説明

治癒期の間に溶解する機構を有する埋め込みシステム

【課題】
【解決手段】 本発明は、治癒期の間に再建されたヒトまたは動物組織に制御荷重をかけるために、第1の骨(50)内に埋め込むアンカー要素(10)と、少なくとも1つの接続要素(20)と、前記少なくとも1つの接続要素(20)のための第2の骨(40)上の1つの保持要素(30)とを有するシステムに関する。アンカー要素(10)、および/または、接続要素(20)、および/または、保持要素(30)は、自己溶解生体吸収性材料で作成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再建または再生された靭帯の治癒期において制御負荷をかけるために骨内に植え込まれたシステムの溶解機構に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト膝関節は、膝関節の内部で前十字靱帯と後十字靱帯によって安定化される。膝関節の捻挫の場合、これらの2つの靭帯には、断裂または引き裂きが生じるまで何度も過負荷がかかる。この状況では、前十字靱帯は、後十字靱帯の約9倍損傷を受けやすい。保存的療法の試みまたは前十字靱帯を縫合する試みはすべて、大きな問題と関係する。先行技術によれば、損傷を受けた膝関節の不安定さがずっと続く場合は、その不安定さに応じて前十字靱帯が除去され、腱材料からの移植または人工靱帯によって膝関節の安定性が回復される。そのような方法の欠点は、靭帯構造が生体(avital)であり、やはり時間の経過と共に反応を示さなくなり、安定性を失うことである。
【0003】
特許文献1は、隣接した骨の端部を接続しそれらの骨の屈曲を可能にする自然靭帯に置き換わるモジュール人工靱帯について述べている。人工靱帯は、隣接した骨に導入される第1と第2のアンカー要素と、前記2つのアンカー要素を互いに接続するケーブル機構とを有する。ケーブルは、好ましくは、クロム・コバルトからなり、第2のアンカー要素内で緩衝要素に結合される。記述された人工靱帯により、2つの骨を調整可能な張力で結合し曲げることができる。
【0004】
この装置の欠点は、ヒト膝関節内の前十字靱帯が置換靭帯と永久的に置き換えられることである。従って、損傷した自然靭帯が、膝関節から完全に除去され、人工的な置換靭帯は、その機能を不十分にしか発揮しない。詳細には、反応が完全に失われ、過負荷になる可能性がある。更に、人工靱帯は、摩耗プロセスを受け、これにより、所定の期間後に不安定になるか新しい損傷が生じる可能性がある。
【0005】
これと反対に、人体内のすべての靭帯は、大きな自然治癒傾向を備える。従って、現在では、腓骨距骨(fibulotalar)靭帯断裂または前十字靭帯関節損傷は、実際にはすべて保存的に治療される。多くの施設では、大きなアキレス腱の断裂でも現在では保存的に治療される。この場合、靭帯は、損傷靱帯の既存の靭帯束を互いに近づけることによって再建または再生され、その結果、靭帯束は、自然治癒傾向によって再び一緒に成長する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,507,812号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、自然靱帯の治癒期の間またはその後で自然に分解する、ヒト膝関節内の再建または再生された自然前十字靱帯または個々にヒト若しくは動物関節の任意の靭帯構造を一時的に開放するためのシステムを規定するという目的に基づく。
【0008】
この目的は、本発明によるシステムと、請求項1に記載の治癒期の間に溶解する機構とによって達成される。本発明によるシステムの有利な更に他の展開は、従属クレームに示される。
【0009】
治癒期の間の再建または再生されたヒトまたは動物靭帯に制御負荷をかける、すなわち、安定化と過負荷からの保護となる本発明によるシステムは、第1の骨に埋め込むためのアンカー要素と、少なくとも1つの接続要素と、第2の骨内の少なくとも1つの接続要素のための保持要素とからなり、アンカー要素、および/または、接続要素、および/または、保持要素は、自己溶解生体吸収性材料からなる。
【0010】
本発明によるシステムにより、下腿は、上腿に対して後方引き出し位置に永久的に引っ張られる。これにより、例えば前十字靱帯の2つの裂けた繊維束が、できるだけ近い距離に引き寄せられる。有利には、2つの靭帯幹は、安定性を失うことなく元の位置と長さで再び共に治癒し、この場合も靭帯幹の元の機能、特に関節の安定化を完全に実現することができる。
