説明

治療的介入のためのY2/Y4選択性レセプターアゴニスト

(a)(i)-X-Thr-Arg-X3-Arg-Tyr-C(=O)NR1R2(式中、R1及びR1は独立して水素又はC1-C6アルキルであり、XはVal、Ile、Leu又はAlaであり、X3はGln又はAsnである)、又はThrがHis又はAsnにより置換され、及び/又はTyrがTrp又はPheにより置換され、及び/又はArgがLysにより置換されたその保存的置換変形体により表されるC末端Yレセプター認識アミノ酸配列、及び(ii)H2N-X1-Pro-X2-(Glu又はAsp)-(式中、X1は存在しないか又はアミノ酸残基であり、X2はLeu又はSerである)、又はそのLeu又はSerの保存的置換体により表されるN末端Yレセプター認識アミノ酸配列を有するPP折り畳みペプチド又はPP折り畳みペプチド模擬体であるか、又は(b)上記(i)に規定したC末端Yレセプター認識アミノ酸配列、及び任意に、上記(ii)に規定したYレセプター認識アミノ酸配列で始まるN末端配列を含んでなり、前記C末端Yレセプター認識配列は、前記ヘキサペプチド配列のN末端に隣接する少なくとも1つのαヘリックスターンを含んでなる両親媒性アミノ酸配列ドメインに融合し、前記ターンは共有結合性分子内連結によりヘリックス形状に拘束されている、Y1レセプターよりY2レセプター及びY4レセプターについて選択性であるYレセプターアゴニストは、例えば肥満の治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、Y1レセプターよりY2レセプター及びY4レセプターの選択性アゴニストとして作用するペプチド又はペプチド性化合物に関し、また、Y2レセプター及び/又はY4レセプターの活性化に応答性の症状の治療、例えば肥満及び過体重、並びにこれらが一因とされる症状の治療のため、及びGI管分泌を制御する/減少させるための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
PP折り畳みファミリーのペプチド − NPY(ニューロペプチドY)(ヒト配列−配列番号:1)、PYY(ペプチドYY)(ヒト配列−配列番号:2)、及びPP(膵ポリペプチド)(ヒト配列−配列番号:3)は、天然に分泌される、相同な36アミノ酸の、C末端がアミド化されたペプチドであり、これらは共通の三次元構造−PP折り畳み(PP-fold)(これは驚くべきことに希水溶液中でさえも安定であり、当該ペプチドのレセプター認識に重要である)−により特徴付けられる。
【0003】
初期に、トリのPPのX線構造は、0.98Åまでの小さい分解能のX線結晶学的分析及び独特な構造(その名がこのペプチドから命名された)により非常に詳細に特徴付けられた(Blundellら、1981 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78: 4175-79;Gloverら、1984, Eur.J.Biochem. 142: 379-85)。続いて、このファミリーの他のメンバーのPP折り畳み構造が、特にNMR分光光学的分析により分析された。X線分析及びNMR分析は両方とも、明らかに、非常に濃縮された条件又は固相条件で実施される;しかし、詳細な円偏光二色性分析は、NPY及びPPが水溶液中でさえPP折り畳み構造をとることを示唆している。このことは、このような小さなペプチドに関しては通常ではない(Fuhlendorffら、1990 J.Biol.Chem. 265: 11706-12)。重要なことに、これらペプチド並びにそれらのフラグメント及びアナログのタンパク質分解的安定性の分析は、例えば完全長PP1-36が希水溶液でさえ折り畳まれた形状(この形状が、僅かな置換のためにPP折り畳み構造をとることができないアナログを容易且つ迅速に分解する或る種の酵素による分解から保護する)に保持されることを強く示している(Schwartzら、1990 Annals NY Acad.Sci. 611: 35-47)。
【0004】
NPY、PYY、及びPPに共通するPP折り畳み構造は、1)N末端ポリプロリン様ヘリックス(Pro2、Pro5、及びPro8を有する残基1〜8に相当)、続いて2)タイプI βターン領域(残基9〜12に相当)、続いて3)両螺旋軸間に約152度の角度を有してポリプロリンヘリックスに対し逆平行に位置する両親媒性αヘリックス(残基13〜30)、及び4)C末端ヘキサペプチド(残基31〜36)からなる。折り畳まれた構造は、両親媒性αヘリックスの側鎖と、これらと互いに密接に嵌合する両親媒性αヘリックスの側鎖との間の疎水性相互作用により安定化されている(Schwartzら、1990)。レセプター認識C末端ヘキサペプチド中の鍵となる残基の他に、PP折り畳みペプチドのファミリー間で保存されているのは、PP折り畳み構造を安定化するコア疎水性残基である。図1AはNPY配列を示し、NPY、PYY、及びPP間で保存されている残基が、黒の背景に白抜き文字で表されている。図1Aはまた、上記のPP折り畳み構造の要素を説明する。C末端ヘキサペプチド(これはレセプター認識に重要である)は構造化されていないと考えられているが、PP折り畳みは安定な足場を提供し、この足場がC末端ヘキサペプチドをレセプターに提示する(これは種々の程度で当該ペプチドのN末端の部分にも依存し、又は依存しないこともある)(図1Bに図示)。NMR分光光学分析により、例えばNPYの極C末端部分及びN末端部分はかなり可動性であることが証明されている。このことは、PP折り畳みが、常時、その自由端から「開かれる(unzipped)」の危険があることを意味している。
【0005】
NPYは、ヒトにおいて多くの異なるレセプターサブタイプ(Y1、Y2、Y4、及びY5)を通じて作用する中枢神経系及び末梢神経系の両方の種々の部分で複数の作用を有する非常に広範に散在するニューロペプチドである。主要なNPYレセプターは、概してNPYニューロンの「作用」を伝えるシナプス後レセプターであるY1レセプター、及び概してシナプス前の抑制性レセプターであるY2レセプターである。これは、NPYニューロン−これはまたメラノコルチンレセプターアンタゴニスト/逆アゴニストAgRP(アグーチ関連ペプチド)も発現する−が弓状核の刺激性分枝における一次「感覚」ニューロンとして作用する視床下部でも事実である。したがって、食欲及びエネルギー消費を制御するこの「センサー核(sensor nucleus)」では、NPY/AgRPニューロンが、抑制性POMC/CARTニューロンと共に、身体のホルモン及び栄養の状態を監視している。なぜなら、これらのニューロンは、レプチン及びインスリンのような長期レギュレーター、並びにグレリン及びPYYのような短期レギュレーターの両方の標的であるからである(下記参照)。刺激性NPY/AgRPニューロンは、例えば室傍核−これもまた視床下部である−に投射する。そこでは、シナプス後の標的レセプターはY1レセプター及びY5レセプターであると考えられている。NPYの脳室内(ICV)注射に際してげっ歯類は文字通り破裂するまで食べるので、NPYは食物摂取の増大に関して公知の最も強力な化合物である。NPY/AgRPニューロンからのAgRPは、主としてメラノコルチンレセプタータイプ4(MC-4)に対してアンタゴニストとして作用し、このレセプターに対するPOMC由来ペプチド−主にaMSH−の作用を遮断する。MC4レセプターシグナルは食物摂取のインヒビターとして作用するので、AgRPの作用は、−ちょうどNPY作用のように−食物摂取のための刺激性シグナル(すなわち、抑制の抑制)である。NPY/AGRPニューロン上に、抑制性−シナプス前−Y2レセプターが見出されている。このレセプターは、局所的に放出されるNPY及び腸ホルモンPYY−別のPP折り畳みペプチド−の両方の標的である。
【0006】
PYYは、食事の間に−食事のカロリー含量に比例して−遠位小腸及び結腸の腸内分泌細胞から放出され、末梢ではGI管機能に対して作用し、中枢では満腹シグナルとして作用する。末梢では、PYYは、例えば上部GI管の自動運動性、胃酸、及び膵外分泌性分泌に対してインヒビター−「回腸遮断(ileal break)」−として機能すると考えられる。中枢では、PYYは、主として、弓状核(血液からアクセスされると考えられている)のNPY/AgRPニューロン上のシナプス前抑制性Y2レセプターに対して作用すると考えられる(Batterhamら、2002 Nature 418: 650-4)。このペプチドはPYY1-36として放出されるが、或る割合−約50%−は、ジペプチジルペプチダーゼ-IV(3つの全てのPP折り畳みペプチド−PP、PYY、及びNPY−と同様にPro又はAlaが2位に見出されれば、ペプチドのN末端からジペプチドを取り除く酵素)による分解産物であるPYY3-36として循環する(Eberleinら、1989 Peptides 10: 797-803)。したがって、循環中のPYYは、PYY1-36(これはY1レセプター及びY2レセプターの両方に対して作用し、Y4及びY5にも種々の親和性で作用する)とPYY3-36(これは親和性Y2レセプターに関する親和性より低い親和性をY1レセプター、Y4レセプター及びY5レセプターに関して有する)の混合物である。
【0007】
PPは、特に食物摂取により誘発される迷走神経のコリン作動性刺激によってほぼ独占的に支配される膵島の内分泌細胞から放出されるホルモンである(Schwartz 1983 Gastroenterology 85:1411-25)。PPは胃腸管に対して種々の効果を有するが、これらは一般には単離した細胞及び器官では観察されず、無傷の迷走神経供給に依存しているようである(Schwartz 1983 Gastroenterology 85:1411-25)。このことと一致して、PPレセプター(Y4レセプターと呼ばれる)は主に脳幹の最後野に位置し、迷走運動ニューロン−この活性化はPPの末梢効果を生じる−及び孤束核(NTS)−この活性化は満腹ホルモンとしてのPPの効果を生じる−で強力に発現する(Whitecombら、1990 Am.J.Physiol. 259: G687-91;Larsen & Kristensen 1997 Brain Res.Mol.Brain Res 48: 1-6)。血液脳関門は末梢からの種々のホルモンが感知されるこの領域で「漏れやすい(leaky)」ので、血液からのPPは脳のこの領域に自由に出入りできることに留意すべきである。最近、食物摂取に対するPPの効果の一部は、弓状核のニューロン−特にPOMC/CARTニューロン−に対する作用を通じて媒介されていると主張されている(Batterhamら、2004 Abstract 3.3 International NPY Symposium in Coimbra, Portugal)。PPはY4レセプターを通じて作用し、このレセプターに対してナノモルの親和性を有するPYY及びNPYとは対照的にPPはナノモル未満の親和性を有する(Michelら、1998 Pharmacol. Rev. 50: 143-150)。PPはまた、Y5レセプター対して相当の親和性を有するが、このことは、このレセプターが特に発現しているCNSの細胞へのアクセスを欠いているため、及びPPに関する比較的低い親和性のために、循環PPに関しては生理学的に重要である可能性は低い。
【0008】
PP折り畳みペプチドレセプター
ヒトには、4つの十分に確立されたタイプのPP折り畳みペプチドレセプター:Y1、Y2、Y4、及びY5が存在し、これらは全て類似する親和性でNPY1-36及びPYY1-36を認識する。かつては、PYYよりNPYを好むとされたY3レセプタータイプが示唆されたが、今日ではこれは真のレセプターサブタイプとして受け入れられていない(Michelら、1998 Pharmacol. Rev. 50: 143-150)。Y6レセプターサブタイプがクローニングされており、これは、ヒトで、TM-VII並びにレセプターテイルを欠く切断形態で発現され、その結果少なくともそのままでは機能的レセプター分子を形成しないようである。
【0009】
Y1レセプター − 親和性研究により、Y1はNPY及びPYYと等しく親密に結合し、基本的にはPPに結合しないことが示唆されている。Y1に対する親和性は、PP折り畳み分子(NPY/PYY)の両末端配列の同一性−例えば残基Tyr1及びPro2が必須である−に依存し、そしてこれはペプチド端が全く正しい様式で提示されていることに依存する。C末端部(その残基の幾つかのものの側鎖が必須である)では、Y1レセプターは、−Y5レセプター及びY4レセプターと同様であるが、Y2レセプターとは異なり−34位(通常はGln)での或る種の置換(例えばPro)に寛容である(Fuhlendorffら、1990 J.Biol.Chem. 265: 11706-12;Schwartzら、1990 Annals NY Acad.Sci. 61: 35-47)。Y1レセプター及びY2レセプターの要件に関する構造-機能研究も幾つか報告されている(Beck-Sickingerら、1994 Eur.J.Biochem. 225: 947-58;Beck-Sickinger及びJung 1995 Biopolymers 37: 123-42;Sollら、2001 Eur.J.Biochem. 268: 2828-37)。
【0010】
Y2レセプター − 親和性研究により、Y2はNPY及びPYYと等しく親密に結合し、基本的にはPPに結合しないことが示唆されている。このレセプターは、特にPP折り畳みペプチド(NPY/PYY)のC末端部を必要とする。したがって、長いC末端フラグメント−例えばNPY13-36(αヘリックス全体+C末端ヘキサペプチド)程度までの−は、比較的高い親和性で、すなわち全長ペプチドの親和性の1/10〜10倍(within ten-fold)で認識される(Sheikhら、1989 FEBS Lett. 245: 209-14;Sheikhら、1989 J.Biol.Chem. 264: 6648-54)。したがって、種々のN末端欠失(これはY1レセプターへの結合を消失する)は、依然としてY2レセプターへの或る程度の結合を保存する。しかし、C末端フラグメントの親和性は、比較的長いフラグメントに関してさえ、NPY/PYYと比較して約1/10倍(10 folds)に低下する。NPY及びPYYの34位のGln残基は、Y2レセプターのリガンド認識にとって高度に重要である(Schwartzら、1990 Annals NY Acad.Sci. 611: 35-47)。
【0011】
Y4レセプター − 親和性研究により、Y4はPPに血漿中で見出される濃度に相当するナノモル未満の親和性で結合する一方、NPY及びPYYはよりずっと低い親和性で認識されることが示唆されている。このような研究により、Y4レセプターはPP折り畳みペプチドのC末端部に高度に依存すること、及び比較的短いN末端欠失はこのリガンドの親和性を損なうことが示唆されている。Y4レセプターに関する構造活性研究が幾つか報告されている(Gehlertら、1996 Mol.Pharmacol. 50: 112-18;Walkerら、1997 Peptides 18: 609-12)。
【0012】
Y5レセプター − 親和性研究により、Y5はNPY及びPYYに等しく親密に結合し、PPにもより低い(が、このホルモンの通常の循環レベルを下回る)親和性で結合する。PYY3-36もまた、Y5レセプターによって十分に認識されるが、このレセプターは、このペプチドが末梢に投与されたときに容易に該レセプターにアクセスできないCNSにおいてかなりの程度で発現される。
【0013】
PP折り畳みペプチド及びこれらのアナログは、動物モデル及びヒトでこれらペプチドの或る種のものの証明された効果、並びに、肥満のヒトがPYY及びPPの低い基礎レベル及びこれらペプチドのより低い食事応答を有している事実に基づいて、肥満及び付随する疾患(例えばプラーダー‐ヴィリ症候群を含む)の治療における使用について示唆されている(Holst JJら、1983 Int.J.Obes. 7: 529-38;Batterhamら、1990 Nature)。プラーダー‐ヴィリ症候群の患者におけるPPの注入は、早くから、食物摂取を減少させることが示され(Berntsonら、1993 Peptides 14: 497-503)、この効果は健常なヒト対象におけるPPの注入によって確認されている(Batterhamら、2003, Clin.Endocrinol.Metab. 88: 3989-92)。PP折り畳みペプチドはまた、例えば治療的な脈管形成(Zukowskaら、2003 Trends Cardiovasc Med. 13:86-92)及び炎症性腸疾患(例えばWO03/105763を参照)における使用について示唆されている。
【0014】
しかし、天然型PP折り畳みペプチドは、バイオ医薬品としての使用に最適ではない。例えば、完全長ペプチドPYY1-36及びNPY1-36は、全てのYレセプタータイプと広く反応しすぎ、したがって心血管性の副作用及び例えば嘔吐を引き起こす。更に、天然ペプチドは、通常、比較的短時間、ニューロペプチド又はホルモンとして作用するように作られているので、タンパク質安定性について最適化されていない。天然に存在する、よりY2選択性のペプチドPYY3-36は、例えば、そのPP折り畳み構造がポリプロリンヘリックスの重要なPro2(これは、完全長ペプチド中では、当該分子の両親媒性ヘリックス領域のTyr27と相互作用する)の除去に起因して損なわれているという欠点を有している。
【0015】
したがって、Yレセプター調整に応答性の症状の治療のためには、標的として意図される選択したYレセプターに特異的であり、且つレセプター結合に重要なPP折り畳み構造の要素が安定的に保存されるYレセプターPP折り畳みペプチド又はPP折り畳みペプチド模擬体を使用することが望ましい。特に、Y1レセプターよりY2レセプター及びY4レセプターに対して選択性である薬剤を使用することが極めて望ましい。幾つかの症状、例えば肥満及び分泌性下痢では、Y2レセプター及びY4レセプターの両方に対するアゴニストの使用が有益である。したがって、これら特性−Y2作働作用(agonism)及びY4作働作用−の両方を有する単一化合物は極めて有益である。しかし、臨床設定では、このような化合物はY1レセプターに対して有意なアゴニストでないこともまた重要である。なぜなら、Y1レセプターの刺激は、望まない副作用、例えば心血管副作用(例えば、血圧の上昇)、及び腎副作用(例えばナトリウム排泄増加)を導くからである。Y1レセプターではなくY2レセプターに対する選択性アゴニストである天然化合物、例えばPYY3-36が存在し、これは例えば肥満の治療のために示唆されている。また、Y1レセプターではなくY4レセプターに対する選択性アゴニストである化合物、例えば天然ペプチドPPが存在し、これもまた肥満の治療のために示唆されている。また、例えばY1レセプター及びY2レセプターに対しての組合せアゴニストである化合物、例えば天然ペプチドPYY及びNPYが存在する。しかし、これまでに、Y2レセプター及びY4レセプターの両方に対して効力が高いと報告された公知の化合物はない。更に、治療的介入のためにY1レセプターに対して選択性を有するY2及びY4組合せアゴニストを使用することはこれまでに示唆されていない。
【0016】
本明細書で使用する幾つかの共通する用語
親和性:特定のレセプターに対するペプチドの親和性は、例えばIC50値又はKi若しくはKd値として与えられる。親和性は、具体的ではあるが限定的でない例において、アッセイ、例えば競合結合アッセイで決定される。IC50値は、該当する所定のレセプターに関しての、Kdより遥かに少ない量で使用する放射性リガンドと50%置換するペプチドの濃度に相当する。
【0017】
食欲:食物に対する自然な欲望又は切望。食欲の増加は、一般に、摂食行動の増加に至る。
食欲抑制剤:食物に対する欲望を減少させる化合物。
【0018】
結合:2つの分子が相互作用するような当該2つの分子間の特異的相互作用。レセプターへの結合は特異的且つ選択的であることができ、その結果、或る分子は別の分子と比較して優先的に結合される。特異的結合は解離定数(Kd)によって同定されてもよい。この値は、試験される化合物の選択性に依存する。例えば、10nM未満のKdを有する化合物は、一般に、優れた薬物候補であると考えられる。しかし、より低い親和性を有するが特定のレセプターに対して選択性である化合物もまた、良好な薬物候補であり得る。
【0019】
ボディ・マス・インデックス(BMI):ボディ・マスを測定するための数式であり、時にケトレー指数(Quetelet's Index)とも呼ばれる。BMIは体重(kg)を身長2(メートル)で除して算出する。男性及び女性の両方について「正常」と認められている現行の標準は、約20kg/m2のBMIである。1つの実施形態では、25kg/m2より大きなBMIは、肥満対象を同定するために使用することができる。グレードIの肥満は25kg/m2のBMIに相当する。グレードIIの肥満は30〜40kg/m2のBMIに相当し;グレードIIIの肥満は40kg/m2より大きなBMIに相当する(Jequier 1987 Ain. J Clin. Nutr. 45:1035-47)。理想的な体重は、身長、体格、骨構造、及び性別に基づいて種間及び個体間で変わる。
【0020】
カロリー摂取又は熱量摂取:個体により消費されるカロリー数(エネルギー)。本発明に関しては、この用語は用語「エネルギー摂取」と同一である。
【0021】
美容処置:この用語は、医学目的でないが、例えば対象の外観に関して、対象の満足な状態(well-being)を改善するための処置を指称すると意図される。この用語には、必ずしも過体重でも肥満でもない体重を減少させることを望む対象の処置が含まれる。
【0022】
