治療剤
【課題】 HMB(3−ヒドロキシ−3−メチル酪酸)は、例えば、血中コレステロールを低下させる作用、ヒトにおける窒素保持を改善する作用等が知られ、公知の化合物である。本発明の課題は、これら以外の疾病に有効である治療剤の提供にある。
【解決手段】 HMB(3−ヒドロキシ−3−メチル酪酸)またはその塩を有効成分とする抗骨粗鬆症剤、抗鬱・抗ストレス剤、血圧降下剤、抗糖尿病剤、抗アレルギー剤、抗疲労剤、皮膚外用剤、養毛・育毛剤。
【解決手段】 HMB(3−ヒドロキシ−3−メチル酪酸)またはその塩を有効成分とする抗骨粗鬆症剤、抗鬱・抗ストレス剤、血圧降下剤、抗糖尿病剤、抗アレルギー剤、抗疲労剤、皮膚外用剤、養毛・育毛剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HMBまたはその塩を有効成分とする各種疾病に有用な治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
HMBは、例えば、血中コレステロールを低下させる作用(特許文献1)、ヒトにおける窒素保持を改善する作用(特許文献2)等が知られている。
しかしながら、HMBまたはその塩が、下記で説明する本発明で適用される種々の疾病に、顕著な効果でもって有効であるとの見地はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO94/06417号パンフレット
【特許文献2】国際公開WO94/14429号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、下記で説明する本発明で適用される種々の疾病に、とりわけ顕著な効果でもって有効である各種治療剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、HMBまたはその塩を有効成分とする抗骨粗鬆症剤である。
請求項2に記載の発明は、HMBまたはその塩を有効成分とする抗鬱・抗ストレス剤である。
請求項3に記載の発明は、HMBまたはその塩を有効成分とする血圧降下剤である。
請求項4に記載の発明は、HMBまたはその塩を有効成分とする抗糖尿病剤である。
請求項5に記載の発明は、HMBまたはその塩を有効成分とする抗アレルギー剤である。
請求項6に記載の発明は、HMBまたはその塩を含有する抗疲労剤である。
請求項7に記載の発明は、HMBまたはその塩を含有する皮膚外用剤である。
請求項8に記載の発明は、HMBまたはその塩を含有する養毛・育毛剤である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、下記で説明する本発明で適用される種々の疾病に、とりわけ顕著な効果でもって有効である各種治療剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0008】
HMB(3−ヒドロキシ−3−メチル酪酸;ビス(3−ヒドロキシ−3−メチルブチレート)モノハイドレート)は、上記の特許文献1,2に記載されているように、広く知られている化合物である。
HMBの塩としては、特に制限されないが、薬学的に許容可能な塩が挙げられ、例えば、ナトリウム塩、カルシウム塩、カリウム塩等が挙げられる。
HMBまたはその塩は、公知の化学合成法により製造可能であり、また市販されているものを利用することもできる。
【0009】
HMBまたはその塩の投与量は、患者の年令、体重、適応症状などによって異なるが、例えば、成人1日1〜数回、1日あたり0.001mg〜1g、好ましくは0.1mg〜500mg程度投与するのがよい。
【0010】
本発明の治療剤は、錠剤、ピル、カプセル、顆粒、粉末、散剤、液剤等の固形または溶液の形態(以下、製剤ともいう)に公知の方法により適宜調製することができる。即ち、本発明に有用な固形製剤または液状製剤は、従来充分に確立された公知の製剤製法を用いることにより製造される。添加剤としては、例えば賦形剤、pH調整剤、清涼化剤、懸濁化剤、希釈剤、消泡剤、粘稠剤、溶解補助剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、抗酸化剤、コーティング剤、着色剤、矯味矯臭剤、界面活性剤、可塑剤または香料などが挙げられる。
【0011】
また本発明の治療剤は、各種健康食品および機能性食品として摂取可能である。これらの例としては、各種のものをあげることができるが、健康食品および機能性食品の製造に関しては、通常用いられる、食品素材、食品添加物に加え、賦形剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、分散剤、保存剤、湿潤化剤、溶解補助剤、防腐剤、安定化材、カプセル基剤等の補助剤を用いた飲食品製剤形態で利用することができる。該補助剤の具体的な例示をすれば、乳糖、果糖、ブドウ糖、でん粉、ゼラチン、炭酸マグネシウム、合成ケイ酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、炭酸カルシウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはその塩、アラビアガム、ポリエチレングルコール、シロップ、ワセリン、グリセリン、エタノール、プロピレングリコール、クエン酸、塩化ナトリウム、亜硫酸ソーダ、リン酸ナトリウム、プルラン、カラギーナン、デキストリン、還元パラチノース、ソルビトール、キシリトール、ステビア、合成甘味料、クエン酸、アスコルビン酸、酸味料、重曹、ショ糖エステル、植物硬化油脂、塩化カリウム、サフラワー油、ミツロウ、大豆レシチン、香料等が配合できる。このような健康食品、機能性食品の製造に関しては、医薬品製剤の参考書、例えば「日本薬局方解説書(製剤総則)」(廣川書店)等を参考にすることができる。
