説明

法面被覆体除去装置及び法面被覆体除去方法

【課題】 研磨材を含む流体の噴流を対象箇所に衝突させて法面被覆体を切削・破砕でき、法面被覆体を地山表面から確実に除去できると共に、除去後の地山に噴流を衝突させず、地山の損傷を抑えられるなど周囲環境へ悪影響を及さずに除去作業を行える法面被覆体除去装置を提供する。
【解決手段】 研磨材を含む流体を高圧噴射するノズル10を位置調整自在に配設すると共に、ノズル10正面に噴流受板12を配設し、この噴流受板12を斜面表面の法面被覆体60と地山70間に生じている隙間に挿入し、且つノズル10を法面被覆体60正面に位置させた状態で、法面被覆体60に前記流体の噴流を衝突させることから、法面被覆体60が破砕されて地山70表面から除去された後、流体の噴流は噴流受板12に当ってそれ以上ノズル正面方向に進むのを阻止されることとなり、法面被覆体60を除去した後の地山70を確実に改変等なく保護できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法面の保護用に配設されて老朽化した吹付けモルタル等の法面被覆体を除去する工事に使用される法面被覆体除去装置で、特に法面をなす地山に対し損傷を与えることなく確実に法面被覆体のみを破砕除去でき、工期及び工事コスト面でも優れる法面被覆体除去装置、及びこれを用いた除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路に面した法面等において、吹付け等でモルタル等を法面表面に配設して法面を保護し、落石等の発生を抑える方策が数十年前から行われてきた。しかし、こうしたモルタル等の法面被覆体は経年により老朽化し、地山から浮いた状態となって法面保護の目的を果さなくなることから、近年はこうした老朽化した法面被覆体を除去し、より環境への悪影響の少ない緑化防護法面等の形で新たに法面保護を図ることが強く求められている。
【0003】
老朽化した法面被覆体の除去工程においては、法面被覆体を物理的に破砕するはつり作業が従来から一般的に行われている。このはつり作業は、主に作業者がピックハンマーやブレーカ等を用いて機械的な衝撃や振動をモルタル等の法面被覆体に直接与え、法面被覆体を削り取る(はつる)手法で行われている。
【0004】
しかし、こうした法面被覆体除去の際、法面被覆体としてのモルタルに衝撃や振動を与えることに伴って、騒音と共に粉塵が発生したり破片が飛散したりし、作業環境の悪化を招くばかりでなく、作業者にとって危険であり、作業者にとっって大きな負担となっていた。加えて、振動を伴う作業の場合、連続作業時間の規制があり、作業者を多数確保する必要があり、コストと手間がかかっていた。また、法面に激しい衝撃や振動が繰返し加わることから、法面のみならず周囲地盤の強度低下を招きやすく、法面上部地盤の地滑り・崩落の原因となる危険性もあった。
【0005】
さらに、作業は斜面上で足場を設けて行うものとなるため、狭い足場上で作業が行いにくく、その上、足場の設営や除去にも時間がかかり、作業能率が良くないという課題を有していた。さらに、これらが道路に面した法面に対する工事であるため、道路交通への影響の点で作業時間帯が限られるなど工事に制約が大きく、工事期間が長期化しがちであった。
【0006】
このような従来の騒音や破片の飛散等を伴う物理的な衝撃付与以外に、モルタルやコンクリートを破壊する方法として、水、もしくは水に研磨材を混入した流体をノズルから高圧噴射して噴流を対象物に集中的に衝突させ、対象物を摩耗させて破壊するウォータジェット、アブレーシブジェット等の方法があり、これをコンクリートはつりに適用したものが特開平8−323736号、特開平10−151621号、及び特開2002−283338号の各公報に提案され、また、地中のコンクリート製等の柱状障害物切断に適用したものが特開2000−1853号公報に提案されており、これらには作業時における騒音や粉塵の発生、破片の飛散等を防止できる点が記載されている。
【特許文献1】特開平8−323736号公報
【特許文献2】特開平10−151621号公報
【特許文献3】特開2002−283338号公報
【特許文献4】特開2000−1853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のウォータジェット等を用いてモルタル等を破壊する方法は前記各特許文献に示されるものとなっており、法面被覆体除去に際して、前記特許文献1〜3に示された従来技術を法面表面のモルタル等法面被覆体の破砕に転用することも考えられるが、法面被覆体に孔が貫通したり、法面被覆体が破砕されたりした直後、裏側の地山にそのまま高圧の噴流が到達してしまい、強度の低い地山を削って著しく損傷させるため、地山の現状維持が必要な法面被覆体の除去には利用しにくいという課題を有していた。
【0008】
この地山の保護に関して、前記特許文献4に記載される従来方法において、ノズル前方側にあたる柱状障害物背後側にあらかじめ保護治具を配設して、地山の損傷を防ぐ技術内容が示されているが、除去対象の柱状構造物が地山を覆う部分は少なく、構造物背後側への保護治具配設が比較的容易であるのに対して、法面でノズルを動かして破砕除去する予定の箇所における法面被覆体裏側に全てこうした保護治具を据付け固定することはコストと手間の面でほとんど不可能であり、且つ法面被覆体の裏側に配設するために法面被覆体自体を一部除去しなければならないなど無理があり、そのまま法面での作業に適用することはできないという課題を有していた。
