説明

治療剤の送達のためのフィルム

【課題】増強された治療剤含有量を示す、治療剤の送達のためのフィルムを提供すること
【解決手段】第一の疎水性ポリマーを含有する第一の層;第三の疎水性ポリマーを含有する第三の層;ならびにこの第一の層とこの第三の層との間に配置された第二の層であって、この第二の層は、第二の疎水性ポリマーおよび少なくとも1種の水溶性治療剤を含有する、第二の層を備える、多層フィルム。一つの実施形態において、上記第一の疎水性ポリマー、第二の疎水性ポリマー、および第三の疎水性ポリマーのうちの少なくとも1つが、脂肪族ポリエステル、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリオルトエステル、ポリウレタン、ポリ酸無水物、ポリマー薬物、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、米国仮特許出願番号61/362,483の利益および優先権を主張する。この米国仮特許出願の全開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本開示は、治療剤の送達のためのフィルムを記載し、そしてより特定すると、少なくとも1種の疎水性ポリマーおよび少なくとも1種の水溶性治療剤を含有する、治療剤の送達のためのフィルムを記載する。
【背景技術】
【0003】
移植可能な医療デバイスの使用による治療剤の送達は、広範な種々の様式で記載されている。このような治療剤の送達の既存の方法は、主として、水溶性薬物および親水性ポリマーを使用して、医療デバイスの表面上に配置される薄い表面コーティングを形成することに焦点を当てる。これらの方法は、制限された治療剤含有量(therapeutic payload)を提供する。
【0004】
さらに、水溶性が高い薬物は、疎水性または水に不溶性の薬物キャリア(すなわち、疎水性ポリマー)を用いると特に有用である有機系において、限られた溶解度を与え得る点で、制御放出のために処方することが困難であり得る。水溶性が高い薬物の制限された溶解度は、さらに、移植可能なデバイスへの薬物の乏しいカプセル化効率および制限された治療剤含有量をもたらし得る。このような親水性薬物は、徐放のために充分な水拡散障壁を必要とする。現行の系は、薬物含有量および徐放の観点(治療的利益を与えることを含む)から、正当性を疑われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
増強された治療剤含有量を示す、治療剤の送達のためのフィルムを提供することが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
第一の疎水性ポリマーを含有する第一の層;
第三の疎水性ポリマーを含有する第三の層;ならびに
該第一の層と該第三の層との間に配置された第二の層であって、該第二の層は、第二の疎水性ポリマーおよび少なくとも1種の水溶性治療剤を含有する、第二の層、
を備える、多層フィルム。
(項目2)
前記第一の疎水性ポリマー、第二の疎水性ポリマー、および第三の疎水性ポリマーのうちの少なくとも1つが、脂肪族ポリエステル、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリオルトエステル、ポリウレタン、ポリ酸無水物、ポリマー薬物、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目に記載の多層フィルム。
(項目3)
前記脂肪族ポリエステルが、ラクチド;グリコリド;トリメチレンカーボネート;δ−バレロラクトン;β−ブチロラクトン;γ−ブチロラクトン;ε−デカラクトン;ヒドロキシブチレート;ヒドロキシバレレート;1,4−ジオキセパン−2−オン;1,5−ジオキセパン−2−オン;6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン;2,5−ジケトモルホリン;ピバロラクトン;α,α−ジエチルプロピオラクトン;エチレンカーボネート;エチレンオキサレート;3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン;3,3−ジエチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン;6,8−ジオキサビシクロオクタン−7−オン;ならびにこれらのホモポリマーおよびコポリマー、ならびに組み合わせからなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の多層フィルム。
(項目4)
前記第一の層、第二の層および第三の層の前記疎水性ポリマーが、約10重量%のグリコリドと約90重量%のε−カプロラクトンとのコポリマーを含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の多層フィルム。
(項目5)
前記多層フィルムがスプレーコーティングによって形成されている、上記項目のうちのいずれかに記載の多層フィルム。
(項目6)
前記スプレーコーティングが超音波スプレーコーティングを包含する、上記項目のうちのいずれかに記載の多層フィルム。
(項目7)
前記少なくとも1種の水溶性治療剤が、ブピバカイン、5−フルオロウラシル、シスプラチン、メトトレキサート、およびカプサイシンからなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の多層フィルム。
(項目8)
前記少なくとも1種の水溶性治療剤が塩酸ブピバカインである、上記項目のうちのいずれかに記載の多層フィルム。
(項目9)
前記少なくとも1種の水溶性治療剤が、約1mg/cm〜約50mg/cmの治療剤含有量を有する、上記項目のうちのいずれかに記載の多層フィルム。
(項目10)
第一の表面および第二の表面を有するメッシュをさらに備える、上記項目のうちのいずれかに記載の多層フィルム。
(項目11)
前記メッシュが、前記第一の層と前記第三の層との間に配置されている、上記項目のうちのいずれかに記載の多層フィルム。
(項目12)
前記メッシュの前記第一の表面が、前記第一の層および前記第三の層のうちの少なくとも一方に隣接して配置されている、上記項目のうちのいずれかに記載の多層フィルム。
(項目13)
コラーゲンフィルムをさらに備える、上記項目のうちのいずれかに記載の多層フィルム。
(項目14)
がんを処置するための、上記項目のうちのいずれかに記載の多層フィルムであって、該がんが、乳がん、肺がん、食道がん、胃がん、結腸がん、および脳がんからなる群より選択される、多層フィルム。
(項目15)
前記少なくとも1種の水溶性治療剤が、5−フルオロウラシル、シスプラチン、およびメトトレキサートからなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の多層フィルム。
(項目16)
術後疼痛を処置するための、上記項目のうちのいずれかに記載の多層フィルムであって、該術後疼痛が、ヘルニア修復、子宮摘出術、開胸術、冠状動脈バイパス、痔核切除術、癒着切離、乳房再建術、脊柱外科手術、および関節交換/修復からなる群より選択される外科手術に関連する、多層フィルム。
(項目17)
少なくとも1種の水溶性治療剤が、塩酸ブピバカインおよびカプサイシンからなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の多層フィルム。
(項目18)
少なくとも300mg/cmのブピバカインHClの治療剤含有量を含む、上記項目のうちのいずれかに記載の多層フィルム。
(項目19)
コラーゲンフィルムを備えるメッシュ;ならびに
多層フィルムであって、該多層フィルムは、第一の疎水性ポリマーを含有する第一の層、第三の疎水性ポリマーを含有する第三の層、および該第一の層と該第三の層との間に配置された第二の層を備え、該第二の層は、第二の疎水性ポリマーおよび少なくとも1種の水溶性治療剤を含有する、多層フィルム、
を備える、多層フィルム複合材。
(項目20)
前記メッシュが第一の表面および第二の表面を備える、上記項目に記載の多層フィルム複合材。
(項目21)
コラーゲンフィルムを提供する工程;
少なくとも1種の疎水性ポリマーを含有する第一の溶液を提供する工程;
少なくとも1種の水溶性治療剤を含有する第二の溶液を提供する工程;
第一の溶液を第一のスプレーノズルに通して、該第一の溶液の第一の液滴を発生させる工程;
該第一の液滴を該コラーゲンフィルム上に堆積させて、第一の層を形成する工程;
該第二の溶液を第二のスプレーノズルに通して、該第二の溶液の第二の液滴を発生させる工程;
該第二の液滴を該第一の層上に堆積させて、第二の層を形成する工程;ならびに
該第一の層および第二の層を乾燥させて、多層フィルム複合材を形成する工程、
を包含する、多層フィルム複合材を作製する方法。
(項目22)
前記多層フィルム複合材をメッシュと合わせる工程をさらに包含する、上記項目に記載の方法。
(項目23)
前記第一の液滴を前記第二の層上に堆積させて、第三の層を形成する工程をさらに包含する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目24)
前記乾燥させる工程が周囲温度で行われる、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目25)
上記項目のうちのいずれかに記載の多層フィルムを利用して、乳がん、肺がん、食道がん、胃がん、結腸がん、および脳がんからなる群より選択されるがんを処置する方法。
(項目26)
上記少なくとも1種の水溶性治療剤が、5−フルオロウラシル、シスプラチン、およびメトトレキサートからなる群より選択される、上記項目に記載の方法。
(項目27)
上記項目のうちのいずれかに記載の多層フィルムを利用して術後疼痛を処置する方法であって、該術後疼痛が、ヘルニア修復、子宮摘出術、開胸術、冠状動脈バイパス、痔核切除術、癒着切離、乳房再建術、脊柱外科手術、および関節交換/修復からなる群より選択される外科手術に関連する、方法。
(項目28)
少なくとも1種の水溶性治療剤が、塩酸ブピバカインおよびカプサイシンからなる群より選択される、上記項目に記載の方法。
【0007】
(摘要)
本開示は、少なくとも1種の疎水性ポリマーおよび少なくとも1種の治療剤を備える、治療剤の送達のための自己支持型フィルムに関する。多層フィルムを形成する方法もまた開示される。
【0008】
(要旨)