【0012】
上記以外にも本発明の治療剤は飲食品として摂取することができる。具体的には、納豆、厚揚げ、豆腐、こんにゃく、団子、漬物、佃煮、コロッケ、サンドイッチ、ピザ、ハンバーガー、餃子、シューマイ、サラダ等の各種総菜や、各種粉末(ビーフ、ポーク、チキン等畜産物、海老、帆立、蜆、昆布等水産物、野菜・果実類、植物、酵母、藻類等)や、プリン、クッキー、クラッカー、パン、ケーキ、チョコレート、ポテトチップス、ビスケット、ドーナツ、ゼリーなどの洋菓子、煎餅、羊羹、大福、おはぎ、その他の饅頭、カステラなどの和菓子、冷菓(飴等)、チューインガム等のパン・菓子類や、うどん、そば、きしめん等の麺類や、かまぼこ、ハム、魚肉ソーセージ等の魚肉練り製品や、ハム、ソーセージ、ハンバーグ、コーンビーフ等の畜肉製品や、塩、胡椒、みそ、しょう油、ソース、ドレッシング、マヨネーズ、ケチャップ、甘味料、辛味料等の調味類や、明石焼き、たこ焼き、もんじゃ焼き、お好み焼き、焼きそば、焼きうどん等の鉄板焼き食品や、チーズ、ハードタイプのヨーグルト等の乳製品や、油脂類・香料類(バニラ、柑橘類、かつお等)を粉末固形化したものや、粉末飲食品(インスタントコーヒー、インスタント紅茶、インスタントミルク、インスタントスープ、味噌汁等)等の各種食品が挙げることができるが、これらに特に制限されない。
【0013】
さらに本発明においては、例えば、ローヤルゼリー、プロポリス、ビタミン類(A、C、D、E、K、葉酸、パントテン酸、ビオチン、これらの誘導体等)、ミネラル(鉄、マグネシウム、カルシウム、亜鉛等)、セレン、レシチン、カロテノイド(リコピン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、ルテイン等)、サポニン(ギムネマ酸、大豆サポニン、人参サポニン等)、脂肪酸、タンパク質(コラーゲン、エラスチン等)、オリゴ糖(イソマルトオリゴ糖、環状オリゴ糖等)、リン脂質及びその誘導体(フォスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、セラミド等)、含硫化合物(アリイン、セパエン、タウリン、グルタチオン、メチルスルホニルメタン等)、糖アルコール、リグナン類(セサミン等)、これらを含有する動植物抽出物、根菜類(ウコン、ショウガ等)、などを併用することもできる。
【0014】
また、HMBまたはその塩を皮膚外用剤として用いる場合は、皮膚外用剤として通常使用される公知の材料、例えば色素、香料、防腐剤、界面活性剤、顔料、抗酸化剤、保湿剤、紫外線吸収剤などを適宜配合することができる。
本発明の皮膚外用剤は、クリーム、乳液、化粧水、パック等、公知の形態で使用され得る。HMBまたはその塩の配合割合はとくに制限されないが、皮膚外用剤中、例えば0.0001質量%〜5質量%、好ましくは0.001質量%〜1質量%である。
【実施例】
【0015】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明の治療剤は、抗骨粗鬆症剤、抗鬱・抗ストレス剤、血圧降下剤、抗糖尿病剤、抗アレルギー剤、抗疲労剤、皮膚外用剤、養毛・育毛剤としてきわめて有用である。以下、上記各種薬効について実施例でもって説明する。
【0016】
実施例1(抗骨粗鬆症効果)
骨粗鬆症改善効果試験
SD系ラット(22週齢)メスの卵巣を外科的に取り除き、骨粗鬆症のモデルラットを作成した。卵巣摘出ラットを7匹ずつ6群に分け、35日間の試験期間中、1日置きに(計17回)、HMBが30mg/kgとなるように、生理食塩水溶解した液体を経口投与した。飼料はオリエンタル酵母株式会社のマウス・ラット・ハムスター用固形飼料CRF−1を用い、給餌および給水方法は自由摂取とした。試験期間中、各群間で、餌の摂取量に差は認められなかった。試験開始後35日目にラットの体重を測定した後、大腿骨を取り出した。大腿骨は、接着組織および筋肉を取り除いて分析に使用した。大腿骨の体積を測定した後、エタノールで3回洗浄し、次にアセトンで3回洗浄したのち、一晩乾燥し、その後、重量を測定して大腿骨の乾燥重量を求めた。体積および乾燥重量から、骨密度(乾燥重量g/体積mm3 )を測定した。なお対照実験として、HMBを含まない生理食塩水をラットに投与したこと以外は、上記実験を繰り返した例(比較例)も行なった。その結果、比較例の骨密度が1.010mg/mm3であったのに対し、実施例1の骨密度は1.095mg/mm3であった。
【0017】
実施例2(抗鬱・抗ストレス効果)
HMBの治療効果を調べた。
マウス強制水泳試験による精神安定作用の評価
本発明の治療剤の評価は、1977年にPorsoltにより開発されたマウス強制水泳試験を採用した。本試験は鬱病の動物モデル実験として最も多用される方法のひとつである。本試験では、マウスをある限られたスペースの中で強制的に泳がせて「無動状態」を惹起させる。この無動状態は、ストレスを負荷された動物が水からの逃避を放棄した一種の「絶望状態」を反映するものと考えられ、ヒトにおける鬱状態、ストレス状態と関連づけられている。事実、抗鬱薬は特異的にこの状況下における無動状態の持続時間を短縮させることがわかっており、この短縮作用は臨床力価との間に有意な相関を有することが認められている。
【0018】
本試験方法は次のとおりである。