食物摂取:個体によって消費される食物の量。食物摂取は体積又は重量で測定することができる。この意味には、i)個体により消費された食物の総量としての食物摂取、及びii)個体のタンパク質、脂肪、炭水化物、コレステロール、ビタミン、ミネラル、又は他の任意の食物成分の量である食物摂取が含まれる。したがって、本発明に関して使用される用語「食物摂取」は、用語「エネルギー摂取」と同様である。
【0023】
正常な日々の食餌:所定の種の個体についての平均的な食物摂取。正常な日々の食餌は、カロリー摂取、タンパク質摂取、炭水化物摂取、及び/又は脂肪摂取に関して表すことができる。ヒトにおける正常な日々の食餌は、一般に、以下を含んでなる:約2,000、約2,400、又は約2,800カロリー〜それより相当高いカロリー。加えて、ヒトにおける正常な日々の食餌は、一般に、約12g〜約45gのタンパク質、約120g〜約610gの炭水化物、及び約11g〜約90gの脂肪を含む。低カロリー食餌は、ヒト個体の正常なカロリー摂取の約85%以下、好ましくは約70%以下である。動物では、カロリー及び栄養の要件は、動物の種及びサイズに依存して変わる。例えば、ネコでは、1kg当たりの総カロリー摂取並びにタンパク質、炭水化物及び脂肪の構成比は、ネコの年齢及び繁殖状態で変わる。
【0024】
肥満:過剰の体脂肪がヒトを健康上の危険に曝しているかもしれない症状(Barlow及びDietz, Pediatrics 102:E29, 1998;National Institutes of Health, National Heart, Lung, and Blood Institute (NHLBI), Obes. Res. 6 (suppl. 2):51 S209S, 1998を参照)。過剰の体脂肪は、エネルギー摂取及びエネルギー消費の不均衡の結果である。1つの実施形態では、ボディ・マス・インデックス(BMI)が肥満を評価するために使用される。1つの実施形態では、約22kg/m2(すなわち正常値を約10%上回る)から約30kg/m2まで、特に約25.0kg/m2から30kg/m2までのBMIが過体重とみなされる一方、30kg/m2以上のBMIは肥満である。
【0025】
過体重:理想的な体重より体重が重い個体。過体重の個体は肥満であり得るが、必ずしも肥満ではない。1つの実施形態では、過体重の個体は、体重を減少させたいと願っている任意の個体である。別の実施形態では、過体重の個体は、約22kg/m2(すなわち正常値を約10%上回る)から約30kg/m2までのBMIを有する個体である。約22kg/m2(すなわち正常値を約10%上回る)から約30kg/m2まで、特に約25.0kg/m2から30kg/m2までのBMIが過体重とみなされる。正常値よりほんの僅かに高いBMI(例えば約22〜約25kg/m2)を有する対象は、体重の減少を願うことが非常に頻繁であるが、これは美容的理由のみからであり得ることに留意すべきである。
【0026】
効力:化合物のインビトロ効力は、該当する所定のレセプターに関してのシグナル伝達アッセイで決定されるEC50値に関して、すなわち達成可能な最大限の効果の50%を導く濃度に関して定義される。
【0027】
対象:対象は、ヒト対象及び獣医学上の哺乳動物対象の両方を含む任意の対象であり得る。したがって、対象はヒトであり得、又は非ヒト霊長類、家畜動物(例えばブタ、ウシ、ヒツジ及び家禽)、スポーツに用いる動物若しくはペット(例えばイヌ、ネコ、ウマ、ハムスター及びげっ歯類)であり得る。
【0028】
治療有効量:特定の症状又は疾患を予防、治療又は寛解し、及び/又は、特定の症状又は疾患の特定の徴候又は症状を緩和するために十分な用量。この用語は、障害の進行を予防し又は退行を引き起こすに十分な用量、又は障害の徴候若しくは症状を軽減できる用量、又は所望の結果を達成することができる用量を含む。美容処置又は過体重若しくは肥満の治療に関連する実施形態では、レセプターアゴニストの治療上の効果は、体重増加を阻害又は停止するに十分な量、又は食欲を減少させるに十分な量、又はエネルギー若しくは食物の摂取を減少させるか又はエネルギー消費を増加させるに十分な量である。用語「美容上の有効量」は、処置される対象が所望の効果を達成するために十分な用量を指称すると意図される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0029】
発明の詳細な説明
最も広い観点では、本発明は、Y2レセプター及び/又はY4レセプターの活性化に応答性の症状の治療用組成物の製造における、Y1レセプターよりY2レセプター及びY4レセプターに対して選択性であるYレセプターアゴニストの使用を提供する。
ここで、
【0030】
(a)前記アゴニストは、
(i)-X-Thr-Arg-X3-Arg-Tyr-C(=O)NR1R2(式中、R1及びR1は、独立して、水素又はC1-C6アルキルであり、XはVal、Ile、Leu又はAlaであり、X3はGln又はAsnである)又はThrがHis又はAsnで置換され、及び/又はTyrがTrp又はPheで置換され、及び/又はArgがLysで置換されているその保存的置換変形体で表されるC末端Yレセプター認識アミノ酸配列、及び
(ii)H2N-X1-Pro-X2-(Glu又はAsp)-(式中、X1は存在しないか又は任意のアミノ酸残基であり、X2はLeu又はSerである)又はLeu若しくはSerの保存的置換体により表されるN末端Yレセプター認識アミノ酸配列
を有するPP折り畳みペプチド又はPP折り畳みペプチド模擬体であるか、又は
【0031】
(b)前記アゴニストは、上記(i)で規定されたC末端Yレセプター認識アミノ酸配列、及び任意に、上記(ii)で規定されたYレセプター認識アミノ酸配列で始まるN末端配列を含んでなり、
前記C末端Yレセプター認識配列は、前記ヘキサペプチド配列のN末端に隣接する少なくとも1つのαヘリックスターンを含んでなる両親媒性アミノ酸配列ドメインに融合し、
前記ターンは共有結合性分子内連結によりヘリックス形状に拘束されている。
【0032】
本発明に関連する具体的用語法
本発明に係るアゴニストは、Y1レセプターよりY2レセプター及びY4レセプターに対して選択性である。本発明に関しては、この条件は、当該アゴニストが、本明細書中に記載の親和性アッセイで測定したとき、Y2レセプター及びY4レセプターに対して、Y1レセプターに対してより少なくとも10倍(10-fold)低いIC50値を有すれば充足される。一般に、効力に関して、本発明のアゴニストはまた、本明細書中に記載の効力アッセイで測定したとき、Y2レセプター及びY4レセプターに対し、Y1レセプターに対してより少なくとも10倍(10-fold)低いEC50値を有している。本発明の好ましいアゴニストの幾つかは、Y2レセプター及びY4レセプターに対し、Y1レセプターに対してより少なくとも100倍(100-fold)高い親和性及び効力を有している。
【0033】
本明細書の目的のためには、PP折り畳みペプチドは、X線結晶学により決定した(Blundellら、1981 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78: 4175-79;Gloverら、1984, Eur.J.Biochem. 142: 379-85)トリPPの本来の3-D構造に対してマッピングしたとき、NPY、PYY及び/又はPPのN末端ポリプロリン様ヘリックス、タイプIβターン領域、両親媒性αヘリックス及びC末端ヘキサペプチドドメイン(図1)に対応し、実質的にこれらと同様に整列されるドメインを有する3-D構造を有する分子である。したがって、本明細書で使用するPP折り畳みペプチドの種々のドメインの記載は、トリPPの本来のX線構造(Blundellら、1981 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78: 4175-79;Gloverら、1984, Eur.J.Biochem. 142: 379-85;Schwartzら、1990)を参照している。
【0034】
本明細書の目的のためには、PP折り畳みペプチド模擬体は、トリPPの本来の3-D構造に対してマッピングしたとき、PPの両親媒性αヘリックスの最後のターン及びC末端ヘキサペプチドドメインに対応し、実質的にこれらと同様に整列されるドメインを少なくとも有する3-D構造を有する分子である。PP折り畳みペプチド模擬体はまた、上記のようにマッピングしたとき、両親媒性αヘリックスの残りのターン、N末端ポリプロリン様ヘリックス及びタイプIβターン領域のうちの1又はそれ以上に対応するドメインを有していてもよい。ペプチド模擬体は、全体が古典的なペプチド結合によって連結されたαアミノ酸の配列からなっている必要はない。そのような配列中の1又はそれ以上の結合は、当該ペプチド模擬体が擬ペプチド配列とみなされ得るように、ペプチド模擬結合(例えば逆アミド(reverse amide)、及び還元されたペプチド結合)によって置換されていてもよい。このような結合置換は、エンドペプチダーゼ分解に対する耐性を付与し、当該分子の薬力学特性を改善することができる。
【0035】
「PP折り畳みペプチド」及び「PP折り畳みペプチド模擬体」の上記定義で言及した3-D構造の比較は、例えばX線回折法により決定される原子座標に基づいて分子比較モデルを構築することにより、又は構造式から予測される分子の3-D構造の視覚化用に市販されているコンピュータプログラム、例えば:Schrodinger Inc.(1500 S.W. First Avenue, Suite 1180 Portland, OR 97201)の「Maestro Modelling Environment」;Accelrys Inc.(San Diego)の「Insight II Modeling Environment」 Release 4.0;及びTripos Inc.(1699 South Hanley Rd., St. Louis, Missouri, 63144, USA)の「SYBYL(登録商標)7.0」の1又はそれ以上を使用することにより行ってもよい。本発明に従うPP折り畳みペプチド又はPP折り畳みペプチド模擬体の3-D構造は、天然のNPY、PYY、又はPPの3-D構造と正確な対応関係を有する必要はなく、一般にはそのような正確な対応関係を有していないことに留意すべきである。PP折り畳みペプチド又はPP折り畳みペプチド模擬体の見かけの3-D構造は、これを研究するために使用される実験条件に依存して変わり、特により小さなペプチドについては、或る種の条件下ではより多く折り畳みが解かれているようにも見えるし、より少なく折り畳みが解かれているようにも見え得る。しかし、PP折り畳みペプチド又はPP折り畳みペプチド模擬体は、上記で特定したPP折り畳みドメインに対応するドメインを有するべきであること、及びそれが天然型ペプチドに類似する全体形状(C末端配列及び存在すればN末端配列が正常に配向している)をとるための構造的要素を有することで十分である。
【0036】
本発明に係るアゴニストはC末端Yレセプター認識配列を有する。これは、該アゴニストのC末端に位置する、通常約5〜7残基長の配列、特にヘキサペプチド配列であり、PP折り畳みペプチド又はPP折り畳みペプチド模擬体中に存在する場合、Yレセプターに結合し、結合相互作用単独により又はその結合作用と該アゴニストに存在するN末端Yレセプター配列のYレセプターへの結合との結果として該レセプターを活性化する配列である。N末端Yレセプター認識配列は、該アゴニストのN末端に位置する、通常約3〜5残基長の配列、特に4残基配列であり、PP折り畳みペプチド又はPP折り畳みペプチド模擬体中に存在する場合、Yレセプターに結合し、その結合作用と該アゴニストに存在するC末端Yレセプター配列のYレセプターへの結合との組合せにより該レセプターを活性化する配列である。古典的なC末端Yレセプター認識配列及びN末端Yレセプター認識配列は、天然のPP、NPY及びPYYペプチド配列中に見出されるものであるが、本明細書中で明らかになるように、これら古典的配列はY2及びY4を認識するがY1認識を減少するように改変されてもよい。
【0037】
本明細書中で、「NPYのN位に相当する残基」のような用語は、アゴニストの3-D構造をNPYの3-D構造にマッピングすると、NPYのN番目の残基に最も近接してマッピングされる当該アゴニストのアミノ酸残基をいう。特定のペプチド中の特定の残基の実際の番号付けは、天然ペプチドに関して当該特定のペプチド中に例えば欠失が生じていることに起因して、Nとは変わり得る。
【0038】
一般に、本発明に係るPP折り畳みアゴニスト又はPP折り畳み模擬体アゴニストは、通常、ペプチド性主鎖又は部分的にペプチド性である主鎖(少なくともC末端アミノ酸配列に、通常はN末端アミノ酸配列にも)を有するが、主鎖の残りは、非ペプチド性リンカー基、例えば直鎖又は分枝鎖のアルキレン鎖であってもよい。アゴニストのペプチド性部分に存在するアミノ酸は、通常、特にY2レセプター及びY4レセプターと相互作用するC末端及びN末端の配列では、天然に存在するアミノ酸であるが、PP折り畳みを保存し且つY2レセプター結合及びY4レセプター結合を妨げない非天然αアミノ酸もまた存在してもよい。
【0039】
本発明に係るアゴニストがC末端アミノ酸配列及びN末端アミノ酸配列を有する場合、C末端がアミド化され、及び/又はN末端がアシル化されて、カルボキシペプチダーゼ及び/又はアミノペプチダーゼに対する耐性を付与されてもよい。事実、天然型NPY、PYY、及びPPペプチドのC末端はアミド化されているので、本発明のアゴニストのC末端アミノ酸もアミド化される。
【0040】
本明細書中で、アミノ酸に対する言及は、一般的な名称又は略称、例えばバリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、アスパラギン(Asn)、グルタミン酸(Glu)、グルタミン(Gln)、ヒスチジン(His)、リジン(Lys)、アルギニン(Arg)、アスパラギン酸(Asp)、グリシン(Gly)、アラニン(Ala)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)、システイン(Cys)、及びプロリン(Pro)により行われる。立体異性体型を特定せずに一般的な名称又は略称で言及する場合、問題のアミノ酸は、L体として理解されるべきである。D体を意図する場合、アミノ酸は、そのように特定して言及される。時には、文脈によりそうすることが望ましい場合には、L体は推論されるよりむしろ特定される。
【0041】
本明細書中で使用される用語「保存的置換」は、1又はそれ以上のアミノ酸が生物学的に類似する別の残基により置換されることを指称する。例としては、類似する特徴を有するアミノ酸残基(例えば小さいアミノ酸、酸性アミノ酸、極性アミノ酸、塩基性アミノ酸、疎水性アミノ酸、及び芳香族アミノ酸)の置換が挙げられる。本発明における使用に適切な保存的アミノ酸置換の限定的でない例としては、下記の表に記載のもの、及び元の残基に類似する特徴を有する非天然αアミノ酸による同類置換(analogous substitution)が挙げられる。例えば、本発明の好ましい実施形態において、Met残基は、Metの生物学的等価物であるが−Metとは対照的に−容易には酸化されないノルロイシン(Nle)で置換される。内因性の哺乳動物ペプチド及びタンパク質では通常は見出されない残基での保存的置換の別の例は、Arg又はLysの、例えばオルニチン、カナバニン、アミノエチルシステイン、又はその他の塩基性アミノ酸での保存的置換である。ペプチド及びタンパク質における表現型的にサイレントな置換に関する更なる情報については、例えばBowieら、Science 247, 1306-1310, 1990を参照。
【0042】
【表1】

【0043】
出現する文脈中で特に断りのない限り、本明細書において任意の部分(moiety)に適用される用語「置換(された)」は、4つまでの適合性の置換基で置換されていることを意味する。この置換基の各々は、独立して、例えば、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルコキシ、ヒドロキシ、ヒドロキシ(C1-C6)アルキル、メルカプト、メルカプト(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキルチオ、ハロ(フルオロ、ブロモ、及びクロロを含む)、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ニトロ、ニトリル(-CN)、オキソ、フェニル、-COOH、-COORA、-CORA、-SO2RA、-CONH2、-SO2NH2、-CONHRA、-SO2NHRA、-CONRARB、-SO2NRARB、-NH2、-NHRA、-NRARB、-OCONH2、-OCONHRA、-OCONRARB、-NHCORA、-NHCOORA、-NRBCOORA、-NHSO2ORA、-NRBSO2OH、-NRBSO2ORA、-NHCONH2、-NRACONH2、-NHCONHRB、-NRACONHRB、-NHCONRARB、又は-NRACONRARB(式中、RA及びRBは独立して(C1-C6)アルキル基である)であり得る。「任意の置換基」は上記の置換基のうちの1つであり得る。
【0044】
文脈が他を示していない限り、本明細書中でのNPY、PYY、及びPPペプチド並びにそれらの配列への言及は、ヒト形態のこれらペプチド及び配列に関する。しかし、他の哺乳動物のNPY、PYY、及びPPペプチドは、それらの用語が本明細書中で使用されているように、ヒトNPY、PYY、及びPPのPP折り畳みペプチド模擬体又は保存的置換したヒトNPY、PYY、又はPPを構成する。
【0045】
本発明に従う使用のためのタイプ(a)アゴニスト
一般に、タイプ(a)アゴニストは、Y1レセプターと比較してY2レセプター及びY4レセプターに対して親和性及び効力を確実に分離する改変を有する、NPY、PYY若しくはPPのPP折り畳みアナログ又はNPY、PYY若しくはPPのPP折り畳み模擬体である。このようなPP折り畳みアナログ及び模擬体としては、PP折り畳みの特徴(N末端ポリプロリン様ヘリックス、βターン、両親媒性αヘリックス及びC末端ヘキサペプチド)を全て備えたペプチド、主鎖の一部(例えばβターン残基及び隣接残基)が非ペプチド性スペーサー鎖により置換されているペプチドアナログ、並びにC末端ヘキサペプチド及び両親媒性αヘリックスの最後のターンを保有するが、ポリプロリン様ヘリックス及び/又はβターンの全て又は一部を欠いている切断型ペプチドが挙げられる。
【0046】
本発明に係るアゴニストのC末端Yレセプター認識アミノ酸配列において、R1及びR2は好ましくは各々水素である。また、好ましくは、残基XはVal又はIleである。本発明のアゴニストが本発明に従うC末端改変を有するPP配列である場合、残基Xは、例えばLeu、Val又はIleであり得る。本発明のアゴニストが本発明に従うC末端改変を有するPYY配列又はNPY配列である場合、残基Xは、例えばVal又はIleであり得る。
【0047】
1つの実施形態では、本発明に係るアゴニストは、-XA-X-Thr-Arg-X3-Arg-Tyr-C(=O)NR1R2(式中、残基XAは非塩基性及び非酸性であり、配列-X-Thr-Arg-X3-Arg-Tyr-C(=O)NR1R2は上記と同義である)により表されるC末端Yレセプター認識配列を含んでなる。この場合、非塩基性及び非酸性のアミノ酸残基XAは、例えば、Leu、Met、Nle、Ile、Val、Alaであり得る。
【0048】
別の実施形態では、本アゴニストは、-XC-Tyr-XB-Asn-XA-X-Thr-Arg-X3-Arg-Tyr-C(=O)NR1R2(式中、配列-XA-X-Thr-Arg-X3-Arg-Tyr-C(=O)NR1R2は上記と同義であり、XCはArg又はLysであり、XBはIle、Leu又はValである)により表されるC末端ウンデカペプチドを含んでなる。このクラスのアゴニストにおいて、C末端ウンデカペプチド配列は-Arg-Tyr-Leu-Asn-(Leu又はMet)-Val-Thr-Arg-Gln-Arg-Tyr-C(=O)NH2である。
【0049】
異なる実施形態では、本アゴニストは、-XC-Tyr-XB-Asn-XA-X-Thr-Arg-X3-Arg-Tyr-C(=O)NR1R2(式中、配列-XA-X-Thr-Arg-Gln-Arg-Tyr-C(=O)NR1R2は上記と同義であり、XCはHis、Asn、又はGlnであり、XBはIle、Leu又はValである)により表されるC末端ウンデカペプチド配列を含んでなる。このクラスのアゴニストでは、C末端ウンデカペプチド配列は-His-Tyr-(Ile又はLeu)-Asn-Met-Leu-Thr-Arg-Gln-Arg-Tyr-C(=O)NH2である。
【0050】
本アゴニストのC末端Yレセプター認識アミノ酸配列では、X3はGlnであることが現時点では好ましい。
【0051】
本発明に係るタイプ(a)アゴニストのN末端Yレセプター認識アミノ酸配列において、残基X1は好ましくはAlaであるか又は存在していなくてもよく、残基X2は好ましくはLeu、Ile又はSerである。故に、1つの好ましいN末端配列はH2N-Ala-Pro-Leu-Glu-である。別の好ましいN末端配列はH2N-Pro-Leu-Glu-である。
【0052】
本発明に従う使用のためのタイプ(b)アゴニスト
一般に、タイプ(b)アゴニストは、PP折り畳みの最低限の構造的特徴(C末端Yレセプター認識配列及びαヘリックスの最後のターン)が指定された分子内共有結合性連結により安定化されているタイプ(a)のPP折り畳みペプチドアナログ又はPP折り畳み模擬体とみなすことができる。
【0053】
本発明に係る上記タイプ(b)アゴニストは、タイプ(a)アゴニストに関して上記で議論したN末端Yレセプター認識配列を有するPP折り畳み模擬体であってもよく、又は、タイプ(a)アゴニストについて規定したタイプのN末端Yレセプター認識配列を有しない(が、他のN末端アミノ酸配列を有していてもよい)N末端が切断されたPP折り畳み模擬体であってもよい。したがって、タイプ(a)アゴニストについて規定したN末端レセプター認識配列は、このタイプ(b)クラスのアゴニストにおいては任意成分である。