【0009】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、研磨材を含む流体の噴流を対象箇所に衝突させて法面被覆体を切削・破砕でき、法面被覆体を地山表面から確実に除去できると共に、除去後の地山に噴流を衝突させず、地山の損傷を抑えられるなど周囲環境へ悪影響を及さずに除去作業を行える法面被覆体除去装置及び当該装置を用いた法面被覆体除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る法面被覆体除去装置は、所定の供給装置から供給される流体のみ又は固形粒状の研磨材を含む流体を先端から噴射するノズルと、前記ノズルを所定範囲内で位置及び傾き調整可能に支持し、ノズル先端を法面表面に構築されている所定の法面被覆体に対向させる支持装置と、前記支持装置に位置及び傾き調整可能に支持される略板状体で形成され、前記ノズルから所定距離離れたノズル正面側位置に、少なくとも前記流体の噴流の前記所定距離進行状態における拡散範囲に及ぶ大きさとされて配置される噴流受板とを備え、前記噴流受板を前記法面被覆体と当該法面被覆体裏側の地山との間の隙間に挿入しつつ法面被覆体正面に前記ノズルを位置させ、ノズルから噴射した前記流体の噴流を法面被覆体に衝突させると共に、前記支持装置でノズル及び噴流受板を法面被覆体表面に沿って連続的又は断続的に移動させるものである。
【0011】
このように本発明によれば、流体単独もしくは研磨材を含む流体を噴射するノズルが位置調整自在に配設されると共に、このノズル正面に噴流受板を配設し、この噴流受板を法面表面の法面被覆体と地山間に生じている隙間に挿入し、ノズルを法面被覆体正面に位置させた状態で、法面被覆体に対し前記流体を噴射してこの噴流を衝突させ、且つノズルを噴流受板と共に移動させて噴流の衝突位置を動かしていくことにより、法面被覆体を噴流で削って破砕しつつ破砕箇所を広げていく中、法面被覆体と地山との間に位置させた噴射受板で噴射反力によるノズルの後退を抑止できることとなり、支持装置におけるノズル支持力をより小さく抑えられ、支持装置の小型化、低コスト化が図れる上、ノズルと法面被覆体間を最も破砕効率のよい間隔に維持しつつ法面被覆体を次々に破砕することができ、騒音や粉塵の発生もなく法面被覆体の破砕除去作業を効率よく進められると共に、地盤に衝撃や振動が加わらず、地盤の強度低下を招くこともない。また、法面被覆体が破砕されて地山表面から除去された後、流体の噴流は噴流受板に当ってそれ以上ノズル正面方向に進むのを阻止されることから、噴流と地山との衝突に伴う地山の損傷もなく、法面被覆体を除去した後の地山を確実に改変等なく保護できる。
【0012】
また、本発明に係る法面被覆体除去装置は必要に応じて、前記ノズルを所定の支点位置を中心に所定角度範囲で揺動させる揺動駆動部を備え、前記流体をノズルから噴射する間、前記揺動駆動部により前記ノズルを所定周期で揺動させるものである。
【0013】
このように本発明によれば、ノズルを所定角度範囲傾動可能に配設すると共に、ノズルを揺動させる揺動駆動部を配設し、前記流体の噴射の際、法面被覆体に対しノズルを揺動させ、噴流の到達範囲を広げることにより、法面被覆体における噴流の衝突範囲を拡大でき、一度に広い範囲の法面被覆体に対し流体を衝突させて破砕できることとなり、支持装置でノズルを全体的に移動させる際の、ノズル全体の移動方向と揺動に伴うノズルの振れ方向とが平行である場合には、法面被覆体に対し線状に破砕を進行させてスムーズに溝孔状の破砕済部分を延長させていくことができ、除去作業中の支持装置によるノズル全体の移動速度を速められ、作業能率を向上させられる一方、揺動の向きと支持装置によるノズル全体の移動方向が直角をなす場合には、全体移動方向への移動中における法面被覆体の破砕幅を拡大して法面被覆体の破砕除去作業を広範囲で能率よく進められると共に、支持装置等によるノズルの移動開始位置への位置合せの手間を一部削減でき、作業時間短縮が図れる。
【0014】
また、本発明に係る法面被覆体除去装置は必要に応じて、前記支持装置に位置及び傾き調整可能且つ前記ノズル周囲を回動可能に配設され、ノズルの流体噴射方向と略平行にノズル後方側から前方側へ延伸して前記噴流受板を一体に取付けられる略棒状の受板支持アームを備え、当該受板支持アームが、前記ノズルに対しノズルの前記法面被覆体表面に沿った移動方向の後方側に位置する状態となるまで、ノズル周りに回動位置調整されるものである。
【0015】
このように本発明によれば、噴流受板を支える受板支持アームをノズル近傍に配設すると共にノズルの周りで回動可能とし、破砕作業中にノズル及び噴流受板を法面被覆体表面に沿って移動させる際、ノズルに対する受板支持アーム位置をノズル移動方向の後方側に変位させることにより、ノズルの移動方向前方側に位置する未破砕の法面被覆体と受板支持アームとが一切干渉せず、ノズル及び噴流受板の移動を無理なく進められ、破砕作業をスムーズに継続できる。
【0016】
また、本発明に係る法面被覆体除去装置は必要に応じて、前記噴流受板と一体に配設され、噴流受板における前記支持装置での前記ノズル移動方向先端側で、法面被覆体の地山寄り部分及び/又は地山表面を削って法面被覆体と地山との間に少なくとも噴流受板の厚み以上の隙間を生じさせる先端掘削部を備えるものである。
【0017】
このように本発明によれば、噴流受板の進行方向先端側で法面被覆体及び/又は地山を掘削可能な先端掘削部を配設し、先端掘削部を動作させて法面被覆体と地山との間に噴流受板の通過可能な隙間を新たに生じさせていくことにより、法面被覆体と地山との間に作業当初からある隙間が噴流受板をスムーズに進ませられるほど十分な間隔でない場合にも、隙間を挟む法面被覆体裏側部分や地山表面を削り取って噴流受板の進行に十分なスペースを常に確保でき、ノズルと一体の噴流受板の進行を滞らせずに済み、除去作業をスムーズに継続させられる。
【0018】
また、本発明に係る法面被覆体除去装置は必要に応じて、前記受板支持アームのノズル寄り位置で動作する破砕用刃部分を少なくとも有してなり、前記流体噴射で破砕された法面被覆体の破砕済空隙部分を挟む未破砕部分に対し、少なくとも受板支持アームの幅より大きい所定範囲にわたり前記破砕用刃部分を接触させて破砕を行う補助破砕部を備えるものである。
【0019】