25℃の水を深さ15cmまで入れたプラスチック円筒中でマウスを強制水泳させる。5分間の強制水泳後、30℃の乾燥機中で15分間乾燥し、ホームケージに戻す。翌日マウスに試験試料を腹腔内投与して、その1時間後に再び5分間の強制水泳を課し、現れた無動状態の持続時間をストップウォッチを用いて測定する。マウスが水に浮かんで静止している状態を無動状態と判定する。無動状態持続時間については有意差検定を行い、統計学的に有意差を検定する。実験には雄のddYマウスを使用し、1群6匹とする。なお、試験は全て午後1時から午後6時の間に行う。また、ポジティブコントロールとして抗鬱薬であるイミプラミンを用いた試験も行う。
【0019】
その結果、HMBのCa塩を30mg/kg投与したマウスの無動状態持続時間は、178.8±2.8秒であった。コントロール(生理食塩水のみ)は209.0±3.2秒であった。ポジティブコントロール(30mg/kg投与)のマウスの無動状態持続時間は、181.2±4.6秒であった。本実施例およびポジティブコントロールの無動状態持続時間は、危険率1%で有意差を有する。
【0020】
実施例3(血圧降下効果)
HMBカルシウム塩を一般市販飼料(船橋農場製、船橋SP)に添加し、脳卒中易発症性高血圧自然発症ラット(SHR−SP)を用いて最高血圧値、体重の変化を比較した。対照区は、HMBカルシウム塩を添加しない一般試料を用いた。A区を対照区、B区を本発明区とし、それぞれの飼料で5週齢の雄性SHR−SPを各区6匹ずつ7週間飼育し、12週齢に達した時の血圧値と体重の変化について調べた。表1に示すように血圧の変化においては、本発明区に有意な血圧上昇の抑制が認められた。なお、本発明区においては、HMBカルシウム塩の1日あたりの摂取量が、50mg/kg体重となるように飼料中のHMBカルシウム塩の濃度を調整した。
【0021】
【表1】
【0022】
実施例4(抗糖尿病効果)
6週齢の雄性SD系ラット(1群6匹)の尾静脈にストレプトゾトシンを1回投与することにより糖尿病を惹起した。
HMBの投与量を30mg/kgとし、ストレプトゾトシン(STZ)投与の1時間前に経口投与し、その翌日より1日1回13日間連続経口投与した。最終投与の翌日に50%グルコース水溶液(10ml/kg)を経口投与し、経時的に血糖値(mg/dl)を測定(o−トルイジン・ホウ酸)した。
【0023】
なお、正常対照群としてSTZを投与せずに滅菌水のみを投与した群、病態対照群としてSTZを投与して滅菌水を投与した群、および陽性対照群としてSTZを投与してニコチン酸アミド(50mg/kg)を投与した群を設けた。ニコチン酸アミドはSTZ糖尿病モデルに対して有効であることが報告されている(新薬開発のための動物利用集成,419−422頁,R&Dプランニング,1985年)。
【0024】
糖尿病は糖代謝能力が低下し高血糖を呈する疾患である。本実施例においてはグルコース投与1時間後に血糖値のピークを認めるが、病態対照群では最高血糖値が338mg/dlであり、正常対照群では最高血糖値は165mg/dlであった。病態対照群の最高血糖値は正常対照群のそれと比較して約2倍を示し、病態対照群では糖代謝能力の低下が認められた。
【0025】
HMBの活性は、式1により病態対照群の血糖値に対する抑制率(%)を算出した。
【0026】
(式1)
抑制率(%)=〔1−(HMB投与群または陽性対照群の最高血糖値−正常対照群の最高血糖値)/(病態対照群の最高血糖値−正常対照群の最高血糖値)〕×100
【0027】
その結果、HMB投与群の抑制率は58.2%であった。陽性対照群の抑制率は43.0%であった。したがって、HMB投与群は、病態対照群に比較して、優れた血糖値の低下が認められ、糖代謝能力が改善されていた。
【0028】
実施例5(抗アレルギー効果)
RAST法による食物アレルゲン陽性の慢性じんま疹の患者20名(20〜22歳の男性10名及び女性10名)に、1回の食事と共にHMBカルシウム塩を500mg、1カ月投与した。結果を以下の表2に示す。
【0029】
【表2】
【0030】
実施例6
RAST法によるアトピー性皮膚炎患者20名(20〜22歳の男性10名及び女性10名)に、1回の食事と共にHMBを500mg、1カ月投与した。結果を以下の表3に示す。
【0031】
【表3】
【0032】
実施例7(抗疲労効果)
STD DDY 雄性マウス(5週齢:各群n=3〜4)に対し、HMBを経口摂取させた。摂取量は、30mg/kg体重である。摂取は、純水にHMBを溶解させた溶液を用いて行なった。なお、コントロール群のマウスには、純水のみを摂取させて試験を行った。
【0033】
摂取から30分後に、マウスを深さ80センチの水槽に入れて、無動に至るまでの時間を計測した。各試験群のマウス(各群n=3〜4)の無動に至るまでの時間の平均値として、コントロール群は約112秒であったのに対し、HMB投与群は、約256秒であった。
以上から、HMBに高い抗疲労効果が確認された。
【0034】
実施例8(メラニン抑制効果)
メラニンを生成する細胞として、マウス由来の培養B16メラノーマ細胞を用いてウシ胎児血清を終濃度10%になるように添加したイーグルMEM培地で培養し、該細胞を3×103cell/mlの濃度で6ウェルプレートの各ウェルに6ml播種し、5日間CO2インキュベーター内で培養後、HMBのCa塩を添加した培地に交換し、さらに3日間同条件で培養する。細胞を洗浄後、細胞をスクレーパー処理により剥がし、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)により可溶化して475nm、260nmの吸光度を測定し、S475、S260とする。メラニン抑制率は被検試料を添加しない培地で培養した細胞の475nm、260nmにおける吸光度をC475、C260として式1により計算した。ポジティブコントロールとしてコウジ酸(Kojic acid)を用いた。