【0011】
アンカー要素、および/または、接続要素、および/または、保持要素は、自己溶解生体吸収性材料からなると有利である。これは、時間の経過と共に自動的に溶解し、その結果、保持および安定化機能が、自然靱帯に継続的に移される。これにより、自然靱帯への置換靭帯の保持および安定作用の継続的移行が提供される。膝関節から移植靭帯を更なる手術によって除去しなくてもよいことは大きな利点である。この手術は、患者のリスクとなり、治療のコストを増大させる。
【0012】
また、アンカー要素、および/または、保持要素、および/または、接続要素の溶解プロセスの間に紐の張力が低下することは有利である。これにより、自然靱帯は、継続的に増大する張力で保持され、その結果、靭帯材料の成長が刺激される。これにより、均一で迅速な治癒プロセスが促進される。
【0013】
3つの要素のうちの少なくとも1つが、生体吸収性材料からなれば十分である。この場合、非溶解要素に使用されるのが好ましい材料は、次の通りである。
−アンカー要素用のステンレス鋼、TiまたはCoCr合金、生体適合性重合体。
−接続要素用のポリエチレン、ポリアミドまたは他の重合体で作成された紐。
−保持要素用のステンレス鋼、TiまたはCoCr合金、生体適合性重合体。
【0014】
以下の節では、要素は、所定の期間後に身体内で溶解できるように説明される。
【0015】
アンカー要素または締結要素は、溶解可能なマグネシウムからなると有利である。マグネシウムねじは、医療用の骨ねじとして使用されるように言及されている。使用されるマグネシウム合金は、医療用スチールまたはチタンより多少低いが生体吸収性重合体よりかなり優れた機械特性を提供する。身体内の完全な分解は、無条件の生体適合性を想定する。これは、生物体に対する絶対的な安全性を意味する。従って、埋め込み材料は、身体環境で腐食する能力によって材料の分解要件を満たさなければならない。人体の不可欠な構成要素として、マグネシウムは、これらの要件をすべて満たす。マグネシウムは、必要な滞留時間を調整するために表面処理されることが好ましい。
【0016】
アンカー要素内の雄ねじによって、アンカー要素を、第1の骨内に安定的に固定することができる。雄ねじは、有利には、無制限に調整できる差し込み深さを可能にし、接続要素上の引張荷重の正確な調整に使用することができる。
【0017】
同様に、締結要素が、アンカー要素内の緩衝装置に結合されると有利である。緩衝装置は、単一ばね、または2つの同軸で配置されたばねを提供する二重ばねからなることが好ましい。緩衝装置は、関節を曲げることを可能にし、同時に自由な動きの場合に再生靭帯の重荷重を防ぐ。これにより、ばねは、正常な動荷重を補償する。二重ばねにより、第2のばね要素の追加のばね作用によって最大荷重も吸収される。
【0018】
締結要素は、有利には円錐として形態化され、接続要素は、円錐形にテーパをつけられたスリーブと前記円錐の間に留められる。更に、締結要素は、いくつかの円錐扇形部分からなることができ、接続要素は、円錐扇形部分の間に挿入され、円錐扇形部分は、円錐形にテーパをつけられたスリーブに押し込まれる。埋め込む際、接続要素は、必要なプレテンションにより遠位(distal)方向に引っ張られる。円錐または円錐扇形部分は、更に、このプレテンションの際に、提供されたスリーブに押し込まれ、これによりその位置に固定される。従って、接続要素の軸方向の近位(proximal)方向の摺動は、ほとんど防止される。
【0019】
スリーブは、接続要素の引っ張り方向にテーパをつけられる。すなわち、有利には、引張応力が高まるにつれ、円錐扇形部分または円錐がスリーブ内に更に押し込まれ、その結果、留めが強化される。更に、留め圧力が、接続要素の長さ全体に働き、接続要素の1点の破損、したがって裂けを防ぐ。
【0020】
更に有利な変形は、2つのテーパをつけられた平坦面内に尖った端で押されるくさびの形の締結要素であり、接続要素は、くさびのまわりに配置され、くさびとテーパをつけられた平坦面の間に留められる。留め圧力は、接続要素の更に長い領域に分散される。ここでも、引張応力が大きくなるにつれ、くさびは、テーパをつけられた平坦面に更に押し込まれ、したがって留めが強化される。
【0021】
