説明

治療用ベッド

【課題】 肩関節周りの動きを容易にし、治療に伴う患者の苦痛を軽減する。
【解決手段】 治療用ベッド1は、患者が横になる寝台部2と、寝台部2の下側に空間部4を形成する脚部3とを備える。寝台部2を長手方向に分割し、患者の頭を支持する短尺台5と、患者の胴および足を支持する長尺台6とを設ける。短尺台5と長尺台6との間に、患者の両肩を解放する第1開口部7を形成する。脚部3に、患者の腕を空間部4の内外に出し入れ自在とする第2開口部14を第1開口部7に連続するように設ける。第2開口部14は、第1開口部7に接続される幅狭部17を備え、幅狭部17よりも下位に幅広部18を形成している。患者は、腕を伸ばして第1開口部7から降し、第2開口部14を通して空間部4に旋回することで、姿勢を仰臥位から横臥位に楽に変換できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カイロプラクティック療法や医学療法に使用するベッド、特に、肩関節周りの治療に好ましく使用できる治療用ベッドに関する。
【背景技術】
【0002】
治療中の患者の苦痛を軽減するために、従来、各種の治療用ベッドが提案されている。例えば、特許文献1には、患者が横になる寝台部に、身体を斜めに支える凹所と、腕を寝台部の下側に通す穴と、腕を水平に収める溝とを設けた治療用ベッドが記載されている。特許文献2には、寝台部を二つに切り離してV字形に変形する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−137810号公報
【特許文献2】特開2000−166982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、肩関節周りに炎症や筋肉の緊張がある患者は、ベッドの上で腕を上下左右に動かすことが困難である。特に、仰臥位から横臥位に姿勢を変えるとき、寝台部が肩を圧迫するため、苦痛を伴う。寝台部に穴があっても、そこに腕を出し入れするのも容易ではない。このため、肩関節の周辺は、患者が自発的に動かすことも、治療者が強制的に動かすことも困難となり、治療効果が限られるという問題点もあった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、肩関節周りの動きを容易にし、治療に伴う患者の苦痛を軽減できる治療用ベッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は次のような治療用ベッドを提供する。
(1)患者が横になる寝台部と、寝台部の下側に空間部を形成する脚部とを備え、寝台部を長手方向に分割して、患者の頭を支持する短尺台と、患者の胴および足を支持する長尺台を設け、短尺台と長尺台との間に患者の両肩を解放する第1開口部を形成し、脚部には患者の腕を空間部の内外に出し入れ自在とする第2開口部を第1開口部に連続するように設けたことを特徴とする治療用ベッド。
【0007】
(2)第1開口部を寝台部の水平面に拡がるように形成し、第2開口部を脚部の垂直面に拡がるように設けたことを特徴とする治療用ベッド。
【0008】
(3)短尺台と長尺台の相対向する端面に凹部を形成し、凹部により第1開口部の中央に大口穴を設けたことを特徴とする治療用ベッド。
【0009】
(4)第2開口部が第1開口部に接続される幅狭部を備えるとともに、幅狭部よりも下位に幅広部を含むことを特徴とする治療用ベッド。
【0010】
(5)第1開口部および第2開口部の幅を寝台部の長手方向へ調節するための幅調節機構を備えたことを特徴とする治療用ベッド。
【0011】
(6)寝台部の高さを調節するための高さ調節機構を備えたことを特徴とする治療用ベッド。
【0012】
(7)第1開口部近傍の寝台部に患者が手で掴む把手を設けたことを特徴とする治療用ベッド。
【0013】
(8)短尺台と長尺台との間に架設される枕を備え、枕の下面に第1開口部に嵌合する突部を形成したことを特徴とする治療用ベッド。
【0014】
(9)枕に患者の口と鼻を解放する切欠部を形成したことを特徴とする治療用ベッド。
【発明の効果】
【0015】
本発明の治療用ベッドによれば、寝台部に患者の両肩を解放する第1開口部を形成し、脚部に患者の腕を空間部の内外に出し入れ自在とする第2開口部を設けたので、肩関節周りの動きを容易にし、治療に伴う患者の苦痛を軽減できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態を示す治療用ベッドの斜視図である。
【図2】図1の治療用ベッドの平面図である。
【図3】治療用ベッドの使用例を示す平面図である。
【図4】治療用ベッドの別の使用例を示す縦断面図である。
【図5】寝台部を高さ調節可能とした治療用ベッドを示す正面図である。
【図6】第1開口部に枕を装備した治療用ベッドを示す部分図である。
【図7】第2開口部を円形に形成した治療用ベッドを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1、図2に示すように、この実施形態の治療用ベッド1は、患者Pが横になる寝台部2と、寝台部2を床面から所定の高さ(例えば、85cm程度)に支持する脚部3とを備えている。脚部3は、パイプまたは棒材を用いて四角箱形に組み立てられ、寝台部2の下側に空間部4を形成している。
【0018】
寝台部4は長方形の板材で形成されている。この板材は長手方向に分割され、寝台部4に患者Pの頭を支持する短尺台5と、患者Pの胴および足を支持する長尺台6とが設けられている。そして、短尺台5と長尺台6との間に、患者Pの両肩を解放するために、前後幅15cm程度の第1開口部7が寝台部2の水平面に拡がるように形成されている。
【0019】
短尺台5の上面には患者Pの頚椎を保護するための枕8が載置され、第1開口部7に近い長尺台6の上面に患者Pが手で掴む把手9が設けられている。短尺台5と長尺台6の相対向する端面には凹部10が形成され、凹部10により第1開口部7の左右方向中央に大口穴11が設けられている。なお、寝台部4の表面をクッション材で被覆してもよい。
【0020】