【0035】
【数1】
【0036】
その結果、ポジティブコントロール(培地中にコウジ酸3mM添加)のメラニン抑制率は約56%であり、HMBのCa塩を添加した被験試料(培地中にHMBのCa塩を500μg/ml添加)のメラニン抑制率は約58%であった。
【0037】
実施例9(シワ形成抑制効果)
5匹ずつ2群のヘアレスマウスの背部に、UVB(長波長紫外線)を10週間照射してシワ形成モデルを作製した。その後、このシワ形成モデルの1群にはHMBを0.5質量%の割合で10%エタノール水溶液に溶解した液体を(実施例1)、もう1群には10%エタノール水溶液のみを(比較例)、シワが形成された背部に1日1回、週に5日の割合で4週間塗布し続けた。4週間の塗布期間終了後、各モデルの背部からレプリカを採取し、得られたレプリカのそれぞれについて、次の基準に従ってシワスコアを付した。
(シワスコア基準)
0:方向性のある構造は認められない。
1:繊維状の細い構造が方向性をもって認められる。
2:方向性をもった繊維状の細い構造とともに太い棒状の構造が認められる。
3:方向性をもった太い棒状の構造が認められる。
【0038】
上記シワスコアを用いた評価は、レプリカ上の方向性をもった線状の構造をシワとして定義して評価したものである。したがって、上記シワスコア基準に従えば、スコアが高いほどシワ形成が進んだ皮膚状態と評価される。上記で得られたシワスコアについて各群の平均値を算出したところ、実施例9は0、比較例は1.0であった。両群のシワスコアについて、Mann−Whitney検定により有意差検定を行ったところ、実施例9のシワスコアは、比較例のシワスコアに比べ、危険率0.05以下で有意に小さかった。
【0039】
実施例10
HMBのNa塩を含有する下記組成のクリームを常法により調製した。
HMBのNa塩 10重量部
グリセロールソルビタン脂肪酸エステル 60重量部
微結晶性ワックス 10重量部
オリーブオイル 30重量部
流動パラフィン 180重量部
ステアリン酸マグネシウム 10重量部
プロピレングリコール 37重量部
硫酸マグネシウム 7重量部
精製水 655重量部
【0040】
実施例11
上記実施例10のクリームについて、シワ形成抑制効果をしらべた。即ち、シワに悩むパネラーを用いて、1日朝・晩2回、毎日1カ月間、上記実施例10のクリームを顔面右側に塗布し、左側に対する右側のシワの改善を、++:非常に改善、+:明らかに改善、±:僅かに改善、−:改善せずの基準で評価した。その結果、パネラー全員とも、非常に改善、の評価であった。
【0041】
実施例12(養毛・育毛効果)
特許第4041451号公報に記載の実験手順に従い、HMBの効果を検証した。
(1)マウスによる試験
C3Hマウス(8週齢、オス、平均体重35g)の背部皮膚(2cm×4cm)を電気バリカン及びシェーバーで刈り、翌日より実施例の各試料を被験部皮膚に朝夕2回、一匹当り0.2mLを二週間連用塗布した。一試料に対して動物一群10匹使用した。塗布開始22日目に各試料の被験部皮膚をビデオカメラに撮影し、画像解析装置にて毛刈り部及び発毛部の面積を測定した。養毛効果の判定は、下記に示す発毛率(%)を算出し、実施例の各群の発毛率平均値を求めて比較を行った。
発毛率(%)=(発毛部の面積)/(毛刈り部の面積)×100
【0042】
(2)ヒトによる試験
男性型脱毛症患者である被験者10名の耳上5cmの位置にて、頭髪を左右2ヶ所直径5mmの円形状に剃毛し、実施例の各試料を左側の頭髪全体に毎日朝夕2回、約3mL塗布し、右側は何も塗布せずに、左右の比較を行った。毛成長速度の効果の判定は、試験開始後1ヶ月目に、左右の剃毛した部位の被験部毛髪20本を抜毛し、下記式で求めた値で毛成長速度を評価した。
毛成長速度=(左側毛髪20本の長さの平均)÷(右側毛髪20本の長さの平均)
【0043】
また、育毛効果、痒み防止効果、脱毛効果、ふけ防止効果の判定は、試験開始後3ヶ月目に各項に対し、右側の何も塗布していない被試部位と比較して、「産毛が剛毛化した或いは産毛が増加した」、「痒みをそれほど感じない」、「抜け毛が少なくなった」、「ふけが少なくなった」と回答した人数で示した。
【0044】
表6に示す処方の養毛・育毛剤を常法に従って作成し、前記の諸試験を実施して評価を行った。なお、HMBの試料中の濃度は、表6に示されるとおりである。その結果を併せて表6に示す。
【0045】
【表4】
【0046】
なお本発明品の養毛・育毛剤の長期間の使用中及び使用後においても、皮膚の状態に特に異常は認められなかった。
【技術分野】
【0001】
本発明は、HMBまたはその塩を有効成分とする各種疾病に有用な治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
HMBは、例えば、血中コレステロールを低下させる作用(特許文献1)、ヒトにおける窒素保持を改善する作用(特許文献2)等が知られている。
しかしながら、HMBまたはその塩が、下記で説明する本発明で適用される種々の疾病に、顕著な効果でもって有効であるとの見地はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO94/06417号パンフレット