接続要素は、生体吸収性重合体、好ましくはポリ(グリコール酸)、ポリ(グリコール酸/乳酸共重合体)、ポリ(グリコール酸/DL−乳酸共重合体)、ポリ(L−乳酸)、ポリ(DL−乳酸)、ポリ(D−乳酸)、ポリ(乳酸−ε−カプロラクトン共重合体)、ポリ(ε−カプロラクトン)、またはポリ(ジオキサノン)からなると有利である。ポリ(DL−乳酸)またはポリ(D−乳酸)で作成された接続要素は、例えば約8週後に比較的短いポリマー鎖への加水分解を始める。接続要素は、約3〜24か月後に完全に溶解される。この期間は、自然靱帯の治癒に十分である。様々な重合体の選択により、身体内の紐の滞留時間を、3〜6か月の予想治癒時間に調整し適応させることができる。
【0022】
保持要素は、生体吸収性リン酸カルシウムまたはマグネシウムからなると有利である。保持要素は、ボタンの形状に形態化され、直径方向反対側の外縁に配置された2つのガイド穴を備える。埋め込む際に、ガイド穴内の紐によって保持要素を正確に位置決めすることができる。接続要素を取り付ける場合、紐の端は、ボタン形保持要素の中央ウェブのまわりにガイドされ、接続要素自体に組み継ぎされるか、溶接されるか、接着される。このように接続された接続要素の端は、要素の確実な保持と引張強度を保証する。
【0023】
言及したような本発明によるシステムは、膝関節内の前十字靱帯を一時的に開放するために有利に使用される。前十字靱帯の断裂は、しばしば、捻挫、スポーツ事故または摩耗症状の結果として起こる。言及したような埋め込みの溶解機構により、炎症などの原因となる可能性がある膝関節内のシステムの永久的な残留を回避することができる。これと反対に、患者は、埋め込みシステムを除去するためのストレスの多い手術が免除される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明によるシステムの例示的な実施形態またはそれぞれのその副構成要素は、図面に例として示され、以下の説明に基づいて詳細に説明される。図面は、以下の通りである。
【0025】
【図1】前十字靱帯の代わりに膝関節に挿入された本発明によるシステムを概略的に示す図である。
【図2】締結要素として円錐を有する本発明によるアンカー要素の第1の例示的な実施形態の断面を示す図である。
【図3】締結要素として円錐扇形部分を有する本発明によるアンカー要素の第2の例示的な実施形態の断面を示す図である。
【図4】締結要素として自動締め付けロープ・クランプを有する本発明によるアンカー要素の第3の例示的な実施形態の断面を示す図である。
【図5】締結要素として圧縮スリーブを有する本発明によるアンカー要素の第4の例示的な実施形態の断面を示す図である。
【図6】締結要素としてくさびを有する本発明によるアンカー要素の第5の例示的な実施形態の断面を示す図である。
【図7】本発明による保持要素の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
すべての図面において互いに対応する部分は同じ照合番号で示される。
【0027】
図1は、曲げられたヒト膝関節に挿入された本発明によるシステム100を示す。アンカー要素10は、脛骨50の近位部分の腹側にねじ込まれて、関節の内部空洞60に至る第1の骨トンネル51と隣接する。大腿骨40の隣接遠位端には、第2の細い骨トンネル41が開けられる。接続要素20は、いわゆる「エンドボタン(endo-button)」として形態化された保持要素30に取り付けられる。この状況では、保持要素は、大腿骨40の外側面に支持される。接続要素は、関節の内部空洞60を介して第2の骨トンネル41と第1の骨トンネル51を通ってアンカー要素10に至り、アンカー要素10によって固定される。
【0028】
埋め込みシステムの構成要素と骨トンネルの位置は、膝が約90°曲げられたときに接続要素がまっすぐに延びるように選択される。接続要素は、施術者によって、治癒期の間に再建された治癒中のヒト靭帯に引張荷重がかからないかまたは最小限の引張荷重がかかるように、長さとプレテンションが調整される。治癒期が進むにつれて、アンカー要素、および/または、その中に固定された接続要素、および/または、接続要素自体、および/または、保持要素は、溶解し、治癒中のヒト靭帯に次第により多くの自然の力を伝えるようになる。
【0029】