【0054】
このタイプのアゴニストは、天然型NPY、PYY若しくはPPペプチドに等価物を有しない分子内連結か又は共有結合性連結(例えば、[Cys2,D-Cys27,Gln34]PP(配列番号:22)中のCys2とD-Cys27との間の共有結合性ジスルフィド橋架け)に相当するか若しくは非共有結合性相互作用がそのような共有結合性連結で置換されている分子内連結により特徴付けられる。上記のように、このような連結は、PP折り畳み構造の必須要素(特に可動性C末端Y2認識配列及びαヘリックスの最後のターン)及び/又はN末端の提示を安定化するために働くことができる。完全長ペプチド又は完全長に近いペプチドでは、このような連結は、天然型PP折り畳み構造自体を安定化することができる。このことは2通りで有益である。第1には、そのような連結は、両親媒性αヘリックスのC末端部分を安定化し、そのことにより、最適な様式でのC末端Yレセプター認識アミノ酸配列の提示を安定化し、その結果、Yレセプターに対する改善された効力を生じる;第2には、PP折り畳み自体の全体を安定化することにより、ペプチドがタンパク質分解性分解に対してより感受性でなくなる。なぜならば、酵素は、標的配列がむしろ折り畳みを解かれている様式で見出されることを要求することが多いからである(Schwartzら、1990)。分子内連結はまた、天然型ペプチドの構造に関して激しく(heavily)改変されているY2/Y4選択性アゴニスト、例えば天然型ペプチド中に見出される1又はそれ以上のドメイン、又はドメインの部分を欠くアゴニストを可能にすることができる。
【0055】
このタイプ(b)のアゴニストの1つのセットは、PP折り畳み構造を有し、該構造において、ヘリックスターン拘束性分子内連結が、両親媒性ドメイン中のアミノ酸残基から、該両親媒性ドメインに逆平行に伸びPP折り畳みペプチドのポリプロリンドメインに対応する該アゴニストのN末端部分の連結点まで伸びている。ヘリックスターンを拘束する分子内連結、例えばジスルフィド連結又はラクタム連結は、前記の場合、両親媒性ドメイン中のアミノ酸残基から、ポリプロリン様ドメイン中のアミノ酸残基まで伸びていてもよい。本アゴニストがその最初の4アミノ酸残基がPP、NPY又はPYYの対応するN末端位置にマッピングされるPP折り畳み模擬体である場合、ヘリックスターン拘束性分子内連結、例えばジスルフィド連結又はラクタム連結は、例えば[Cys2,D-Cys27,Gln34]PP(配列番号:22)のように、両親媒性ドメイン中のアミノ酸残基から、それら4つのN末端残基のうちの1つまで伸びていてもよい。
【0056】
タイプ(b)の別のセットのアゴニストでは、ヘリックスターン拘束性分子内連結は、αヘリックスドメインの最後のヘリックスターンの残基間に伸びるか(例えば該ヘリックスターンのLys残基とGlu残基との間に形成されるラクタム連結)、又はC末端Y2認識アミノ酸配列中の残基とαヘリックスドメインの最後のヘリックスターン中の残基との間に伸びる(例えば[Lys28,Glu32]PYY25-36(配列番号:28)中のLys28とGlu32との間のラクタム橋架け)。
【0057】
タイプ(a)及び(b)アゴニスト
C末端Yレセプター認識配列及びN末端Yレセプター認識配列の両方を有する本発明に係るタイプ(a)又は(b)のPP折り畳み模擬体アゴニストの1つのセットにおいて、該C末端配列は、そのN末端で、該C末端ヘキサペプチド配列のN末端に隣接する少なくとも1つのαヘリックスターンを含んでなる両親媒性アミノ酸配列ドメインと融合していてもよく、該C末端及びN末端のアミノ酸配列はリンカー基により結合している。該リンカー基は、任意に1又はそれ以上の二重結合又は三重結合を含有していてもよい、直鎖又は分岐鎖のアルキレン基であり得る。例えば、本アゴニストのC末端及びN末端のアミノ酸配列は、ペプチド結合により、式NH2(CH2)nCO2H(式中、nは2〜12であり、特には6、7、8、9又は10である)のアミノ酸のカルボキシル基及びアミノ基とそれぞれ結合していてもよい。したがって、このアゴニストは、上記のようなCys-Cys橋架けを有するが、天然型ペプチドの5〜24に相当するアミノ酸残基が6-アミノヘキサン酸(ε-アミノカプロン酸)、7-アミノヘプタン酸、8-アミノオクタン酸、9-アミノノナン酸、及びアミノデカン酸からなる群より選択される6〜10炭素原子の炭素鎖を有するアミノカルボン酸で置換されている上記のC末端及びN末端のY認識配列を有するNPY、PPY又はPPのPP折り畳み模擬体であってもよい。具体的な実施形態において、8-アミノオクタン酸(本明細書中で時に「Aoc」と略される)が好ましい。このようなアゴニストの例は、[Cys2,Aoc5-24,D-Cys27,Gln34]-PP(配列番号:23)である。
【0058】
本発明に係るこのタイプのアゴニストの幾つかは、1)PP中の或る鍵となる位置に見出されるがNPY中の対応する位置にもPYY中の対応する位置にも見出されない残基が、対応するPP残基又はこの対応するPP残基と構造上類似する天然若しくは非天然の残基(保存的置換)で置換されているNPY又はPYYペプチドのアナログと見なしてもよいし、又は2)NPY又はPYY中の或る鍵となる位置では見出されるがPPの対応する位置では見出されない残基が、対応するNPY又はPYY残基又はこの対応するNPY又はPYY残基と構造上類似する天然若しくは非天然の残基で置換されているPPのアナログとみなしてもよい。上記のように、及び図1に示すように、Yレセプターは、PP折り畳み又はPP折り畳み模擬体により提示される該ペプチドの組み合わされたC末端部分及びN末端部分に位置する残基を認識する。通常、PPペプチドは、特にPPのC末端部分中の残基の存在に起因して、Y2レセプターにより認識されない。これら残基は、Y2レセプターに対する該ペプチドの高い親和性結合及び効力に適合しない。しかし、PP分子中又はPPのPP折り畳み模擬体中の1又はそれ以上の残基の、NPY又はPYYのいずれかに由来する対応する残基での置換により、Y4レセプターに対する親和性及び効力を失わせることなく、又はY4レセプターに対する親和性及び効力を比較的小さい程度にしか減少させることなく、Y2レセプターに対する該ペプチドの親和性を増大させることができる。
【0059】
N末端部分及びC末端部分においてPP、NPY及びPYY間で異なる残基、すなわち、1位、3位、4位、26位、28位、30位、31位、及び34位の残基を下記の表に示す。所望するY2及びY4組合せ高親和性は、これらの位置の1又はそれ以上での上記相同性置換により得ることができる。しかし、Y4レセプターに対する親和性及び効力を失わせることなくY2レセプターに対する高い親和性及び効力を得るためにPPにおける好ましい置換は、Pro34のGln又は類似する物理化学的特性を有する非天然残基での置換である。したがって、[Gln34]PPは極めて好ましいペプチドである。Gln34が、PP中の1又はそれ以上の他の非NPY/非PYY残基の、対応する残基又は物理化学的に類似する残基又は同様な特性を有する非天然アミノ酸での置換と組み合わされているPPアナログ又は模擬体も同様である。
【0060】
しかし、本発明に従って許容される相同性置換は、本明細書中に規定されるアゴニストを生じるものであることに留意すべきである。なぜならば、下記表により示唆される全ての可能な置換がそのペプチドの所望の特性を提供するわけではないからである。例えば、PYY又はNPY中の34位におけるProの導入は、Y4レセプターに対する高親和性を提供するが、本発明において有用であるべきアナログにとっては過度にY2レセプターに対する該ペプチドの親和性を損なう。
【0061】
【表2】

【0062】
本発明に従う使用のための具体的アゴニスト
本発明に従う使用のためのアゴニストの具体例は以下である:
[Gln34]PP(配列番号:4)
[N-(N'-ヘキサデカノイル)-γグルタモイル-Lys13,Gln34]PP(配列番号:34)
[N-(Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala)3-Lys18,Gln34]PP(配列番号:35)
[N-PEG5000-Lys13,Gln34]PP(配列番号:36)
[Ile31,Gln34]PP(配列番号:5)
[Val31,Gln34]PP(配列番号:6)
[Leu30,Gln34]PP(配列番号:7)
[Nle30,Gln34]PP(配列番号:8)
[Leu28,Gln34]PP(配列番号:9)
[His26,Gln34]PP(配列番号:10)
[Ile3,Gln34]PP(配列番号:11)
[Ala1,Glu4,Arg26,(Met30又はNle30)]PYY(配列番号:12)
[Ala1,Glu4,N-(N'-ヘキサデカノイル)-γグルタモイル-Lys13,Arg26,Nle30]PYY(配列番号:37)
[Ala1,Glu4,N-(Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala)3-Lys13,Arg26,Nle30]PYY(配列番号:38)
[Ala1,Glu4,N-PEG5000-Lys13,Arg26,Nle30]PYY(配列番号:39)
[Ala1,Glu4,Arg26(Met30又はNle30)]NPY(配列番号:13)
[Ala1,Glu4]PYY(配列番号:14)及び[Ala1,Glu4]NPY(配列番号:15)
[Arg26,(Met30又はNle30)]PYY(配列番号:16)及び[Arg26,(Met30又はNle30)]NPY(配列番号:17)
[Glu4,(Met30又はNle30)]PYY(配列番号:18)及び[Glu4,(Met30又はNle30)]NPY(配列番号:19)
[Glu4,Arg26]PYY(配列番号:20)及び[Glu4,Arg26]NPY(配列番号:21)
[Cys2,D-Cys27,Gln34]PP(配列番号:22)
[Cys2,Aoc5-24,D-Cys27,Gln34]PP(配列番号:23)
[Cys2,Lys13,D-Cys27,Gln34]PP(配列番号:30)
[Cys2,N-(8-(8-γグルタモイルアミノ-オクタノイルアミノ)-オクタノイル)-Lys13,D-Cys27,Gln34]PP(配列番号:31)
[Cys2,N-[(Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala)3]-Lys13,D-Cys27,Gln34]PP(配列番号:32)
[Cys2,N-[N'-(21-アミノ-4,7,10,13,16,19-ヘキサオキサヘンエイコサノイル)]-γグルタモイル-Lys13,D-Cys27,Gln34]PP(配列番号:33)
並びにこれらの保存的置換アナログ。
【0063】
本発明に従う使用に特に好ましいY2/Y4選択性アゴニストは[Gln34]-PP(配列番号:4)及び[Ala1,Glu4,Arg26,(Met30又はNle30)]PYY(配列番号:12)、又はこれらの保存的置換アナログである。
【0064】
本発明に従う使用のための適合化されたアゴニスト
ここまで、本発明に従う使用のための基本的なY2/Y4選択性アゴニストを一般的に記載し、そのようなアゴニストの具体的例を提供してきた。しかし、薬物動態学、薬力学、及び代謝特性の改善を目的として、種々の改変がこのようなアゴニスト(具体的に特定されたアゴニストを含む)に対してなされ得る。このような改変としては、アゴニストを、それ自体はペプチド又はタンパク質の製薬分野で公知の機能集団(functional groupings)(モチーフとしても知られる)に連結することが含まれ得る。本発明に係るアゴニストの場合に特に有益な3つの特定の改変は、タイプ(a)又は(b)のいずれであるかにかかわらす、血清アルブミン結合モチーフ又はグリコサミノグリカン(GAG)結合モチーフとの連結、又はPEG化である。
【0065】
血清アルブミン結合モチーフ
血清アルブミン結合モチーフは、代表的には、投与の際に体内で延長された滞留を可能にするため又は他の理由で組み込まれる親油性基であり、これは、種々の公知の方法で、ペプチド性又はタンパク質性の分子に、例えばi)共有結合性連結を介して、例えば側鎖アミノ酸残基上に存在する官能基に、ii)当該ペプチド又は適切な誘導体化ペプチド中に挿入された官能基を介して、iii)当該ペプチドの統合部分(integrated part)として、カップリングされ得る。例えば、WO 96/29344(Novo Nordisk A/S)及びP. Kurtzhalsら、1995 Biochemical J. 312: 725-31及びL.B.Knudsenら、2000 J.Med.Chem. 43: 1664-69は、本発明に係るアゴニストの場合に用いることができる多くの適切な親油性改変を記載している。
【0066】
適切な親油性基には、任意に置換されていてもよい、飽和又は不飽和の、直鎖又は分枝鎖の10〜24炭素原子の炭化水素基が挙げられる。このような基は、例えばアゴニストの主鎖中のアミノ酸残基の側鎖又はPP折り畳み模擬体アゴニストの主鎖中の非ペプチド性リンカー基の主鎖炭素若しくは主鎖炭素からの分枝へのエーテル結合、チオエーテル結合、アミノ結合、エステル結合又はアミド結合により、アゴニストの主鎖に対して側鎖を形成していてもよいし、該側鎖の一部を形成していてもよい。親油性基の付着のための化学ストラテジーは、重要でないが、親油性基を含む以下の側鎖が、アゴニストの主鎖炭素又はそれからの適切な分枝に連結され得る例である:
CH3(CH2)nCH(COOH)NH-CO(CH2)2CONH-(式中、nは9〜15の整数である)、
CH3(CH2)rCO-NHCH(COOH)(CH2)2CONH-(式中、rは9〜15の整数である)、
CH3(CH2)sCO-NHCH((CH2)2COOH)CONH-(式中、sは9〜15の整数である)、
CH3(CH2)mCONH-(式中、mは8〜18の整数である)、
-NHCOCH((CH2)2COOH)NH-CO(CH2)pCH3(式中、pは10〜16の整数である)、
-NHCO(CH2)2CH(COOH)NH-CO(CH2)qCH3(式中、qは10〜16の整数である)、
CH3(CH2)nCH(COOH)NHCO-(式中、nは9〜15の整数である)、
CH3(CH2)pNHCO-(式中、pは10〜18の整数である)、
-CONHCH(COOH)(CH2)4NH-CO(CH2)mCH3(式中、mは8〜18の整数である)、
-CONHCH(COOH)(CH2)4NH-COCH((CH2)2COOH)NH-CO(CH2)pCH3(式中、pは10〜16の整数である)、
-CONHCH(COOH)(CH2)4NH-CO(CH2)2CH(COOH)NH-CO(CH2)qCH3(式中、qは10〜16の整数である)、及び
部分的又は完全に水素化されたシクロペンタノフェナントレン骨格。
【0067】
1つの化学合成ストラテジーにおいて、親油性基含有側鎖は、アゴニストの主鎖の残基の側鎖に存在するアミノ基をアシル化するC12、C14、C16又はC18のアシル基、例えばテトラデカノイル基である。
【0068】
記載のように、改善された血清タンパク質結合性特徴を提供するために使用されるアゴニストの改変は、一般に(特には上記に列挙した具体的アゴニストの場合に)適用され得るストラテジーである。したがって、例えば[Lys11,Gln34]-PP及びその保存的置換アナログは、例えばLys11のテトラデカノイルアシル化により、上記の様式で改変されていてもよく、又は[Lys13,Gln34]PPは、[N-(N'-ヘキサデカノイル)-γグルタモイル-Lys13,Gln34]PPを形成するように改変されてもよく、[Ala1,Glu4,Lys13,Arg26,Nle30]PYYは[Ala1,Glu4,N-(N'-ヘキサデカノイル)-γグルタモイル-Lys13,Arg26,Nle30]PYYを形成するように改変されてもよい。
【0069】
GAG結合
上記の親油性血清結合モチーフの場合と同様に、本発明に係るアゴニストは、アゴニストの主鎖に対して側鎖として又は側鎖の一部としてGAG結合モチーフを組み込むことによって改変されていてもよい。この方法での組込みのための公知のGAG結合モチーフとしては、アミノ酸配列XBBXBX及び/又はXBBBXXBX(式中、Bは塩基性アミノ酸残基であり、Xは任意のアミノ酸残基である)が挙げられる。複数、例えば3つのこのような配列が、コンカテマー(直鎖)又はデンドリマー(分枝鎖)の様式で組み込まれていてもよい。具体的コンカテマーGAGモチーフとしては、Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala及びAla-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Alaが挙げられる(この両方が、例えばコンカテマーGAG結合モチーフのC末端とアゴニストの主鎖アミノ酸の側鎖中のアミノ酸、例えば[N-(Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala)3-Lys18,Gln34]PPを形成するためにはアゴニスト[Lys18,Gln34]PP(配列番号:24)中のLys18又は[Ala1,Glu4,N-(Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala)3-Lys13,Arg26,Nle30]PYYを形成するためにはアゴニスト[Ala1,Glu4,Lys13,Arg26,Nle30]PYY中のLys13のεアミノ基との間に形成されるアミド結合を通じてカップリングされ得る)。
【0070】
主鎖残基に対する側鎖として又は側鎖の一部としてアゴニストに付着する代わりに、GAGモチーフは、アゴニストのC末端又は(好ましくは)N末端に、直接にか又はリンカー基を介してかのいずれかで共有結合的に連結していてもよい。ここでまた、GAG結合モチーフは、アミノ酸配列XBBXBX及び/又はXBBBXXBX(式中、Bは塩基性アミノ酸残基であり、Xは任意のアミノ酸残基である)、例えば配列[XBBBXXBX]n(式中、nは1〜5であり、Bは塩基性アミノ酸残基であり、Xは任意のアミノ酸残基である)を含んでなってもよい。特には、Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-[Gln34]PP(配列番号:26)である。
【0071】
本発明に係るY2/Y4選択性アゴニストは、とりわけ、治療的脈管形成に有用である。この使用のためには、具体的には、アゴニストは、好ましくは、上記のようなグリコサミノグリカン(GAG)結合モチーフを含んでなる。このようなモチーフにより、確実に、アゴニストは細胞外マトリクス中のGAGに結合し、そのことにより、その組織中のYレセプターの延長された局所的曝露を確実にする。成長因子、ケモカインなどがパッチ状の塩基性アミノ酸(これがGAGの酸性糖鎖と相互作用する)を介してGAGに結合する。成長因子上のこれらの正に荷電したエピトープは、通常、塩基性残基の側鎖から構成されている。塩基性残基の側鎖は、必ずしも配列中で連続して位置していないが、二次構造要素(例えばαヘリックス又はターン)により、又は当該タンパク質の三次元構造全体により近接して提示されることが多い。上記のような或る種のGAG結合性直線配列、例えばXBBXBX及びXBBBXXBX(式中、Bは塩基性残基を表す)が記載されている(Hilemanら、Bioassays 1998, 20: 156-67)。これらセグメントは、GAGへの結合に際してαヘリックスを形成することが円偏光二色性により示されている。このような配列が、例えばコンカテマー又はデンドリマーの構築物(ここでは、例えば3つのこのような配列、例えば各々ARRRAARA配列が提示されている)で配置されている場合、得られる24マーペプチド、例えば、ARRRAARA-ARRRAARA-ARRRAARAにより、確実に、高分子量ポリリジンに類似する細胞外マトリクス中で保持される。すなわち、これは、4時間の灌流期間の間に洗い流されない(Sakharovら、FEBS Lett 2003, 27: 6-10)。
【0072】
したがって、成長因子及びケモカインは、天然には、2つのタイプの結合モチーフを有して構築される:1つは、それを介してシグナル伝達が達成されるレセプター用の結合モチーフであり、1つは、それを介して付着及び長期持続局所活性が達成されるGAG用の結合モチーフである。NPY及びPPのようなペプチドはニューロペプチド及びホルモンであり、これらは組織からかなり迅速に洗い流され、長期持続局所活性に最適化されていない。GAG結合モチーフを本発明に従うY2/Y4選択性アゴニストに付着させることにより、成長因子及びケモカインに類似する二機能性分子が、PP折り畳みペプチド部分のレセプター結合エピトープ及びGAG結合モチーフの両方を有して構築される。更に、GAG結合モチーフを含ませることにより、改変したペプチドはまた、例えば皮下に又は筋肉内に又は経皮的に或いはそのまま組織中に送達される類似の様式で注射されたときに、その組織中により長く留まる特性を有する。したがって、GAG改変ペプチドはまた徐放製剤を構成する。これは、循環への緩慢な放出及び延長された作用態様を得るために極めて有益であり得る。
【0073】
PP折り畳みペプチドのGAG結合モチーフ−例えば塩基性コンカテマー又はデンドリマー構築物−の導入のための別の適切な位置は、NPYペプチド及びそのアナログのためには14位であり、PYY及びPPペプチド並びにそれらのアナログのためには13位である。NPY、PYY及びPPタイプのペプチドに関しては、他の好ましい位置は11位及び18位である。しかし、上記のように、GAG結合モチーフを含んでなる残基は、この導入が、タイプ(a)、(b)及び(c)の本発明に係るアゴニスト中で必要とされるPP折り畳み構造及び必要なC末端Y2認識配列の保持と矛盾しないという条件で、当該アゴニスト中の任意の位置で導入することができる。したがって、GAG結合モチーフは、PP折り畳みの部分が非ペプチドスペーサーにより置換されているアナログ中のスペーサー構築物の一部として配置され得る。