【特許文献2】国際公開WO94/14429号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、下記で説明する本発明で適用される種々の疾病に、とりわけ顕著な効果でもって有効である各種治療剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、HMBまたはその塩を有効成分とする抗骨粗鬆症剤である。
請求項2に記載の発明は、HMBまたはその塩を有効成分とする抗鬱・抗ストレス剤である。
請求項3に記載の発明は、HMBまたはその塩を有効成分とする血圧降下剤である。
請求項4に記載の発明は、HMBまたはその塩を有効成分とする抗糖尿病剤である。
請求項5に記載の発明は、HMBまたはその塩を有効成分とする抗アレルギー剤である。
請求項6に記載の発明は、HMBまたはその塩を含有する抗疲労剤である。
請求項7に記載の発明は、HMBまたはその塩を含有する皮膚外用剤である。
請求項8に記載の発明は、HMBまたはその塩を含有する養毛・育毛剤である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、下記で説明する本発明で適用される種々の疾病に、とりわけ顕著な効果でもって有効である各種治療剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0008】
HMB(3−ヒドロキシ−3−メチル酪酸;ビス(3−ヒドロキシ−3−メチルブチレート)モノハイドレート)は、上記の特許文献1,2に記載されているように、広く知られている化合物である。
HMBの塩としては、特に制限されないが、薬学的に許容可能な塩が挙げられ、例えば、ナトリウム塩、カルシウム塩、カリウム塩等が挙げられる。
HMBまたはその塩は、公知の化学合成法により製造可能であり、また市販されているものを利用することもできる。
【0009】
HMBまたはその塩の投与量は、患者の年令、体重、適応症状などによって異なるが、例えば、成人1日1〜数回、1日あたり0.001mg〜1g、好ましくは0.1mg〜500mg程度投与するのがよい。
【0010】
本発明の治療剤は、錠剤、ピル、カプセル、顆粒、粉末、散剤、液剤等の固形または溶液の形態(以下、製剤ともいう)に公知の方法により適宜調製することができる。即ち、本発明に有用な固形製剤または液状製剤は、従来充分に確立された公知の製剤製法を用いることにより製造される。添加剤としては、例えば賦形剤、pH調整剤、清涼化剤、懸濁化剤、希釈剤、消泡剤、粘稠剤、溶解補助剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、抗酸化剤、コーティング剤、着色剤、矯味矯臭剤、界面活性剤、可塑剤または香料などが挙げられる。
【0011】
また本発明の治療剤は、各種健康食品および機能性食品として摂取可能である。これらの例としては、各種のものをあげることができるが、健康食品および機能性食品の製造に関しては、通常用いられる、食品素材、食品添加物に加え、賦形剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、分散剤、保存剤、湿潤化剤、溶解補助剤、防腐剤、安定化材、カプセル基剤等の補助剤を用いた飲食品製剤形態で利用することができる。該補助剤の具体的な例示をすれば、乳糖、果糖、ブドウ糖、でん粉、ゼラチン、炭酸マグネシウム、合成ケイ酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、炭酸カルシウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはその塩、アラビアガム、ポリエチレングルコール、シロップ、ワセリン、グリセリン、エタノール、プロピレングリコール、クエン酸、塩化ナトリウム、亜硫酸ソーダ、リン酸ナトリウム、プルラン、カラギーナン、デキストリン、還元パラチノース、ソルビトール、キシリトール、ステビア、合成甘味料、クエン酸、アスコルビン酸、酸味料、重曹、ショ糖エステル、植物硬化油脂、塩化カリウム、サフラワー油、ミツロウ、大豆レシチン、香料等が配合できる。このような健康食品、機能性食品の製造に関しては、医薬品製剤の参考書、例えば「日本薬局方解説書(製剤総則)」(廣川書店)等を参考にすることができる。
【0012】
上記以外にも本発明の治療剤は飲食品として摂取することができる。具体的には、納豆、厚揚げ、豆腐、こんにゃく、団子、漬物、佃煮、コロッケ、サンドイッチ、ピザ、ハンバーガー、餃子、シューマイ、サラダ等の各種総菜や、各種粉末(ビーフ、ポーク、チキン等畜産物、海老、帆立、蜆、昆布等水産物、野菜・果実類、植物、酵母、藻類等)や、プリン、クッキー、クラッカー、パン、ケーキ、チョコレート、ポテトチップス、ビスケット、ドーナツ、ゼリーなどの洋菓子、煎餅、羊羹、大福、おはぎ、その他の饅頭、カステラなどの和菓子、冷菓(飴等)、チューインガム等のパン・菓子類や、うどん、そば、きしめん等の麺類や、かまぼこ、ハム、魚肉ソーセージ等の魚肉練り製品や、ハム、ソーセージ、ハンバーグ、コーンビーフ等の畜肉製品や、塩、胡椒、みそ、しょう油、ソース、ドレッシング、マヨネーズ、ケチャップ、甘味料、辛味料等の調味類や、明石焼き、たこ焼き、もんじゃ焼き、お好み焼き、焼きそば、焼きうどん等の鉄板焼き食品や、チーズ、ハードタイプのヨーグルト等の乳製品や、油脂類・香料類(バニラ、柑橘類、かつお等)を粉末固形化したものや、粉末飲食品(インスタントコーヒー、インスタント紅茶、インスタントミルク、インスタントスープ、味噌汁等)等の各種食品が挙げることができるが、これらに特に制限されない。