多層フィルムが提供され、この多層フィルムは、第一の疎水性ポリマーを含有する第一の層;第三の疎水性ポリマーを含有する第三の層;ならびにこの第一の層とこの第三の層との間に配置された第二の層であって、この第二の層は、第二の疎水性ポリマーおよび水溶性治療剤を含有する、第二の層を備える。この第一の疎水性ポリマー、第二の疎水性ポリマー、または第三の疎水性ポリマーは、脂肪族ポリエステル、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリオルトエステル、ポリウレタン、ポリ酸無水物、ポリマー薬物、およびこれらの組み合わせから選択され得る。より具体的には、この脂肪族ポリエステルは、ラクチド;グリコリド;トリメチレンカーボネート;δ−バレロラクトン;β−ブチロラクトン;γ−ブチロラクトン;ε−デカラクトン;ヒドロキシブチレート;ヒドロキシバレレート;1,4−ジオキセパン−2−オン;1,5−ジオキセパン−2−オン;6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン;2,5−ジケトモルホリン;ピバロラクトン;α,α−ジエチルプロピオラクトン;エチレンカーボネート;エチレンオキサレート;3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン;3,3−ジエチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン;6,8−ジオキサビシクロオクタン−7−オン;ならびにこれらのホモポリマーおよびコポリマーならびに組み合わせから選択され得る。1つの実施形態において、第一の疎水性ポリマー、第二の疎水性ポリマー、または第三の疎水性ポリマーのうちの少なくとも1つは、約10重量%のグリコリドと約90重量%のε−カプロラクトンとのコポリマーを含有する。
【0009】
この多層フィルムは、少なくとも1種の水溶性治療剤を含有し、この水溶性治療剤は、抗菌剤、麻酔薬、鎮痛薬、抗がん剤、脈管形成剤、防腐剤、抗生物質、線維症剤、抗有糸分裂薬、キレート剤、ペプチド、タンパク質、DNA、RNA、ヌクレオチド、リポソーム、血液製剤、ホルモン、水溶性銀塩、増殖因子、成長因子、抗体、インターロイキン、サイトカイン、およびこれらの組み合わせから選択され得る。いくつかの実施形態において、この少なくとも1種の水溶性治療剤は、ブピバカイン、5−フルオロウラシル、シスプラチン、メトトレキサート、およびカプサイシンから選択される。より具体的には、この少なくとも1種の水溶性治療剤は、塩酸ブピバカインを含有し得る。本明細書中に開示される少なくとも1種の水溶性治療剤は、約1mg/cm〜約50mg/cmの治療剤含有量を有し得る。あるいは、この多層フィルムは、少なくとも300mg/cmのブピバカインHClの治療剤含有量を含有し得る。
【0010】
特定の実施形態において、この多層フィルムは、メッシュと組み合わせられる。このメッシュは、第一の表面および第二の表面を有する。このメッシュは、第一の層と第三の層との間に配置され得る。このメッシュの第一の表面はまた、第一の層および第三の層のうちの少なくとも一方に隣接して配置され得る。
【0011】
いくつかの実施形態において、この多層フィルムは、コラーゲンフィルムをさらに備える。
【0012】
1つの実施形態において、多層フィルム複合材が開示され、この多層フィルム複合材は、コラーゲンフィルムを含有するメッシュおよび多層フィルムを備え、この多層フィルムは、第一の疎水性ポリマーを含有する第一の層、第三の疎水性ポリマーを含有する第三の層、およびこの第一の層とこの第三の層との間に配置された第二の層を備え、この第二の層は、第二の疎水性ポリマーおよび少なくとも1種の水溶性治療剤を含有する。このコラーゲンフィルムは、このメッシュの第一の表面および第二の表面のうちの少なくとも一方に隣接して配置され得る。
【0013】
多層フィルム複合材を作製する方法が本明細書中に提供され、この方法は、コラーゲンフィルムを提供する工程;少なくとも1種の疎水性ポリマーを含有する第一の溶液を提供する工程;少なくとも1種の水溶性治療剤を含有する第二の溶液;この第一の溶液を第一のスプレーノズルに通して、この第一の溶液の第一の液滴を発生させる工程;これらの第一の液滴をコラーゲンフィルム上に堆積させて第一の層を形成する工程;この第二の溶液を第二のスプレーノズルに通して、この第二の溶液の第二の液滴を発生させる工程;これらの第二の液滴をこの第一の層上に堆積させて第二の層を形成する工程;ならびにこの第一の層およびこの第二の層を乾燥させて、多層フィルム複合材を形成する工程を包含する。この方法は、この多層フィルム複合材をメッシュと組み合わせる工程をさらに包含し得る。さらに、この方法は、第一の液滴を第二の層上に堆積させて第三の層を形成する工程を包含し得る。
【0014】
がんを処置する方法もまた本明細書中に開示される。本明細書中に開示される多層フィルムを利用して処置され得るより抜きのがんとしては、乳がん、肺がん、食道がん、胃がん、結腸がん、および脳がんなどのがんが挙げられる。
【0015】
術後疼痛を処置する方法が、本明細書中に開示される。ヘルニア修復、子宮摘出術、開胸術、冠状動脈バイパス、痔核切除術、癒着切離、乳房再建術、脊柱外科手術、および関節交換/修復などの外科手術に関連する術後疼痛が、本明細書中に開示される多層フィルムを利用して処置され得る。
【0016】
本開示のこれらおよび他の特徴は、添付の図面と組み合わせて、以下の詳細な説明を参照することによって、より完全に理解される。
【発明の効果】
【0017】
増強された治療剤含有量を示す、治療剤の送達のためのフィルムを提供すること。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本開示に記載される1つの実施形態による、フィルムとして実現された障壁層の模式図である。
【図2】図2A、図2B、および図2Cは、本開示に記載される実施形態に従う多層フィルムの断面図である。
【図3】図3A、図3B、図3C、図3D、図3E、および図3Fは、本開示に記載される他の実施形態に従う多層フィルムの模式図である。
【図4A】図4Aは、本開示に記載されるなお別の実施形態に従う多層フィルムの断面図である。
【図4B】図4Bは、本開示に記載されるなお別の実施形態に従う多層フィルムの断面図である。
【図5】図5は、本開示の1つの実施形態に従う不連続層を備える多層フィルムの断面図である。
【図6】図6は、本開示の別の実施形態に従う多層フィルム複合材の断面図である。
【図7】図7は、本開示による多層フィルムがどのように形成されるかの1つの例を図示する、部分的に断面である概略図である。
【図8】図8は、浸漬コーティングにより調製された医療デバイスへの治療剤含有量の比較を図示するグラフである。
【図9】図9は、浸漬コーティングおよびスプレーコーティングにより調製された医療デバイスへの治療剤含有量の比較を図示するグラフである。
【図10】図10は、多層型の、ポーチ構成の医療デバイスからのブピバカインHCLの治療剤放出の比較を図示するグラフである。
【図11】図11は、様々な厚さのフィルムからのブピバカインHCLの治療剤放出の比較を図示するグラフである。
【図12】図12は、噴霧器の様々な液だめ(oasis)から形成されたフィルムからのブピバカインHCLの治療剤放出の比較を図示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示は、治療剤の送達のために適切なフィルムを記載する。この移植可能なフィルムは、少なくとも1種の疎水性ポリマーおよび少なくとも1種の水溶性治療剤を含有する。これらのフィルムは、高い治療剤含有量の治療剤を含有し、そして多層状であり得る。多層状フィルムによって、多層状フィルムが1つより多くのフィルム層を備えることが理解されるべきである。例えば、1つの多層状フィルムは、少なくとも2つのフィルム層を備え得る。
【0020】
これらのフィルムは、移植前、移植中および/または移植後に、このフィルムがほぼ平坦な構成を維持するために充分な機械的強度を示す、ほぼ平坦な構成を形成し得る。これらのフィルムは、支持のためにも、所定の構成を維持するためにも、さらなる基材を必要としないが、いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるフィルムはまた、移植可能な医療デバイス(例えば、外科手術用メッシュ)と組み合わせられてもよいことが想定される。
【0021】
特定の実施形態において、この多層フィルムは、外科手術用メッシュと組み合わせられて、多層複合材を作製する。
【0022】
本明細書中に記載される外科手術用メッシュは、相互に捩じられたフィラメントから作製された、多孔性布を備え得る。これらのフィラメントは、これらのフィラメントが互いに重なり合って共通の交点を作製する交差部を作製する様式で、水平方向および垂直方向に延び得る。この外科手術用メッシュは、製織され得るか、不織であり得るか、編成され得るか、または編組され得る。いくつかの実施形態において、これらのフィラメントは、二次元メッシュを形成しても三次元メッシュを形成してもよい。二次元メッシュ基材および/または三次元メッシュ基材のいくつかの例は、米国特許第7,021,086号、米国特許第6,596,002号、および米国特許第7,331,199号に見出され得、これらの各々の全内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0023】
特定の実施形態において、織り地ベースではないメッシュは、打抜きまたはレーザー切断、射出成形、および通電スピニングプロセスを利用して製造され得る。
【0024】
本開示において使用するために適切なメッシュとしては、例えば、コラーゲン複合メッシュ(例えば、PARIETEXTM複合メッシュ(Covidienとして事業実施中のTyco Healthcare Group LPから市販されている))が挙げられる。PARIETEXTM複合メッシュは、再吸収性コラーゲンフィルムが片面に接着された、三次元ポリエステル織物である。別の適切なメッシュとしては、Parietex ProgripTM自己固定メッシュ(これもまた、Covidienから市販されている)が挙げられる。Parietex Progrip TMは、ポリ乳酸(PLA)マイクログリップを備えるポリエステルメッシュである。他の適切なメッシュとしては、PARIETENE(登録商標)、PARIETEXTM、およびSURGIPROTM(全て、Covidienから市販されている);PROLENETM(Ethicon,Inc.から市販されている);MARLEX(登録商標)、DULEX(登録商標)、3D MAX(登録商標)メッシュ、PERFIX(登録商標)プラグ、VENTRALEX(登録商標)、およびKUGEL(登録商標)パッチ(全て、C.R.Bard,Inc.から市販されている);PROLITETMおよびPROLITE ULTRATM(全て、Atrium Medicalから市販されている);COMPOSIX(登録商標)、SEPRAMESH(登録商標)、およびVISILEX(登録商標)(全て、Davol,Inc.から市販されている);およびDUALMESH(登録商標)、MYCROMESH(登録商標)、およびINFINIT(登録商標)メッシュ(全て、W.L.Goreから市販されている)の名称で販売されているメッシュが挙げられる。さらに、本開示の範囲および文脈内であるメッシュは、生物学的材料(例えば、同種移植片(例えば、Lifecell製のAlloDerm(登録商標)再生組織マトリックス)、自家移植片、および異種移植片(例えば、Covidien製のPERMACOLTM))を含み得る。代替の実施形態において、加工/精製された組織もまた使用され得る。
【0025】
特定の実施形態において、ParietexTM Composite MeshまたはParietexTM Pro−gripが、本開示に従って利用され得る。
【0026】