これらの要素の1つまたは複数は、生体吸収性の自己溶解材料からなる。自己溶解アンカー要素は、マグネシウムからなる。また、生体吸収性保持要素は、マグネシウムまたはリン酸カルシウムからなる。吸収性接続要素は、例えば、ポリラクチド、ポリグリコール酸、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリジオキサノンなどの重合体からなると有利である。
【0030】
溶解プロセスが始まると、接続要素の張力が低下し、自然靱帯に徐々に荷重がかかる。これにより、自然靱帯の再生がより強く刺激され、したがって治癒プロセスと治療速度が促進される。接続要素、アンカー要素または保持要素の完全溶解後に、自然靱帯は再びその自然機能を完全に回復する。
【0031】
従来の移植と対照的に、靭帯移植片全体が身体内に残らず、したがって、自然運動プロセスを妨げることがなく、その結果、手術でそれを除去しなくてもよい。残りの骨トンネルまたはアンカー要素の穿孔は、時間の経過と共に新しい骨組織で塞がれる。
【0032】
図2は、本発明によるアンカー要素10の横断面を示す。アンカー要素10は、雄ねじ2を備え、従って骨50にねじ込まれる円筒状外側要素3を有する。この文脈では、円筒状外側要素3自体が、骨組織内に留まる。円筒状外側要素3は、前端4と基部5を備え、前端4は、骨50への導入後に骨の表面の方に向けられる。本発明によるアンカー要素10または円筒状外側要素3のそれぞれの内部6に、遠位端8と近位端9の間に緩衝装置が収容される。締結要素19は、好ましくは円錐27として形態化され、緩衝装置内にその長手方向軸26と平行に延在し、装置(アンカー要素)10の近位端9で基部5の凹部12を通って円筒状外側要素3から出るようにガイドされた接続要素20を固定する。
【0033】
緩衝装置は、渦巻きばね13を備え、渦巻きばね13は、施術者によって調整可能な圧力が印加され、近位端9で円筒状外側要素3の基部5と接触する。更に、緩衝装置内にスリーブ14が配置され、スリーブ14は、フランジ15に雌ねじ17を備え、スリーブ14に対して渦巻きばね13が遠位端で接触する。スリーブ14の近位端16は、渦巻きばね13に押し込まれ、その結果、渦巻きばね13は、円筒状外側要素3の遠位側半体18の領域内でスリーブ14を取り囲む。円錐27として形成された締結要素19は、その遠位端11がねじ22の突出部20に取り付けられ、ねじ22は、円錐27上の紐11を制御式に引き抜くために提供され、それにより接続要素20上の張力が大きくなる。ねじ22が、ねじ頭24の領域内に多角形の凹部25を備えるので、その雄ねじ23によってねじ22をフランジ15の雌ねじ17内にねじ込むことができる。
【0034】
図3に、本発明によるアンカー要素110の第2の例示的な実施形態が示される。雄ねじ2を有する円筒状外部ハウジング3は、前と同じように骨にねじ込まれている。スリーブ114は、この場合も、その近位端116が渦巻きばね113に突出している。第2の渦巻きばね117が、第1の渦巻きばね113の中に同軸で配置され、第1の渦巻きばね113によって完全に取り囲まれる。第2の渦巻きばね117は、外部ハウジング3の基部5の一端とスリーブ116の近位端で支持される。この二重ばね構成により、比較的高いばね定数を達成することができ、従って、例えば膝の予期しない動きによるより強い引張応力を、比較的大きく、したがって比較的強いばねのための追加の空間を必要とせずに、緩和することができる。短くした第2のばね117により、ばね定数を段階的に高めることができる。
【0035】
締結要素は、少なくとも2つの円錐扇形部分111,112で構成される。スリーブ116の少なくとも近位端の内側面119は、円錐形にテーパをつけられ、その傾きが締結要素111および112と対応する。接続要素20は、凹部12から外部ハウジング3の内部空洞に導入され、スリーブ116の近位端内をガイドされ、円錐扇形部分111と112の間に挿入される。円錐扇形部分111,112の内側面118は、接続要素20に対する改善された把持力を保証するために、のこぎり歯状に実施されてもよい。円錐扇形部分111,112は、スリーブ116の近位端に押し込まれる。これにより、接続要素20が固定される。接続要素20の近位方向に働く引張力が強いほど、円錐扇形部分111,112が挟んでロックする力が強くなり、取り付けが強化される。必要に応じて、接続要素20を軸方向に中空になったねじ22内をガイドすることができ(図2を参照)、また、ねじ22を雌ねじ23にねじ込むことによって円錐扇形部分をスリーブ116の近位端に押し込むことができる。