【0074】
PEG化
PEG化において、ポリアルキレンオキシド基は、投与後の身体内での効果半減期を改善するために、ペプチド性又はタンパク質性の薬物に共有結合的にカップリングされる。この用語は、このようなプロセスで使用される好ましいポリアルキレンオキシドに由来する。すなわち、この用語は、エチレングリコール−ポリエチレングリコール、又は「PEG」に由来する。
【0075】
適切なPEG基は、任意の簡便な化学により、アゴニストに、例えば当該アゴニストの主鎖アミノ酸残基を介して、付着してもよい。例えば、例えばPEGのような分子に関しては、頻繁に使用される付着基は、リジンのε-アミノ基又はN末端アミノ基である。その他の付着基としては、遊離カルボン酸基(例えば、C末端アミノ酸残基又はアスパラギン酸若しくはグルタミン酸残基のもの)、適切に活性化されたカルボニル基、メルカプト基(例えば、システイン残基のもの)、芳香族酸残基(例えば、Phe、Tyr、Trp)、ヒドロキシ基(例えば、Ser、Thr又はOH-Lysのもの)、グアニジン(例えばArg)、イミダゾール(例えばHis)、及び酸化した炭水化物部分が挙げられる。
【0076】
アゴニストがPEG化されている場合、それは、通常、1〜5のポリエチレングリコール(PEG)分子、例えば、1、2又は3のPEG分子を含んでなる。各PEG分子は、約5kDa(キロダルトン)〜約100kDaの分子量、例えば約10kDa〜約40kDaの分子量、例えば約12kDaの分子量、好ましくは上限約20kDaの分子量を有していてもよい。
【0077】
適切なPEG分子は、Shearwater Polymers, Inc.及びEnzon, Incから入手可能であり、SS-PEG、NPC-PEG、アルデヒド-PEG、mPEG-SPA、mPEG-SCM、mPEG-BTC、SC-PEG、トレシル化mPEG(米国特許第5,880,255号)、又はオキシカルボニル-オキシ-N-ジカルボキシイミド-PEG(米国特許第5,122,614号)から選択してもよい。
【0078】
特定の実施形態において、上記で言及したアゴニスト[Lys13,Gln34]PPは、Lys13でPEG化されて[N-PEG5000-Lys13,Gln34]PP(配列番号:40)を形成してもよく、或いは[Ala1,Glu4,Lys18,Arg26,(Met30又はNle30)]PYY(配列番号:25)はLys18でPEG化されてもよい。
【0079】
血清アルブミン、GAG、及びPEG
アゴニストに対する改変が血清結合、GAG結合、又はPEG化を介する改善された安定性を促進するための基の付着である場合、血清アルブミン結合モチーフ又はGAG結合モチーフ、又はPEG基は、PYY又はPPの以下の位置:1位、3位、6位、7位、10位、11位、12位、13位、15位、16位、17位、18位、19位、21位、22位、23位、25位、26位、28位、29位、30位及び32位のいずれかに相当するか又はNPYの以下の位置:1位、3位、6位、7位、10位、11位、12位、14位、15位、16位、17位、18位、19位、21位、22位、23位、25位、26位、28位、29位、30位及び32位のいずれかに相当するアゴニストの主鎖炭素の側鎖であってもよいし、又はその一部を形成していてもよい。
【0080】
より大きな生体分子との接合
上記のように、或るモチーフをPP折り畳みペプチド又はPP折り畳みペプチド模擬体中の種々の位置で、それらの高いYレセプター親和性を損なうことなく連結することが可能である(実施例参照)。類似する様式で、Y2-Y4組合せ選択性レセプターアゴニストは、それが例えばアルブミン若しくは別のタンパク質又は有益な薬力学的特性若しくは他の型の特性(例えば、減少した腎排泄のような特性)を提供するキャリア分子と連結されている融合タンパク質として使用し得る。使用することができる多数のタンパク質又はキャリアが存在するように、当該分野で公知の共有結合性付着に使用できる多数の化学的改変及びリンカーが存在する。特に、Y2-Y4選択性ペプチドアゴニストのアルブミンへの共有結合性付着は、好ましく、種々のモチーフを伴う改変に関して本明細書中の他で指摘したPP折り畳み構造中の位置の1つである。このような融合タンパク質は、ペプチドを本明細書中に記載のようなペプチド合成により作り、組換え技術により生体分子を作ってもよい種々の半合成技法により製造することができる。融合タンパク質はまた、全体が、例えばGly-Lys-Arg配列(これは、真核細胞で分泌性タンパク質として発現する場合、生合成酵素により切断され、GlyはC末端Y2レセプター認識配列のC末端Tyr残基上のカルボキシアミドに転換される)により伸長された前駆体分子として発現された組換え分子として作られてもよい。
【0081】
安定化
本明細書中の種々の箇所で記載したように、本発明のY2-Y4選択性アゴニストの多くが、種々の方法、例えばN末端アシル化により、又はアゴニスト主鎖の一部を非ペプチド性リンカーで置換することにより、又はPP折り畳み構造を安定化する架橋を内部環化することにより、安定化されている。この安定化は、ほとんどの場合で、2つの目的に働く。一方は、PP折り畳みを保存することによりレセプター認識エピトープをY2レセプター及びY4レセプターに最適な様式で提示することであり;他方は、分解(すなわち、特にはタンパク質分解性分解)に対してペプチドを安定化することである。これは、Y2-Y4選択性アゴニストがまた、上記のような種々のモチーフの付着により、延長された半減期、持続性放出、及び/又は長期持続性組織曝露を得るために改変されている場合に、特に重要である。通常、このペプチドアゴニストは、主に腎臓を通じて、比較的迅速に排泄され、タンパク質安定性自体は重要な問題ではないかもしれない;しかし、種々の体液中のペプチドの存在が、1又はそれ以上の方法で、何時間も延長される場合には、ペプチドの生物学的活性もまた無傷で維持されること、すなわち、一般的に及びY2-Y4選択性アゴニストペプチドの具体例に関連して記載されているように、タンパク質分解性攻撃に対して耐性である形態(例えばPP折り畳み安定化環状[Cys2,D-Cys27]PP及びこの種々のアナログ)で安定化されていることが特に重要である。したがって、本発明の好ましい実施形態において、Y2-Y4組合せ選択性アゴニストは共に、−構造的変化(その幾つかが下記の実施例で具体的に示される)により−構造的に安定化され、これらは、延長されたレセプター曝露が得られるように、種々のモチーフで修飾され、及び/又は生体分子に融合され、及び/又は持続性放出などが得られる医薬様式で調製される。
【0082】
ヘリックス誘導性ペプチド
本発明に係るアゴニストのN末端のアシル化は、アミノペプチダーゼの作用に対してアゴニストを安定化する手段として言及されている。別の安定化する改変として、4〜20アミノ酸残基の安定化性ペプチド配列をN末端及び/又はC末端、好ましくはN末端で共有結合性に付着することが挙げられる。このようなペプチド中のアミノ酸残基は、Ala、Leu、Ser、Thr、Tyr、Asn、Gln、Asp、Glu、Lys、Arg、His、Metなどからなる群より選択される。興味深い実施形態において、N末端ペプチド付着は、4、5又は6のLys残基、例えばLys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-[Gln34PP](配列番号:29)を含んでなる。これらは、PP折り畳みペプチドアゴニストのN末端で連結することができ、又はこれらは、N末端が切断されたPP折り畳み模擬体アゴニスト又はN末端が短縮化されたPP折り畳み模擬体アゴニストのN末端に配置されてもよい(ここで、スペーサペプチドが新たなN末端と安定化性ペプチドとの間に導入されている)。このような安定化性ペプチド伸長の一般的な記載は、WO 99/46283(Zealand Pharmaceuticals)(本明細書中に参考として援用する)に与えられる。
【0083】
本発明に係るレセプターアゴニストは、周知の方法、例えば合成法、半合成法及び/又は組換え法のような方法により製造されてもよい。このような方法としては、標準的なペプチド調製技法、例えば、溶液合成、及び固相合成のようなペプチド調製技法が挙げられる。当該分野の教科書及び一般的知識に基づいて、当業者は、本アゴニスト及びその誘導体又は改変体を取得するための手順を理解する。
【0084】
以下で、本発明に従う具体的アゴニストを、分子薬理学的特性並びにペプチド化学特性及び安定性特性に関して記載する。
【0085】
[Ile31,Gln34]PP(配列番号:5)
このペプチドは、NPY中の31位及び34位に見出される残基に対応する31位のIle及び34位のGlnの導入によりY2レセプターに対する高親和性について設計されたPPアナログである(Fuhlendorffら、JBC 1990, 265: 11706-12)。
【0086】
レセプター認識プロフィール − [Ile31,Gln34]PPは、PPのそれ(IC50 = 0.49nM)と非常に類似するヒトY4レセプターに対する1桁のナノモル濃度の親和性(IC50 = 1.2nM)を有する。[Ile31,Gln34]PPは、Y2レセプターについては54nMの親和性を有するが、Y1レセプターに対しては1000nMを超えるIC50を有する。したがって、[Ile31,Gln34]PPは、Y1レセプターに比較してY2-Y4レセプター選択性であるアゴニストである(表1)。Yレセプターに対する親和性は以前に報告され、当時はラットY4レセプターのみが入手可能であり、[Ile31,Gln34]PPは、ラットY4レセプターに対して約50nMの親和性を有することが示されている。これは、PPの親和性より約100倍(100 fold)低い(Fuhlendorffら、JBC 1990, 265: 11706-12;Schwartzら、NYAC, 1990, 611: 35-47)。効力に関しては、[Ile31,Gln34]PPは、Y4レセプターに対して0.91nM(EC50値)のインビトロ効力を、Y2レセプターに対して6.5nMのEC50を、Y1レセプターに対して48nMのEC50値を示した(表2)。したがって、以前に公開された親和性データ(Fuhlendorffら、JBC 1990, 265: 11706-12;Schwartzら、NYAC, 1990, 611: 35-47)と比較して、[Ile31,Gln34]PPが、事実、Y1レセプターに対して2桁で効力を有するのに対して、Y2レセプター及びY4レセプターの両方に対して1桁で効力を有するアゴニストであることは驚くべきことである。
タンパク質安定性 − PP1-36と同様。
【0087】
[Val31,Gln34]PP(配列番号:6)
[Ile31,Gln34]PP(配列番号:5)と同様ではあるが、しかしこの場合にはPYY中で見出される残基に対応する31位のVal及び再度NPY及びPYYの両方で34位に見出される残基に対応する34位のGlnの導入により、このペプチドは、Y4レセプターに対する高親和性が保持されつつY2レセプターに対する高親和性について設計されたPPアナログである。これは新規化合物である。
【0088】
レセプター認識プロフィール − [Val31,Gln34]PPは、Y4レセプターに対して0.93nMの親和性を、Y2レセプターに対して69nMの親和性を有する一方で、Y1レセプターについて親和性は、>1000nMを用いてさえ測定することができない(表1)−したがって、[Val31,Gln34]PPはY2-Y4選択性リガンドである。インビトロ効力に関しては、[Val31,Gln34]PPは、Y4レセプターに対して1.0nMのEC50値を、Y2レセプターに対して9.9nMのEC50値を有する一方、Y1レセプターに対する効力は99nMであった(表2)。
タンパク質安定性 − PP1-36と同様。
【0089】
[Gln34]PP(配列番号:4)
[Ile31,Gln34]PP(配列番号:5)及び[Val31,Gln34]PP(配列番号:6)と同様ではあるが、しかしこの場合にはNPY及びPYYの両方で34位に見出される残基に対応する34位のGlnの導入のみにより、このペプチドは、Y2レセプターに対する高親和性について設計されたPPアナログである。34位がY4レセプターでのPPの認識に重要でないという事実のために、このペプチドは、Y2レセプター及びY4レセプターに対する二重の高親和性を有する。ウシPPにおいてGlnが34位に導入され。これはウシPP自体のそれと非常に類似するY4レセプターに対する親和性を有することが見出されたが、このペプチドはY2レセプターに関して試験されなかった(Gehlertら、1996 Mol Pharmacol. 1996 50:112-8)。本発明において、ProからGlnへの置換がヒトPP1-36でなされ、[Gln34]PPが、驚くべきことに、NPY及びPYYのそれと類似するY2レセプターに対する高親和性を有すること、及び[Gln34]PPはY1レセプターに結合しないことが証明された。したがって、[Gln34]PP(すなわち[Gln34]ヒトPP1-36)は、Y1レセプターではなくY2レセプター及びY4レセプターについて選択性である新規の化合物である。
【0090】
レセプター認識プロフィール − [Gln34]PPは、Y4レセプターと1.2nMの親和性で、Y2レセプターと9.0nMの親和性で結合する一方、Y1レセプターについて親和性は、>1000nMのペプチドを用いてさえ測定することができなかった(表1)。インビトロ効力に関しては、[Gln34]PPは、Y4レセプターに対して1.1nMのEC50値を、Y2レセプターに対して3.0nMのEC50値を示す一方、Y1レセプターに対する効力は388nMである(表2)。
タンパク質安定性 − PP1-36と同様。
【0091】
インビボレセプター選択性 − 用量増大研究において、[Gln34]PPを、麻酔したイヌに静脈内注入により連続30分の注入期間で0.3、1、3、10、30及び100μg/kgの用量で投与した。[Gln34]PPの血漿レベルをラジオイムノアッセイにより測定した。これによって線形の用量関係が示された。最高用量で、100nMの血漿レベルがイヌで得られた。にもかかわらず、血圧に対しても心拍に対してもいずれに対しても用量依存性効果は観察されなかった。Y1レセプター及びY2レセプターの両方に対してアゴニストであるPYY及びNPYが、よりずっと低い血漿レベルで、血圧を上昇させることは周知である。したがって、これら実験は、[Gln34]PPがインビボでも、測定可能なY1レセプター活性を有しない高度に選択性であるペプチドであることを示している。
【0092】
マウスにおける急性食物摂取に対するインビボ効果 − PYY3-36、[Gln34]PP又は生理食塩水のいずれかを、8匹のマウスの群に、動物当たり3若しくは30μg(PYY3-36)又は1及び10μg([Gln34]PP)の用量で、16時間の絶食後に皮下注射により投与した。図2にマウスの累積の食物摂取量を示す。PYY3-36は、30μgの用量で、最初の2時間の間は食物摂取を阻害したが、その効果はその後の2〜6時間にわたって徐々に消失した。[Gln34]PPは、マウスにおいて、食物摂取に対して、PYY3-36より顕著で長期持続性の抑制性効果を有した。したがって、1μgの用量でさえ、より効果的な食物摂取の阻害が観察され、その効果は8時間以上持続した(図2)。したがって、[Gln34]PPは、インビトロアッセイにおいて測定されたようにY2レセプターに対して10倍(10-fold)低い効力である(PYY3-36のEC50値0.24に対して3.0のEC50値、表2)が、にもかかわらず、またY4アゴニストとしての効果におそらく起因してインビボでマウスにおいて急性食物摂取に対してより強力であり、より延長された効果を有するようであった。
【0093】
[Gln34]PPは、−ここに記載の他のペプチドの例と同様に−Y1選択性よりY2-Y4組合せ選択性であることを維持しつつ例えば薬物動態学的目的又は他の種々の目的を得るために更に改変することができる。例えば、17位及び/又は30位のMet残基は、例えばLeu又はNleで置換することができ、種々のモチーフなどの付着のために種々の位置に1又はそれ以上のLys又は他の付着を容易にする残基を導入することができる。このことにより、一群のY2-Y4選択性アゴニストペプチドを作り出すことができ、この群から、本明細書の他の箇所に記載のような肥満などの治療のための薬物として化合物を選択することができる。
【0094】
[Leu30,Gln34]PP(配列番号:7)、[Nle30,Gln34]PP(配列番号:8)、[Leu28,Gln34]PP(配列番号:9)、[His26,Gln34]PP(配列番号:10)
[Ile31,Gln34]PP(配列番号:5)及び[Val31,Gln34]PP(配列番号:6)と同様ではあるが、しかしこの場合にはPro34からGlnへの置換がPPのC末端部分の他の非NPY残基/非PYY残基の置換:Met30→Leu(NPY及びPYYの両方のように)又はIle28→Leu(PYY中のように;NPYはPPと同じくIleを有する)又はArg26→His(NPY及びPYYの両方においてのように)と組み合わされており、これらペプチドは、Y2レセプターに対する高親和性について設計されたPPアナログである。例えば、Met30のLeu又はNleでの置換は、このことが天然に存在するMet残基の酸化の可能性を除去するという利点を有する。[Leu30,Gln34]PP、[Nle30,Gln34]PP、[Leu28,Gln34]PP、及び[His26,Gln34]PPは新規化合物である。
【0095】
[Ile3,Gln34]PP(配列番号:11)
[Ile3,Gln34]PPは、Y1に対する所望のY2-Y4組合せ選択性が得られるように、PP足場背景のC末端部分及びN末端部分の両方で改変されているペプチドの代表である。例えば[Ile31,Gln34]PP及び[Val31,Gln34]PPと同様ではあるが、しかしこの場合にはPro34からGlnへの置換が(この場合PPのN末端部分の)別の非NPY/非PYY残基の置換:Leu3→Ile(PYY中のように;これはNPYではSerである)と組み合わされており、このペプチドはY2レセプターに対する高親和性について設計されたPPアナログである。[Ile3,Gln34]PPは新規化合物である。
【0096】
[Ala1,Glu4,Arg26,Met30]PYY(配列番号:12)
このペプチドは、ここで、N末端部分及び/又はC末端部分の1又はそれ以上の非PP残基が、Y1に対する所望のY2-Y4組合せ選択性が得られるように、PPで見出される残基で置換されている一群のPYYアナログ及びNPYアナログの代表である。[Ala1,Glu4,Arg26,Met30]PYYは、C末端部分及びN末端部分における合計4つのPP様残基の導入により、Y4レセプターに対する高親和性が得られるように設計されている。34位でのProの導入は回避される。なぜならば、これは、Y4レセプターに対するペプチドの親和性を増大させるが、Y2レセプターに対するペプチドの親和性を強力に損なうからである。[Ala1,Glu4,Arg26,Met30]PYYは新規化合物である。
【0097】
レセプター認識プロフィール − [Ala1,Glu4,Arg26,Met30]PYYは、ヒトY2レセプター(EC50 = 1.0nM)及びヒトY4レセプター(EC50 = 1.4nM)の刺激に関して高い効力を示すが、これはヒトY1レセプターに対してはわずかに87nMの効力を有する(表2)。
タンパク質安定性 − PYY1-36と同様。
【0098】
[Ala1,Glu4,Arg26,Met30]PYYは、−ここで示す他のペプチド例と類似して−Y1選択性よりY2-Y4組合せ選択性であることを維持しつつ例えば薬物動態学的目的又は他の種々の目的を得るために更に改変することができる。例えば、17位及び/又は30位のMet残基は、例えばLeu又はNleで置換することができ、種々のモチーフなどの付着のために種々の位置に1又はそれ以上のLys又は他の付着を容易にする残基を導入することができる。このことにより、一群のY2-Y4選択性アゴニストペプチドを作り出すことができ、この群から、本明細書の他の箇所に記載のような肥満などの治療のための薬物として化合物を選択することができる。
【0099】
[Ala1,Glu4]PYY(配列番号:14)、[Arg26,Met30]PYY(配列番号:16)、[Glu4,Met30]PYY(配列番号:18)、[Glu4,Arg26]PYY(配列番号:20)
これら新規ペプチドは、[Ala1,Glu4,Arg26,Met30]PYYと共に、Y1レセプター選択性ではなくY2+Y4選択性を得るために、C末端部分及び/又はN末端部分のいずれかで残基が置換されている一群のPYY又はNPYベースのペプチドアゴニストの代表である。これにより、及び他のPPベースのペプチドと共に、多種多様のペプチドが作り出され、この中から、抗肥満薬などとして使用されるべき、高いY2及びY4親和性と種々のY1効力との最適なバランスを有するペプチドを選択することができる。
【0100】
レセプター認識プロフィール − 例として、表1に、Y1レセプター及びY4レセプターに対する[Arg26,Met30]PYYの親和性がそれぞれ0.13nM及び2.3nMであり、これに対しY1レセプターに対する親和性が65nMであることを示す。別の例として、PYYの親和性が、4位でのLysからGluへの置換及び26位でのHisからArgへの置換により、[Glu4,Arg26]PYYにおいて、Y1レセプターについて16nMから367nMに減少する一方で、このペプチドは、これら2つの置換により、30nM(PYYについて)から3.3nM([Glu4,Arg26]PYYについて)のY4親和性を獲得し、このようにして、100倍(100-fold)を超える選択性窓がつくられる(表1)。