他の適切な織り地ベースではないメッシュとしては、発泡体、フィルム、スポンジ、複合材、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0027】
これらのフィルムの厚さは、このフィルム中の層の数、およびスプレープロセス中の「パス」の数(後述)に依存して変動し得る。しかし、本明細書中に記載されるフィルムの厚さは、平均して約0.1μm〜約3000μmであり得る。いくつかの実施形態において、これらのフィルムの厚さは、約1.0μm〜約1000μmであり得る。なお他の実施形態において、これらのフィルムの厚さは、約10μm〜約500μmであり得る。フィルムの厚さは、多層フィルムの機械的強度などのパラメータに影響を与え得る。
【0028】
本明細書中に記載されるフィルムはまた、特に、等しい厚さの公知の他のフィルムと比較して、高い治療剤含有量の少なくとも1種の治療剤を含有し得る。例えば、いくつかの実施形態において、この治療剤は、約0.1mg/cm〜約50mg/cmで存在し得る。なお他の実施形態において、この治療剤は、約1mg/cm〜約25mg/cmで存在し得る。より具体的には、5−フルオロウラシル、メトトレキサート、カプサイシン、および塩酸ブピバカインの治療剤含有量は、少なくとも1mg/cmであり、約50mg/cmまでである。他の実施形態において、異なる治療剤が、異なる量で存在し得る。
【0029】
溶媒キャスティングまたは浸漬コーティングにより形成されたコーティングまたはフィルムとは異なり、本明細書中に記載される治療フィルムは、共通の溶媒中での、水溶性の剤および/または疎水性ポリマーの溶解度によって制限されない。むしろ、これらのフィルムの疎水性ポリマーおよび治療剤は、共通の溶媒を共有せず、従って、この水溶性治療剤は、疎水性ポリマーによる溶解度に制限されない。例えば、これらのフィルムは、少なくとも2つの溶媒を使用して形成され得、ここでこの疎水性ポリマーは、第一の溶媒(例えば、有機溶媒または疎水性溶媒)中で第一の溶液を形成し、そしてこの水溶性治療剤は、第二の溶媒(例えば、親水性溶媒)中で第二の溶液を形成する。
【0030】
さらに、医療デバイス(例えば、メッシュ)上にフィルムをスプレーすることは、他の従来の方法(例えば、浸漬コーティング)と比較して、治療剤の増加された含有量を提供すると考えられる。以下の図8に実証されるように、塩酸ブピバカイン(ブピバカインHCl)溶液(水中)を浸漬コーティングする際の飽和限界および含有量限界は、5%w/v(重量/体積)であり、一方で、ブピバカインHCl溶液(MeOH中)の浸漬コーティングでは、12%w/vである。
【0031】
より具体的には、図8は、ポリマーフィルムなしのポリエステルメッシュ(ParietexTMモノフィラメントメッシュ)についての含有量限界を図示する。
【0032】
図9は、メッシュをブピバカインHClで、水中(AQ)およびアルコール中(ALC)で浸漬コーティング方法を利用してコーティングすることを、実施例5に記載されるように超音波スプレーされたフィルム(PS35−1、PS30−4)と比較して、図8に提示されるデータを図示する。浸漬コーティングされたメッシュAQ(水性、例えば水)およびALC(アルコール、例えばMeOH)についての含有量限界は、1mg/cmを超えない。逆に、本明細書中に記載されるように超音波スプレーを使用して作製されたフィルムは、少なくとも約25mg/cmまでの含有量に構成され得る。メッシュ上にフィルムを超音波スプレーすることにより生じる薬物含有量は、メッシュを浸漬コーティングすることによる薬物含有量とは異なり、300mgを超える臨床目標含有量に達する。
【0033】
フィルムが高い治療剤含有量の治療剤を含有する能力は、これらのフィルムが形成され得る独特の様式の結果であり得る。例えば、本明細書中に記載されるようなフィルムは、疎水性ポリマーを含有する第一の溶液、および治療剤を含有する第二の溶液を、超音波スプレーノズルに通して液滴を形成することにより、製造され得る。これらの液滴は、基材に向かって落下する間、または基材上に堆積する間に混合し得る。この基材は、特定の実施形態において、コラーゲンフィルムであり得る。他の実施形態において、これらの液滴は、不活性基材(例えば、シリコーンシート)上に堆積し得、そして乾燥後、そのフィルムは、この不活性基材から分離され得る。
【0034】
このフィルムの厚さは、第一の溶液および第二の溶液の塗布の回数、第一の溶液および第二の溶液をスプレーする時間の長さ/速度、ポリマー溶液の組成、薬物溶液の組成、流量、ならびに粘度改質剤などの添加剤の使用などの要因によって、制御され得る。
【0035】
本開示のフィルムは、連続フィルムまたは不連続フィルムを備え得る。例えば、図2A〜図2Cおよび図4A〜図4Bに示されるような連続フィルムは、少なくとも1つの、単一の分断されない層を備える。別の実施形態において、フィルム、またはフィルムの層は、図5に図示されるように、不連続であり得る(後述)。多層フィルムの個々の層は、連続であっても不連続であってもよい。
【0036】
さらに、このフィルムの構築は、薬物の放出および拡散などのパラメータを制御し得る。いくつかの実施形態において、治療剤を含有する層は、多層フィルムの縁部まで広がる(図4Aを参照のこと)。なお代替の実施形態において、治療剤を含有する層は、多層フィルムの縁部までは広がらず、本明細書中で、ポーチ構成と称される(図4Bを参照のこと)。放出速度は、その治療剤が多層フィルムの縁部に存在するか否かに依存して、変動し得る。図10は、ブピバカインHCl放出がポーチ構成を利用して遅くされている、1つの例示的実施形態を図示する。多層型の構成は、約17.7mg/cmのブピバカインHClを含有するように処方されており、そしてこのポーチ構成は、約17.8mg/cmのブピバカインHClを含有するように処方されている。本明細書中に記載される実施例7は、加工パラメータなどに関するさらなる情報を提供する。以下のデータがより長い期間にわたって抽出されるならば、これらの2つの構成についての全放出量がおよそ類似であることが理解されるべきである。
【0037】
フィルムの厚さはまた、薬物の放出および拡散において、役割を果たし得る。例えば、フィルムの厚さが増加するにつれて、治療剤の放出速度が低下するか、または経時的に遅くなることが示されている。このデータは、図10に図示されている。
【0038】
図11において作製されたフィルムが、実施例5により詳細に記載されている。より厚いフィルム(例えば、パスの回数が増加している)は、より薄いフィルムと比較して、遅い放出速度を有する。上記の両方のフィルムは、約24mg/cmのブピバカインHClを含有するように処方されている。以下のデータがより長い時点にわたって抽出されるならば、異なる構成についての全放出量がおよそ類似であることが理解されるべきである。
【0039】
同様に、縁部が閉じたサンプルについては、フィルムの厚さを増加させ、そして/または1つの層あたりのパスの回数を変化させることによって、治療剤の放出速度が変化する。図12は、各外側層におけるパスの回数を増加させることによって、放出プロフィールおよび放出速度がどのように変化するかを図示する。この放出速度は、外側層のパスの回数が増加するにつれて、遅くなる。示されるサンプルは、例示的な実施形態であり、そして放出速度および望まれる全放出量に依存して、これらのパラメータは、全放出量および放出速度を変化させるために変更され得る。以下のデータがより長い時点にわたって抽出されるならば、異なる構成についての全放出量がおよそ類似であることが理解されるべきである。本明細書中に記載される実施例6は、加工パラメータなどに関するさらなる情報を提供する。
【0040】
いくつかの実施形態において、これらのフィルムは、疎水性ポリマーおよび治療剤を含有する1つの層を備える。多層状フィルムは、親水性ポリマーおよび治療剤を含有するフィルムの数個の層を積み重ねるかまたは合わせることによって、作製され得る。他の実施形態において、これらの多層状フィルムは、疎水性ポリマーを含有する第一の層、および治療剤を含有する第二の層を備える。一方向薬物送達を提供するために、治療剤の露出した層を有することが有用であり得る。
【0041】
他の実施形態において、これらのフィルムは、三層構造体を備え、ここで治療剤を含有する第三の層が、ある疎水性ポリマーを含有する第一の層と、同じかまたは異なる疎水性ポリマーを含有する第二の層との間に配置される。この第三の層は、疎水性ポリマーおよび治療剤を含有し得、一方で、この第一の層およびこの第二の層は、疎水性ポリマーのみを含有し得る。例えば、この第一の層およびこの第二の層は、約10重量%のグリコリドと約90重量%のε−カプロラクトンとのコポリマーを含有し得、一方で、この第三の層は、約10重量%のグリコリドと約90重量%のε−カプロラクトンとのコポリマーを、塩酸ブピバカインと組み合わせて含有し得る。
【0042】
この三層構造体は、サンドイッチ型構造体と同様に、他の一層構造体、二層構造体、および/または三層構造体を備える他のフィルムと組み合わせられ得る。先に議論されたように、本明細書中に開示される多層フィルムのうちの任意のものが、メッシュと組み合わせられ得る。複数の層は、意図される用途および薬物放出プロフィールに依存して、類似のポリマーを利用しても異なるポリマーを利用してもよいことが留意されるべきである。さらに、より厚い層およびより薄い層が、プロセス変動によって作製され得る。
【0043】
これらのフィルムは、移植に適しており、そして考慮されるのに充分な機械的強度を示し得る、任意の疎水性ポリマーを含有し得る。特定の層はまた、親水性ポリマーを含有し得る。本開示に従って利用され得る適切な吸収性ポリマーのいくつかの非限定的な例としては、以下の材料が挙げられるか、または以下の材料のうちの少なくとも1つから誘導され得る:脂肪族ポリエステル;ポリアミド;ポリアミン;ポリアルキレンオキサレート;ポリ(酸無水物);ポリアミドエステル;コポリ(エーテル−エステル);ポリ(カーボネート)(チロシン由来のカーボネートが挙げられる);ポリ(ヒドロキシアルカノエート)(例えば、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリ(ヒドロキシ吉草酸)、およびポリ(ヒドロキシブチレート));ポリイミドカーボネート;ポリ(イミノカーボネート)(例えば、ポリ(ビスフェノールA−イミノカーボネート)など);ポリオルトエステル;ポリオキサエステル(アミン基を含むものが挙げられる);ポリホスファゼン;ポリ(フマル酸プロピレン);ポリウレタン;ポリマー薬物(例えば、ポリジフルニサル、ポリアスピリン、およびタンパク質治療剤);生物学的に修飾された(例えば、タンパク質、ペプチド)生体吸収性ポリマー;およびこれらのコポリマー、ブロックコポリマー、ホモポリマー、ブレンド、ならびにこれらの組み合わせ。
【0044】