このように本発明によれば、受板支持アーム近傍に法面被覆体を破砕可能な補助破砕部を配設し、法面被覆体の破砕で生じる空隙部分を受板支持アームの幅より大きく拡大できることにより、法面被覆体の性状によってはノズルからの流体噴射での破砕では狭い範囲の破砕、除去に留まり、破砕で生じる空隙部分の幅が受板支持アームの通過可能な程度にはとれない場合でも、補助破砕部で空隙部分を挟む未破砕部分を適切に破砕、除去して受板支持アームの通過部分を確保でき、受板支持アームを破砕済部分に通して確実にノズルと一体に移動させられ、除去作業を継続できる。
【0020】
また、本発明に係る法面被覆体除去装置は必要に応じて、前記ノズル位置を中心としてノズル周囲各方向に所定寸法張出してノズルの流体噴射方向におけるノズル後方側に対しノズル前方側を所定範囲覆い隠す略椀状体で形成され、ノズル及び前記噴流受板と共に位置及び傾き調整可能に前記支持装置上に配設されるカバー体を備えるものである。
【0021】
このように本発明によれば、ノズルの周囲各方向に張出す略椀状のカバー体を配設し、ノズルから噴射された後法面被覆体表面に衝突してノズルの方へ跳ね返った流体の各構成物や飛散した法面被覆体の破片をカバー体で受け止めることにより、前記流体の各構成物や法面被覆体破片のノズルより後方への到達を防止でき、作業環境をより一層向上させて作業者にかかる負担を軽減できると共に、作業現場周囲への悪影響を抑えられる。
【0022】
また、本発明に係る法面被覆体除去方法は、流体のみ又は固形粒状の研磨材を含む流体を先端から噴射可能なノズルを、法面表面に構築されている所定の法面被覆体に対向させる一方、少なくとも前記流体噴流の前記ノズル正面側所定位置における拡散範囲に及ぶ大きさとされる噴流受板を、前記法面被覆体と当該法面被覆体裏側の地山との間の隙間に挿入し、あらかじめ法面被覆体上で略格子状に配置設定された線状の破砕・除去対象部位に沿って、ノズル及び噴流受板を連続的又は断続的に移動させつつ、ノズルから噴射した前記流体の噴流を衝突させ、前記対象部位の破砕・除去を実行して法面被覆体を略ブロック状に切断、分割し、前記法面被覆体の各分割体を地山表面から取去るものである。
【0023】
このように本発明によれば、流体単独もしくは研磨材を含む流体を噴射するノズル、及びこのノズル正面に配設される噴流受板とを、法面被覆体上に略格子状に設定された破砕・除去対象部位に沿って移動させつつ、法面被覆体に対し前記流体を噴射してこの噴流を衝突させ、法面被覆体を噴流の破砕力で破砕、除去して連続した線状の切断部位を生じさせることにより、法面被覆体を広範囲に切断分割し、得られた分割体を地山から取去る一連の工程で、容易且つ迅速に法面被覆体の除去作業を進められ、この除去作業を人手のみで行う場合に比べて極めて効率よく実施できると共に、法面被覆体の除去に際して衝撃や振動、騒音、粉塵の発生もなく、作業に伴う周囲への各種影響を必要最小限にとどめられる。また、法面被覆体の除去対象部位が破砕されて地山表面から除去された後、流体の噴流は噴流受板に当ってそれ以上ノズル正面方向に進むのを阻止されることから、噴流と地山との衝突に伴う地山の損傷もなく、法面被覆体を除去した後の地山を確実に改変等なく保護できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。図1は本実施の形態に係る法面被覆体除去装置の概略構成図、図2は本実施の形態に係る法面被覆体除去装置における法面被覆体破砕開始状態説明図、図3は本実施の形態に係る法面被覆体除去装置の要部概略構成図、図4は本実施の形態に係る法面被覆体除去装置における噴流受板の破砕開始時動作状態説明図、図5は本実施の形態に係る法面被覆体除去装置における噴流受板の横一段破砕終了時動作状態説明図である。
【0025】
前記各図に示すように本実施の形態に係る法面被覆体除去装置1は、所定の供給装置(図示を省略)から供給される固形粒状の研磨材を含む流体を先端から噴射するノズル10と、このノズル10を所定範囲内で位置及び傾き調整可能に支持し、ノズル10先端を法面表面に構築されている所定の法面被覆体60に対向させる支持装置11と、前記ノズル10から所定距離離れたノズル正面側位置にノズル10と共に位置及び傾き調整可能として配設される略板状の噴流受板12と、前記ノズル10を所定の支点位置を中心に上下に揺動させる揺動駆動部13と、前記ノズル10位置を中心としてノズル10周囲各方向に所定寸法張出す状態でノズル10及び前記噴流受板12と共に位置及び傾き調整可能に前記支持装置11上に支持配設される略椀状のカバー体14とを備える構成である。
【0026】
前記ノズル10は、前記支持装置11に上下方向所定角度範囲揺動可能に取付けられてなり、所定の供給装置から固形粒状の研磨材を含む流体(水に固形粒状の研磨材を混合したもの等)を中圧又は高圧で供給され、先端から前記流体を噴射するものである。なお、ノズル10としては、供給装置からそのまま研磨材を含む流体を高圧で供給されるものに限らず、供給装置からは水のみを供給され、ノズル内で水に研磨材を混入させて一緒にノズル外に噴射する従来のアブレーシブジェット方式に基づくノズルを用いてもかまわない。研磨材としては珪砂、ガーネット等の粒状体を用いる。
【0027】
このノズル10近傍には、支持装置11に直接取付けられて位置及び傾き調整可能且つ前記ノズル10周囲を回動可能とされ、ノズル10の流体噴射方向と略平行にノズル後方側から前方側へ所定長さ延伸する略棒状の受板支持アーム15が配設される。
【0028】
前記支持装置11は、屈折式ブーム付きコンクリートポンプ車として用いられるものと同様の、台上に取付けられた伸長・折曲げ可能な複節ブームの先端をブームの到達可能な範囲で位置及び傾き調整自在とされる公知のブーム付き自走式台車であり、詳細な説明は省略する。なお、この支持装置としては、ホイールクレーン(ラフタークレーン)やバックホー等を用いることもできる。
【0029】