【0101】
[Cys2,D-Cys27,Gln34]PP(配列番号:22)
ここで、このPPアナログは、環状[Cys2,D-Cys27]PPペプチドの増大したタンパク質安定性が[Gln34]PPのY1レセプター選択性に対してY2レセプター及びY4レセプターの二重の選択性と組み合わされている一群のY2-Y4選択性アゴニストを代表する。これは新規化合物である。上記のペプチドから、このペプチドが、Y1選択性よりY2-Y4組合せ選択性であることを維持しつつ例えば薬物動態学的目的又は他の種々の目的を得るために更に改変することができることが明らかである。例えば、17位及び/又は30位のMet残基は、例えばLeu又はNleで置換することができ、種々のモチーフなどの付着のために種々の位置に1又はそれ以上のLys又は他の付着を容易にする残基を導入することができる。このことにより、一群のY2-Y4選択性アゴニストペプチドを作り出すことができ、この群から、本明細書の他の箇所に記載のような肥満などの治療のための薬物として化合物を選択することができる。
【0102】
[Cys2,Aoc5-24,D-Cys27,Gln34]PP(配列番号:23)
このPPアナログにおいて、[Gln34]PPの二重レセプター特異性は、PPの小さく便利な[Cys2,Aoc5-24,D-Cys27]PPタイプアナログに構築される。これは新規化合物である。
【0103】
臨床適応症
本発明に係るY2/Y4特異的アゴニストは、Y2レセプター及び/又はY4レセプターの活性化に応答性の症状の治療に価値がある。このような症状としては、そのためにエネルギー摂取又はエネルギー代謝の調節、腸分泌の制御、或いは脈管形成の誘導が指示される症状が挙げられる。そのような使用のためには、アゴニストは、ペプチダーゼに対する安定性、血清タンパク質結合特性を付与する改変又はモチーフ、或いは血清及び/又は組織の半減期を延長するためのPEG化を含んでなるアゴニストであり得る。特に、脈管形成の誘導のためには、アゴニストは、組織半減期及びYレセプター曝露を延長するためのGAG結合モチーフを含んでなり得る。
【0104】
エネルギー摂取又はエネルギー代謝の調節が指示される疾患又は症状としては、肥満及び過体重、並びに肥満及び過体重が主因として考えられる症状、例えば過食症、神経性大食症、X症候群(Syndrome X)(メタボリック症候群)、糖尿病、2型糖尿病又はインスリン非依存性糖尿病(NIDDM)、高血糖、インスリン抵抗性、グルコース寛容減損、心血管疾患、高血圧、アテローム性動脈硬化症、冠動脈疾患、心筋梗塞、末梢血管疾患、卒中、血栓塞栓性疾患、高コレステロール血症、高脂血症、胆嚢疾患、変形性関節症、睡眠時無呼吸、生殖障害、例えば多嚢胞性卵巣症候群、或いは胸部、前立腺又は結腸のガンが挙げられる。
【0105】
腸分泌の調節が指示される疾患又は症状としては、種々の形態の下痢又は腸瘻(intestinal stomia)からの過剰分泌を患っている患者が挙げられる。
【0106】
脈管形成の誘導が指示される疾患又は症状としては、末梢血管疾患、冠血管疾患、心筋梗塞、卒中、前記のいずれかが主因とされる症状、創傷治癒、及び組織修復が挙げられる。
【0107】
1.肥満及び過体重
PYY3-36は、末梢に投与されたとき、種々のげっ歯類において食欲、食物摂取及び体重を減少させることが示されており(Batterhamら、Nature 2002, 418: 595-7;Challisら、BBRC Nov. 2003, 311: 915-9)、またヒトにおいても末梢に投与されたときに食欲及び食物摂取を減少させることが示されている(Batterhamら、2002)。レセプターノックアウト動物における研究を含む動物データは、PYY3-36の効果が、Y2レセプターを通じて、並びに弓状核のNPY/AgRP及びPOMCニューロンを通じて媒介されていることを強く示している。PYYレベル及びPYY食物応答は、しばしば、肥満である対象でより低く、BMIと逆に相関することが報告されている。重要なことに、PYY3-36の90分間の注入は同様な長期持続性様式で肥満である対象における食物摂取を減少させるので、肥満である対象はPYYのこの効果に対して耐性ではない(Batterhamら、2003, NEJM 349: 941-48)。
【0108】
PPが末梢に投与されたときに強力で効率的な摂食抑制性ペプチドであることを示す多くの証拠が最近のげっ歯類研究から蓄積されている(Asakawaら、Peptides 1999, 20; 1445-8;Katsuuraら、Peptides 2002, 23: 323-9;Asakawaら、Gastroenterology 2003, 124: 1325-36)。PPは、Y4ノックアウト動物において食欲、食物摂取などに対して効果を有しないので、PPがY4レセプターを通じて作用して食欲及び食物摂取を減少させる可能性が非常に高い(Batterhamら、2004 Coimbra(ポルトガル)におけるInternational NPY symposiumの要旨集S3.3)。PPはまた、食餌により誘導された肥満動物において、食物摂取に対する効果を有した。PPレセプターは、特には脳幹において、迷走運動ニューロンで及び孤束核(NTS)で見出されている。この両方とも、血液脳関門が効率的でない領域であり、PPのような循環しているホルモンがニューロンに接近することが可能である。したがって、脳幹のNTS中のY4レセプターが主要な標的であり、これを通じてPPが食欲及び食物摂取を抑制するように作用する可能性が非常に高い。しかし、最近の証拠は、PPがまた弓状核においてYレセプターを通じておそらくPOMCニューロンに及び多分NPY/AgRPニューロン上にも作用し得る可能性も指摘している(Batterhamら、Coimbra NPY meeting abstract S3.3)。低レベルのPPが肥満対象、特にプラーダー‐ヴィリ症候群で見出されている(Zipfら、J.C.E.M.1981, 52: 1264-6;Holstら、1983, Int.J.Obes. 7: 529-38;Glaserら、Horm.Metab. 1988, 20: 288-92)。高PPレベルは神経性食欲不振の患者で見出される。重要なことには、ヒトにおけるPPの注入は、24時間までの間、食欲及び食物摂取を減少させる(Batterhamら、JCEM 2003, 88: 3989-92)。したがって、食物摂取に対するPPの効果は、循環中のPPレベルが正常レベルに回復した後に観察された。食欲などに対するこのような長期持続性効果は、特にAgRPのICV注射からも周知である。重要なことに、PPの注入はまた、中程度に肥満したプラーダー‐ヴィリ症候群の患者において食物摂取を減少させることが示されている(Berntsonら、1993 Peptides 14: 497-503)。
【0109】
PYYはおそらくは主に弓状核においてはY2レセプターを通じて作用し−刺激性NPY/AgRPニューロンを抑制する−、PPは、主には脳幹の最後野及びNTSにおいてではあるが弓状核においてもまたY4レセプターも通じて作用する−しかし見かけ上、抑制性POMCニューロンを刺激する−という事実(Batterhamら、2004 International NPY symposium, Coimbra abstract S3.3)のために、Y2アゴニスト及びY4アゴニストの組合せの効果は、相加効果そして相乗効果さえ有する。すなわち、組合せの処置から2つの処置各々単独より効率的な効果が達成される。
【0110】
PYY自体は、末梢に投与されたとき極端に催吐性であることが知られている。事実、PYYは、腸抽出物の、イヌに嘔吐を引き起こすクロマトグラフ画分における生物学的に活性な物体として1989年に「再」発見された(Harding及びMcDonald、1989 Peptides 10: 21-24)。PYYは同定された最も強力な循環性の催吐性ペプチドであり、この効果は漏れ易い血液脳関門を有すると知られている最後野により媒介されていると結論付けられた。PYY3-36がヒト対象の末梢に投与されたとき悪心を引き起こし得ることもまた報告された(2004年6月29日のNastech報道発表)。生理学的観点から、論理的に、通常大量の食事の間又は種々の外科的手順に起因して食物が下部腸に溜まったときに最初に大量に分泌されるPYY−およびその生物学的に活性な変換生成物−は、対象を明白な過食症状から救うために嘔吐を引き起こし得るようである。興味深いことに、その論文では、類似する用量で与えられたPPがこれらのイヌで嘔吐を引き起こさないことが注目された(Harding及びMcDonald 1989)。PPは、脳幹の最後野にも位置するY4レセプターを通じて作用する−が、嘔吐を引き起こさない。大用量のY2-Y4組合せアゴニストペプチド、例えば[Gln34]PPは、動物、例えばカニクイザル(cyno monkey)に、該動物の嘔吐もGI管副作用の証拠も観察されずに12〜13.000nMの血漿レベルに達するように投与し得る。これは驚くべきことである。なぜならば、[Gln34]PPは、PYY3-36が完全に選択性であるY2レセプターに対して比較的高い効力を有しているからである。したがって、驚くべきことに、Y2-Y4組合せ選択性アゴニストは、Y2選択性アゴニストのPYY3-36化合物が引き起こす同じ程度には、嘔吐を引き起こさない。明らかなことは、Y4レセプター活性化−おそらくは最後野における−は、当該化合物のY2活性化の催吐効果を防ぐ。Y2-Y4組合せ選択性アゴニストのこの特性は、肥満及び関連する症状の治療に関して非常に有益なものである。
【0111】
故に、本発明に係るY2/Y4選択性アゴニストは、エネルギー摂取を調節するために、対象における、例えばヒトを含む哺乳動物における使用に適切である。したがって、本発明は、エネルギー摂取、食物摂取、食欲、及びエネルギー消費を変化させるための方法に関する。対象に美容上又は治療上の有効量の本アゴニストを投与することによりエネルギー摂取又は食物摂取を減少させる方法が本明細書中に開示される。1つの実施形態では、本レセプターアゴニストの投与は、食物の量、総重量若しくは総体積のいずれか、又はカロリー含量の減少を生じる。別の実施形態では、本レセプターアゴニストの投与は、食物成分の摂取の減少、例えば脂質、炭水化物、コレステロール、又はタンパク質の摂食の減少を生じてもよい。本明細書中に開示されるいずれの方法においても、本明細書中で詳細に議論されている好ましい化合物が投与され得る。更なる実施形態では、治療有効量の本アゴニストを投与することにより食欲を減退させる方法が本明細書に開示される。食欲は当業者に公知の任意の手段により測定することが可能である。
【0112】
例えば、減少した食欲は、精神学的評価により評価することができる。このような実施形態では、本レセプターアゴニストの投与は、知覚される空腹、満腹、及び/又は充足の変化を生じる。空腹は、当業者に公知の任意の手段により評価することができる。1つの実施形態では、空腹は、精神学的アッセイを用いて、例えば質問表を使用する空腹感及び感覚認知の評価のようなアッセイにより評価される。
【0113】
更なる実施形態では、上部GI間の運動性を減少させるため、例えば胃排出を減少させるための方法が本明細書に開示される。この方法は、治療有効量の本アゴニストを対象に投与し、そのことによりGI管の運動性を減少させることを含む。胃排出を減少させる化合物は、対象がより充足感又は満足感を感じるので、食物摂取の減少にも有益な効果を有することは周知のことである。PYY3-36(原型のY2アゴニスト)及びPP(原型のY4アゴニスト)は共に胃排出を減少させることが知られている。Y2-Y4組合せアゴニストは、上部GI管の運動性を阻害することにおいて、相加効果そして相乗効果さえも有する。
【0114】
更なる実施形態では、対象においてエネルギー代謝を変化させる方法が本明細書に開示される。この方法は、治療有効量の本アゴニストを対象に投与し、そのことによりエネルギー消費を変化させることを含む。エネルギーは、全ての生理学的プロセスにおいて燃焼する。身体は、直接、又はそのプロセスの効率を改変することにより、又は起こっているプロセスの数及び性質を変えることにより、エネルギー消費の速度(rate)を変更することができる。例えば、消化の間、身体はエネルギーを消費して食物を腸を通って移動させ、食物を消化し、細胞内では、より多くの又はより少ない熱を生み出すために細胞代謝の効率を変更することができる。更なる実施形態では、食物摂取を変更し、協調的に及び相互的にエネルギー消費を変更する本出願に記載される弓状回路の任意及び全ての操作の方法が本明細書に開示される。エネルギー消費は、細胞代謝、タンパク質合成、代謝率、及びカロリー利用の結果である。したがって、この実施形態では、末梢投与は、増大したエネルギー消費、及びカロリー利用の減少した効率を生じる。1つの実施形態では、治療有効量の本発明に従うレセプターアゴニストが対象に投与され、そのことによりエネルギー消費を増大させる。
【0115】
治療的使用及び美容的使用の両方に関連する幾つかの実施形態では、体重制御、及び肥満の処置、減少又は予防のために、詳細には以下:体重増加を予防し及び減少させること;体重損失を誘導し及び促進すること;及びボディ・マス・インデックスにより測定される肥満を減少させることの任意の1つ又はそれ以上のために、Y2/Y4選択性アゴニストを使用することが可能である。上記のように、本発明はまた、食欲、満腹及び空腹の任意の1つ又はそれ以上を制御するため、詳細には以下:食欲を減退させ、抑制し、及び阻害すること;満腹及び満腹の感覚を誘導し、増大させ、増強し、及び促進すること;並びに空腹及び空腹の感覚を減少させ、阻害し、及び抑制することの任意の1つ又はそれ以上のための、Y2/Y4選択性アゴニストの使用に関する。本開示は更に、所望する体重、所望するボディ・マス・インデックス、所望する外観及び良好な健康状態の任意の1つ又はそれ以上を維持することにおけるY2/Y4選択性アゴニストの使用に関する。
【0116】
更なる又は代替の観点では、本発明は、減少したエネルギー代謝、摂食障害、食欲障害、過体重、肥満、過食症、神経性大食症、X症候群(メタボリック症候群)、又はそれらに関連する合併症若しくは危険(糖尿病、2型糖尿病又はインスリン非依存性糖尿病(NIDDM)、高血糖、インスリン抵抗性、グルコース寛容減損、心血管疾患、高血圧、アテローム性動脈硬化症、うっ血性心不全、卒中、心筋梗塞、血栓塞栓性疾患、高コレステロール血症、高脂血症、胆嚢疾患、変形性関節症、睡眠時無呼吸、生殖障害、例えば多嚢胞性卵巣症候群、胸部、前立腺及び結腸のガンを含む)の治療及び/又は予防のための方法に関し、この方法は、対象、例えばヒトを含む哺乳動物に、有効用量の1又はそれ以上の本明細書中に記載のようなY2/Y4選択性アゴニストを投与することを含んでなる。
【0117】
2.腸分泌過多
NPY及びPYYは共に、小腸及び大腸の両方に対して抗分泌性効果を有することが知られている。単離ヒト結腸組織についての研究により、この効果がY1レセプター及びY2レセプターの両方を通じて媒介されていることが証明され、TTXの使用により、Y2成分の大部分がニューロン成分により媒介されていることが示された(Cox & Tough 2001 Br.J.Pharmacol. 135: 1505-12)。PPはまた強力な抗分泌性効果を有し、これは上皮細胞に位置するY4レセプターにより媒介され、ニューロン機構によっては媒介されないようである(Cox & Tough 2001)。したがって、類似している効果ではあるが異なる機構により媒介される効果に起因して、Y2-Y4組合せアゴニストは、GI管に対して相加的そして相乗的でさえもある抗分泌性効果を有する。PYYの末梢投与が、回腸フィステル形成術を受けたヒト対象において、血管作用性腸ペプチドにより誘導される腸分泌の長期持続性減少を引き起こし得ることがインビボで示されている(Playfordら、1990 Lancet 335: 1555-57)。PYYは下痢に対する治療薬であり得ると結論付けられたが、本ペプチドのY1及びY2組合せアゴニスト効果の例えばナトリウム排泄増加効果及び高血圧効果はこれを予防した。本発明のY2-Y4組合せ選択性アゴニストは、分泌過多により直接引き起こされるか否かにかかわらず、種々の形態の下痢を含むGI管の分泌過多に対する治療又は保護に特に有用である。1つの特に興味深い適応症は、回腸フィステル形成術をうけた患者(この患者はしばしば大量の体液を失いつつある)で観察される分泌過多である。
【0118】
3.治療的脈管形成
血管平滑筋細胞の増殖、心室心筋細胞の肥大並びに内皮細胞の増殖及び移動に対する効果についての多くのインビトロ研究は、NPYが血管形成因子として作用し得ることを示唆している(Zukowska-Grojecら、1998 Circ.Res. 83: 187-95)。重要なことに、マウス角膜マイクロポケットモデル及びヒヨコ絨毛尿膜(CAM)アッセイの両方を使用するインビボ研究により、NPYは、他には線維芽細胞増殖因子-2(FGF-2)でのみ観察され例えば血管内皮増殖因子(VEGF)血管原性構造では観察されない血管拡張を示す血管樹状構造を生じる強力な血管形成因子であることが確証されている(Ekstrandら、2003 PNAS 100: 6033-38)。発達中のヒヨコ胚では、NPYは既存の血管からの血管発芽を誘導した。NPYのこの効果は、Y2レセプターノックアウト動物では観察されなかった。このことは、Y2レセプターがNPYの血管形成効果を担っていることを示している(Ekstrandら、2003)。この考えは、Y2レセプターが、虚血血管で高度にアップレギュレートされ、内因性のY2選択性リガンドPYY3-36を生じる酵素であるジペプチジルペプチダーゼ-IVもまたアップレギュレートされるという観察により支持されている。本発明のペプチドは全て、Y4アゴニストアゴニストでもあり、Y1アゴニストに関して貧弱な選択性であるという追加の特性を少なくとも有するY2アゴニストである。したがって、これらペプチドのY2アゴニスト特性は、これらペプチドを治療用脈管形成剤として有用とし、Y4作働作用は、高血漿レベルのY2アゴニストに付随することが知られている望まない嘔吐又は悪心を促進する効果を減少又は除去することにおいて有益である。
【0119】
例えば末梢脈管で及び冠血管における、種々の心血管疾患、例えばアテローム性動脈硬化症において、脈管形成の誘導が有益であると企図される。また、脈管形成の誘導は、心筋梗塞後の再灌流を確保するために有益であると考えられている。特に、FGF-2は、心血管疾患の患者における脈管形成の誘導のための効率的な薬剤であると提案されている。しかし、ほとんどの他の血管形成因子と同様に、FGF-2は増殖因子であり、脈管形成を提供することによって腫瘍増殖もまた刺激する能力を有する。上記のように、Y2レセプターを通じて作用するNPYは、FGF-2により誘導されるものと同様なタイプの新生血管形成を誘導する。しかし、NPYはニューロペプチドであり、古典的な増殖因子ではなく、腫瘍増殖の誘導に関係付けられていない。したがって、Y2アゴニストは、治療的脈管形成のために有用な薬剤である。しかし、本アゴニストはY1レセプター作働作用を示さないことがこの使用に特に重要である。なぜならば、この作用は望まない心血管効果を与えるからである。このことは、本発明に係るペプチドが、Y2選択性レセプターアゴニストであるか又は脈管形成の誘導に関してもまた特に有用な治療薬であることを意味する。これらは、上記のようなGAG結合モチーフを付着するように改変されている場合、特に有用である。更なる詳細な説明のために:FGF-2の作用は、他のほとんどの古典的増殖因子の作用と同様に、部分的に、細胞外マトリクス中のグリコサミノグリカン(GAG)への結合により媒介されるか又は制御される。GAGへのこの結合は、この血管形成因子が適切な空間的及び時間的様式で作用すること、及びそれが迅速に組織から洗い流されないことを確保する。このことは、治療用脈管形成における小さなペプチド及びペプチド模擬体、例えば本発明に記載されているものの使用のために、特に重要である。したがって、本発明の好ましい実施形態において、本ペプチドは、投与後に最適な脈管形成を引き起こすために、細胞外マトリクス中のGAGへ付着することを確保する1又はそれ以上のGAG結合モチーフを組み込んでいる。これは、例えば、静脈内投与又は動脈内投与より、或いは冠動脈疾患の間及び/又は急性心筋梗塞後に心臓脈管形成を誘導するために例えば冠動脈への直接投与によることができる。同様に、本化合物は、末梢血管疾患の治療のために、動脈内注射により、大腿動脈に投与することが可能である。これはまた、改善された創傷治癒を促進するために、例えば皮膚病巣への局所限局投与によることができる。脈管形成の誘導において効率的な延長されたYレセプター曝露はまた、血清アルブミン結合モチーフで改変された本発明に従うペプチドを使用することにより得ることができる。
【0120】
したがって、本発明の好ましい実施形態において、Y2/Y4選択性アゴニストは、当該ペプチドの安定性も、該ペプチドの効力及び選択性も損なわない位置に配置されるGAG結合モチーフを含んでなる。したがって、1つの実施形態では、本発明は、特に、脈管形成、例えば間欠跛行、冠動脈疾患及び心筋梗塞のような症状を有する、末梢血管疾患を含む心血管疾患のような疾患又は症状に関係する脈管形成を誘導するため;皮膚における創傷治癒、胃腸管における炎症性症状を含む炎症性症状、例えば潰瘍、結腸炎、炎症性腸疾患、クローン病などを含む組織修復プロセスを誘導するために、脈管形成系における攪乱を改変するY2/Y4選択性レセプターアゴニストの使用に関する。
【0121】
具体的実施形態は、心臓又は血管において、或いは組織、例えば胃腸粘膜を含む粘膜組織及び皮膚において、脈管形成を誘導するために、本レセプターアゴニストを使用することである。