より具体的には、本開示の目的で、脂肪族ポリエステルとしては、ラクチド(乳酸、D−ラクチド、L−ラクチドおよびメソラクチドが挙げられる);グリコリド(グリコール酸が挙げられる);ε−カプロラクトン;p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン);トリメチレンカーボネート(1,3−ジオキサン−2−オン);トリメチレンカーボネートのアルキル誘導体;δ−バレロラクトン;β−ブチロラクトン;γ−ブチロラクトン;ε−デカラクトン;ヒドロキシブチレート;ヒドロキシバレレート;1,4−ジオキセパン−2−オン(その二量体である1,5,8,12−テトラオキサシクロテトラデカン−7,14−ジオンを含む);1,5−ジオキセパン−2−オン;6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン;2,5−ジケトモルホリン;ピバロラクトン;α,α−ジエチルプロピオラクトン;エチレンカーボネート;エチレンオキサレート;3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン;3,3−ジエチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン;6,8−ジオキサビシクロオクタン−7−オンのホモポリマーおよびコポリマー;ならびにこれらのポリマーブレンドおよびコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
特定の実施形態において、これらの疎水性ポリマーは、ラクチド、グリコリド、ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、およびε−カプロラクトンを含む、ホモポリマーまたはコポリマーを含有し得る。例えば、本明細書中に記載される治療剤は、ラクチドとグリコリド、またはグリコリドとε−カプロラクトンのコポリマー(例えば、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマー)と組み合わせられ得る。グリコリドの量を増加させると、フィルムの分解速度が増加し得る。一方で、ラクチドおよび/またはカプロラクトンの量を増加させると、フィルムの分解または吸収プロフィールが延長され得る。例えば、ラクチドに富むコポリマー(例えば、約50%より多いラクチド)は、特定のポリマー(例えば、グリコリド)の溶解度を増強するために、特に有用であり得る。特定の実施形態において、約10wt(重量)%のグリコリドと約90重量%のε−カプロラクトンとのコポリマーが利用され得る。
【0046】
本開示に従って利用され得る他の適切な生分解性ポリマーとしては、ポリ(アミノ酸)(コラーゲン(I、IIおよびIII)、エラスチン、フィブリン、フィブリノゲン、絹、およびアルブミンなどのタンパク質が挙げられる);ラミニンおよびフィブロネクチンの配列を含むペプチド(RGD);多糖類(例えば、ヒアルロン酸(HA)、デキストラン、アルギネート、キチン、キトサン、およびセルロース);グリコサミノグリカン;ガット;ならびにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。コラーゲンは、本明細書中で使用される場合、天然コラーゲン(例えば、動物由来のコラーゲン、ゼラチン化コラーゲン)、または合成コラーゲン(例えば、ヒト組換えコラーゲンもしくは細菌組換えコラーゲン)を包含する。
【0047】
さらに、合成により修飾された天然ポリマー(例えば、セルロース誘導体および多糖類誘導体(アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、およびキトサンが挙げられる))が利用され得る。適切なセルロース誘導体の例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、三酢酸セルロース、および硫酸セルロースナトリウム塩が挙げられる。これらは本明細書中でまとめて、ある実施形態において、「セルロース」と称され得る。
【0048】
特定の実施形態において、これらの親水性ポリマーは、第一の層、第二の層、および第三の層を含み得る。約10重量%のグリコリドと約90重量%のε−カプロラクトンとのコポリマーが、第一の層、第二の層、および第三の層を形成するために利用され得る。
【0049】
代替の実施形態において、少なくとも1つの層は、疎水性ポリマーを含有し得る。
【0050】
本開示の疎水性ポリマーは、ポリマー溶液を形成し得、このポリマー溶液が次に、超音波噴霧器に通されて、多層状フィルムを作製する。ポリマー溶液は、本開示の目的で、懸濁物、エマルジョン、および分散物などを包含する。ポリマー溶液を形成するために適切な極性溶媒および非極性溶媒のいくつかの非限定的な例としては、塩素化溶媒(例えば、塩化メチレン、ジクロロエタン、パークロロエタン、およびクロロホルム)、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、ヘキサン、アセトン、酢酸、水、生理食塩水およびこれらの組み合わせが挙げられ得る。特定の実施形態において、ポリマー溶液のために使用される溶媒は、治療剤溶液を形成するために使用される溶媒と同じではないかもしれない。より具体的には、第一の溶液(疎水性ポリマーを含有する)は、塩素化溶媒(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロメタン、およびパークロロエタン)を含有し得る。第二の溶液(水溶性治療剤を含有する)は、親水性溶媒(例えば、メタノール、エタノール、水、生理食塩水、イソプロパノール、および酢酸)を含有し得る。このポリマーは、溶液中に約0.5%〜約25%(w/w)、ある実施形態においては溶液中に約1%〜約10%(w/w)で存在し得る。
【0051】
さらに、ポリマー溶液および/または治療剤溶液は、少なくとも1種の任意の成分(例えば、乳化剤、粘度増強剤、色素、顔料、香料、pH改変剤、湿潤剤、可塑剤、酸化防止剤、発泡剤、および両親媒性化合物)を含有し得る。例えば、これらの溶液は、フィルムの多孔度を誘導するために、発泡剤または細孔形成剤を含有し得る。別の例において、これらの溶液は、フィルムの水拡散を増加させるために、両親媒性化合物を含有し得る。これらの任意の成分は、ポリマー溶液の約10%(w/w)までを占め得る。
【0052】
組織反応性化学物質もまた、本開示の多層状フィルムに添加され得る。適切な組織反応性化学物質としては、例えば、反応性シリコーン、イソシアネート、N−ヒドロキシスクシンイミド(「NHS」)、シアノアクリレート、アルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、グリセロアルデヒド、およびジアルデヒド)、ならびにゲニピンが挙げられる。本明細書中で使用される場合、スクシンイミドはまた、スルホスクシンイミド、スクシンイミドエステルおよびスルホスクシンイミドエステル(N−ヒドロキシスクシンイミド(「NHS」)、N−ヒドロキシスルホスクシンイミド(「SNHS」)、N−ヒドロキシエトキシ化スクシンイミド(「ENHS」)、N−ヒドロキシスクシンイミドアクリレート、スクシンイミジルグルタレート、N−ヒドロキシスクシンイミドヒドロキシブチレートが挙げられる)、およびこれらの組み合わせなどを包含する。
【0053】
用語「治療剤」とは、本明細書中で使用される場合、その最も広い意味で使用され、そして有利な効果、治療効果、薬理効果、および/または予防効果を提供する、任意の物質または物質混合物を包含する。この剤は、特異的な薬理学的効果を提供する薬物であり得る。
【0054】
用語「薬物」とは、治療効果を与え得る任意の剤(例えば、抗菌剤、麻酔薬、鎮痛薬、抗がん剤、脈管形成剤、線維症剤、抗有糸分裂薬、抗生物質、抗炎症剤、キレート剤、ペプチド、タンパク質、DNA、RNA、ヌクレオチド、リポソーム、血液製剤、ホルモン、水溶性または不溶性の銀塩または粒子、増殖因子、成長因子、抗体、インターロイキン、およびサイトカインなど)を包含することを意味する。用語「薬物」はまた、組織の成長、細胞の成長、細胞の分化、組織の抗癒着に影響を与えるかまたは関与する任意の化合物;あるいは免疫応答などの生物学的作用を惹起することが可能であり得る化合物;あるいは1つ以上の生物学的プロセスにおいて他の任意の役割を果たし得る化合物を包含することが意図される。本開示に従って利用され得る生物活性剤のクラスの例としては、例えば、接着防止剤、抗菌薬、鎮痛薬、解熱薬、麻酔薬(例えば、局所、局部、および全身)、鎮痙薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、心臓血管薬剤、診断剤、交感神経様作用薬、コリン様作用薬、抗ムスカリン薬、鎮痙薬、ホルモン、増殖因子、成長因子、筋弛緩薬、アドレナリン作用性ニューロン遮断薬、抗腫瘍薬、免疫原性薬剤、免疫抑制薬、胃腸薬、利尿薬、ステロイド、脂質、ホスホリルコリン、リポ多糖類、多糖類、血小板活性化薬物、凝固因子、および酵素が挙げられる。生物活性剤の組み合わせが使用され得ることもまた意図される。
【0055】
他の生物活性剤としては、避妊薬;副交感神経様作用剤;精神療法剤;トランキライザ;うっ血除去薬;鎮静催眠薬;スルホンアミド;交感神経様作用剤;ワクチン;ビタミン;抗マラリア薬;抗片頭痛薬;抗パーキンソン剤(例えば、L−ドパ);鎮痙薬;抗コリン作用性剤(例えば、オキシブチニン);鎮咳薬;気管支拡張薬;心臓血管薬剤(例えば、冠状血管拡張薬およびニトログリセリン);アルカロイド;鎮痛薬;麻酔薬(例えば、コデイン、ジヒドロコデイノン、メペリジン、モルヒネなど);非麻酔薬(例えば、サリチレート、アスピリン、アセトアミノフェン、d−プロポキシフェンなど);オピオイドレセプターアンタゴニスト(例えば、ナルトレキソンおよびナロキソン);抗がん剤;鎮痙薬;制吐薬;抗ヒスタミン薬;抗炎症剤(例えば、ホルモン剤、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、非ホルモン剤、アロプリノール、インドメタシン、フェニルブタゾンなど);プロスタグランジンおよび細胞傷害性薬剤;化学療法剤;エストロゲン;抗菌剤;抗生物質;抗真菌剤;抗ウイルス剤;抗凝固薬;鎮痙薬;抗うつ薬;ならびに免疫学的薬剤が挙げられる。
【0056】
フィルムに含有され得る適切な生物活性剤の他の例としては、例えば、ウイルスおよび細胞;ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質、ならびにそのアナログ、ムテイン、ならびに活性フラグメント;免疫グロブリン;抗体;サイトカイン(例えば、リンホカイン、モノカイン、ケモカイン);血液凝固因子;造血因子;インターロイキン(例えば、IL−2、IL−3、IL−4、IL−6);インターフェロン(例えば、β−IFN、α−IFNおよびγ−IFN);エリスロポイエチン;ヌクレアーゼ;腫瘍壊死因子;コロニー刺激因子(例えば、GCSF、GM−CSF、MCSF);インスリン;抗腫瘍剤および腫瘍抑制因子;血液タンパク質(例えば、フィブリン、トロンビン、フィブリノゲン、合成トロンビン、合成フィブリン、合成フィブリノゲン);性腺刺激ホルモン(例えば、FSH、LH、CGなど);ホルモンおよびホルモンアナログ(例えば、成長ホルモン);ワクチン(例えば、腫瘍性抗原、細菌性抗原およびウイルス性抗原);ソマトスタチン;抗原;血液凝固因子;増殖因子または成長因子(例えば、神経発育因子、インスリン様成長因子);骨形成タンパク質;TGF−β;タンパク質インヒビター;タンパク質アンタゴニスト;タンパク質アゴニスト;核酸(例えば、アンチセンス分子、DNA、RNAおよびRNAi);オリゴヌクレオチド;ポリヌクレオチド;ならびにリボザイムが挙げられる。
