説明

治療用リソソーム酵素の送達のための酵素送達系としてのp97の使用

本発明は、血液脳関門のいずれかの側の細胞のリソソームへと輸送され得る酵素に結合体化したp97を、リソソーム蓄積症に罹患している患者に投与することにより、リソソーム蓄積症を処置、改善または予防するための組成物および方法を提供する。1つの実施形態では、本発明の方法は、リソソーム蓄積症を有する被験体を処置するための方法であって、該方法は、薬学的組成物を該被験体に投与する工程を包含し、ここで、該組成物は、欠損すると該疾患を引き起こすタンパク質に共有結合されたp97分子を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、2002年1月11日出願の米国仮出願第60/347,758号の優先権特権を主張する。米国仮出願第60/347,758号は、その全体が、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、製剤学の分野に関連し、特に、治療剤または診断剤に結合体化された、p97タンパク質またはp97ポリペプチドを被験体に導入することによる疾患の処置に関する。特に、本発明は、p97とリソソーム蓄積症において欠損しているタンパク質との結合体、ならびにこの結合体をリソソーム蓄積症を有する被験体に投与することによる、このような疾患の処置方法、改善方法または予防方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
リソソーム蓄積症(LSD)は、細胞のリソソーム内の特定酵素の活性が存在しないことまたは低減していることから生じる。多数のこれらの酵素が同定されており、そしてそれらの関連疾患と関連付けられている。一旦、この失われたかまたは欠損した酵素が同定されると、処置は、補充酵素(薬物)を患者の罹患組織に送達するという問題にされ得る。細胞内では、失われた酵素の効果は、細胞内リソソーム内の分解されていない「蓄積物質」の蓄積と見られ得る。この構成は、リソソームを膨潤して変形させ、細胞および組織が損傷することとなる。リソソーム蓄積症は代表的に遺伝的病因を有するので、多くの組織は、問題の酵素を欠く。しかし、異なる組織は、同じ酵素が異なって存在しない。
逆に、どのようにして組織が罹患するかが、失われた酵素の基質をその組織が生成する程度によって、ある程度決定される。逆に、蓄積によって最も苦しむ組織の種類は、どのようにして薬物がその患者に投与されるべきであるかを指示する。静脈内酵素補充治療(ERT)はLSD(例えば、MPS I、MPS II)に有益であるが、このような疾患においてリソソームへの治療酵素の送達を増強するための手段は、コストを低減しかつ治療効力を上昇させるに関して有益である。
【0004】
さらに、血液脳関門(BBB)は、血液から脳への多くの因子の自由な移動をブロックする。このために、有利な神経学的影響を提示するLSD(例えば、MPS III、MLD、GM1)は、静脈内ERTに対して応答性であるとは期待されない。このような疾患に関しては、BBBを越えて罹患細胞のリソソーム内へとこの酵素を送達する方法が非常に望ましい。
【0005】
1980年代初頭には、メラノトランスフェリン(melanotransferrin)(MTf)またはp97が、正常組織において発現されないかまたはわずかにしか発現されないかのいずれかであって、腫瘍細胞(特に、悪性黒色腫細胞)および胎児組織においてずっと多量に見出される、腫瘍胎児抗原として同定された(Woodburyら,P.N.A.S.USA,77:2183−2187(1980))。より最近では、ヒトMTfが正常組織(汗腺管、肝臓内皮細胞、ならびに脳の内皮および反応性小神経膠細胞を含む)において同定されたというさらなる報告が存在する(Jefferiesら,Brain Res.,712:122−126(1996);およびRothenbergerら,Brain Res.,712:117−121(1996))。興味深いことに、正常血清は、非常に低レベルの可溶性循環MTfを含むが、増加した可溶性血清MTfが、進行したアルツハイマー病を有する患者において見出されている(Kennardら,Nat.Med.,2:1230−1235(1996);米国特許第5,981,194号)。
【0006】
MTfの生化学的役割および代謝は、解明することが困難であることが証明されている。外観に基づくと、MFtは、一見、トランスフェリン(Tf)およびラクトトランスフェリン(ラクトフェリンまたはLf)に類似している。ヒトでは、これらのタンパク質は、37%〜39%のアミノ酸配列相同性を共有する。特に、これらのタンパク質の各々は、鉄に可逆的に結合し、そしてそれらのN末端鉄結合ドメインは、極めて類似する(Bakerら,TIBS,12:350−353(1987))。
【0007】
しかし、これらのタンパク質の間での機能的類似は確認されていない。まず第1に、TfおよびLfとは異なり、MTfは、膜結合形態および血清可溶性形態の両方で存在する。さらに、TfおよびLfとは対照的に、MTfについての細胞レセプターは同定されていない。血清可溶性Tfは、トランスフェリンレセプター(Tf−R)によって媒介されるエネルギー依存性プロセスにおいて細胞に取り込まれることが公知である(Cookら,Annu.Rev.Med.,44:63−74)(1993))。Lfのインターナリゼーションもまた、レセプター(rceptor)媒介プロセスによって媒介されるようである(Fillebeenら,J.Biol.Chem.,274(11):701−7017(1999))。Lfについての2つの既知のレセプターは、LRP−1およびRAGEであるが、他のレセプターも存在し得る(Melingerら,FEBS Letters,360:70−74(1995);Schmidt,J.Biol.Chem.,269(13):9882−9888(1994))。
【0008】
中枢神経系(例えば、脳、脊髄)に関して、送達を増強するための少なくとも3つの方法が存在する:直接注射、BBBの透過化、および薬物の改変。直接注射は、脳組織への薬物の注射を含み、血管系を完全にバイパスする。この方法は、頭蓋内注射によって引き起こされる合併症(感染、組織損傷)の危険性を主に被る。この危険性は、患者の生涯にわたって適用される定期的処置レジメンの状況が考えられるとき、一層ひどくなる。制限された数の単一部位注射を用いて、血管(それゆえ、潜在的に薬物)が脳全体に有する透過を一致させることもまた困難である。
【0009】
第2の方法は、静脈内薬物の付随注射を用いてBBBを損なうことを非特異的に伴う。BBBの透過化は、化学的に達成される。この方法は、特異性の欠如を被る。BBBによって必ず排除される、血液中の全ての成分は、この薬物とともに脳に入る。この脳は、これらの条件では無防備なままであり、そして生涯にわたる処置レジメンの過程にわたって、損傷が予想される。
【0010】
血液によって運ばれる薬物の脳利用可能性を増大させる第3の手段は、損なわれていないBBBを通しての輸送を促進する部分を用いた、薬物の特異的官能基化を伴う。この方法は、特異的BBB浸潤および便利な静脈内投与の利点を有する。治療薬剤がこの血液脳関門を越える能力を増大させる方法は、米国特許第6,455,494号に教示される。米国特許第6,455,494号は、その全体が本明細書中に参考として援用される。米国特許第6,455,494号は、血液脳関門を越えて治療薬物を送達するためのキャリアとしてのp97の使用を開示する。
【0011】
p97(メラノトランスフェリン)は、天然に存在するヒトタンパク質である。p97は、ヒト黒色腫についての細胞表面マーカー(黒色腫関連抗原)であることが見出されて特徴付けられたが、より最近では、他の腫瘍型ならびにヒトの正常な脳組織および肝臓組織においても見出されており、他の身体組織および血清においても微量に見出されている。身体におけるp97の役割は未知であるが、その構造および結合特性に基づいて、これは、細胞への金属イオン(例えば、鉄)の輸送に関与すると考えられる。Jefferiesらは、1992年からp97について研究している(米国特許第5,981,194号)。これらの研究者は、p97について、アルツハイマー病(AD)についての診断マーカーとして焦点を当てている。Synapseは、p97の血清レベルが、この疾患の進行に伴って上昇するという知見に基づく、ADについての血液(血清)試験を開発した。この試験の開発の間、p97が血液から正常個体の脳組織内へと能動輸送されることが見出された。この知見は、分子を血液から、BBBを越えて脳間質液へと到達させるための潜在的輸送系としてのp97の開発についての起動力であった。
【0012】
脳内への治療薬剤の成功裏の送達についての重要な事象は、これらの大きな分子を、BBBを構成する毛細管内皮細胞の強固なネットワークを越えて輸送することである。最近数年の間、インビトロおよび動物モデルの両方において、p97に化学的に連結された、合成低分子、大きな糖タンパク質酵素、および大きな無機粒子(5nmのコロイド状金粒子)が、BBBを越えて脳細胞へと輸送され得ることが示されている。BBBを越えた大きな分子のこのような輸送は、トランスサイトーシスとして公知のプロセスを含む。これは、分子が血液から取り出されて、その他の点でインタクトなBBBの毛細管細胞を通して脳組織へと輸送される機構である。
【0013】
トランスサイトーシス経路は、毛細管内皮細胞内の他の小胞輸送とは別個であり、そして移行は、輸送物質の変化を伴わずに生じる。トランスサイトーシスは、BBB内皮表面でのレセプターによって媒介される細胞型特異的プロセスである。BBBを越えたp97−結合体(すなわち、高分子に化学的に連結したp97)の輸送は、トランスサイトーシスによって生じる。酵素西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)(酵素「ペイロード(payload)」の一例)に結合体化されたp97は、BBBを越えて輸送され得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
LSDの有効処置に関して、治療薬剤(例えば、欠損した酵素、または所望の治療活性もしくは失われた酵素活性を有する、別の酵素もしくはタンパク質)は、罹患した細胞によって取り込まれ、そしてリソソーム(ここで、治療薬剤は、その中に存在する過剰量または有害量の蓄積物質に作用する)へと経路が定められなければならない。出願人は、治療薬剤(LSDにおいて欠損しているタンパク質または酵素が挙げられる)の送達を細胞のリソソームへと標的化するためのp97タンパク質の使用を含む、LSDを処置するための、以下の組成物および方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の簡単な要旨)
本発明は、p97と治療薬剤との結合体(ここで、この薬剤は、p97またはそのフラグメントもしくは一部分に共有結合されている)が、CNS内の細胞およびCNS外細胞のリソソームへのこの薬剤の送達を増強するための優れたビヒクルであるという知見に関する。それゆえ、第1の局面では、本発明は、細胞のリソソームへの治療薬剤の送達方法を提供する。第2の局面では、本発明は、治療薬剤(これは、リソソーム蓄積症を有する被験体のリソソームにおいて欠損しているタンパク質または酵素である)に共有結合されたp97分子を投与することによって、患者におけるリソソーム蓄積症を処置する方法(例えば、酵素補充治療)を提供する。このようなp97−薬剤結合体は、例えば、リソソームタンパク質欠損が、その疾患状態に寄与する、リソソーム蓄積症(例えば、MPS I、MPS II、MPS III A、MPS III B、異染性白質萎縮症、ゴーシェ病、クラッベ病、ポーンプ病、CLN2病、ニーマン−ピック病およびテイ−サックス病)の処置において特に有用である。第3の局面では、本発明は、リソソーム蓄積症において欠損したタンパク質または酵素に共有結合されたp97分子を含む薬学的組成物を提供する。第4の局面では、本発明は、薬剤をリソソームへと送達する際に有用である、p97結合体を同定するための方法を提供する。
【0016】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、以下のようなリソソーム蓄積症を処置するために用いられ得る:アスパルチルグルコサミン尿症、コレステロールエステル貯蔵病/ウォルマン病、シスチン蓄積症、ダノン病、ファブリー病、ファーバー脂肪肉芽腫症/ファーバー病、フコース蓄積症、ガラクトシアリドーシス(Galactosialidosis)I/II型、ゴーシェ病I/II III型、ゴーシェ病、球様白質萎縮/クラッベ病、グリコーゲン蓄積病II/ポーンプ病、GM1−ガングリオシドーシスI/II/III型、GM2−ガングリオシドーシスI型/テイ−サックス病、GM2−ガングリオシドーシスII型ザントホフ病、GM2−ガングリオシドーシス、α−マンノシドーシスI/II型、β−マンノシドーシス、異染性白質萎縮、ムコリピドーシスI型/シアリドーシスI/II型ムコリピドーシスII/III型I細胞病、ムコリピドーシスIIIC型偽性ハーラーポリジストロフィー、ムコ多糖沈着症I型、ムコ多糖沈着症II型ハンター症候群、ムコ多糖沈着症IIIA型サンフィリポ症候群、ムコ多糖沈着症IIIB型サンフィリポ症候群、ムコ多糖沈着症IIIC型サンフィリポ症候群、ムコ多糖沈着症IIID型サンフィリポ症候群、ムコ多糖沈着症IVA型モルキオ症候群、ムコ多糖沈着症IVB型モルキオ症候群、ムコ多糖沈着症VI型、ムコ多糖沈着症VII型スライ症候群、ムコ多糖沈着症IX型、多発性スルファターゼ欠損症、神経セロイドリポフスチノーシス、CLN1バッテン病、神経セロイドリポフスチノーシス、CLN2バッテン病、ニーマン−ピック病A/B型ニーマン−ピック病、ニーマン−ピック病C1型ニーマン−ピック病、ニーマン−ピック病C2型ニーマン−ピック病、ピクノディソストーシス(Pycnodysostosis)、シンドラー病I/II型シンドラー病、およびシアル酸蓄積病。
【0017】
いくつかの実施形態では、p97結合体組成物は、単一のp97分子に連結された、約1分子〜約5分子の目的の薬剤を含む。いくつかの実施形態では、1より多くの目的の薬剤が、単一のp97分子に連結され得る。p97−薬剤の選択的生体分布は、p97連結薬剤を特定の器官へと選択的に標的化することを増強し得る。
【0018】
さらに、本発明は、リソソームを含む細胞を、この結合体と接触させ、そしてこの結合体が、このリソソームへとこの薬剤を送達するか否かを決定することによって、リソソーム蓄積症を予防、改善、または処置し得るp97−薬剤結合体を同定するためのスクリーニングアッセイを提供する。この送達は、この結合体を標識し、次いで細胞内でのこの標識の位置をモニタリングもしくは検出すること、またはリソソーム内で見出される蓄積物質の量に対するその結合体の影響を決定することによって、評価され得る。好ましい実施形態では、この薬剤は、リソソーム蓄積症において欠損している、タンパク質または酵素である。別の実施形態では、この細胞は、このp97分子に結合体化された薬剤が欠損している。
【0019】