【0122】
3.創傷治癒
遺伝子の欠失によりY2レセプターが選択的に除去されている動物において、創傷治癒が損なわれること、及び関連する新生血管形成が損なわれることが報告されている(Ekstrandら、2003 PNAS 100: 6033-38)。したがって、本発明のY2-Y4選択性アゴニストは、Y2アゴニスト特性により創傷治癒を改善するために有用である。本ペプチドは、この適応症のためには、非経口投与を含む種々の方法で投与することができる。しかし、好ましい投与経路は、例えば、溶液、懸濁液、散剤、固着剤(stick)、クリーム、軟膏、ローション、ゲル、ヒドロゲル、経皮送達系(パッチ及びプラスターを含む)などの形態での局所適用である。局所投与のためには、本ペプチドはそのまま使用することができる。しかし、本発明の好ましい実施形態において、本ペプチドは、組織でのGAGへの結合により当該ペプチドの長期持続性の局所効果を確実にするために、本明細書に記載されるGAG結合モチーフの1つ又はそれ以上で改変されている。
【0123】
4.炎症性腸疾患
PYYは、以前に、炎症性腸疾患の予防及び/又は治療について記載されている;Amylin Pharmaceuticals, IncのWO 03/105763(これは参考として本明細書中に援用される)を参照。したがって、本発明に係るアゴニストは、炎症性腸疾患の治療又は予防にも同様に効果的である。したがって、本発明はまた、このような医学的使用のための本明細書に記載のアゴニストの使用に関する。興味深い実施形態では、本ペプチドは1又はそれ以上のGAG結合モチーフを含んでなる(上記参照)。
【0124】
肥満及び関連疾患の治療又は予防のためのY2/Y4アゴニストの投与に関する追加コメント
食事の間、大量のレパートリーの胃腸ホルモン及び神経伝達物質系が、注意深く協調し、逐次的な、重複した様式で活性化される。更に、食物成分は、GIホルモンの分泌及び種々の求心性ニューロン経路の活性のみに影響するわけでなく、これら食物成分は、吸収後には、種々のホルモン及びCNSの中枢に直接影響もする。したがって、食物摂取及びエネルギー消費の調節は、高度に複雑で多面的なプロセスである。この観点で、或るホルモン、例えばY2アゴニストが、例えば食事の間に達成される血漿レベルの僅か3〜4倍を生じる様式で投与されたときに、事実、実質的に前記系に影響し得ることは驚くべきことである。
【0125】
問題の一部は、本化合物−Y2-Y4組合せアゴニスト−の投与が、絶食状態において記載されるような有効用量でなされた場合に最適な効果を有することである。種々のホルモン及びニューロン系がGI管での食物成分の存在又は食事の期待に起因して活性である状況でY2-Y4アゴニストが与えられる場合、効果が見られないか又はよりずっと小さな効果が観察される。したがって、本発明の好ましい実施形態では、Y2-Y4組合せアゴニストは、絶食状態において、有効用量で皮下、鼻又は本明細書の他の箇所に記載のその他の手段のいずれかにより投与される。本発明に関しては、用語「絶食状態」とは、対象がY2-Y4組合せレセプターアゴニストの投与前少なくとも2時間以内、例えば投薬の少なくとも3時間以内、少なくとも4時間以内、少なくとも5時間以内、少なくとも6時間以内、少なくとも7時間以内、少なくとも8時間以内、少なくとも9時間以内、少なくとも10時間以内、少なくとも11時間以内、少なくとも12時間以内に食物も飲料も摂取していないことを意味する。
【0126】
人口の或る亜群では、Y2-Y4組合せアゴニストは、Y4レセプター遺伝子における遺伝的多様性、例えば多形性に起因して、意図する作用を有しないことがある。これらレセプターにおける機能損失変異は、肥満に関連している可能性が高い。したがって、本発明の好ましい実施形態において、これら遺伝子における多形性/変異について及びそのような多形性の同定について探索するために、処置すべき対象のY4レセプター遺伝子の分析が行われる。この様な分析に基づいて、対象の最適な治療をなすことができる。例えば、正常な遺伝子型又はY2-Y4組合せアゴニストを含むY4アゴニストの機能に影響しない多形性を有する対象のみを、本アゴニストで治療すべきである。別の可能性は、薬物の最適な効果を確実にするために、損傷したレセプターを発現する対象でY2-Y4組合せアゴニストの用量を増加させることである。対象の肥満がY4レセプターの機能の損傷により引き起こされている場合、−例えば大用量の−Y2-Y4組合せアゴニストでの治療は、例えば異型接合体の患者において、−該当するレセプター機能の少なくとも幾つかが依然として残っているという条件で−代償療法の形態であると主張され得る。このような遺伝子解析を実施することができないか又は経済的に適切でない状況では、Y2-Y4組合せ選択性アゴニストの使用は、−2つの異なる標的に対する二重の効果に起因して−標的の1つが遺伝子多形性に起因して機能していないか又は減少した機能性を有する場合でさえ効果的であるので、特に有用である。
【0127】
これら化合物が処置すべき対象において意図する効果を有することを確実にするために慢性治療を開始する前に急性試験を実施して治療に感受性である対象のみが治療されることが確実としてもよい。
本発明のY2-Y4選択性アゴニストは、肥満、糖尿病及び関連する疾患の治療において、食欲及びエネルギー消費を標的する種々の他の薬物の使用と組み合せてもよい。このような薬物としては、例えばGI管リパーゼインヒビター、神経伝達物質再取込み阻害剤、カンナビノイドレセプターアンタゴニスト及び逆アゴニスト、並びに他のタイプの神経伝達物質−5HTレセプターを含むがこれに限定されない−および/又はホルモン−GLP-1、MC4、MC3を含むがこれらに限定されない−のレセプターアゴニスト又はアンタゴニスが挙げられるがこれらに限定されない。Y2-Y4選択性アゴニストが、GI管とCNSとの間の連絡における恒常性調節機構を標的している−すなわち、Y2レセプター及びY4レセプターは通常腸からの満腹媒介性ホルモンPYY及び膵臓からのPPにより標的されている−という事実に起因して、Y2-Y4組合せ選択性アゴニストでの治療を、食欲及びエネルギー消費の調節における中枢の快楽機構、例えば報償系の一部であるCB1レセプターを標的する薬物での治療と組み合せることは特に有益である。したがって、肥満及び関連する疾患の治療における、CB1アンタゴニストとの組合せでのY2-Y4選択性アゴニストの使用は、本発明の好ましい実施形態である。
【0128】
投薬
本発明に従うY2/Y4レセプターアゴニストの治療有効量は、用いる具体的アゴニスト、治療すべき対象の年齢、体重及び状態、治療すべき症状又は疾患の重篤度及びタイプ、投与の方式、並びに適用する組成物の強度に依存する。例えば、Y2/Y4レセプターアゴニストの治療有効量は、約0.01μg/キログラム(kg)体重から約1g/kg体重まで、例えば約1μgから約5mg/kg体重まで、又は約5μgから約1mg/kg体重まで変えることができる。別の実施形態では、本レセプターアゴニストは、対象に0.5〜135ピコモル(pmol)/kg体重、又は約72pmol/kg体重で投与する。1つの具体的な、限定的でない例では、約5〜約50nmolが皮下注射として投与され、例えば約2〜約20nmol、又は約1.0nmolが皮下注射として投与される。正確な用量は、使用する具体的化合物(例えば本レセプターアゴニスト)の効力、対象の年齢、体重、性別及び生理学的状態に基づいて、当業者により容易に決定される。アゴニストの用量は、PYY3-36の治療有効用量とモル等価であり得る。量は、日々の、1日おきの、週ごとの、1週間おきの、毎月の、又は他の任意の適切な頻度の投与のために、1つの用量又は幾つかの用量に分割することができる。通常、投与は1日に1回又は2回である。
【0129】
投与方法
本アゴニストは、任意の経路(経腸投与(例えば経口投与)又は非経口経路を含む)により投与することができる。具体的実施形態では、非経口経路が好ましく、これには、静脈内、動脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、胸骨内の注射及び注入、並びに舌下、経皮、局所、経粘膜(鼻経路を含む)による投与、又は吸入による投与(例えば肺吸入)が挙げられる。具体的な実施形態において、皮下及び/又は鼻の投与経路が好ましい。
【0130】
本レセプターアゴニストは、適切なビヒクル中に分散されたそのもので投与することができ、或いは、適切な医薬組成物又は美容組成物の形態で投与することができる。このような組成物もまた本発明の範囲内である。以下で、適切な医薬組成物を記載する。当業者は、そのような組成物が美容的使用にも適切であり得ることを理解している。或いは、当業者は、適切な美容上許容される賦形剤の使用により医薬組成物を美容組成物に調整する方法を理解している。
【0131】
医薬組成物
本発明に従うレセプターアゴニスト(「化合物」とも称する)は、医薬品又は化粧品における使用のためには、通常、具体的化合物又はその誘導体を1又はそれ以上の生理学的又は医薬的に許容される賦形剤と共に含んでなる医薬組成物の形態で提供される。
【0132】
本化合物は、哺乳動物、例えば人を含む動物に、任意の簡便な投与経路、例えば経口経路、口腔粘膜経路、鼻経路、眼経路、肺経路、局所経路、経皮経路、膣経路、直腸経路、眼経路、非経口経路(とりわけ、皮下経路、筋肉内経路、及び静脈内経路を含む、上記参照)のような投与経路により、個々の目的に効果的である用量で投与してもよい。当業者は、適切な投与経路を選択する方法を理解している。上記のように、非経口投与経路が好ましい。特定の実施形態では、本レセプターアゴニストは、皮下に及び/又は鼻に投与される。皮下注射が容易に自己投与できることは当該分野で周知である。
【0133】
特定の投与経路に適切な組成物は、医療実務者により各患者個人個人について容易に決定される。種々の医薬的に許容されるキャリア及びそれらの製剤は、標準的な製剤専門書、例えばE. W. MartinによるRemington's Pharmaceutical Sciencesに記載されている。
【0134】
本発明に従う化合物を含んでなる医薬組成物は、固体、半固体、又は流体の組成物の形態であり得る。非経口使用のためには、本組成物は、通常、流体組成物の形態であり、移植のためには半固体の形態か又は固体形態である。
【0135】
滅菌溶液又は分散液である流体組成物は、例えば静脈内、筋肉内、髄腔内、硬膜外、腹腔内又は皮下の注射又は注入により利用することができる。本化合物はまた、投与の前又は投与時に、例えば滅菌水、生理食塩水又は他の適切な滅菌注射可能媒体を用いて溶解又は分散され得る滅菌固体組成物として製造されてもよい。
【0136】
流体形態の組成物は、溶液、エマルジョン(ナノエマルジョンを含む)、懸濁液、分散液、リポソーム組成物、混合液、スプレー、又はエアロゾルであり得る(最後の2つのタイプは鼻投与に特に該当する)。
【0137】
溶液又は分散液用の適切な媒体は、通常、水又は医薬的に許容される溶媒、例えば油(例えばごま油又はピーナッツ油)のような溶媒又は例えばプロパノール又はイソプロパノールのような有機溶媒をベースにする。本発明に従う組成物は、医薬的に許容される賦形剤、例えばpH調整剤、例えば組成物の等張性を生理学的に許容されるレベルに合わせるための浸透圧的に活性な薬剤、粘性調整剤、懸濁剤、乳化剤、安定化剤、防腐剤、抗酸化剤などを更に含んでなり得る。好ましい媒体は水である。
【0138】
鼻投与用の組成物はまた、適切な非刺激性ビヒクル、例えばポリエチレン グリコール、グリコフロール(glycofurol)などのようなビヒクル、並びに当業者に周知の吸収増強剤(例えば、Remington's Pharmaceutical Scienceを参照)を含有してもよい。
【0139】
非経口投与のためには、1つの実施形態において、本レセプターアゴニストは、一般には、注射可能な単位剤形(溶液、懸濁液、又はエマルジョン)の所望の純度の当該レセプターアゴニストを、医薬的に許容される賦形剤又はキャリア(すなわち、用いる投薬量及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、組成物の他の成分と適合性であるもの)と混合することにより製剤することができる。
【0140】
一般に、製剤は、本レセプターアゴニストを均一に及び親密に液体キャリア又は微細に分割した固体キャリア又はその両者と接触させることにより製造する。次いで、必要であれば、生成物を所望の製剤に成形する。キャリアは、好ましくは非経口キャリア、より好ましくはレシピエントの血液と等張性の溶液である。このようなキャリアビヒクルの例としては、水、生理食塩水、リンゲル液、及びデキストロース溶液が挙げられる。非水性ビヒクル、例えば不揮発性油及びエチルオレエート、並びにリポソームもまた本明細書中において有用である。本明細書に記載のペプチドの両親媒性に起因して、適切な形態としては、ミセル状製剤、リポソーム、及び1又はそれ以上の適切な脂質、例えばリン脂質などを含んでなる他のタイプの製剤なども挙げられる。
【0141】
好ましくは、これらは、水性キャリア中、例えば、約3.0〜約8.0のpH、好ましくは約3.5〜約7.4のpH、3.5〜6.0のpH、又は3.5〜約5のpHの等張性緩衝溶液中に懸濁する。有用な緩衝液物質としては、酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、カルボン酸塩、例えばクエン酸ナトリウム-クエン酸及びリン酸ナトリウム-リン酸、及び酢酸ナトリウム/酢酸緩衝液などが挙げられる。
【0142】
本組成物は、より少ない頻度の投与レジメンを得るために、投与後の本レセプターアゴニストが制御又は延長された送達をされるように設計されてもよい。通常、1〜2の日々の投与を含む投薬レジメンが適切であると考えられるが、他の投薬レジメン、例えばより頻繁な投薬レジメン及びより頻度の少ない投薬レジメンもまた本発明の範囲に含まれる。本レセプターアゴニストの延長された送達を達成するためには、投与部位でデポー(これから本レセプターアゴニストが循環系中にゆっくりと放出される)を形成するために例えば脂質又は油を含む適切なビヒクルを用いてもよいし、又はインプラントを使用してもよい。この点に関して適切な組成物としては、その中に本レセプターアゴニストが組み込まれているリポソーム及び生物分解性粒子が挙げられる。
【0143】
固体組成物が必要とされる状況では、固体組成物は、錠剤、例えば従来型の錠剤、沸とう錠、コーティング錠、融解錠(melt tablet)又は舌下錠、ペレット、散剤、顆粒剤(granules、granulates)、粒子状物質(particulate material)、固体分散剤又は固溶体の形態であってもよい。
【0144】
半固体形態の組成物は、チューインガム、軟膏、クリーム、リニメント剤、パスタ剤、ゲル又はヒドロゲルであり得る。
本発明に従う医薬組成物の他の適切な剤形は、膣坐剤(vagitory)、坐剤、プラスター剤、パッチ剤、錠剤、カプセル剤、薬袋剤(sachet)、トローチ剤、デバイスなどであり得る。
剤形は、本化合物を自由に又は制御された様式(例えば錠剤に関しては適切なコーティングによる)で放出するように設計されてもよい。
【0145】
本医薬組成物は、治療有効量の本発明に従う化合物を含んでなり得る。
本発明の医薬組成物中の本発明の化合物の含有量は、例えば、医薬組成物の約0.1〜約100% w/wである。
本医薬組成物は、医薬製剤の当業者に周知の任意の方法により製造され得る。
【0146】
医薬組成物において、本化合物は、通常、医薬賦形剤、すなわち治療上不活性な物質又はキャリアと組み合わされる。
キャリアは、所望の剤形及び投与経路に依存して、幅広い種々の形態をとり得る。
医薬的に許容される賦形剤は、例えば、充填剤、結合剤、崩壊剤、希釈剤、流動促進剤(glidant)、溶媒、乳化剤、懸濁剤、安定化剤、増強剤、香料、着色料、pH調整剤、緩染剤、湿潤剤、表面活性剤、防腐剤、抗酸化剤などであり得る。詳細は、薬学ハンドブック、例えばRemington's Pharmaceutical Science又はPharmaceutical Excipient Handbookに見出すことができる。
【実施例】
【0147】
合成
本発明のペプチド性アゴニストは、自動化ペプチド合成機又は伝統的なベンチ合成のいずれかを用いて、固相ペプチド合成により合成されてもよい。固相支持体は、例えば、クロロトリチル(Cl)樹脂又はWang(OH)樹脂であり得る。これらは共に商業的に容易に入手可能である。これら樹脂の活性基は、N-Fmocアミノ酸のカルボキシル基と容易に反応し、そのことによってポリマーに共有結合的に結合する。樹脂に結合したアミンは、ピペリジンへの曝露により脱保護され得る。次いで、第2のN保護アミノ酸が、その樹脂-アミノ酸にカップリングされ得る。所望の配列が得られるまでこれらの工程を繰り返す。合成の最後に、樹脂結合保護ペプチドを脱保護し、トリフルオロ酢酸(TFA)で樹脂から切断し得る。樹脂結合アミノ酸鎖への新たなアミノ酸のカップリングを容易にする試薬の例は:テトラ-メチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)、O-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、O-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、1H-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)である。
【0148】
固相化学よりむしろ溶液化学によるペプチド合成もまた実現可能である。
例えば上記のようなGAG結合モチーフ又は他のモチーフを導入するための、ペプチド鎖中のアミノ酸の側鎖アミノ基又はカルボキシル基の改変は、反応に関与しない他の反応性側鎖基の選択的な保護及び脱保護という単純なことにすぎない。
【0149】
(実施例)
本発明のアゴニストの合成に適用可能な方法を説明するために、配列[Gln34]PPの製造を記載する。
【0150】
合成の概要
【表3】

【0151】
化学物質
以下の出発物質及び溶媒を使用した:
出発物質
Fmoc-Rink-TentaGel-樹脂
Fmoc-Ala-OH.H2O
Fmoc-Arg(Pbf)-OH
Fmoc-Asn(Trt)-OH
Fmoc-Asp(OtBu)-OH
Fmoc-Gln(Trt)-OH
Fmoc-Glu(OtBu)-OH
Fmoc-Gly-OH
Fmoc-Ile-OH
Fmoc-Leu-OH
Fmoc-Met-OH
Fmoc-Pro-OH
Fmoc-Thr(tBu)-OH
Fmoc-Tyr(tBu)-OH
Fmoc-Val-OH
【0152】
合成及び精製に使用した溶媒及び試薬
酢酸 溶媒
無水酢酸 試薬
酢酸アンモニウム 試薬
ヨウ化アンモニウム 試薬
ジイソプロピルカルボジイミド(DIC) 試薬
ジメチルホルムアミド(DMF) 溶媒
ジチオトレイトール(DTT) 試薬
エタノール 溶媒
1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt) 試薬
イソプロパノール 溶媒
N-メチルモルホリン(NMM) 試薬
ピペリジン 試薬
トリフルオロ酢酸(TFA) 溶媒
【0153】
Rink-TentaGel-樹脂上でのFmoc-SPPSにより必要な生成物を組み立てた。側鎖保護を有するアミノ酸は:Arg(Pbf)、Asn(Trt)、Asp(OtBu)、Gln(Trt)、Glu(OtBu)、Thr(tBu)及びTyr(tBu)であった。
【0154】
カップリングは、活性化にDIC及びHOBtを使用する種々のアミノ酸等価物を有するDMF中で実施した。各カップリングに続けて無水酢酸及びNMMを用いてキャッピングした。Kaiser/ニンヒドリン又はクロラニル検査のいずれかを用いて各カップリングのモニターを行った。各カップリングサイクルの間に、Fmoc基をDMF中のピペリジンを用いて除去した。
【0155】
保護したペプチド-樹脂を、TFAにより支持体から切断し、酢酸アンモニウム水で中和し、粗製生成物を製造した。処理後、樹脂を濾過により除去した。
粗製生成物をシリカベース又はポリスチレンベースの逆相材料を用いる分取HPLCにより精製した。次いで、このペプチドを逆相クロマトグラフィーにより脱塩した。ペプチド溶液を蒸発により濃縮し、濾過した後に凍結乾燥により単離した。
構造を、衝突誘起解離質量分析/質量分析(CID MS/MS)、アミノ酸分析、LC-MS、及びキラル純度により確認した。純度はHPLC、キラル純度により評価した。
【0156】
ペプチドの化学分析:
上記の方法により合成した本発明のペプチドの幾つかについての分析データを、使用した方法及び達成した結果を説明することにより下記に詳細に示す:
【0157】
データ
【表4】

【0158】
分析HPLC法A
カラム = Vydac C18 ペプチド-タンパク質カラム、250×4.6mm
緩衝液A = 0.05% TFA(水中)
緩衝液B = 0.05% TFA(100% MeCN中)
勾配 = 20分間で0%B〜60%B
流量 = 1.00mL/分
波長 = 215nm
質量分析 = MALDI-TOF(マトリクスとしてゲンチシン酸又はαシアノヒドロキシ桂皮酸)
【0159】
分析HPLC法B
カラム = Hypersil ODS-2、250×4.6mm
緩衝液A = 0.1% TFA(100% MeCN中)
緩衝液B = 0.1% TFA(100%水中)
勾配 = 25分間で24%A〜35%A
流量 = 1.00mL/分
波長 = 220nm
質量分析 = ESI [ネブライザーガスフロー:1.5L/分;CDL -20.0v;CDL temp:250℃;Block temp:200℃;プローブバイアス:+4.5kv;検出器:1.5kv;T. フロー:0.2mL/分;B. conc:50% H20/50% CAN.]