【0057】
ある実施形態において、生物活性剤は、以下の薬物(薬物の組み合わせならびに薬物の代替の形態(例えば、代替の塩形態、遊離酸形態、遊離塩基形態、プロドラッグおよび水和物)を含む)のうちの少なくとも1種を含み得る。これらのクラス内の具体的な剤は、当業者の知識の範囲内であり、そして例えば、その剤が利用されるデバイスの型および処置される組織などの要因に依存する。従って、例えば、局所麻酔剤(例えば、ブピバカイン(MarcainTM、MarcaineTM、SensorcaineTMおよびVivacaineTMのもとで、全てAstraZenecaにより販売され得る)、レボブピバカイン(ChirocaineTMのもとでAstraZenecaにより販売され得る)、ロピバカイン、リドカインなど)は、単独または組み合わせで、疼痛の処置のためまたは麻酔の目的で使用され得る。ある実施形態において、抗菌剤(例えば、トリクロサン(triclosan)(2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテルとしてもまた公知)、クロルヘキシジンおよびその塩(酢酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、および硫酸クロルヘキシジンが挙げられる)、銀およびその塩(酢酸銀、安息香酸銀、炭酸銀、クエン酸銀、ヨウ素酸銀、ヨウ化銀、乳酸銀、ラウリン酸銀、硝酸銀、酸化銀、パルミチン酸銀、銀タンパク、および銀スルファジアジンが挙げられる)、ポリミキシン;テトラサイクリン;アミノグリコシド(例えば、トブラマイシンおよびゲンタマイシン);リファンピシン;バシトラシン;ネオマイシン;クロラムフェニコール;ミコナゾール;キノロン(例えば、オキソリン酸、ノルフロキサシン、ナリジクス酸、ペフロキサシン(pefloxacin)、エノキサシンおよびシプロフロキサシン);ペニシリン(例えば、オキサシリンおよびピプラシル(pipracil));ノンオキシノール9;フシジン酸;ならびにセファロスポリン)もまた、単独または組み合わせで、細菌増殖の処置のために使用され得る。さらに、抗菌タンパク質およびペプチド(例えば、ラクトフェリンおよびラクトフェリシン(lactoferricin)B)、ならびに抗菌多糖類(例えば、フカンおよびその誘導体)が、微生物を殺傷するため、または微生物増殖を防止するために、本開示に生物活性剤として含有され得る。さらに、接着防止剤は、コーティングされた医療デバイスと周囲組織との間で接着が形成されることを防止するために使用され得る。これらの剤のいくつかの例としては、ポリ(ビニルピロリドン)、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸、アルギネート、コラーゲン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、スチレンスルホン酸、ポリヒドロキシエチルメチルアクリレート(pHEMA)およびリン脂質ビニル;アクリルポリマー(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、およびポリアクリルアミド)、ポリプロピレンオキシド、ホスホリルコリン官能性アクリレート、ホスホリルコリン官能性メタクリレート;ならびにこれらのホモポリマーおよび組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
本発明のフィルムにおいて使用され得る水溶性薬物のいくつかの特定の非限定的な例としては、リドカイン、塩酸ブピバカイン、カプサイシン、フルオロウラシル、シスプラチン、メトトレキサート、テトラカイン、プロカイン、ジブカイン、シロリムス(sirolimus)、タキソール、クロルヘキシジン、ポリヘキサメチレン、チアミラールナトリウム、チオペンタールナトリウム、ケタミン、フルラゼパム、アモバルビタールナトリウム、フェノバルビタール、ブロムワレリル尿素、抱水クロラール、フェニトイン、エトトイン、トリメタジオン、プリミドン、エトスクシミド、カルバマゼピン、バルプロエート、アセトアミノフェン、フェナセチン、アスピリン、サリチル酸ナトリウム、アミノピリン、アンチピリン、スルピリン、メピリゾール(mepirizole)、チアラミド、ペリキサゾール(perixazole)、ジクロフェナク、アンフェナク(anfenac)、ブプレノルフィン、ブトルファノール、エプタゾシン、ジメンヒドリネート、ジフェニドール、dl−イソプレナリン、クロルプロマジン、レボメプロマジン、チオリダジン、フルフェナジン、チオチキセン、フルペンチキソール、フロロピパミド、モペロン、カルピプラミン、クロカプラミン、イミプラミン、デシプラミン、マプロチリン、クロルジアゼポキシド、クロラゼペート、メプロバメート、ヒドロキシジン、サフラジン(saflazine)、アミノ安息香酸エチル、カルバミン酸クロルフェネシン、メトカルバモール、アセチルコリン、ネオスチグミン、アトロピン、スコポラミン、パパベリン、ビペリデン、トリヘキシフェニジル、アマンタジン、ピロヘプチン、プロフェナミン、レボドパ、マザチコール、ジフェンヒドラミン、カルビノキサミン、クロルフェニラミン、クレマスチン、アミノフィリン、コリン、テオフィリン、カフェイン、安息香酸ナトリウム、イソプロテレノール、ドパミン、ドブタミン、プロプラノロール、アルプレノロール、ブプラノロール、チモロール、メトプロロール、プロカインアミド、キニジン、アジマリン、ベラパミル、アプリンジン、ヒドロクロロチアジド、アセタゾラミド、イソソルビド、エタクリン酸、カプトプリル、エナラプリル、デラプリル、アラセプリル、ヒドララジン、ヘキサメトニウム、クロニジン、ブニトロロール、グアネチジン、ベタニジン、フェニレフリン、メトキサミン、ジルチアゼム、ニコランジル、ニカメタート、ニコチンアルコールタートレート、トラゾリン、ニカルジピン、イフェンプロジル、ピペリジノカルバメート、シネパジド、チアプリド(thiapride)、ジモルホラミン、レバロルファン、ナロキソン、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、プレドニゾロン、ノルチステロン、クロミフェン、テトラサイクリン、サリチル酸メチル、イソチペンジル、クロタミトン、サリチル酸、ナイスタチン、エコナゾール、クロコナゾール(cloconazole)、ビタミンB、シコチアミン、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB12、ビタミンC、ニコチン酸、葉酸、ニコチンアミド、パントテン酸カルシウム、パントテノール(pantothenol)、パンテチン、ビオチン、アスコルビン酸、トラネキサム酸、エタンシレート、プロタミン、コルヒチン、アロプリノール、トラザミド、グリミジン、グリブゾール、メトホルミン(metoformin)、ブホルミン、オロチン酸、アザチオプリン、ラクツロース、ナイトロジェンマスタード、シクロホスファミド、チオ−TEPA、ニムスチン、チオイノシン、フルオロウラシル、テガフール、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、マイトマイシンC、ダウノルビシン、アクラルビシン、プロカルバジン、シスプラチン、メトトレキサート、ベンジルペニシリン、アモキシシリン、ペニシリン、オキシシリン(oxycillin)、メチシリン、カルベニシリン、アンピシリン、セファレキシン、セファゾリン、エリスロマイシン、キタサマイシン、クロラムフェニコール、チアンフェニコール、ミノサイクリン、リンコマイシン、クリンダマイシン、ストレプトマイシン、カナマイシン、フラジオマイシン、ゲンタマイシン、スペクチノマイシン、ネオマイシン、バノマイシン(vanomycin)、テトラサイクリン、シプロフロキサシン、スルファニル酸(sulfanilic acid)、シクロセリン、スルフィソミジン、イソニアジド、エタンブトール、アシクロビル、ガンシクロビル(gancyclovir)、ビダバリン(vidabarine)、アジドチミジン、ジデオキシイノシン、ジデオキシシトシン、モルヒネ、コデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、コカイン、ペチジン、フェンタニール、上記薬物のポリマー形態およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0059】
この水溶性薬物は、必ずしも、塩形態(すなわち、塩酸テトラサイクリン)に変換される必要はないかもしれない。いくつかの実施形態において、この治療剤は、麻酔薬(例えば、ブピバカイン、リドカイン、およびベンゾカインなど)を含み得る。
【0060】
本明細書中に記載される多層フィルムは、がん(例えば、乳がん、肺がん、食道がん、胃がん、結腸がん、および脳がんなどのがんであるが、これらに限定されない)を処置する際に使用され得る。がんを処置する際に使用され得る適切な水溶性治療剤としては、5−フルオロウラシル、メトトレキサート、シスプラチン、ダウノルビシン、ミトザントロン、およびカルボプラチンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
本明細書中に記載される多層フィルムはまた、術後疼痛を処置する際に使用され得る。術後疼痛は、一般に、鼡径部および腹壁のヘルニア修復、子宮摘出術、開胸術、冠状動脈バイパス、痔核切除術、癒着切離、乳房再建術、脊柱外科手術、ならびに関節の修復/交換などの手順に関連し得る。術後疼痛を処置する際に使用され得る適切な水溶性治療剤としては、塩酸リドカイン、塩酸メピバカイン、塩酸ブピバカイン、およびカプサイシンが挙げられるが、これらに限定されない。これらの水溶性薬物についての治療剤含有量は、本明細書中に記載される。
【0062】
特定の実施形態において、多層フィルムは、約10重量%のグリコリドと約90重量%のε−カプロラクトンとのコポリマーを、治療剤(例えば、塩酸ブピバカイン、カプサイシン、または5−フルオロウラシル)と組み合わせて備え得る。
【0063】
これらの水溶性治療剤は、任意の適切な溶媒と組み合わせられて、治療剤溶液を形成し得る。いくつかの実施形態において、治療剤のための溶媒は、疎水性ポリマーとの共溶媒ではない。すなわち、この治療剤は、疎水性ポリマーのために利用される溶媒とは非混和性であり、そしてこの疎水性ポリマーは、治療剤のための溶媒とは非混和性である。
【0064】
この水溶性治療剤は、約1マイクログラム/mL〜約500mg/mLの範囲の濃度で溶液を形成し得る。特定の実施形態において、この治療剤溶液の濃度は、約1mg/mL〜約200mg/mLの範囲であり得る。なお他の実施形態において、この治療剤溶液の濃度は、約10mg/mL〜約100mg/mLの範囲であり得る。溶液によって、治療剤調製物は、懸濁物、エマルジョン、および分散物などを包含することが意図される。
【0065】