前記噴流受板12は、前記ノズル10から所定距離離れたノズル10正面側位置に、揺動駆動部13により揺動するノズル10から噴射される前記流体の噴流の前記所定距離進行状態における拡散到達範囲より十分広い大きさとされる耐摩耗性の略板状体で形成され、前記受板支持アーム15先端に一体に取付けられ、この受板支持アーム15を介して支持装置11に位置及び傾き調整可能に支持されると共にノズル10前方側で回動可能とされる構成である。噴流受板12における受板支持アーム15への取付部分とは反対側の部分は先細の尖端形状とされてなり、法面被覆体60破砕除去作業開始前における法面被覆体60と地山70間の隙間への噴流受板12挿入の際にはこの尖端形状部分から挿入することで挿入作業を行いやすくしている。
【0030】
この噴流受板12をなす耐摩耗性材としては、アルミナ、窒化ケイ素等のセラミック材や、タングステンカーバイド等の金属硬質材をそのまま板状としたものの他、これらを鉄等の金属板状体表面に所定厚さ接合一体化して耐摩耗性を与えたもの等を用いることができる。
【0031】
前記揺動駆動部13は、支持装置11のブーム11a先端部に配設されてノズル10の一部に連結され、ノズル10のブーム11a取付部位を揺動中心としてノズル10を上下に揺動させる公知の揺動駆動機構であり、詳細な説明を省略する。
【0032】
前記カバー体14は、前記ノズル10位置を中心としてノズル10周囲各方向に所定寸法張出してノズル10の流体噴射方向におけるノズル10後方側に対しノズル10前方側を所定範囲覆い隠す略椀状体で形成され、前記支持装置11のブーム11a上に支持配設されてノズル10及び噴流受板12と共に位置及び傾き調整可能とされる構成である。
【0033】
このカバー体14の内面には、噴射された流体が跳ね返ったり、破砕された法面被覆体60の破片が飛散したりして衝突するため、発生する衝撃や音に対し吸収性を有するシート材が配設される。さらに、カバー体14の下部周縁には、カバー体14端部から前方側に突出して法面表面に一部接触し、法面表面とカバー体14との間の隙間を無くすゴム材やブラシ状体からなる隙間閉塞部14aが配設され、前記隙間から法面被覆体60の破片が下方へ落下するのを防止している。
【0034】
次に、前記構成に基づく法面被覆体除去装置による除去作業について説明する。あらかじめ、破砕、除去予定範囲の法面被覆体60に対し、地表側から公知の地盤探査装置を用いて地中の状態を調査し、地山との間に隙間が生じて保護の目的をなさず、除去対象となる法面被覆体60の位置を決定しておく。
【0035】
続いて、法面下側の道路など、法面近傍の所定箇所に支持装置11を据付け、支持装置11で地上からノズル10を法面正面側の所定位置まで上昇させる。そして、噴流受板12を法面被覆体60の除去開始地点における法面被覆体60とその裏側の地山70との間の隙間に上方または側方から挿入しつつ法面被覆体60正面に前記ノズル10を位置させる(図4(A)、図1参照)。
【0036】
ノズル10を法面被覆体60の破砕開始位置正面に位置させたら、揺動駆動部13によるノズル10の揺動を開始させつつ、供給装置(図示を省略)から研磨材を含む流体を中圧又は高圧{噴射圧力約9.8×106Pa(約100kgf/cm2)以上}で支持装置11及び供給管11bを介してノズル10に供給する。
【0037】
除去すべき法面被覆体60に対し、上下に揺動するノズル10から研磨材を含む流体を噴射すると、ノズル10から出た流体噴流との衝突により法面被覆体60は少しずつ削られていき、削られた凹部が所定深さまで達すると法面被覆体60は一気に破砕されて地山70表面から脱落して除去される。地山70表面から法面被覆体60が除去され、ノズル10からの噴流が法面被覆体60位置より奥側へ到達できる状態に達した場合でも、あらかじめ地山70との隙間に挿入した噴流受板12の存在により、噴流の地山70への直進を抑えられ、地山70が噴流で損傷することはない。
【0038】
破砕の進行に伴って、支持装置11でノズル10及び噴流受板12を法面被覆体60に沿って横方向へ移動させ、連続的に破砕を行っていく。ノズル10が上下に揺動していることで、法面被覆体60の上下方向所定範囲に対し噴流を衝突させられ、一定の除去幅を確保できる。この法面被覆体60の破砕中、流体を噴射し続けるノズル10は、噴射反力により噴射方向と反対側に押される力を受け続けているが、支持装置11のブーム11a及び受板支持アーム15を介してこのノズル10と一体に連結される噴流受板12が、法面被覆体60と地山70との間に位置して流体噴射方向前後への動きを拘束されることで、同時にノズル10の噴射方向前後への動きも拘束することから、ノズル10に対し支持装置11で強力に噴射方向前方側へ押す力を与えなくともノズル10の後退を確実に防止できる。
【0039】
一方、こうした法面被覆体60の破砕・除去作業中、噴射されて法面被覆体60表面に衝突した流体の各構成物や削られた法面被覆体60の破片はノズル10側へ跳ね返ったり飛散したりする状態となるが、これらをノズル10の周囲各方向に張出すカバー体14で受け止められることから、流体の各構成物や法面被覆体60破片のカバー体14後方への飛散を防止でき、作業現場及びその周囲への悪影響を抑えられる。
【0040】
法面被覆体60の除去が進み、ノズル10の横方向への変位があらかじめ設定された除去範囲の端まで達したら、支持装置11によりノズル10及び噴流受板12位置を下方へ移動させ(図5参照)、前記同様に噴射を続けながらあらかじめ設定された次段の計画線に沿って横方向(前記方向とは逆向き)に進行させる。この時、ノズル10に対する受板支持アーム15位置は、ノズル10及び噴流受板12の進行方向に対して後方側となる状態までノズル10周りに回動調整されており、こうして常に受板支持アーム15をノズル10に対しノズル進行方向後方側に位置させることで、未破砕の法面被覆体60と受板支持アーム15との干渉を防ぎ、ノズル10及び噴流受板12のスムーズな移動と破砕継続を実現している。
【0041】
前記各工程を繰返して、除去すべき法面被覆体60を全て除去したら、ノズル10の揺動及びノズル10への流体供給を停止する。そして、破砕した法面被覆体60の破片、流下した排水などを回収処理する一方、ノズル10や噴流受板12等を支持装置11により収容し、支持装置11を撤去すれば、除去作業完了となる。