【0160】
分析HPLC法C
カラム = Vydac C18 218TP54、250×4.6mm
緩衝液A = 20mLのMeCN及び2mLのTFA(水中)(総容量2000mL)
緩衝液B = 2mLのTFA(水中)(総容量2000mL)
勾配 = 27分にわたって25%B〜75%B
流量 = 1.00mL/分
波長 = 215nm
注入容量 = 10μL
【0161】
本発明に係るY2/Y4選択性アゴニストの製造に使用し得る合成法の更なる説明として、以下のプロトコルを例としてのみ示す:
【0162】
[Cys2,Lys13,D-Cys27,Gln34]PP(配列番号:30)及びそのアナログの合成
以下に、環状Y2選択性ペプチド[Cys2,Lys13,D-Cys27,Gln34]PP(配列番号:30)の合成及びGAG結合モチーフ、血清タンパク質結合モチーフ又はポリエチレングリコール部分のいずれかがLys13のεアミノ基に付着しているアナログの合成を記載する。
【0163】
一般に、側基保護は、以下を除いて標準的なFmocである:
Arg = Fmoc Arg(Pbf)-OH
Asn、Gln = Fmoc Asn(Trt)-OH
Thr、Ser、Asp、Glu、Tyr = tButyl
Lys = Fmoc Lys(tBoc)-OH
Ala-Ser 22-23 = Fmoc AlaSer 偽プロリン
【0164】
[Cys2,Lys13,D-Cys27,Gln34]PPの場合、選択的な脱保護を得るために、以下の特別な保護基を使用した:
Lys 13 = Fmoc Lys(Dde)-OH
Cys 27 = Fmoc DLys(Trt)-OH
【0165】
このペプチドは、固相合成により、PAL Peg-PS樹脂(切断に際して生物学的に重要なカルボキシアミド基を生じる樹脂)上で、5倍モルの試薬過剰でのFmoc化学を使用して合成する。カップリングは、DMFを溶媒として使用するHCTUスルーアウトにより実施する。各カップリング工程後のFmoc除去は、DMF中20%ピペリジンで10〜15分間実施する。カップリングは、定量的ニンヒドリンアッセイにより各工程後に確認する。或る場合には、二重カップリングを実施し得る。
【0166】
完全長ペプチドの合成後、ペプチドを依然として樹脂に付着させたままで、Lys13のεアミノ基上の保護基を、DMF中2%ヒドラジンでの15〜20分間の処理により選択的に除去する。
続いて、樹脂を異なるバッチに分割して、非誘導体化ペプチド及び3つの異なるモチーフ改変ペプチドを作製する。
【0167】
1.[Cys2,Lys13,D-Cys27,Gln34]PP(配列番号:30)−「マザーペプチド」−を樹脂から切断し、95%トリフルオロ酢酸:2.5%水:2.5%トリプロピルシランでの2〜3時間の処理により脱保護する。
酢酸アンモニウム(pH8.5〜9)中に1mg/ml未満のペプチドを溶解し、エルマンアッセイにより遊離チオールが検出できなくなるまで24〜48時間撹拌することによる空気酸化によって、Cys2とD-Cys27との間の分子内安定化性ジスルフィド橋架けを生成する。
ペプチドを、逆相HPLC:Vydac 300Åカラム、250mm×10mmカラムにより精製し、20分間にわたって(2ml/分)、30〜80%の緩衝液Bの勾配中、(緩衝液A = 水中0.05%TFA;緩衝液B = 60%MeCN:40%水:0.05%TFA)で溶出させる。OD 215nMを測定し、特定ペプチドを含有する溶出液を集めて凍結乾燥する。
ペプチドの構造を質量分析、アミノ酸分析により、そして望ましい場合にはアミノ酸配列分析によっても確認する。
【0168】
2.[Cys2,N-(8-(8-γグルタモイルアミノ-オクタノイルアミノ)-オクタノイル)-Lys13,D-Cys27,Gln34]PP(配列番号:31) − 血清アルブミン結合モチーフを付着するために、ペプチドを依然として樹脂に付着させたままで、保護されたアミノオクタン酸を2回使用し、続いて保護されたγグルタミン酸を使用するペプチド合成によって、保護性Dde基の除去後のLys13の遊離εアミノ基に8-(8-γグルタモイルアミノ-オクタノイルアミノ)-オクタノイル基を連結する。
「マザーペプチド」について上に記載したように、このモチーフ改変ペプチドを樹脂から切断し、脱保護し、環化し、そして精製する。
【0169】
3.フルオレセイン-[Cys2,N-[(Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala)3]-Lys13,D-Cys27,Gln34]PP(配列番号:32) − GAG結合モチーフを付着するために、上記で一般的に記載したような標準的なFmoc化学を用いて、Dde基の除去後に、依然として樹脂に付着した[Cys2,Lys13,D-Cys27,Gln34]PPペプチド上のLys13の遊離εアミノ基を使用するペプチド合成により段階的にこのモチーフを構築する:このように付着したGAG結合配列はAla-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Alaである。フルオレセインタグ基を付加した。インビトロ及びインビボでの分析目的に、フルオレセインタグ基を5,6異性体として−NHSエステル、10倍過剰を72時間にわたって−最後のGAG結合配列のN末端に付加する。
【0170】
「マザーペプチド」に関して上で記載したように、GAG結合モチーフ改変ペプチドを樹脂から切断し、脱保護し、環化し、そして精製する。
【0171】
4.[Cys2,N-[N'-(21-アミノ-4,7,10,13,16,19-ヘキサオキサヘンエイコサノイル)]-γグルタモイル-Lys13,D-Cys27,Gln34]PP(配列番号:33)
− Y2-Y4選択性ペプチドにポリエチレングリコール部分を付着するために、樹脂に依然として付着している[Cys2,Lys13,D-Cys27,Gln34]PPペプチドに対して、Dde基の除去後にLys13の遊離εアミノ基を使用するペプチド合成により、保護された21-アミノ-4,7,10,13,16,19-ヘキサオキサヘンエイコサン酸を、続いて保護されたγ-グルタミン酸を結合する。
「マザーペプチド」について上で記載したように、PEG化ペプチドを樹脂から切断し、脱保護し、環化し、精製する。
【0172】
上記の方法を用いて、以下の本発明のアゴニストを例として合成する:
[N-(N'-ヘキサデカノイル)-γグルタモイル-Lys13,Gln34]PP(配列番号:34)
[N-(Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala)3-Lys18,Gln34]PP(配列番号:35)
[N-PEG5000-Lys13,Gln34]PP(配列番号:36)
[Ile31,Gln34]PP(配列番号:5)
[Val31,Gln34]PP(配列番号:6)
[Leu30,Gln34]PP(配列番号:7)
[Nle30,Gln34]PP(配列番号:8)
[Leu28,Gln34]PP(配列番号:9)
[His26,Gln34]PP(配列番号:10)
[Ile3,Gln34]PP(配列番号:11)
[Ala1,Glu4,Arg26,(Met30又はNle30)]PYY(配列番号:12)
[Ala1,Glu4,N-(N'-ヘキサデカノイル)-γグルタモイル-Lys13,Arg26,Nle30]PYY(配列番号:37)
[Ala1,Glu4,N-(Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala)3-Lys13,Arg26,Nle30]PYY(配列番号:38)
[Ala1,Glu4,N-PEG5000-Lys13,Arg26,Nle30]PYY(配列番号:39)
[Ala1,Glu4,Arg26(Met30又はNle30)]NPY(配列番号:13)
[Ala1,Glu4]PYY(配列番号:14)及び[Ala1,Glu4]NPY(配列番号:15)
[Arg26,(Met30又はNle30)]PYY(配列番号:16)及び[Arg26,(Met30又はNle30)]NPY(配列番号:17)
[Glu4,(Met30又はNle30)]PYY(配列番号:18)及び[Glu4,(Met30又はNle30)]NPY(配列番号:19)
[Glu4,Arg26]PYY(配列番号:20)及び[Glu4,Arg26]NPY(配列番号:21)
[Cys2,D-Cys27,Gln34]PP(配列番号:22)
[Cys2,Aoc5-24,D-Cys27,Gln34]PP(配列番号:23)
【0173】
生物学的アッセイ及び結果
I.ペプチド親和性及び効力を決定するためのインビトロアッセイ
ヒトY2レセプター親和性アッセイ
ヒトY2レセプターに対する試験化合物の親和性は、標準的なリン酸カルシウムトランスフェクション法を用いてヒトY2レセプターで一過性にトランスフェクトしたCOS-7細胞において、125I-PYY結合を使用する競合結合アッセイで決定する。
トランスフェクションの1日後に、放射性リガンドの5〜8%の結合を目的として、トランスフェクトしたCOS-7細胞を培養プレートにウェル当たり40×103細胞の密度で移す。トランスフェクションの2日後、25pMの125I-PYY(Amersham、Little Chalfont、UK)を用いて競合結合実験を3時間4℃にて行う。結合アッセイは、1mM CaCl2、5mM MgCl2、及び0.1%(w/v)ウシ血清アルブミン並びに100μg/mlバシトラシンを補充した0.5mlの50mM Hepes緩衝液(pH7.4)中で行う。非特異的結合は、1μMの未標識PYYの存在下での結合として決定する。細胞を0.5mlの氷冷緩衝液中で2回洗浄し、0.5〜1mlの溶解緩衝液(3M酢酸中8M尿素、2% NP40)を加え、結合した放射能をガンマカウンターでカウントする。測定は2連(in duplicate)で行う。定常状態の結合は、これら条件下での放射性リガンドで達成される。
標準的な薬理学的データを扱うソフトウェアPrism 3.0(graphPad Sofware、San Diego、USA)を用いてEC50値を算出した。
【0174】
ヒトY4レセプター親和性アッセイ
ヒトY4形質転換COS-7細胞を使用し、競合アッセイに125I-PPを使用し、PPを非特異的結合の決定に使用する以外はY2親和性アッセイについてと同様なプロトコル。
【0175】
ヒトY1レセプター親和性アッセイ
ヒトY1形質転換COS-7細胞を使用し、ウェルあたり1.5×106細胞の密度で培養プレートに移し、競合アッセイに125I-NPYを使用し、NPYを非特異的結合の決定に使用する以外はY2親和性アッセイについてと同様なプロトコル。
【0176】
上記親和性アッセイにおいて、NPY、PYY、PYY3-36、PP及び本発明の[Gln45]PP、[Ile31,Gln34]PP、[Val31,Gln34]PP、[Arg26,Met30]PYY及び[Glu4,Arg26]PYYアゴニストを試験した結果を表1に示す:
【表5】

【0177】
ヒトY2レセプター効力アッセイ
ヒトY2レセプターに対する試験化合物の効力を、ヒトY2レセプター及び無差別Gタンパク質、Y2レセプターがGq経路を通じて共役してイノシトールリン酸代謝回転の増加を導くことを確実にするGqi5で一過性にトランスフェクトしたCOS-7細胞において用量-応答実験を実施することにより決定する。
ホスファチジルイノシトール代謝回転 − トランスフェクションの1日後、COS-7細胞を、10%胎仔ウシ血清、2mMグルタミン及び0.01mg/mlゲンタマイシンを補充したウェルあたり1mlの培地中で5μCiの[3H]-myo-inositol(Amersham、PT6-271)と24時間インキュベートする。細胞を、140mM NaCl、5mM KCl、1mM MgSO4、1mM CaCl2、10mMグルコース、0.05%(w/v)ウシ血清を補充した緩衝液(20mM HEPES、pH7.4)中で2回洗浄し;10mM LiClを補充した37℃の0.5ml緩衝液中で30分間インキュベートする。種々の濃度のペプチドで45分間37℃にての刺激後、細胞を10%氷冷過塩素酸で抽出し、続いて氷上で30分間インキュベートする。得られる上清をHEPES緩衝液中のKOHで中和し、生成された[3H]-イノシトールリン酸をBio-Rad AG 1-X8アニオン交換樹脂上で精製し、ベータカウンターでカウントする。測定は2連で行う。EC50値を、標準的な薬理学的データを扱うソフトウェアPrism 3.0(graphPad Sofware、San Diego、USA)を用いて算出した。
【0178】
ヒトY4レセプター効力アッセイ
ヒトY4形質転換COS-7細胞を使用する以外はY2効力アッセイと同様なプロトコル。
【0179】
ヒトY1レセプター効力アッセイ
ヒトY1形質転換COS-7細胞を使用する以外はY2効力アッセイと同様なプロトコル。
【0180】
上記効力アッセイにおいて、NPY、PYY、PYY3-36、PP及び本発明のアゴニスト[Gln45]PP、[Ile31,Gln34]PP、[Val31,Gln34]PP(配列番号:6)、[Ala1,Glu4,Arg26,Met30]PYY、[Leu30,Gln34]PP(配列番号:7)及び[His26,Gln34]PP(配列番号:10)を試験した結果を表2に示す:
【表6】

【0181】
II.タンパク質安定性を決定するためのインビトロアッセイ
多くの本発明のペプチドについての重要な尺度は、タンパク質安定性、特に、例えばPYY3-36と比較して増加した安定性又は完全長PYY及びPPと比較してさえ増加した安定性を有するように設計されているペプチドとして酵素による分解に対する安定性に関するタンパク質安定性である。
【0182】
PP折り畳みの安定性 − これは、例えば記載(O'Hare, M. & Schwartz, T.W. 1990 In Degradation of Bioactive Substances: Physiology and Pathophysiology. J.Henriksen編, CRC Press, Boca Raton, Fl.)されているように比較的可橈性であるループ領域で切断する、エンドペプチダーゼによる分解に対するペプチドの安定性として決定する。モデル酵素として、エンドプロテイナーゼAsp-N(Pierce)を使用する。この酵素はAsp残基のN末端で、例えばPP中の残基9と残基10(Asp)との間で切断する。ペプチドを、室温の0.01M Tris/HCl緩衝液(pH7.5)中で、製造業者により指示されるような有効な用量のエンドペプチダーゼAsp-Nとインキュベートし、24時間にわたって種々の期間後にサンプルを取り出す。サンプルをHPLCにより分析し、ペプチドの徐々の分解を時間とともに追跡する。ペプチドを、安定性について、PYY、PYY13-36及びPPと比較する。
【0183】
アミノペプチダーゼに対する安定性 − これは、エンドペプチダーゼについて上記と同様ではあるが、代わりにアミノペプチダーゼN及びジペプチジルペプチダーゼIVを使用して決定する。これらアミノペプチダーゼに対して耐性であるように幾つかのペプチド、例えばPYY2-36、N末端がアセチル化されたそのペプチド誘導体、及びN末端にアルブミン結合部分を有してアルキル化されたそのペプチド誘導体を特別に設計する。ペプチドを、安定性に関して、PYY、PYY3-36及びPPと比較する。
【0184】
III.グルコサミノグリカン(GAG)への結合を決定するためのインビトロアッセイ
HiTrapヘパリン-セファロースカラム(Amersham Pharmacia Biotech、Uppsala、Sweden)又はヘパリンHPLCカラム(これらは2mM DTT及び1mM MgEDTAを含有する50mMリン酸ナトリウム(pH7.3)中の0〜0.5M NaClの50分間の線形勾配で1ml/分の流量にて溶出される)のいずれかを使用して、固定化したヘパリン、すなわち、親和性マトリクスとしてのヘパリンアガロースを使用するインビトロアッセイで、GAGに結合する試験化合物の能力をモニターする。再生のために、カラムを緩衝液A中1M NaClで51〜55分洗浄した。
【0185】
IV.食欲、食物摂取及び体重に対するペプチドの効果を決定するためのインビボ研究
マウスにおける急性食物摂取に対する、Y1選択性アゴニストを超えるY2/Y4選択性アゴニストの効果
ddy系統のマウス(34〜37g及び8〜9週齢)(Japan SLC、Shizuuoka、Japan)を使用した。マウスを調節された環境(22℃、55%湿度)下、AM7時に点灯する12時間の明暗サイクルで個別に飼育した。食餌及び水は、実験直前以外は自由摂取とした(下記参照)。実験開始前1週間の間に皮下注射に対してマウスを慣れさせた。実験では各マウスを1回使用した。投与直前に、ペプチドを生理学的食塩水に希釈し、100μL容量で皮下投与した。結果は平均±SEとして表す。分散分析の後にBonferroni検定を使用して群間の差を評価した。
【0186】
マウスを、実際の試験の前16時間、水は自由に摂取させるが絶食させ、翌日のAM10時に実験を開始した。標準的な食餌を使用し(CLEA Japan, Inc.、Tokyo、Japan)、投与後、最初に予め測定した食物から食べ残された食物を減算し、こぼれた食物を確認することにより食物摂取を測定した。各群8匹の動物に、生理食塩水、3μgのPYY3-36、30μgのPYY3-36、10μgの試験化合物、又は100μgの試験化合物のいずれかを投与した。
試験化合物として[Gln34]-PP(図ではTM30333とする)についての結果を図2に示す。
【0187】
【表7−1】

【0188】
【表7−2】

【0189】
【表7−3】

【0190】
【表7−4】

【0191】
【表7−5】

【図面の簡単な説明】
【0192】
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(i)-X-Thr-Arg-X3-Arg-Tyr-C(=O)NR1R2(式中、R1及びR1は独立して水素又はC1-C6アルキルであり、XはVal、Ile、Leu又はAlaであり、X3はGln又はAsnである)、又はThrがHis又はAsnにより置換され、及び/又はTyrがTrp又はPheにより置換され、及び/又はArgがLysにより置換されたその保存的置換変形体により表されるC末端Yレセプター認識アミノ酸配列、及び
(ii)H2N-X1-Pro-X2-(Glu又はAsp)-(式中、X1は存在しないか又は任意のアミノ酸残基であり、X2はLeu又はSerである)、又はそのLeu又はSerの保存的置換体により表されるN末端Yレセプター認識アミノ酸配列
を有するPP折り畳みペプチド又はPP折り畳みペプチド模擬体であるか、又は
(b)上記(i)に規定したC末端Yレセプター認識アミノ酸配列、及び任意に、上記(ii)に規定したYレセプター認識アミノ酸配列で始まるN末端配列を含んでなり、
前記C末端Yレセプター認識配列は、前記ヘキサペプチド配列のN末端に隣接する少なくとも1つのαヘリックスターンを含んでなる両親媒性アミノ酸配列ドメインに融合し、
前記ターンは共有結合性分子内連結によりヘリックス形状に拘束されている、
Y1レセプターよりY2レセプター及びY4レセプターについて選択性であるYレセプターアゴニストの、Y2レセプター及び/又はY4レセプターの活性化に応答性の症状の治療用組成物の製造における使用。
【請求項2】
前記アゴニストの前記C末端Yレセプター認識アミノ酸配列において、R1及びR2が各々水素である請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記アゴニストの前記C末端Yレセプター認識アミノ酸配列において、残基XがVal又はIleである請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記アゴニストが-XA-X-Thr-Arg-X3-Arg-Tyr-C(=O)NR1R2(式中、残基XAは非塩基性且つ非酸性であり、配列-X-Thr-Arg-X3-Arg-Tyr-C(=O)NR1R2は上記と同義である)により表されるC末端Yレセプター認識配列を含んでなる請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記アゴニストの前記C末端Yレセプター認識配列において、前記非塩基性且つ非酸性のアミノ酸残基がLeu、Met、Ile、Val又はAlaである請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記アゴニストが-XC-Tyr-XB-Asn-XA-X-Thr-Arg-X3-Arg-Tyr-C(=O)NR1R2(式中、配列-XA-X-Thr-Arg-X3-Arg-Tyr-C(=O)NR1R2は請求項4又は5に定義したとおりであり、XCはArg又はLysであり、XBはIle、Leu又はValである)により表されるC末端ウンデカペプチドを含んでなる請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前記アゴニストが-XC-Tyr-XB-Asn-XA-X-Thr-Arg-X3-Arg-Tyr-C(=O)NR1R2(式中、配列-XA-X-Thr-Arg-X3-Arg-Tyr-C(=O)NR1R2は請求項4又は5に定義したとおりであり、XCはHis、Asn又はGlnであり、XBはIle、Leu又はValである)により表されるC末端ウンデカペプチド配列を含んでなる請求項1に記載の使用。
【請求項8】
前記アゴニストの前記C末端Yレセプター認識アミノ酸配列において、X3がGlnである請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記アゴニストがC末端ウンデカペプチド配列-Arg-Tyr-Leu-Asn-(Leu又はMet)-Val-Thr-Arg-Gln-Arg-Tyr-C(=O)NH2を含んでなる請求項1に記載の使用。
【請求項10】
前記アゴニストがC末端ウンデカペプチド配列-His-Tyr-(Ile又はLeu)-Asn-Met-Leu-Thr-Arg-Gln-Arg-Tyr-C(=O)NH2を含んでなる請求項1に記載の使用。
【請求項11】
前記アゴニストの前記N末端Yレセプター認識アミノ酸配列において、残基X1が存在する場合にはAlaであり、又は存在しない請求項1〜10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
前記アゴニストのN末端Yレセプター認識アミノ酸配列において、残基X2が存在する場合にはLeu、Ile又はSerである請求項1〜11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
前記N末端配列がH2N-Ala-Pro-Leu-Glu-又はH2N-Pro-Leu-Glu-である請求項1〜10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
前記アゴニストがN末端Yレセプター認識配列を有するタイプ(b)であり、PP折り畳み構造を有し、該構造において、前記ヘリックスターン拘束性分子内連結が、前記両親媒性ドメイン中のアミノ酸残基から、該両親媒性ドメインに逆平行に伸びるPP折り畳みペプチドのポリプロリンドメインに対応する該アゴニストのN末端部分の連結点まで伸びている請求項1〜13のいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