いくつかの実施形態では、この方法は、リソソーム蓄積症を処置し、ここで、処置されるべき組織は、血液脳関門によって、循環器系から孤立している(例えば、脳)。1つの実施形態では、本発明は、被験体の血液脳関門を通してこの被験体の細胞のリソソームへと目的の化合物を送達するための方法を提供し、この方法は、以下を包含する:結合体化された薬剤をこの被験体に投与し、それによって、この結合体化剤は、この被験体の血液脳関門を通過し、そしてそれによって、この薬剤が、この被験体の細胞のリソソーム内に入る工程(ここで、この結合体化された薬剤が、リンカーを介してこの薬剤に連結されたメラノトランスフェリンを含む)。
【0020】
別の実施形態では、本発明は、被験体のリソソーム蓄積症を処置、改善、または予防するための方法を提供し、この方法は、以下を包含する:結合体化された薬剤を被験体に投与し、それによって、この薬剤は、この被験体の末梢細胞(例えば、非CNS細胞)のリソソームに入る工程(ここで、この結合体化剤は、リンカーを介して目的の薬剤に連結されたメラノトランスフェリンを含む)。
【0021】
なお別の実施形態では、本発明は、酵素補充治療の方法を提供し、この方法は、以下を包含する:結合体化剤を、酵素置換治療を必要とする被験体へと投与し、それによって、この結合体化剤は、この被験体の血液脳関門を通過し、それによって、この細胞への損傷を予防または低減するに充分な量のこの酵素が、リソソームへと入る工程(ここで、この結合体化剤は、リンカーを介して酵素へと連結されたメラノトランスフェリンを含み、ここで、この患者の細胞は、この細胞への損傷を予防または低減するには不充分な量のこの酵素を含むリソソームを有する)。
【0022】
なお別の実施形態では、本発明は、脳において見出される細胞のリソソーム内に酵素が存在しないことに起因するリソソーム蓄積症を罹患する患者を処置するための方法を提供し、この方法は、以下の工程を包含する:この患者に結合体化剤を投与し、それによって、この結合体化剤は、この患者の血液脳関門を通過し、それによって、この細胞への損傷を予防または低減するに充分な量のこの酵素が、このリソソームに入る(ここで、この結合体化剤は、リンカーを介してこの酵素へと連結されたp97を含む)。
【0023】
なおさらに別の実施形態では、本発明は、リソソーム蓄積症を予防、改善または処置し得る薬剤を同定するための方法を提供し、この方法は、以下を包含する:p97結合体化剤を細胞へと投与する工程であって、ここで、この酵素が存在しないことにより、このリソソーム蓄積症が引き起こされる、工程;およびこの薬剤が、この細胞に対する損傷を、この結合体化剤がこの細胞に投与されない場合のこの細胞に対する損傷と比較して低減するか否かを決定する工程。特定の実施形態では、この方法は、ハイスループットアッセイである。
【0024】
さらなる実施形態では、本発明は、結合体化剤を含む新規の組成物を提供し、ここで、この結合体化剤は、リンカーを介して酵素に連結されたp97分子を含み、ここで、この酵素は、BBB内に含まれる細胞のリソソームにおいて見出される酵素(例えば、本明細書中に示される酵素)である。この組成物は、適切な薬学的キャリアをさらに含み得る。
【0025】
さらに、本発明は、この結合体化剤を含むリソソームを提供する。本発明はまた、この結合体化剤を含むリソソームを含む細胞を提供する。好ましくは、この細胞は、血液脳関門によって取り囲まれて見出される細胞である。より好ましくは、この細胞は、ニューロンまたは脳細胞である。
【0026】
いくつかの実施形態では、p97−薬剤結合体は、以下のタンパク質のうちの任意の1つを、p97分子に共有結合された活性薬剤として含む:アスパルチルグルコサミニダーゼ、酸性リパーゼ、システイントランスポーター、Lamp−2、α−ガラクトシダーゼA、酸性セラミダーゼ、α−L−フコシダーゼ、β−ヘキソサミニダーゼA、GM2−アクチベーター欠損症、α−D−マンノシダーゼ、β−D−マンノシダーゼ、アリールスルファターゼA、サポシン(saposin)B、ノイラミニダーゼ、α−N−アセチルグルコサミニダーゼホスホトランスフェラーゼ、ホスホトランスフェラーゼγ−サブユニット、L−イズロニダーゼ、イズロネート−2−スルファターゼ、ヘパラン−N−スルファターゼ、α−N−アセチルグルコサミニダーゼ、アセチルCoA:N−アセチルトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコサミン6−スルファターゼ、ガラクトース6−スルファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、N−アセチルガラクトサミン4−スルファターゼ、ヒアルロノグルコサミニダーゼ、複数のスルファターゼ、パルミトイルタンパク質チオエステラーゼ、トリペプチジルペプチダーゼI、酸性スフィンゴミエリナーゼ、コレステロール輸送、カテプシンK、α−ガラクトシダーゼB、シアル酸トランスポーター。いくつかの実施形態では、この薬剤は、ヒトまたは哺乳動物の配列、起源または派生物のタンパク質である。p97タンパク質またはp97フラグメントはまた、ヒトまたは哺乳動物の配列、起源または派生物であり得る。
【0027】
(発明の詳細な説明)
(I.緒言)
本発明は一般に、リソソーム蓄積症に罹患した細胞のリソソームへの、リソソーム蓄積症関連薬剤の増強された送達のための、方法および組成物を提供する。本発明は、MTfまたはp97タンパク質およびそれらのフラグメントが、血液脳関門を越えるトランスサイトーシスを受けるだけでなく、リソソームへも輸送されるという驚くべき知見に関する。その結果、血液脳関門を越えて薬剤を送達するためのビヒクルであることが実証されたp97分子もまた驚くべきことに、タンパク質または酵素の欠損により生じるリソソーム蓄積症の処置のために、欠損したタンパク質または酵素をリソソームへと送達する手段としても特に有用である。
【0028】
本発明の結合体薬剤は、リソソーム蓄積症の処置において多くの重要な利点を提供する。MTfまたはp97は、ヒト細胞に種々のレベルで通常見出される天然の化合物である。p97はヒトの天然のタンパク質であるので、反復注射における使用を治療不応性にする、Mab治療の使用については頻繁にそうであるような免疫学的過剰応答性をもたらさないようである。
【0029】
薬物送達に関して、p97系は、BBBを迅速に(1時間以内に)越えることができ、かつ12時間以内に代謝され、従って、これは、効率的に組織から除去される。これらの特徴は、レセプターの飽和を伴わずに、反復注射の機会を提供する。さらに、p97は、内因性トランスフェリンと競合しない。内因性トランスフェリンの量は、血清中p97よりも10,000倍多いと見積もられている。従って、トランスフェリンは、治療薬剤をp97へと共有結合するかまたは他の方法で連結することによって治療薬剤を送達する方法と競合しない。タンパク質p97は、あったとしても、ほとんど毒性を示さない。p97タンパク質は生分解性であり、長期にわたっては循環しない。このタンパク質は、BBBを越える実証された能力を有し、そして脳の血管床の内側を覆う内皮細胞へのその親和性に起因して、p97ベクターは、結合体化された薬剤または他の方法で結合された薬剤を脳組織内に位置するリソソームへと送達するために特に有用である。
【0030】
(II.定義)
他の方法で規定しない限り、本明細書中で用いられる全ての専門用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に引用される各刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、本開示と矛盾しない程度に、その全体が参考として援用される。
【0031】
本明細書および添付の特許請求の範囲中で用いられる場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかにそうではないと示さない限り、複数形の言及を包含することが本明細書で留意される。
【0032】
MTfまたはp97としては、膜結合型p97(すなわち、GPIアンカーまたは何らかの他のアンカーに結合したp97)、分泌されたp97、可溶性p97、切断されたp97、p97の機能的等価物であるp97のアナログ(一般に、それらの対応するアミノ酸配列の40%、60%、80%、90%または95%よりも高い相同性を有し、そしてp97の対立遺伝子改変体を含む)、ヒト、マウス、ニワトリおよび/またはウサギのp97、ならびにそれらの誘導体、部分、またはフラグメントが挙げられる。p97は、酸性塩の形態であっても、塩基性塩の形態であってもよく、またはその中性の形態であってもよい。さらに、個々のアミノ酸残基は、例えば、酸化または還元によって改変され得る。さらに、種々の置換、欠失、または付加がアミノ酸配列または核酸配列に対して行われ得、その正味の影響は、p97の所望の生物学的活性を保持または改善するものである。例えば、コードの縮重に起因して、同じアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列において、かなりのバリエーションが存在し得る。p97の完全アミノ酸配列を含め、p97のさらなる特徴付けは、米国特許第5,981,194号に見出される。
【0033】
本明細書中で用いられる場合、p97フラグメントは、MTfもしくはLRP1もしくはLRP1Bレセプターに結合し、かつ血液関門を越えて輸送されるのを可能にするに充分な部分のp97を含む、p97もしくはその生物学的に等価なアナログの任意の部分;またはリソソームへの薬剤のトランスサイトーシスおよび/もしくは送達におけるp97の所望の生物学的活性を他の点で保持もしくは改善する、p97もしくはその生物学的に等価なアナログの任意の部分を包含する。
【0034】
診断薬剤および治療薬剤としてのp97の作製および使用に関するさらなる教示は、国際出願第PCT/CA93/00272号および米国特許第5,981,194号に見出される。これらの開示は、その全体が、参考として援用される。
【0035】
「調節する」とは、本明細書中で用いられる場合、増加または減少する(例えば、アンタゴニストまたはアゴニストとして作用する)ことによって改変する能力をいう。
【0036】
「メラノトランスフェリンレセプター」(「MTf−R」)は、本明細書中で用いられる場合、MTfに特異的または優先的に結合する、任意の生物学的系をいう。この用語は、Lfおよび/またはβ−アミロイドタンパク質を競合的に結合するレセプターを包含するが、Tfに特異的であるレセプター(例えば、トランスフェリンレセプター(Tf−R)(これは、OMIM #190010に記載され、そしてこれはまた、TFR、TRFRおよびCD71としても公知である))を排除することを意図する。Lfに特異的または優先的に結合することが公知のレセプターは、本明細書中で、「ラクトトランスフェリンレセプター」(Lf−R)と呼ばれる。公知のLf−Rとしては、LDL関連レセプターが挙げられるがこれに限定されない。公知のLDL関連レセプターは、リポタンパク質レセプター関連タンパク質/α2−マクログロブリンレセプター(「LRP1」)である。用語MTf−Rは特に、MTfおよびLfの両方に特異的に結合するが、Tfには特異的に結合しない、内皮細胞上に見出される他のレセプターを包含する。好ましい実施形態では、MTf−Rは、LRP1である。より好ましい実施形態では、MTf−Rは、LRP1Bである。
【0037】
低密度リポタンパク質(LDL)レセプターファミリーのメンバーとしては、LDL−R(132kDa);LRP/LRP1およびLRP1B(600kDa);Megalin((LRP2)、600kDa);VLDL−R(130kDa);ER−2(LRP−8、130kDa);Mosaic LDL−R(LR11、250kDa);および他のメンバー(例えば、LRP3、LRP6、およびLRP−7)が挙げられる。LDL−Rファミリーの特有の特徴としては、細胞表面発現;細胞外リガンド結合ドメイン反復(DxSDE);リガンド結合についてのCa++の必要性;RAPおよびApoEの認識;EGF前駆体相同性ドメイン反復(YWTD);1回膜貫通領域;細胞質ドメイン(FDNPXY)におけるインターナリゼーションシグナル;ならびに種々のリガンドのレセプター媒介エンドサイトーシスが挙げられる。
【0038】
LRPとは、低密度リポタンパク質レセプター関連タンパク質およびこのレセプターファミリーのメンバーをいう。LRPは、フリン(furin)によって切断されて、非共有結合的に結合されたままの515−(α)kDaおよび85−(β)kDaの2つのサブユニットを生成する、4525アミノ酸(600kDa)の大きなタンパク質である。LRPは、肝臓、腎臓、ニューロン、CNS、BBB、SMCおよび種々の培養細胞において主に発現される。
【0039】
LRPリガンドとは、LRPに結合することが公知の多数の分子をいう。これらの分子としては、例えば、ラクトフェリン、RAP、リポタンパク質リパーゼ、ApoE、第VIII因子、β−アミロイド前駆体、α2−マクログロブリン、トロンボスポンジン2 MMP−2、MPP−9−TIMP−1;uPA:PAI−I:uPAR;およびtPA:PAI−1:uPARが挙げられる。
【0040】
LRP 1Bは、低密度リポタンパク質レセプターファミリーのうちの、近年発見されたメンバーである。600kDaの多機能性細胞表面レセプター。Liuら,J.Biol.Chem.276(31):28889−28896(2001)を参照のこと。Liuら,Genomics 69,271−274(2000);およびLiuら,Cancer Res.60,1961−1967(2000)もまた参照のこと。このレセプターは、メガリン(megalin)よりもLRPにより密接に関連し、そしてcDNAレベルで59%の相同性を共有し、そして推定アミノ酸レベルで52%の相同性を共有する。LRP 1B遺伝子は、脳、甲状腺および唾液腺において発現される。LRP 1Bについての公知のリガンドとしては、RAP、tPA、PAI−1が挙げられる。
【0041】
マウスLRP1Bは、GenBank登録番号XM 143023 XM 130241を通してアクセス可能である。ヒトLRP1Bは、GenBank登録番号XM 015452を通してアクセス可能である。
【0042】
「リポタンパク質レセプター関連タンパク質/α2−マクログロブリンレセプター」(「LRP1」)は、本明細書中で用いられる場合、多機能性レセプターをいう。LDLレセプターにおいて見出される結合反復と類似する、システインリッチなA型結合反復のクラスター形成が、以前は無関係と考えられていた種々のリガンド(活性化α−2−マクログロブリン、アポリポタンパク質E、リポタンパク質リパーゼ、プラスミノーゲンアクチベーターおよびそれらのインヒビターとの複合体(PAおよびPA/PAI−1)、リポタンパク質(a)、シュードモナス属対外毒素A、ヒトライノウイルス、Lfならびにいわゆるレセプター関連タンパク質(RAP))を結合する能力の分子的基礎であると考えられる。Meilingerら,FEBS Let.,360:70−74(1995)を参照のこと。LRPIは、GenBank登録番号X 13916およびSwiss−Prot Primary登録番号Q07954を通してアクセス可能である。LRP1遺伝子/タンパク質についての別名としては、以下が挙げられる:低密度リポタンパク質レセプター関連タンパク質1[前駆体]、LRP、α−2−マクログロブリンレセプター、A2MR、アポリポタンパク質Eレセプター、APOER、CD91、LRP1またはA2MR。