【0042】
このように本実施の形態に係る法面被覆体除去装置では、研磨材を含む流体を高圧噴射するノズル10を支持装置11上に位置調整自在に配設すると共に、ノズル10正面側に噴流受板12を配設し、この噴流受板12を法面被覆体60と地山70間に生じている隙間に挿入し、ノズル10を法面被覆体60正面に位置させた状態で、法面被覆体60に対し前記流体を噴射して噴流を衝突させ、且つノズル10を噴流受板12と共に移動させて噴流の衝突位置を動かしていくことから、法面被覆体60を噴流で削って破砕しつつ破砕箇所を広げていく中、法面被覆体60と地山70との間に位置させた噴流受板12で噴射反力によるノズル10の後退を抑止できることとなり、支持装置11におけるノズル支持力をより小さく抑えられ、支持装置11の小型化、低コスト化が図れる上、ノズル10と法面被覆体60間を最も破砕効率のよい間隔に維持しつつ法面被覆体60を次々に破砕することができ、騒音や粉塵の発生もなく法面被覆体60の破砕除去作業を効率よく進められる。また、噴流を用いた破砕により、地盤に衝撃や振動が加わることはなく、地盤の強度低下を防止でき、除去作業を経ても地盤の安定性は損われない。さらに、法面被覆体60が破砕されて地山70表面から除去された後、流体の噴流は噴流受板12に当ってそれ以上ノズル正面方向に向うのを阻止されることから、噴流と地山70との衝突に伴う地山の損傷もなく、法面被覆体60を除去した後の地山70を確実に改変等なく保護できる。
【0043】
また、前記実施の形態に係る法面被覆体除去装置において、支持装置11によるノズル10の移動方向が変る際等、受板支持アーム15は、ノズル10に対してノズル10の移動方向の後方側に位置する状態となるまで、ノズル周りに回動位置調整される構成としているが、これに限らず、法面を覆う法面被覆体60の上端、側端部に対する作業時など、未破砕の法面被覆体60と受板支持アーム15との干渉が起りにくい場合には、ノズル10に対する受板支持アーム15の位置を移動方向の後方側に位置させないまま、受板支持アーム15及び噴流受板12をノズル10と共に移動させることもできる。
【0044】
また、前記実施の形態に係る法面被覆体除去装置において、噴流受板12における受板支持アーム15への取付部分とは反対側の端部は先細の尖端形状に形成する構成としているが、これに限らず、他の形状、例えば先端が尖らずに直線状に揃った形状等でもかまわない。
【0045】
(本発明の第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態を図6〜図8に基づいて説明する。図6は本実施の形態に係る法面被覆体除去装置の要部概略構成図、図7は本実施の形態に係る法面被覆体除去装置のフレーム部平面図、図8は本実施の形態に係る法面被覆体除去装置における噴流受板の正面図及び除去作業時の噴流受板周囲破砕状態説明図である。
前記各図に示すように本実施の形態に係る法面被覆体除去装置は、前記第1の実施形態同様、ノズル20と、支持装置21と、噴流受板22と、揺動駆動部23と、カバー体24とを備える一方、異なる点として、支持装置21のブーム21a先端に配設されてノズル20をスライド可能に支持する略枠状のフレーム部26と、噴流受板22を支える受板支持アーム25と一体に配設される補助破砕部27と、噴流受板22に組込まれる先端掘削部28とを備える構成を有するものである。
【0046】
前記ノズル20は、前記第1の実施形態同様、研磨材を含む流体を先端から噴射するものであるが、異なる点として、支持装置21に前記フレーム部26を介して支持され、支持装置21に対し横方向に所定範囲内で移動可能とされる構成を有している。一方、前記支持装置21、及び揺動駆動部23は、前記第1の実施形態同様のものであり、詳細な説明は省略する。また、ノズル20近傍には、前記第1の実施形態同様に、ノズル20周囲を回動可能とされ、ノズル20後方側から前方側へ所定長さ延伸する略棒状の受板支持アーム25が配設される。
【0047】
この受板支持アーム25先端に一体に取付けられ前記噴流受板22も、前記第1の実施形態同様、ノズル20から所定距離離れたノズル20正面側位置に、ノズル20から噴射される前記流体噴流の到達範囲より十分広い大きさとされる耐摩耗性の略板状体で形成される構成であるが、異なる点として、法面被覆体60と地山70間の隙間へ挿入される場合に、法面被覆体60の地山70寄り部分及び/又は地山70表面を削る先端掘削部28が一体に組込まれてなる構成を有するものとなっている。
【0048】
前記フレーム部26は、支持装置21のブーム21a先端に配設される略枠状体であり、枠長辺と平行をなすレール部26a及びこのレール部26a上に移動自在に支持される基台部26bを有してなり、この基台部26b上にノズル20が取付けられる構成であり、ノズル20を揺動可能且つレール部26aに沿ってスライド移動可能に保持するものである。フレーム部26のノズル先端側枠辺部材は、ノズル20先端側を後方側に対し覆うカバー体24を兼ねる構成であり、流体の各構成物や法面被覆体60破片のカバー体24後方への飛散を防止する。このカバー体24の下部周縁には、前記第1の実施形態同様に法面表面とカバー体24との間の隙間を無くす隙間閉塞部24aが配設される。
【0049】
前記補助破砕部27は、受板支持アーム25のノズル20寄り位置に配設され、受板支持アーム25の幅より大きい径の破砕用回転刃及びこの回転刃の駆動機構を備える構成であり、前記流体のノズル20からの噴射で破砕された法面被覆体60の破砕済空隙部分を挟む未破砕部分に対して、繰返し回転動作する破砕用回転刃を接触させ、前記未破砕部分を破砕して受板支持アーム25の通過可能な隙間を生じさせる仕組みである。この補助破砕部27の回転軸の一端は噴流受板22で支持されると共に、噴流受板22に組込まれた先端掘削部28に回転駆動力を伝達する仕組みとなっている。