【0013】
さらに本発明においては、例えば、ローヤルゼリー、プロポリス、ビタミン類(A、C、D、E、K、葉酸、パントテン酸、ビオチン、これらの誘導体等)、ミネラル(鉄、マグネシウム、カルシウム、亜鉛等)、セレン、レシチン、カロテノイド(リコピン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、ルテイン等)、サポニン(ギムネマ酸、大豆サポニン、人参サポニン等)、脂肪酸、タンパク質(コラーゲン、エラスチン等)、オリゴ糖(イソマルトオリゴ糖、環状オリゴ糖等)、リン脂質及びその誘導体(フォスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、セラミド等)、含硫化合物(アリイン、セパエン、タウリン、グルタチオン、メチルスルホニルメタン等)、糖アルコール、リグナン類(セサミン等)、これらを含有する動植物抽出物、根菜類(ウコン、ショウガ等)、などを併用することもできる。
【0014】
また、HMBまたはその塩を皮膚外用剤として用いる場合は、皮膚外用剤として通常使用される公知の材料、例えば色素、香料、防腐剤、界面活性剤、顔料、抗酸化剤、保湿剤、紫外線吸収剤などを適宜配合することができる。
本発明の皮膚外用剤は、クリーム、乳液、化粧水、パック等、公知の形態で使用され得る。HMBまたはその塩の配合割合はとくに制限されないが、皮膚外用剤中、例えば0.0001質量%〜5質量%、好ましくは0.001質量%〜1質量%である。
【実施例】
【0015】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明の治療剤は、抗骨粗鬆症剤、抗鬱・抗ストレス剤、血圧降下剤、抗糖尿病剤、抗アレルギー剤、抗疲労剤、皮膚外用剤、養毛・育毛剤としてきわめて有用である。以下、上記各種薬効について実施例でもって説明する。
【0016】
実施例1(抗骨粗鬆症効果)
骨粗鬆症改善効果試験
SD系ラット(22週齢)メスの卵巣を外科的に取り除き、骨粗鬆症のモデルラットを作成した。卵巣摘出ラットを7匹ずつ6群に分け、35日間の試験期間中、1日置きに(計17回)、HMBが30mg/kgとなるように、生理食塩水溶解した液体を経口投与した。飼料はオリエンタル酵母株式会社のマウス・ラット・ハムスター用固形飼料CRF−1を用い、給餌および給水方法は自由摂取とした。試験期間中、各群間で、餌の摂取量に差は認められなかった。試験開始後35日目にラットの体重を測定した後、大腿骨を取り出した。大腿骨は、接着組織および筋肉を取り除いて分析に使用した。大腿骨の体積を測定した後、エタノールで3回洗浄し、次にアセトンで3回洗浄したのち、一晩乾燥し、その後、重量を測定して大腿骨の乾燥重量を求めた。体積および乾燥重量から、骨密度(乾燥重量g/体積mm3 )を測定した。なお対照実験として、HMBを含まない生理食塩水をラットに投与したこと以外は、上記実験を繰り返した例(比較例)も行なった。その結果、比較例の骨密度が1.010mg/mm3であったのに対し、実施例1の骨密度は1.095mg/mm3であった。
【0017】
実施例2(抗鬱・抗ストレス効果)
HMBの治療効果を調べた。
マウス強制水泳試験による精神安定作用の評価
本発明の治療剤の評価は、1977年にPorsoltにより開発されたマウス強制水泳試験を採用した。本試験は鬱病の動物モデル実験として最も多用される方法のひとつである。本試験では、マウスをある限られたスペースの中で強制的に泳がせて「無動状態」を惹起させる。この無動状態は、ストレスを負荷された動物が水からの逃避を放棄した一種の「絶望状態」を反映するものと考えられ、ヒトにおける鬱状態、ストレス状態と関連づけられている。事実、抗鬱薬は特異的にこの状況下における無動状態の持続時間を短縮させることがわかっており、この短縮作用は臨床力価との間に有意な相関を有することが認められている。
【0018】
本試験方法は次のとおりである。
25℃の水を深さ15cmまで入れたプラスチック円筒中でマウスを強制水泳させる。5分間の強制水泳後、30℃の乾燥機中で15分間乾燥し、ホームケージに戻す。翌日マウスに試験試料を腹腔内投与して、その1時間後に再び5分間の強制水泳を課し、現れた無動状態の持続時間をストップウォッチを用いて測定する。マウスが水に浮かんで静止している状態を無動状態と判定する。無動状態持続時間については有意差検定を行い、統計学的に有意差を検定する。実験には雄のddYマウスを使用し、1群6匹とする。なお、試験は全て午後1時から午後6時の間に行う。また、ポジティブコントロールとして抗鬱薬であるイミプラミンを用いた試験も行う。
【0019】
その結果、HMBのCa塩を30mg/kg投与したマウスの無動状態持続時間は、178.8±2.8秒であった。コントロール(生理食塩水のみ)は209.0±3.2秒であった。ポジティブコントロール(30mg/kg投与)のマウスの無動状態持続時間は、181.2±4.6秒であった。本実施例およびポジティブコントロールの無動状態持続時間は、危険率1%で有意差を有する。
【0020】
実施例3(血圧降下効果)