【0043】
「p97結合体」とは、薬剤に共有結合されたp97(またはそのフラグメント)を含む組成物をいう。結合体化は、化学的結合体化である限り、直接的または間接的(すなわち、伸張したリンカーを通して)であり得る。本発明の組成物の一般的構築物は、図3に示される。
【0044】
この薬剤は、哺乳動物、特にヒトにおけるリソソーム蓄積症の処置において、治療目的または予防目的を提供し得る。
【0045】
「増加する相対的送達」は、本明細書中で用いられる場合、リソソームにおけるp97結合体化剤の蓄積が、元々の薬剤の蓄積と比較して増加する効果をいう。
【0046】
「治療指数」とは、最小治療量より多く、かつ受け入れられないほど毒性の量よりも少ない、用量範囲(量および/またはタイミング)をいう
「等価用量」とは、同じ量の活性薬剤を含む用量をいう。
【0047】
p97−薬剤結合体は、p97に連結された1以上の薬剤部分(例えば、1〜10個または1〜4個または2〜3個の部分)を含み得る。例えば、結合体化反応は、1〜4個以上のα−L−イズロニダーゼ分子を単一のp97分子へと結合体化させ得る。これらの処方物は、混合物として用いられ得るか、またはこれらは、特定のp97:薬剤(mol:mol)処方物へと精製され得る。当業者は、どの形式およびどのmol:mol比が好ましいかを決定し得る。さらに、薬剤の混合物は、蓄積された基質のより完全な分解を促進するために、p97へと連結され得る。これらのp97−薬剤は、一定範囲のmol:mol比からなり得る。これらはまた、精製混合物へと分離され得るか、または凝集物として用いられ得る。
【0048】
p97結合体化剤は、CNS内またはCNSを含まない細胞のリソソーム内に侵入し得るかまたはリソソーム内に輸送され得るかまたは最終的にリソソーム内に存在し得る。結合体化剤の通過速度は、MTfレセプターの活性を調節し得る、任意の化合物またはタンパク質によって調節され得る。このようなモジュレーターを同定または決定するための方法は、米国仮特許出願第60/308,002号および米国特許出願第10/206,448号(2002年7月25日出願)に開示される。これらの開示は、その全体が参考として援用される。細胞は、リソソーム蓄積症に罹患した、任意の組織または器官系由来であり得る。細胞は、例えば、内皮細胞、上皮細胞、筋肉細胞、心臓細胞、骨細胞、肺細胞、脂肪細胞、腎臓細胞または肝臓細胞であり得る。いくつかの実施形態では、この細胞は、好ましくは、BBB内に見出される細胞である。いくつかの実施形態では、この細胞は、ニューロンまたは脳細胞である。他の実施形態では、この細胞は、末梢の細胞または全身循環から内皮(例えば、BBBの内皮)によって隔離されていない細胞である。
【0049】
この薬剤は、タンパク質もしくは酵素、またはいくらか(実質的に全て)またはこの酵素の全ての活性を依然として保持するような任意のフラグメントであり得る。いくつかの実施形態では、このタンパク質または酵素は、発現も産生もされない場合、または発現もしくは産生が実質的に低減した場合に、リソソーム蓄積症を生じる、タンパク質または酵素である。好ましくは、このタンパク質または酵素は、ヒトまたはマウスに由来するかまたはこれらから入手される。いくつかの実施形態では、ヒトLSDの処置において、p97−薬剤結合体は、処置されるべき被験体もしくは患者において欠損している、リソソーム蓄積酵素症において欠損している、タンパク質もしくは酵素を含む。このような酵素としては、例えば、α−L−イズロニダーゼ、イズロネート−2−スルファターゼ、ヘパランN−スルファターゼ、α−N−アセチルグルコサミニダーゼ、アリールスルファターゼA、ガラクトシルセラミダーゼ(Galactosylceramidase)、酸性α−グルコシダーゼ、チオエステラーゼ、ヘキソサミニダーゼA、酸性スピンゴミエリナーゼ(Acid Spingomyelinase)、α−ガラクトシダーゼ、または任意の他のリソソーム蓄積酵素が挙げられる。リソソーム蓄積症およびそこで欠損しているタンパク質の表は以下の通りである:
【0050】
【表1】

メラノトランスフェリンまたはp97およびこの薬剤は、互いに直接的または間接的に(すなわち、伸張されたリンカーを介して)結合体化される。このリンカーは、共有結合または事実上任意のアミノ酸配列のペプチドまたはメラノトランスフェリンもしくはp97とこの薬剤とを結合体化し得る任意の分子を含み得る。このリンカーが共有結合またはペプチドであるならば、結合体全体は、融合タンパク質であり得る。このような融合タンパク質は、当業者に公知の組換え遺伝子操作方法によって生成され得る。
【0051】
本発明によるp97−酵素結合体は、所望により、その安定性または薬理学的特性を増強するために改変(例えば、PEG化(PEGylation))され得る。
【0052】
(III.組成物およびその調製)
一般に、p97−結合体は、当該分野で周知の技術を用いて調製され得る。薬剤へのポリペプチド(例えば、p97)の結合体化または化学的架橋について、多数のアプローチが存在し、そして当業者は、特定の薬剤を結合体化するためにどの方法が最も適切であるかを決定し得る。用いられる方法は、一旦送達されると、p97がそのレセプターに結合する能力を妨害することなく(好ましくは、p97単独と比較して、p97−薬剤の生体分布に影響を与えることなく、そして/またはその薬剤の所望の活性(それは、治療的もしくは予防的などである)を大きく変更することなく)、この薬剤とp97とを、連結し得なければならない。p97を種々の薬剤に結合体化する好ましい方法は、以下の実施例の節に記載される。複雑な分子をp97へと連結するための特に好ましい方法は、SATA/スルホ−SMCC架橋反応である(Pierce(Rockford,IL))。
【0053】
タンパク質とペプチドとを架橋する本発明の方法は、当業者に周知である。数百種の架橋剤が、目的の化合物をp97またはp97を結合する物質と結合体化するために利用可能である(例えば、Chemistry of Protein Conjugation and Crosslinking,Shans Wong,CRC Press,Ann Arbor(1991)ならびに米国特許第5,981,194号およびPCT特許公開第WO 02/13843号および同第WO 01/59459号(これらは、その全体が、本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)。多くの試薬および架橋剤を用いて、活性な薬剤とp97分子との結合体を調製し得る。例えば、Hermanson,GTら、Bioconjugate Techniques,Academic Press,(1996)を参照のこと。架橋剤は一般に、利用され得る反応性官能基または治療薬剤に挿入される反応性官能基に基づいて選択される。さらに、反応性基が存在しない場合、光活性化可能な架橋剤が用いられ得る。特定の例では、p97とこの結合体との間にスペーサーを含むことが所望され得る。1つの実施形態では、p97とタンパク質治療薬剤とは、p97におけるスルフヒドリル基の導入によって、そしてカルボキシル基を介してタンパク質化合物に反応性チオール基を含む架橋剤の導入によって、結合体化され得る(WawizynczakおよびThorpe、Immunoconjugates:Antibody Conjugates in Radioimaging and Therapy of Cancer,Vogel(編)Oxford University Press,28−55頁(1987);ならびにBlairおよびGhose(1983)J.Immunol.Methods 59:129)。いくつかの実施形態では、このリンカーは、p97および/またはリンカーからこの薬剤を遊離するように、リソソームの酸性pHにおいて加水分解に対して脆弱である。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態では、p97−薬剤結合体は、p97融合タンパク質である。融合タンパク質は、当該分野で公知の標準的技術を用いて調製され得る。代表的に、p97またはその一部分をコードするDNA分子は、タンパク質化合物をコードするDNA分子に連結される。キメラDNA構築物は、適切な調節エレメントと共に、発現ベクター中にクローニングされ得、そして適切な宿主中で発現され得る。得られる融合タンパク質は、選択されたタンパク質化合物に対して用いられるp97またはその一部分を含む。
【0055】
リンカーが用いられる場合、このリンカーは好ましくは、アルキル骨格、アリール骨格および/またはアミノ酸骨格を含むように構築され、かつアミド結合、エーテル結合、エステル結合、ヒドラゾン結合、ジスルフィド結合またはそれらの任意の組み合わせを含む、有機部分である。アミノ酸、エーテルおよびアミド結合成分を含む結合は、生理学的pH(通常、血清中で7.4)の条件下において適切である。好ましい結合は、血清のpHで安定であるが、リソソームのpHに曝露された場合に加水分解してこの薬物を遊離する、エステルまたはヒドラゾンを含む結合である。ジスルフィド結合が好ましい。なぜなら、これらは、還元的切断に感受性であるからである。さらに、アミノ酸リンカーは、所望の標的器官またはより好ましくは、このリソソーム自体における特異的酵素による切断に対して感受性であるように設計され得る。例示的なリンカーは、Blattlerら(1985)Biochem.24:1517−1524;Kingら(1986)Biochem.25:5774−5779;SrinivasacharおよびNevill(1989)Biochem.28:2501−2509に記載される。
【0056】
いくつかの実施形態では、このリンカーは、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールである。他の実施形態では、このリンカーは、4〜20原子長である。他の実施形態では、このリンカーは、O、N、またはSからなる群より独立して選択されるヘテロ原子によって置換され得る炭素鎖原子を有する、1〜30原子長である。いくつかの実施形態では、1〜4個または5〜15個のC原子は、O、N、Sから独立して選択されるヘテロ原子で置換される。他の実施形態では、このリンカーは、リソソーム環境に送達された場合に加水分解を受ける(例えば、リソソームのpHでの加水分解に感受性であるかまたはリソソーム酵素に接触すると加水分解に感受性である)部分を含む。いくつかの実施形態では、このリンカー基は好ましくは、体液中の結合体の可溶性を増強するために、親水性である。いくつかの実施形態では、このリンカーは、p97分子もしくはこのタンパク質薬剤を含むか、または他のリソソーム酵素(例えば、標的リソソームにおいて欠損していない酵素またはp97キャリアに結合体化されていないリソソーム酵素)による攻撃を受ける官能基によって、p97分子もしくはこのタンパク質薬剤に結合される。いくつかの実施形態では、このp97と薬剤とは、アミノ酸もしくはペプチド、脂質、または糖残基を含むリンカーによって連結される。いくつかの実施形態では、このp97と薬剤とは、合成または翻訳後修飾によって導入される基に連結される。
【0057】
いくつかの実施形態では、薬剤−リンカー中間体は、以前に記載されたものと類似するが、例えば、p97上の遊離アミン基と反応し得る活性なエステル、またはSATA反応もしくは当業者がこれらをp97に結合させ得る他の基を介してp97上に作製された遊離チオールと反応し得るマレイミドのいずれかを含む。
【0058】
(A.p97の調製)
本発明の方法および組成物において使用するためのp97ペプチドまたはp97分子は、種々の供給源から入手、単離または調製され得る。
【0059】
1つの局面では、標準的な組換えDNA技術を用いて、p97またはその誘導体を調製し得る。1つの実施形態では、p97をコードするDNAは、p97配列のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅によって入手され得る(一般に、米国特許第4,683,202号;同第4,683,195号;および同第4,800,159号を参照のこと;PCR Technology:Principles and Applications for DNA Amplification,Erlich(編),Stockton Press(1989)もまた参照のこと)。手短には、p97を発現する細胞(例えば、SK−MEL−28細胞)由来の二本鎖DNAは、耐熱性Taqポリメラーゼ、配列特異的DNAプライマー(例えば、5’GCGGACTTCCTCGG3’(配列番号1)および5’TCGCGAGCTTCCT3’(配列番号2))、ATP、CTP、GTPおよびTTPの存在下で加熱することによって変性される。合成が完全である場合、二本鎖DNAが産生される。このサイクルは、何回も反復されて、p97 DNAの階乗の増幅をもたらし得る。次いで、増幅されたp97 DNAは、以下に記載されるような発現ベクター中に容易に挿入され得る。
【0060】
あるいは、p97をコードするDNAは、BrownらのUK特許出願第GB 2188 637号によって記載されるクローニング技術を用いて単離され得る。p97 cDNAをコードする配列を含むクローンは、American Type Culture Collection(ATCC)に、受託番号CRL 8985(PMTp97b)およびCRL 9304(pSVp97a)で寄託されている。
【0061】
本発明の1つの実施形態では、p97の短縮型誘導体が提供される。例えば、部位特異的変異誘発は、ヌクレオチド2219を超えたC末端疎水性ドメインを欠失させるためにオリゴヌクレオチドWJ31 5’CTCAGAGGGCCGCTGCGCCC−3’(配列番号3)を用いて、またはヌクレオチド1146〜1166の領域にNhe I部位および停止コドンを導入し、それによってまた、N末端ドメインのみを含む短縮形態のp97を構築するためにオリゴヌクレオチドWJ32 5’CCA GCG CAG CTAGCGGGGGCAG 3’(配列番号4)を用いて実施され得る。同様に、変異誘発はまた、C末端ドメインのみが発現されるように、p97について実施され得る。1つの実施形態では、Xho部位は、N末端ドメインおよびC末端ドメインの両方において、オリゴヌクレオチドWJ 5’−ACACCAGCGCAGCTCGAGGGGCAGCCG3’(配列番号5)を用いて変異誘発によって挿入され、N末端ドメインのその後の欠失を可能にする。種々の他の制限酵素(例えば、Eco RIを含む)もまた、p97の欠失誘導体または短縮誘導体を構築するために、本発明の状況において利用され得る。
【0062】
変異は、ネイティブな配列のフラグメントへの、変異したフラグメントの連結を可能にする制限部位が隣接した変異配列を含むオリゴヌクレオチドを合成することによって、特定の遺伝子座に導入され得る。連結後、得られる再構築配列は、アミノ酸の所望の挿入、置換、または欠失を有する誘導体をコードする。あるいは、上記のように、オリゴヌクレオチド指向性部位特異的変異誘発手順を用いて、所望の置換、欠失、または挿入に従って改変された特定のコドンを有する、改変された遺伝子が入手され得る。上記に示される改変を作製する例示的方法は、Sambrookら、Molecular Cloning A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)によって開示される。