【0050】
前記先端掘削部28は、噴流受板22における受板支持アーム25への取付部分とは反対側の先端部分に位置する回転刃及びこの回転刃への駆動力伝達機構を有して噴流受板22と一体化しており、前記補助破砕部27から回転駆動力を受取って回転刃を噴流受板22先端で回転させる構成であり、法面被覆体60の地山70寄り部分及び/又は地山70表面を削って法面被覆体60と地山70との間の隙間を噴流受板22の厚み以上に拡大する仕組みである。なお、先端掘削部28としては、回転刃を用いる構成の他に、無端チェーン状の破砕用刃を少なくとも噴流受板22先端に一部露出する配置で循環移動可能に配設し、この破砕用刃を駆動して噴流受板22先端で連続移動させ、掘削可能な状態を得る構成とすることもできる。
【0051】
次に、前記構成に基づく法面被覆体除去装置による除去作業について説明する。ただし、本実施形態における除去作業では、あらかじめ法面被覆体60上へ略格子状、すなわち縦又は横方向へ連続し且つ交差する線状に設定された破砕・除去予定部位に対してのみ、破砕、除去を実行するものとし、法面被覆体60の未除去部分に対しては他の装置による除去作業を行うなど、前記第1の実施形態のように法面被覆体60全体に対する法面被覆体除去装置2を用いての除去作業は行わない。
【0052】
まず、前記第1の実施形態同様、除去対象として設定された法面被覆体60に対し、その下部近傍の所定箇所に支持装置21を据付け、支持装置21で地上からノズル20及びフレーム部26を法面正面側の所定位置まで上昇させる。そして、噴流受板22を法面被覆体60の除去開始地点における法面被覆体60とその裏側の地山70との間の隙間に上方又は側方から挿入しつつ、法面被覆体60正面にノズル20及びフレーム部26を位置させる。なお、法面被覆体60の破砕、除去方向、すなわちノズル20を進行させる向きが横方向となる場合は、あらかじめフレーム部26上で、ノズル20及び噴流受板22を前記進行方向と逆向きにスライドさせて側端部に寄せた状態としておく。
【0053】
ノズル20を法面被覆体60の破砕開始位置正面に位置させたら、法面被覆体60の破砕、除去方向が縦方向の場合には揺動駆動部23によるノズル20の揺動を開始させつつ、供給装置(図示を省略)から研磨材を含む流体を中圧又は高圧でノズル20に供給する。除去すべき法面被覆体60に対し、ノズル20から流体を噴射すると、ノズル20から出た流体噴流との衝突により法面被覆体60は少しずつ削られていき、削られた凹部が所定深さまで達すると、衝突部位やその周囲の法面被覆体60は一気に破砕されて地山70表面から脱落して除去される。前記第1の実施形態同様、噴流衝突部位の法面被覆体60が除去されて噴流が法面被覆体60位置より奥側へ到達できる状態となった場合でも、噴流受板22の存在により、地山70が噴流で損傷することはない。また、流体を噴射し続けるノズル20は、噴射反力により噴射方向と反対側に押される力を受け続けるが、前記第1の実施形態同様、ノズル20と一体に連結される噴流受板22が、法面被覆体60と地山70との間に位置して流体噴射方向前後への動きを拘束されることで、ノズル20の後退を確実に防止できる。
【0054】
破砕の進行に伴って、ノズル20を法面被覆体60のあらかじめ設定された線状の破砕・除去予定部位に沿って縦又は横方向へ移動させ、連続的に破砕を行って法面被覆体60を切断状態にすることとなるが、横方向へノズル20を動かす場合、ノズル20及び噴流受板22のみフレーム部26上の可動範囲で動かして、法面に対しブーム21a及びフレーム部26は一切動かさずに破砕作業を実行する。そして、フレーム部26の範囲での破砕作業が終了するごとに、フレーム部26上でノズル20及び噴流受板22を前記同様スライドさせて元の側端部に寄せた状態としつつ、支持装置21によりノズル20ごとフレーム部26位置を次の除去対象範囲へ移動させ、あらためて前記同様にノズル20及び噴流受板22のみ動かしながら流体を噴射する手順を繰返すこととなる。
【0055】
一方、縦方向へノズル20を動かす場合は、支持装置21でノズル20及び噴流受板22を法面被覆体60に沿って少しずつ縦方向へ移動させ、連続的に破砕を行っていく。ノズル20が上下に揺動していることで、法面被覆体60の上下方向所定範囲に対し噴流を衝突させられ、一定の除去長を確保できる。
【0056】
なお、ノズル20に対する受板支持アーム25位置は、前記第1の実施形態同様、ノズル20及び噴流受板22の進行方向に対して常に後方側となる状態までノズル20周りに回動調整されており、受板支持アーム25が法面被覆体60を破砕した後の空隙部分を通ることでノズル20及び噴流受板22のスムーズな移動と破砕継続を可能にしている。
【0057】
こうして、線状の予定部位に沿って噴流による破砕、除去を進める中で、流体を噴射するノズル20が、法面被覆体60中に丈夫な部材が挿入、埋設された箇所など、噴流を衝突させて行う法面被覆体60の切断に時間がかかる部分の正面側に達することが明らかな場合には、このような破砕除去困難な部分を迂回するようにノズル20を動かして、破砕除去がスムーズに行える部位のみに噴流を衝突させていくことができ、迅速に法面被覆体60の切断を進められ、作業の効率化が図れることとなる。具体的には、縦方向へノズル20を動かしている途中の場合には、ノズル20をフレーム部26上でわずかにスライドさせ、横方向へノズル20を動かしている途中の場合には、ノズル20をわずかに傾動させて、それぞれ噴流の衝突部位を破砕除去困難な部分から数cm程度ずらすようにし、破砕除去困難な部分を通り過ぎた時点でノズル20を元の状態に戻せばよい。
【0058】