HMBカルシウム塩を一般市販飼料(船橋農場製、船橋SP)に添加し、脳卒中易発症性高血圧自然発症ラット(SHR−SP)を用いて最高血圧値、体重の変化を比較した。対照区は、HMBカルシウム塩を添加しない一般試料を用いた。A区を対照区、B区を本発明区とし、それぞれの飼料で5週齢の雄性SHR−SPを各区6匹ずつ7週間飼育し、12週齢に達した時の血圧値と体重の変化について調べた。表1に示すように血圧の変化においては、本発明区に有意な血圧上昇の抑制が認められた。なお、本発明区においては、HMBカルシウム塩の1日あたりの摂取量が、50mg/kg体重となるように飼料中のHMBカルシウム塩の濃度を調整した。
【0021】
【表1】
【0022】
実施例4(抗糖尿病効果)
6週齢の雄性SD系ラット(1群6匹)の尾静脈にストレプトゾトシンを1回投与することにより糖尿病を惹起した。
HMBの投与量を30mg/kgとし、ストレプトゾトシン(STZ)投与の1時間前に経口投与し、その翌日より1日1回13日間連続経口投与した。最終投与の翌日に50%グルコース水溶液(10ml/kg)を経口投与し、経時的に血糖値(mg/dl)を測定(o−トルイジン・ホウ酸)した。
【0023】
なお、正常対照群としてSTZを投与せずに滅菌水のみを投与した群、病態対照群としてSTZを投与して滅菌水を投与した群、および陽性対照群としてSTZを投与してニコチン酸アミド(50mg/kg)を投与した群を設けた。ニコチン酸アミドはSTZ糖尿病モデルに対して有効であることが報告されている(新薬開発のための動物利用集成,419−422頁,R&Dプランニング,1985年)。
【0024】
糖尿病は糖代謝能力が低下し高血糖を呈する疾患である。本実施例においてはグルコース投与1時間後に血糖値のピークを認めるが、病態対照群では最高血糖値が338mg/dlであり、正常対照群では最高血糖値は165mg/dlであった。病態対照群の最高血糖値は正常対照群のそれと比較して約2倍を示し、病態対照群では糖代謝能力の低下が認められた。
【0025】
HMBの活性は、式1により病態対照群の血糖値に対する抑制率(%)を算出した。
【0026】
(式1)
抑制率(%)=〔1−(HMB投与群または陽性対照群の最高血糖値−正常対照群の最高血糖値)/(病態対照群の最高血糖値−正常対照群の最高血糖値)〕×100
【0027】
その結果、HMB投与群の抑制率は58.2%であった。陽性対照群の抑制率は43.0%であった。したがって、HMB投与群は、病態対照群に比較して、優れた血糖値の低下が認められ、糖代謝能力が改善されていた。
【0028】
実施例5(抗アレルギー効果)
RAST法による食物アレルゲン陽性の慢性じんま疹の患者20名(20〜22歳の男性10名及び女性10名)に、1回の食事と共にHMBカルシウム塩を500mg、1カ月投与した。結果を以下の表2に示す。
【0029】
【表2】
【0030】
実施例6
RAST法によるアトピー性皮膚炎患者20名(20〜22歳の男性10名及び女性10名)に、1回の食事と共にHMBを500mg、1カ月投与した。結果を以下の表3に示す。
【0031】
【表3】
【0032】
実施例7(抗疲労効果)
STD DDY 雄性マウス(5週齢:各群n=3〜4)に対し、HMBを経口摂取させた。摂取量は、30mg/kg体重である。摂取は、純水にHMBを溶解させた溶液を用いて行なった。なお、コントロール群のマウスには、純水のみを摂取させて試験を行った。
【0033】
摂取から30分後に、マウスを深さ80センチの水槽に入れて、無動に至るまでの時間を計測した。各試験群のマウス(各群n=3〜4)の無動に至るまでの時間の平均値として、コントロール群は約112秒であったのに対し、HMB投与群は、約256秒であった。
以上から、HMBに高い抗疲労効果が確認された。
【0034】
実施例8(メラニン抑制効果)
メラニンを生成する細胞として、マウス由来の培養B16メラノーマ細胞を用いてウシ胎児血清を終濃度10%になるように添加したイーグルMEM培地で培養し、該細胞を3×103cell/mlの濃度で6ウェルプレートの各ウェルに6ml播種し、5日間CO2インキュベーター内で培養後、HMBのCa塩を添加した培地に交換し、さらに3日間同条件で培養する。細胞を洗浄後、細胞をスクレーパー処理により剥がし、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)により可溶化して475nm、260nmの吸光度を測定し、S475、S260とする。メラニン抑制率は被検試料を添加しない培地で培養した細胞の475nm、260nmにおける吸光度をC475、C260として式1により計算した。ポジティブコントロールとしてコウジ酸(Kojic acid)を用いた。
【0035】
【数1】
【0036】
その結果、ポジティブコントロール(培地中にコウジ酸3mM添加)のメラニン抑制率は約56%であり、HMBのCa塩を添加した被験試料(培地中にHMBのCa塩を500μg/ml添加)のメラニン抑制率は約58%であった。
【0037】
実施例9(シワ形成抑制効果)
5匹ずつ2群のヘアレスマウスの背部に、UVB(長波長紫外線)を10週間照射してシワ形成モデルを作製した。その後、このシワ形成モデルの1群にはHMBを0.5質量%の割合で10%エタノール水溶液に溶解した液体を(実施例1)、もう1群には10%エタノール水溶液のみを(比較例)、シワが形成された背部に1日1回、週に5日の割合で4週間塗布し続けた。4週間の塗布期間終了後、各モデルの背部からレプリカを採取し、得られたレプリカのそれぞれについて、次の基準に従ってシワスコアを付した。
(シワスコア基準)
0:方向性のある構造は認められない。
1:繊維状の細い構造が方向性をもって認められる。
2:方向性をもった繊維状の細い構造とともに太い棒状の構造が認められる。