【0063】
本発明の特に好ましい実施形態では、p97は、このタンパク質のカルボキシ末端に位置するGPIアンカー配列が欠失した短縮化cDNAとして、発現ベクター中にクローニングされる。
【0064】
手短に述べると、このp97遺伝子は、クローニングされたp97 cDNAをテンプレートとして用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって作製され得る。短縮化p97は、座標36〜60(座標は、cDNA地図に基づく)を含みかつさらにSna BI制限部位を含む5’PCRプライマーであるWJ47を用いて合成される。WJ47の配列は、以下である:
【0065】
【化1】

3’プライマーであるWJ48は、座標2172〜2193を含み、そしてさらに、TGA終結コドンおよびSnaBI制限部位の両方を含む。WJ48のDNA配列は、以下である:
【0066】
【化2】

増幅後、短縮化p97産物は、pNUTΔH(Palmiter(1986)PNAS 83:1261−1265から入手される)中にSma I制限部位にて挿入される。得られるプラスミドの方向は、ベクター配列にアニーリングする第1のプライミングオリゴヌクレオチドを用いるPCRおよび挿入配列にアニーリングする第2のプライミングオリゴヌクレオチドによって決定され得る。あるいは、適切な制限消化が、方向を確認するために実施され得る。増幅された配列の発現は、疎水性ドメインを欠く可溶性p97タンパク質の産生をもたらす。
【0067】
上記のように、本発明は、適切な転写調節エレメントまたは翻訳調節エレメントに作動可能に連結される、p97またはその誘導体をコードする、合成またはcDNA由来のDNAフラグメントを含む組換え発現ベクターを提供する。適切な調節エレメントは、種々の供給源(細菌遺伝子、真菌遺伝子、ウイルス遺伝子、哺乳動物遺伝子、および昆虫遺伝子を含むがこれらに限定されない)から誘導され得る。適切な調節エレメントの選択は、選択された宿主細胞に依存し、そして当業者によって容易に達成され得る。調節エレメントの例としては、特に、転写プロモーターおよび転写エンハンサーまたはRNAポリメラーゼ結合配列、リボソーム結合配列(翻訳開始シグナルを含む)が挙げられる。さらに、選択された宿主細胞および用いられるベクターに依存して、他の遺伝的エレメント(例えば、複製起点、さらなるDNA制限部位、エンハンサー、転写誘導性を付与する配列、および選択的マーカー)が発現ベクター中に組み込まれ得る。
【0068】
p97をコードするDNA配列は、広範な種々の原核生物宿主細胞および真核生物宿主細胞(細菌細胞、哺乳動物細胞、酵母細胞、真菌細胞、ウイルス細胞、植物細胞、および昆虫細胞を含むがこれらに限定されない)によって発現され得る。外来DNAを発現するためのこのような細胞を形質転換またはトランスフェクトするための方法は、当該分野で周知である(例えば、Itakuraら,米国特許第4,704,362号;Hinnenら(1978)PNAS USA 75:1929−1933;Murrayら,米国特許第4,801,542号;Upshallら,米国特許第4,935,349号;Hagenら,米国特許第4,784,950号;Axelら,米国特許第4,399,216号;Goeddelら,米国特許第4,766,075号;およびSambrookら,前出を参照のこと)。
【0069】
プロモーター、ターミネーター、ならびに適切な種類の発現ベクターを例えば、植物細胞、鳥類細胞、および昆虫細胞に導入するための方法は、当業者によって容易に達成され得る。本発明の特に好ましい実施形態では、p97は、バキュロウイルス(例えば、LuckowおよびSummers(1988)BioTechnology 6:47;Atkinsonら(1990)Petic.Sci.28:215−224を参照のこと)から発現される。バキュロウイルス(例えば、AcMNPV)の使用が特に好ましい。なぜなら、宿主昆虫細胞は、GPI切断形態のp97を発現するからである。p97は、組換えp97を発現する上記の宿主/ベクター系の培養物から調製され得る。組換え産生されたp97は、以下でより詳細に記載されるように、さらに精製され得る。
【0070】
可溶性形態のp97は、可溶性p97を含む細胞を、細胞増殖の対数期を通じて培養し、そして上清を収集することによって調製され得る。好ましくは、上清は、細胞が生存力を失う前の時点で収集される。次いで、可溶性p97は、単離された可溶性p97を得るために、以下の通りに精製され得る。可溶性p97の適切な精製方法は、可溶性p97の親水性特性に基づいて選択され得る。例えば、可溶性p97は、Triton X−114 Phase Separationによって容易に入手され得る。
【0071】
別の実施形態では、p97は、GPIアンカーp97を発現するように遺伝子操作された培養CHO細胞から単離され得る。GPIアンカータンパク質は、GPIアンカーを切断し得る酵素との短時間のインキュベーションによって収集され得る。このような酵素は、当該分野で公知であり(Ferguson(1988)Ann.Rev.Bichem.57:285−320)、そして代表例は上記に記載される。切断された可溶性タンパク質は、培地から回収され得、次いでこの細胞は、このタンパク質のさらなる発現のために増殖培地に戻され得る。充分な量のこのタンパク質が得られるまで、増殖と収集とのサイクルが繰り返され得る。特に好ましいGPI酵素は、ホスホリパーゼC(PI−PLC)である。ホスホリパーゼCは、細菌供給源(Low「Phospholipase Purification and Quantification」The Practical Approach Series:Cumulative Methods Index,RickwoodおよびHames編.IRC Press,Oxford,NY(1991);Kupeら(1989)Eur.J.Biochem.185:151−155;Volwerkら(1989)J.Cell.Biochem.39:315−325を参照のこと)または組換え供給源(Kokeら(1991)Protein Expression and Purification 2:51−58;およびHennerら(1986)Nuc.Acids Res.16:10383)のいずれかから入手され得る。
【0072】
p97およびその誘導体(可溶性p97が挙げられる)は、本明細書中に記載される方法に従って容易に精製され得る。手短には、p97は、可溶化p97を含む上清または上記の通りに培養された宿主/ベクター系のいずれかから精製され得る。単独または組み合わせのいずれかで用いられる、種々の精製工程は、p97を精製するために用いられ得る。例えば、p97を可溶化することによって得られる上清または上記の通りの宿主/ベクター培養物から得られる上清は、市販のタンパク質濃縮フィルター(例えば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニット)を用いて、またはタンパク質を「塩析」し、続いて透析することによって、容易に濃縮され得る。さらに、上清または濃縮物は、アフィニティー精製マトリクス(例えば、適切な支持体に結合した抗p97抗体)に適用され得る。あるいは、アニオン交換樹脂(例えば、ペンダントジエチルアミノエチル(DEAE)基を有する、マトリクスまたは基材)が用いられ得る。代表的マトリクスとしては、アクリルアミド、アガロース、デキストラン、セルロースまたはタンパク質精製において通常用いられる他の種類が挙げられる。同様に、種々の不溶性マトリクス(例えば、スルホプロピル基またはカルボキシメチル基)を利用するカチオン交換体もまた用いられ得る。
【0073】
最後に、疎水性RP−HPLC媒体(例えば、ペンダントメチル基または他の脂肪族基を有する、シリカゲル)を用いた1以上の逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)工程を用いて、p97をさらに精製し得る。
【0074】
p97フラグメントはまた、当該分野で周知の改変を行って、上記の技術を用いて精製され得る。例えば、p97発現ベクターは、発現タンパク質がp97の所望のフラグメントであるように改変され得る。このタンパク質は、発現系から単離され得る(すなわち、細胞から抽出され得る)か、またはこのタンパク質は、発現系の上清中に分泌されるように設計され得、そして上記の技術を用いて単離され得る。あるいは、全長p97タンパク質が作製され、そして精製され得、次いでp97フラグメントが、所望のフラグメントを作製するように設計された切断反応によって作製され得る。化学的合成は、所望のp97タンパク質またはそのフラグメントを得るための代替経路である。
【0075】
本発明の状況では、p97の純度を定義するために用いられる場合、「単離された」または「精製された」とは、天然起源の他のタンパク質も内因性起源の他のタンパク質も実質的に含まず、かつこの産生プロセスに起因する約5質量%未満、好ましくは約1質量%未満のタンパク質夾雑物を含む、タンパク質をいう。p97は、SDS−PAGE、続いてクマシーブルーでの染色によって単一のタンパク質バンドとして検出され得る場合、「単離された」とみなされ得る。
【0076】
(融合/キメラタンパク質の産生)
本発明のキメラタンパク質は、融合タンパク質全体をコードする単一核酸または1より多くの核酸配列(各々が、キメラタンパク質のドメインをコードし、必要に応じて、これらのドメインを連結するに役立つアミノ酸をコードする)を発現する宿主細胞を用いて産生され得る。これらのキメラタンパク質はまた、化学的合成によって産生され得る。
【0077】
(A.宿主細胞)
キメラタンパク質を産生するために用いられる宿主細胞は、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、非哺乳動物脊椎動物細胞、または哺乳動物細胞である;哺乳動物細胞としては、ハムスター細胞、サル細胞、チンパンジー細胞、イヌ細胞、ネコ細胞、ウシ細胞、ブタ細胞、マウス細胞、ラット細胞、ウサギ細胞、ヒツジ細胞およびヒト細胞が挙げられるがこれらに限定されない。これらの宿主細胞は、不死化細胞(細胞株)または非不死化(初代または二次)細胞であり得、そして広範な種々の細胞型(例えば、線維芽細胞、ケラチノサイト、上皮細胞(例えば、乳房上皮細胞、腸上皮細胞)、卵巣細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞、すなわちCHO細胞)、内皮細胞、神経膠細胞、神経細胞、血液の構成要素(例えば、リンパ球、骨髄細胞)、筋肉細胞、肝細胞およびこれらの体細胞型の前駆体であるがこれらに限定されない)のうちのいずれかであり得る。
【0078】
キメラタンパク質をコードするDNAまたはRNAを含んで発現する細胞は、本明細書中で、遺伝子改変された細胞といわれる。キメラタンパク質をコードするDNAまたはRNAを含んで発現する哺乳動物細胞は、遺伝子改変された哺乳動物細胞といわれる。細胞へのDNAまたはRNAの導入は、公知のトランスフェクション法(例えば、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、マイクロプロジェクタイルボンバードメント、リン酸カルシウム沈澱、改変リン酸カルシウム沈澱、カチオン性脂質処理、フォトポリペプチドレーション(photoporation)、融合方法論、レセプター媒介移入、またはポリブレン沈澱によってである。あるいは、このDNAまたはRNAは、ウイルスベクターを用いた感染によって導入され得る。キメラタンパク質をコードするDNAまたはRNAを発現する細胞(哺乳動物細胞が挙げられる)を産生する方法は、同時係属中の特許出願である米国特許出願第08/334,797号(発明の名称「In Vivo Protein Production and Delivery System for Gene Therapy」,Richard F Selden,Douglas A.TrecoおよびMichael W.Heartleinによる(1994年11月4日出願));米国特許出願第08/334,455号(発明の名称「In Vivo Production and Delivery of Erythropoietin or Insulinotropin for Gene Therapy」,Richard F Selden,Douglas A.TrecoおよびMichael W.Heartleinによる(1994年11月4日出願))および米国特許出願第08/231,439号(発明の名称「Targeted Introduction of DNA Into Primary or Secondary Cell and Their Use for Gene Therapy」,Douglas A.Treco,Michael W.HeartleinおよびRichard F Seldenによる(1994年4月20日出願))に記載される。これらの出願の各々の教示は、本明細書中に参考として明らかに援用される。
【0079】
(B.核酸構築物)
このキメラタンパク質を発現するために用いられる核酸構築物は、トランスフェクトされた哺乳動物細胞において染色体外で(エピソームで)発現される核酸構築物、またはレシピエント細胞のゲノム中にランダムにもしくは相同組換えによって、予め選択された標的部位でのいずれかで組み込まれる核酸構築物であり得る。染色体外で発現される構築物は、キメラタンパク質コード配列に加えて、その細胞におけるこのタンパク質の発現に充分な配列、必要に応じて、この構築物の複製に充分な配列を含む。これとしては代表的に、プロモーター、キメラタンパク質コードDNAおよびポリアデニル化部位が挙げられる。このキメラタンパク質をコードするDNAは、その発現が、そのプロモーターの制御下にあるような様式で、この構築物中に配置される。必要に応じて、この構築物は、さらなる構成要素(例えば、以下のうちの1以上)を含み得る:スプライス部位、エンハンサー配列、適切なプロモーターの制御下にある選択マーカー遺伝子、および適切なプロモーターの制御下にある増幅可能マーカー遺伝子。
【0080】
このDNA構築物が細胞ゲノムに組み込まれる実施形態では、このDNA構築物は、キメラタンパク質コード核酸配列を含むことのみを必要とする。必要に応じて、このDNA構築物は、プロモーター配列およびエンハンサー配列、ポリアデニル化部位、スプライス部位、選択マーカーをコードする核酸配列、増幅可能マーカーをコードする核酸配列および/またはそのDNAの組込みをゲノム内の選択された部位に標的化するための、レシピエント細胞内のゲノムDNAに相同なDNA(標的化DNAまたはDNA配列)を含み得る。
【0081】
(C.細胞培養法)