上で簡単に議論されたように、治療剤溶液およびポリマー溶液は、超音波スプレーノズルに通されて、本明細書中に記載される多層フィルムを形成し得る。超音波噴霧器は、溶液の噴霧化をもたらす振動を発生させるために使用され得る、超音波スプレーノズルを備える。この噴霧器の本体は、3つの主要なセクション、すなわち、フロントホーン(噴霧化セクション)、リアホーン(リアセクション)、および1対の円板状の圧電変換器を備えるセクションを備える。これらの3つの要素は、一緒に働いて、ノズル表面に送達される溶液の噴霧化のために必要とされる振動を発生させるための手段を提供する。これらの溶液は、リアホーンの取付具を通って入り、管を通過し、次いで、フロントホーンの中心軸を通る。最後に、これらの溶液は、このノズルの噴霧化表面に達し、ここで噴霧化が起こる。圧電変換器は、外部電源により提供された電気エネルギーを、高周波数の機械的運動、すなわち振動に変換する。この溶液は、基礎となる振動エネルギーを吸収し、そして表面張力波を発生させる。これらの表面張力波の振幅が臨界値を超えると、これらの波がつぶれて、これらの溶液の小さい液滴を排出する。
【0066】
この超音波噴霧器ノズルは、種々の制御器を備え得、これらの制御器は、本明細書中に記載されるフィルムの特徴を変更するように調節され得る。いくつかの非限定的な例としては、振動周波数、作動電力、溶液流量、ノズル速度、およびノズルの移動距離が挙げられる。本明細書中に記載されるフィルムを形成する際に、この噴霧器ノズルは、約20kHz〜約240kHzの範囲の周波数で振動し得、いくつかの実施形態において、120kHzのノズルが使用され得る。このノズルは、約2ワット〜約10ワットの範囲の電力で作動し得る。いくつかの実施形態において、この噴霧器ノズルは、約48kHzの周波数で振動し得、そして約6ワットの電力で作動し得る。
【0067】
特定の実施形態において、これらの超音波スプレーノズルは、移動可能であり得る。このノズルは、約1mm/秒〜約200mm/秒の範囲の速度で移動し得る。他の実施形態において、このノズルの速度は、約50mm/秒〜約150mm/秒の範囲であり得る。さらに、これらの可動ノズルの高さは、不活性基材から約30mm〜約60mmの範囲であり得る。このノズルがこの基材を横切って移動するにつれて、多層フィルムが作製され、この基材を横切って並進する各完全な移動は、「パス」と称される。例えば、多層フィルムが、このノズルが基材を5回横切って通過することにより作製される場合、このスプレーノズルは、5回のパスを行っている。
【0068】
また、噴霧器ノズルを通される溶液の流量は、約0.1mL/分〜約5mL/分の範囲内で変動し得る。ある実施形態において、これらの溶液の流量は、約0.5mL/分〜約2.0mL/分の範囲内であり得る。この流量は、ポリマー溶液ごとに、そして治療剤溶液ごとに、異なり得る。噴霧器制御器の各々が、通過する異なる溶液の各々について個々に調節され得ることが想定される。
【0069】
本開示の多層フィルムは、不活性基材上にスプレーされ得、この不活性基材は、製造のみのために利用される剥離ライナー基材を備え得る。この不活性基材は、包装前にフィルムから分離され得るか、または逆に、この基材は、フィルムと一緒に包装され得、そして移植前に除去され得る。他の実施形態において、メッシュが不活性基材上に配置され得、そして多層フィルムがメッシュ上に直接スプレーされて、多層複合フィルムを作製し得る。他の実施形態において、この不活性基材は、移植可能な治療用多層複合フィルムの一部である。
【0070】
なお代替の実施形態において、このメッシュは、フィルムの裏打ち(例えば、コラーゲン)を備え得る。多層フィルムは、コラーゲンフィルムの裏打ち上に直接スプレーされ得、これは次いで、メッシュと合わせられて、多層フィルム複合材を作製し得る。例えば、多層フィルムを含むポリマーフィルムは、本明細書中以下で議論される方法を使用して、メッシュと合わせられ得る。
【0071】
フィルムは、周囲温度(約25℃)または高温で、周囲湿度または高湿度で、乾燥され得る。フィルムの厚さ/層の数に依存して、これらのフィルムは、約1分間〜約24時間乾燥され得る。
【0072】
本開示の多層フィルムは、本明細書中に記載されるメッシュと、接着剤、膠、溶媒溶接、スポット溶接、溶媒キャスティング、溶融プレス、および熱ステーキングなどが挙げられるがこれらに限定されない方法を使用して、合わせられ得る。他の実施形態において、この多層フィルムは、メッシュ上に直接形成され得る。
【0073】
ここで図面を参照すると、図1は、単一層に含まれた疎水性ポリマーおよび治療剤を含むフィルム10を図示する。フィルム10は、移植前に裂けることなく取り扱われ得、そして移植される際の種々の量の力のために調節され得る程度の可撓性を維持する。
【0074】
図2A、図2B、図および2Cは、多層フィルムの側面図を図示する。例えば、図2Aにおいて、第一の層20および第二の層22を備えるフィルム10Aが示されている。第一の層20は、少なくとも1種の疎水性ポリマーを含有し、そして第二の層22は、少なくとも1種の水溶性治療剤を含有する。いくつかの実施形態において、この治療剤および/またはこの疎水性ポリマーは、第一の層20または第二の層22のいずれかにおいて合わせられ得る。
【0075】
図2Bは、第一の層24、第二の層26、および第三の層28を備える三層構造体12を示し、治療剤が2つのポリマー層の間に配置されている、多層フィルム10Bを示す。第一の層24は、少なくとも1種の疎水性ポリマーを含有し得、そして第二の層26は、少なくとも1種の水溶性治療剤を含有し得る。第三の層28は、第一の層24に含有されるものと同じ疎水性ポリマーを含有しても、異なる疎水性ポリマーを含有してもよい。例えば、いくつかの実施形態において、第二の層26は、治療剤(例えば、ブピバカイン)を含有し得、そして第一の層および第三の層は、同じ疎水性ポリマー材料(例えば、ポリ(グリコリド−co−カプロラクトン))を含有し得る。別の例において、3つ全ての層が同じポリマー材料(例えば、ポリ(グリコリド−co−カプロラクトン))を含有し得、そして第二の層26は、水溶性が高い治療剤(例えば、ブピバカイン)も含有し得る。
【0076】
図2Cは、互いに重ねられて多層フィルム10Cを形成している、2つの三層構造体12Aおよび12B(図2Bに示されるような)を図示する。第一の三層構造体12Aは、第一の層24A、第二の層26A、および第三の層28Aを備え、治療剤が、第二の層26A内で、2つのポリマー層(第一の層24Aおよび第三の層28A)の間に配置されている。第二の三層構造体12Bは、第四の層24B、第五の層26B、および第六の層28Bを備え、治療剤が、第五の層26B内で、2つのポリマー層(第四の層24Aおよび第六の層28A)の間に配置されている。図2Bにおいては、サンドイッチ様の構造として示されているが、三層構造体12Aおよび12Bは、本明細書中に記載されるポリマー材料と治療剤との任意の考えられる組み合わせを備え得る。
【0077】
積み重ねられる際に、フィルム10Cは、医療特性を損なうことなく、増加した治療剤の含有量を含み得る。2つより多い三層構造体12が互いに積み重ねられて、フィルムを形成し得ることが想定される。ある実施形態において、2〜約25の三層構造体が互いに積み重ねられて、多層フィルムを形成し得る。
【0078】
また、多層フィルムにおける個々の層の各々の厚さは、このフィルムからの治療剤の放出を制御し得る。例えば、ポリマー層のみの厚さを増加させると、移植後に治療剤が周囲組織内に放出され得る速度が低下し得る。逆に、ポリマー層のみの厚さを減少させると、治療剤が放出され得る速度が増大し得る。
【0079】
図3A〜図3Fは、フィルム10のさらなる実施形態または構成を示す。これらの実施形態は、円形の構成のフィルム10D、楕円形の構成のフィルム10E、U字型に屈曲した構成のフィルム10F、円形開口部分を有する正方形の構成のフィルム10G、波型の構成のフィルム10H、および不規則な形状の構成のフィルム10Iを含む。フィルム10D〜10Iの構成の各々は、異なる型の構成を表わす。図示される構成は、フィルム10について可能な構成を網羅するわけではない。フィルム10の具体的な形状または構成は、望ましい場合に変更され得ること、および図1および図3A〜図3Fに図示される形状および構成は、可能な形状および構成のうちの少数のみの例示であることを、当業者は理解する。
【0080】
図4A〜図4Bに示されるように、多層フィルム100は、第一の層40、第三の層44、および第一の層40と第三の層44との間に配置された第二の層42を備える三層構造体14を示す。この第二の層は、水溶性治療剤および疎水性ポリマーを含有し、一方で、第一の層および第三の層の各々は、疎水性ポリマーを含有する。これらの疎水性ポリマーは、各層において同じであっても異なっていてもよい。しかし、図2A〜図2Cに示される複数の層とは異なり、これらの3つの層40、42、および44の各々の輪郭(topography)は、このフィルムの長さにわたって異なり得る。これらのフィルムは、1つの超音波噴霧器ノズルを使用して形成され得るので、これらのフィルム層は、複数の液滴から形成され得、これらの液滴は、いくつかの実施形態において、不活性基材上に、任意の無作為な量で堆積させられ得る。
【0081】
図4Bは、図4Aと類似の実施形態であることが理解されるので、これらの間の違いに関してのみが記載される。多層フィルム100は、三層構造体14を備えるが、第二の中間層42’は、このフィルムの外縁部120間では広がらない。第二の層(治療剤を含有する)から外縁部120までの距離を制御することによって、治療剤の放出が変更/制御され得る。
【0082】
1つの不連続層を有する三層フィルムの代替の実施形態が、図5に図示されている。多層フィルム200は、第一の連続層210、第三の連続層230、およびこれらの間に配置された第二の不連続層220を備える。不連続層220は、スクリーンまたはテンプレートを使用して、あるいは予めプログラムされたスプレーパターンを使用して、作製され得る。この不連続層は第二の層として図示されているが、この不連続層は、この多層フィルムのいずれの層であってもよいことが理解されるべきである。不連続層220は、同じかまたは異なるポリマーおよび/または治療剤を含有し得る。例えば、不連続層220は、第一のコポリマーおよび治療剤220aを含有する第一のセクション、ならびに第二のコポリマーおよび第二の異なる治療剤220bを含有する第二のセクションを備え得る。
【0083】
特定の実施形態において、メッシュが、本開示の多層フィルムと組み合わせられて、多層フィルム複合材を作製し得る。このメッシュは、第一の表面および第二の表面を備える。このメッシュの第一の表面または第二の表面のうちの少なくとも一方は、この多層フィルムの第一の層または第三の層のうちの少なくとも一方に隣接して配置され得る。代替の実施形態において、このメッシュは、この多層フィルムの様々な層の間に配置され得る。例えば、このメッシュは、この多層フィルムの第一の層と第二の層との間に配置され得る。
【0084】