3:方向性をもった太い棒状の構造が認められる。
【0038】
上記シワスコアを用いた評価は、レプリカ上の方向性をもった線状の構造をシワとして定義して評価したものである。したがって、上記シワスコア基準に従えば、スコアが高いほどシワ形成が進んだ皮膚状態と評価される。上記で得られたシワスコアについて各群の平均値を算出したところ、実施例9は0、比較例は1.0であった。両群のシワスコアについて、Mann−Whitney検定により有意差検定を行ったところ、実施例9のシワスコアは、比較例のシワスコアに比べ、危険率0.05以下で有意に小さかった。
【0039】
実施例10
HMBのNa塩を含有する下記組成のクリームを常法により調製した。
HMBのNa塩 10重量部
グリセロールソルビタン脂肪酸エステル 60重量部
微結晶性ワックス 10重量部
オリーブオイル 30重量部
流動パラフィン 180重量部
ステアリン酸マグネシウム 10重量部
プロピレングリコール 37重量部
硫酸マグネシウム 7重量部
精製水 655重量部
【0040】
実施例11
上記実施例10のクリームについて、シワ形成抑制効果をしらべた。即ち、シワに悩むパネラーを用いて、1日朝・晩2回、毎日1カ月間、上記実施例10のクリームを顔面右側に塗布し、左側に対する右側のシワの改善を、++:非常に改善、+:明らかに改善、±:僅かに改善、−:改善せずの基準で評価した。その結果、パネラー全員とも、非常に改善、の評価であった。
【0041】
実施例12(養毛・育毛効果)
特許第4041451号公報に記載の実験手順に従い、HMBの効果を検証した。
(1)マウスによる試験
C3Hマウス(8週齢、オス、平均体重35g)の背部皮膚(2cm×4cm)を電気バリカン及びシェーバーで刈り、翌日より実施例の各試料を被験部皮膚に朝夕2回、一匹当り0.2mLを二週間連用塗布した。一試料に対して動物一群10匹使用した。塗布開始22日目に各試料の被験部皮膚をビデオカメラに撮影し、画像解析装置にて毛刈り部及び発毛部の面積を測定した。養毛効果の判定は、下記に示す発毛率(%)を算出し、実施例の各群の発毛率平均値を求めて比較を行った。
発毛率(%)=(発毛部の面積)/(毛刈り部の面積)×100
【0042】
(2)ヒトによる試験
男性型脱毛症患者である被験者10名の耳上5cmの位置にて、頭髪を左右2ヶ所直径5mmの円形状に剃毛し、実施例の各試料を左側の頭髪全体に毎日朝夕2回、約3mL塗布し、右側は何も塗布せずに、左右の比較を行った。毛成長速度の効果の判定は、試験開始後1ヶ月目に、左右の剃毛した部位の被験部毛髪20本を抜毛し、下記式で求めた値で毛成長速度を評価した。
毛成長速度=(左側毛髪20本の長さの平均)÷(右側毛髪20本の長さの平均)
【0043】
また、育毛効果、痒み防止効果、脱毛効果、ふけ防止効果の判定は、試験開始後3ヶ月目に各項に対し、右側の何も塗布していない被試部位と比較して、「産毛が剛毛化した或いは産毛が増加した」、「痒みをそれほど感じない」、「抜け毛が少なくなった」、「ふけが少なくなった」と回答した人数で示した。
【0044】
表6に示す処方の養毛・育毛剤を常法に従って作成し、前記の諸試験を実施して評価を行った。なお、HMBの試料中の濃度は、表6に示されるとおりである。その結果を併せて表6に示す。
【0045】
【表4】
【0046】
なお本発明品の養毛・育毛剤の長期間の使用中及び使用後においても、皮膚の状態に特に異常は認められなかった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HMBまたはその塩を有効成分とする抗骨粗鬆症剤
【請求項2】
HMBまたはその塩を有効成分とする抗鬱・抗ストレス剤。
【請求項3】
HMBまたはその塩を有効成分とする血圧降下剤。
【請求項4】
HMBまたはその塩を有効成分とする抗糖尿病剤。
【請求項5】
HMBまたはその塩を有効成分とする抗アレルギー剤。
【請求項6】
HMBまたはその塩を含有する抗疲労剤。
【請求項7】
HMBまたはその塩を含有する皮膚外用剤。
【請求項8】
HMBまたはその塩を含有する養毛・育毛剤。
【請求項1】
HMBまたはその塩を有効成分とする抗骨粗鬆症剤
【請求項2】
HMBまたはその塩を有効成分とする抗鬱・抗ストレス剤。
【請求項3】
HMBまたはその塩を有効成分とする血圧降下剤。
【請求項4】
HMBまたはその塩を有効成分とする抗糖尿病剤。
【請求項5】
HMBまたはその塩を有効成分とする抗アレルギー剤。
【請求項6】
HMBまたはその塩を含有する抗疲労剤。
【請求項7】
HMBまたはその塩を含有する皮膚外用剤。
【請求項8】
HMBまたはその塩を含有する養毛・育毛剤。
【公開番号】特開2009−155336(P2009−155336A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2009−85729(P2009−85729)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(707000691)辻堂化学株式会社 (104)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85729(P2009−85729)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(707000691)辻堂化学株式会社 (104)
【Fターム(参考)】
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