キメラタンパク質コードDNAまたはキメラタンパク質コードRNAを含む哺乳動物細胞は、その細胞の増殖およびそのDNAまたはRNAの発現に適切な条件下で培養される。このキメラタンパク質を発現する細胞は、公知の方法および本明細書中に記載の方法を用いて同定され得、そしてこのキメラタンパク質は、キメラタンパク質産生の増幅を用いて、または用いずにのいずれかで、公知の方法および本明細書中にも記載される方法を用いて単離および精製され得る。同定は、例えば、このキメラタンパク質をコードするDNAまたはRNAの存在を示す表現型を提示する遺伝子改変された哺乳動物細胞をスクリーニング(例えば、PCRスクリーニング、サザンブロット分析によるスクリーニング、またはこのキメラタンパク質の発現についてのスクリーニング)することによって実施され得る。キメラタンパク質コードDNAが組み込まれた細胞の選択は、選択マーカーをDNA構築物中に含め、そして選択マーカー遺伝子を含む、トランスフェクトまたは感染させた細胞を、選択マーカー遺伝子を発現する細胞のみが存在するに適切な条件下で培養することによって達成され得る。導入されたDNA構築物のさらなる増幅は、遺伝子改変された哺乳動物細胞を、増幅に適切な条件下で培養すること(例えば、増幅可能マーカー遺伝子を含む、遺伝子改変された哺乳動物細胞を、複数コピーのこの増幅可能マーカー遺伝子を含む細胞のみが生存し得る濃度の薬物の存在下で培養すること)によってもたらされ得る。このキメラタンパク質を発現する遺伝子改変された哺乳動物細胞は、発現産物の検出によって、本明細書中に記載される通りに同定され得る。例えば、キャリアがp97であるキメラタンパク質を発現する哺乳動物細胞は、サンドイッチ酵素免疫アッセイによって同定され得る。抗体は、LRP部分または活性薬剤部分に対して指向され得る。
【0082】
(B.p97に対する抗体の調製)
本明細書の教示に基づいて、マウスまたはヒトのp97に対する抗体は、多くの用途を有する。この用途としては、p97の単離および精製のための用途、インビトロおよびインビボの両方でのp97の研究および同定における用途、ならびに潜在的診断剤(例えば、結合体投与量レベルのモニタリング)および治療用途(例えば、p97結合体用量レベルの調節)が挙げられるがこれらに限定されない。それゆえ、p97に対する好ましい抗体およびこのような抗体の産生方法を手短に述べることが有用である。
【0083】
p97に対して反応性の抗体は、当該分野で周知である。さらなる抗p97抗体は、本発明によって提供される。抗p97抗体の代表例としては、以下が挙げられる:L235(ATCC番号HB 8466;Realら(1985)Cancer Res.45:4401−4411を参照のこと;Foodら(1994)J.Biol.Chem.269(4):3034−3040),4.1,8.2,96.5および118.1もまた参照のこと(Brownら(1981)J.Immunol.127(2):539−546;およびBrownら(1981)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78(1):539−543を参照のこと);ならびにHybC(Kennardら(1996)Nat.Med.2(11):1230−1235)。他のモノクローナル抗体(2C7および9B6が挙げられるがこれらに限定されない)が、Synapse Technologies Inc.において作製された。マウスp97に対する抗体としては、例えば、マウスp97のフラグメントに対して作製されたウサギ抗ヒトp97ポリクローナル抗体が挙げられる。本発明の状況では、抗体は、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体フラグメント(例えば、Fab、およびF(ab’)2)ならびに組換え産生された結合パートナーを包含することが理解される。抗体は、Kaが10−7M以上である場合、p97に対して反応性であることが理解される。
【0084】
ポリクローナル抗体は、当業者によって種々の温血動物から容易に作製され得る。モノクローナル抗体はまた、従来技術(例えば、米国特許第RE 32,011号、同第4,902,614号;同第4,543,439号;および同第4,411,993号を参照のこと;Kennett,McKearn,およびBechtol(編)Monoclonal Antibodies,Hybridomas:A New Dimension in Biological Analyses,Plenum Press,(1980);ならびにHarlowおよびLane(編)Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1988)もまた参照のこと)を用いて容易に作製され得る。好ましい抗体の調製は、以下の実施例の節においてさらに記載される。
【0085】
(標識)
いくつかの実施形態では、p97結合体は、その検出を容易にするために標識される。「標識」または「検出可能部分」は、分光学的手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、化学的手段、または他の物理的手段によって検出可能な組成物である。例えば、本発明における使用に適切な標識としては、例えば、以下が挙げられる:放射性標識(例えば、32P)、発蛍光団(例えば、フルオレセイン)、高電子密度試薬、酵素(例えば、ELISAにおいて通常用いられるような)、ビオチン、ジゴキシゲニン、または(例えば、放射性標識をハプテンもしくはペプチドに取り込むことによって)検出可能とされ得るかまたはそのハプテンもしくはペプチドと特異的に反応する抗体を検出するために用いられ得る、ハプテンおよびタンパク質。
【0086】
上記のように、用いられるスクリーニングアッセイに依存して、結合体の薬剤部分、リンカー部分またはp97分子部分は標識され得る。用いられる特定の標識または検出可能な基は、それがこの結合体の生物学的活性をおおいに妨害するのでない限り、本発明の重要な局面ではない。この検出可能な基は、検出可能な物理的特性または化学的特性を有する任意の物質であり得る。従って、標識は、分光学的手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、電子的手段、光学的手段または化学的手段によって検出可能な、任意の組成物である。
【0087】
本発明における使用に適切な標識の例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:蛍光色素(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、テキサスレッド、ローダミンなど)、放射性標識(例えば、H、125I、35S、14C、または32P)、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、およびELISAにおいて通常用いられる他の酵素)、ならびに比色標識(例えば、コロイド状金または着色したガラスもしくはプラスチックのビース(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)。
【0088】
この標識は、当該分野で周知の方法に従って、アッセイの所望の成分に直接的または間接的に結合され得る。好ましくは、この標識は、1つの実施形態では、本発明に従って活性薬剤を結合体化するためのイソシアネート試薬を用いて、p97に対して共有結合される。本発明の1つの局面では、本発明の二官能性イソシアネート試薬を用いて、標識をp97に対して結合体化して、活性薬剤が結合されていない標識p97結合体を形成し得る。標識p97結合体は、本発明による標識結合体の合成のための中間体として用いられ得るか、またはp97結合体を検出するために用いられ得る。上記のように、広範な標識が用いられ得、標識の選択は、必要とされる感度、アッセイの所望の成分との結合体化の容易さ、安定性の必要要件、利用可能な計測装置、および処分要件に依存する。非放射性標識はしばしば、間接的手段に結合される。一般に、リガンド分子(例えば、ビオチン)は、この分子に共有結合される。次いで、このリガンドは、固有に検出可能であるかまたはシグナル系(例えば、検出可能な酵素、蛍光化合物、または化学発光化合物)に共有結合するかのいずれかである、別の分子(例えば、ストレプトアビジン)に結合する。
【0089】
この結合体はまた、シグナル生成化合物に対して(例えば、酵素または発蛍光団を用いた結合体化によって)直接的に結合体化され得る。標識としての使用に適切な酵素としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:ヒドロラーゼ(特にホスファターゼ、エステラーゼおよびグリコシダーゼ)、またはオキシドターゼ(oxidotase)(特にペルオキシダーゼ)。標識としての使用に適切な蛍光化合物(すなわち、発蛍光団)としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:フルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロンなど。適切な発蛍光団のさらなる例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:エオシン、TRITC−アミン、キニーネ、フルオレセインW、アクリジンイエロー、リサミンローダミン、Bスルホニルクロリドエリトロセイン(erythroscein)、ルテニウム(トリス,ビピリジニウム)、テキサスレッド、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチドなど。標識としての使用に適切な化学発光化合物としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:ルシフェリンおよび2,3−ジヒドロフタラジンジオン(例えば、ルミノール)。本発明の方法において用いられ得る種々の標識系またはシグナル生成系の概説については、米国特許第4,391,904号を参照のこと。
【0090】
標識を検出する手段は、当業者に周知である。従って、例えば、この標識が放射性標識である場合、検出手段としては、シンチレーションカウンターまたはオートラジオグラフィーにおいてのような写真フィルムが挙げられる。この標識が蛍光標識である場合、これは、この発蛍光団を適切な波長の光で励起し、そして得られる蛍光を検出することによって検出され得る。この蛍光は、電子検出器(例えば、電荷結合デバイス(CCD)または光電子倍増管など)の使用によって視覚的に検出され得る。同様に、酵素標識は、その酵素に適切な基質を提供い、そして得られる反応産物を検出することによって検出され得る。比色標識または化学発光標識は、その標識に関連した色を観察することによって、単純に検出され得る。本発明の方法における使用に適切な他の標識系および検出系は、当業者に容易に明らかである。このような標識されたモジュレーターおよびリガンドは、疾患または健康状態の診断において用いられ得る。
【0091】
(薬学的組成物、および使用/処置/投与の方法)
本発明の方法を用いて処置、改善または予防され得る疾患としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:ムコ多糖沈着症I(MPS I)、MPS II、MPS IIIA、MPS IIIB、異染性白質萎縮(MLD)、クラッベ、ポーンプ、CLN2、テイ−サックス、ニーマン−ピックAおよびB、ならびに他のリソソーム疾患。各疾患に関して、この結合体化剤は、特定の化合物、タンパク質または酵素を含む。MPS Iに関与する方法については、好ましい化合物または酵素は、α−L−イズロニダーゼである。MPS IIに関与する方法については、好ましい化合物または酵素は、イズロネート−2−スルファターゼである。MPS IIIAに関与する方法については、好ましい化合物または酵素は、ヘパランN−スルファターゼである。MPS IIIBに関与する方法については、好ましい化合物または酵素は、α−N−アセチルグルコサミニダーゼである。異染性白質萎縮(MLD)に関与する方法については、好ましい化合物または酵素は、アリールスルファターゼAである。クラッベに関与する方法については、好ましい化合物または酵素は、ガラクトシルセラミダーゼである。ポーンプに関与する方法については、好ましい化合物または酵素は、酸性α−グルコシダーゼである。CLNに関与する方法については、好ましい化合物または酵素は、チオエステラーゼである。テイ−サックスに関与する方法については、好ましい化合物または酵素は、ヘキソサミニダーゼAである。ニーマン−ピックAおよびBに関与する方法については、好ましい化合物または酵素は、酸性スフィンゴミエリナーゼである。他の糖原性障害に関与する方法については、好ましい化合物または酵素は、グリコリピドーシス(glycolipidosis)、ムコ多糖症、オリゴ糖症(oligosaccharidosis)である。
【0092】
本発明のp97−結合体は、「薬学的に受容可能なキャリア」とともに投与され得る。このようなキャリアは、標準的な薬学的キャリア、緩衝剤および賦形剤(リン酸緩衝化生理食塩水、水、および乳濁液(例えば、水中油型乳濁液または油中水型乳濁液)が挙げられる)、ならびに種々の型の湿潤剤および/またはアジュバントのいずれをも包含する。適切な薬学的キャリアおよびそれらの処方は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co.,Easton,第19版.1995)に記載される。好ましい薬学的キャリアは、活性薬剤の意図される投与形態に依存する。代表的な投与形態は、以下に記載される。
【0093】
用語「有効量」は、被験体の健康状態、病状、疾患に対して所望の結果を生じるに充分な、または診断目的の、投与量を意味する。この所望の結果は、この投与量のレシピエントの主観的改善または客観的改善を含み得る。
【0094】
「予防処置」は、疾患の徴候を示さないかまたは疾患のほんの初期の徴候を示す被験体に施される処置であり、ここで、処置は、病状を発症する危険性を低減する目的で施される。本発明の結合体は、予防処置として与えられ得る。
【0095】
「治療処置」は、病状の徴候を示す被験体に施される処置であり、ここで、処置は、これらの病理学的徴候を低減または除去する目的で施される。これらの徴候は、主観的または客観的であり得る。
【0096】
用語「組成物」は、例えば、薬学的組成物において、活性成分、およびキャリアを構成する不活性成分を含む産物、ならびにこれらの成分のいずれか2つ以上の組み合わせ、錯体形成もしくは凝集から、またはこれらの成分のうちの1以上の解離から、またはこれらの成分のうちの1以上の他の型の反応もしくは相互作用から、直接的または間接的に生じる任意の産物を包含することが意図される。従って、本発明の薬学的組成物は、本発明のp97−薬剤結合体と、薬学的に受容可能なキャリアとを混合することによって作製される任意の組成物を包含する。
【0097】
用語「薬学的組成物」は、被験体(動物またはヒトが挙げられる)における薬学的使用に適切な組成物を示す。薬学的組成物は一般に、有効量のp97−結合体および薬学的に受容可能なキャリアを含む。
【0098】