前記アゴニストにおいて、前記ヘリックスターン拘束性分子内連結がジスルフィド連結又はラクタム連結である請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記アゴニストにおいて、前記アゴニスト中の前記共有結合性分子内連結が、前記αヘリックス中のL-Cys残基又はD-Cys残基と、前記両親媒性ドメインに逆平行に伸びるPP折り畳みペプチドのポリプロリンドメインに対応する該アゴニストのN末端部分に位置するCys残基との間に形成されたジスルフィド連結である請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記アゴニストがタイプ(b)であり、該アゴニストにおいて、前記ヘリックスターン拘束性分子内連結が前記ヘリックスターン中のLys残基とGlu残基との間に形成されたか、又は該ヘリックスターン中のLys残基又はGlu残基と前記C末端Yレセプター認識配列中のGlu残基又はLys残基との間に形成されたラクタム連結である請求項1〜12のいずれか1項に記載の使用。
【請求項18】
前記アゴニストがC末端Yレセプター認識配列及びN末端Yレセプター認識配列の両方を有し、該C末端配列が、N末端で、前記エピトープのN末端に隣接する少なくとも1つのαヘリックスターンを含んでなる両親媒性アミノ酸配列ドメインに融合し、該C末端アミノ酸配列及び該N末端アミノ酸配列がペプチド結合により式NH2(CH2)nCO2H(式中、nは2〜12である)のアミノ酸のカルボキシル基及びアミノ基にそれぞれ結合している請求項1〜17のいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
前記アゴニストにおいて、nが6、7、8、9又は10である請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記アゴニストが
[Gln34]PP(配列番号:4)
[N-(N'-ヘキサデカノイル)-γグルタモイル-Lys13,Gln34]PP(配列番号:34)
[N-(Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala)3-Lys18,Gln34]PP(配列番号:35)
[N-PEG5000-Lys13,Gln34]PP(配列番号:36)
[Ile31,Gln34]PP(配列番号:5)
[Val31,Gln34]PP(配列番号:6)
[Leu30,Gln34]PP(配列番号:7)
[Nle30,Gln34]PP(配列番号:8)
[Leu28,Gln34]PP(配列番号:9)
[His26,Gln34]PP(配列番号:10)
[Ile3,Gln34]PP(配列番号:11)
[Ala1,Glu4,Arg26,(Met30又はNle30)]PYY(配列番号:12)
[Ala1,Glu4,N-(N'-ヘキサデカノイル)-γグルタモイル-Lys13,Arg26,Nle30]PYY(配列番号:37)
[Ala1,Glu4,N-(Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala)3-Lys13,Arg26,Nle30]PYY(配列番号:38)
[Ala1,Glu4,N-PEG5000-Lys13,Arg26,Nle30]PYY(配列番号:39)
[Ala1,Glu4,Arg26(Met30又はNle30)]NPY(配列番号:13)
[Ala1,Glu4]PYY(配列番号:14)及び[Ala1,Glu4]NPY(配列番号:15)
[Arg26,(Met30又はNle30)]PYY(配列番号:16)及び[Arg26,(Met30又はNle30)]NPY(配列番号:17)
[Glu4,(Met30又はNle30)]PYY(配列番号:18)及び[Glu4,(Met30又はNle30)]NPY(配列番号:19)
[Glu4,Arg26]PYY(配列番号:20)及び[Glu4,Arg26]NPY(配列番号:21)
[Cys2,D-Cys27,Gln34]PP(配列番号:22)
[Cys2,Aoc5-24,D-Cys27,Gln34]PP(配列番号:23)
[Cys2,Lys13,D-Cys27,Gln34]PP(配列番号:30)
[Cys2,N-(8-(8-γグルタモイルアミノ-オクタノイルアミノ)-オクタノイル)-Lys13,D-Cys27,Gln34]PP(配列番号:31)
[Cys2,N-[(Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala)3]-Lys13,D-Cys27,Gln34]PP(配列番号:32)
[Cys2,N-[N'-(21-アミノ-4,7,10,13,16,19-ヘキサオキサヘンエイコサノイル)]-γグルタモイル-Lys13,D-Cys27,Gln34]PP(配列番号:33)
及びこれらの保存的置換アナログ
から選択される請求項1に記載の使用。
【請求項21】
前記アゴニストが[Gln34]PP(配列番号:4)若しくは[Ala1,Glu4,Arg26,(Met30又はNle30)]PYY(配列番号:12)又はこれらの保存的置換アナログである請求項1に記載の使用。
【請求項22】
前記アゴニストがアミノペプチダーゼ活性に対する耐性を付与するためにN末端にてアシル化されている請求項1〜21のいずれか1項に記載の使用。
【請求項23】
前記アゴニストが2〜24の炭素原子を有する炭素鎖でN末端にてアシル化されている請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記アゴニストがN末端にてアセチル化されている請求項22に記載の使用。
【請求項25】
前記アゴニストが請求項1〜24のいずれか1項に記載したとおりであり、且つ血清アルブミン結合モチーフ若しくはグリコサミノグリカン(GAG)結合モチーフ若しくはヘリックス誘導モチーフを含んでなるか、又はPEG化されている請求項1〜24のいずれか1項に記載の使用。
【請求項26】
前記アゴニストにおいて、前記血清アルブミン結合モチーフが親油性基である請求項25に記載の使用。
【請求項27】
前記アゴニストにおいて、前記親油性基が任意に置換されていてもよい飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐鎖の10〜24の炭素原子の炭化水素基を含んでなる請求項26に記載の使用。
【請求項28】
前記アゴニストにおいて、前記親油性基が該アゴニストの主鎖に対して側鎖であるか又は側鎖の一部である請求項25又は26に記載の使用。
【請求項29】
前記アゴニストにおいて、前記親油性基含有側鎖が前記主鎖中の残基にエーテル結合、チオエーテル結合、アミノ結合、エステル結合又はアミド結合を介して接続している請求項28に記載の使用。
【請求項30】
前記アゴニストにおいて、前記親油性基含有側鎖が
CH3(CH2)nCH(COOH)NH-CO(CH2)2CONH-(式中、nは9〜15の整数である)、
CH3(CH2)rCO-NHCH(COOH)(CH2)2CONH-(式中、rは9〜15の整数である)、
CH3(CH2)sCO-NHCH((CH2)2COOH)CONH-(式中、sは9〜15の整数である)、
CH3(CH2)mCONH-(式中、mは8〜18の整数である)、
-NHCOCH((CH2)2COOH)NH-CO(CH2)pCH3(式中、pは10〜16の整数である)、
-NHCO(CH2)2CH(COOH)NH-CO(CH2)qCH3(式中、qは10〜16の整数である)、
CH3(CH2)nCH(COOH)NHCO-(式中、nは9〜15の整数である)、
CH3(CH2)pNHCO-(式中、pは10〜18の整数である)、
-CONHCH(COOH)(CH2)4NH-CO(CH2)mCH3(式中、mは8〜18の整数である)、
-CONHCH(COOH)(CH2)4NH-COCH((CH2)2COOH)NH-CO(CH2)pCH3(式中、pは10〜16の整数である)、
-CONHCH(COOH)(CH2)4NH-CO(CH2)2CH(COOH)NH-CO(CH2)qCH3(式中、qは10〜16の整数である)、及び
部分的又は完全に水素化されたシクロペンタノフェナントレン骨格からなる群より選択される請求項29に記載の使用。
【請求項31】
前記アゴニストにおいて、前記親油性基含有側鎖が、該アゴニストの主鎖の残基の側鎖に存在するアミノ基をアシル化するC12、C14、C16又はC18のアシル基である請求項28に記載の使用。
【請求項32】
前記アゴニストにおいて、前記親油性基含有側鎖が、該アゴニストの主鎖の残基の側鎖に存在するアミノ基をアシル化するテトラデカノイル基である請求項28に記載の使用。
【請求項33】
前記アゴニストがLys11-テトラデカノイル-[Lys11,Gln34]-PP、[N-(N'-ヘキサデカノイル)-γグルタモイル-Lys13,Gln34]PP(配列番号:34)、[Ala1,Glu4,N-(N'-ヘキサデカノイル)-γグルタモイル-Lys13,Arg26,Nle30]PYY(配列番号:37)、若しくは[Cys2,N-(8-(8-γグルタモイルアミノ-オクタノイルアミノ)-オクタノイル)-Lys13,D-Cys27,Gln34]PP(配列番号:31)、又はこれらの保存的置換アナログである請求項1に記載の使用。
【請求項34】
前記アゴニストにおいて、前記GAG結合モチーフが該アゴニストの主鎖に対して側鎖であるか又は側鎖の一部であるアミノ酸配列である請求項25に記載の使用。
【請求項35】
前記アゴニストにおいて、前記GAG結合モチーフがアミノ酸配列XBBXBX及び/又はXBBBXXBX(式中、Bは塩基性アミノ酸残基であり、Xは任意のアミノ酸残基である)を含んでなる請求項34に記載の使用。
【請求項36】
前記アゴニストにおいて、前記GAG結合モチーフがコンカテマー又はデンドリマーである請求項34又は35に記載の使用。
【請求項37】
前記GAG結合モチーフが、コンカテマーGAG結合モチーフのC末端と[Lys18,Gln34]PP(配列番号:24)中のLys18又はアゴニスト[Ala1,Glu4,Lys11,Arg26,(Met30又はNle30)]PYY(配列番号:25)中のLys11のεアミノ基との間に形成されるアミド結合によりカップリングしたAla-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Alaである請求項34〜36のいずれか1項に記載の使用。
【請求項38】
前記GAG結合モチーフが、コンカテマーGAG結合モチーフのC末端と[Lys18,Gln34]PP(配列番号:24)中のLys18又はアゴニスト[Ala1,Glu4,Lys11,Arg26,(Met30又はNle30)]PYY(配列番号:25)中のLys11のεアミノ基との間に形成されるアミド結合によりカップリングしたAla-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Alaである請求項34〜36のいずれか1項に記載の使用。
【請求項39】
前記アゴニストにおいて、前記GAG結合モチーフが該アゴニストのC末端又はN末端に直接にか又はリンカー基を介してかのいずれかで共有結合的に連結している請求項25に記載の使用。
【請求項40】
前記アゴニストにおいて、前記GAG結合モチーフが該アゴニストのN末端に直接にか又はリンカー基を介してかのいずれかで共有結合的に連結している請求項39に記載の使用。
【請求項41】
前記アゴニストにおいて、前記GAG結合モチーフがアミノ酸配列XBBXBX及び/又はXBBBXXBX(式中、Bは塩基性アミノ酸残基であり、Xは任意のアミノ酸残基である)を含んでなる請求項39又は40に記載の使用。
【請求項42】
前記アゴニストにおいて、前記GAG結合モチーフがアミノ酸配列[XBBBXXBX]n(式中、nは1〜5であり、Bは塩基性アミノ酸残基であり、Xは任意のアミノ酸残基である)を含んでなる請求項39又は40に記載の使用。
【請求項43】
前記ペプチドがAla-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-[Gln34]PP(配列番号:26)、[Ala1,Glu4,N-(Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala)3-Lys13,Arg26,Nle30]PYY(配列番号:38)、又は[Cys2,N-[(Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala)3]-Lys13,D-Cys27,Gln34]PP(配列番号:32)である請求項39に記載の使用。
【請求項44】
前記アゴニストにおいて、前記PEGが最大で約20kDaの分子量を有するポリエチレングリコール又はポリエチレンオキシドである請求項25に記載の使用。
【請求項45】
前記アゴニストがLys11でPEG化された[Lys11,Gln34]PP若しくはLys18でPEG化された[Ala1,Glu4,Lys18,Arg26,(Met30又はNle30)]PYYであるか、又は[Ala1,Glu4,N-PEG5000-Lys13,Arg26,Nle30]PYY(配列番号:39)であるか、又は[Cys2,N-[N'-(21-アミノ-4,7,10,13,16,19-ヘキサオキサヘンエイコサノイル)]-γグルタモイル-Lys13,D-Cys27,Gln34]PP(配列番号:33)である請求項25に記載の使用。
【請求項46】
前記アゴニストにおいて、前記ヘリックス誘導ペプチドが該アゴニストのC末端又はN末端に直接にか又はリンカー基を介してかのいずれかで共有結合的に連結している請求項25に記載の使用。
【請求項47】
前記アゴニストにおいて、前記ヘリックス誘導ペプチドが該アゴニストのN末端に直接にか又はリンカー基を介してかのいずれかで共有結合的に連結している請求項25に記載の使用。
【請求項48】
前記ヘリックス誘導ペプチドがAla、Leu、Ser、Thr、Tyr、Asn、Gln、Asp、Glu、Lys、Arg、His、Met、Orn、及び式-NH-C(R1)(R2)-CO-(式中、R1は水素であり、R2は任意に置換していてもよいC1-C6アルキル、フェニル又はフェニルメチルであるか、或いはR1及びR2はこれらが付着しているC原子と一緒になってシクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチル環を形成する)のアミノ酸残基からなる群より選択される4〜20アミノ酸残基を有する請求項46又は47に記載の使用。
【請求項49】
前記ヘリックス誘導ペプチドが4、5又は6つのLys残基を含んでなる請求項46又は47に記載の使用。
【請求項50】
前記アゴニストがLys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-[Gln34]-PPである請求項46又は47に記載の使用。
【請求項51】
前記アゴニストにおいて、前記血清アルブミン結合モチーフ又はGAG結合モチーフ又はPEG基が、PYY若しくはPPの以下:1位、3位、6位、7位、10位、11位、12位、13位、15位、16位、17位、18位、19位、21位、22位、23位、25位、26位、28位、29位、30位及び32位のいずれかに相当する主鎖炭素、又はNPYの以下:1位、3位、6位、7位、10位、11位、12位、14位、15位、16位、17位、18位、19位、21位、22位、23位、25位、26位、28位、29位、30位及び32位のいずれかに相当する主鎖炭素の側鎖であるか又は側鎖の一部を形成している請求項26〜36、42及び43のいずれか1項に記載の使用。
【請求項52】
前記アゴニストがタイプ(c)であり、前記血清アルブミン結合モチーフ又はGAG結合モチーフ又はPEG基がPYY、NPY又はPPの以下:2位、5位、8位、9位、13位、14位、20位及び24位のいずれかに相当する主鎖炭素の側鎖であるか又は側鎖の一部を形成している請求項51に記載の使用。
【請求項53】
前記アゴニストが請求項12に記載のとおりであり、前記血清アルブミン結合モチーフ又はGAG結合モチーフ又はPEG基が、主鎖-(CH2)n-リンカー基上の側鎖であるか又は側鎖の一部を形成している請求項51に記載の使用。
【請求項54】
請求項1〜53のいずれか1項に規定されている、Y1レセプターよりY2レセプター及びY4レセプターに対して選択性であるYレセプターアゴニスト。
【請求項55】
[Gln34]PP(配列番号:4)
[N-(N'-ヘキサデカノイル)-γグルタモイル-Lys13,Gln34]PP(配列番号:34)
[N-(Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala)3-Lys18,Gln34]PP(配列番号:35)
[N-PEG5000-Lys13,Gln34]PP(配列番号:36)
[Val31,Gln34]PP(配列番号:6)
[Leu30,Gln34]PP(配列番号:7)
[Nle30,Gln34]PP(配列番号:8)
[Leu28,Gln34]PP(配列番号:9)
[His26,Gln34]PP(配列番号:10)
[Ile3,Gln34]PP(配列番号:11)
[Ala1,Glu4,Arg26,(Met30又はNle30)]PYY(配列番号:12)
[Ala1,Glu4,N-(N'-ヘキサデカノイル)-γグルタモイル-Lys13,Arg26,Nle30]PYY(配列番号:37)
[Ala1,Glu4,N-(Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala)3-Lys13,Arg26,Nle30]PYY(配列番号:38)
[Ala1,Glu4,N-PEG5000-Lys13,Arg26,Nle30]PYY(配列番号:39)
[Ala1,Glu4,Arg26(Met30又はNle30)]NPY(配列番号:13)
[Ala1,Glu4]PYY(配列番号:14)及び[Ala1,Glu4]NPY(配列番号:15)
[Arg26,(Met30又はNle30)]PYY(配列番号:16)及び[Arg26,(Met30又はNle30)]NPY(配列番号:17)
[Glu4,(Met30又はNle30)]PYY(配列番号:18)及び[Glu4,(Met30又はNle30)]NPY(配列番号:19)
[Glu4,Arg26]PYY(配列番号:20)及び[Glu4,Arg26]NPY(配列番号:21)
[Cys2,D-Cys27,Gln34]PP(配列番号:22)
[Cys2,Aoc5-24,D-Cys27,Gln34]PP(配列番号:23)
[Cys2,Lys13,D-Cys27,Gln34]PP(配列番号:30)
[Cys2,N-(8-(8-γグルタモイルアミノ-オクタノイルアミノ)-オクタノイル)-Lys13,D-Cys27,Gln34]PP(配列番号:31)
[Cys2,N-[(Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala)3]-Lys13,D-Cys27,Gln34]PP(配列番号:32)
[Cys2,N-[N'-(21-アミノ-4,7,10,13,16,19-ヘキサオキサヘンエイコサノイル)]-γグルタモイル-Lys13,D-Cys27,Gln34]PP(配列番号:33)
及びこれらの保存的置換アナログから選択される、Y1レセプターよりY2レセプター及びY4レセプターに選択性であるYレセプターアゴニスト。
【請求項56】
[Gln34]PP若しくは[Ala1,Glu4,Arg26,(Met30又はNle30)]PYY又はその保存的置換アナログである、Y1レセプターよりY2レセプター及びY4レセプターに選択性であるYレセプターアゴニスト。
【請求項57】
その必要がある患者に有効量の請求項1〜56のいずれか1項に記載のY2及びY4選択性レセプターアゴニストを投与することを含んでなるY2レセプター及び/又はY4レセプターの活性化に応答性の症状を治療する方法。
【請求項58】
前記治療される症状がエネルギー摂取若しくはエネルギー代謝の調節、腸分泌の制御、胃腸管運動性の減少、又は脈管形成の誘導が指示される症状である請求項1〜53のいずれか1項に記載の使用又は請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記治療される症状が脈管形成の誘導が指示される症状であり、前記Y2及びY4選択性レセプターアゴニストがGAG結合モチーフを含んでなる請求項58に記載の使用又は方法。
【請求項60】
前記治療される症状が脈管形成の誘導が指示される症状であり、前記Y2及びY4選択性レセプターアゴニストが血清結合モチーフを含んでなる請求項58に記載の使用又は方法。
【請求項61】
前記治療される症状が脈管形成の誘導が指示される症状であり、前記Y2選択性レセプターアゴニストがPEG化されている請求項58に記載の使用又は方法。
【請求項62】
前記治療が胃排出の速度を減少させることである請求項58〜61のいずれか1項に記載の使用又は方法。
【請求項63】
前記治療される症状が肥満若しくは過体重、肥満若しくは過体重が主因であるとされる症状である請求項58に記載の使用又は方法。
【請求項64】
前記治療される症状が過食症、神経性大食症、X症候群(メタボリック症候群)、糖尿病、2型糖尿病若しくはインスリン非依存性糖尿病(NIDDM)、高血糖、インスリン抵抗性、グルコース寛容減損、心血管疾患、高血圧、アテローム性動脈硬化症、冠動脈疾患、心筋梗塞、末梢血管疾患、卒中、血栓塞栓性疾患、高コレステロール血症、高脂血症、胆嚢疾患、変形性関節症、睡眠時無呼吸、生殖障害、例えば多嚢胞性卵巣症候群、又は胸部、前立腺若しくは結腸のガンである請求項63に記載の使用又は方法。
【請求項65】
前記アゴニストが絶食状態の患者に投与される請求項63又は64に記載の方法。
【請求項66】
前記治療される症状が下痢又は腸瘻からの過剰分泌である請求項58に記載の使用又は方法。
【請求項67】
前記アゴニストが皮下、筋肉内、静脈内、鼻、経皮又は口腔粘膜投与を含む非経口経路を介して患者に投与される請求項57〜66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
1以上の請求項1〜56のいずれか1項に規定のY2及びY4選択性レセプターアゴニストを医薬的に許容される賦形剤と共に含んでなる医薬組成物。
【請求項69】
1以上の請求項1〜56のいずれか1項に規定のY2及びY4選択性アゴニストを美容上許容される賦形剤と共に含んでなる美容組成物。

【公表番号】特表2007−531714(P2007−531714A)
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503302(P2007−503302)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【国際出願番号】PCT/EP2005/002982
【国際公開番号】WO2005/089790
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(506312478)7ティーエム ファーマ エイ/エス (12)
【氏名又は名称原語表記】7TM PHARMA A/S
【住所又は居所原語表記】Fremtidsvej 3,DK−2970 Hoersholm,DENMARK
【Fターム(参考)】