脚部3は、短尺台5を支持する前枠12と、長尺台6を支持する後枠13とに分割されている。前枠12と後枠13との間には、患者Pが腕を空間部4の内外に出し入れするための第2開口部14と、第1開口部7および第2開口部14の幅を寝台部2の長手方向へ調節するためのネジ15を備えた幅調節機構16が設けられている。
【0021】
第2開口部14は、第1開口部7に連続して脚部2の垂直面に拡がるように形成されている。第2開口部14の上端には第1開口部7に接続される幅狭部17が設けられ、幅狭部17よりも下位に幅広部18が形成されている。そして、図4に示すように、患者Pが腕を第2開口部14に通して空間部4の内外に出し入れできるようになっている。
【0022】
図5に示す治療用ベッド21は、寝台部2の高さを調節するための高さ調節機構22を装備している。高さ調節機構22は、寝台部2を昇降自在に支持するガスシリンダ23と、寝台部2に連動する可動アーム24と、可動アーム24を脚部3に締め付ける締結具25とで構成され、寝台部2の高さに応じて第2開口部14が伸縮するようになっている。
【0023】
図6に示すように、寝台部2の短尺台5と長尺台6との間には枕26が架設されている。この枕26は、図1に示す枕8とは異なる形状で成形され、第1開口部7に被さる一対の被覆片27と、第1開口部7に嵌合する突部28と、患者の口と鼻を解放する切欠部29とを備えている。そして、肩関節周り以外の治療に際し、寝台部2を低く(例えば、40〜60cm)調節し、枕26で第1開口部7を塞ぎ、治療者が患者の所要部位を容易に押圧できるようになっている。
【0024】
上記のように構成された治療用ベッド1によれば、寝台部2に第1開口部7を形成し、脚部3に第2開口部14を設けたので、患者は肩関節を圧迫されることなく両腕を楽に動かすことができる。例えば、図2に示すように、患者Pは寝台部2の上で仰臥位の姿勢をとり、両腕を水平方向に伸展または屈伸し、肩関節Cの周辺の緊張を解すことができる。
【0025】
また、患者Pは、図3に示すように、腕を伸ばしたまま、身体を寝台部2の上で回転し、片方の腕を第1開口部7から降し、図4に示すように、第2開口部14を通して空間部4に回し入れることで、肩関節C周りに苦痛を伴うことなく、姿勢を仰臥位から横臥位に、または、横臥位から仰臥位に容易に変換することができる。
【0026】
横臥位では、片方の手におもりDを持ち、その腕を空間部4で旋回することにより、肩関節C周りの筋肉に遠心力による弛緩作用を与えることができる。このとき、第1開口部7の中央に大口穴11が形成されているため、上腕部の付根付近が寝台部2によって圧迫されるおそれがない。
【0027】
従って、肩関節C周りにおける患者Pの自発的な運動も、治療者による強制的な運動も、さほどの苦痛を伴うことなく実施でき、もって、カイロプラクティック療法による治療効果を高めることができる。
【0028】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各部の構成や形状を適宜変更して実施することもできる。例えば、図7に示す治療用ベッド31では、脚部32が板材で四角箱形に構成されている。第2開口部33は、円形に形成され、上端に幅狭部34を備え、それより下位に幅広部35が形成されている。
【符号の説明】
【0029】
1 治療用ベッド
2 寝台部
3 脚部
4 空間部
5 短尺台
6 長尺台
7 第1開口部
9 把手
10 凹部
11 大口穴
14 第2開口部
16 幅調節機構
17 幅狭部
18 幅広部
22 高さ調節機構
26 枕
28 突部
29 切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者が横になる寝台部と、寝台部の下側に空間部を形成する脚部とを備え、前記寝台部を長手方向に分割し、該寝台部に患者の頭を支持する短尺台と、患者の胴および足を支持する長尺台を設け、短尺台と長尺台との間に患者の両肩を解放する第1開口部を形成し、前記脚部に患者の腕を空間部の内外に出し入れ自在とする第2開口部を第1開口部に連続するように設けたことを特徴とする治療用ベッド。
【請求項2】
前記第1開口部を寝台部の水平面に拡がるように形成し、第2開口部を脚部の垂直面に拡がるように設けたことを特徴とする請求項1記載の治療用ベッド。
【請求項3】
前記短尺台と長尺台の相対向する端面に凹部を形成し、凹部により第1開口部の中央に大口穴を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の治療用ベッド。
【請求項4】
前記第2開口部が第1開口部に接続される幅狭部を備えるとともに、幅狭部よりも下位に幅広部を含むことを特徴とする請求項1,2または3記載の治療用ベッド。
【請求項5】
前記第1開口部および第2開口部の幅を寝台部の長手方向へ調節するための幅調節機構を備えたことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の治療用ベッド。
【請求項6】
前記寝台部の高さを調節するための高さ調節機構を備えたことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の治療用ベッド。
【請求項7】
前記第1開口部近傍の寝台部に患者が手で掴む把手を設けたことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の治療用ベッド。
【請求項8】
前記短尺台と長尺台との間に架設される枕を備え、枕の下面に第1開口部に嵌合する突部を形成したことを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の治療用ベッド。
【請求項9】
前記枕に患者の口と鼻を解放する切欠部を形成したことを特徴とする請求項8記載の治療用ベッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−85644(P2013−85644A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227858(P2011−227858)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(511085622)
【Fターム(参考)】