この結合体は、種々の経路によって投与され得る。経口用調製物に関して、この結合体は、単独で、または錠剤、散剤、顆粒剤もしくはカプセル剤を作製するに適切な添加物と組み合わせて(例えば、以下とともに)用いられ得る:従来の添加剤(例えば、ラクトース、マンニトール、コーンスターチまたは馬鈴薯澱粉);結合剤(例えば、微結晶性セルロース、セルロース誘導体、アカシア、コーンスターチまたはゼラチン);崩壊剤(例えば、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉またはカルボキシメチルセルロースナトリウム);滑沢剤(例えば、タルクまたはステアリン酸マグネシウム);および所望により、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤および矯味矯臭剤。
【0099】
このp97−薬剤結合体は、これらを水性または非水性の溶媒(例えば、植物油または他の類似の油、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸のエステルまたはプロピレングリコール)中に(所望の場合、従来の添加物(例えば、可溶化剤、等張剤、懸濁剤、乳化剤、安定剤および保存剤)とともに)溶解、懸濁または乳化することによって、注射用調製物に処方され得る。
【0100】
このp97−薬剤結合体は、吸入を介して投与されるべきエアゾール処方物において利用され得る。本発明の結合体は、加圧された受容可能なプロペラント(例えば、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素など)中に処方され得る。
【0101】
さらに、このp97−薬剤結合体は、種々の基剤(例えば、乳化基剤または水溶性基剤)と混合することによって坐剤にされ得る。本発明の結合体は、坐剤を介して直腸に投与され得る。坐剤は、体温で融解するが、室温で固体である、ビヒクル(例えば、カカオ脂、カーボワックスおよびポリエチレングリコール)を含み得る。
【0102】
経口投与または直腸投与用の単位投薬形態(例えば、シロップ剤、エリキシル剤および懸濁剤)のp97−薬剤結合体が提供され得、ここで、各投与量単位(例えば、ティースプーンフル、テーブルスプーンフル、錠剤または坐剤)は、活性薬剤を含む所定量の組成物を含む。同様に、注入投与または静脈内投与用の単位投薬形態は、滅菌水、規定生理食塩水または別の薬学的に受容可能なキャリア中の溶液としての組成物中に結合体を含み得る。用語「単位投薬形態」は、本明細書中で用いられる場合、ヒトおよび動物の被験体用の単位投与量として適切な物理的に別個の単位であって、各単位が、薬学的に受容可能な希釈剤、キャリアまたはビヒクルに関連して所望の効果を生じるに充分な量の算出された所定量の本発明の結合体を含む、単位をいう。本発明の新規単位投薬形態についての詳細は、用いられる特定の結合体および達成されるべき効果、ならびに宿主内の各化合物に関連した薬力学に依存する。
【0103】
実用面では、本発明による結合体は、従来の薬剤混合技術による薬学的キャリアと密接に混合された活性成分として組み合わされ得る。このキャリアは、投与が所望される調製物(例えば、経口または非経口(静脈内が挙げられる))の形態に依存して、広範な種々の形態を採り得る。経口投薬形態の組成物を調製する際に、有用な薬学的媒体(例えば、経口液体調製物(例えば、懸濁剤、エリキシル剤および液剤)の場合、水、グリコール、油、アルコール、矯味矯臭剤、保存剤、着色剤など;または経口固体調製物(例えば、散剤、硬質カプセル剤および軟質カプセル剤ならびに錠剤)の場合、キャリア(例えば、澱粉、糖、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤など))のいずれもが用いられ得、固体経口調製物が、液体調製物よりも好ましい。
【0104】
経皮投与経路に関して、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第17版,(Gennaroら編,Mack Publishing Co.,1985)に薬物の経皮投与方法が開示されている。皮膚(dermal)パッチまたは皮膚(skin)パッチは、本発明のp97−薬剤結合体の好ましい経皮送達手段である。パッチは好ましくは、この結合体の吸収を増加させる吸収エンハンサー(例えば、DMSO)を提供する。他の経皮薬物送達方法は、米国特許第5,962,012号、同第6,261,595号、および同第6,261,595号に開示される。これらの各々は、その全体が、本明細書中に参考として援用される。
【0105】
薬学的に受容可能な賦形剤(例えば、ビヒクル、アジュバント、キャリアまたは希釈剤)は、市販される。さらに、薬学的に受容可能な補助物質(例えば、pH調整剤および緩衝剤、張度調整薬剤、安定剤、湿潤薬剤など)は、市販される。
【0106】
当業者は、用量レベルが、特定の薬剤、症状の重篤度、および副作用に対する被験体の感受性の相関関係にあるものとして変動し得ることを容易に認識する。所定の結合体についての好ましい投与量は、種々の手段によって、当業者により容易に決定され得る。
【0107】
これらの局面の各々において、この組成物としては、経口投与、直腸投与、局所投与、非経口投与(皮下、筋肉内、および静脈内が挙げられる)、肺投与(鼻腔吸入またはバッカル吸入)、または経鼻投与に適切な組成物が挙げられるがこれらに限定されないが、任意の所定の場合において最も適切な経路は、部分的に、処置されるべき状態の性質および重篤度、ならびに活性成分の性質に依存する。例示的な投与経路は、経口経路および静脈内経路である。この組成物は、単位投薬形態で便利に提示され得、そして製薬分野で周知のいずれかの方法によって調製され得る。
【0108】
実用面では、本発明による結合体は、従来の薬剤混合技術による薬学的キャリアと密接に混合された活性成分として組み合わされ得る。このキャリアは、投与(例えば、経口または非経口(静脈内が挙げられる))が所望される調製物の形態に依存して、広範な種々の形態を採り得る。経口投薬形態の組成物を調製する際に、有用な薬学的媒体(例えば、経口液体調製物(例えば、懸濁剤、エリキシル剤および液剤)の場合、水、グリコール、油、アルコール、矯味矯臭剤、保存剤、着色剤など;または経口固体調製物(例えば、散剤、硬質カプセル剤および軟質カプセル剤ならびに錠剤)の場合、キャリア(例えば、澱粉、糖、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤など))のいずれもが用いられ得、固体経口調製物が、液体調製物よりも好ましい。
【0109】
投与が容易であることに起因して、錠剤およびカプセル剤は、最も有利な経口投薬単位形態を提示し、この場合、固体薬学的キャリアが明らかに用いられる。所望の場合、錠剤は、標準的な水性技術または非水性技術によってコーティングされ得る。これらの組成物中での活性薬剤の百分率はもちろん変動し得、そして便利には、その単位の重量の約2パーセント〜約60パーセントの間であり得る。
【0110】
本発明の結合体は、動物、特にヒトにおける治療的介入、予防的介入および診断的介入に有用である。
【0111】
本発明の組成物は、ウイルスエンベロープまたは小胞中に封入または結合されて投与され得る。リポソームは、二重層膜から形成された小胞である。適切な小胞としては、単層小胞および多層脂質小胞またはリポソームが挙げられるがこれらに限定されない。このような小胞およびリポソームは、標準的技術(例えば、米国特許第4,394,448号に記載される技術)を用いて、広範な種々の脂質化合物またはリン脂質化合物(例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、糖脂質、ガングリオシドなど)から作製され得る。このような小胞またはリポソームは、結合体を細胞内に投与するために、およびこの結合体を標的器官に送達するために、用いられ得る。目的のp97−組成物の制御放出はまた、カプセル化(例えば、米国特許第5,186,941号を参照のこと)を用いて達成され得る。
【0112】
この結合体を標的細胞、標識組織または標的器官と接触させる任意の投与経路が用いられ得る。この結合体は、末梢または中心に投与され得る。この結合体はまた、静脈内に、または腹腔内に投与され得る。この結合体は、局所的にまたは局部的に投与され得る。
【0113】
投与されるべき投与量は、個体の必要性および特徴(年齢、体重、状態の重篤度)、所望の効果、用いられる活性薬剤、ならびに選択された投与経路および処置レジメン)に依存する。p97−結合体の好ましい投与量は、約0.02pmol/kg〜約2.5nmol/kgの範囲であり、特に好ましい投与量は、2〜250pmol/kgの範囲であるか;あるいは、p97結合体の好ましい用量は、0.02〜2000mg/kgの範囲であり得る。これらの投与量は、各p97分子に会合している薬剤部分の数によって影響を受ける。さらに、投与量は、投与されるべき薬剤および処置されるべき状態の重篤度に基づいて計算され得る。用量反応相関を決定し、そして個々の患者の治療において用いられる投与量を最適化するための経験的方法および理論的方法は、当業者に周知である。
【0114】
本発明のp97−結合体は、例えば、動物、特にヒトにおけるリソソーム蓄積症の処置のための治療介入および予防介入に有用である。本発明の方法は、種々の異なるリソソーム蓄積症の処置において用途を見出す。特定の実施形態では、特に興味深いのは、所望の活性を有する活性薬剤が予め同定されているが、この活性薬剤が標的部位にも、標的領域にも、標的区画にも適切には標的化されていない疾患状態における本発明の方法の使用である。このような活性薬剤を用いて、本発明の方法を用いて、活性薬剤の治療効力および治療指数を増強し得る。
【0115】
処置は、結合体の投与に関連した、被験体に対する任意の有益な結果を包含することを意図し、有益な結果としては、疾患となる確率の低減、疾患予防、疾患の進行の遅速化、停止もしくは逆転、または宿主に罹患した疾患状態に関連した症状の改善が挙げられ、ここで、改善または利益は、少なくとも、疾患の重篤度の低下またはその疾患の重篤度もしくは存在を示すパラメーター(例えば、処置されるべき病的状態(例えば、炎症およびそれに関連した疼痛)に関連した、組織損傷、細胞死、過剰量もしくは有害量のリソソーム蓄積物質、症状)の大きさの低下をいうために広義で用いられる。このように、処置はまた、病的状態または少なくともそれらに関連した症状が完全に阻害される(例えば、生じるのが予防される)かまたは停止(例えば、終結)されて、その結果、宿主はもはや病的状態または少なくとも、この病的状態を特徴付ける症状を被らない状況を含むがこれらに限定されない。
【0116】
種々の宿主または被験体は、本発明の方法に従って処置され得る。一般に、このような被験体は、「哺乳動物」または「哺乳動物の」であり、ここで、これらの用語は、食肉目(例えば、イヌおよびネコ)、齧歯目(例えば、マウス、モルモットおよびラット)、および霊長目(例えば、ヒト、チンパンジー、およびサル)を含め、哺乳綱に属する生物を記載するために広範に用いられる。多くの実施形態では、宿主または被験体は、ヒトである。
【0117】
(治療活性について結合体をスクリーニングする方法)
本発明の結合体が、リソソームへの治療薬剤の送達を増加させる能力は、p97結合体化剤の送達を、コントロール(例えば、非結合体化剤)に対して比較することによってインビトロで評価され得る。好ましい実施形態では、この結合体および薬剤は、インビトロで細胞に投与され、そしてリソソーム内でのこの結合体の局在が決定される。この評価は、標識をこのp97結合体または非結合体化剤に結合体化し、その結果、細胞内でのその局在をより容易に決定および定量し得るようにすることにより、容易にされる。細胞内での化合物の局在をモニタリングするための方法は、当業者に周知であり、そして実施例1および2にさらに例示される。このような方法はまた、米国特許出願第10/206,448号(2002年7月25日出願、その全体が本明細書中に参考として援用される)に例示される。
【0118】
別の機能的アプローチでは、LSDにおいて欠損している薬剤を有する結合体を、LSDに罹患した細胞とインビトロで接触させ得、そしてリソソーム内に見出される蓄積物質の量に対するこの結合体の影響が、非結合体化剤の等しい量の影響に対して比較され得る。細胞もしくはリソソームの体積が測定され得るか、または蓄積物質が直接定量され得る。
【0119】
いくつかの実施形態では、本発明は、リソソーム蓄積症を処置する際の治療活性について化合物をスクリーニングする方法を提供し、この方法は、リソソームを有する細胞を化合物と接触させる工程であって、ここでこの化合物は、リソソーム蓄積症において欠損した酵素に共有結合されたp97を含む、工程;次いで、このリソソームに対するこの化合物の送達をモニタリングする工程による。このモニタリングする工程は、この結合体への標識およびこのリソソーム内でのこの標識の検出によって、またはリソソーム蓄積物質に対するこの化合物の影響(例えば、蓄積物質の量を減少させるか否か)を決定することによって、行われ得る。いくつかの実施形態では、この細胞はヒト細胞である。
【0120】
さらなる方法では、当業者に公知でかつ実施例3に例示されるように、臨床試験が行われる。より好ましくは、この結合体は、目的のLSDの動物モデルを提供する試験動物に投与される。このような動物モデルは、当業者に周知である。例えば、本明細書中に参考として援用される、PCT特許公開番号WO 01/83722を参照のこと。
【0121】
以下の実施例は、本発明をさらに例示する。これらの実施例は、本発明の単に例示であることが意図され、限定すると構成されるべきではない。
【実施例】
【0122】
(実施例1:p97の免疫細胞化学的局在決定)
本発明者らの第1セットの実験の焦点は、非結合体化p97が培養脳細胞中のリソソームに局在することを示すことであった。これは、p97と、細胞内でのリソソームについてのマーカーとの「共局在(co−localization)」を示すことによって達成される。リソソームの「共局在」を示すことは、p97をリソソーム酵素についての適切なビヒクルと確認することに向けての第1工程である。
【0123】
ヒトニューロン株を用いて、最初の実験を行った。奇形癌由来の分化したヒトNT2ニューロンは、Stratageneから市販される。ヒトニューロン株は、最も適切な系である。なぜなら、研究中のこのp97タンパク質は、ヒト起源のタンパク質であり、そして最終的な標的は、罹患した患者内の神経組織であるからである。
【0124】
細胞内でのp97の免疫細胞化学染色を、L235を局在させるフルオレセイン結合体化二次抗体とともにSynapseからのL235モノクローナルを用いて達成した。抗p97 L235抗体は、培養培地から取り込まれた物質に加えて、内因性物質(p97は、正常なニューロン細胞中で発現される)を検出する。マーカーは、細胞小器官特異的蛍光パターン(これに対して、観察されたp97蛍光パターンが比較され得る)を提供するために必要とされる。この2つのパターンの重複は、p97の特異的細胞内局在を確認する。この目的のために、リソソームプロテアーゼの1種であるカテプシンLに対する抗体を、免疫蛍光実験においてL235と組み合わせて用いた。この抗カテプシンL抗体は、マウスカテプシンLのC末端ペプチドに対して惹起された。そしてこの抗カテプシンL抗体は、ヒトニューロン細胞中のリソソームの強固な染色を示す。テキサスレッド結合体化二次抗体を用いて、抗カテプシンL一次抗体を検出した。ヒトNT2ニューロンをガラスのカバースリップ上で増殖させ、そして0.5mg/ml p97を2時間供給した。次いで、細胞をリンスし、ホルムアルデヒドで固定し、そして透過化処理した。固定した細胞を、一次抗体および二次抗体で共染色(co−stain)し、そしてスライドに載せた。細胞をまた、核についての染料であるDAPIで処理した。スライドを、異なるマーカーを分離する適切なフィルターセットを用いて画像化した。