図6は、本開示に従う多層フィルム複合材を図示する。多層複合材300は、本開示による多層フィルムを有する、コラーゲンで裏打ちされたメッシュ310(例えば、ParietexTM複合メッシュ(PCO))を備える。メッシュ構造体310Bは、その第一の表面上に、コラーゲンフィルム310Aを備える。PCOメッシュ上に配置された多層フィルムは、第一の不連続層320、第二の連続層330および第三の連続層340を備える。図示されるように、第一の層320は、コラーゲンフィルム上に直接、メッシュ310bの繊維の間に配置される。不連続層320は、上記方法を使用して作製され得る。第二の層330は、メッシュ310Bおよび第一の層320の上に堆積させられる。引き続いて、第三の層340が、第二の層330上に堆積させられる。
【0085】
図7は、Parietex ProgripTM自己固定メッシュ400をスプレーコーティングするプロセスを概略的に図示する。メッシュ400は、メッシュ400の第一の表面から突出するグリップ部材410を備える。これらのグリップ部材は、メッシュ400の長手方向軸A−Aに対してほぼ垂直に延びる。メッシュ400はまた、メッシュ400の第二の表面上に配置された、コラーゲンの裏打ち420を備える。図示されるように、噴霧器600は、溶液500をコラーゲンの裏打ちの表面上に分配する。噴霧器600は、多層フィルムが作製されるまで、溶液500を分配し続け得る。
【実施例】
【0086】
(実施例1)
第一のポリマー溶液および第二の治療剤溶液を提供した。この第一のポリマー溶液は、塩化メチレンに溶解した30mg/mLのポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)を含有した。この第二の治療剤溶液は、メタノールに溶解した100mg/mlのブピバカインを含有した。
【0087】
両方の溶液を超音波噴霧器に入れ、そして少なくとも1つの超音波スプレーノズルに通した。このノズルの先端で噴霧化されるまで、これらの2つの溶液を互いから離して維持した。このノズルを48kHzの周波数で振動させ、そして6ワットで作動させた。このノズルを100mm/秒の速度で、15mm〜60mmの範囲の高さで動かしながら、これらの溶液を約1mL/分の流量でこのノズルに通した。
【0088】
これらの噴霧化された溶液は液滴を形成し、これらの液滴は、このノズルの先端から、不活性なシリコーンのシート上に落下する際に、混合された。1.0kPaの圧力に維持された窒素カーテンで、落下する液滴を囲んだ。
【0089】
このシリコーンシート上に堆積させた液滴を乾燥させ、次いで、このシリコーンシートから分離した。次いで、これらのシートを滅菌して包装した。
【0090】
(実施例2)
第一のポリマー溶液および第二の治療剤溶液を提供した。この第一のポリマー溶液は、塩化メチレンに溶解した3%w/vのポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)を含有した。この第二の治療剤溶液は、メタノールに溶解した100mg/mLのブピバカインを含有した。
【0091】
この第一の溶液およびこの第二の溶液を超音波噴霧器に入れ、そしてそれぞれ第一の超音波スプレーノズルおよび第二の超音波スプレーノズルに通した。これらのノズルを48kHzの周波数で振動させ、そして6ワットで作動させた。このノズルを100mm/秒の速度で、30mm〜60mmの範囲の高さで動かしながら、これらの溶液を約1mL/分の流量でこのノズルに通した。1.0kPaの圧力に維持された窒素カーテンで、落下する液滴を囲んだ。
【0092】
この第一のポリマー溶液を第一のスプレーノズルに通して液滴を形成し、これらの液滴をシリコーンシート上に堆積させて、第一のポリマー層を形成した。このポリマー層の厚さを、このコーティング溶液の塗布の回数によって制御した。
【0093】
次いで、この第一のポリマー溶液およびこの第二の治療剤溶液を、それぞれ第一のスプレーノズルおよび第二のスプレーノズルに通して、液滴を形成し、これらの液滴は、これらのノズルの先端から、シリコーンのシート上に先に形成された第一のポリマー層上に落下する際に、混合した。これにより、ポリマーと治療剤との両方を含有する第二の層を形成した。
【0094】
次いで、この第一のポリマー溶液を第一のスプレーノズルに再度通し、第二の治療剤溶液の流量を停止させた状態で、第一のポリマー溶液の液滴を形成し、そしてシリコーンシート上の第一の層の上に先に形成された第二の層上に堆積させて、三層構造体を形成した。
【0095】
次いで、この三層構造体を高温および高圧に曝露して乾燥させ、そしてこの三層構造体を接合させた。引き続いて、このフィルムを、接着剤を使用してメッシュと合わせて、多層複合材を作製した。次いで、この多層複合材を滅菌して包装した。
【0096】
(実施例3)
ポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)を含有する第一のポリマーフィルムおよび第二のポリマーフィルムを形成した。この第一のポリマーフィルムを、超音波噴霧器ノズルの下で、シリコーンシート上に配置した。
【0097】
エタノールに溶解した100mg/mLのブピバカインを含有する治療剤溶液を形成した。この治療剤溶液を超音波噴霧器に入れ、そして超音波噴霧器ノズルに通して液滴を形成し、これらの液滴を、予め形成された第一のポリマーフィルム上に堆積させて、中間治療剤層を形成した。
【0098】
この第二のポリマーフィルムをこの中間治療剤層上に配置して、三層構造体を形成した。この三層構造体に結合剤を噴霧して、これらの3つの層を一緒に結合させた。次いで、この三層構造体を熱および/または圧力に曝露して、この結合プロセスを完了した。
【0099】
(実施例4)
第一のポリマー溶液および第二の治療剤溶液を提供した。この第一のポリマー溶液は、塩化メチレンに溶解した3%w/vのポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)を含有した。この第二の治療剤溶液は、エタノールに溶解した50mg/mLのブピバカインを含有した。
【0100】
この第一の溶液およびこの第二の溶液を超音波噴霧器に入れ、そしてそれぞれ第一の超音波スプレーノズルおよび第二の超音波スプレーノズルに通した。これらのノズルを48kHzの周波数で振動させ、そして6ワットで作動させた。このノズルを100mm/秒の速度で、30mm〜60mmの範囲の高さで動かしながら、これらの溶液を約1ml/分の流量でこのノズルに通した。1.0kPaの圧力に維持されたエアカーテンで、落下する液滴を囲んだ。
【0101】
この第一のポリマー溶液を第一のスプレーノズルに通して液滴を形成し、これらの液滴を、コラーゲンフィルム上に堆積させて、第一のポリマー層を作製した。このポリマー層の厚さを、このコーティング溶液の塗布の回数によって制御した。
【0102】
次いで、この第一のポリマー溶液およびこの第二の治療剤溶液を、それぞれ第一のスプレーノズルおよび第二のスプレーノズルに通して、液滴を形成し、これらの液滴は、これらのノズルの先端から、コラーゲンフィルム上に先に形成された第一のポリマー層上に落下する際に、混合した。これにより、ポリマーと治療剤との両方を含有する第二の層を形成した。
【0103】
次いで、第二の治療剤溶液の流量を停止させた状態で、この第一のポリマー溶液を第一のスプレーノズルに再度通した。第一のポリマー溶液の液滴を形成し、そしてコラーゲンフィルム上の第一の層の上に先に形成された第二の層上に堆積させて、三層構造体を形成した。
【0104】
次いで、この三層構造体をメッシュと合わせ、引き続いて、高温および高圧に曝露して乾燥させ、そしてこの三層構造体をこのメッシュと接合させた。次いで、この多層複合材を滅菌して包装した。
【0105】
(実施例5)
第一のポリマー溶液および第二のポリマー溶液を提供した。この第一のポリマー溶液は、ジクロロメタンに溶解した30mg/mLのポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)を含有した。この第二のポリマー溶液は、ジクロロメタンおよびメタノール(7:3の比)に溶解した30mg/mLのブピバカインおよび30mg/mLのポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)を含有した。
【0106】
この第一の溶液およびこの第二の溶液を超音波噴霧器に入れ、そして超音波スプレーノズルに通した。このノズルを48kHzの周波数で振動させ、そして6ワットで作動させた。このノズルを100mm/秒の速度で30mmの高さで動かしながら、これらの溶液を約2mL/分の流量でこのノズルに通した。1.0kPaの圧力に維持された窒素カーテンで、落下する液滴を囲んだ。
【0107】
第一のポリマー溶液を第一のスプレーノズルに通して液滴を形成させ、これらの液滴を、コラーゲンシート上に堆積させて、第一の外側ポリマー層を形成した。このポリマー層の厚さを、コーティング溶液の塗布/パスの回数によって制御した。この実施例のフィルムは、20回または30回のいずれかのパスを、第一の外側ポリマー層として含んだ。
【0108】
次いで、第二の治療剤溶液をスプレーノズルに通して、液滴を形成させ、これらの液滴を、このノズルの先端から、シリコーンのシート上に先に形成された第一のポリマー層上に落下させた。これにより、ポリマーと治療剤との両方を含有する第二の層を形成した。この第二の層は、約125回のパスを含んだ。
【0109】
次いで、第一のポリマー溶液を第一のスプレーノズルに再度通し、第三の外側ポリマー層を作製した。第一のポリマー溶液の液滴を形成し、そしてコラーゲンシート上の第一の層上に先に形成された第二の層上に堆積させた。この第三の外側層もまた、20回または30回のパスを含んだ。この三層構造体は、第一の外側層、第二の層、および第三の外側層を有するように作製され、約24mg/mLの治療薬物含有量を有した。
【0110】
次いで、これらのフィルムをリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)に200時間まで浸漬して、薬物放出を決定した。これらの結果を図11に示す。
【0111】
(実施例6)
第一のポリマー溶液および第二のポリマー溶液を提供した。この第一のポリマー溶液は、ジクロロメタンに溶解した30mg/mLのポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)を含有した。この第二のポリマー溶液は、ジクロロメタンおよびメタノール(1:1の比)に溶解した、50mg/mLの塩酸ブピバカインおよび30mg/mLのポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)を含有した。
【0112】
この第一の溶液およびこの第二の溶液を超音波噴霧器に入れ、そして超音波スプレーノズルに通した。このノズルを48kHzの周波数で振動させ、そして6ワットで作動させた。このノズルを100mm/秒の速度で30mmの高さで動かしながら、これらの溶液を約2mL/分の流量でこのノズルに通した。1.0kPaの圧力に維持された窒素カーテンで、落下する液滴を囲んだ。
【0113】
第一のポリマー溶液を第一のスプレーノズルに通して液滴を形成させ、これらの液滴をコラーゲンシート上に堆積させて、第一の外側ポリマー層を形成した。このポリマー層の厚さを、コーティング溶液の塗布/パスの回数によって制御した。この実施例のフィルムは、第一の外側ポリマー層として、10回、20回、30回、または60回のいずれかのパスを含んだ。
【0114】