【0036】
図4は、アンカー要素110と同じように構成されているが、円錐扇形部分の代わりに自動締め付けロープ・クランプ124がスリーブ124に嵌め込まれたアンカー要素120を示す。ロープ・クランプは、回転可能に取り付けられた2つの顎121および122によって構成され、顎121および122の表面125は、のこぎり歯状に形成されている。接続要素20を挿入するときは、接続要素20が、顎121と122の間で外部ハウジング3の遠位端8の方に押される。これにより、相互に係合する顎121,122が、その軸126,127のまわりに遠位方向に回転し、それらの半径が小さくなる結果として開く。張力が解放されたとき、2つの顎121と122は、近位方向9に噛み戻り、接続要素20を留める。近位方向の引張力により、留めがよりきつくなり、従って強力になる。
【0037】
図5は、本発明によるアンカー要素のその他の実施形態130を示す。締結要素20は、スリーブ134の近位端136内でガイドされる。接続要素20の端は、ループ133にされ、その端は、圧縮スリーブ131内の接続要素に留められる。この圧縮スリーブ131は、スリーブ116の近位端内で滑ることができないようなサイズの直径135を有する。
【0038】
図6は、くさび留め機構を有する本発明によるアンカー要素10の例示的な第5の実施形態140を示す。アンカー要素144のスリーブは、その内側面で、点にまでテーパをつけられた平坦面142,143を構成する。接続要素20は、スリーブ146の近位端を通ってくさび141をまわり込み、外部ハウジングの近位半体9に戻るようにガイドされる。接続要素20に近位方向に引張力が働くと、くさび141は、スリーブの点にまでテーパをつけられた内側面142,143に押し込まれ、接続要素20が留められる。この場合も、近位方向の引張力は、留め機構にロック効果を提供する。
【0039】
図7は、保持要素30を、保持要素30に固定された接続要素20と共に示す。保持要素30は、ボタンの形状に形成され、2つの開口32,33と、それらの開口の間に配置された中央ウェブ31とを備える。接続要素20は、開口33と開口32に通される。接続要素20の端36は、接続要素20に組み継ぎされ、何本かの個別の繊維から織られた紐として形成されることが好ましい。なるべくならば、保持要素30は、組み継ぎされた要素と事前に組み立てられ、1つの構成要素として埋め込まれる。保持要素30を大腿骨40の表面上に最適に位置合わせするために、2つのガイド穴34,35が、直径方向反対の外縁に設けられる。埋め込む際、細い紐はこれらのガイド穴34,35に取り付けられ、したがって保持要素30は、ガイド穴34,35と位置決めされ位置合わせされる。
【0040】
説明しかつ/または図示したすべての特徴は、本発明の範囲内で互いに有利に組み合わせることができる。本発明は、例示的な実施形態に制限されない。例えば、他の留め機構または他の材料を使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の骨(50)に埋め込むためのアンカー要素(10)と、少なくとも1つの接続要素(20)と、第2の骨(40)内の前記少なくとも1つの接続要素(20)のための保持要素(30)とを有する、ヒトまたは動物身体の再建または再生された靭帯の治癒期の間に制御負荷をかけるためのシステムであって、
前記アンカー要素(10)、および/または、前記接続要素(20)、および/または、前記保持要素(30)が、自己溶解生体吸収性材料からなり、
前記保持要素(30)が、生体吸収性リン酸カルシウムまたはマグネシウムからなり、前記保持要素(30)が、ボタンの形状に形態化され、一つの接続要素端(36)が、ボタン形保持要素(30)の中央ウェブ(31)のまわりにガイドされ、前記接続要素(20)に組み継ぎされるか、溶接されるか、接着されることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記接続要素(20)の張力が、前記アンカー要素(10)、および/または、前記接続要素(20)、および/または、前記保持要素(30)の前記溶解プロセス中に低下することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記アンカー要素(10)が、雄ねじ(2)を備え、前記