【0125】
(実験方法)
細胞型:ヒトニューロン細胞株を主に用いて、これらの実験を行った。奇形癌由来の分化したヒトNT2ニューロンは、Stratageneから市販されている。CRL10742およびCRL10442の未成熟皮質ニューロンは、ATCCから入手可能である。CRL10742(名称HCN−2)は、ラスムッセン脳炎を有する患者から開発された。CRL10742は、ニューロンマーカーに染まるが、非ニューロンマーカーには染まらない。この細胞株は、化学的化合物および生物学的化合物の評価のためのスクリーニング方法における使用について、米国特許第5,196,315号によって含まれる。CRL10442(名称HCN−1A)は、片側性巨大脳髄症に罹患した患者由来の脳皮質ニューロンである。ヒトニューロン株は、現在の調査に最も適切な系である。なぜなら、研究中のp97タンパク質はヒト起源のタンパク質であり、そして最終的な標的は、罹患した患者内のニューロン組織であるからである。MPSI患者由来の線維芽細胞を、Coriell Cell Bankから元々得られたこの細胞株のBioMarinストックから入手した。細胞を、10%ウシ胎仔血清(FBS)を含むDMEM中で維持した。
【0126】
抗体:マウス抗p97モノクローナルL235は、親切にも、Synapseより提供された。免疫組織化学に適切な希釈を、バックグラウンドシグナルが見えなくなるまで、固定したDG44細胞に対する抗体の力価測定によって決定した。ウサギ抗カテプシンL(M−19)抗体を、Santa Cruz Biotechから購入した。Alexa Fluor 488またはAlexa Fluor 594と結合体化した、ロバ抗マウス(DAM)二次抗体およびヤギ抗ウサギ(GAR)二次抗体をMolecular Probesから購入し、そして製造業者によって推奨される希釈で用いた。
【0127】
蛍光プローブ:Molecular Probes Alexa Fluorタンパク質標識キットを用いて、p97およびイズロニダーゼを蛍光タグした。蛍光標識したトランスフェリンは、Molecular Probesから市販される。Lysosensorは、Molecular Probesから市販される、酸性細胞小器官についてのマーカーである。
【0128】
機器:固定した細胞の検査を、以下のフィルターセットを備えたLeica DMIRBを用いて実施した:Leica Filter Cube A(UV励起範囲)Excitation Filter BP340−380/Emission LP425。Alexa Fluor 488タグを可視化するために用いたLeica Filter Cube 13(Blue励起範囲)Excitation Filter BP450−490/Emission LP515。Alexa Fluor 594タグを可視化するために用いたLeica Filter Cube N2.1,(緑色の励起範囲)Excitation Filter BP515−560/Emission LP590。
【0129】
タンパク質取り込み条件:6ウェルプレート内のカバースリップ上に、取り込み実験の1日前に、細胞を、1ウェルあたり2×10細胞と5×10細胞との間の密度で播種した。細胞を、無血清DMEM+1mg/ml BSAで3回洗浄した。取り込み用タンパク質を、これらの細胞にDMEM+1mg/ml BSA中60μg/mlにて添加し、そして5% COを有する37℃のインキュベーター中で、取り込み期間の持続時間にわたってインキュベートした。次いで、細胞をPBSで3回洗浄し、そしてCALTAGから入手可能な市販のホルムアルデヒドベースの固定剤で固定した。細胞を、70%エタノール中に浸漬することによって透過化処理した。抗体染色を、CALTAG透過化溶液中で実施した。全ての工程は、PBS中での3回の洗浄によって隔てられ、1回目のPBSは、細胞核を染色する0.1μg/ml DAPIを含んでいた。カバーガラスを、試験用Molecular Probes Antifadeに載せた。
【0130】
(結果)
図1A〜図1Dに示される免疫蛍光画像は、L235および抗カテプシンL抗体を用いた、ヒトNT2ニューロンにおける共局在決定実験の結果を示す。図1Aの「光学顕微鏡」フレームは、DAPIの励起波長でのさらなる照射を用いた位相差下で観察された単一の培養ヒトニューロンを示す。核は、青色蛍光シグナルによって示され、このフレームの中心に位置する。この細胞の細胞質は、核から流れて見られ得る。
【0131】
「カテプシン染色」フレーム(図1B)は、カテプシンL検出のための励起波長の光での照射下で見た同じ細胞である。カテプシンLの位置は、赤色蛍光によって同定される。このフレームにおいて見られる点状の外観のシグナルパターンは、リソソームに特有である。
【0132】
(図1C)の「L235染色」フレームは、p97検出のための励起波長の光でここで照射したこと以外は同じ細胞のフレームである。p97の位置は、緑色蛍光によって同定される。このフレームは、カテプシンL画像において見られ得るのと同じ型の点状リソソーム染色パターンを示す。これらの2つのフレームにおける蛍光パターンの注意深い比較は、これらが一致することを示す。カテプシンLおよびp97は、細胞内に同様に局在する。
【0133】
p97およびカテプシンLの共局在の確認を、図1D(「オーバーレイ」)に示す。これらの2つの蛍光シグナルを合わせることにより、2つの異なる抗体からの赤色光と緑色光との組み合わせである、橙色に着色した点状のパターンを生じる。これらの結果は、ヒト脳皮質組織に由来するATCCニューロン株CRL 10742においても同じである。
【0134】
(実施例2:タグ化されたp97の細胞内蛍光検出)
内因性物質のバックグラウンド内でのエンドサイトーシスを受けた物質の選択的追跡は、第2の検出系の使用を必要とする。この目的のために、細胞に、p97を供給した。このp97は、蛍光マーカーAlexa Fluor 594に結合体化されていた。生細胞からのマーカーの蛍光の観察によって、内因性物質の寄与なく、エンドサイトーシスを受けたp97のみに由来するシグナルの同定が可能である。生細胞についてのリソソームマーカーは、Alexa Fluor 594タグ化p97を用いた共局在決定に必要であった。このようなマーカーは、Lysosensor Greenであり、これは、後期エンドソーム(late−endosomal)区画およびリソソーム区画の酸性環境に曝露されると蛍光を発するようになる、生存細胞によって取り込まれる色素である。上記で概説した実験と同様に、細胞に、0.5mg/ml p97を2時間にわたって供給し、そして洗浄して未結合の物質を除去し、そして生細胞を、異なるマーカーを分解するための適切なフィルターセットを用いて画像化した。
【0135】
(実験方法)
実施例1の「実験方法」を参照のこと。
【0136】
(結果)
エンドサイトーシスを受けたAlexa Fluor 594−p97の局在を、生細胞において決定した。細胞を、適切なフィルターセットを用いて蛍光顕微鏡で直接的に観察した。
【0137】
内因性物質のバックグラウンド内での、エンドサイトーシスを受けた物質の選択的追跡は、第2の検出系の使用を必要とする。この目的のために、細胞に、蛍光マーカーAlexa Fluor 594に結合体化したp97を供給した。生細胞からのマーカーの蛍光の観察によって、内因性物質からの寄与がなく、エンドサイトーシスを受けたp97のみに由来するシグナルの同定が可能である。生細胞についてのリソソームマーカーは、Alexa Fluor 594タグ化p97を用いた共局在決定に必要であった。このようなマーカーは、Lysosensor Greenであり、これは、後期エンドソーム区画およびリソソーム区画の酸性環境に曝露されると蛍光を発するようになる、生存細胞によって取り込まれる色素である。上記で概説した実験と同様に、細胞に、0.5mg/ml p97を2時間にわたって供給し、そして洗浄して未結合の物質を除去し、そして生細胞を、異なるマーカーを分解するための適切なフィルターセットを用いて画像化した。
【0138】
エンドサイトーシスを受けたAlexa Fluor 594−p97の局在を、生細胞において決定した。細胞を、適切なフィルターセットを用いて蛍光顕微鏡で直接観察した(図2A〜図2C)。「Alexa Fluor 594−p97」フレーム(図2A)は、発蛍光団タグ化p97およびLysosensor Greenを供給した生きたhNTニューロン細胞を示す。このフレームにおける細胞を、Alexa Fluor 594の励起波長での照射下で観察する。エンドサイトーシスを受けたp97の位置は、赤色蛍光によって同定される。このパターンは点状であり、核の周囲においてである。「Lysosensor Green」のフレーム(図2B)は、Lysosensor Greenの励起波長での光を用いた照射下で見た同じ細胞である。リソソームおよび後期エンドソームを含め、細胞の細胞区画の位置は、緑色蛍光によって同定される。このパターンはまた、点状であり、そして核の周囲においてである。エンドサイトーシスを受けたp97およびLysosensor色素の共局在を、第3フレーム(「オーバーレイ」)に示す(図2C)。これらの2つの蛍光シグナルを合わせることにより、2つの異なる蛍光マーカーからの赤色光と緑色光との組み合わせである、橙色に着色したパターンを生じる。
【0139】
上記の実験データ(実施例1〜2)は、p97がリソソーム内に局在し、そして培養細胞のリソソームの細胞表面から輸送されることを示す。脳細胞リソソームへのp97媒介送達に必要とされるこの2つの主な輸送工程は、生じるようである。Synapseは、p97分子が、BBBを越えるその「ペイロード」を送達することを示した。本発明者らの結果は、p97が、培養脳細胞中のリソソームへと輸送されることを示した。まとめると、これらの結果は、p97が、組換え酵素を、この疾患の神経学的症状発現を罹患するLSD患者へと送達するに有効な手段であることを示す。
【0140】
(実施例3:MPS−I障害を有する患者の処置)
p97に連結したヒトα−L−イズロニダーゼを含む結合体化剤を含む薬学的組成物を、当業者に周知の方法によって調製する。薬学的組成物を静脈内投与することが好ましい。この流体の最終投薬形態は、結合体化剤、規定生理食塩水、リン酸緩衝液(pH5.8)および1mg/mlのヒトアルブミンを含む。これらを、規定生理食塩水のバッグ中で調製する。
【0141】
(成分組成)
結合体化剤(p97に連結したα−L−イズロニダーゼ) 0.05〜0.5mg/mLまたは12,500〜50,000単位/mL;
塩化ナトリウム溶液 IVバッグ中150mM、50〜250cc総体積;
リン酸ナトリウム緩衝液 10〜50mM(pH5.8);
ヒトアルブミン 1mg/mL。
【0142】
白血球および線維芽細胞において正常の1%未満のα−L−イズロニダーゼレベルを有するMPS−I障害の臨床表現型を表すヒト患者を、この研究に含める。全ての患者は、種々の程度の機能的欠陥を有するグリコサミノグリカンの内臓組織および軟組織蓄積のいくらかの臨床的証拠を表す。効力を、経時的に尿のGAG排出における減少の百分率を測定することによって決定する。MPS−I患者における尿のGAGレベルを、正常な排出値と比較する。未処置のMPS−I患者において、広範囲の尿GAG値が存在する。この結合体化剤を用いた治療後の未分解のGAGの排出における50%を超える減少は、治療に対する個体の応答を測定する有効な手段である。MPS−I患者における治療の前後の白血球イズロニダーゼ活性および頬のイズロニダーゼ活性を測定したデータを収集する。肝臓および脾臓の大きさの臨床評価を実施する。なぜなら、これらは、MPS−I患者における成功裏の骨髄移植処置を評価するための、最も広く受け入れられた手段であるからである(Hoogerbruggeら,Lancet 345:1398(1995))。
【0143】
(実施例4:薬剤をp97分子へと連結する、方法および組成物)
本発明による結合体および好ましい実施形態としては、以下の式の結合体が挙げられる:
【0144】
【化3】

ここで、Aは、活性薬剤であり、そしてBは、標的化または送達のためのp97分子である;そしてXおよびXは、独立してNまたはOであり;Rは、1〜約30原子長または1〜50原子長の、置換されたアルキルもしくは置換されていないアルキルまたは置換されていないヘテロアルキルもしくは置換されたヘテロアルキルであり;そしてnは、1〜30である。nが1より大きい場合、活性薬剤は、同じであっても異なっていてもよい。異なる場合、活性薬剤は、同じ疾患または状態の処置に有用である。「アルキル」は、以下のとおりのアルカンの二価ラジカルを包含する。このようなリンカーは、米国仮出願第60/395762号(07/12/2002出願、そしてその全体が本明細書中に参考として援用される)に教示される。
【0145】
さらなる実施形態では、標識Lは、式Iの化合物に共有結合される。この標識は、活性薬剤部分(p97部分)または活性薬剤をp97へと連結するリンカーにて、結合体に結合され得る:
【0146】
【化4】

いくつかの実施形態では、この標識は好ましくは、結合体のp97部分に結合される。
【0147】
これらの結合体は、放出能力の利点を有する。本発明によるイソシアネート試薬がヒドロキシ基と反応する場合、これは、それが投与される被験体の身体中で、内因性酵素(例えば、プロテアーゼ)によって加水分解され得るカルバメート結合を形成する。本発明によるこのイソシアネート試薬は、アミノ基と反応して、イソウレア結合を生成する。イソウレア結合もまた、それが投与される被験体の身体中で、内因性酵素によって加水分解され得る。p97部分への結合によって、この薬剤は、身体内の標的リソソーム区画または部位へと送達され、このプロテアーゼまたは他の内因性酵素は、カルバメート結合またはイソウレア結合を加水分解して、標的部位または区画において、遊離薬物を遊離させる。
【0148】
例示的な結合体は、PEG化ペプチドおよびタンパク質の当該分野で周知のように、官能基を介してPEG部分へと共有結合されたp97を含み、このPEG部分は次いで、カルバメート結合を介して活性薬剤へと連結される。用語活性薬剤としては、LSDにおいて欠損しているタンパク質または酵素が挙げられるがこれらに限定されない。別の実施形態では、この結合体は、カルバメート基を介してPEG部分へと共有結合され、このPEG部分は次いで、カルバメート結合を介して活性薬剤へと連結される。別の実施形態では、この結合体は、カルバメート基を介してPEG部分へと共有結合され、このPEG部分は次いで、カルバメート結合を介してアルキル部分またはホモアルキル部分へと結合され、そしてこのアルキル部分またはホモアルキル部分は次いで、カルバメート結合を介して活性薬剤へと結合される。