ノズル20の移動に伴って、法面被覆体60と地山70との間に挿入されている噴流受板22も共に移動することとなるが、法面被覆体60と地山70との間の隙間が噴流受板22の挿入、移動にとって十分な大きさではなかったり、地山70や法面被覆体60が硬質であったりなど、そのままでは噴流受板22の挿入や移動が難しい場合には、先端掘削部28を作動させ、噴流受板22の進行方向先端側で法面被覆体60の地山70寄り部分及び/又は地山70表面を削っていく。これにより噴流受板22を進めるのに十分な大きさの隙間が確実に生じることとなり、噴流受板22をノズル20と共にスムーズに移動させられる。
【0059】
また、法面被覆体60の内部構造が高密度且つ硬質であり、ノズル20からの流体噴射により破砕除去可能な部分が噴流の直接衝突するごく狭い領域に限られ、法面被覆体60を破砕して生じる空隙部分が細幅となるなど、本来ノズル20及び噴流受板22と共に移動させるべき受板支持アーム25を通せる幅分の破砕除去が、法面被覆体60に対し行えない場合や、法面被覆体60内部に補強用として入っている金網や、地山70へ一部挿入されて法面被覆体60を地山70表面に確実に固定するためのピン(止め具)等の丈夫な補助部材が流体噴流の衝突のみでは切断できずに残ってしまう場合には、受板支持アーム25のノズル20進行方向側に位置する補助破砕部27を作動させ、破砕除去済の空隙部分を挟む両側の法面被覆体60の一部や、残った金網等を補助破砕部27で破砕除去していく。この補助破砕部27による破砕に伴い、受板支持アーム25を通過させられる十分な幅の空隙部分を確実に生じさせることができ、受板支持アーム25をノズル20と共に移動可能として作業を継続できる。
【0060】
法面被覆体60の除去が進み、ノズル20があらかじめ設定された除去部位の終端まで達したら、支持装置21によりノズル20及び噴流受板22位置を次の予定部位の開始位置へ移動させ、前記同様に流体の噴射を行わせつつノズル20その他を進行させる過程を繰返し、切断、分割されたブロック状の塊(分割体)を生じさせていく。なお、法面被覆体60における線状の破砕・除去予定部位については、これらがなす格子の間隔が上から下に向うほど大きくなるよう設定されており、破砕、除去により他から分割された法面被覆体60の分割体が法面上部では小さく、法面下部では大きくなることで、重量大となる法面被覆体分割体の、人手や他の装置による取扱いを容易にすると共に、分割体が下方へ転がり落ちる場合の危険度合を低下させ、作業の安全性を確保している。
【0061】
法面被覆体60における略格子状の破砕・除去予定部位を全て除去したら、ノズル20の揺動及びノズル20への流体供給を停止させる。そして、破砕した法面被覆体60の破片、流下した排水などを適宜回収処理する一方、ノズル20やフレーム部26、噴流受板22等を支持装置21により収容し、支持装置21を撤去する。この後、小さなブロック状に複数分割された状態の法面被覆体60の各分割体を、重機等他の装置又は人手により一つずつ地山70から引き剥がし、全て回収すれば、除去作業完了となる。なお、法面被覆体60の分割体に対する引き剥がし除去作業は、分割体が生じる毎に行ってもかまわない。
【0062】
このように、本実施の形態に係る法面被覆体除去装置では、ノズル20及び噴流受板22を、法面被覆体60上に略格子状に設定された破砕・除去対象部位に沿って移動させつつ、法面被覆体60に対し噴流を衝突させ、噴流による破砕に伴って法面被覆体60に連続した線状の切断部位を生じさせることから、法面被覆体60を広範囲に切断分割し、得られた分割体を地山70から取去る一連の工程で、容易且つ迅速に法面被覆体60の除去作業を進められ、特に人手では難しい法面横方向への連続除去作業が行えるなど、この除去作業を人手のみで行う場合に比べて極めて能率よく実施できると共に、法面被覆体60の除去に際し騒音や粉塵の発生もなく、作業に伴う周囲への各種影響を必要最小限にとどめられる。また、前記第1の実施形態同様、噴流を用いた破砕により、地盤に衝撃や振動が加わることはなく、地盤の強度低下を防止でき、除去作業を経ても地盤の安定性は損われない。
【0063】
さらに、本実施の形態においては、支持装置21のブーム21a先端に略枠状のフレーム部26を配設し、ノズル20をフレーム部26に沿って横方向スライド可能として、フレーム部26上の可動範囲でノズル20のみ動かして作業が行えることから、フレーム部26の範囲での破砕作業が終了する毎にフレーム部26位置を次の除去対象箇所へ移動させればよく、ノズル20による破砕作業の進行に伴ってノズル20と共に支持装置21のブーム21aを少しずつ動かさなくても済むことに加え、フレーム部26の範囲内でのノズル移動については自動化も図りやすく、破砕作業におけるノズル20及び支持装置21操作者の負担を軽減できる。
【0064】
なお、前記第1及び第2の各実施形態に係る法面被覆体除去装置においては、ノズル10、20から研磨材を含む流体を常に一定の流量及び圧力で噴射する構成としているが、これに限らず、除去対象部分に対する事前の探査測定で、各位置毎の法面被覆体60の性状(厚さ、地山との隙間)に関する情報を取得し、この情報に基づいてノズル10、20からの前記研磨材を含んだ流体の噴射量及び噴射圧力を法面位置毎に調整して破砕動作の最適化を図ることもでき、なるべく短い時間での法面被覆体60の破砕、除去を実現しつつ、研磨材を含む流体の供給に係る無駄なエネルギ消費と研磨材自体の無駄な消費を抑えられると共に、研磨材を含む流体が流通する各部分の耐久性を向上させて保守の手間も省けることとなり、除去工事全体での工期短縮とコストダウンの両立が図れる。
【0065】