第1の骨(50)内に前記雄ねじ(2)によって固定されることを特徴とする請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記接続要素(20)が、前記アンカー要素(10)内の締結要素(19)に固定されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記アンカー要素(10)または前記締結要素(19)が、自己溶解性マグネシウムまたはリン酸カルシウムからなることを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記締結要素(19)が、前記アンカー要素(10)内で緩衝装置に結合されることを特徴とする請求項4または5に記載のシステム。
【請求項7】
前記緩衝装置が、単一ばねまたは2つの同軸ばね(113,117)からなる二重ばねを備えることを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記締結要素(19)が、円錐(27)として形態化され、前記接続要素が、円錐形にテーパをつけられたスリーブ(14,16)と前記円錐(27)との間に留められることを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記締結要素(19)が、いくつかの円錐扇形部分(111,112)を備え、前記接続要素(20)が、前記円錐扇形部分(111,112)の間に挿入され、円錐形にテーパをつけられたスリーブ(114,116)に押し込まれることを特徴とする請求項4〜8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記スリーブ(14,16,114,116)が、近位方向(9)にテーパをつけられることを特徴とする請求項8または9に記載のシステム。
【請求項11】
前記締結要素(19)が、接続要素ループ(133)の端(132)を前記接続要素(20)に留める圧縮スリーブ(131)として形態化されることを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記締結要素(19)が、その尖った端で2つのテーパをつけられた平坦面(142,143)に押し込まれるくさび(141)として形態化され、前記接続要素(20)が、前記くさび(141)のまわりに配置され、前記くさび(141)と前記平坦面(142,143)の間に留められることを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記接続要素(20)が、生体吸収性重合体、好ましくはポリ(グリコール酸)、ポリ(グリコール酸−乳酸重合体)、ポリ(グリコール酸−DL−乳酸重合体)、ポリ(L−乳酸)、ポリ(DL−乳酸)、ポリ(D−乳酸)、ポリ(乳酸−ε−カプロラクトン重合体)、ポリ(ε−カプロラクトン)、またはポリ(ジオキサノン)からなることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
前記接続要素(20)が、紐、特にいくつかの個別の繊維から織られた紐として形態化されることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
前記保持要素(30)の直径方向反対側の外側縁に2つのガイド穴(34,35)が導入されることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
前記システムが、膝関節内の前十字靱帯を一時的に開放するために使用されることを特徴とする請求項1〜15に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−525168(P2012−525168A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507614(P2012−507614)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/001363
【国際公開番号】WO2010/124760
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(511262647)マティス アクチエンゲゼルシャフト ベットラッハ (1)
【Fターム(参考)】