【0149】
これらの結合体はまた、本発明の方法に従って高い効率で合成されるという利点を有する。イソシアネート基とヒドロキシおよびアミノとの間の本発明の反応は、非常に効率的である;そしてその収率は、非常に高い(通常、90%を超える)。さらに、イソシアネート基とヒドロキシ基またはアミノ基との反応によって形成された新たな結合は、この薬物の水溶性を増大させる。この特性は、実用上重要な特性であり得る。
【0150】
(実施例5:リソソーム蓄積症を有する患者の処置)
リソソーム蓄積症において欠損しており、p97に連結された、ヒト酵素またはタンパク質を含む結合体化剤を含む薬学的組成物を、当業者に周知の方法によって調製する。薬学的組成物を静脈内投与することが好ましい。あるいは、この組成物は、罹患した器官に局所投与され得る。この液体の最終投薬形態は、この結合体化剤、規定生理食塩水、リン酸緩衝液(pH5.8)および1mg/mlのヒトアルブミンを含む。これらを、規定生理食塩水のバッグにおいて調製する。
【0151】
(成分組成)
結合体化剤 0.02〜2.0mg/mL
(p97に連結されたリソソーム蓄積症タンパク質または酵素);
塩化ナトリウム溶液 IVバッグ中150mM、50〜250ccの総体積;
リン酸ナトリウム緩衝液 10〜50mM(pH5.8);
ヒトアルブミン 1mg/mL 。
【0152】
リソソーム蓄積症またはリソソーム蓄積障害の臨床的表現型を表すヒト患者は、この特定の疾患または障害において欠損しているタンパク質または酵素を有する結合体を用いて処置されるべきである。全ての患者は、特定のリソソーム蓄積症または特定のリソソーム蓄積障害に関連した、種々の程度の機能的欠陥または悪化した健康状態によって示されるような、リソソームにおける過剰または有害な内臓組織蓄積物質および軟組織蓄積物質のいくらかの臨床的証拠を表す。好ましくは、酵素レベルを患者においてモニタリングして、それらの組織にリソソーム蓄積症タンパク質の活性がないことまたは低下していることを確認する。効力は、経時的に、結合体化した酵素の基質の尿排出の低下百分率を測定することによって決定される。患者における尿基質レベルを、未処置の患者または処置前の同じ患者における、正常な排出値および/または排出レベルと比較する。効力はまた、リソソーム疾患に関連した任意の病状の低減した徴候および症状に従って決定され得る。効力は、基質または蓄積物質が減少した程度を決定するための、細胞および/またはリソソームの組織生検および検査によって決定され得る。効力は、客観的または主観的であり得る機能評価(例えば、疼痛もしくは機能困難性の低減、筋肉強度もしくはスタミナの増加、または心拍出量の増加、運動耐久性、ボディマスもしくは外観の変化)によって決定され得る。この結合体化剤を用いた治療後の分解されていない基質の排出における、25%または50%より高い低下は、治療に対する個体の応答を測定する有効な手段である。処置の前、後および間における組織中での対象の結合体化酵素の活性または存在をしたデータを収集し得る。器官サイズの臨床評価を、治療効力を評価する手段として実施し得る(例えば、Hoogerbruggeら,Lancet 345:1398(1995)を参照のこと)。
【0153】
本発明を、現在好ましい実施形態を参照して記載してきたが、本発明の趣旨から逸脱することなく、種々の改変が行われ得ることが理解されるべきである。
【0154】
全ての刊行物、特許、特許出願およびウェブサイトは、各々の個々の特許、特許出願またはウェブサイトがその全体が参考として援用されると具体的かつ個々に示されたのと同じ程度まで、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】図1A〜図1Dは、抗カテプシンLおよびp97に対するL235モノクローナルを用いて染色したヒトhNTニューロン(ヒト奇形癌由来)を示す(詳細については、実施例1を参照のこと)。
【図2】図2A〜図2Cは、AlexaFluor 594−p97およびLysosensor greenを提供した生ニューロンを示す(詳細については、実施例2を参照のこと)。
【図3】記載なし。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソソーム蓄積症を有する被験体を処置するための方法であって、該方法は、薬学的組成物を該被験体に投与する工程を包含し、ここで、該組成物は、欠損すると該疾患を引き起こすタンパク質に共有結合されたp97分子を含む、方法。
【請求項2】
前記被験体が、ヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記投与する工程が、静脈内である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記p97分子が、ヒトp97である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記p97分子が、可溶性p97である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記タンパク質が、α−L−イズロニダーゼである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記p97分子が、5〜20原子長のリンカーによって前記タンパク質に共有結合されている、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記リンカーが、ポリエチレングリコールである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
結合体が、p97と前記タンパク質との融合タンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記p97分子が、ヒトp97の対応するドメインの配列と90%同一である配列を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が、治療有効量の結合体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記疾患が、アスパルチルグルコサミン尿症、コレステロールエステル貯蔵病、ウォルマン病、シスチン蓄積症、ダノン病、ファブリー病、ファーバー脂肪肉芽腫症、ファーバー病、フコース蓄積症、ガラクトシアリドーシスI/II型、ゴーシェ病I/II/III型、ゴーシェ病、球様細胞白質萎縮、クラッベ病、グリコーゲン蓄積病II、ポーンプ病、GM1−ガングリオシドーシスI/II/III型、GM2−ガングリオシドーシスI型、テイ−サックス病、GM2−ガングリオシドーシスII型、ザントホフ病、GM2−ガングリオシドーシス、α−マンノシドーシスI/II型、β−マンノシドーシス、異染性白質萎縮、ムコリピドーシスI型、シアリドーシスI/II型、ムコリピドーシスII/III型I細胞病、ムコリピドーシスIIIC型偽性ハーラーポリジストロフィー、ムコ多糖沈着症I型、ムコ多糖沈着症II型、ハンター症候群、ムコ多糖沈着症IIIA型、サンフィリポ症候群、ムコ多糖沈着症IIIB型、ムコ多糖沈着症IIIC型、ムコ多糖沈着症IIID型、ムコ多糖沈着症IVA型、モルキオ症候群、ムコ多糖沈着症IVB型モルキオ症候群、ムコ多糖沈着症VI型、ムコ多糖沈着症VII型、スライ症候群、ムコ多糖沈着症IX型、多発性スルファターゼ欠損症、神経セロイドリポフスチノーシス、CLN1バッテン病、ニーマン−ピック病A/B型、ニーマン−ピック病、ニーマン−ピック病C1型、ニーマン−ピック病C2型、ピクノディソストーシス、シンドラー病I/II型、シンドラー病、およびシアル酸蓄積病からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記タンパク質が、アスパルチルグルコサミニダーゼ、酸性リパーゼ、システイントランスポーター、Lamp−2、α−ガラクトシダーゼA、酸性セラミダーゼ、α−L−フコシダーゼ、β−ヘキソサミニダーゼA、GM2−アクチベーター欠損症、α−D−マンノシダーゼ、β−D−マンノシダーゼ、アリールスルファターゼA、サポシンB、ノイラミニダーゼ、α−N−アセチルグルコサミニダーゼホスホトランスフェラーゼ、ホスホトランスフェラーゼγ−サブユニット、L−イズロニダーゼ、イズロネート−2−スルファターゼ、ヘパラン−N−スルファターゼ、α−N−アセチルグルコサミニダーゼ、アセチルCoA:N−アセチルトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコサミン6−スルファターゼ、ガラクトース6−スルファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、N−アセチルガラクトサミン4−スルファターゼ、ヒアルロノグルコサミニダーゼ、複数のスルファターゼ、パルミトイルタンパク質チオエステラーゼ、トリペプチジルペプチダーゼI、酸性スフィンゴミエリナーゼ、コレステロール輸送、カテプシンK、α−ガラクトシダーゼB、およびシアル酸トランスポーターからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
化合物であって、欠損するとリソソーム蓄積症を引き起こすタンパク質に共有結合されたp97分子を含む、化合物。
【請求項15】
前記タンパク質が、α−L−イズロニダーゼである、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
前記p97分子が、可溶性p97である、請求項14に記載の化合物。
【請求項17】
前記化合物が、前記p97分子と前記タンパク質との融合タンパク質である、請求項14に記載の化合物。
【請求項18】
前記p97分子が、4〜20原子長である連結基によって前記タンパク質に共有結合している、請求項14に記載の化合物。
【請求項19】
前記結合体が、血液脳関門を通過し得、かつ、中枢神経系内の細胞のリソソームに侵入し得る、請求項14に記載の化合物。
【請求項20】
前記タンパク質が、アスパルチルグルコサミニダーゼ、酸性リパーゼ、システイントランスポーター、Lamp−2、α−ガラクトシダーゼA、酸性セラミダーゼ、α−L−フコシダーゼ、β−ヘキソサミニダーゼA、GM2−アクチベーター欠損症、α−D−マンノシダーゼ、β−D−マンノシダーゼ、アリールスルファターゼA、サポシンB、ノイラミニダーゼ、α−N−アセチルグルコサミニダーゼホスホトランスフェラーゼ、ホスホトランスフェラーゼγ−サブユニット、L−イズロニダーゼ、イズロネート−2−スルファターゼ、ヘパラン−N−スルファターゼ、α−N−アセチルグルコサミニダーゼ、アセチルCoA:N−アセチルトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコサミン6−スルファターゼ、ガラクトース6−スルファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、N−アセチルガラクトサミン4−スルファターゼ、ヒアルロノグルコサミニダーゼ、複数のスルファターゼ、パルミトイルタンパク質チオエステラーゼ、トリペプチジルペプチダーゼI、酸性スフィンゴミエリナーゼ、コレステロール輸送、カテプシンK、α−ガラクトシダーゼB、およびシアル酸トランスポーターからなる群より選択される、請求項14に記載の化合物。
【請求項21】
化合物をリソソーム蓄積症の処置における治療活性についてスクリーニングする方法であって、該方法は、以下:
リソソームを有する細胞を、該化合物と接触させる工程であって、ここで、該化合物は、リソソーム蓄積症において欠損したタンパク質に共有結合したp97を含む、工程;および
該リソソームへの該化合物の送達をモニタリングする工程
を包含する、方法。
【請求項22】
前記化合物が、標識されており、そして前記モニタリングする工程が、該標識を検出する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記細胞が、ヒト細胞である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記細胞が、前記タンパク質を欠損している、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記モニタリングする工程が、リソソーム蓄積物質に対する前記化合物の影響を決定することによる、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記細胞が、血液脳関門によって保護されていない、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
治療有効量の化合物および薬学的に受容可能な賦形剤を含む薬学的組成物であって、該化合物は、欠損するとリソソーム蓄積症を引き起こすタンパク質に共有結合されたp97分子を含む、薬学的組成物。
【請求項28】
前記組成物が、単位投薬形式にある、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記タンパク質が、アスパルチルグルコサミニダーゼ、酸性リパーゼ、システイントランスポーター、Lamp−2、α−ガラクトシダーゼA、酸性セラミダーゼ、α−L−フコシダーゼ、β−ヘキソサミニダーゼA、GM2−アクチベーター欠損症、α−D−マンノシダーゼ、β−D−マンノシダーゼ、アリールスルファターゼA、サポシンB、ノイラミニダーゼ、α−N−アセチルグルコサミニダーゼホスホトランスフェラーゼ、ホスホトランスフェラーゼγ−サブユニット、L−イズロニダーゼ、イズロネート−2−スルファターゼ、ヘパラン−N−スルファターゼ、α−N−アセチルグルコサミニダーゼ、アセチルCoA:N−アセチルトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコサミン6−スルファターゼ、ガラクトース6−スルファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、N−アセチルガラクトサミン4−スルファターゼ、ヒアルロノグルコサミニダーゼ、複数のスルファターゼ、パルミトイルタンパク質チオエステラーゼ、トリペプチジルペプチダーゼI、酸性スフィンゴミエリナーゼ、コレステロール輸送、カテプシンK、α−ガラクトシダーゼB、およびシアル酸トランスポーターからなる群より選択される、請求項27に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−506317(P2006−506317A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−557537(P2003−557537)
【出願日】平成15年1月10日(2003.1.10)
【国際出願番号】PCT/US2003/000894
【国際公開番号】WO2003/057179
【国際公開日】平成15年7月17日(2003.7.17)
【出願人】(502170153)バイオマリン ファーマシューティカル インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】