また、前記第1及び第2の各実施形態に係る法面被覆体除去装置においては、ノズル10、20から固形粒状の研磨材を含む流体を噴射する構成としているが、これに限らず、噴射圧力を法面被覆体60の破砕が十分可能な高い圧力にできれば、流体のみの噴射としてもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る法面被覆体除去装置の概略構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る法面被覆体除去装置における法面被覆体破砕開始状態説明図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る法面被覆体除去装置の要部概略構成図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る法面被覆体除去装置における噴流受板の破砕開始時動作状態説明図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る法面被覆体除去装置における噴流受板の横一段破砕終了時動作状態説明図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る法面被覆体除去装置の要部概略構成図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る法面被覆体除去装置のフレーム部平面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る法面被覆体除去装置における噴流受板の正面図及び除去作業時の噴流受板周囲破砕状態説明図である。
【符号の説明】
【0067】
1 法面被覆体除去装置
10、20 ノズル
11、21 支持装置
11a、21a ブーム
11b、21b 供給管
12、22 噴流受板
13、23 揺動駆動部
14、24 カバー体
14a、24a 隙間閉塞部
15、25 受板支持アーム
26 フレーム部
26a レール部
26b 基台部
27 補助破砕部
28 先端掘削部
60 法面被覆体
70 地山

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の供給装置から供給される流体のみ又は固形粒状の研磨材を含む流体を先端から噴射するノズルと、
前記ノズルを所定範囲内で位置及び傾き調整可能に支持し、ノズル先端を法面表面に構築されている所定の法面被覆体に対向させる支持装置と、
前記支持装置に位置及び傾き調整可能に支持される略板状体で形成され、前記ノズルから所定距離離れたノズル正面側位置に、少なくとも前記流体の噴流の前記所定距離進行状態における拡散範囲に及ぶ大きさとされて配置される噴流受板とを備え、
前記噴流受板を前記法面被覆体と当該法面被覆体裏側の地山との間の隙間に挿入しつつ法面被覆体正面に前記ノズルを位置させ、ノズルから噴射した前記流体の噴流を法面被覆体に衝突させると共に、前記支持装置でノズル及び噴流受板を法面被覆体表面に沿って連続的又は断続的に移動させることを
特徴とする法面被覆体除去装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載の法面被覆体除去装置において、
前記ノズルを所定の支点位置を中心に所定角度範囲で揺動させる揺動駆動部を備え、
前記流体をノズルから噴射する間、前記揺動駆動部により前記ノズルを所定周期で揺動させることを
特徴とする法面被覆体除去装置。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の法面被覆体除去装置において、
前記支持装置に位置及び傾き調整可能且つ前記ノズル周囲を回動可能に配設され、ノズルの流体噴射方向と略平行にノズル後方側から前方側へ延伸して前記噴流受板を一体に取付けられる略棒状の受板支持アームを備え、
当該受板支持アームが、前記ノズルに対しノズルの前記法面被覆体表面に沿った移動方向の後方側に位置する状態となるまで、ノズル周りに回動位置調整されることを
特徴とする法面被覆体除去装置。
【請求項4】
前記請求項3に記載の法面被覆体除去装置において、
前記噴流受板と一体に配設され、噴流受板における前記支持装置での前記ノズル移動方向先端側で、法面被覆体の地山寄り部分及び/又は地山表面を削って法面被覆体と地山との間に少なくとも噴流受板の厚み以上の隙間を生じさせる先端掘削部を備えることを
特徴とする法面被覆体除去装置。
【請求項5】
前記請求項3又は4に記載の法面被覆体除去装置において、
前記受板支持アームのノズル寄り位置で動作する破砕用刃部分を少なくとも有してなり、前記流体噴射で破砕された法面被覆体の破砕済空隙部分を挟む未破砕部分に対し、少なくとも受板支持アームの幅より大きい所定範囲にわたり前記破砕用刃部分を接触させて破砕を行う補助破砕部を備えることを
特徴とする法面被覆体除去装置。
【請求項6】
前記請求項1ないし5のいずれかに記載の法面被覆体除去装置において、
前記ノズル位置を中心としてノズル周囲各方向に所定寸法張出してノズルの流体噴射方向におけるノズル後方側に対しノズル前方側を所定範囲覆い隠す略板状体の組合せ形状として形成され、ノズル及び前記噴流受板と共に位置及び傾き調整可能に前記支持装置上に配設されるカバー体を備えることを
特徴とする法面被覆体除去装置。
【請求項7】
流体のみ又は固形粒状の研磨材を含む流体を先端から噴射可能なノズルを、法面表面に構築されている所定の法面被覆体に対向させる一方、少なくとも前記流体噴流の前記ノズル正面側所定位置における拡散範囲に及ぶ大きさとされる噴流受板を、前記法面被覆体と当該法面被覆体裏側の地山との間の隙間に挿入し、
あらかじめ法面被覆体上で略格子状に配置設定された線状の破砕・除去対象部位に沿って、ノズル及び噴流受板を連続的又は断続的に移動させつつ、ノズルから噴射した前記流体の噴流を衝突させ、前記対象部位の破砕・除去を実行して法面被覆体を略ブロック状に切断、分割し、
前記法面被覆体の各分割体を地山表面から取去ることを
特徴とする法面被覆体除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−341504(P2006−341504A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−169583(P2005−169583)
【出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(505217527)
【出願人】(505217538)
【Fターム(参考)】