マスキングテンプレートを第一の外側ポリマー層を覆うように配置した。次いで、第二の治療剤およびポリマーの溶液を、スプレーノズルに通して液滴を形成し、これらの液滴を、このノズルの先端から、シリコーンのシート上に先に形成された第一のポリマー層上に落下させた。これにより、ポリマーと治療剤との両方を含有する第二の層を形成した。この第二の層は、約75回のパスを含んだ。
【0115】
このマスキングテンプレートを除去した。次いで、第二の治療剤溶液の流量を停止させた状態で、この第一のポリマー溶液を第一のスプレーノズルに再度通し、第三の外側ポリマー層を作製した。第一のポリマー溶液の液滴を形成し、そしてコラーゲンシート上の第一の層上に先に形成された第二の層上に堆積させた。この第三の外側層もまた、10回、20回、30回、または60回のパスを含んだ。第一の外側層、第二の層、および第三の外側層を有する三層構造体を作製した。
【0116】
次いで、これらのフィルムをPBSに200時間まで浸漬して、薬物放出を決定した。これらの結果を図12に示す。
【0117】
(実施例7)
第一のポリマー溶液および第二のポリマー溶液を提供した。この第一のポリマー溶液は、ジクロロメタンに溶解した30mg/mLのポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)を含有した。この第二のポリマー溶液は、ジクロロメタンおよびメタノール(1:1の比)に溶解した、30mg/mLのブピバカインおよび50mg/mLのポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)を含有した。
【0118】
この第一の溶液およびこの第二の溶液を超音波噴霧器に入れ、そして超音波スプレーノズルに通した。このノズルを48kHzの周波数で振動させ、そして6ワットで作動させた。このノズルを100mm/秒の速度で30mmの高さで動かしながら、これらの溶液を約2mL/分の流量でこのノズルに通した。1.0kPaの圧力に維持された窒素カーテンで、落下する液滴を囲んだ。
【0119】
第一のポリマー溶液を第一のスプレーノズルに通して液滴を形成させ、これらの液滴をコラーゲンシート上に堆積させて、第一の外側ポリマー層を形成した。このポリマー層の厚さを、コーティング溶液の塗布/パスの回数によって制御した。この実施例のフィルムは、第一の外側ポリマー層として30回のパスを含んだ。
【0120】
次いで、この第二の治療剤溶液を第二のスプレーノズルに通して液滴を形成させ、これらの液滴を、このノズルの先端から、シリコーンのシート上に先に形成された第一のポリマー層上に落下させた。これにより、ポリマーと治療剤との両方を含有する第二の層を形成した。この第二の層は、約75回のパスを含んだ。
【0121】
次いで、第一のポリマー溶液を第一のスプレーノズルに再度通し、第三の外側ポリマー層を作製した。第一のポリマー溶液の液滴を形成して、コラーゲンシート上の第一の層上に先に形成された第二の層上に堆積させた。この第三の外側層もまた、30回のパスを含んだ。第一の外側層、第二の中間層、および第三の外側層を有する三層構造体を作製した。図10に図示されるフィルム(PS33−4およびPS 36−5)を、それぞれ17.8mg/cmおよび17.7mg/cmの塩酸ブピバカインを含有するように処方した。
【0122】
次いで、これらのフィルムをPBSに200時間まで浸漬して、薬物放出を決定した。これらの結果を図10に示す。
【0123】
種々の改変が、本明細書中に開示された実施形態に対してなされ得ることが理解される。従って、上記説明は、限定であると解釈されるべきではなく、単に、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内での例示であると解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0124】
10 フィルム
12 三層構造体
20 第一の層
22 第二の層
24 第一の層
26 第二の層
28 第三の層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の疎水性ポリマーを含有する第一の層;
第三の疎水性ポリマーを含有する第三の層;ならびに
該第一の層と該第三の層との間に配置された第二の層であって、該第二の層は、第二の疎水性ポリマーおよび少なくとも1種の水溶性治療剤を含有する、第二の層、
を備える、多層フィルム。
【請求項2】
前記第一の疎水性ポリマー、第二の疎水性ポリマー、および第三の疎水性ポリマーのうちの少なくとも1つが、脂肪族ポリエステル、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリオルトエステル、ポリウレタン、ポリ酸無水物、ポリマー薬物、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項3】
前記脂肪族ポリエステルが、ラクチド;グリコリド;トリメチレンカーボネート;δ−バレロラクトン;β−ブチロラクトン;γ−ブチロラクトン;ε−デカラクトン;ヒドロキシブチレート;ヒドロキシバレレート;1,4−ジオキセパン−2−オン;1,5−ジオキセパン−2−オン;6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン;2,5−ジケトモルホリン;ピバロラクトン;α,α−ジエチルプロピオラクトン;エチレンカーボネート;エチレンオキサレート;3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン;3,3−ジエチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン;6,8−ジオキサビシクロオクタン−7−オン;ならびにこれらのホモポリマーおよびコポリマー、ならびに組み合わせからなる群より選択される、請求項2に記載の多層フィルム。
【請求項4】
前記第一の層、第二の層および第三の層のうちの少なくとも一つの前記疎水性ポリマーが、約10重量%のグリコリドと約90重量%のε−カプロラクトンとのコポリマーを含有する、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項5】
前記多層フィルムがスプレーコーティングによって形成されている、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項6】
前記スプレーコーティングが超音波スプレーコーティングを包含する、請求項5に記載の多層フィルム。
【請求項7】
前記少なくとも1種の水溶性治療剤が、ブピバカイン、5−フルオロウラシル、シスプラチン、メトトレキサート、およびカプサイシンからなる群より選択される、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項8】
前記少なくとも1種の水溶性治療剤が塩酸ブピバカインである、請求項7に記載の多層フィルム。
【請求項9】
前記少なくとも1種の水溶性治療剤が、約1mg/cm〜約50mg/cmの治療剤含有量を有する、請求項7に記載の多層フィルム。
【請求項10】
第一の表面および第二の表面を有するメッシュをさらに備える、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項11】
前記メッシュが、前記第一の層と前記第三の層との間に配置されている、請求項10に記載の多層フィルム。
【請求項12】
前記メッシュの前記第一の表面が、前記第一の層および前記第三の層のうちの少なくとも一方に隣接して配置されている、請求項10に記載の多層フィルム。
【請求項13】
コラーゲンフィルムをさらに備える、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項14】
がんを処置するための、請求項1に記載の多層フィルムであって、該がんが、乳がん、肺がん、食道がん、胃がん、結腸がん、および脳がんからなる群より選択される、多層フィルム。
【請求項15】
前記少なくとも1種の水溶性治療剤が、5−フルオロウラシル、シスプラチン、およびメトトレキサートからなる群より選択される、請求項14に記載の多層フィルム。
【請求項16】
術後疼痛を処置するための、請求項1に記載の多層フィルムであって、該術後疼痛が、ヘルニア修復、子宮摘出術、開胸術、冠状動脈バイパス、痔核切除術、癒着切離、乳房再建術、脊柱外科手術、および関節交換/修復からなる群より選択される外科手術に関連する、多層フィルム。
【請求項17】
少なくとも1種の水溶性治療剤が、塩酸ブピバカインおよびカプサイシンからなる群より選択される、請求項16に記載の多層フィルム。
【請求項18】
少なくとも300mg/cmのブピバカインHClの治療剤含有量を含む、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項19】
コラーゲンフィルムを備えるメッシュ;ならびに
多層フィルムであって、該多層フィルムは、第一の疎水性ポリマーを含有する第一の層、第三の疎水性ポリマーを含有する第三の層、および該第一の層と該第三の層との間に配置された第二の層を備え、該第二の層は、第二の疎水性ポリマーおよび少なくとも1種の水溶性治療剤を含有する、多層フィルム、
を備える、多層フィルム複合材。
【請求項20】
前記メッシュが第一の表面および第二の表面を備える、請求項19に記載の多層フィルム複合材。
【請求項21】
コラーゲンフィルムを提供する工程;
少なくとも1種の疎水性ポリマーを含有する第一の溶液を提供する工程;
少なくとも1種の水溶性治療剤を含有する第二の溶液を提供する工程;
該第一の溶液を第一のスプレーノズルに通して、該第一の溶液の第一の液滴を発生させる工程;
該第一の液滴を該コラーゲンフィルム上に堆積させて、第一の層を形成する工程;
該第二の溶液を第二のスプレーノズルに通して、該第二の溶液の第二の液滴を発生させる工程;
該第二の液滴を該第一の層上に堆積させて、第二の層を形成する工程;ならびに
該第一の層および第二の層を乾燥させて、多層フィルム複合材を形成する工程、
を包含する、多層フィルム複合材を作製する方法。
【請求項22】
前記多層フィルム複合材をメッシュと合わせる工程をさらに包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第一の液滴を前記第二の層上に堆積させて、第三の層を形成する工程をさらに包含する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記乾燥させる工程が周囲温度で行われる、請求項22に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−17329(P2012−17329A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151285(P2011−151285)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(507362281)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (666)
【Fターム(参考)】