0115】
【表2A】

【0116】
表2B 5−FU、オキサリプラチン、およびCPT−11処理p53−/−HCT116親細胞および薬剤耐性細胞のMTT測定から得られたIC50(72時間)値。値は、Graphpad Prismソフトウェア(Graphpad Software Inc.)を使用して算出した。
【0117】
【表2B】

【0118】
表3 SN−38処理p53+/+およびp53−/−HCT116親細胞および薬剤耐性細胞のMTT測定から得られたIC50(72時間)値。値は、Graphpad Prismソフトウェア(Graphpad Software Inc.)を使用して算出した。
【0119】
【表3】

【0120】
表4 カルボプラチン処理p53+/+およびp53−/−HCT116親細胞およびオキサリプラチン耐性細胞のMTT測定から得られたIC50(72時間)値。値は、Graphpad Prismソフトウェア(Graphpad Software Inc.)を使用して算出した。
【0121】
【表4】

【0122】
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【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】(A)5−FU 0μM、1μM、5μMおよび10μM、(B)オキサリプラチン(OXA) 0μM、0.5μM、1μMおよび5μM、および(c)CPT−11 0μM、0.5μM、1μMおよび5μMで処理した後のp53+/+HCT116親細胞および耐性細胞の細胞周期分布を示した図である。
【図2】(A)5−FU 0μM、1μM、5μMおよび10μM、(B)オキサリプラチン(OXA) 0μM、0.5μM、1μMおよび5μM、および(c)CPT−11 0μM、0.5μM、1μMおよび5μMで処理した後のp53−/−HCT116親細胞および耐性細胞の細胞周期分布を示した図である。
【図3】様々な濃度の(A)5−FUおよび(B)オキサリプラチン(OXA)で72時間処理したp53−/−HCT116細胞におけるアポトーシスレベルの減少をp53+/+細胞と比較して示した図である。(C)CPT−11で処理したp53+/+およびp53−/−細胞は同一のアポトーシスレベルを示す。(D)CPT−11 5μMで48時間処理した後のp53+/+およびp53−/−HCT116細胞におけるPARP切断を示したウェスタンブロットの図である。5−FU 5μMおよびオキサリプラチン 1μMで48時間曝露した後、PARP切断はp53+/+細胞でのみ明瞭であった。
【図4】(A)p53+/+およびp53−/−HCT116親細胞および5−FU耐性細胞におけるチミジル酸合成酵素(TS)、ジヒドロピリミジン脱水素酵素(DPD)、チミジンホスホリラーゼ(TP)、チミジンキナーゼ(TK)、オロチン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ(OPRT)、ウリジンホスホリラーゼ(UP)およびウリジンキナーゼ(UK)の基準mRNA発現レベルを示した図である。(B)p53+/+およびp53−/−HCT116親細胞およびオキサリプラチン耐性細胞における除去修復種間相補蛋白質1(ERCC1)、ガンマ−グルタミルシステイン合成酵素(γGCS)、乳癌耐性蛋白質(BCRP)および色素性乾皮症群A相補蛋白質(XPA)の基準mRNA発現レベルを示した図である。(C)p53+/+およびp53−/−HCT116親細胞およびCPT−11耐性細胞におけるカルボキシルエステラーゼ(CE)、トポイソメラーゼI(TOPO I)、BCRPおよびトポイソメラーゼIIアルファ(TOPO IIα)の基準mRNA発現レベルを示した図である。それぞれの場合において、GAPDH mRNA発現を添加対照として評価した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラチナをベースとした化学療法薬によるin vivo治療に対する癌細胞の応答を予測する方法であって、
(a)対象から腫瘍細胞を含有するin vitro試料を準備するステップと、
(b)BCRP蛋白質をコードする1種または複数の遺伝子の基準発現を測定するステップと
を含み、
前記遺伝子の発現亢進が化学治療薬に対する耐性の増強と相関する方法。
【請求項2】
プラチナをベースとした化学療法薬に対して癌細胞を感作する方法であって、前記細胞にBCRP阻害剤を投与するステップを含む方法。
【請求項3】
治療有効量のBCRP阻害剤およびプラチナをベースとした化学療法薬を、別々に、連続して、もしくは同時に投与することを含む癌の治療法。
【請求項4】
癌治療用の薬剤調製におけるBCRP阻害剤およびプラチナをベースとした化学療法薬の使用。
【請求項5】
癌治療用の医薬組成物であって、BCRP阻害剤と、プラチナをベースとした化学療法薬と、薬剤として許容される賦形剤、希釈剤または担体とを含む組成物。
【請求項6】
癌の治療において、同時に、別々に、もしくは連続して使用するための併用調製物として、
a)BCRP阻害剤と、
b)プラチナをベースとした化学療法薬と
を含む製品。
【請求項7】
癌治療用キットであって、
a)BCRP阻害剤と、
b)プラチナをベースとした化学療法薬と、
c)(a)および(b)を別々に、連続して、もしくは同時に投与するための指示書と
を含むキット。
【請求項8】
癌の治療において使用するための化学療法薬を同定する測定方法であって、
(a)腫瘍細胞の試料を提供するステップと、
(b)前記試料の一部を化学療法薬候補に曝露するステップと、
(c)前記試料中のBCRPの発現を測定するステップと
を含み、
対照試料中の発現と比較してBCRPの発現が減少していることが化学療法活性の指標となる方法。
【請求項9】
化学療法薬がオキサリプラチンである、請求項1、2または3に記載の方法、請求項4に記載の使用、請求項5に記載の組成物、請求項6に記載の製品または請求項7に記載のキット。
【請求項10】
前記癌が結腸直腸癌である、請求項1、2、3、8または9に記載の方法、請求項4または9に記載の使用、請求項5または9に記載の組成物、請求項6または9に記載の製品または請求項7または9に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−528730(P2007−528730A)
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−502410(P2007−502410)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【国際出願番号】PCT/GB2005/001022
【国際公開番号】WO2005/087948
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(504389636)ザ クイーンズ ユニヴァーシティ オブ ベルファスト (14)
【Fターム(参考)】